JP2889633B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、内燃機関の吸気バルブあるいは排気バルブ
の開閉時期を運転状態に応じて可変制御するバルブタイ
ミング制御装置に関する。
従来の技術 従来のこの種バルブタイミング制御装置としては、種
々提供されており、その一例として「Motor Fan・VOL.4
3.NO.10」(平成元年10月1日(株)三栄書房発行・P3
8,P119)に記載されたものなどが知られている。
概略を説明すれば、吸気・排気バルブを開閉制御する
カムシャフトの前端部には、外周に外歯が形成されてい
る。一方、該カムシャフト前端部の外側に配置支持され
た外筒は、外周に機関の回転力がタイミングチェーンを
介して伝達されるスプロケットを備えていると共に、内
周には内歯が形成されている。そして、この内歯と上記
カムシャフトの外歯との間に、内外周の歯のうち少なく
ともいずれか一方がはす歯に形成された筒状歯車が噛合
しており、この筒状歯車を、機関運転状態に応じて油圧
回路の油圧によりカムシャフトの軸方向へ移動させるこ
とによって、該カムシャフトをスプロケットに対して相
対回動させて吸気・排気バルブの開閉時期を制御するよ
うになっている。
発明が解決しようとする課題 然し乍ら、前記従来のバルブタイミング制御装置にあ
っては、スプロケットとカムシャフトとを、筒状歯車の
内外周の少なくともいずれか一方に形成されたはす歯を
利用して相対回転させるようにしており、このはす歯
は、スプロケットの内歯あるいはカムシャフトの外歯と
の良好な噛合い精度を確保するために、高精度な加工が
要求される。この結果、該はす歯の加工作業が煩雑とな
り、加工作業能率の低下と、加工コストの高騰を招いて
いる。
また、筒状歯車を軸方向へ移動させることによっては
じめてカムシャフトをスプロケットに対して相対回動さ
せるようになっているため、筒状歯車と内外歯との噛合
い摩擦抵抗などに起因してその軸方向の移動遅れが生じ
易くなり、バルブタイミング制御の応答性が悪化し易
い。
更に、筒状歯車の軸方向の移動を、該筒状歯車の前後
に作用する油圧をON・OFF的に切替制御して行なうよう
になっているため、任意の移動位置に制御することが困
難であり、常に2段階の位置切替制御だけとなる。この
結果、変化する機関運転状態に応じた最適なバルブタイ
ミング制御が不可能になる。
課題を解決するための手段 本発明は、前記従来の実情に鑑みて案出されたもの
で、機関の駆動力が伝達される回転体と、該回転体と正
逆相対回動可能に設けられたカムシャフトと、該カムシ
ャフトの回転トルク変動により正逆相対回動する前記回
転体とカムシャフトの相対回動位置を規制する一対のク
ラッチ機構と、機関運転状態に応じて前記各クラッチ機
構を相対的に切替作動させる切替機構とを備えた内燃機
関のバルブタイミング制御装置において、前記クラッチ
機構は、回転体またはカムシャフトのいずれか一方の所
定位置に固定された一対のシリンダと、該シリンダ内を
それぞれ摺動しかつ回転体またはカムシャフトのいずれ
か一方に固定された揺動アームの両端部にそれぞれの前
端部が軸方向から当接する第1,第2ピストンと、該各ピ
ストンの外周面に巻装され、各ピストンに対する締付け
による摩擦抵抗によって該各ピストンの伸縮動を互いに
独立に規制するクラッチスプリングとを備えていると共
に、前記切替機構により前記各クラッチスプリングの緊
締と弛緩を相対的に切り替えるように構成したことを特
徴としている。
作用 例えば機関低負荷域では、切替機構を一方向に移動さ
せて一方側のクラッチ機構のクラッチスプリングにより
ピストンの外周面をを緊締し、この緊締力による摩擦抵
抗によって自由な摺動を規制させる一方、他方側のクラ
ッチ機構のクラッチスプリングを弛緩してピストンの自
由な摺動を確保する。したがって、カムシャフトは、バ
