JP3136779B2 - 可変バルブタイミング機構の油圧制御装置 - Google Patents

可変バルブタイミング機構の油圧制御装置

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JP3136779B2
JP3136779B2 JP17832092A JP17832092A JP3136779B2 JP 3136779 B2 JP3136779 B2 JP 3136779B2 JP 17832092 A JP17832092 A JP 17832092A JP 17832092 A JP17832092 A JP 17832092A JP 3136779 B2 JP3136779 B2 JP 3136779B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は内燃機関における吸気
バルブ或いは排気バルブの開閉タイミングを可変にする
ために油圧によって駆動される可変バルブタイミング機
構に係り、詳しくはその油圧制御装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の油圧駆動タイプのバルブ
制御装置として、例えば特開昭59−120707号公
報に開示されたものが知られている。この従来のバルブ
制御装置では、カムシャフトの一端部にエンジンのクラ
ンクシャフトに駆動連結されたスリーブ(タイミングプ
ーリ)が設けられており、そのタイミングプーリとカム
シャフトとの間にはリングピストン(リングギヤ)が介
在されている。リングギヤはその内外周に設けられた歯
の少なくとも一方がヘリカル歯となっており、リングギ
ヤは軸方向への移動によってカムシャフトと相対回動可
能となっている。又、リングギヤの軸方向一端側には、
油圧ポンプ等からの油圧が油路を通じて供給されるよう
になっている。更に、その油圧に対抗するように、リン
グギヤの他端側には釣り合い用スプリングが設けられて
いる。そして、油圧がリングギヤの一端側に加えられる
ことにより、リングギヤがスプリングの付勢力に抗して
軸方向へ動かされる。これより、カムシャフトにはタイ
ミングプーリに対する捩じりが付与され、カムシャフト
とタイミングプーリとの回転方向における位相(回転位
相)が変更され、吸気バルブ或いは排気バルブの開閉タ
イミングが変更されてバルブオーバラップが制御され
る。
【0003】この従来のバルブ制御装置では、リングギ
ヤに作用する油圧を制御するために油路の途中に電磁弁
が設けられている。そして、その電磁弁がエンジンの各
種駆動パラメータに基づいてコンピュータによりデュー
ティ制御されるようになっている。従って、電磁弁がデ
ューティ制御されることにより、そのデューティ周波数
に同期して変動する油圧がリングギヤの軸方向一端側に
加えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来の
バルブ制御装置では、カムシャフトが回転駆動されてい
るときに、そのカムシャフトの周期的なトルク変動の反
力がリングギヤに入力されることから、リングギヤには
周期的な軸方向の変動荷重(スラスト力)が加わってい
た。又、ヘリカル歯を備えたリングギヤでは、その軸方
向の動きに対して多少のフリクションを有するものであ
った。
【0005】従って、リングギヤのフリクションが相対
的に小さい場合には、次のような問題があった。即ち、
リングギヤの移動ストローク両端位置では、スプリング
の付勢力或いは油圧力が最も大きいことから、リングギ
ヤに加わる周期的なスラスト力の影響は極めて少ない。
しかしながら、電磁弁のデューティ制御によりリングギ
ヤが中間位置に保持される場合には、その位置がスプリ
ングの付勢力と油圧力との釣り合いによって決定され
る。このため、その釣り合い状態でリングギヤに周期的
なスラスト力が更に加わることにより、リングギヤの位
置制御が不安定となる。よって、リングギヤが不用意に
動いてヘリカル歯の摩耗やオイルシール摩耗、或いは機
構自体の耐久性が損なわれるおそれがあった。
【0006】一方、リングギヤのフリクションが相対的
に大きい場合には、次のような問題があった。即ち、リ
ングギヤのフリクションはリングギヤの動きに対するヒ
ステリシスとして存在する。従って、そのヒステリシス
が大きい場合には、特にリングギヤを中間位置から移動
させようとした場合に、その応答性に対して影響があっ
