JP2884395B2 - 地盤固結材 - Google Patents

地盤固結材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリカゾル系地盤固結材
の改良に係り、特に、短時間のうちに大きな強度を発現
して、いわゆる立ち上がり強度が高く、かつ長期固結強
度も大きく、さらに耐久性にも優れ、この結果、傾斜し
た建造物の復元工事における注入材として、あるいは交
通の即時開放し得る道路補修材料として、また、裏込注
入材として、さらには盛土あるいは埋設工事用材料とし
て、あるいはまた、掘削残土の処理材として利用し得る
地盤固結材に関する。
【0002】
【従来の技術】地盤固結用注入材として従来、例えば、
アルカリ度の高い水ガラスを用いたセメント−スラグ系
水ガラスグラウトが知られている。このグラウトは固結
強度が大きいが、アルカリの溶脱が懸念される。
【0003】また、水ガラスと酸を混合して得られる酸
性水ガラスと、セメント系とからなるグラウトも知られ
ている。このグラウトは不均質なフロック状の沈澱を生
じやすく、かつ立ち上がり強度も低い。
【0004】さらに、上述の酸性水ガラスと、セメント
・普通スラグ(ブレーン比表面積3500〜4400cm2/g)系
とからなるグラウトも知られている。この普通スラグは
酸性シリカゾルに対しては中和剤として作用し、ゲル化
時間の短縮には役立つものの、強度の増強には役立た
ず、したがって、このグラウトでは、立ち上がり強度の
向上は期待できない。
【0005】また、上述の普通スラグは水ガラスをイオ
ン交換樹脂で処理して得られる中性〜弱アルカリ性のシ
リカゾル(以下、中性シリカゾルという)に対しては反
応性をほとんど示さず、したがって、中性シリカゾルに
対しても強度増強を呈するものではない。
【0006】上述の中性シリカゾルとポルトランドセメ
ントを1.5ショットで合流し、地盤中に注入する方法も
知られている。しかし、この合流によって得られるグラ
ウトもまた、立ち上がり強度が小さく、充分な強度を呈
するためには日数を要し、したがって、直ちに高強度を
必要とする目的には不適である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は短時間のうちに高強度を発現して、いわゆる立ち上が
り強度が高く、しかも長期固結強度も高く、耐久性にも
優れ、さらに、アルカリの溶脱も少なく、上述の公知技
術に存する欠点を改良した酸性シリカゾル−微粒子スラ
グ系の懸濁型地盤固結材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明によれば、酸性シリカゾルと、スラグと、セ
メントおよび/または石灰とを有効成分とする地盤固結
材であって、前記スラグはブレーン比表面積が6000cm2/
g以上の微粒子スラグであることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に詳述す
る。
【0010】本発明に用いられる酸性シリカゾルは水ガ
ラスに硫酸等の鉱酸を添加混合し、水ガラス中のアルカ
リ分を除去して得られる、pHが0.5〜4付近に調整さ
れた酸性シリカゾルである。
【0011】また、本発明に用いられるスラグはブレー
ン比表面積が約6000cm2/g以上の微粒子スラグであり、
好ましくは6000〜20000cm2/g程度の微粒子である。これ
が6000cm2/g以下では特に立ち上がり強度が発現でき
ず、また、微粒子化を極端に行っても、懸濁液中で再凝
集を起こすこともあって、微粒化の効果はそれほど期待
できず、また、粉砕費用も高くつくので、上述の範囲が
適当である。
【0012】さらに、本発明に用いられる上述のセメン
トおよび石灰もまた、ブレーン比表面積がそれぞれ約60
00cm2/g以上の微粒子であることが好ましい。
【0013】上述のセメントおよび石灰はそれぞれ、微
粒子スラグとの混合前にブレーン比表面積が約6000cm2/
g以上となるよう粉砕されてもよく、また、ある程度粉
砕したのち微粒子スラグと混合し、ブレーン比表面積が
約6000cm2/g以上となるまで粉砕されてもよい。さら
に、これは懸濁液状とし、微粒子状のものを分級して微
粒子懸濁液として使用することもできる。
【0014】さらに、上述のセメントとしては、ポルト
ランドセメント、これとスラグとの混合物、微粒子化ポ
ルトランドセメント、高炉セメント、これらのクリンカ
ー粉砕物、この粉砕物に石こう等を混合したセメント微