ルブ開閉時に発生する例えば正な回転トルク変動によっ
て回転体に対して正方向に所定量だけ相対回動した位置
で、一方側のクラッチ機構によって該回動位置が規制さ
れる。これによって、カムシャフトを、例えば吸気バル
ブの閉時期を遅らす回動位置に保持することができる。
一方、機関が例えば高負荷域に移行した場合は、切替
機構を他方向に切替え移動させて、他方側のクラッチ機
構のクラッチスプリングを緊締してピストンの自由な摺
動を摩擦抵抗により規制する一方、一方側クラッチ機構
のピストンに対するクラッチスプリングの緊締を解除す
る。したがって、カムシャフトは、負の回転トルク変動
によって回転体に対して前述とは逆方向の所定量だけ相
対回動した位置で、他方側のクラッチ機構によって該回
動位置が規制される。これによって、カムシャフトを例
えば吸気バルブの閉時期を早める回動位置に保持するこ
とができる。
実施例 以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。
第1図〜第3図は自動車のDOHC型内燃機関に適用した
この発明の第1実施例を示し、1はシリンダヘッド上部
のカム軸受2に支承されて、吸気バルブを図外のカムに
より開閉するカムシャフト、3は該カムシャフト1の一
端部1a端縁に設けられた略T字形の揺動アーム、4は該
カムシャフト1の一端部1aに回転自在に支承されて、図
外のクランク軸に取り付けられたドライブスプロケット
からタイミングチェーンを介して回転力が伝達される回
転体たるドリブンスプロケット、5,6はカムシャフト1
とドリブンスプロケット4との正逆相対回動位置を規制
する一対のクラッチ機構、7は該各クラッチ機構5,6を
相対的に切替作動させる切替機構、8は該切替機構7を
介してカムシャフト1とドリブンスプロケット4との所
定の相対回動位置を決定する位置決定機構である。
具体的に説明すれば、前記揺動アーム3は、カムシャ
フト1の一端部1a軸方向に螺着した取付ボルト9によっ
て該一端部1a端縁に固定された略円環状の基部10と、該
基部10の外端部に設けられて、カムシャフト1の軸方向
と直交する方向に沿って延長した両腕部11とを備えてお
り、この両腕部11は、両端部に有する段差保持孔11a,11
b内に夫々内側に向かって突出した第1,第2押圧部12,13
が設けられている。この各押圧部12,13は、後端側の小
径軸部が前記保持孔11a,11b内に圧入固定されていると
共に、先端部12a,13aが球面状に形成されている。
前記ドリブンスプロケット4は、外周に2連の歯車列
を有する断面略コ字形のスプロケット本体14と、外本体
14の外端側にボルト15により固定されて本体14内部の圧
力室16を密閉する略円板状のカバー部17とから構成され
ている。前記本体14は、略中央のカムシャフト孔の孔縁
に突設された筒部14aを介してカムシャフト一端部1aに
回転自在に支持されている。一方、カバー部17は、中央
部のねじ孔に後述する圧縮スプリング33のばね力を調整
する調整ねじ17aが螺着されている。
前記クラッチ機構5,6は、第1図Bに示すようにスプ
ロケット本体14の内側面上下に略水平方向に沿って固定
されたシリンダ18,19と、該各シリンダ18,19内を摺動す
る第1,第2ピストン20,21と、該各ピストン20,21の外周
面に巻装されたクラッチスプリング22,23とを備えてい
る。
前記シリンダ18,19は、前記クラッチスプリング22,23
の配置個所が切欠形成され、内部にピストン20,21を摺
動案内する立上り片状の前端側カイド部18a,19aと、後
端側の筒状部18b,19bとから構成されている。
また、前記各ピストン20,21は、シリンダ18,19から外
部に臨む先端部に、前面が前記揺動アーム3の各押圧部
12,13が当接する大径な円板部20a,21aが固着されている
と共に、該自身の内部軸方向に有する中空部周壁に圧入
された支持リング24a,24bと筒状部18b,19b内端面との間