た。例えば、リングギヤを僅かに移動させるために、リ
ングギヤに加わる油圧を僅かに増減させた場合には、そ
の油圧変化がヒステリシスの中に埋もれてしまうおそれ
があった。よって、リングギヤの動き始めが遅くなり、
その位置制御が非線形なものになり易かった。
【0007】この発明は前述した事情に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、リングギヤを油圧によって
駆動させることによりバルブタイミングを可変にする可
変バルブタイミング機構において、バルブタイミングの
位相を可変とする場合に迅速な作動応答性を確保するこ
とが可能で、リングギヤを中間位置に保持させる場合に
はその位置制御を安定化させることの可能な可変バルブ
タイミング機構の油圧制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明においては、内燃機関のシリンダヘッド
にて回転可能に設けられ、吸排気用のバルブを開閉駆動
させるカムシャフトと、そのカムシャフトの一端部に設
けられて内燃機関のクランクシャフトに駆動連結された
タイミングプーリと、内外周に設けれた歯の少なくとも
何れか一方がヘリカル歯であり、カムシャフトとタイミ
ングプーリとの間に介在されて両者を連結すると共に、
軸方向への移動によってカムシャフトと相対回動可能な
リングギヤとを備え、カムシャフトとタイミングプーリ
との間において、リングギヤの軸方向端側に油路を通じ
て油圧を加えることにより、リングギヤを軸方向へ移動
させながら回動させてカムシャフトに捩じりを付与する
可変バルブタイミング機構の油圧制御装置であって、油
路の途中に設けられ、リングギヤへの油圧の供給を制御
すべく開閉駆動される制御弁と、吸排気用のバルブを開
閉駆動させる際に発生するカムシャフトのトルク変動周
期と同期したデューティ周波数に基づいて制御弁をデュ
ーティ制御するデューティ制御手段とを備えている。
【0009】
【作用】上記の構成によれば、クランクシャフトに連動
してタイミングプーリが回転駆動されることにより、そ
の駆動力がタイミングプーリからリングギヤを介してカ
ムシャフトに伝達され、カムシャフトが回転駆動され
る。又、デューティ制御手段により、吸排気用のバルブ
を開閉駆動させる際に発生するカムシャフトのトルク変
動周期と同期したデューティ周波数に基づいて制御弁が
デューティ制御される。このため、リングギヤの軸方向
端側には、油路を通じ、デューティ周波数に同期した変
動周期をもって油圧力が加えられる。
【0010】ここで、カムシャフトが回転駆動されると
きに、リングギヤの軸方向一端側にデューティ周波数に
応じて周期的に変動する油圧力が加えられることによ
り、リングギヤは軸方向へ移動されながら回動される。
これにより、カムシャフトに捩じりが付与されてカムシ
ャフトとタイミングプーリとの間の回転方向における位
相(回転位相)が変えられ、吸排気用のバルブの開閉タ
イミングが変更される。そして、このようにカムシャフ
トの回転位相を変化させる際、デューティ制御手段によ
り、カムシャフトのトルク変動周期と同位相で同期させ
たデューティ周波数に基づき制御弁をデューティ制御す
る。これにより、カムシャフトのトルク変動の反力に起
因した周期的なスラスト力がリングギヤへ加えられ、周
期的に変動する油圧力に上乗されて付加される。従っ
て、油圧力とスラスト力との合力が、リングギヤの軸方
向の移動のために付与される。
【0011】一方、リングギヤをその移動ストロークの
中間位置に保持させる際、デューティ制御手段により、
カムシャフトのトルク変動周期に対し反転する位相で同
期させたデューティ周波数に基づき制御弁をデューティ
制御する。これにより、リングギヤの軸方向一端側に周
期的に加えられる油圧力が、カムシャフトのトルク変動
の反力に起因するスラスト力を打ち消し合うように作用
し、そのスラスト力の影響によってリングギヤが動かさ
れることはない。
【0012】
【実施例】
(第1実施例)以下、この発明における可変バルブタイ
ミング機構の油圧制御装置をガソリンエンジンに具体化
した第1実施例を図1〜図6に基づいて詳細に説明す
る。
【0013】図1はこの実施例の可変バルブタイミング
機構(以下単に「VVT」という)1とそのVVT1を
駆動させるための油圧制御装置を示す概略構成図であ
る。VVT1は吸排気用のバルブを開閉するためのカム
