JP2887699B2 - 高分子量ポリイミドイルアミジンとポリトリアジン - Google Patents

高分子量ポリイミドイルアミジンとポリトリアジン

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JP2887699B2
JP2887699B2 JP3029180A JP2918091A JP2887699B2 JP 2887699 B2 JP2887699 B2 JP 2887699B2 JP 3029180 A JP3029180 A JP 3029180A JP 2918091 A JP2918091 A JP 2918091A JP 2887699 B2 JP2887699 B2 JP 2887699B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヘキサフルオロプロピ
レンオキシド(以下、屡々HFPOと略記する)から製
造される高分子量のポリイミドイルアミジン(以下、屡
々PIAと略記する)および該PIAから誘導されるポ
リトリアジン(以下、屡々PTRと略記する)に関する
ものである。さらに詳しくは、本発明は、固有粘度0.
12〜0.60dl/gで表される高分子量の新規なPI
Aおよびその製造方法、高分子量PIAから誘導される
高分子量の新規なPTRに関するものである。
【0002】本発明で得られる高分子量PIAは、それ
自身有用なポリマーであるのみならず、そのイミドイル
アミジン基の反応性を利用して、各種の機能性ポリマー
に誘導することができる。それらのポリマーは、従来の
低分子量PIAからの誘導品にない高分子量に由来する
数多くの特性を有しており、産業上極めて有用な材料で
ある。
【0003】例えば、本発明による高分子量PIAから
は、容易に各種の高安定性の高分子量ポリトリアジンを
得ることができる。このポリトリアジンの中でも、特に
分子量が高いものは固体状物質であり、化学的に安定な
新規構造材料として有用である。また、高分子量のポリ
トリアジンは、高温でも充分な粘度を示すので、パーフ
ルオロポリエーテルよりなるフッ素系オイルあるいはフ
ッ素系グリースの粘度調節剤として有用である。
【0004】また、本発明によれば、特定の固有粘度範
囲のポリトリアジンが高温および/または高真空条件下
で使用可能な潤滑剤、磁気記録材料用潤滑剤または高安
定性トルク伝達油として有用であることを知見した。さ
らに、本発明によれば、特定の固有粘度範囲のポリイミ
ドイルアミジンが磁気記録材料用潤滑剤、または金属材
料およびセラミックス材料の表面処理剤として有用であ
ることを知見した。
【0005】
【従来の技術】一般にHFPO系のPIAは、Rfo
(CN)2 で表されるHFPOオリゴマージニトリルと
アンモニアとの反応によって得られるが、その詳細なメ
カニズムはまだ解明されていない。しかし、基本的に
は、下記化5式および化6式で表される素反応によって
形成されるイミドイルアミジン基により、HFPO由来
の二価残基が連結されたものと考えられる。
【0006】
【化5】
【0007】
【化6】
【0008】従来、二官能性HFPOオリゴマーからの
PIAの合成法は、各種報告されているが、これまでに
重量平均分子量が3×104 以上、あるいは固有粘度が
0.10dl/g以上の高分子量のPIAを合成した例は
知られていない。
【0009】例えば、従来のHFPO系PIAの製造法
としては、米国特許第4,242,498号明細書やイ
ンダストリアル・エナジニアリング・ケミストリー;プ
ロダクト・リサーチ・デブロープメント、20、p69
4,(1981)に示されているようなアンモニアのリ
フラックス条件下で Rfo(CN)2 とアンモニアを
反応させる方法(化7式)や
【化7】 米国特許第4,434,106号明細書やジャーナル・
オブ・ポリマー・サイエンス;ポリマー・レター・エデ
ィション・20、p467(1982)に示されている
下記化8、化9、化10および化11式
【0010】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】 のようにして、逐次的に分子量を増加させる方法が知ら
れている。
【0011】しかしながら、化7式の方法は、再現性が
悪く、また、高重合が困難なので実用性に乏しい。例え
ば、化7式の方法で得られたPTAは、流動性の粘性ポ
リマー状であり、その固有粘度としては0.095dl/
gが最高である。また、当該PIAをトリフルオロ酢酸
無水物で処理して、ポリトリアジンとしたものも、流動
性の粘性ポリマーであり、最高分子量は重量平均分子量
として2.8×104程度のものであり、その固有粘度
は0.11dl/gでしかない。
【0012】また、化8化9化10および化11
の方法は、高重合体を得ようとすると、多段の反応を繰
り返さなければならず、操作が非常に煩雑である。さら
に、重合度が高いPIAを製造しようとした場合には、
各ステップにおいて完全に予定どおりの反応を実現する
のが困難であり、また、各ステップにおける目的高重合
体の単離、精製も事実上不可能なので、実用的な方法と
は言えない。事実、この方法で製造されている最高の分
子量のPIAは、(IV)式のポリマーで重合度qが8のも
の(分子量が約1.4×104 )でしかない。
【0013】以上のようにして製造されるPIAは、下
記化12式
【化12】 (ただし、Rfはパーフルオロアルキル鎖またはパーフ
ルオロエーテル鎖を表し、Xはフッ素原子、塩素原子あ
るいは臭素原子を表す。)に示すように、酸無水物や酸
ハロゲン化物との反応により閉環して、安定なトリアジ
ン環で結合されたポリトリアジンに誘導できることが知
られている。
【0014】しかしながら、従来得られていた固有粘度
が0.10dl/g未満の低分子量のHFPO系PIAか
ら誘導されるポリトリアジン(PTR)は、分子量が低
いため流動性の粘性ポリマー状の物質なので、それ自身
では有用性が低く、これまで実用的な用途は見出されて
いなかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】以上にように、従来の
HFPO系のPIAの合成法は、操作が煩雑であるし、
生成したPIAの分子量も低いので、高分子量材料とし
ての有用性も限られている。
【0016】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
高分子量のHFPO系PIAの実用的な製造法を開発す
るため鋭意検討したところ、数平均分子量が1×103
〜5×104 で、かつ少なくとも95モル%の二官能性
純度を持つHFPOオリゴマーニトリルを出発物質とし
てアンモニアと反応させ、次いで、得られた生成物を再
びHFPOオリゴマージニトリルと特定の仕込み比で反
応させると、以外にも、従来得られていなかった高分子
量のPIAを得ることができることを知見した。
【0017】また、この高分子量PIAより簡単な操作
により高分子量PTRが合成される。この高分子量PT
Rは、従来の低分子量PTRとは異なる多くの優れた特
性を有しており、例えば、フッ素系オイルやフッ素系グ
リースの粘度調節剤その他の用途に極めて有用であるこ
とを知見した。本発明は、これらの新しい知見に基づき
完成したものである。
【0018】すなわち、本発明の一態様によれば、前記
化1で表される繰り返し単位よりなる固有粘度が0.1
2dl/g〜0.60dl/gの範囲内であるポリイミドイ
ルアミジンが提供される。なお、化1の各ユニットは同
じか、または異なっていてもよい。請求項1に規定する
ポリイミドイルアミジンは、化1においてRfoが化2
の場合に相当するものである。
【0019】また、本発明の他の態様によれば、前記
で表される繰り返し単位よりなり、固有粘度が0.1
5dl/g〜0.65dl/gのポリトリアジンが提供され
る。なお、化4の各ユニットは同じか、または異なって
いてもよい。請求項3に規定するポリトリアジンは、
においてRfoが化2の場合に相当するものである。
【0020】さらに、本発明の他の態様によれば、 (a)化3で表される数平均分子量が1×103 〜5×
104 で少なくとも95モル%の二官能性純度を有する
ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマージニトリ
ル(α)を、該オリゴマージニトリル(α)のモル数に
対して5倍モル以上のアンモニアと反応させ、 (b)この反応生成物に対し、化3で表される数平均分
子量が1×103 〜5×104 で少なくとも95モル%
の二官能性純度を有するヘキサフルオロプロピレンオキ
シドオリゴマー(β)を、該オリゴマージニトリル
(α)のモル数に対して0.60〜0.99のモル比で
反応させることによりなり、その際該オリゴマージニト
リル(α)および(β)は同じでも異なっていてもよ
い、前記化1で表される繰り返し単位よりなるポリイミ
ドイルアミジンの製造方法が提供される。なお、化1の
各ユニットは同じか、または異なっていてもよい。
た、本発明のポリイミドイルアミジンおよびポリトリア
ジンの用途は次のとおりである。 (1)下記化13で表される繰り返し単位よりなり、固
有粘度が0.02dl/ g〜0.60dl/gの範囲内
であるポリイミドイルアミジンよりなる磁気記録材料用
潤滑剤。
【化13】 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×10 3 〜5×1
4 の範囲であって、下記化14または前記化2
【化14】 で表される二官能性ヘキサフルオロプロピレンオキシド
オリゴマーの二価残基である。Aは炭素数2〜20のパ
ーフルオロアルキレン基である。mおよびnは正の整数
を表し、4≦m+n≦300であり、pは4〜300の
整数である。なお、化13の各ユニットは同じか、また
は異なっていてもよい。〕 (2)前記化13で表される繰り返し単位よりなり、固
有粘度が0.02dl/g〜0.60dl/gの範囲内
であるポリイミドイルアミジンよりなる金属材料用また
はセラミックス材料用表面処理剤。 (3)下記化15で表される繰り返し単位よりなり、固
有粘度が0.02dl/g〜0.25dl/gの範囲内
であるポリトリアジンよりなる高温および/または高真
空条件下での使用が可能な潤滑剤。
【化15】 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×10 3 〜5×1
4 の範囲であって、下記化14または化2で表される
二官能性ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマー
の二価残基である。Rは炭素数1〜15のパーフルオロ
アルキル基、または炭素数2〜100のパーフルオロエ
ーテル基、あるいはそれらの置換体を表す。なお、化1
5の各ユニットは同じか、または異なっていてもよ
い。〕 (4)前記化15で表される繰り返し単位よりなり、固
有粘度が0.02dl/g〜0.65dl/gの範囲内
であるポリトリアジンよりなる磁気記録材料用潤滑剤。 (5)前記化15で表される繰り返し単位よりなり、固
有粘度が0.05dl/g〜0.25dl/gの範囲内
であるポリトリアジンよりなるトルク伝達剤。 (6)下記化16で表される末端が安定化された構造を
とり、固有粘度が0.02dl/g〜0.65dl/g
の範囲内であるポリトリアジン。
【化16】 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×10 3 〜5×1
4 の範囲であって、化14または化2で表される二官
能性ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーの二
価残基である。RおよびR’は炭素数1〜15のパーフ
ルオロアルキル基、または炭素数2〜 100のパーフル
オロエーテル基から選ばれ、RおよびR’はいずれも複
数の種類のものからなっていてもよい。 n”は正の整数
であり、化16の固有粘度0.02dl/g〜0.65
dl/gに対応する繰り返し単位の数を表すものであ
る。化16中の繰り返し単位は、複数の種類からなって
いてもよい。〕
【0021】以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明によるポリイミドイルアミジンの製造方法に使用
される化3で表される二官能性オリゴマーRfo(C
N)2 は、各種の方法で合成可能であるが、通常は、
a’)二官能性重合開始剤を用いて合成された二官能性
のHFPOオリゴマーを原料とする方法、あるいは、
b’)エステル基を含有する単官能性重合開始剤を用い
て合成されたエステル基と酸フルオライド基〔または
−CF2 OM基(Mはアルカリ金属原子を表す)〕を含
有する二官能性のHFPOオリゴマーを原料とする方法
が採用される。
【0022】すなわち、化3で表されるオリゴマージニ
トリルRfo(CN)2 は、以下の合成例に示すよう
に、まず、上記のa’)法またはb’)法で得られた二
官能性のHFPOオリゴマーの末端をアミド化して、R
fo(CONH2 2 を合成し、次いで、五酸化リン等
を用いて脱水することにより合成される。その合成例を
式で表せば下記化17のようになる。
【化17】 (R’:低級アルキル基)
【0023】以下に a’)法および b’)法につい
て詳しく説明する。a’)二官能性重合開始剤によるH
FPOオリゴマーを原料とする方法二官能性のHFPO
オリゴマーは、各種の二官能性重合開始剤を用いたHF
POの重合により製造することができる。例えば、特公
昭53−5360号公報、特開昭47−6994号公
報、特開昭57−175185号公報、米国特許第3,
250,807号明細書に記載されているように、各種
のフッ素系ジカルボン酸フルオライドとフッ化セシウム
のようなアルカリ金属フッ化物との反応生成物を重合開
始剤とした方法で製造することができる。
【0024】HFPO重合開始剤の製造に使用されるフ
ッ素系ジカルボン酸フルオライドは、下記化18
【化18】 〔ただし、Zはパーフルオロアルキレン基、パーフルオ
ロエーテルの二価残基またはそれらの置換体、あるいは
結合を示す。〕で表される。
【0025】前記フッ素系ジカルボン酸フルオライドの
例としては、例えば、下記化19
【化19】 等のジカルボン酸フルオライドが使用できる。
【0026】前記化18で表されるジカルボン酸フルオ
ライドは、例えば、フッ化セシウムと反応させた場合に
は、下記化20
【化20】 CsOCF2 −Z−CF2 OCs で示されるような重合開始剤種を形成し、化20とHF
POとが反応することにより、下記化21
【0027】
【化21】 O ‖ (ただし、Bは −C−F または −CF2 OCsを表し、m,nは正の整数 であり、化21中の −CF2 ZCF2 −は化14中の−A−に相当する。) で表される二官能性HFPOオリゴマーが生成する。上
