JP2885554B2 - 食肉製品用発酵促進剤と発酵食肉の製造方法 - Google Patents

食肉製品用発酵促進剤と発酵食肉の製造方法

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JP2885554B2 JP3269693A JP26969391A JP2885554B2 JP 2885554 B2 JP2885554 B2 JP 2885554B2 JP 3269693 A JP3269693 A JP 3269693A JP 26969391 A JP26969391 A JP 26969391A JP 2885554 B2 JP2885554 B2 JP 2885554B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、食肉製品用発酵促進
剤と発酵食肉の製造方法に関するものである。さらに詳
しくは、この発明は、サラミソーセージ等の発酵食肉製
品の製造工程において発酵に使用する乳酸菌等の微生物
の増殖を促進させる発酵促進剤と、この発酵促進剤を用
いた発酵食肉の製造方法に関するものである。
【0002】なお、この明細書において百分率は、特に
断りのない限り重量による百分率を表す。
【0003】
【従来の技術】一般に、サラミソーセージ等のセミドラ
イ・ソーセージに代表される発酵食肉製品を製造する場
合には、原料となる肉および脂肪を適宜の細かさに挽
き、香味料を添加した処理肉を浅いバットに入れるか、
またはケーシングに詰め、3〜4℃に2〜3日間保持
し、わずかに通気しながら乾燥、発酵を行う工程があ
る。この発酵は自然発酵であり、たとえばバシラス属、
ラクトバシラス属、アクロモバクター属、エンテロバク
ター属、ミクロコッカス属等の種々の微生物が関与す
る。これらの微生物の中ではミクロコッカス属が最も多
く、この微生物は炭水化物を資化して乳酸を生成し、5.
9 〜6.0 であった原料肉のpHを、5.4 〜5.6 まで低下さ
せ、発色を完了させる。
【0004】このように、発酵工程はpHの変動によって
大きな影響を受ける。たとえば、ミクロコッカス属以外
の菌の汚染により、pHがさらに低下(pH4.8 〜4.9 )す
れば、酢酸およびギ酸が生成され、製品の風味が悪くな
り、さらに硝酸塩を過剰に還元し、いわゆる「亜硝酸焼
け」を生じる。一方、発酵が進行せずにpHが5.7 以上の
場合、発色が不十分な上に、腐敗菌が増殖して風味およ
び組織の悪い製品となる。 このような点から、最近、
発酵のためのスターターとして乳酸菌を原料肉に添加す
る方法が採用され始めている。乳酸菌を純粋培養し、凍
結乾燥した粉末が市販されており、原料肉の0.06% に相
当する量を水で3倍に希釈し、ミキサー等で均一に原料
肉に添加する。この方法によれば、自然発酵に比較して
安全、かつ短時間に所望のpHに到達させることができる
利点がある。
【0005】従って、近年乳酸菌を用いて原料肉を発酵
する種々の方法が開発されている。例えば、乳酸菌を培
養した酪農製品を肉製品の2〜8%添加する方法(特開
昭56-68339号公報)、新規なペディオコッカス・ペント
サセウス(NRRL-B-11465)を用い、発酵を促進するのに
充分な量の食品グレードの発酵刺激性金属塩を添加して
発酵を行う方法(特開昭57-155970 号公報)、ラクトバ
シラス属に属する新規な微生物(FERM P-7409 およびFE
RM P-7408 )で原料肉を発酵する方法(特開昭60-15638
0 号公報)、ラクトバシラス属、スタフィロコッカス
属、およびミクロコッカス属に属する3種の微生物によ
り原料肉を発酵する方法(特開昭61-274663 号公報)等
が開示されている。また最近、ラクトバシラス属、スタ
フィロコッカス属、ミクロコッカス属またはペディオコ
ッカス属に属する微生物を用い、水に難溶性の食用可能
なアルカリ土類金属塩を添加して発酵を行う方法が提案
されてもいる(特開平3-151856号公報)。
【0006】一方、ビフィズス菌増殖促進剤は、人の腸
管内に常在する有用微生物であるビフィズス菌の増殖を
促進する物質であり、種々の物質が知られているが、糖
類からなる物質としては例えば、ラクチュロースがあ
る。従来、これらのビフィズス菌増殖促進剤は、人に投
与して腸管内のビフィズス菌を増殖させるか、またはビ
フィズス菌を含む乳製品の製造においてビフィズス菌を
増殖させる目的で使用されており、乳酸菌による食肉の
発酵に利用された例はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、乳酸菌
を用いて原料肉を発酵させる上記従来方法は、特定の微
生物を使用するか、特定の微生物を組み合わせて使用す
るか、通常食品の製造に使用されない塩類を使用する
か、特定の微生物と特定の塩類を組み合わせて使用する
か、のいずれかであり、汎用できる発酵促進剤、または
発酵方法は開発されていなかった。
【0008】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであり、食肉の発酵に使用する微生物を安定
に増殖させ、一定品質の製品を製造するための発酵促進
剤と、発酵食肉の製造方法を提供することを目的として
いる。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、オリゴ糖類からなるビフィズス
菌増殖促進剤を有効成分とする食肉製品用発酵促進剤を
提供する。また、この発明は、食肉原料を乳酸菌等の微