シャフト2を備え、カムシャフト2はそのカムジャーナ
ル2aにて図示しないエンジンのシリンダヘッド3に回
転可能に支持されている。この実施例では、エンジンに
おいて図示しない吸気バルブ、排気バルブがそれぞれ別
々のカムシャフトにより開閉駆動されるようになってお
り、そのうち上記のカムシャフト2は吸気バルブに対応
している。カムシャフト2の先端部上には、タイミング
プーリ4がそのボス部4aにて相対回転可能に装着され
ている。このタイミングプーリ4の外周には外歯4bが
形成されており、同プーリ4の軸方向(同図の左右方
向)一側には収容凹部4cが形成されている。又、その
収容凹部4cを塞ぐように、カムシャフト2の先端には
キャップ5がボルト6により締付け固定されると共に、
ノックピン7により回り止めされている。更に、収容凹
部4cの開口端側とキャップ5の外周との間には、その
タイミングプーリ4に圧入固定されたアウタープレート
8と、キャップ5に一体形成されたインナープレート9
等とからなる緩衝用の周知の粘性継手(ビスカスカップ
リング)10が設けられている。更に又、キャップ5と
アウタープレート8との間、及びキャップ5とタイミン
グプーリ4との間には、それぞれシール部材11が介在
されている。
【0014】上記のタイミングプーリ4とカムシャフト
2との間にはリングギヤ12が介在され、両者4,2が
連結されている。即ち、キャップ5により閉塞されたタ
イミングプーリ4の収容凹部4cには、リングギヤ12
が収容されている。このリングギヤ12は、その内外周
に設けられた歯12a,12bの両方がヘリカル歯にな
っている。又、リングギヤ12の各歯12a,12b
は、タイミングプーリ4のボス部4aに形成された内歯
4dと、キャップ5の内周に形成された内歯5aとにそ
れぞれ噛み合わされている。この構成によって、リング
ギヤ12が軸方向へ移動されることにより、同ギヤ12
がカムシャフト2と相対回動可能になっている。更に、
タイミングプーリ4はその外歯4bに掛装されたタイミ
ングベルト13を介して、図示しないクランクシャフト
に駆動連結されている。
【0015】従って、クランクシャフトの動力がタイミ
ングベルト13を介してタイミングプーリ4に伝達され
ることにより、リングギヤ12で連結されたタイミング
プーリ4とキャップ5とが一体的に回転されてカムシャ
フト2が回転駆動される。この時、リングギヤ12が軸
方向へ移動されることにより、カムシャフト2にタイミ
ングプーリ4に対する捩じりが付与される。又、カムシ
ャフト2に捩じりが付与される際に、リングギヤ12の
バックラッシに起因するガタツキは、ビスカスカップリ
ング10の作用によって緩衝され、異音の発生が抑えら
れる。
【0016】リングギヤ12を油圧により駆動させるた
めに、収容凹部4cにおいて、リングギヤ12の軸方向
一端側は、作動油による油圧が導入される加圧室14と
なっている。又、同じく収容凹部4cにおいて、リング
ギヤ12の他端側は、その油圧に対抗する釣り合い用の
スプリング15が収容されるスプリング室16となって
いる。更に、加圧室14に作動油による油圧を供給する
ために、シリンダヘッド3及びカムシャフト2には、互
いに連通するヘッド油路17及びシャフト油路18がそ
れぞれ形成されている。
【0017】一方、タイミングプーリ4及びカムシャフ
ト2の一部には、加圧室14からスプリング室16へ洩
れ出た作動油を導出するための戻し油路19,20が形
成されている。又、タイミングプーリ4の一端側におい
て、同プーリ4とシリンダヘッド3との間にはシール部
材21が介在されており、それらタイミングプーリ4、
シリンダヘッド3、カムシャフト2及びシール部材21
によって囲まれた空間が油回収室22となっている。そ
して、その油回収室22には戻し油路19,20が連通
されている。更に、カムシャフト2の下方にて、シリン
ダヘッド3の一部には、油回収室22にて回収された作
動油をエンジンのオイルパン23へ戻すための油戻し穴
24が形成されている。
【0018】尚、この実施例では、内外周の各歯12
a,12bの傾き角等によって決まるリングギヤ12の
フリクションが相対的に小さくなるように設定されてい
る。この実施例では、作動油としてエンジンの潤滑油が
利用されている。即ち、潤滑油のための一系統の油圧回
路を構成するオイルポンプ25はエンジンに連動して駆
動され、それによってオイルパン23に貯留された潤滑