記化21で表されるオリゴマーの末端は、下記化22に
示す平衡状態にあるので、
【0028】
【化22】 O ‖ Bは −C−F− および −CF2 OCs のいずれの場合もとりうる。
【0029】また、パーフルオロケトンも下記のように
フッ化セシウムのようなアルカリ金属フッ化物と反応し
て、化20と類似の下記化23
【化23】 〔Rf1 、Rf2 はパーフルオロアルキル基を表す。〕
のようなアルコキサイド構造をとり、HFPOの重合開
始剤となるので、パーフルオロジケトンやパーフルオロ
構造の酸フルオライド基とケトン基を含有する物質とフ
ッ化セシウムのようなアルカリ金属フッ化物との組み合
わせも、HFPOの二官能性重合開始剤となる。
【0030】b’)エステル基を含有する単官能性重合
開始剤によるHFPOオリゴマーを原料とする方法 a’)法に記載のHFPOの重合方法と同様にして、下
記化24に示されるようなエステル基含有酸フルオライ
ドとフッ化セシウムのようなアルカリ金属フッ化物との
反応生成物を重合開始剤として、エステル基と酸フルオ
ライド〔または−CF2 OM基(Mはアルカリ金属原子
を表す)〕を含有する二官能性のHFPOオリゴマーが
合成される(化25、化26)。
【0031】
【化24】 (R’は炭素数1〜10のアルキル基であり、Z’は前
記化21中のZと同じである。)
【0032】
【化25】
【0033】
【化26】 (pは4〜300の間の整数であり、B’は化21中の
Bと同じであり、− Z'−CF2 −は化2中のA’に相当
する。)
【0034】上記の化24で表されるエステル基含有酸
フルオライドの例としては、例えば、下記化27のよう
なものが挙げられる。
【化27】
【0035】なお、R’の大きさとしては特に制限はな
いが、通常は炭素数1〜10のアルキル基が使用され、
特にメチル基、エチル基やプロピル基等の低級アルキル
基を含むものが合成や操作が容易で好ましい。上記のよ
うに、化14中のAおよび式化2中のA’は、二官能性
HFPOオリゴマー中の二官能性重合開始剤残基を表
し、パーフルオロアルキレン基である。
【0036】本発明においては、Aがパーフルオロアル
キレン基である場合には、その炭素数は2〜20、好ま
しくは2〜12、さらに好ましく2〜8である。また、
A’がパーフルオロアルキレン基である場合には、その
炭素数は1〜19、好ましくは2〜11、さらに好まし
くは2〜7である。AおよびA’の炭素数の上限は特に
ないが、通常は、AおよびA’の合成、精製のしやす
さ、原料の入手の容易さ、あるいは取扱いの容易さより
上記の範囲のものが選ばれるのであって、これらに限定
されるものではない。
【0037】化21または化26で表される二官能性H
FPOオリゴマーの末端基は、エステル基を経由して、
あるいは経由しないで容易にニトリル基に変換される。
この末端官能基の変換は、例えば、特公昭53−536
0号公報に記載されているような方法で実施することが
できる。すなわち、まず、両末端がエステル基であるオ
リゴマーは、化21あるいは化26のオリゴマー末端と
アルコールとの反応により形成することができる。
【0038】また、ニトリル基末端オリゴマーは、ま
ず、化21あるいは化26のオリゴマー末端とアンモニ
アとの反応、あるいは上記方法で得られた両末端がエス
テル基であるオリゴマーとアンモニアとの反応によりア
ミドを合成し、引き続いて、五酸化リン等の脱水剤によ
るアミド基の脱水反応を行うことにより得ることができ
る。
【0039】上記のように、化3 Rfo(CN)2
表されるHFPOオリゴマージニトリルは、二官能性H
FPOオリゴマーより誘導されるが、HFPOの重合に
よる二官能性オリゴマー合成の際には、大抵の場合は下
記化28で表される単官能性オリゴマーが副生する。
【化28】 O ‖ 〔式中、B’は −C−F または −CF2 OM(Mはアルカリ金属原子)、 lは正の整数〕。
【0040】本発明においてMで表されるアルカリ金属
としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウ
ム、ルビジウムを挙げることができ、好ましくはカリウ
ム、セシウム、ルビジウム、さらに好ましくはセシウム
である。本発明の反応に使用される Rfo(CN)2
に、上記の単官能性オリゴマーから誘導される片方の末
端のみがニトリル基である単官能性オリゴマーが混入し
ていると、そのオリゴマーが反応した場合には、PIA
形成の重合成長が停止してしまう。したがって、Rfo
(CN)2 中の単官能性オリゴマーの含量が多いと、高
分子量のPIAを得ることはできない。
【0041】それゆえ、本発明に使用されるRfo(C
N)2 としては、Rfo(CN)2と単官能性オリゴマ
ーの合計モル数に対するRfo(CN)2 のモル数の割
合、すなわち、Rfo(CN)2 の二官能性純度が少な
くとも95%のものが望ましい。また、特に高重合度の
PIAを合成しようとする場合には、Rfo(CN)2
の二官能性純度が少なくとも98%のもの、好ましくは
99%以上のもの、さらに好ましくは99.5%以上の
ものが使用される。
【0042】高純度HFPOジニトリルの原料である高
純度二官能性HFPOオリゴマーを合成するために、H
FPOモノマーや反応に使用する二官能性重合開始剤や
エステル基を含有する単官能性重合開始剤ならびに溶媒
を、特殊な方法により極めて高度に精製し、厳密にコン
トロールされた条件でHFPOを重合することにより単
官能性オリゴマーの生成を抑制することも可能である。
【0043】しかしながら、この方法は製造コストが高
くなるし、また、この方法においては、大抵の場合は、
どうしても、少量の単官能性オリゴマーが副生する場合
が多い。したがって、高純度の二官能性HFPOオリゴ
マーの取得法としては、できるならば、簡単に合成可能
な若干の単官能性オリゴマーを含む粗二官能性HFPO
オリゴマーから、簡単な操作で高純度オリゴマーを得る
方法が好ましい。
【0044】そこで、本発明者らは、簡単な操作で単官
能性オリゴマーを含む粗二官能性HFPOオリゴマーよ
り高純度二官能性HFPOオリゴマーを得る方法を見出
すため鋭意検討した結果、特定の構造の粗二官能性HF
POオリゴマーを、特定の条件下で蒸留することによ
り、驚くべきことに高純度の二官能性HFPOオリゴマ
ーが容易に得られることを見出した。
【0045】すなわち、本発明者らは、高純度二官能性
ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマージニトリ
ルを取得する次の方法を見出した。その方法は、 (1)次式 MO−A”−OM 〔式中、A”は炭素数2〜20のパーフルオロアルキレ
ン基であり、Mはアルカリ金属原子を示す〕で表される
二官能性重合開始剤を用いてヘキサフルオロプロピレン
オキシドを重合させて、数平均分子量が1,000〜1
5,000の下記化29
【化29】 〔ただし、A”は上に定義したとおりであり、m’およ
びn’は正の整数であり O ‖ 、B’は −C−F 基または −CF2 OM基(Mはアルカリ金属原子)を表 す。〕で表される二官能性ヘキサフルオロプロピレンオ
キシドオリゴマーと、化28で表される数平均分子量が
500〜15,000である単官能性ヘキサフルオロプ
ロピレンオキシドオリゴマーとの混合物を得、
【0046】(2)該二官能性および単官能性ヘキサフ
ルオロプロピレンオキシドオリゴマーの末端基をエステ
ル基、またはニトリル基に変換し、
【0047】(3)得られた混合物を80℃〜450℃
の温度で減圧蒸留することにより、該混合物の1重量%
〜35重量%を初期留分として除去することからなり、
その際、工程(2)において上記の二官能性および単官
能性ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマーの末
端基をエステル基に変換した場合には、該エステル基は
工程(3)の前または工程(3)の後のニトリル基に変
換する。
【0048】この方法により得られる高純度HFPOオ
リゴマージニトリルは、上記のポリイミドイルアミジン
(ただし、化1のRfoは化14により表される二価残
基である)の製造方法の出発物質として有利に用いるこ
とができる。化29の二官能性HFPOオリゴマーの合
成法と、その末端変性法は、化21の二官能性HFPO
オリゴマーの合成法とその末端変性法と同じである。
【0049】上記の高純度二官能性HFPOオリゴマー
ジニトリルの取得方法ないし精製方法は、二官能性HF
POオリゴマージニトリルのみならず、各種機能性高分
子材料の原料として有用な比較的分子量の高い二官能性
HFPOオリゴマーの精製にも適用することができるも
のである。上記精製方法に使用される二官能性HFPO
オリゴマーの分子量としては、450℃以下の温度で減
圧下の条件で不純物として混入している単官能性HFP
Oオリゴマーが蒸留除去できるものならば、特にそれ以
上の制限はない。しかしながら、通常は、二官能性HF
POオリゴマーの分子量は、数平均分子量として1,0
00から15,000、好ましくは2,000〜12,
000、さらに好ましくは3,500〜10,000の
範囲のものが本発明の精製方法に使用される。
【0050】二官能性HFPOオリゴマーの分子量が低
すぎる場合には、それより誘導されるポリマーにおい
て、HFPOオリゴマー鎖の特性を有効に発揮すること
はできないし、また、単官能性オリゴマーとの完全分離
が困難な場合が多い。一方、二官能性HFPOオリゴマ
ーの分子量が高すぎると、副生する単官能性HFPOオ
リゴマーの含量が顕著に増大し、その混合物からの高純
度の二官能性HFPOオリゴマーの取得が困難となる。
また、あまり分子量が高すぎると、蒸留に高温加熱が必
要となり、ポリマーが分解するので好ましくない。この
精製方法においては、化29で表される二官能性HFP
Oオリゴマーおよびそれと同時に副生する化28で表さ
れる単官能性HFPOオリゴマーは、工程(2)におい
て末端官能基をエステル基またはニトリル基に変換され
た後に、工程(3)において蒸留により分離される。上
記のポリイミドイルアミジンの製造方法の出発物質を得
るためには、工程(2)において上記の二官能性および
単官能性ヘキサフルオロプロピレンオキシドオリゴマー
の末端基をエステル基に変換した場合には、該エステル
基は工程(3)の前または工程(3)の後にニトリル基
に変換する。
【0051】本発明の前記エステル基への変換に使用さ
れるアルコールの種類としては、分子量があまり大きく
なく、かつ、生成したエステルが蒸留条件下で安定なも
のであれば、特にそれ以上の制限はない。通常には、メ
チルアルコールやエチルアルコールのような低級炭化水
素系アルコールが使用されるが、場合によっては、より
分子量の大きな炭化水素系アルコールや、含フッ素アル
コールあるいはチオール等を使用することも可能であ
る。
【0052】上記精製に使用される化29および化28
のそれぞれ特定の分子量のHFPOオリゴマーの末端基
をエステルあるいはニトリル基に変換した二官能性HF
POオリゴマーと副生成物である単官能性HFPOオリ
ゴマーとは、驚くべきことに高い蒸留分離性を示し、簡
単な蒸留装置により、二官能性HFPOオリゴマーを分
解することなく、安定にかつ効率的に両者を分離するこ
とができる。この精製法に使用される蒸留装置として
は、オリゴマーの分子量が比較的低い場合には、通常の
充填塔式あるいは棚段塔式の蒸留装置も使用できるが、
一般的には、単蒸留装置あるいはクーゲルロール式蒸留
装置やアーサー式蒸留装置のような薄膜式蒸留装置(あ
るいは分子蒸留装置)を使用するのが有利である。単蒸
留装置や薄膜式蒸留装置(あるいは分子蒸留装置)は、
理論段数がほぼ1段の分離性能しかないが、このような
装置で、本発明の精製法に使用される二官能性HFPO
オリゴマーと、それと極めて類似の特性が予想された単
官能性HFPOオリゴマーとが効率的に分離されるとい
うことは、全く予期できない驚くべきことである。
【0053】蒸留は通常には減圧下で行われる。減圧度
は、オリゴマーの分子量と蒸留温度によって左右される
が、通常は400mmHg〜10-7mmHgあるいは100mmHg
〜10-6mmHgの範囲、好ましくは30mmHg〜10-5mmHg
の範囲で実施される。真空度は高いほど蒸留温度が低く
てすむので望ましいが、あまり高い真空度は工業的に実
施困難である。また、真空度が低すぎると蒸留温度が高
くなり、オリゴマーの分離が起こるので望ましくない。
【0054】また、蒸留の際の加熱温度は、オリゴマー
の分子量と減圧度により左右されるが、通常には80℃
〜450℃の範囲が、好ましくは100℃〜400℃の
範囲が使用される。温度が高すぎるとオリゴマーの分離
が起こり、また、温度が低すぎるとオリゴマーを留出さ
せることが困難となる。この精製方法においては、粗二
官能性オリゴマーを蒸留にかけると、まず不純物である
単官能性オリゴマーを多量に含んだ留出物が得られるの
で、残留物としては単官能性オリゴマーをほとんど含ま
ない二官能性オリゴマーが得られる。残留物である二官
能性オリゴマーは、さらに蒸留により精製してもよい
が、そのままポリマー合成原料として使用することもで
きる。
【0055】粗二官能性オリゴマー中の二官能性オリゴ
マーと単官能性オリゴマーとの合計モル数に対する二官
能性オリゴマーのモルパーセントを単に「二官能性純
度」と定義すると、二官能性純度および数平均分子量
は、ジャーナル・オブ・マクロモレキュラー・サイエン
スケミストリー〔 Journal of Macromolecular Science
-Chemistry〕、A8(3),499、(1974)に記
載の方法にしたがって、オリゴマーの19F−NMRスペ
クトルにより容易に算出することができる。
【0056】なお、以上の19F−NMRスペクトルによ
る二官能性純度と数平均分子量の決定は、19F−NMR
スペクトルの分離能が高いほど正確に行うことができ
る。本発明においては、日本国日本電子(株)製の高分
解能核磁気共鳴吸収測定装置 JNM−FX−600(
19F測定周波数187.736MHz )を使用したが、こ
の装置では、充分な精度で二官能性純度や数平均分子量
を求めることができる。
【0057】上記の精製方法における蒸留において、単
官能性オリゴマーを除去するために必要な初期留分の量
は、粗二官能性オリゴマーの二官能性純度、および二官
能性オリゴマーの要求純度によって左右されるが、通常
には、粗二官能性オリゴマーの1重量%〜35重量%、
好ましくは3重量%〜35重量%、さらに好ましくは5
重量%〜30重量%、特に好ましくは5重量%〜25重
量%の範囲の量を留出させることにより高純度の二官能
性HFPOオリゴマーを得ることができる。