生物で発酵させて発酵食肉を製造する方法において、食
肉原料の少なくとも0.1%(重量)のオリゴ糖類から
なるビフィズス菌増殖促進剤を食肉原料に添加し、発酵
するこを特徴とする発酵食肉の製造方法を提供する。
【0010】なお、以下の記載においては、オリゴ糖類
からなるビフィズス菌増殖促進剤を単にビフィズス菌増
殖促進剤と記載する。この発明に使用するビフィズス菌
増殖促進剤は、公知の市販されている物質であり、ラク
チュロース、メリビオース、ラフィノース、スタキオー
ス、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、もしくは
フラクトオリゴ糖、またはこれらの2以上の混合物を例
示することができる。これらの物質または混合物は液
状、シロップ状、または粉状であってもよい。
【0011】これらのビフィズス菌増殖促進剤は、人の
消化管内では消化、吸収されずに大腸に到達し、そこで
有用微生物(ビフィズス菌、乳酸菌)を特異的に増殖さ
せる物質である。ビフィズス菌増殖促進剤は、食肉の発
酵においても所望の微生物を特異的に増殖させ、不要な
微生物の増殖を抑制する効果を発揮する。この効果は、
グルコース、フラクトース、乳糖、庶糖等の糖類とは全
く異なるビフィズス菌増殖促進剤特有の効果であり、こ
のことは下記の試験例からも明らかである。
【0012】この発明の方法において原料の食肉に添加
するビフィズス菌増殖促進剤の割合は、原料食肉の重量
に対して少なくとも0.1%、望ましくは0.1〜1.
0%であり、他の原料と均一に混合する。その他の工程
は、従来法と同様に実施することができる。この発明の
方法によれば、所望の有用微生物の増殖が促進され、不
要の微生物の増殖が抑制されるので、下記試験例から明
らかなように製品の不良率を大幅に減少させることがで
き、かつ一定品質の製品が得られる利点がある。 次に
試験例を示してこの発明を詳しく説明する。 (試験例1)この試験は、各種糖類による食肉発酵状態
を調べるために行った。 1)試料の調製 試料として、表1に示した配合割合で実施例1と同一の
方法によりサラミソーセージを製造した。これらの試料
は、スターターおよび糖類を添加しない試料(試料
1)、スターターのみ添加した試料(試料2)、スター
ターおよび各種糖類を添加した試料(試料3〜試料9)
の合計9種である。なお、各種試料は原料肉を変更して
20回反復調製した。調整した試料は、4℃の冷蔵庫に
保管し、風味試験に供した。
【0013】
【表1】
【0014】2)試験方法 男女各10名からなるエキスパート・パネルにより官能
的に20個の各試料の風味を試験し、異常な風味を感じ
た試料を指摘させた。 3)試験結果 この試験の結果は、表2に示したとおりである。この表
2から明らかなように、スターターおよび糖類を添加し
ない試料1、スターターのみを添加した試料2、無水ブ
ドウ糖を添加した試料3、乳糖を添加した試料4、およ
び庶糖を添加した試料5では異常風味の発生率が高いの
に対し、ラクチュロースを添加した試料6、イソマルト
オリゴ糖を添加した試料7、ガラクトオリゴ糖を添加し
た試料8、およびフラクトオリゴ糖を添加した試料9で
は風味の異常が全く認められなかった。この結果から、
ビフィズス菌増殖促進剤を添加した場合は、一定の品質
の製品を製造することが可能であることが判明した。な
お、他の菌株、または糖類を使用して試験した場合もほ
ぼ同様の結果が得られた。
【0015】
【表2】
【0016】(試験例2)この試験は、ビフィズス菌増
殖促進剤の有効量を調べるために行った。 (1)試料の調製 表3に示したように、ラクチュロースを0〜2.0%の
割合で添加した以外は、試験例1と同一の方法により、
8種の試料を調製した。 (2)試験方法 試験例1と同一の方法により行った。ただし、製品のpH
の測定は次の方法によった(天野慶之等編、「食肉加工
シリーズ第3巻、肉製品」、208ページ、光琳書院、
1963年)。試料5gを乳鉢にとって十分すりつぶし
ながら精製水20mlを加えて混練し、遠心分離して上
澄液を採取し、pHメーターで上澄液のpHを測定した。 (3)試験結果 この試験の結果は表3に示したとおりである。この表3
から明らかなように、ビフィズス菌増殖促進剤の添加割
合が原料食肉の0.1%未満の試料11および試料12
は、風味の異常発生率が高くなり、1.0%を超える試
料17および試料18は、酸の生成量が多くなり、酸味
が強くなりすぎ、かつ過剰発酵による色調の黒ずみを生
じ、商品価値が損なわれた。従って、この発明の方法に
おいてビフィズス菌増殖促進剤の添加割合は、原料食肉
の0.1%から1.0%の範囲である。なお、他の糖類
を使用して試験した場合もほぼ同様の結果が得られた。
【0017】
【表3】
【0018】次に実施例および比較例を示してこの発明
をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の実施例に
限定されるものではない。
【0019】
【実施例】
実施例1 細びきした豚赤肉450gと牛赤肉300gに、ラクト
バシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum JCM
-1149T)凍結乾燥品0.1g、およびスタフィロコッカ
ス・シムランス(Staphylococcus simulans JCM-2424T)
凍結乾燥品0.1gを水0.8gに混合した混合物、豚
脂肪215.4g、食塩24g、亜硝酸ナトリウム0.