に弾装された圧縮スプリング25,26によって伸長方向に
付勢されている。また、各ピストン20,21は、円板部20
a,21aの内端面がガイド部18a,19a前端に突き当たる位置
でその最大圧縮方向の移動が規制されるようになってい
る。
前記第1,第2クラッチスプリング22,23は、いずれも
同方向に巻装されていると共に、フリー状態では内周縁
が各ピストン20,21の外周面に当接しており、第1図B
左側の一端部22a,23aが前記各筒状部18b,19bの内端縁に
止着されている一方、右側の他端部22b,23bが外方に突
出配置されている。また、各筒状部18b,19bの内端縁の
一部には、一端部22a,23aと対向する部位22c,23cの移動
を許容する切欠部18c,19cが形成されている。
前記切替機構7は、第1図Aに示すように圧力室16内
に軸方向へ摺動可能に配置されて前記各クラッチスプリ
ング22,23を相対的に弛緩させるスライダ27と、圧力室1
6内に油圧を供給してスライダ27を第1図Aの左方向に
移動させる油圧回路28と、スライダ27を右方向に移動さ
せる電磁アクチュエータ29とを備えている。
前記スライダ27は、断面略コ字形を呈し、略円形状の
側壁部27aと、該側壁部27aの外周縁に設けられて、スプ
ロケット本体14の内周面に摺動案内される筒部27bとを
備えている。また、該筒部27bの内周面上下対向位置に
軸方向の移動に伴い前記各クラッチスプリング22,23の
他端部22b,23bを弛緩方向へ相対的に押圧する第1,第2
フック片30,31が設けられている。この各フック片30,31
は、第1図Aに示すように各クラッチスプリング他端部
22b,23bのオフセット配置に対応して軸方向へ所定量オ
フセットしている。更に、スライダ27は、前記調整ねじ
17aの先端に固定された腕状の支持プレート32とスライ
ダ27外端面との間に弾装された圧縮スプリング33のばね
力によって図中右方向に付勢されている。尚、スライダ
27の最大右方向移動は、シリンダ18,19の上端面で規制
されるようになっている。
前記油圧回路28は、図外のオイルメインギャラリから
分岐して、カム軸受2及びカムシャフト1の直径方向に
形成された導入通路28aと、カムシャフト1及び取付ボ
ルト9の軸方向に連続して形成され、前記導入通路28a
と圧力室16とを連通する軸方向通路28bとを有してい
る。また、導入通路28aの上流端には、オイルポンプ34
から圧送された信号油圧の導入,遮断を電子コントロー
ラ35からの出力信号によって行なう電磁弁36が設けられ
ており、前記電子コントローラ35は、図外のクランク角
センサやエアフローメータ等からの出力信号に基づいて
現在の機関運転状態を検出し、かつカムシャフト1とス
プロケット4に夫々設けられている図外の角度検出セン
サからの出力信号から両者1,4の現在の相対角度位置を
検出演算処理して電磁弁36をON,OFF制御している。
前記電磁アクチュエータ29は、第1図Aに示すように
ロッカカバー37の側壁にボルトにより固定され、調整ね
じ17a及び支持プレート32を貫通した駆動ロッド29aの先
端部29bが前記スライダ27の外端面略中央を図中右方向
に適宜押圧して第2フック片31を介して下側の第2クラ
ッチスプリング23を弛緩するようになっている。また、
斯かる電磁アクチュエータ29は、前記電子コントローラ
35からの出力により、ON,OFF制御されている。
前記位置決定機構8は、第1図Aに示すように前記圧
縮スプリング33と、スライダ27の内端面及び取付ボルト
9の頭部フランジ9a間に弾装されたコイルスプリング38
とから構成され、このコイルスプリング38は、対向する
圧縮スプリング33とのばね力と略同一のばね力を具有し
て、斯かる相対的なばね力によってスライダ27を中立位
置に保持している。そして、斯かる中立位置にあるスラ
イダ27は、第3図に示すように両フック部30,31が各ク