【0058】上記の精製方法により得られる高純度二官
能性オリゴマーの二官能性純度は、使用される粗二官能
性オリゴマーの二官能性純度、および初期留分の除去量
に依存するが、容易に95モル%以上の二官能性純度の
ものが得られるし、また、二官能性純度が98モル%以
上、あるいは99モル%以上、さらには99.5モル%
以上のものを得ることも可能である。上記のように、こ
のように高い二官能性純度を示すRfo(CN)2 は、
高精度重合法や上記の蒸留精製による単官能性オリゴマ
ー除去法により得ることができるが、これらのRfo
(CN)2 中には、微量の極性不純物が存在する場合が
ある。
【0059】極性不純物の例としては、例えば、水、無
機酸、無機塩、カルボキシル基末端やカルボキシレート
基末端を有するオリゴマー、アミド基末端を有するオリ
ゴマー、あるいは着色物質等の極性物質が考えられる
が、これらの極性不純物は、本発明の高分子量ポリイミ
ドイルアミジンの形成を妨げるので、除去するのが望ま
しい。
【0060】このような極性不純物の除去方法として
は、高精度重合法により得られた二官能性オリゴマー
(エステルまたはニトリル)や、上記の二官能性オリゴ
マーの蒸留精製における蒸留精製前の粗二官能性オリゴ
マー、あるいは蒸留精製後の二官能性オリゴマーを、シ
リカゲル、活性アルミナ、シリカアルミナ、活性白土、
モレキュラーシーブ、ゼオライトや活性炭のような極性
物質に対する吸着剤で処理することが有効である。この
処理方法としては、種々の方法が採用可能であるが、通
常には、吸着剤を充填したカラムにオリゴマーの溶液を
通過させるカラム処理法が便利である。この際のオリゴ
マーの溶媒としては、各種の含フッ素溶媒が使用可能で
あるが、例えば、1,1,2−トリクロロ−1,2,2
−トリフルオロエタンのようなクロロフルオロカーボン
系溶媒;パーフルオロヘキサンやパーフルオロオクタン
のようなパーフルオロカーボン系溶媒;あるいは2H−
テトラデカフルオロ−5−(トリフルオロメチル)−
3,6−ジオキサノナンやパーフルオロ−2−ブチルテ
トラヒドロフランのような含フッ素エーテル系溶媒、あ
るいはパーフルオロトリブチルアミン等のパーフルオロ
アミン溶媒等が使用される。その中でも、クロロフルオ
ロカーボン系溶媒が価格が安く入手可能である点で優れ
ており、また、パーフルオロカーボン系溶媒、パーフル
オロアミン系溶媒および含フッ素エーテル系溶媒は、特
に精製効果が大きい点で優れている。
【0061】本発明のポリイミドイルアミジンの製造方
法に使用される化3で表されるHFPOオリゴマージニ
トリルRfo(CN)2 の分子量は1×103 〜5×1
4である。通常は数平均分子量として1,000以
上、好ましくは1,500以上のものが使用され、さら
に好ましくは2,000以上のものが使用される。ま
た、さらに、二官能性純度が高いものであるならば、数
平均分子量3,500以上のRfo(CN)2 を使用す
るのが特に好ましい。Rfo(CN)2 の数平均分子量
が1,000以下の場合には、理由は明らかではない
が、高分子量のPIAを得ることが困難である。
【0062】また、本発明の方法に使用されるRfo
(CN)2 の分子量の上限は特になく、種々の分子量の
ものが使用可能である。ただし、あまり分子量が高くな
りすぎると、高い二官能性純度のRfo(CN)2 を合
成、精製することが困難となる。したがって、通常に
は、高純度Rfo(CN)2 の取得の容易さから、数平
均分子量が5×104 以下のものが、好ましくは3×1
4 以下のものが、さらに好ましくは1.5×104
下、特に好ましくは1.2×104 以下のものが使用さ
れる。
【0063】したがって、化14中におけるm+nの値
は、Aの大きさにもよるが、通常は、Rfo(CN)2
の分子量に対応して4〜300であり、好ましくは4〜
200であり、さらに好ましくは4〜100、特に好ま
しくは4〜70である。本発明によるPIAの合成は、
数平均分子量が1×103 〜5×104 、二官能性純度
が少なくとも95モル%のRfo(CN)2 を出発原料
として、以下の(a)、(b)の操作により実施され
る。
【0064】(a) Rfo(CN)2 とアンモニアの
反応:まず、Rfo(CN)2 を、Rfo(CN)2
モル数に対して5倍モル以上のアンモニアと反応させ
て、末端のニトリル基がアミジン基に転化されたオリゴ
マーを主成分とする反応生成物を得る。この際には、生
成物の19−NMRスペクトルによると、アミジン基以外
の官能基も少量生成していることが示されたが、この生
成物は、そのまま次の工程(b)でのRfo(CN)2
との反応に使用することができる。ニトリル基からアミ
ジン基への転化は、赤外線吸収スペクトル法により容易
に検知することができる。すなわち、Rfo(CN)2
のニトリル基は2,260cm-1に特性吸収を示し、アミ
ジン基は1695cm-1に特性吸収を示すので、それらの
ピーク強度の変化により容易に反応の進行の程度を知る
ことができる。工程(a)ではニトリル基が検知されな
くなるまで反応させる。
【0065】反応温度としては、通常は、−80℃〜7
0℃の範囲が使用されるが、望ましくは−50℃〜50
℃の範囲が使用される。反応温度が低すぎると、実質的
な反応速度が得られなくなるし、また、反応温度が高す
ぎると、アンモニアの蒸気圧が高くなり、反応操作が困
難になる。反応時間としては、通常は1分〜100時間
の範囲が採用されるが、それ以上時間をかけてもかまわ
ない。Rfo(CN)2 とアンモニアの反応は、Rfo
(CN)2 のモル数に対して5倍モル以上のアンモニア
を使用して行われ、できれば10倍モル以上の大過剰の
モル数のアンモニアを使用して行うのが好ましい。
【0066】Rfo(CN)2 に対して5倍モルより少
ない量のアンモニアを使用した場合には、アミジン形成
反応の収率が低くなるので好ましくない。Rfo(C
N)2 とアンモニアの反応は、各種雰囲気下で行うこと
ができる。例えば、Rfo(CN)2 と液化アンモニア
を反応させてもよいし、Rfo(CN)2 とガス状アン
モニアを反応させてもよい。ただし、ガス状アンモニア
を使用する場合には、アンモニア分圧はできるだけ高い
方が好ましく、例えば、加圧系で反応させるのが望まし
い。また、Rfo(CN)2 と溶媒中に溶存するアンモ
ニアを反応させる方法も本発明に適している。この場合
に使用される溶媒としては、アンモニアや生成したアミ
ジンに対して不活性なものであれば、特にそれ以上の制
限はないが、できれば、Rfo(CN)2 やアンモニア
の溶解度の高いものの方が反応操作が容易であり好まし
い。
【0067】本発明に使用される溶媒の例としては、例
えば、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランのような
エーテル系溶媒;シクロヘキサン、オクタン、トルエン
のような炭化水素系溶媒;ジクロルエタンやジクロルメ
タンのような塩素系溶媒;あるいはフッ素原子を含有す
るフッ素系溶媒等が挙げられるが、フッ素系溶媒あるい
はフッ素系溶媒を含む混合溶媒がアンモニアやRfo
(CN)2 の溶解度が高く、特に適している。本反応に
使用されるフッ素系溶媒の例としては、例えば、1,
1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン
(以後F−113と略記する)のようなクロロフルオロ
カーボン系溶媒;パーフルオロヘキサンやパーフルオロ
オクタンのようなパーフルオロカーボン系溶媒;パーフ
ルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランや2H−テトラ
デカフルオロ−5−(トリフルオロメチル)−3,6−
ジオキサノナンのような含フッ素エーテル系溶媒;ある
いはパーフルオロトリブチルアミン等のパーフルオロア
ミン系溶媒等が挙げられる。
【0068】Rfo(CN)2 とアンモニアとの反応を
実施する際には、反応温度がアンモニアの沸点である−
33℃以下である場合には、特に加圧容器は必要ではな
いが、−33℃以上では加圧容器を使用するのが望まし
い。なお、−33℃以上でもフッ素系溶媒を使用する場
合には、必ずしも加圧容器を使用しなくてもよいが、こ
の場合でも加圧容器中で高アンモニア濃度下で反応を行
うのが望ましい。
【0069】(b) (a)での反応生成物とRfo
(CN)2 との反応:本発明者らは、(a)での生成物
とRfo(CN)2 との反応により高分子量PIAを得
るべく反応条件を詳細に検討したところ、(a)での反
応生成物を、(a)で使用したRfo(CN)2 に対し
て0.60〜0.99の範囲より選ばれるモル比で、R
fo(CN)2 と反応させることにより、比較的低分子
量から高分子量までのPIAが再現性よく生成すること
を見出した。この際、工程(a)で用いるRfo(C
N)2 をRfo(CN)2 (α)、工程(b)で用いる
Rfo(CN)2 をRfo(CN)2 (β)とすると、
Rfo(CN)2 (α)およびRfo(CN)2 をRf
o(CN)2 (β)は同じでも異なっていてもよい。
【0070】前述のように、(a)での反応生成物に
は、アミジン基以外の副反応生成物が含まれているが、
それにもかかわらず、このようなモル比での反応により
高分子量PIAが生成することは、全く予期できなかっ
たことである。これは、上記したように、特定の分子量
の、特定の純度のRfo(CN)2 を特定の条件下でア
ンモニアと反応させて得られた生成物を、特定のモル比
でRfo(CN)2 と反応させることにより初めて達成
されたものである。すなわち、本発明は、Rfo(C
N)2 の精製技術、Rfo(CN)2 の正確な分析、お
よび詳細な反応条件の検討により初めて可能になったも
のと言える。
【0071】なお、従来のPIAの合成法の場合には、
反応に使用されるRfo(CN)2の二官能性体の割合
についての配慮が全くなされていないし、また、アンモ
ニア処理されたRfo(CN)2 とRfo(CN)2
の最適モル比についても全く考慮されていなかったので
ある。本発明のPIA形成反応は、溶媒存在下でも、溶
媒不在下でも、いずれの場合でも実施し得る。この反応
に使用される溶媒は、Rfo(CN)2 とアンモニアと
の反応生成物およびRfo(CN)2 を溶解しうる不活
性溶媒であれば、特にそれ以外の制限はない。
【0072】その例としては、例えば、1,1,2−ト
リクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンのようなク
ロロフルオロカーボン系溶媒;パーフルオロヘキサンや
パーフルオロオクタンのようなパーフルオロカーボン系
溶媒;パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランや
2H−テトラデカフルオロ−5−(トリフルオロメチ
ル)−3,6−ジオキサノナンのような含フッ素エーテ
ル系溶媒;あるいはパーフルオロトリブチルアミン等の
パーフルオロアミン系溶媒等のフッ素系溶媒が挙げられ
る。
【0073】工程(b)のPIA形成反応の反応温度
は、通常は−80℃〜90℃の範囲が使用されるが、望
ましくは−50℃〜−70℃の範囲が使用される。反応
温度が低すぎると、実質的な反応速度が得られなくなる
し、また、反応温度が高すぎると、アミジン基の分解が
起こったり、トリアジン環形成反応が併発したりするの
で好ましくない。 工程(b)でのPIA形成反応進行の程度は、反応生成
物の赤外線吸収スペクトルの測定、あるいは、粘度測定
により知ることができる。すなわち、赤外線吸収スペク
トル法では、イミドイルアミジン基の特性吸収が1,6
00cm-1および1,660cm-1にあるので、それらのピ
ーク強度と、2,260cm-1のニトリル基に帰属される
ピークの強度、あるいは1,695cm-1のアミジン基に
帰属されるピークの強度との比により重合の程度を知る
ことができる。
【0074】工程(b)でのPIA形成反応において
は、一般に、1分〜100時間の範囲の反応時間で目的
の高分子量体を得ることができるが、それ以上時間をか
けてもかまわない。また、反応生成物の粘度により重合
の程度を知ることもできる。R.W.ロッセル等は、ジャー
ナル・オブ・ポリマー・サイエンス;ポリマー・レター
ズ・エディション、18、p135(1980)やイン
ダストリアル・エンジニアリングケミストリー;プロダ
クト・リサーチ・デブロープメント、20、p694
(1981)および米国特許第4,242,498号明
細書に、PIAの粘度と該PIAより誘導されたポリト
リアジンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーに
よる重量平均分子量の間に直線関係があることを報告し
ている。これらのロッセルの報告によると、F−113
中、30℃で測定したPIAの固有粘度の最高値0.0
95dl/gは、トリフルオロ酢酸無水物によりポリトリ
アジンに変換したものの重量平均分子量2.8×104
に相当するとされている。なお、このPIAの固有粘度
および重量平均分子量は、本発明者の知る限りでは、こ
れまで文献や特許に報告されているものの最高の値であ
る。
【0075】本発明によるPIAの製造方法において、
アンモニアとの反応に使用したRfo(CN)2 のモル
数をM1 とし、その反応生成物と反応させるRfo(C
N)2 のモル数をM2 とすると、生成するPIAの分子
量は、M2 /M1 比に大きく左右される。すなわち、本
発明の方法においては、M2 /M1 の比を0.60〜
0.99、好ましくは0.70〜0.98、さらに好ま
しくは0.75〜0.96の範囲内で選択することによ
り、F−113中、30℃で測定した固有粘度が、従来
知られている0.02dl/g以上、あるいは0.05dl
/gのPIAはもちろんのこと、従来得られていなかっ
た固有粘度が0.10dl/g〜0.30dl/g、あるい
は0.12dl/g〜0.40dl/gのPIAも容易に得
ることができる。
【0076】また、分子量が特に高くなると、30℃で
はF−113中に溶解しにくくなるが、パーフルオロヘ
キサンやパーフルオロオクタンあるいはF−113中
で、35℃あるいは40℃で測定した固有粘度が0.3
0dl/g〜0.60dl/gを示すPIAも得られるし、
2H−テトラデカフルオロ−5−(トリフルオロメチ
ル)−3,6−ジオキサノナン中、50℃で測定した固
有粘度が0.40dl/g〜0.60dl/g、あるいはそ
れ以上を示すような超高分子量PIAも得られる。
【0077】本発明の方法により得られるHFPO系P
IAは、その分子量により、以下のような外観を呈す
る。すなわち、固有粘度が0.02dl/g〜0.10dl
/gの範囲のPIAは、流動性の粘性ポリマー状であ
る。また、固有粘度が0.10dl/g〜0.15dl/g