油がオイルフィルタ26を介して吸い上げられる。オイ
ルポンプ25とヘッド油路17との間にはメイン油路2
7が接続されており、そのメイン油路27の途中には、
ソレノイド式で三方式の制御弁28が設けられている。
この制御弁28はデューティ制御されるものであり、そ
の特性を図3のグラフに示す。このグラフからも分かる
ように、制御弁28は入力指令値としてのデューティ比
のある範囲内で、デューティ比に対する出力としての油
圧が比例するようになっている。即ち、デューティ比の
ある範囲内では、デューティ比が増加するのに伴って油
圧が増大するようになっている。そして、制御弁28に
て制御される油圧が増大することにより、カムシャフト
2の回転位相が進角される。
【0019】従って、オイルポンプ25の駆動中に、制
御弁28のオン・オフがデューティ制御されてメイン油
路27が周期的に開閉されることにより、オイルポンプ
25より吐出された潤滑油が作動油としてある油圧をも
ってヘッド油路17へ供給される。ヘッド油路17へ供
給された作動油は、更にシャフト油路18を通じて加圧
室14へと導入される。そして、その作動油の油圧によ
りリングギヤ12がスプリング15の付勢力に抗して軸
方向の一方(同図の右方向)へ押圧される。これによ
り、カムシャフト2に捩じりが付与され、カムシャフト
2のタイミングプーリ4に対する回転位相が変更され
る。その結果、吸気バルブの開閉タイミングが変えら
れ、吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバラップが
変更される。
【0020】一方、制御弁28がオフされることによ
り、ヘッド油路17への作動油の供給が遮断される。こ
れにより、加圧室14から油圧が抜け、リングギヤ12
がスプリング15の付勢力によって軸方向の他方(同図
の左方向)へ押圧されて戻される。これにより、カムシ
ャフト2に逆の捩じりが付与され、カムシャフト2の回
転位相が復帰変更される。その結果、吸気バルブの開閉
タイミングが変えられてバルブオーバラップが変更され
る。この時、加圧室14からスプリング室16へ洩れ出
た作動油は、戻し油路19,20を通じて油回収室22
へと導かれ、更に油戻し穴24を通じてオイルパン23
へと戻される。
【0021】この実施例では、制御弁28が、デューテ
ィ制御手段を構成する電子制御装置(以下単に「EC
U」という)31により、エンジンの運転状態に応じて
制御されるようになっている。ECU31は中央処理装
置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶し
たりCPUの演算結果等を一時記憶したりする各種メモ
リ等と、これら各部と外部入力回路及び外部出力回路等
とをバスによって接続した理論演算回路として構成され
たものである。
【0022】エンジンの運転状態を検出する各種センサ
として、図示しないエンジンの吸気通路にはその吸入空
気量Qを検出するエアフローメータ32が設けられてい
る。又、エンジンのシリンダブロックにはその冷却水の
温度(冷却水温)THWを検出する水温センサ33が設
けられている。更に、排気バルブ側のVVT1を構成し
ていないカムシャフト近傍には、そのカムシャフトの回
転からクランクシャフトの回転を所定の角度間隔で検知
し、エンジン回転数NEを求めるためのクランク角信号
CASとして出力するクランク角センサ34が設けられ
ている。更に又、吸気バルブ側のVVT1を構成するカ
ムシャフト2の基端部には、そのカムシャフト2の回転
を所定の角度間隔で検知し、カム角基準信号CBSとし
て出力するカム角センサ35が設けられている。このカ
ム角センサ35は、クランク角センサ34との比較によ
り進角値を算出すると共に、制御弁28をオン・オフす
るための基準タイミングを算出するために設けられてい
る。このカム角センサ35は、カムシャフト2の回転に
連動して回転されるタイミングロータ36と、ピックア
ップコイル37とから構成されている。タイミングロー
タ36の外周には、カムシャフト2上の図示しないカム
山の数に整合する複数の突起36aが形成されている。
これら各突起36aは、各カム山により吸気バルブが開
閉駆動される際にカムシャフト2で発生するトルク変動
の周期に整合するように配置されている。この実施例で
は、トルク変動のレベルが最低となる位置に整合するよ
うに各突起36aが配置されている。又、ピックアップ