粒子等が挙げられる。
【0015】上述の酸性シリカゾル−微粒子スラグ−セ
メントおよび/または石灰の系では、ゲル化時間が短い
ため、必要に応じて、さらにゲル化調整剤を含有せしめ
てゲル化時間を遅延させることもできる。
【0016】上述のゲル化調整剤としては、アルカリ金
属あるいはアルカリ土類金属の重炭酸塩、炭酸塩、リン
酸塩、酸性リン酸塩、ピロリン酸塩、珪酸塩等が挙げら
れるが、この中で特に、水に易溶性のものが好ましい。
これらゲル化調整剤は予め水に溶解の後、微粒子スラグ
や、セメント、あるいは石灰に添加してもよく、また、
微粒子スラグや、セメント、石灰とともに水に添加して
もよい。
【0017】上述の本発明にかかる地盤固結材におい
て、酸性シリカゾルの水ガラス配合量は地盤固結材(グ
ラウト)1000cc当り20〜300gが好ましく、これが300
g以上では長期強度が低下し、また、20g以下では立ち
上がり強度が不充分である。また、微粒子スラグと、微
粒子セメントおよび/または石灰との合計配合量はグラ
ウト1000cc当り20〜700gが好ましく、これが700g以
上では粘性が高くなって、送液が困難となり、また、20
g以下では、固結強度が小さくなる。なお、本発明にお
いて、上記水ガラス配合量は3号水ガラスに換算し、こ
の3号水ガラスのシリカ含有量を基準にして定められ
る。すなわち、通常、水ガラスという場合モル比も濃度
も、異なるものであるが、本発明では、水ガラス中のシ
リカ分の含有量が上記範囲にあるという意味である。
【0018】さらに、上述ゲル化調整剤の配合量はゲル
化調整剤の種類、他の成分組成等により一概に規定する
ことは難しいが、通常、全配合液中、10重量%以下であ
ることが好ましい。
【0019】
【作用】上述の構成からなる本発明はブレーン比表面積
が約6000cm2/g以上の微粒子スラグを用いるので、これ
が活性反応を起こして硬化反応が活性化し、このため固
結物の強度発現に優れ、かつ立ち上がり強度も著しく高
強度となる。なお、本発明において、セメントや石灰
も、上述のブレーン比表面積を有する場合には、上述強
度は一層顕著となる。
【0020】さらに、本発明は酸性シリカゾル、特に、
水ガラスに硫酸等の酸を添加、混合し、水ガラス中のア
ルカリ分を除去して得られるpH0.5〜4に調整された
酸性シリカゾルを使用するので、立ち上がり強度が大き
くなる。この理由は酸性シリカゾルはこの中の硫酸が微
粒子スラグの活性とあいまってカルシウムと反応して急
激に石灰を生成するためと思われる。
【0021】微粒子スラグはブレーン比表面積が6000cm
2/g以下では、活性が少なく、これにセメントや石灰等
のアルカリを加えても直ちに強度増加は起こらない。こ
れに対して、ブレーン比表面積が6000cm2/g以上では、
上述のアルカリの存在下、水硬性が刺激され、酸性シリ
カゾルとの反応も加わって直ちに強度増加が生じる。
【0022】
【発明の実施例】以下、本発明を実験例によって詳述す
る。
【0023】実験例−1 (1)使用材料 本実験に当り、次の材料を使用した。 珪酸ソーダ: モル比3.4、比重1.32 硫 酸: 75%工業用希硫酸、比重1.52 高炉スラグ: ブレーン比表面積10000cm2/g、比重
2.90、平均粒径5.5μ 消 石 灰: 試薬一級 比重2.20 セメント : 普通ポルトランドセメント、比重3.17
【0024】(2)超瞬結配合例 次のA、B液を調製した。 A液(酸性シリカゾル pH1.2 200l) 珪酸ソーダ: 73.6l 硫 酸: 16.0l 水 : 110.4l
【0025】B液(200l) セメント : 80kg 高炉スラグ: 50kg 消 石 灰: 5〜20kg 水 : 残り
【0026】上述のA液とB液を1:1(容量)で混合
すると、混合液は0.5〜1秒でゲル化する。このような
短時間で固結せしめるためには、A液として酸性シリカ
ゾルを用いることが必須である。この注入材は短いゲル
化時間と優れた立ち上がり強度により、地震等で傾斜し
た建物の基礎に注入すると、容易に建造物を持ち上げ
る。
【0027】(3)強度と耐久性 上述瞬結配合の場合、ゲル化物は、1000日水中養生後の
シリカの溶脱がいずれも0.2%以下、体積変化率が0.5
%以下、透水係数が10-9cm/sec.を呈し、耐久性が極め
て優れていることがわかった。
【0028】また、ゲル化物の一軸圧縮強度と、経過時
間の関係を図1に示した。図1中、上述の超瞬結配合
で、消石灰が15kgの場合を1、消石灰が10kgの場合を