の範囲のPIA、特に0.12dl/g〜0.15dl/g
の範囲のPIAは、ワックス状の物質であり、0.15
dl/g〜0.25dl/gの範囲のPIAは、若干の弾性
を示す半固体状物質であり、また、0.25dl/g以上
のPIAは弾性固体状の外観を呈する。
【0078】なお、固有粘度が0.05dl/gのPIA
は、粘度平均分子量としては3.5×104 のものに相
当し、0.10dl/gのPIAは粘度平均分子量が1×
105 のものに相当し、0.15dl/gのPIAは粘度
平均分子量が2×105 のものに相当し、0.30dl/
gのPIAは粘度平均分子量が約8×105 のものに相
当し、0.50dl/gのPIAは粘度平均分子量が約2
×106 のものに相当し、また、0.60dl/gのPI
Aは粘度平均分子量が約2.6×106 のものに相当す
る。
【0079】これまでに報告されているHFPO系PI
Aで最高の分子量のものは、前述のように、固有粘度が
0.095dl/gの流動性の粘性ポリマーであるので、
本発明の方法によって得られた固有粘度が0.10dl/
g以上、特に0.12dl/g以上のワックスや、若干の
弾性を示す半固体状、さらには、弾性固体状の高分子量
PIAは、本発明の方法により初めて合成された新規な
高分子量のパーフルオロポリエーテル材料である。前述
のように、本発明のPIA合成方法においては、PIA
の分子量は、Rfo(CN)2 の分子量および純度、R
fo(CN)2 とアンモニアの反応条件およびM2 /M
1 の比によって決定される。特にM2 /M1 の比を変化
させるだけで、広範な分子量範囲の中の所望の分子量の
PIAが、再現性よく製造されるが、この特徴は、工業
的に極めて重要な意義を有する。
【0080】一方、従来のHFPO系PIAの製造法
は、前述のように、アンモニアガスとRfo(CN)2
との反応法あるいは逐次分子量増大法のいずれにして
も、高分子量PIAが得られないというだけでなく、再
現性が悪かったり、操作が煩雑だったりして経済的に有
利なPIA製造法とは言えない。したがって、本発明の
HFPO系PIA合成法は、単に従来得られていなかっ
た高分子量のPIAを製造する方法として有用であるば
かりでなく、各種の所望の分子量のPIAを簡単な操作
で再現性よく製造する方法として工業的に重要な技術で
ある。以上のようにして得られる本発明の新規な高分子
量PIAは、従来の比較的低分子量のPIAの場合と全
く同様にして、各種アシル化剤との反応により、化4で
表される繰り返し単位よりなる高分子量ポリトリアジン
に変換することができる。
【0081】本発明の方法で使用されるアシル化剤とし
ては、パーフルオロアルキル基Rf1 やパーフルオロエ
ーテル基Rfo1 を連結したトリアジン環を形成するも
のが挙げられ、例えば、Rf1 COFあるいはRfo1
COFのような酸フルオライド、Rf1 COClあるい
はRfo1 COClのような酸クロライド、または(R
1 CO)2 Oあるいは(Rfo1 CO)2 Oのような
酸無水物、さらには、パーフルオロ環状酸無水物が挙げ
られるが、これらの種類に限定されるものではない。
【0082】ここで、Rf1 は炭素数1〜15、好まし
くは1〜11、さらに好ましくは1〜7の範囲のパーフ
ルオロアルキル基を表し、Rfo1 は炭素数2〜10
0、好ましくは2〜40、さらに好ましくは2〜20の
範囲のパーフルオロエーテル基を表す。ここで、パーフ
ルオロエーテル基はパーフルオロポリエーテル基も包含
する。このRf1 およびRfo1 は化4中のRに対応す
る。なお、RあるいはRf1 およびRfo1 のフッ素原
子が30%以内の範囲で水素原子や塩素原子、臭素原
子、ヨウ素原子、ニトリル基あるいはエステル基等のト
リアジン環形成反応条件下で不活性な置換基で一部置換
されていてもよいし、また、フッ素系環状酸無水物をア
シル化剤として使用した場合には、カルボキシル基を含
有するRが形成される。
【0083】すなわち、本発明のさらに他の態様によれ
ば、化4で表される繰り返し単位よりなる、固有粘度が
0.15dl/g〜0.65dl/gの範囲内であるポリト
リアジンの製造方法が提供される。この製造方法は、化
1で表される繰り返し単位よりなる、固有粘度が0.1
2dl/g〜0.60dl/gの範囲内であるポリイミドト
リアジンを置換基Rを含むか、または置換基Rを形成す
ることのできるアシル化剤〔Rは化4のRと同じであ
る〕と反応させることよりなる。
【0084】本発明の方法に使用されるアシル化剤の具
体例としては、例えば、下記化30
【化30】 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】これらのアシル化剤によるPIAからポリ
トリアジンへの変換は、従来の低分子量PIAからポリ
トリアジンへの変換と同様の条件で実施することができ
る。例えば、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエン
ス;ポリマー・レターズ・エディション、20、p46
7(1982)、米国特許第4,242,498号明細
書、あるいはジャーナル・オブ・ポリマー・サイエン
ス;ポリマー・レターズ・エディション、18、p13
5(1980)に示されているように、フッ素系溶剤中
でPIAとアシル化剤を反応させることにより容易にポ
リトリアジンが得られるし、また、該反応を溶媒不存在
下で実施することもできる。
【0086】用いるアシル化剤は、ポリイミドイルアミ
ジンのイミドイルアミジン基のモル数に対して少なくと
も2倍モル、好ましくは4倍モル以上の量が用いられ
る。上限は特に限定されないが。経済性および操作の容
易さから、一般には約100倍モルまでである。このよ
うにして得られたHFPO系のポリトリアジンは、赤外
線吸収スペクトルにおいて1550cm-1に鋭い特性吸収
バンドを示す。該ポリトリアジンの固有粘度は、原料と
して使用したPIAやアシル化剤の種類によって左右さ
れるが、0.02dl/g〜0.12dl/gの比較的低分
子量のものから、0.12dl/g〜0.65dl/gある
いは0.15dl/g〜0.65dl/gまたはそれ以上の
高分子量のものまで得ることができる。ポリトリアジン
の固有粘度の測定は、PIAの場合と同様の条件で行わ
れる、
【0087】また、PTRの固有粘度と粘度平均分子量
の関係は、Rfo1 あるいはRf1の分子量が1,00
0以下の場合には、前述のPIAの固有粘度と粘度平均
分子量の関係とほぼ同じである。なお、ここでいうPI
AおよびPTRの固有粘度は、特にことわりがないかぎ
り、0.20より低いものは、F−113中30℃で測
定した値を示し、0.20以上のものは、パーフルオロ
ヘキサン中40℃で測定した値を示す。なお、PIAお
よびPTRの固有粘度は、キャノン・ウベローデ粘度計
やオストワルド粘度計を用いて測定することができる。
【0088】本発明の方法によって得られる化1で表さ
れる繰返し単位によりPIAの末端基をXおよびYとす
るとPIAの全体構造は下記化31で表される。
【化31】 〔ただし、Rfoは化1中のRfoと同じ。X、Yは末
端基を表し、n’は正の整数を表す。〕
【0089】末端基X、Yの構造は、主に、PIA合成
条件やRfo(CN)2 の二官能性純度等によって左右
される。Rfo(CN)2 の純度が高く、また、PIA
合成が完全に乾燥条件下で行われるならば、X、Yは主
にニトリル基(−CN)またはアミジン基 NH ‖ (−C )になると考えられる。X、Yがニトリル基あるいはアミジン基のいず | NH2 れになるか、また両者の混合物になるかどうかは、PI
Aの合成条件によって左右される。例えば、本発明のP
IA合成法における工程(a)や工程(b)における反
応条件や反応組織によりX、Yの構造が支配される。一
般に、工程(b)において、最も高分子量のPIAを形
成する反応組成の場合よりもRfo(CN)2 の使用量
が多いとニトリル基末端基構造が多くなり、Rfo(C
N)2 の使用量が少なくなるとアミジン基末端構造が多
くなる。
【0090】また、Rfo(CN)2 中に化32で表さ
れるような単官能性オリゴマーが混入している場合に
は、
【化32】 (m’は正の整数を表す。)X、Yのすべて、または一
部は下記化33で表される末端構造となるものと考えら
れる。
【化33】 (m’は化32中のm’と同じである。)また、さら
に、PIA合成条件下に、アミド基、カルボキシル基、
カルボキシレート基等の極性末端基を含むHFPOオリ
ゴマーや、水、無機酸等の低分子極性物質が存在してい
る場合には、このような極性末端基含有オリゴマーや低
分子極性物質とPIAのニトリル末端基やアミジン末端
基との反応により、PIAの重合成長に対して不活性な
極性基末端構造が形成されるものと思われる。
【0091】なお、上記したようなPIAとアシル化剤
との反応により形成されるPTRの末端構造としては、
ニトリル基末端構造、アミジン末端基とアシル化剤
の反応、あるいはアミジン末端基とアシル化剤より生成
する酸性物質との反応による極性基末端構造、下記化
34で表される末端構造、
【化34】 〔ただし、m’は化32中のm’と同じであり、Rは
中のRと同じである。〕、あるいは、極性不純物に
起因する極性基末端構造等が挙げられる。PIAおよび
PTRの合成を高純度のRfo(CN)2 を使用し、乾
燥条件下で実施すれば、生成したPTR中の上記や
の末端構造の生成は抑制することができる。しかしなが
ら、本発明のPIAおよびPTR合成法にしたがえば、
PTRにおけるおよび/またはの末端構造の生成は
不可避である。
【0092】本発明のPTRは、一般に高い熱安定性を
示し、空気中でも300℃付近くらいまではほとんど分
解が認められないものが多いし、不活性ガス雰囲気下で
は350℃まで安定なものが多い。しかしながら、空気
中で310℃以上では、若干の重量減少が認められPT
Rの一部が分解しているものと思われる。このようなP
TRの熱分解の原因としては、上記やの末端構造の
熱安定性が不充分なため、そこから熱分解が進行するこ
とが考えられ、末端を安定な構造に転換する方法につき
研究を進めた。その結果、反応(A)および/または反
応(B)を利用することにより、PTRの末端構造が安
定化され、耐熱性が向上することが知見された。
【0093】反応(A) 化31においてXおよびYがCNであるPIA(V)を
原料とする場合: 下記化35で示す反応により、ニトリル両末端をイミド
イルアミジン基とし、その後アシル化剤と反応させて安
定化PTRを得る。
【化35】 〔式(VIII) におけるRは、化4におけるRと同じであ
る。〕
【0094】上記の反応に用いる式(VI) のアミジン化
合物は、下記化36に示す反応により容易に得ることが
できる。
【化36】 〔(IX)および(VI)におけるR1 化4のRと同じである
が、ニトリル基、エステル基、カルボキシル基による置
換体は除く。〕
【0095】上記の反応の出発物質であるニトリル基両
末端のポリイミドイルアミジン(V)は、PIA合成の工
程(b)においてRfo(CN)2 の使用量を多くする
ことにより得られる。 反応(A)において用いる(VI)のアミジン化合物の量
は、式(V) のポリイミドイルアミジンのモル数に対して
少なくとも2倍モル、好ましくは4倍モル以上の量が用
いられる。上限は特に限定されないが、経済性および操
作の容易さから、一般には約100倍モルまでである。
アシル化剤の量は前述したとおりである。
【0096】反応(B) 化31においてXおよびYがアミジン基のPIA(X)
を原料とする場合: 下記化37に示す反応により、アミジン両末端をイミド
イルアミジン基とし、その後アシル化剤と反応させて安
定化PTRを得る。
【化37】
【0097】上記(X) のPIA (i)は、PIA合成工程
(b)において、Rfo(CN)2の使用量を少なくす
ることによって得られるし、あるいは化31において、
XおよびYがニトリル基で式(V) のPIA(ii)か、Xお
よびYがそれぞれニトリル基およびアミジン基であるP
IA(iii) 、またはそれらの混合物(iii) をアンモニア
処理しても得られる。 反応(B)において用いる式(IX)のニトリル化合物の量
は、式(X)のポリイミドイルアミジンのモル数に対し
て少なくとも2倍モル、好ましくは4倍モル以上の量が
用いられる。上限は特に限定されないが、経済性および
操作の容易さから、一般には約100倍モルまでであ
る。アシル化剤の量は前述したとおりである。
【0098】上記の反応(A)、または反応(B)を用
いる方法により得られる末端安定化PTR(VIII)は、
RおよびR’が極性基を含まない場合には、不活性ガス
雰囲気下では、370℃付近までほとんど分解は認めら
れず、また、空気中でも340℃付近までほとんど分解
は認められなかった。また、反応(A)や反応(B)を
用いる方法以外に、式(VIII)のような末端安定化PT
Rを合成する方法としては、PIA合成原料としてRf
o(CN)2に少量の化32のような単官能性オリゴマ
ーや、少量の式(IX)のような単官能性ニトリル化合物が
混合したものを使用して、積極的に不活性末端〔例え
ば、化33のようなもの〕を形成させ、さらに不活性末
端を有するPTR〔例えば、式(VIII)のようなもの〕
に転換する方法も有効である。
【0099】また、ニトリル基末端のPIA(IX)から
(VIII)への転換による末端安定化法と同様の方法で、
ニトリル基末端のPTRより末端安定化PTRへ転換す
ることも可能である。なお、式(VIII)で表される末端
安定化PTRの粘度は、末端基R1 の分子量が特に大き
い場合以外は、末端が安定化されていないPTRの粘度
と大差はなく、通常は0.02dl/g〜0.65dl/
g、好ましくは0.05dl/g〜0.65dl/g、特に
好ましくは0.15dl/g〜0.65dl/gの範囲のも
のが使用される。
【0100】本発明者らは、PIAおよびPTRの新し
い種々の用途について知見したが、以下それについて説
明する。すなわち、固有粘度が0.02〜0.25dl/
gのPTRは、高温用および/または高真空用潤滑剤と
して、固有粘度が0.05〜0.65dl/gのPTR
は、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系オイルある
いはフッ素系グリースの粘度調節剤として有用である。
また、固有粘度が0.02〜0.65dl/gのPTRお
よび固有粘度が0.02〜0.60dl/gのPIAは、
磁気記録材料用潤滑剤として有用であり、固有粘度が
0.05〜0.25dl/gのPTRはトルク伝達油とし
て有用であり、さらに固有粘度が0.02〜0.60dl
/gのPIAは金属およびセラミックス材料の表面処理
剤として有用である。
【0101】以下、それぞれの用途について詳しく説明