ラッチスプリング22,23の他端部22b,23bを押圧すること
なく夫々離間配置されており、したがって該クラッチス
プリング22,23が、夫々の締付力によって各ピストン20,
21を圧縮・伸長いずれの方向にも移動を規制するように
なっている。
尚、前記ピストン20,21には、切替移動時における各
押圧部12,13との干渉を防止するダンパ機構が夫々設け
られている。このダンパ機構は、第1図Bに示すように
円板部20a,21aの直径方向及び中空部内に形成された油
圧通路39a,39bと、筒状部18b,19b内に形成されて油圧通
路39a,39bを介して圧力室16に連通する油圧室40a,40b
と、油圧通路30a,39b内に流入した導入油圧を油圧室40
a,40b側にのみ許容するチェック弁41a,41bと、筒状部18
b,19bの底壁に穿設されて、油圧室40a,40bから圧力室16
内に排出される圧油に流動抵抗を付与するオリフィス42
a,42bとから構成されている。
以下、本実施例の作用について説明する。
例えば機関低負荷域では、コントローラ35から電磁弁
36にOFF信号が出力される一方、電磁アクチュエータ29
にON信号が夫々出力される。したがって、オイルポンプ
34から圧力室16への信号油圧の導入が遮断されると共
に、駆動ロッド29aが第1図Aに示すように最大に進出
してスライダ27を押圧する。このため、スライダ27は、
側壁部27aの内端面がシリンダ18,19の上端面に突き当た
るまで右方向に移動し、第2フック片31で第2クラッチ
スプリング23の他端部23bを押して弛緩させ第2ピスト
ン21をフリーな状態にする。したがって、カムシャフト
1に吸気バルブの閉時に発生する正の回転トルクが作用
すると、第1図Bに示すように揺動アーム3の第2押圧
部13が円板部21aを押圧するため、第2ピストン21は圧
縮スプリング26のばね力に抗して円板部21aがガイド部1
9aに突き当たるまで漸次圧縮方向へ摺動し、カムシャフ
ト1の正方向の回動を許容する。一方、斯かる正回転ト
ルク状態における第1ピストン20は、第1クラッチスプ
リング22の僅かな締付力が作用しているものの、第1押
圧部12からの押圧力を受けないためスプリング25のばね
力で伸長方向(第1図B位置)に移動している。ここ
で、カムシャフト1に負の回転トルクが発生し、第1押
圧部12が第1ピストン20の円板部20aを押圧すると、第
1クラッチスプリング22の一端部22a付近左側軸方向へ
集中荷重が発生し、該クラッチスプリング22の線材が互
いに押圧されて線材間の摩擦力が増加すると同時に、ク
ラッチスプリング一端側部位22cが切欠部18c内に移動し
て第1クラッチスプリング22全体が傾斜状態となり、円
形から楕円形に変形し長軸が長くなる。したがって、こ
の反力として第1クラッチスプリング22の巻方向に引張
応力が発生し、第1ピストン20に対する締付力が増加す
る。また、斯かる締付力(摩擦力)は、第1ピストン20
に対する揺動アーム3の押圧力が増加する程大きくなる
ため、第1ピストン20の圧縮方向の移動を確実に規制す
ることができる。ここで、カムシャフト1が最大正回転
方向に相対回動すると、その最大角度を検出した角度検
出センサからの出力信号によって電子コントローラ35が
電磁アクチュエータ29への通電を遮断(OFF)する。し
たがって、スライダ27は、第3図に示すようにコイルス
プリング38のばね力で図中左方向に戻されて、圧縮スプ
リング33との均一な相対的ばね力で中立位置に保持され
る。これによって各ピストン20,21が、クラッチ機構5,6
により夫々移動規制されると共に、揺動アーム3も正負
両方向への自由な揺動が規制されて、カムシャフト1を
吸気バルブの閉時間が遅くなる回動位置に保持する。
尚、前記圧力室16には、油圧の供給が遮断されている
ものの、内部には一定圧の油圧が保持されており、した