1g、アスコルビン酸ナトリウム0.5g、ラクチュロ
ース粉末(森永乳業社製)5g、および香辛料4gを添
加し、均一に混合し、コラーゲン・ケーシングに充填
し、温度27℃、湿度90%で48時間熟成し、のち温
度18℃、湿度85%で3日間燻煙し、次いで温度18
℃、湿度70%で35日間乾燥し、真空包装し、サラミ
ソーセージ約700gを得た。原料食肉を変更して同一
の方法を20回反復し、20ロットのサラミソーセージ
を得た。
【0020】得られたサラミソーセージの風味は良好で
あり、市販品と遜色がなかった。なお、ラクチュロース
を除き、使用した原料はすべて市販品であった。 比較例1 ラクチュロース粉末を添加しないことを除き、実施例1
と同一の方法によりサラミソーセージを得た。
【0021】実施例1および比較例1で得たサラミソー
セージのpHを試験例2と同一の方法により測定するとと
もに、試験例1と同一の方法による風味試験を行なっ
た。その結果、実施例1の製品のpH範囲は5.1〜5.
3、平均pHは5.2、異常風味発生率は0%であったの
に対し、比較例1の製品のpH範囲は5.1〜6.4、平
均pHは5.4、異常風味発生率は10%であった。 実施例2 生ハム用原料豚肉1kgに食塩45g、フラクトオリゴ
糖(明治製菓社製:メイオリゴP、フラクトオリゴ糖9
5%以上)10g、亜硝酸ナトリウム0.2g、アスコ
ルビン酸ナトリウム0.5g、およびペディオコッカス
・セレビシエ(Pediococcus cerevisiae IFO-3889) の培
養液(1.5×107/ml)10mlを肉の表面に振
掛けて均一に混合し、5℃で8時間塩漬し、18〜20
℃で7日間燻煙し、15〜18℃で7日間乾燥し、のち
包装し、生ハム約950gを得た。原料食肉を変更して
同一の方法を20回反復し、20ロットの生ハムを得
た。
【0022】得られた生ハムの風味は良好であり、市販
品と遜色がなかった。なお、フラクトオリゴ糖を除き、
使用した原料はすべて市販品であった。 比較例2 フラクトオリゴ糖を添加しないことを除き、実施例2と
同一の方法により生ハムを得た。
【0023】実施例2および比較例2で得た生ハムを試
験例1と同一の方法により風味試験した結果、実施例2
の製品の異常風味発生率は0%であり、一方、比較例2
の製品の異常風味発生率は10%であった。
【0024】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この発明に
よって次のような効果が得られる。 (1)この発明の食肉製品用発酵促進剤は、少ない量で
発酵に有用な乳酸菌のみを選択的に増殖させることがで
きる。 (2)この発明の方法により、食肉の発酵に有用な乳酸
菌のみを増殖させ、望ましくない細菌の増殖を抑制し、
風味、組織の優れた発酵食肉を製造することができる。 (3)この発明の方法により、品質の一定した製品を製
造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−68339(JP,A) 特開 昭61−274663(JP,A) 特公 昭61−61777(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/31 - 1/322 A23B 4/00 - 5/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食肉原料と混合される食肉発酵のための
    微生物増殖促進剤であって、オリゴ糖類からなり、食肉
    の発酵に有用な微生物であるラクトバシラス・プランタ
    ラム、スタフィロコッカス・シムランスまたはペディオ
    コッカス・セレビシェの増殖を促進することを特徴とす
    る微生物の増殖促進剤。
  2. 【請求項2】 オリゴ糖がラクチュロースである請求項
    1の増殖促進剤。
  3. 【請求項3】 食肉原料を食肉の発酵に有用な微生物で
    発酵させて発酵食肉を製造する方法において、食肉原料
    に、食肉原料の0.1〜1.0%(重量)のオリゴ糖
    類、および食肉の発酵に有用な微生物であるラクトバシ
    ラス・プランタラム、スタフィロコッカス・シムランス
    およびペディオコッカス・セレビシェからなる群より選
    択される1種または2種以上の微生物を混合し、これら
    の微生物を増殖させ、食肉原料を発酵させることを特徴
    とする発酵食肉の製造方法。
  4. 【請求項4】 オリゴ糖がラクチュロースである請求項
    3の発酵食肉の製造方法。
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CN114891701B (zh) * 2022-06-22 2023-07-25 浙江省农业科学院 一株模仿葡萄球菌hz01、菌剂及其应用

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