コイル37は各突起36aに対向して配置されている。
そして、クランクシャフトの回転に伴ってタイミングロ
ータ36が回転されることにより、ピックアップコイル
37では各突起36aの通過が検知され、カム角信号C
BSはトルク変動レベルが最低となる位置に整合するト
リガパルスとして周期的に出力されるようになってい
る。
【0023】この実施例では、ECU31の外部入力回
路に前述したエアフローメータ32、水温センサ33、
クランク角センサ34及びカム角センサ35がそれぞれ
接続されている。又、ECU31の外部出力回路に制御
弁28が接続されている。そして、ECU31はVVT
1によるバルブタイミング制御を司るために、エアフロ
メータ32及び各センサ33〜35からの出力信号に基
づきその時々のエンジン運転状態に応じた吸気バルブの
開閉タイミングを決定し、制御弁28を好適に駆動制御
するようになっている。
【0024】次に、前述したECU31により実行され
るバルブタイミング制御のための処理動作について説明
する。図2のフローチャートはECU70により実行さ
れる「バルブタイミング制御ルーチン」を示しており、
エンジンの運転中に所定時間毎の定時割り込みで実行さ
れる。
【0025】処理がこのルーチンへ移行すると、先ずス
テップ101において、エアフローメータ32、水温セ
ンサ33、クランク角センサ34及びカム角センサ35
からの各出力信号に基づき、吸入空気量Q、冷却水温T
HW、クランク角信号CAS及びカム角信号CBSをそ
れぞれ読み込む。
【0026】続いて、ステップ102において、今回読
み込まれた冷却水温THWが所定の基準温度T0よりも
高いか否かを判断する。ここで、冷却水温THWが基準
温度T0よりも高くない場合は、エンジンが充分に暖ま
っていない始動時であるものとして、そのままその後の
処理を一旦終了する。
【0027】一方、ステップ102において、冷却水温
THWが基準温度T0よりも高い場合には、エンジンが
充分に暖まった始動後であるものとしてステップ103
へ移行し、ステップ103〜ステップ109の一連の処
理を実行する。
【0028】即ち、先ずステップ103においては、今
回読み込まれたクランク角信号CAS及びカム角信号C
BSに基づき、エンジン回転数NE及びカムシャフト2
の現在進角値θ0を算出する。
【0029】次に、ステップ104において、今回読み
込まれた吸入空気量Q、今回算出されたエンジン回転数
NEに基づき、エンジンの負荷相当値Q/Nを算出す
る。そして、ステップ105において、今回算出された
エンジン回転数NE及び負荷相当値Q/Nに基づき、カ
ムシャフト2の目標進角値θを算出する。この目標進角
値θの算出は、図4に示すように、エンジン回転数NE
及び負荷相当値Q/Nに対する目標進角値θの関係を予
め定めてなるマップを参照して行われる。
【0030】続いて、ステップ106においては、目標
進角値θと現在進角値θ0との進角値偏差(θ−θ0)
に基づき、今回のデューティ加算値Rを算出する。この
デューティ加算値Rの算出は、図5に示すように、進角
値偏差(θ−θ0)に対するデューティ加算値Rの関係
を予め定めてなるマップを参照して行われる。
【0031】又、ステップ107において、前回求めら
れたデューティ比RBに今回求められたデューティ加算
値Rを加算し、その結果を今回のデューティ比RAとし
て設定する。
【0032】更に、ステップ108において、今回求め
られたエンジン回転数NE及びデューティ比RAに基づ
き、制御弁28をデューティ制御するための通電時間R
Tを算出する。この通電時間RTの算出は、エンジン回
転数NE及びデューティ比RAに対する通電時間RTの
関係を予め定めてなる図示しないマップを参照して行わ
れる。
【0033】そして、ステップ109において、今回求
められた通電時間RTに基づき制御弁28をデューティ
制御する。この実施例では、カムシャフト2で発生する
トルク変動の周期に対して反転した位相で同期させたデ
ューティ周波数に基づき通電時間RTを制御弁28のソ
レノイドへ出力し、その後の処理を一旦終了する。
【0034】以上のようにしてバルブタイミング制御の
処理動作が実行される。ここで、この実施例のバルブタ
イミング制御の作用を図6のタイムチャートに従って説
明する。
【0035】このタイムチャートは、カムシャフト2で
発生するトルク変動、それに起因するリングギヤ12で
のスラスト力、カム角センサ35からのトリガパルス、