がって、伸長位置にある第1ピストン20内には油圧通路
39aを通った圧油がチェック弁41aを押し開いて油圧室に
貯留されている。
一方、機関が高負荷域に移行した場合は、電磁弁36が
ONされて、オイルポンプ34から圧送された作動油が導入
通路28a,軸方向通路28bを介して圧力室16に導入され、
該圧力室16内が即座に高圧となる。このため、スライダ
27は、圧力室16の高油圧とコイルスプリング38のばね力
との合成力により圧縮スプリング33のばね力に抗して外
端面が支持プレート32に突き当たるまで図中左方向へ移
動する。このため、第2フック片31が第2クラッチスプ
リング23の他端部23bから離間すると同時に、第1フッ
ク片30が第1クラッチスプリング22の他端部22bを押圧
して弛緩させ、第1ピストン20をフリーな状態にする。
したがって、カムシャフト1に吸気バルブの開時に発生
する負の回転トルクが作用すると、第2図Bに示すよう
に今度は前述とは逆に揺動アーム3の第1押圧部12が円
板部20aを押圧するため、第1ピストン20はスプリング2
5のばね力に抗して円板部20aがガイド部18aに突き当た
るまで圧縮方向に摺動し、カムシャフト1の負方向の回
動を許容する。一方、第2ピストン21は、正回転トルク
時の第1ピストン20と同様な作用で正回転トルク発生時
には、第2クラッチスプリング23の楕円形の変形により
圧縮方向への移動が確実に規制される。ここで、カムシ
ャフト1の最大負方向への相対回動位置が角度検出セン
サにより検出されて、電子コントローラ35が電磁弁36へ
の通電を遮断(OFF)する。したがって、スライダ27
が、前述と同様に中立位置に保持されて各クラッチ機構
5,6により各ピストン20,21の移動を規制し、揺動アーム
3の正,負両方向の自由な回動も規制される。これによ
って、カムシャフト1を吸気バルブの閉時期が早くなる
回動位置に保持する。
更に、機関が低負荷域〜高負荷域間の所定の中間領域
にある場合は、電磁弁36あるいは電磁アクチュエータ29
にON信号が所定時間出力されて、スライダ27を左右いず
れか一方へ所定量だけ移動させる。これによって両クラ
ッチ機構5,6のいずれか一方が前述のように連結解除さ
れてカムシャフト1を正負いずれかへの回動を許容す
る。そして、該カムシャフト1が所定角度位置に達する
と、角度検出センサから得た角度情報に基づいて電子コ
ントローラ35が前記電磁弁36あるいは電磁アクチュエー
タ29への通電を遮断する。したがって、スライダ27は、
前述のように位置決定機構8の相対的ばね力で中立位置
に保持され、各クラッチ機構5,6が連結状態となる。依
って、カムシャフト1とスプロケット4とは、正逆最大
相対回動位置間の所定の中間位置に保持され、機関運転
状態に応じた最適なバルブタイミング制御が行なわれ
る。
また、前記電磁弁36や電磁アクチュエータ29には、カ
ムシャフト1が所定の相対回動位置に達するまで電子コ
ントローラ35から通電されるが、達した後は即座に通電
が遮断されるため、無用な電力消費を防止することがで
きる。
尚、前記カムシャフト1とスプロケット4との相対回
動の切替え時、つまり揺動アーム3の押圧力による各ピ
ストン20,21の圧縮方向の摺動速度が、オリフィス42a,4
2bを通る圧油の流動抵抗によって規制されて、揺動アー
ム3と各ピストン20,21との激しい干渉が防止される。
これによって、打音の発生や摩耗等が十分に防止され
る。
第4図は本発明の第2実施例を示し、この実施例では
押圧部12,13の軸中心とピストン20,21の軸中心をLの寸
法だけオフセットさせたもので、これによって、前述の
ような相対回動切替時における押圧部12,13とピストン2
0,21の円板部20a,21aとの摺接位置を常に変化させるこ
とができるため、両者の摩耗を防止することができる。
尚、各実施例では、吸気バルブ側に本装置を適用した
場合について説明したが、排気バルブ側に本装置を適用