2、消石灰が15kgで、スラグがブレーン比表面積5000cm
2/gの場合を3、消石灰が10kgで、スラグがブレーン比
表面積5000cm2/gの場合を4、消石灰が15kgで、スラグ
がブレーン比表面積8000cm2/gの場合を5、消石灰が15
kgで、スラグがブレーン比表面積6000cm2/gの場合を
6、消石灰が15kgの代わりにセメント15kgを用いた場合
を7、消石灰10kgの代わりにセメント10kgを用いた場合
を8、消石灰15kgの他にセメントの代わりに消石灰をさ
らに15kgとした場合を9、酸性シリカゾルの代わりに水
ガラスをイオン交換樹脂で処理して得られたpHが9〜
10の中性シリカゾル(シリカ分の濃度は酸性シリカゾル
と同じ)を用いて消石灰が15kg、スラグがブレーン比表
面積10000cm2/gの場合を10とする。
【0029】図1から本発明超瞬結配合では1〜10のう
ち、3、4および10を除いていずれも強度の発現が著し
く早く、かつ長期間にわたり安定した高強度を呈し、耐
久性にも優れていることがわかる。
【0030】
【発明の効果】以上のとおり、本発明固結材は酸性シリ
カゾルと、ブレーン比表面積6000cm2/g以上の微粒子ス
ラグと、セメントおよび/または石灰との系を必須成分
とするから、短時間のうちに大きな強度を発現して、い
わゆる立ち上がり強度が高く、かつ長期固結強度も大き
く、さらに耐久性にも優れ、このため、傾斜した建造物
の復元工事における注入材として、あるいは交通の即時
開放し得る道路補修材料として、また裏込注入材とし
て、さらには盛土あるいは埋設工事用材料として、ある
いはさらに、掘削残土の処理材として利用することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ゲル化物の一軸圧縮強度と、経過時間の関係
を表したグラフである。
【符号の説明】
1 消石灰が15kgの場合 2 消石灰が10kgの場合 3 消石灰が15kgで、スラグがブレーン比表面積5
000cm/gの場合 4 消石灰が10kgで、スラグがブレーン比表面積5
000cm/gの場合 5 消石灰が15kgで、スラグがブレーン比表面積8
000cm/gの場合 6 消石灰が15kgで、スラグがブレーン比表面積6
000cm/gの場合 7 消石灰が15kgの代わりにセメント15kgを用
いた場合 8 消石灰が10kgの代わりにセメント10kgを用
いた場合 9 消石灰15kgの他にセメントの代わりに消石灰を
さらに15kgとした場合 10 酸性シリカゾルの代わりに水ガラスをイオン交換
樹脂で処理して得られたpHが9〜10の中性シリカゾ
ル(シリカ分の濃度は酸性シリカゾルと同じ)を用いて
消石灰が15kg、スラグがブレーン比表面積1000
0cm/gの場合
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C09K 103:00 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 17/04 C04B 28/24 C09K 17/06 C09K 17/10 C09K 17/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸性シリカゾルと、スラグと、セメント
    および/または石灰とを有効成分とする地盤固結材であ
    って、前記スラグはブレーン比表面積が6000cm2/g以上
    の微粒子スラグである地盤固結材。
  2. 【請求項2】 請求項1の酸性シリカゾルが水ガラスと
    酸を混合し、水ガラス中のアルカリ分を除去して得られ
    るpH0.5〜4に調整されたものである請求項1の地盤
    固結材。
  3. 【請求項3】 請求項1における酸性シリカゾル中の水
    ガラスの配合量は前記固結材1000cc当り、20〜300gで
    あり、また、微粒子スラグと、セメントおよび/または
    石灰との合計配合量は前記固結材1000cc当り20〜700g
    である請求項1の地盤固結材。
  4. 【請求項4】 請求項1の地盤固結材はさらにゲル化調
    整剤を含んでなる請求項1の地盤固結材。
  5. 【請求項5】 請求項4におけるゲル化調整剤の配合量
    は全配合液中、10重量%以下である請求項4の地盤固結
    材。
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