する。(用途−1)高温および/または高真空用潤滑剤 従来、実用化されている Krylox (米国、デュポン社
製)、Fomblin (伊国、Montefluos社製)、あるいは D
emnum (日本国、ダイキン社製)のような各種のパーフ
ルオロポリエーテルは、数平均分子量が最高のものでも
8,000〜13,000付近であり、それ以上の高分
子量体を工業的に有利に製造することは困難である。
【0102】これらのパーフルオロポリエーテルは、分
子量が低いため、150℃〜200℃付近、あるいは2
50℃付近、さらには300℃付近に加熱した場合に
は、粘度が極めて低くなる。したがって、これらのパー
フルオロポリエーテルを単独で、あるいは各種増稠剤と
複合化してグリース状で、潤滑剤として使用する場合に
は、高温領域では粘度が低くなりすぎて潤滑特性が顕著
に低下するという問題点をかかえていた。さらに、これ
らの低分子量パーフルオロポリエーテルを基油としたグ
リースでは、150℃以上あるいは200℃以上の高温
領域では、基油の粘度が低いことに起因して基油と増稠
剤が分離する現象、すなわち、油分離(オイルセパレー
ション)が顕著となるので、この点からも高温領域の使
用が制限されていた。
【0103】また、これらのパーフルオロポリエーテル
は、分子量が低いため、大部分のものは室温付近での蒸
気圧が10-9torr以上を示し、150℃以上では蒸気圧
が10-4torr以上となる。したがって、これらのパーフ
ルオロポリエーテルを単独で、あるいは各種増稠剤と複
合化してグリース状で、高温および/または高真空条件
で潤滑剤として使用する場合には、パーフルオロポリエ
ーテルの蒸発による損失あるいは周囲の汚染が起きると
いう問題点をかかえていた。高分子量のパーフルオロポ
リエーテルは、高温でも充分な粘度を示し、また、蒸気
圧も低いため、高温および/または高真空用として有用
であると考えられるが、これまで、このような性質を備
え、かつ合成の容易なポリマーは得られていなかった。
【0104】本発明の方法で合成される高分子量PIA
から簡単に製造される高分子量PTR化4は、充分な潤
滑性能や熱的安定性と共に、高分子量であるがゆえに、
200℃以上あるいは300℃付近の高温領域でも充分
な粘度を示すことや蒸気圧が低いことなどの特性をもっ
ており、200℃以上、特に300℃付近の高温領域で
使用する潤滑剤として有用である。高温および/または
高真空用の潤滑剤として有用なHFPO系PTRの固有
粘度としては、通常0.02dl/g〜0.25dl/g、
好ましくは0.10dl/g〜0.25dl/g、さらに好
ましくは0.15dl/g〜0.25dl/gの範囲のもの
が選ばれる。固有粘度が0.02dl/gより低い場合に
は、高温領域での粘度が低くなり、また、蒸気圧も高く
なるため、高温および/または高真空用潤滑剤として不
適当であり、また、固有粘度が0.25dl/gより高い
場合には粘度が高いため、用途が極めて限られたものに
なってしまうため好ましくない。なお、本発明のPTR
には、増稠剤や極性添加剤等の添加剤がPTRの重量に
対して40重量%以下の割合で添加されていてもよい。
【0105】(用途−2)パーフルオロポリエーテルの粘度調節剤 一方、前述の市販の低分子量のパーフルオロポリエーテ
ルと良好な相溶性を示し、かつ高分子量で高粘度を示す
ポリマーは、前述のパーフルオロポリエーテルの高温で
の粘度特性を改良し、低分子量パーフルオロポリエーテ
ルの前述の問題点を解決する粘度調節剤として有用であ
ると考えられるが、これまで、そのような性質を備え、
かつ、合成が容易なポリマーは得られていなかった。本
発明の方法で合成される高分子量PIAから簡単に製造
される高分子量PTR(化4)は、パーフルオロポリエ
ーテルと良好な相溶性を示し、かつ高温でも充分な粘度
を示すので、パーフルオロポリエーテル系オイルあるい
はグリースの粘度調節剤に適している。
【0106】すなわち、低分子量パーフルオロポリエー
テルに本発明の高分子量PTRを添加した組成物は、高
温でも充分の粘度を示すので、高温でも良好な潤滑剤と
して機能し、また、高温でのグリースの油分離も抑制さ
れるので、高温でのグリースの使用時間も大幅に改善さ
れる。したがって、本発明の高分子量PTR(化4
は、各種パーフルオロポリエーテルの高温特性を改善す
る粘度調節剤として極めて有効である。粘度調節剤とし
て有用なHFPO系PTRの固有粘度としては、通常は
0.05dl/g〜0.65dl/g、好ましくは0.10
dl/g〜0.65dl/g、さらに好ましくは0.15dl
/g〜0.65dl/gの範囲のものが選ばれる。
【0107】固有粘度が0.05dl/gより低い場合に
は、PTRの粘度調節剤としての効果が低いし、また固
有粘度が0.65dl/gより高い場合には、合成が困難
であり、また、固体状PTRとパーフルオロポリエーテ
ルの混合操作が繁雑となるので好ましくない。本発明の
PTRをパーフルオロポリエーテルに対する粘度調節剤
として使用する場合には、PTRとパーフルオロポリエ
ーテルよりなる組成物におけるPTRの含量は、PTR
とパーフルオロポリエーテルの合計重量に対して、通常
は1重量%〜50重量%の範囲が使用され、好ましくは
3重量%〜40重量%の範囲が使用され、特に好ましく
は5重量%〜30重量%の範囲が使用される。
【0108】当該組成物において、PTRの添加量が少
なすぎると、粘度調節剤としての添加効果が少なくなる
し、また、高粘度のPTRを多く使用しすぎる場合に
は、通常は組成物の粘度が高くなりすぎるので、潤滑剤
として好ましくない。なお、このPTRとパーフルオロ
ポリエーテルよりなる組成物には、さらに、増稠剤や極
圧添加剤等の添加剤が、PTRとパーフルオロポリエー
テルの合計量に対して40重量%以下の割合で添加され
ていてもよい。本発明のPTRは、パーフルオロポリエ
ーテルと同等の高い耐薬品性や耐溶剤性を示し、また、
パーフルオロポリエーテルと同様に各種のプラスチック
やエラストマーの寸法や物性にほとんど影響を与えな
い。したがって、本発明のPTRおよび本発明のPTR
を粘度調節剤として含有するパーフルオロポリエーテル
は、広範な種類の物質と共存する条件下で使用すること
ができるという長所も有する。
【0109】(用途−3)磁気記録材料用潤滑剤 従来、磁気記録材料用、特に金属薄膜型磁気記録材料用
の潤滑剤として Krytox (商品名)、Fomblin (商品
名)などのパーフルオロポリエーテルが使用されてき
た。しかし、従来のパーフルオロポリエーテルを用いた
場合の潤滑剤層の耐久性が不足するという問題点があっ
た。すなわち、金属薄膜型磁気ディスクに Krytox (商
品名)、Fomblin (商品名)などのパーフルオロポリエ
ーテルを潤滑剤層として用いた場合には、コンタクト・
スタート・ストップ方式のテスト(以下、CSSテスト
と略記する)により摩擦係数が増大する問題点や、製造
工程中のイソプロピルアルコール洗浄の際に潤滑剤の溶
出による潤滑性能の低下が起きる問題点などがあった。
また、金属薄膜型磁気テープにおいても、磁気ヘッドの
接触などにより、潤滑剤性能が低下する問題点があっ
た。このため、潤滑剤層の耐久性の向上をはかるため、
パーフルオロポリエーテルの末端に極性基を導入するな
どの試みがなされているが、満足すべき性能を示すもの
は得られていない。
【0110】本発明の方法で合成される高分子量PIA
から簡単に製造される高分子量PTR(化4)は、充分
な潤滑性を有し、また、高分子量であるゆえに磁気ディ
スクに使用した場合、CSSテストに対しても耐久性に
優れ、また、イソプロピルアルコールなどのフッ素原子
を含有しない溶剤にはほとんど不溶性であることより、
イソプロピルアルコール洗浄でも潤滑性能が低下するこ
とはない。また、磁気テープに使用した場合にもヘッド
などの接触圧に対して、高い耐久性を示す。このように
本発明のPTRは、磁気記録材料用の潤滑剤として極め
て有望である。磁気記録材料用の潤滑剤として有用なH
FPO系PTRの固有粘度としては、通常は、0.02
dl/g〜0.65dl/gの範囲のものが選ばれ、好まし
くは0.10dl/g〜0.65dl/gの範囲のものが選
ばれ、特に好ましくは0.15dl/g〜0.65dl/g
の範囲のものが選ばれる。
【0111】固有粘度が0.02dl/gより低い場合に
は、潤滑剤層の耐久性が不足するため、磁気記録材料用
潤滑剤として不適当であり、また、固有粘度が0.65
dl/gより高いものは、合成が困難であり、また、溶媒
への溶解性が低く磁気記録材料に均一に薄くコーティン
グするのが困難になるため好ましくない。また、本発明
の方法で合成される化1で表される繰り返し単位よりな
る高分子量PIAも高分子量PTRと同様に磁気記録材
料用潤滑剤として使用できる。この際のPIAの固有粘
度としては、PTRの場合と同様の理由で通常は0.0
2dl/g〜0.60dl/g、好ましくは0.10dl/g
〜0.60dl/g、特に好ましくは0.12dl/g〜
0.60dl/gの範囲のものが選ばれる。
【0112】(用途−4)高安定性のトルク伝達油 ビスカップリング等の高粘性オイルの粘性を利用したト
ルク伝達装置においては、数万センチストークス(好ま
しくは、約10万センチストークス)〜50万センチス
トークス(cst)の範囲の高粘性オイルがトルク伝達
油として使用される。従来は、このようなトルク伝達油
としては、大抵の場合は、合成が容易な高粘性シリコー
ンオイルが使用されていた。しかし、シリコーンオイル
では、200℃以上の温度では、オイルが分解してゲル
化するために、200℃以上の温度で長時間使用するこ
とはできない。また、シリコーンオイルはパーフルオロ
ポリエーテルや鉱油等のオイルと比べて耐荷重能が低い
ために、ビスカスカップリングにおいて、プレートが接
触して固体摩擦によりトルクが伝達される状態(いわゆ
る“ハンプ現象”時)では、耐摩耗性が低いことが大き
な問題となる。
【0113】したがって、シリコーンオイル系トルク伝
達油よりも厳しい条件下で安定して使用できる高安定性
トルク伝達油、すなわち、シリコーンオイルよりも高い
耐熱性と耐荷重能を示すトルク伝達油の開発が望まれて
いた。現在市販の各種パーフルオロポリエーテル系オイ
ルは300℃以上の熱安定性を有しているが、分子量が
低い(数平均分子量≦1万)ために、40℃での温度と
しては、最高のものでも500センチストークス付近の
ものしかなく、ビスカスカップリング等に使用するトル
ク伝達油としては使えない。一方、本発明の方法によれ
ば、高分子量のHFPO系PTRが容易に合成され、当
該PTRは参考例23、24、35および36に示すよ
うに250℃あるいは300℃以上でも安定である。ま
た、参考例22に示すように、本発明のPTRは、従来
から潤滑剤として使用されている市販のパーフルオロポ
リエーテルと同等の良好な耐荷重能を示す。また、さら
に、参考例25に示すように、当該PTRは、各種金属
材料共存下でも、市販パーフルオロポリエーテルと同等
か、あるいはそれ以上の高い耐酸化腐食性を示し、30
0℃以上の高温での金属製装置内でも安定して使用でき
ることが確認された。
【0114】また、参考例36に示すように、本発明の
方法により得られる高粘性PTRを、空気中、250℃
で30日間加熱しても全く変化は認められない。また、
参考例37に示すように、この加熱前後に、PTRを、
トルク伝達装置に充填して発生応力を比較しても全く変
化は認められず、当該PTRが高温条件下でも長時間安
定したトルク伝達能を維持していることが確認された。
以上のように、本発明の方法により得られる高粘性PT
Rは、200℃以上あるいは300℃付近の高温下でも
使用できる高安定性のトルク伝達油として有用である。
なお、トルク伝達油として有用なPTRの粘度範囲は、
使用目的や使用条件にも依存するが、40℃付近の固有
粘度としては、通常は0.05dl/g〜0.25dl/
g、好ましくは0.10dl/g〜0.25dl/g、特に
好ましくは0.15dl/g〜0.25dl/gの範囲であ
る。
【0115】(用途−5)無機材料の表面処理剤 本発明の方法によって得られるPIA(化1)は、1)
アルミニウム、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、コバル
ト等の金属材料、あるいは、2)ガラス、陶器、フェラ
イト、マグネタイト、あるいはアルミナ、ジルコニア等
の各種金属酸化物、さらには二酸化モリブデン等の金属
硫化物等のセラミックス等の各種の無機材料表面への吸
着能を有している。パーフルオロポリエーテルは、上記
のような無機材料表面とは全く相互作用を示さないの
で、このようなPIAの吸着性は、PIA中のイミドイ
ルアミジン基と無機材料表面との相互作用に起因するも
のと推定される。
【0116】例えば、当該PIAをフッ素系溶媒に溶解
した溶液中に、ステンレス等の金属材料、またはガラス
等のセラミックス材料を浸した後に、溶液から引上げ乾
燥させると、上記金属材料およびセラミックス材料の表
面にPIAがコートされる。以上の操作でPIAがコー
トされた材料を、PIAの良溶媒であるフッ素系溶媒で
洗浄しても、当該材料表面にPIAが残存しており、P
IAが金属材料やセラミックス材料の表面に強固に吸着
していることが分かる。なお、 Krytox (商品名)、Fo
mblin (商品名)等の市販の各種パーフルオロポリエー
テルオイルをフッ素系溶媒に溶解した溶液で、ステンレ
ス板や、ガラス板表面を処理してもパーフルオロポリエ
ーテルが当該材料表面に均一分散せず、高い撥水性や高
い撥油性を発現させることはできないし、また、当該材
料をフッ素系溶媒で洗浄すると、パーフルオロポリエー
テルは実質的に全ての量が除去されてしまう。
【0117】一方、前述のように得られたPIAより表
面処理された金属材料やセラミックス材料の表面は、無
処理表面に比べて高い撥水性や撥油性を示す。したがっ
て、本発明の方法によって得られる各種のPIAは、金
属材料やセラミックス材料表面の撥水処理剤や透湿防止
剤あるいは防汚処理剤として有用である。また、当該P
IAの金属材料への表面吸着性と疎水性表面の形成能を
利用して、PIAを単独で使用するか、または他のフッ
素系オイルと組み合わせて使用して、金属表面の耐酸
性、耐錆性等の耐腐食性を向上させるための表面処理剤
として有用である。また、さらに、当該PIAによる微
粒子状無機材料の表面処理により、無機系微粒子の会合
を抑制したり、フッ素系材料との親和性を改良できるの
で、当該PIA処理は、無機微粒子材料の凝集抑制や、
フッ素系材料への無機添加剤の分散性向上法としても有
用である。
【0118】PIAによる無機微粒子表面処理の具体的
用途例としては、例えば、磁性流体(液中に磁性体微粒
子を分散させたもので、安定した分散性が要求され