制御弁28のソレノイドに対する通電、リングギヤ12
に対する油圧、及び油圧力,スプリング力,スラスト力
の合力の変化の関係を示している。
【0036】このタイムチャートからも分かるように、
カムシャフト2のトルク変動は周期的に発生し、それに
起因するリングギヤ12のスラスト力は、トルク変動の
周期に対して反転した周期で発生することになる。そし
て、制御弁28のソレノイドでは、リングギヤ12のス
ラスト力が最大となるタイミングに同期したトリガパル
スを基準にして通電時間RTの通電が開始される。その
結果、リングギヤ12に加わる油圧は、リングギヤ12
のスラスト力の周期に対して反転した周期をもって変動
することになる。
【0037】従って、カムシャフト2の回転位相を最大
限に進角させるべく制御弁28がデューティ制御された
場合には、加圧室14に最大限の油圧が供給され、リン
グギヤ12はスプリング15の付勢力(スプリング力)
に抗して図1の右端位置まで移動される。又、カムシャ
フト2の回転位相を最大限に遅角させるべく制御弁28
がオフされた場合には、加圧室14に油圧が作用しない
状態となり、リングギヤ12はスプリング力によって図
1の左端位置まで移動される。そして、このようにリン
グギヤ12が右端位置或いは左端位置へ移動された状態
では、リングギヤ12にかかる油圧力或いはスプリング
力が充分に大きいことから、リングギヤ12にかかるス
ラスト力の有無にかかわらずリングギヤ12は比較的安
定した状態で位置保持される。
【0038】一方、カムシャフト2の回転位相を中程度
に進角させるべく制御弁28がデューティ制御された場
合には、図1に示すように、リングギヤ12は油圧とス
プリング力との釣り合いによってその移動ストロークの
中間位置に保持される。そして、この実施例では、制御
弁28のデューティ制御が、カムシャフト2のトルク変
動の周期に対し反転する位相で同期させたデューティ周
波数に基づいて行われている。つまり、リングギヤ12
に加わる油圧力がスラスト力の周期に対して反転した周
期で変動するように制御弁28がデューティ制御され
る。このため、リングギヤ12に周期的に加えられる油
圧力が、カムシャフト2のトルク変動に起因してリング
ギヤ12に周期的に付加されるスラスト力を打ち消し合
うように作用することになる。
【0039】従って、この実施例のように、リングギヤ
12のフリクションが相対的に小さい場合には、図6
(f)に実線で示すように、リングギヤ12に作用する
油圧力、スプリング力及びスラスト力の合力の変動幅が
非常に小さなものとなり、リングギヤ12のフリクショ
ン幅を越えることが無くなる。その作用は、同図に破線
で示されるリングギヤ12に一定の油圧を供給させた場
合との比較からも明らかである。よって、カムシャフト
2のトルク変動に起因するスラスト力によってリングギ
ヤ12が動かされることがなくなる。
【0040】その結果、リングギヤ12を中間位置に保
持させる場合には、その位置制御を安定化させることが
できる。更にその結果として、リングギヤ12の不用意
な動きを防止することができ、延いてはリングギヤ12
のヘリカル歯における摩耗や、そのオイルシール摩耗、
或いはリングギヤ12自体の耐久性の低下を防止するこ
とができる。
【0041】(第2実施例)次に、この発明における可
変バルブタイミング機構の油圧制御装置を具体化した第
2実施例を図7及び図8に基づいて説明する。尚、この
実施例の構成は前記第1実施例のそれと同じであるもの
として、同一の構成部材には同一の符号を付して説明を
省略し、以下に異なった点を中心に説明する。
【0042】この実施例では、内外周の各歯12a,1
2bの傾き角度等によって決まるリングギヤ12の軸方
向におけるフリクションが相対的に大きくなるように設
定されている。又、ECU31により実行されるバルブ
タイミング制御の処理動作について前記第1実施例のそ
れと異なっている。即ち、図7のフローチャートはEC
U70により実行される「バルブタイミング制御ルーチ
ン」を示しており、エンジンの運転中に所定時間毎の定
時割り込みで実行される。
【0043】このフローチャートにおいて、ステップ2
01〜ステップ208の処理については、前記第1実施
例における図2のフローチャートの処理と同じであるこ
とから、説明を省略し、特に異なったステップ209の
処理について説明する。
【0044】即ち、ステップ209においては、今回求
