JP2882546B2 - γ−ラクトン類の製造方法 - Google Patents

γ−ラクトン類の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フルーツ様、ピーチ
様、バター様、ミルク様などの香気を有し、従来から食
品用ならびに香粧品用の調合香料素材として利用されて
いるγ−ペンチル−γ−ラクトン、γ−ヘキシル−γ−
ラクトン、γ−ヘプチル−γ−ラクトン、γ−オクチル
−γ−ラクトンなどを包含する下記式(1)
【0002】
【化4】
【0003】式中、R は水素原子またはC 〜C 15
のアルキル基を示し、R は水素原子、メチル基または
エチル基を示すか、或いはR とR は一緒になってブ
チレン基またはペンチレン基を示し、R は水素原子ま
たはC 〜C 15 のアルキル基を示し、R およびR
は同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ水素原子
またはメチル基を示す、のγ−ラクトン類の新規な製法
に関する。
【0004】
【従来の技術】従来、前記式(1)で表されるγ−ラク
トン類の製造法にはいくつかの方法が知られており、例
えばアクリル酸エステルと第1級アルコールとをジ第3
級ブチルパーオキシドとリン酸塩および/または硫酸塩
との存在下で加熱反応させてγ−アルキル−γ−ラクト
ンを製造する方法(特開昭51−95058号公報)、
またアクリル酸エステルと1級アルコールとを有機過酸
化物と鉱酸および/または有機酸の存在下に反応させて
γ−アルキル−γ−ラクトンを合成する方法(特開昭5
5−133371号公報)などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来提案のリン酸塩、硫酸塩、鉱酸、有機酸の存在下で反
応を行う方法では、反応収率に影響を及ぼす程度の副反
応生成物を生じるため、収率の点で必ずしも満足できる
ものではなく、また反応終了後の処理操作も煩雑になる
などの欠点を有しており、更に改善された工業的に有利
な製造方法の確立が強く望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題を解決しうる工業的に有利な新規製造法を確立するた
め鋭意研究を行ってきた。その結果、或る種のアルコー
ル類と特定の2−アルケン酸エステル類との反応を有機
過酸化物および窒素含有塩基の存在下で行うことによ
り、前記式(1)で表されるγ−ラクトン類を予想外の
好収率、好純度且つ副反応生成物をほとんど伴うことな
しに合成できることが見出された。
【0007】かくして、本発明によれば、或る種のアル
コール類と特定の2−アルケン酸エステル類を有機過酸
化物および含窒素化合物の存在下に加熱反応させること
を特徴とする式(1)で表されるγ−ラクトン類の製造
方法が提供される。本発明の式(1)化合物の製造方法
を反応式で示すと以下のように表すことができる。
【0008】
【化5】
【0009】式中、R、R、R、R 、R およ
びR は前記の意味を有する、上記反応式Aに従って式
(1)の化合物の製造法を詳細に説明する。
【0010】上記式(2)および式(3)の化合物から
本発明の上記式(1)の化合物を合成するには、有機過
酸化物および含窒素化合物の存在下に加熱反応させるこ
とにより行うことができる。
【0011】本発明で使用する式(2)の化合物は、第
1級および第2級のアルコールを包含するアルコール類
であり、これらは市販品として安価且つ容易に入手する
ことができる。第1級アルコールの具体的な化合物とし
ては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール
タノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペン
タノール、2−メチルブタノール、ヘキサノール、2−
メチルペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2
−エチルヘキサノール、ノナノール、3,5,5−トリ
メチルヘキサノール、デカノール、ウンデカノール、ド
デカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペン
タデカノール、ヘキサデカノールなど;また第2級アル
コールの具体例としては、例えばイソプロパノール、ブ
タン−2−オール、ペンタン−2−オール、ペンタン−
3−オール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オ
ール、オクタン−2−オール、ノナン−2−オール、デ
カン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロペン
タノール、シクロヘキサノールなどを挙げることができ
る。
【0012】これらアルコール類の使用量は、式(3)
の化合物に対して過剰に用いるのがよく、例えば式
(3)の化合物1モルに対して1モル以上、より好まし
くは5モル〜20モル程度を例示することができる。
【0013】本発明で用いる式(3)の2−アルケン酸
エステル類も市販品として容易に入手することができ、
1〜C8鎖状アルコールと2−アルケン酸のエステルと
して表すことができる。該鎖状アルコールとしては、例
えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロ
パノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノー
ル、イソペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、
オクタノールなどを挙げることができ、また2−アルケ
ン酸の具体例としては、例えばアクリル酸、メタアクリ
ル酸、クロトン酸、セネシオン酸、チグリン酸、アンゲ
リカ酸、2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン
酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、2
−ヘプテン酸、2−オクテン酸、2−ノネン酸、2−デ
セン酸、2−ドデセン酸、2−テトラデセン酸、2−ヘ
キサデセン酸、2−オクタデセン酸などを例示すること
ができる。
【0014】本発明で使用する有機過酸化物としては、
例えば1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロ
ヘキサン(以下、「BBPC」と称する)、ベンゾイル
パーオキシド(以下、「BPO」と称する)、ジ−t−
ブチルパーオキシド(以下、「DBPO」と称する)、
メチルエチルケトンパーオキシド(以下、「MEKPと
称する」)、t−ブチルパーオキシアセテート(以下、
「BPOA」と称する)、t−ブチルヒドロパーオキシ
ド(以下、「BHPO」と称する)、シクロヘキサノン
パーオキシド(以下、「CHPO」と称する)、1,1
−ビス−(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメ
チルシクロヘキサン(以下、「BBTC」と称する)、
2,2−ビス−(t−ブチルパーオキシ)ブタン(以
下、「BBPB」と称する)、t−ブチルパーオキシイ
ソプロピルカーボネート(以下、「BPIC」と称す
る)などを挙げることができる。
【0015】これら有機過酸化物の使用量は厳密に制限
されるものではないが、一般には、式(3)の化合物1
モルに対して、例えば約1モル%〜約50モル%程度、
好ましくは約5モル%〜約30モル%程度を示すことが
できる。該有機過酸化物の使用量が1モル%より少ない
と、式(1)の化合物の反応収率が低下し、また50モ
ル%以上使用しても収率の向上は望めず、逆に副反応生
成物が増加するので好ましくない。
【0016】また、この反応に用いる含窒素化合物の具
体例としては、例えば、ジエチルアミン、ジイソプロピ
ルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジブチルアミン、
ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ピロリジン、モ
ルホリン、ピペリジンなどの第2級アミン類;ピリジ
ン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチ
ルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンな
どの第3級アミン類;上記第2級アミン類および第3級
アミン類の塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、
酢酸塩類、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロオキ
シド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリ
メチルベンジルアンモニウムブロミドなどの第4級アン
モニウム塩類などを例示することができる。
【0017】これら窒素含有塩基の使用量もまた厳密に
制限されるものではなく、例えば式(3)の化合物に対
して約0.5〜約10重量%程度、好ましくは約1〜約
5重量%程度を示すことができる。
【0018】上記反応の反応温度は、有機過酸化物が分
解する温度以上であるのが好ましく、このような温度と
しては、使用する有機過酸化物の種類によっても異なる
が、例えば約50℃以上、好ましくは約100℃〜約1
80℃を挙げることができる。有機過酸化物の分解温度
以下の反応温度では、反応の進行が遅く、収率が極めて
悪くなり、また分解温度を必要以上にこえた反応温度で
も収率が低下するので好ましくない。
【0019】このような温度条件下で行う反応の形態
は、反応に使用する式(2)のアルコール類の種類によ
り異なり、例えば、有機過酸化物の分解温度以上の沸点
を有するアルコール類の場合は大気圧条件下で反応を行
うことができる。また、有機過酸化物の分解温度以下の
沸点を有するアルコール類を用いる場合には、オートク
レーブなどの密閉加圧条件下で反応を行うのが好まし
い。
【0020】この反応の反応時間は反応温度によっても
異なり、適宜に選択することができ、例えば約2時間〜
約20時間程度の範囲を好ましく示すことができる。更
に、上記反応は有機溶媒中でも行うことができる。該溶
媒としては、例えばデカリン、デカン、ドデカンなどの
飽和炭化水素などを示すことができ、その使用量は、例
えば式(2)の化合物に対して約1〜約20重量倍程度
で行うことができる。反応終了後は、有機溶媒による抽
出処理、蒸留、カラムクロマトグラフなどの手段を用い
て分離、精製することにより式(1)の化合物を好純
度、好収率に製造することができる。
【0021】このようにして得ることのできる式(1)
の化合物の具体例として、例えば、γ−ブチロラクト
ン、γ−メチル−γ−ラクトン、γ−エチル−γ−ラク
トン、γ−プロピル−γ−ラクトン、γ−イソプロピル
−γ−ラクトン、γ−ブチル−γ−ラクトン、γ−イソ
ブチル−γ−ラクトン、γ−ペンチル−γ−ラクトン、
γ−イソペンチル−γ−ラクトン、γ−ヘキシル−γ−
ラクトン、γ−ヘプチル−γ−ラクトン、γ−オクチル
−γ−ラクトン、γ−ノニル−γ−ラクトン、γ−デシ
ル−γ−ラクトン、γ−ドデシル−γ−ラクトン、γ−
テトラデシル−γ−ラクトン、γ−(2−メチルプロピ
ル)−γ−ラクトン、γ−(1−メチルブチル)−γ−
ラクトン、γ−(1−エチルペンチル)−γ−ラクト
ン、γ−(2,4,4−トリメチルペンチル)−γ−ラ
クトンなどのモノ置換γ−ラクトン類;α−メチル−γ
−ペンチル−γ−ラクトン 、α−メチル−γ−ヘプチ
ル−γ−ラクトン、β−メチル−γ−プロピル−γ−ラ
クトン、β−メチル−γ−ブチル−γ−ラクトン、β−
メチル−γ−ペンチル−γ−ラクトン、β−メチル−γ
−ヘプチル−γ−ラクトン、β−エチル−γ−ペンチル
−γ−ラクトン、β−プロピル−γ−ペンチル−γ−ラ
クトンなどのジ置換γ−ラクトン類;α,β−ジメチル
−γ−ペンチル−γ−ラクトン、α,β−ジメチル−γ
−ヘキシル−γ−ラクトン、α,β−ジメチル−γ−ヘ
プチル−γ−ラクトン、β,β−ジメチル−γ−ペンチ
ル−γ−ラクトン、β,β−ジメチル−γ−ヘプチル−
γ−ラクトン、α−メチル−β−エチル−γ−ペンチル
−γ−ラクトン、α−メチル−β−エチル−γ−ヘプチ
ル−γ−ラクトンなどのトリ置換γ−ラクトン類;α,
β,γ−トリメチル−γ−ブチル−γ−ラクトン、α,
β,γ−トリメチル−γ−ヘキシル−γ−ラクトン、
β,β,γ−トリメチル−γ−プロピル−γ−ラクトン
などのテトラ置換γ−ラクトン類;1−オキサスピロ
(4.4)ノナン−2−オン、1−オキサスピロ(5.