る。)等の無機微粒子分散液体の製造や、フッ素系エラ
ストマーやフッ素系樹脂への無機添加剤の分散性向上、
あるいはフッ素系粘性オイルを基油としたグリースにお
ける無機増稠剤の表面改質による油分離(基油と増稠剤
の分離)の抑制等への利用が挙げられる。なお、上記の
ような各種無機材料表面のPIA処理は、室温付近で処
理するだけでもよいし、または0℃〜300℃、好まし
くは0℃〜200℃、特に好ましくは0℃〜150℃の
範囲で処理してもよい。
【0119】上記のような、無機材料表面の改質剤とし
て使用されるPIAの固有粘度としては、特に制限はな
いが、合成や操作の容易さ、および効果の大きさより、
通常は0.02dl/g〜0.60dl/g、好ましくは
0.10dl/g〜0.60dl/g、さらに好ましくは
0.12dl/g〜0.60dl/gの範囲のものが使用さ
れる。
【0120】(用途−6)その他の用途 固有粘度が0.05dl/g〜0.65dl/g、好ましく
は0.10dl/g〜0.65dl/g、特に好ましくは
0.15dl/g〜0.65dl/gの範囲のPTRは、
考例17〜21に示すように、フッ素系溶剤以外の各種
溶剤にはほとんど溶解せず、また、参考例38に示すよ
うに、各種の薬品に対して安定であるので、フッ素系以
外の有機溶媒や各種薬品の蒸気存在下、あるいはフッ素
系以外の有機溶媒や各種薬品と直接接触する場での潤滑
剤として使用できる。また、これらのPTRは、参考例
17〜21に示すように、各種プラスチックおよびエラ
ストマー等のポリマー材料を潤滑、変性させることがほ
とんどないので、広範なポリマー材料表面の潤滑剤に適
している。
【0121】また、さらに、固有粘度が0.15dl/g
〜0.65dl/g、特に固有粘度が0.25dl/g〜
0.65dl/gのPTRは、室温付近でほとんど流動性
がないのでシール材として有用であり、また、上記のよ
うに耐溶剤性、耐薬品性が高いので特に耐腐食性あるい
は耐溶剤性の高安定性シール材として有用である。な
お、固有粘度が0.02dl/g〜0.65dl/g、好ま
しくは0.15dl/g〜0.65dl/gのPTR(末端
安定化してないもの)は、アンモニアやテトラフェニル
錫のようなトリアジン環形成反応触媒の存在下で、15
0〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度範囲
で加熱すると、フッ素系溶媒にも不溶の弾性のある架橋
ポリマーが得られる。このようにして得られる架橋ポリ
マーは、耐蝕性や耐熱性、さらには、耐溶剤性を備えた
シール材として有用である。
【0122】
〔Rfo(CN)2 の合成〕
以下に本発明のPIAおよびPTRの合成に使用される
各種Rfo(CN)2の合成法を例示するが、本発明に
使用されるRfo(CN)2 の合成法は、これに限定さ
れるものではない。 合成例1 特公昭53−5360号公報に記載のHFPO重合法、
特開昭57−175185号公報に記載のHFPO精製
法、および米国特許第3,317,484号明細書に記
載のポリマー末端基変換法を若干変更して採用し、 を重合開始剤として使用して、数平均分子量が約2,0
00の粗Rfo(CN)2 223gを合成した。
【0123】この粗Rfo(CN)2 をパーフルオロヘ
キ酸を展開溶媒として使用し、200メッシュの活性ア
ルミナ150gを用いてカラムクロマトグラフィーによ
り精製したところ、無色透明の粘性液体222gが得ら
れた。このようにして得られたRfo(CN)2 19
−NMRスペクトルにより分析したところ、数平均分子
量は約2,010であり、二官能性純度は97.7モル
%であった。この粗Rfo(CN)2 56.2gをクー
ゲルロール式の薄膜蒸留装置を用いて、圧力が約0.1
mmHgで蒸留精製した。
【0124】まず、加熱温度150℃で留出してきた初
期留分9.8gを除き、加熱温度160℃〜170℃で
留出してきた第2留分10.2g、加熱温度170℃〜
180℃で留出してきた第3留分22.8g、加熱温度
180℃〜190℃で留出してきた第4留分10.6g
を得た。第2留分、第3留分および第4留分をそれぞれ
19F−NMRスペクトルにより分析したところ、下記
の結果が得られた。
【表1】
【0125】合成例2 合成例1と同様の方法により、数平均分子量が3,35
0であり、二官能性純度が97.5モル%のカラム処理
した粗Rfo(CN)2 を合成した。この粗Rfo(C
N)2 52.3gをクーゲルロール式薄膜蒸留装置を用
いて蒸留精製した。まず、0.1mmHgにおいて、加熱温
度200℃で留出してきた初期留分4.9gを除き、加
熱温度200℃〜250℃(圧力0.1mmHg)での留分
45.7gを得た。19F−NMRスペクトルによる分析
の結果、この主留分の数平均分子量は3,510であ
り、二官能性純度は99.3モル%であった。
【0126】合成例3 合成例1と同様の方法により、ただし、カラム処理を行
わずに、数平均分子量が4,760であり、二官能性純
度が97.3モル%の粗Rfo(CN)2 を合成した。
この粗Rfo(CN)2 130gをクーゲルロール式薄
膜蒸留装置を用いて蒸留精製した。まず、0.03mmHg
において、加熱温度210℃で留出してきた初期留分2
8gを除き、加熱温度210℃〜230℃の範囲で留出
してきた第2留分24g、加熱温度230℃〜250℃
の範囲で留出してきた第3留分55gを得た。19F−N
MRスペクトルによる分析の結果、第2留分の数平均分
子量は4,800であり、二官能性純度は99.5モル
%であり、第3留分の数平均分子量は5,090、二官
能性純度は99.9モル%以上であった。
【0127】合成例4 合成例3と同様の方法により、数平均分子量が6,69
0であり、二官能性純度が96.8モル%の粗Rfo
(CN)2 を合成した。この粗Rfo(CN)2 78g
をクーゲルロール式薄膜蒸留装置を用いて蒸留精製し
た。約0.07mmHgの減圧下、250℃で留出してきた
初期留分を除くと黄色の粘性液体56gが得られた。こ
の残留物の全量を、パーフルオロヘキサンを展開溶媒と
して使用して、シリカゲルカラムを通して精製したとこ
ろ、無色透明の粘性液体55gが得られた。以上のよう
にして精製されたRfo(CN)2 19F−NMRスペ
クトルにより分析したところ、数平均分子量は7,15
0、二官能性純度は99.6モル%であった。
【0128】合成例5 合成例4と同様の操作を行うが、ただし、二官能性重合
触媒原料として の代わりに、ガスクロマトグラフィーによると、面積比
で約11%の不純物を含む O CF 3 CF 3 O ‖ | | ‖ F−C−CF−O−CF2 −CF2 −CF2 −O−CF−C−F を使用し、モレキュラーシーブカラムを通したHFPO
を使用して、末端がニトリル化された二官能性オリゴマ
ーRfo(CN)2 を合成した。その結果、得られた粗
Rfo(CN)2 の数平均分子量は約6,000、二官
能性純度は83.2モル%であった。
【0129】まず、Rfo(CN)2 をパーフルオロヘ
キサンを展開溶媒として使用し、シリカゲルカラムを通
して精製した。このようにして得られた粗Rfo(C
N)2 を、クーゲルロール式薄膜蒸留装置を用いて蒸留
精製した。約0.01mmHgの減圧下、250℃の加熱温
度で17gを留出させた時点で蒸留を中止し、残留物を
19F−NMRスペクトルにより分析したところ、数平均
分子量は6,800、二官能性純度は95.4モル%で
あった。
【0130】合成例6 合成例1のRfo(CN)2 合成の中間原料として得ら
れた粗Rfo(CO2Me)2 をパーフルオロオクタン
を展開溶媒として使用し、シリカゲルカラムを通して精
製した。このようにして得られた粗Rfo(CO2
e)2 30gを、クーゲルロール式薄膜蒸留装置を用い
て蒸留精製した。まず、0.15mmHgの減圧下、加熱温
度160℃で留出してきた初期留分3.3gを除き、次
に加熱温度を徐々に上げて、200℃までに留出してき
た第2留分24.2gを得た。第2留分を19F−NMR
スペクトルにより分析したところ、数平均分子量は2,
100、二官能性純度は99.4モル%であった。
【0131】合成例7 内容積1lのフラスコ中でフットボール型回転子を用い
てフッ化セシウム100gおよびテトラグライム170
gおよび CF3 | MeO2 CCF2 CF2 OCFCF 100gを3日間攪拌し、その後、 ‖ O 未反応のフッ化セシウムを遠心分離により除去して を含有する溶液309gを得た。
【0132】この溶液の一部を重合開始剤溶液として使
用して合成例1と同様の方法で、ジメチルエステルを経
由して、下記化38
【化38】 (q’は正の整数を表す)で表される数平均分子量が
4,980で二官能性純度が97.8モル%の無色透明
のRfo(CN)2 20.8gを得た。実施例1 合成例7で得られた数平均分子量4,980、二官能性
純度が97.8モル%のRfo(CN) 2 30.0gを
用いて、以下の方法でアンモニアと反応させて 、ジアミ
ジンを主成分とする粘性物質30.2g(以後DA 3
略記する。)を得た。即ち、Rfo(CN) 2 30.0
gとパーフルオロヘキサン12.0gおよび回転子を内
容積100mlのナスフラスコに充填し、−40℃に冷
却した。次に、そのナスフラスコ中にアンモニア約6g
を凝集させ、−40℃で約1時間反応させた。その後、
約1時間かけて反応液温度を室温付近まで上昇させ、さ
らに1時間攪拌を続けた。フラスコの内容物から、エバ
ポレーターを使用して、低沸点物を除去して、ジアミジ
ンを主成分とする粘性物質(DA 3 )30.2gを得
た。このようにして得られたDA 3 4.0gと合成例7
で得られたRfo(CN) 2 3.28gを20mlのF
−113に溶解させた後、エバポレーターでF−113
を完全に除去して、DA 3 とRfo(CN) 2 の透明な
均一混合物を得た。この混合物を40℃で70時間反応
させたところ、F−113中、30℃での固有粘度が
0.157dl/gの半固体状のPIAが得られた。以
上のようにして得られたPIAを減量として、以下の方
法でPTRを合成した。PIA4.0gをパーフルオロ
ヘキサン50mlに溶解した溶液と下記化39に記載の
化合物8.0gとを、フタ付きの内容積200mlのポ
リエチレン製容器に充填し、50℃で30時間攪拌を続
けた。
【化39】 次いで、そのようにして得られた反応溶液に、ジエチル
エーテル100mlをゆっくり滴下することによりポリ
マーを沈殿させた。このポリマー全量を、パーフルオロ
ヘキサン50mlに溶解し、その後、ジエチルエーテル
100mlを添加することにより、再びポリマーを沈殿
させた。このようにして得られた沈殿物から、低沸点物
をエバポレーターにより完全に除去したところ、F−1
13中、30℃での固有粘度が0.164dl/gの半
固体状のPTRが得られた。 このPTRの赤外線吸収ス
ペクトルにおいては、1600cm -1 と1660cm -1
のポリイミドイルアミジンに帰属される特性吸収バンド
が消失し、1550cm -1 にトリアジン環に帰属される
鋭い特性吸収バンドが認められた。このことから、上記
操作により、PIAからPTRへの変換が行われたこと
が確認された。また、このPTRは、トルエン、オクタ
ン、石油エーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、アセ
トン、四塩化炭素、メタノール、テトラヒドロフラン等
の有機溶媒に対しては、実質的な溶解性は認められず、
高い耐溶剤性を示した。なお、このPTRをポリアセタ
ール、6−ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネー
ト、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチックと配
合して、70℃で1週間加熱しても、これらのプラスチ
ックには、寸法変化、重量変化は殆ど認められず、この
PTRの各種プラスチックとの高い適合性が確認され
た。
【0133】参考例 1 合成例3の第2留分と全く同様の方法で得られた下記
40
【化40】 で表される構造の数平均分子量4,850、二官能性純
度99.5モル%のRfo(CN)2 を用いて、以下の
反応を行った。
【0134】内容積200mlの加圧反応容器に20gの
アンモニアと30mlのF−113とを充填し、−15℃
に冷却した。反応容器中の内容物を攪拌しながら、そこ
へ、前記Rfo(CN)2 30.0gを60gのF−1
13に溶解した溶液を定量ポンプを使用して20ml/hr
の流速で添加した。その後、−15℃で1時間、さらに
室温で12時間攪拌を行った。上記反応溶液中には、少
量の浮遊物が認められたので、反応溶液を濾紙で濾過し
た後、エバポレータで60℃に加熱しながら溶媒を除去
したところ、薄いピンク色をした透明の粘性物質が仕込
みRfo(CN)2 とほぼ同様の量(30.1g)得ら
れた。
【0135】この粘性物質の赤外線吸収スペクトルを測
定したところ、2,260cm-1のニトリル基の特性吸収
バンドが消失し、1,695cm-1にアミジン基の強い特
性吸収バンドが認められた。なお、この粘性物質の19
−NMRスペクトルにおいても、ニトリル基の消失とア
ミジン基の生成が確認されたが、アミジン基以外の生成
物も一部生成していることがわかった。次に、このアミ
ジンを主成分とすると考えられる粘性物質(以後DA1
と略記する)4.0gとRfo(CN)2 を表1に示す
仕込み比で50mlのF−113に溶解させた。エバポレ
ータでF−113を完全に除去して得られたDA1 とR
fo(CN)2 の透明な均一混合物を、40℃で15時
間静置しておいたところ、表2に示すように、DA1
Rfo(CN)2 の仕込み比に応じて各種の固有粘度を
示すポリマーが生成した。
【表2】
【0136】生成したポリマーの赤外線吸収スペクトル
を測定したところ、いずれの場合も、1,600cm-1
1,660cm-1にイミドイルアミジン結合に帰属される
強い特性吸収バンドが認められ、PIAが生成している
ことが確認された。固有粘度が0.2dl/g前後のPI
Aは、室温付近ではほとんど流動性を示さない若干の弾
性を示す半固体であり、固有粘度が0.12dl/g〜
0.15dl/g付近のPIAは、室温付近で僅かに流動
性を示すワックス状物質であった。なお、固有粘度が
0.12dl/gのPIAは、粘度平均分子量としては、
約42×104 に相当し、固有粘度が0.122dl/g
のPIAは、粘度平均分子量としては、約15×104
に相当する。
【0137】参考例参考例 1と全く同様の方法で得られたRfo(CN)2
とDA1 を使用し、実施例1の5倍のスケールでPIA
合成反応を行った。DA1 と反応させるRfo(CN)
2 のモル数とDA1 合成に使用したRfo(CN)2