められた通電時間RTに基づき制御弁28をデューティ
制御する。この実施例では、カムシャフト2のトルク変
動の周期と同位相で同期させたデューティ周波数に基づ
き、通電時間RTを制御弁28のソレノイドへ出力し、
その後の処理を一旦終了するのである。
【0045】ここで、この実施例のバルブタイミング制
御の作用を図6に準ずる図8のタイムチャートに従って
説明する。このタイムチャートからも分かるように、カ
ムシャフト2のトルク変動は周期的に発生し、それに起
因するリングギヤ12のスラスト力は、トルク変動の周
期に対して反転した周期で発生することになる。そし
て、制御弁28のソレノイドでは、リングギヤ12のス
ラスト力が最大となるタイミングに同期したトリガパル
スを基準にして通電時間RTの通電が終了される。その
結果、リングギヤ12に加わる油圧力は、リングギヤ1
2のスラスト力の周期と同位相の周期をもって変動する
ことになる。
【0046】従って、カムシャフト2の回転位相を進角
させるべく制御弁28がデューティ制御された場合に
は、加圧室14に油圧が供給され、リングギヤ12はス
プリング力に抗して図1の右方向へと移動される。そし
て、この実施例では、制御弁28のデューティ制御が、
カムシャフト2のトルク変動周期と同位相で同期させた
デューティ周波数に基づいて行われている。つまり、リ
ングギヤ12に加わる油圧力がスラスト力の周期と同位
相の周期で変動するように制御弁28がデューティ制御
される。このため、カムシャフト2のトルク変動に起因
したスラスト力がリングギヤ12へ加えられ、リングギ
ヤ12に周期的に加えられる油圧力に上乗せされて付加
される。
【0047】従って、この実施例のように、リングギヤ
12のフリクションが相対的に大きい場合には、図8
(f)に実線で示すように、油圧力、スプリング力及び
スラスト力の合力が、リングギヤ12の軸方向の移動の
ために付与される。そして、その合力の変動幅はリング
ギヤ12のフリクション幅とほぼ同等となる。その作用
は、同図に破線で示されるリングギヤ12に一定の油圧
を供給させた場合との比較からも明らかである。
【0048】その結果、リングギヤ12のフリクション
が大きくても、リングギヤ12を軸方向へ移動させるの
に充分な合力が得られ、リングギヤ12の移動応答性を
向上させることができる。例えば、制御弁28のデュー
ティ制御によりリングギヤ12にかかる油圧力を僅かに
増減させた場合でも、その油圧変化がフリクションに起
因するヒステリシスの中に埋もれてしまうことがなくな
り、リングギヤ12を迅速に動かすことができる。よっ
て、リングギヤ12の位置制御をより線形に近いかたち
で行うことができ、VVT1によりバルブタイミングを
可変とする際の迅速な作動応答性を確保することができ
る。
【0049】尚、この発明は前記各実施例に限定される
ものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成の一
部を適宜に変更して次のように実施することもできる。 (1)前記各実施例では、リングギヤ12の軸方向一端
側に一系統の油圧回路を用いて油圧を供給することによ
りリングギヤ12を移動させるようにしたが、リングギ
ヤの軸方向両端に二系統の油圧回路を用いて油圧を供給
することによりリングギヤを移動させるようにしてもよ
い。
【0050】(2)前記各実施例では、吸気バルブの開
閉タイミングのみを可変とするVVT1を設けたが、排
気バルブの開閉タイミングのみを可変とするVVTや吸
気バルブ及び排気バルブの両方の開閉タイミングをそれ
ぞれ可変とするVVTを設けることもできる。
【0051】(3)前記各実施例では、VVT1の油圧
制御装置をガソリンエンジンに具体化したが、VVTの
油圧制御装置をディーゼルエンジンに具体化することも
できる。
【0052】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、リングギヤを油圧によって駆動させることによりバ
ルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構
において、リングギヤへの油圧の供給を制御すべく開閉
駆動される制御弁を、吸排気用のバルブを開閉駆動させ
る際に発生するカムシャフトのトルク変動周期と同期し
たデューティ周波数に基づいてデューティ制御してい
る。このため、制御弁の開閉周期をカムシャフトのトル