4)デカン−2−オンなどのスピロ−γ−ラクトン類な
どを好ましく例示することができる。
【0022】次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的
に説明する。
【0023】
【実施例1】β−メチル−γ−プロピル−γ−ラクトン
の合成 1リットルのオートクレーブにブタノール444g
(6.0モル)、クロトン酸メチル60g(0.6モ
ル)、ブチルアミン1.2gおよび1,1−ビス−t−
ブチルパーオキシシクロヘキサン11.1g(0.03
モル)を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換した後、
撹拌しながらゆるやかに加熱する。オートクレーブ内の
温度が140℃〜150℃(内圧力3Kg/cm2)に
上昇した後、更に同温度で1時間反応させる。反応終了
後、冷却、釜出しした反応生成物から未反応のブタノー
ルを減圧下に回収し、残渣51.9gを得た。得られた
残渣を蒸留し、純度100%のβ−メチル−γ−プロピ
ル−γ−ラクトン26.5g(収率31.2%)を得
た。
【0024】
【実施例2】γ−ヘキシル−γ−ラクトンの合成 1リットルの4径フラスコにヘプタノール626g
(5.4モル)を仕込み、フラスコ内温度が145℃に
なるまで加熱する。次にアクリル酸メチル51.6g
(0.6モル)、ヘプタノール69.6g(0.6モ
ル)、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド0.5
gおよびジ−t−ブチルパーオキシド4.4g(0.0
3モル)の溶液をリフラックス状態(145℃〜150
℃)のフラスコに6時間で滴下する。滴下終了後、還流
(150℃)させながら、更に1時間反応させる。反応
終了後、冷却した反応生成物から未反応のヘプタノール
を減圧下に回収し、残渣130gを得た。得られた残渣
を蒸留し、純度99.5%のγ−ヘキシル−γ−ラクト
ン87.7g(収率86.0%)を得た。
【0025】
【実施例3〜16】実施例1および実施例2の合成方法
に準じて、式(2)のアルコール類、式(3)の2−ア
ルケン酸エステル類、有機過酸化物および含窒素化合物
を適宜に組み合わせて、各種の式(1)のγ−ラクトン
類を製造した。その結果(収率)を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【比較例1〜5】実施例1および実施例2において、本
発明の含窒素化合物の代わりにリン酸塩、硫酸塩、鉱
酸、有機酸などの従来公知の触媒を用いた以外は、実施
例1および実施例2の合成方法に準じて、各種の式
(1)のγ−ラクトン類を製造し、その収率を比較し
た。その結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】上記実施例および比較例の表からわかるよ
うに、含窒素化合物の存在下で反応させる本発明は、従
来公知の触媒の存在下で反応させる従来法と比較して収
率の点で優位差が認められる。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、副反応に伴う生成物を
抑制することができ、且つ好収率、好純度でもって式
(1)のγ−ラクトン類を合成できる新規製法の提供が
可能になる。即ち、式(2)のアルコール類と式(3)
の2−アルケン酸エステル類を有機過酸化物および含窒
素化合物の存在下にわずか一工程で反応させる工業的に
有利な製法を提供するものである。
【0031】更に、本発明により提供できる式(1)の
γ−ラクトン類は、フルーツ様、ピーチ様、バター様、
ミルク様などの香気を有し、食品用および香粧品用調合
香料の素材として有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 割田 泰裕 神奈川県川崎市中原区苅宿335 長谷川 香料株式会社川崎研究所内 (72)発明者 田村 浩 神奈川県川崎市中原区苅宿335 長谷川 香料株式会社川崎研究所内 (56)参考文献 特開 昭51−95058(JP,A) 特開 平4−54177(JP,A) 特開 昭51−23256(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 307/32 C07D 307/33

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(2) 【化1】 式中、Rは水素原子または〜C15のアルキル基
    を示し、Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示
    すか、或いはとRは一緒になってブチレン基また
    ペンチレン基を示す、で表されるアルコール類と下記
    式(3) 【化2】 式中、Rは水素原子または〜C15のアルキル基
    を示し、RおよびRは同一もしくは異なっていても
    よく、それぞれ水素原子またはメチル基を示し、 RはC〜Cのアルキル基を示す、 で表される2−アルケン酸エステル類を、有機過酸化物
    ならびに第2級アミンまたはその塩、第3級アミンまた
    はその塩および第4級アンモニウム塩から選ばれる含窒
    素有機化合物の存在下に加熱反応させることを特徴とす
    る下記式(1) 【化3】 式中、R、R、R、RおよびRは前記の意味
    を有する、 で表されるγ−ラクトン類の製造方法。
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