モル数の比を0.86にしてPIA合成反応を行った場
合には、生成したPIAの固有粘度は0.213dl/g
であり、参考例1とほぼ同じ結果が得られた。
【0138】参考例参考例 1で使用したRfo(CN)2 と同じRfo(C
N)2 を使用して、以下の反応を行った。Rfo(C
N)2 50gとパーフルオロヘキサン20.0および回
転子を内容積100mlのナスフラスコに充填し、−40
℃に冷却した。次に、そのナスフラスコ中にアンモニア
約10gを凝集させ、−40℃で約1時間反応させた。
その後、約1時間かけて反応液温度を室温付近まで上昇
させ、さらに1時間攪拌をつづけた。フラスコの内容物
から、エバポレーターを使用して、低沸点物を除去し
て、ジアミジンを主成分とする粘性物質(以後DA2
略記する)を得た。
【0139】このようにして得られたDA2 全量と4
4.5gのRfo(CN)2 を200mlのF−113に
溶解させた後、エバポレーターでF−113を完全に除
去して、DA2 とRfo(CN)2 の透明な均一混合物
を得た。この混合物を40℃で20時間静置したとこ
ろ、室温付近で全く流動性を示さない透明な弾性固体が
得られた。この弾性固体状PIAのパーフルオロオクタ
ン中、40℃で、オストワルド粘度計により測定した固
有粘度は0.288dl/gであり、粘度平均分子量とし
ては約7×105 に相当する。
【0140】参考例4 合成例3の第3留分として得られた数平均分子量5,0
90、二官能性純度99.9モル%以上のRfo(C
N)2 を、さらにパーフルオロヘキサンを展開溶媒とし
てシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーにより精
製した。このようにして得られた高純度Rfo(CN)
2 10.0gを原料として、参考例3に記載の方法と同
様にして、アンモニアで処理してジアミジンを主成分と
する粘性物質(以後DA3 と略記する)を得た。DA3
5.0gと、上記高純度4.40gをパーフルオロヘキ
サン20mlに溶解させた後、エバポレーターでパーフル
オロヘキサンを完全に除去して、DA3とRfo(C
N)2 の透明な均一混合物を得た。この混合物を40℃
で30時間静置したところ、室温付近で全く流動性を示
さない無色透明な弾性固体が得られた。この弾性固体状
PIAの2H−テトラデカフルオロ−5−(トリフルオ
ロメチル)−3,6−ジオキサノナン中、50℃での固
有粘度は0.511dl/gであり、粘度平均分子量とし
ては約2×106 に相当する。
【0141】参考例参考例 3と同様の操作を行うが、ただし、DA2 とRf
o(CN)2 の反応を10mlのパーフルオロオクタン存
在下で、40℃で3日間かけて行ったところ、固有粘度
0.241dl/gのPIAが得られた。
【0142】参考例6〜12 合成例1、2、3および4で合成されたか、あるいは同
様の方法で合成された一般式化40で表される各種品質
のRfo(CN)2 を使用して、参考例3と同様の方法
でPIAを合成した結果を表3に示す。
【0143】参考例13〜16 合成例1と同様の方法で、各種二官能性重合開始剤を使
用して、下記化41
【化41】 (ただし、Aは二官能性重合開始剤残基を表す。)で表
される各種Rfo(CN)2 を合成した。このようにし
て合成された各種Rfo(CN)2 を使用して、参考例
3と同様の方法で、PIAを合成した結果を表4に示
す。
【表3】
【表4】
【0144】参考例17参考例 4で得られた固有粘度0.511dl/gのPIA
を原料として、以下の方法でPTRを合成した。PIA
4.0gを2H−テトラデカフルオロ−5−(トリフル
オロメチル)−3,6−ジオキサノナン50mlに溶解し
た溶液と無水トリフルオロ酢酸4.0gとを、フタ付き
の内容積200mlのポリエチレン製容器に充填し、40
℃で15時間攪拌を続けた。次いで、そのようにして得
られた反応溶液に、ジエチルエーテル100mlをゆっく
り滴下することによりポリマーを沈殿させた。このポリ
マー全量を、2H−テトラデカフルオロ−5−(トリフ
ルオロメチル)−3,6−ジオキサノナン50mlに溶解
し、その後、ジエチルエーテル100mlを添加すること
により、再びポリマーを沈殿させた。このようにして得
られた沈殿物から、低沸点物をエバポレーターにより完
全に除去したところ、透明な弾性固体状ポリマー3.9
5gが得られた。
【0145】この弾性固体の赤外線吸収スペクトルにお
いては、1600cm-1と1660cm-1のポリイミドイル
アミジンに帰属される特性吸収バンドが消失し、155
0cm-1にトリアジン環に帰属される鋭い特性吸収バンド
が認められた。このことから、上記操作により、PIA
からPTRへの変換が行われたことが確認された。この
こようにして得られたPTRの固有粘度は、0.562
dl/gであった。また、このPTRは、トルエン、オク
タン、石油エーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、ア
セトン、四塩化炭素、メタノール、テトラヒドロフラン
等の有機溶媒に対しては、実質的な溶解性は認められ
ず、高い耐溶剤性を示した。なお、このPTRをポリア
セタール、6−ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネ
ート、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチックと
配合して、70℃で1週間加熱しても、これらのプラス
チックには、寸法変化、重量変化はほとんど認められ
ず、このPTRの各種プラスチックとの高い適合性が確
認された。
【0146】参考例18参考例 3で得られた固有粘度0.288dl/gのPIA
を原料として、参考例17と同様の反応によりPTRを
合成するが、ただし、無水トリフルオロ酢酸4.0gの
代わりに、下記化42
【化42】 10.0gを使用し、反応条件として40℃で15時間
の代わりに、80℃で24時間を採用して行った。その
結果、固有粘度0.308dl/gの透明な弾性固体状の
PTR4.36gが得られた。また、このPTRも、
考例17で得られたPTRと同様に、高い耐溶剤性と各
種プラスチックとの適合性を示した。
【0147】参考例19参考例 1で得られた固有粘度0.144dl/gのPIA
を原料として、参考例17と同様の反応によりPTRを
合成するが、ただし、無水トリフルオロ酢酸4.0gの
代わりに、 8.0gを使用し、2H−テトラデカフルオロ−5−
(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサノナンの代
わりに、パーフルオロヘキサンを使用し、反応条件とし
て40℃で15時間の代わりに、50℃で30時間を採
用して行った。その結果、固有粘度0.151dl/gの
透明なワックス状のPTR4.24gが得られた。ま
た、このPTRも、参考例17で得られたPTRと同様
に、高い耐溶剤性と各種プラスチックとの適合性を示し
た。
【0148】参考例20参考例 1で得られた固有粘度0.115dl/gのPIA
を原料として、参考例19と同様の反応によりPTRを
合成するが、ただし、パーフルオロヘキサンの代わりに
F−113を使用し、反応条件として50℃で30時間
の代わりに、45℃で48時間を採用して行った。その
結果、固有粘度0.126dl/gの透明な高粘度のPT
R4.28gが得られた。また、このPTRも、参考例
19で得られたPTRと同様に、高い耐溶剤性と各種プ
ラスチックとの適合性を示した。
【0149】参考例21 DA1 4gと反応させるRfo(CN)2 のモル数とD
1 4gに使用したRfo(CN)2 のモル数の比を
0.63とする以外は、参考例1と全く同様にして、固
有粘度0.077dl/gのPIAを得た。このPIAを
原料とする以外は、参考例20と全く同様にして、固有
粘度0.082dl/gの透明な粘性のPTR4.15g
が得られた。このPTRも、参考例20で得られたPT
Rと同様に、高い耐溶剤性と各種プラスチックとの適合
性を示した。
【0150】参考例22 参考例19、20、21と同様の方法で得られた固有粘
度がそれぞれ0.171dl/g、0.130dl/g、
0.085dl/gの3種のPTRおよび、数平均分子量
が約10,000の下記化43
【化43】 で表される末端安定化HFPOオリゴマーの潤滑特性を
曽田式四球摩擦試験機を用いて、テスト球にサンプルを
塗布したものを用いてJIS2519に基づいて 750
rpm 、1分間の条件で測定した結果を表5に示す。
【0151】
【表5】 この摩擦試験結果により、高分子量PTRは、従来から
潤滑剤として使用されている末端安定化HFPOオリゴ
マーと同等か、あるいはそれ以上の潤滑特性を有するこ
とが分かる。
【0152】参考例23 参考例19、20、21と同様の方法で得られた固有粘
度がそれぞれ0.171dl/g、0.130dl/g、
0.085dl/gの3種のPTR、および数平均分子量
が約6,500の下記化44
【化44】 で表されるパーフルオロポリエーテルの加熱条件下での
重量減少速度を、熱天秤を用いて、窒素雰囲気下で測定
した結果を表6に示す。
【0153】
【表6】
【0154】参考例24 参考例19、20、21と同様の方法で得られた固有粘
度がそれぞれ0.171dl/g、0.130dl/g、
0.085dl/gの3種のPTR、および数平均分子量
が約8,250の化43で表される末端安定化HFPO
オリゴマー加熱減圧条件下での重量減少を250℃、
0.1mmHg、2時間の条件下で測定した結果を表7に示
す。
【0155】
【表7】
【0156】参考例25 参考例19、20、21と同様の方法で得られた固有粘
度がそれぞれ0.171dl/g、0.130dl/g、
0.085dl/gの3種のPTR、および数平均分子量
が約8,250の化43で表される末端安定化HFPO
オリゴマーを各種金属と接触させ、空気中で330℃、
10時間加熱した後の金属表面の腐食状態を表8に示
す。この結果は、ステンレス(SUS304)およびチ
タンに対しては、PTRは末端安定化HFPOオリゴマ
ーと同等の耐酸化腐食性を示し、また、アルミニウムに
対しては、PTRは末端安定化HFPOオリゴマーより
優れた耐酸化腐食性を示している。この結果は、PTR
が300℃以上の高温下でも各種金属材料存在下で安定
して使用できることを示している。
【0157】
【表8】
【0158】参考例26 参考例20および21と同様の方法で得られた固有粘度
がそれぞれ0.130dl/g、0.085dl/gの2種
のPTRおよび、数平均分子量が約8,250の化43
で表される末端安定化HFPOオリゴマーの200℃お
よび300℃における粘度を、B型回転粘度計を用いて
測定した結果を表9に示す。
【0159】
【表9】
【0160】参考例27 参考例24で使用した数平均分子量8,250の末端安
定化HFPOオリゴマーおよび各種分子量のPTRは、
微粒子状ポリテトラフルオロエチレンと混合するとグリ
ース状となり、グリース状潤滑剤として使用することが
できる。これらの各種グリースの200℃および300
℃での油分離(すなわち、増稠剤として使用したポリテ
トラフルオロエチレン粒子と、各種基油との高温での分
離の程度)を比較した結果を表10に示す。表10の結
果は、末端安定化HFPOオリゴマーを用いて調合した
グリースでは、高温では顕著な油分離が認められ高温用
潤滑剤として適さないが、PTRを用いて調合したグリ
ースでは、高温でも油分離が少なく、200℃以上や3
00℃付近の高温でもグリース状潤滑剤として機能する
ことを示している。
【0161】
【表10】
【0162】(重量比) 〔グリースの調製は、ダイキン工業株式会社製のルブロ
ン(商品名)LD−1〔粒子径0.2μのポリテトラフ
ルオロエチレン微粒子を1,1,2−トリクロロ−1,
2,2−トリフルオロエチレンに分散させたもの〕を使
用して調合した。〕参考例22〜27から、各種特定粘
度のPTRは、200℃以上あるいは300℃付近での
高温用および/または高真空用潤滑剤として有効である
ことが明確となった。
【0163】参考例28 参考例20で得られた固有粘度0.126dl/gでのP
TRを2H−テトラデ カフルオロ−5−(トリフルオロ
メチル)−3,6−ジオキサノナンに溶解し、0.1重
量%の溶液を作製した。この溶液中に、スパッタ法でC
o−Ni−Pt系の磁性膜を形成して作製した磁気ディ
スク用薄膜媒体をひたした後に引上げ、250℃で10
分間加熱することで、磁気ディスク用薄膜媒体表面に潤
滑剤層を形成した。この磁気ディスク用薄膜媒体表面の
摩擦係数を、日本国パティーテック社製のディスク摩
耗、摩擦試験機(PT−101型)を用いて評価した。
その結果、摩擦係数0.2という値を得た。
【0164】参考例29 参考例18で得られた固有粘度0.308dl/gのPT
R、参考例1で得られた固有粘度0.112dl/gと
0.215dl/gのPIAおよび数平均分子量が約6,
500の化44で表されるパーフルオロポリエーテルを
用いて、参考例28と同様に磁気ディスク用薄膜媒体表
面に潤滑剤層を形成した。これらの磁気ディスク用薄膜
媒体表面の摩擦係数を参考例28と同様にして評価した
結果を表11に示す。また、同じ装置を用いて、CSS
テストを実施し、起動、停止を10、000回繰り返し
た後の摩擦係数を測定した結果を、参考例28の媒体の
値と併せて表11に示す。
【0165】
【表11】
【0166】参考例30 参考例28および29で作製した媒体を、3600rpm
で回転させておき、イソプロピルアルコール(IPA)
中にひたしたティシュペーパーを充分な指の圧力でディ
スクに対して約30秒間圧し、ティシュペーパーを記録
表面を横切って数回動かした。この媒体を風乾した後
に、参考例28と同様にして摩擦係数を評価した。その
結果を表12に示す。
【0167】
【表12】 参考例28〜30から、特定の粘度を有するPIAおよ
びPTRは、磁気記録材料用の潤滑剤として有用である
ことが明確である。
【0168】参考例31 数平均分子量約8,000で表される末端安定化HFP
Oオリゴマーは、B型粘度計によると、30℃では80
0cst と充分な粘度を示すが、200℃では6cst 、さ
らには、260℃では3cst と高温領域での粘度が極め
て低くなり、潤滑剤としての粘度が不充分である。上記
HFPOオリゴマー13.0gと参考例19と同様の方
法で得られた固有粘度0.160dl/gでの室温付近で
ワックス状のPTR7.0gを100gのパーフルオロ
ヘキサンに溶解させた後、エバポレーターでパーフルオ
ロヘキサンを除去することにより、無色透明で均一な高
粘性液状組成物が得られた。この組成物の200℃での
粘度は23.4cst で、また、260℃の粘度も1 0.