ク変動周期と同相で同期させた場合には、このカムシャ
フトのトルク変動に起因した周期的なスラスト力が、
ューティ周波数に合わせて周期的に変動する油圧力を増
大させるようこれに上乗せされてリングギヤに付加され
ようになる。従って、バルブタイミングを変更する場
合において迅速な作動応答性を確保することが可能にな
る。一方、制御弁の開閉周期をカムシャフトのトルク変
動周期と逆相で同期させた場合には、上記デューティ周
波数に合わせて周期的に変動する油圧力が上記カムシャ
フトのトルク変動に起因してリングギヤに周期的に付加
されるスラスト力を打ち消し合うように作用する。その
結果、リングギヤを中間位置に保持させる場合にはその
位置制御を安定化させることが可能になるという優れた
効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を具体化した第1実施例における可変
バルブタイミング機構と同機構を駆動させるための油圧
制御装置を示す概略構成図である。
【図2】第1実施例において、ECUにより実行される
「バルブタイミング制御ルーチン」を示すフローチャー
トである。
【図3】第1実施例においてデューティ制御される制御
弁の特性を示し、デューティ比に対する油圧の関係を示
すグラフである。
【図4】第1実施例において、エンジン回転数及び負荷
相当値に対する目標進角値の関係を予め定めてなるマッ
プである。
【図5】第1実施例において、目標進角値と現在進角値
との進角値偏差に対するデューティ加算値の関係を予め
定めてなるマップである。
【図6】第1実施例において、カムシャフトのトルク変
動、リングギヤのスラスト力、カム角センサのトリガパ
ルス、制御弁のソレノイドに対する通電、リングギヤに
対する油圧、及び油圧力,スプリング力,スラスト力の
合力の変化の関係を示すタイムチャートである。
【図7】この発明を具体化した第2実施例において、E
CUにより実行される「バルブタイミング制御ルーチ
ン」を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例において、カムシャフトのトルク変
動、リングギヤのスラスト力、カム角センサのトリガパ
ルス、制御弁のソレノイドに対する通電、リングギヤに
対する油圧、及び油圧力,スプリング力,スラスト力の
合力の変化の関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
2…カムシャフト、3…シリンダヘッド、4…タイミン
グプーリ、12…リングギヤ、12a,12b…歯、1
7…ヘッド油路、18…シャフト油路、27…メイン油
路、28…制御弁、31…デューティ制御手段を構成す
るECU。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F01L 1/34

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関のシリンダヘッドにて回転可能
    に設けられ、吸排気用のバルブを開閉駆動させるカムシ
    ャフトと、 前記カムシャフトの一端部に設けられて前記内燃機関の
    クランクシャフトに駆動連結されたタイミングプーリ
    と、 内外周に設けれた歯の少なくとも何れか一方がヘリカル
    歯であり、前記カムシャフトと前記タイミングプーリと
    の間に介在されて両者を連結すると共に、軸方向への移
    動によって前記カムシャフトと相対回動可能なリングギ
    ヤとを備え、前記カムシャフトと前記タイミングプーリ
    との間において、前記リングギヤの軸方向端側に油路を
    通じて油圧を加えることにより、前記リングギヤを軸方
    向へ移動させながら回動させて前記カムシャフトに捩じ
    りを付与する可変バルブタイミング機構の油圧制御装置
    であって、 前記油路の途中に設けられ、前記リングギヤへの油圧の
    供給を制御すべく開閉駆動される制御弁と、 前記吸排気用のバルブを開閉駆動させる際に発生する前
    記カムシャフトのトルク変動周期と同期したデューティ
    周波数に基づいて前記制御弁をデューティ制御するデュ
    ーティ制御手段とを備えたことを特徴とする可変バルブ
    タイミング機構の油圧制御装置。
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