することも可能である。
また、スライダ27を、油圧と電磁アクチュエータ29を
用いて左右方向に移動させるようになっているが、電磁
アクチュエータ29のみで左右方向に移動させるように構
成することも可能である。
発明の効果 以上の説明で明らかなように、本発明によれば、カム
シャフトと回転体との相対回動を従来のような筒状歯車
ではなく、カムシャフトの回転トルク変動を利用して行
なうと共に、該正逆相対回動位置規制を一対のクラッチ
機構の切替制御により行うようにしたため、高精度かつ
円滑なバルブタイミング制御が得られることは勿論のこ
と、特にはす歯が不要になるため構造が簡素化され、製
造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。しかも、
本発明は、クラッチ機構としてクラッチスプリングを使
用し、ピストンの外周面を該クラッチスプリングにより
緊締してその摩擦抵抗によってピストンの自由な摺動を
規制するようにしたため、ピストンの摺動位置を安定か
つ確実に規制することが可能になり、この結果、回転体
とカムシャフトを所望の相対回動位置に安定かつ確実に
保持することが可能になる。
また、前述のようにカムシャフトの回転トルク変動を
利用するものであるため、従来に比較してカムシャフト
と回転体との相対回動が速やかに行なわれ、バルブタイ
ミング制御の応答性が向上する。
しかも、本発明は、位置決定機構によって切替機構の
移動位置を任意に決定して、カムシャフトと回転体との
相対回動位置を無段階に制御することができる。したが
って、機関運転状態に応じた最適なバルブタイミング制
御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図Aは本発明に係るバルブタイミング制御装置の第
1実施例を示す縦断面図、同図Bは同図AのI−I線断
面図、第2図Aは本実施例の作用を示す装置の断面図、
同図Bは同図AのII−II線断面図、第3図は本実施例の
別異の作用を示す装置の縦断面図、第4図は本発明の第
2実施例を示す装置の縦断面図である。 1……カムシャフト、3……揺動アーム、4……ドリブ
ンスプロケット(回転体)、5,6……クラッチ機構、7
……切替機構、8……位置決定機構、11……両腕部、1
8,19……シリンダ、20,21……ピストン、22,23……クラ
ッチスプリング。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】機関の駆動力が伝達される回転体と、該回
    転体と正逆相対回動可能に設けられたカムシャフトと、
    該カムシャフトの回転トルク変動により正逆相対回動す
    る前記回転体とカムシャフトの相対回動位置を規制する
    一対のクラッチ機構と、機関運転状態に応じて前記各ク
    ラッチ機構を相対的に切替作動させる切替機構とを備え
    た内燃機関のバルブタイミング制御装置において、 前記クラッチ機構は、回転体またはカムシャフトのいず
    れか一方の所定位置に固定された一対のシリンダと、該
    シリンダ内をそれぞれ摺動しかつ回転体またはカムシャ
    フトのいずれか一方に固定された揺動アームの両端部に
    それぞれの前端部が軸方向から当接する第1,第2ピスト
    ンと、該各ピストンの外周面に巻装され、各ピストンに
    対する締付けによる摩擦抵抗によって該各ピストンの伸
    縮動を互いに独立に規制するクラッチスプリングとを備
    えていると共に、前記切替機構により前記各クラッチス
    プリングの緊締と弛緩を相対的に切り替えるように構成
    したことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御
    装置。
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