3cst と高温領域での粘度が大幅に改善された。
【0169】参考例32 参考例31で使用した数平均分子量約8,000で表さ
れる末端安定化HFPOオリゴマー〔以下、(A)と略
記する〕、固有粘度0.160dl/gのPTR〔以下、
(B)と略記する〕、微粒子状ポリテトラフルオロエチ
レン(F−113中に分散させたもの)〔以下、(C)
と略記する〕および、参考例18と同様の方法で合成さ
れた固有粘度が0.315dl/gのPTR〔以下、
(D)と略記する〕より表13で示した組成のグリース
3種類を作成し、高温領域での油分離を調べたところ、
PTRの添加による基油の粘度上昇により顕著な油分離
の抑制効果が認められた。
【0170】
【表13】
【0171】参考例33 参考例3により得られたPIA10gの2H−テトラデ
カフルオロ−5−(トリフルオロメチル)−3,6−ジ
オキサノナンに溶解し、0℃に冷却しアンモニア雰囲気
下で24時間反応を行った。その後、エバポレーターを
使用し低沸成分を除去して、両末端がアミジン化された
PIAを得た。このようにして得られた両末端がアミジ
ン化されたPIAを再び、40gの2H−テトラデカフ
ルオロ−5−(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキ
サノナンに溶解し、 CF 3 CF 3 CF 2 CF 2 OCFCN 1g を加え、40℃で36時間攪拌した。エバポレーターを
使用して低沸成分を除去し下記化45
【化45】 の構造を持つと考えられるPIA9.8gを得た。
【0172】このようにして得られたPIAを用いて、
参考例17と同様の反応によりPTRを合成したが、た
だし、無水トリフルオロ酢酸40gの代わりに下記化4
【化46】 10.0gを使用して合成した。
【0173】 このようにして下記化47
【化47】 の構造を持つと考えられる末端安定化されたPTRが得
られた。固有粘度は0.309dl/gであった。
【0174】参考例34 参考例 2と同様の方法で、DA1 と反応させるRfo
(CN)2 のモル数とDA1 の合成に使用したRfo
(CN)2 のモル比を0.90にしてPIAの合成反応
を行ったところ、生成したPIAの固有粘度は0.17
8dl/gであり、参考例1における同様の反応組成比の
場合とほぼ同じ粘度のPIAが得られた。上記反応組成
比では、最高粘度のPIAを与えるモル比(0.86)
の場合よりもRfo(CN)2 量が過剰になっているの
で、PIA末端の大部分はニトリル基末端となっている
ものと考えられる。
【0175】 CF3 CF3 | | 上記PIA20gと、CF3 CF2 CF2 OCFCN を液体アンモニアと− 30℃で反応させて得られた単官能性アミジン CF3 NH2 | / CF3 CF2 CF2 OCFC ‖ NH 2.0gを20gのF−113に溶解し、40℃で20
時間反応させた。次に、当該反応液にジエチルエーテル
を添加してポリマーを沈殿させて分離し、さらにジエチ
ルエーテルで洗浄した後、エバポレーターで低沸無水物
を除去することにより、化45の構造を持つと考えられ
るPIA19.9gを得た。このPIAを参考例33
同様の方法でトリアジン化することにより末端安定化P
TRを得た。
【0176】参考例35 参考例 18により得られたPTRと参考例33と34
より得られた末端安定化されたPTRの加熱条件下での
重量減少速度を熱天秤を用いて、空気中で測定した結果
表14に示す。この結果より、参考例33および34
の末端安定化処理よりPTRの熱安定性が大幅に向上し
たことが分かる。
【0177】
【表14】
【0178】参考例36 参考例 19と同様の方法で合成した固有粘度が0.16
0dl/gのPTRと、参考例20と同様の方法で合成し
た固有粘度が0.130dl/gのPTRを、空気中25
0℃で30日間加熱したが、当該PTRの外観および赤
外線吸収スペクトルは加熱前後では全く変化しておら
ず、重量変化は1重量%以下であり、固有粘度の変化も
認められなかった。
【0179】参考例37 ステンレス製の外径40mmφの固定シリンダーと、同心
軸上に設置されたステンレス製の内径30mmφのシリン
ダー間(間隔1mm)に参考例36で使用された2種類の
PTRを充填し、250℃にて外側のシリンダーを50
0rpm で回転(せん断速度、1000S-1)し、内側の
シリンダーに設置したトルクゲージで発生応力を測定し
た。参考例36に示した加熱前後のPTRにつき発生応
力を上記方法で測定したが、両PTRとも、加熱前後で
の発生応力の変化は全く認められず、当該PTRは、2
50℃の高温条件下でも長期間にわたり安定したトルク
伝達性能を維持することが確認された。なお、市販の2
5℃の粘度が1万センチストークス、および10万セン
チストークスのジメチルコーンオイルを空気中、250
℃で10日間加熱したところ、いずれのオイルもゲル化
してしまいトルク伝達油としては使用できなくなってし
まった。
【0180】参考例38 参考例 18と同様の方法で合成され固有粘度が0.31
5dl/gのPTRの化学的安定性を以下の条件下で調べ
たが、いずれの場合も、PTRの外観、赤外線吸収スペ
クトルおよび固有粘度は全く変化しなかった。 化学安定性測定条件(*) ・NaCl水溶液(有効塩素濃度12%) : 30℃、20時間 ・H2 2 水溶液(35重量%) : 60℃、20時間 ・CH3 CO2 H : 60℃、20時間 ・H2 SO4 (97%) :150℃、20時間 ・NaOH水溶液(12重量%) : 60℃、20時間 ・ピリジン : 60℃、20時間 ・アニリン : 60℃、20時間 〔(*):PTR/評価液体=1/100(重量比)〕
【0181】参考例4で得られた固有粘度0.511dl
/gのPIAを1重量%含有するパーフルオロヘキサン
溶液〔PIA溶液(1)と略記する〕と、参考例1で得
られた固有粘度0.151dl/gのPIAを1重量%含
有するF−113溶液〔PIA溶液(2)と略記す
る〕、および、市販の末端安定化HFPOオリゴマー
〔 Krytox (商品名)143AD(数平均分子量8,2
50、米国デュポン社製〕を1重量%含有するパーフル
オロヘキサン溶液〔以下、 Krytox 溶液と略記する〕を
用いて、以下の方法で顕微鏡測定に使用するカバーガラ
スの表面処理を行った。
【0182】(i)上記3種類の溶液のそれぞれに、カ
バーガラスを10分間浸した後、カバーガラスを溶液よ
り取り出して100℃のオーブン中に30分間放置し
た。次に、上記の方法で得られた3種類の表面処理カバ
ーガラスと無処理カバーガラスの上に水滴を落として、
ガラス表面状の液滴の接触角を測定した。その結果、無
処理サンプルと、 Krytox 溶液処理サンプルの場合は、
いずれの場合も、水滴の接触角は20°以下であるのに
対し、PIA溶液(1)およびPIA溶液(2)で処理
したサンプルでは、いずれの場合も水滴の接触角は約9
0°であった。
【0183】(ii)PIA溶液(1)にカバーグラスを1
0分間浸した後、カバーガラスを溶液より取り出し、た
だちに大量のパーフルオロヘキサンで表面を洗浄し、そ
の後、室温で30分間放置して溶媒を除去した。このサ
ンプルに、水滴を滴下して、ガラス表面上の接触角を測
定したところ約90°であった。また、さらに、このサ
ンプル表面にメタノールを滴下したところ、メタノール
はガラス表面上で液滴を維持しているが、無処理ガラス
表面上では、メタノールは滴下直後にガラス表面上を拡
散してしまい、液滴は形成されない。以上の結果より、
PIA処理により、高い撥水性および撥メタノール性の
表面が形成されたことが確認された。
【0184】参考例40 参考例 39で使用したPIA溶液(1)、(2)および
Krytox 溶液にアルミニウム板を10分間浸した後、1
00℃のオーブン中で10分間放置した。次に上記の方
法で得られた3種類の表面処理アルミニウム板と無処理
アルミニウム板上に、n−オクタンを滴下して液滴の形
成状態を観察した。その結果、無処理サンプルと、 Kry
tox 溶液で処理したサンプルでは、n−オクタンは滴下
直後にアルミニウム表面板を拡散してしまい、液滴は形
成されない。一方、PIA溶液(1)およびPIA溶液
(2)で処理したアルミニウムの板表面上では、n−オ
クタンの液滴が形成され、アルミニウム板を傾けると、
n−オクタンの液滴はアルミニウム板表面を滑り落ち
た。この結果から、PIA処理により、アルミニウム板
表面に高い撥油性表面が形成されたことが確認された。
【0185】参考例41 参考例 39で使用したPIA溶液(1)、(2)および
Krytox 溶液にしんちゅう板を30分間浸した後、10
0℃のオーブン中で30分間放置した。次に上記の方法
で得られた3種類の表面処理しんちゅう板と無処理しん
ちゅう板上に、30重量%の硝酸水溶液を滴下して表面
状態を観察した。その結果、無処理サンプルと、 Kryto
x 溶液で処理したサンプルでは、硝酸水溶液滴下後から
滴下部分で激しく泡が発生し、しんちゅう板表面が腐蝕
されて、硝酸水溶液の色が無色から緑色に変化した。一
方、PIA溶液(1)で処理したサンプルでは、しんち
ゅう板表面に液滴が形成され、滴下後15分間までは全
く変化がなかったが、15分後から徐々に泡の発生が認
められた。また、PIA溶液(2)で処理したサンプル
では、硝酸水溶液滴下後、6分間から徐々に泡が発生し
た。以上の結果から、PIA処理により、しんちゅう板
表面上に耐食性の表面が形成されたことが確認された。
【0186】参考例42 参考例 39で使用したPIA溶液(2)に、粒径10μ
mのアルミニウムクロメートの微粒子を添加し、30℃
で30分間攪拌した。その後、アルミニウムクロメート
粒子を濾過し、80℃で30分間乾燥した。以上のよう
にして処理したアルミニウムクロメート微粒子を水面上
にゆっくり落下させると、大部分は水面上に浮かんだ。
一方、無処理のアルミニウムクロメート微粒子は、水面
上に落下させた直後から水中に沈降していく。この結果
は、PIA処理により、アルミニウムクロメート表面に
PIA層が形成され、高い撥水性が発現し、その結果と
して表面張力によりアルミニウムクロメート粒子が水面
上に浮かんだことを示している。なお、上記のPIA処
理したアルミニウムクロメート微粒子と、無処理のアル
ミニウムクロメート微粒子を、シリコンオイル中に分散
させ、1週間放置後に、沈降した粒子の再分散性を調べ
たところ、PIA処理微粒子の方が、無処理微粒子に比
べて、はるかに高い再分散性を示した。
【0187】
【発明の効果】本発明の高分子量のポリイミドイルアミ
ジン(PIA)およびそれから誘導される高分子量のポ
リトリアジン(PTR)は、その高分子量の故に、従来
の低分子量のPIAおよびPTRに比較して、高い粘性
を示し、しかも、当該PTRは優れた耐薬品性や耐熱性
を有するので、これまでのPIAおよびPTRでは考え
られない用途が期待される。また、高分子量のPIAか
らは容易に各種の高い安定性を有する高分子量のPTR
が得られ、このPTRの中でも特に分子量の高いものは
固体状物質であって、化学的に安定な構造材料としても
有用である。また、特定の固有粘度範囲のPIAは磁気
記録材料用の潤滑剤として、あるいは金属材料およびセ
ラミックスのような無機材料の表面処理剤として有用で
あり、また、特定の固有粘度範囲のPTRは、パーフル
オロポリエーテルよりなるフッ素オイルあるいはフッ素
系グリースの粘度調節剤、または高温および/または高
真空条件下で使用可能な潤滑剤、磁気記録材料用潤滑剤
あるいは高安定性トルク伝達油としても有用である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G11B 5/71 G11B 5/71 // C10N 20:02 20:04 40:04 40:18 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 73/00 C08G 73/06 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化1で表される繰り返し単位よりな
    る固有粘度が0.12dl/g〜0.60dl/gの範囲内
    であるポリイミドイルアミジン。 【化1】 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×103 〜5×1
    4 の範囲であって、下記化2 【化2】 で表される二官能性ヘキサフルオロプロピレンオキシド
    オリゴマーの二価残基である。A’は炭素数1〜19の
    パーフルオロアルキレン基である。pは4〜300の整
    数である。なお、化1の各ユニットは同じか、または異
    なっていてもよい。〕
  2. 【請求項2】 (a)下記化3 【化3】 Rfo(CN)2 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×103 〜5×1
    4 の範囲であって、前記化2で表される二官能性ヘキ
    サフルオロプロピレンオキシドオリゴマーの二価残基で
    ある。〕で表される数平均分子量が1×103 〜5×1
    4 で少なくとも95モル%の二官能性純度を有するヘ
    キサフルオロプロピレンオキシドオリゴマージニトリル
    (α)を、該オリゴマージニトリル(α)のモル数に対
    して5倍モル以上のアンモニアと反応させ、 (b)この反応生成物に対し、化3で表される数平均分
    子量が1×103 〜5×104 で少なくとも95モル%
    の二官能性純度を有するヘキサフルオロプロピレンオキ
    シドオリゴマー(β)を、該オリゴマージニトリル
    (α)のモル数に対して0.60〜0.99のモル比で
    反応させることによりなり、その際該オリゴマージニト
    リル(α)および(β)は同じでも異なっていてもよ
    い、前記化1で表される繰り返し単位よりなるポリイミ
    ドイルアミジンの製造方法。
  3. 【請求項3】 下記化4で表される繰り返し単位よりな
    り、固有粘度が0.15dl/g〜0.65dl/gのポリ
    トリアジン。 【化4】 〔ただし、Rfoは数平均分子量が1×103 〜5×1
    4 の範囲であって、前記化2で表される二官能性ヘキ
    サフルオロプロピレンオキシドオリゴマーの二価残基で
    ある。Rは炭素数1〜15のパーフルオロアルキル基、
    または炭素数2〜100のパーフルオロエーテル基を
    す。なお、化4の各ユニットは同じか、または異なって
    いてもよい。〕
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