JP2878818B2 - 光重合開始剤 - Google Patents

光重合開始剤

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【発明の詳細な説明】 (1) 産業上の利用分野 この発明は、少なくとも1種のエチレン性不飽和の重
合しうる単量体またはオリゴマーを近赤外光で高感度に
重合を開始させうる重合開始剤に関する。
(2) 従来の技術 光重合は、写真、スクリーン印刷、枚葉印刷、平版印
刷、凸版印刷、金属表面加工、インキ、プリント基盤作
成用、レジストまたはフォトマスク、白黒またはカラー
の転写発色用シートもしくは発色シート作成などの多方
面の用途にわたり使用されている。また、歯科技術の領
域においても光重合性組成物が使用されている。
また、これらの用途においては、急速硬化による生産
性の向上を目的として、重合開始剤の開発が盛んに進め
られている(例えば、特開平2−22370及び特開昭62−1
43044)。特開平2−22370号明細書にはポリ(メタ)ア
クリル酸エステルと紫外光重合開始剤を含むことを特徴
とした紫外光硬化型インキ組成物を開示しており、また
特開昭62−143044号明細書には1価陽イオン染料−ホウ
素陰イオン錯体を光重合開始剤とし、エチレン性不飽和
化合物とともにマイクロカプセル中に内包させ可視光照
射により硬化できる光硬化性組成物を開示している。
(3) 発明が解決しようとする課題 光重合は光重合開始剤と重合性モノマーとからなる組
成物を光で照射することにより、急速硬化するものであ
るが、その特徴を活かして使用量が増大するにつれて、
生産性の向上が益々要求されており、より硬化速度が速
く硬化物の硬度の優れた光重合開始剤が望まれている。
本発明は、透過性に優れている近赤外光によって重合開
始する光重合開始剤を提供することを目的とする。
(4) 課題を解決するための手段 本発明では、この課題を解決するために特定の2価陽
イオン染料とホウ素陰イオンとの錯体を鋭意検討した結
果、近赤外光に感度をもつ重合開始剤が得られることを
見いだすに至った。すなわち、本発明によれば近赤外光
に吸収をもつ2価陽イオン染料とホウ素陰イオンから一
般式(I)で表される2価陽イオン染料−ホウ素錯体か
らなる光重合開始剤が得られ、この重合開始剤は700nm
以上の近赤外領域の光で重合を開始しうる。
一般式(I); (式中、D++は近赤外光領域に吸収をもつ2価の陽イ
オン色素であり、R1,R2,R3及びR4は各々独立的にアルキ
ル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、ア
ルケニル、アルキニル、脂環式及び飽和または不飽和複
素環式基を示し、R1,R2,R3及びR4の中の少なくとも1個
は炭素原子数1〜8個のアルキル基である。) 本発明の光重合開始剤に用いられる2価陽イオン染料
−ホウ素陰イオン錯体を構成する2価陽イオン染料の特
定の種類は近赤外光の領域に吸収をもつテトラジン系、
ジインモニウム系に代表される2価の陽イオン染料であ
り、ホウ素陰イオンのR1,R2,R3及びR4は各々独立的にア
ルキル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキ
ル、アルケニル、アルキニル、脂環式及び飽和または不
飽和複素環式基を示し、R1,R2,R3及びR4の中の少なくと
も1個以上は炭素原子数1〜8個のアルキル基である。
例えば、好ましい陰イオンはトリフェニルブチル−ホウ
素陰イオンとトリアニシルブチル−ホウ素陰イオンであ
る。これらは容易に解離してトリフェニルホウ素または
トリアニシルホウ素とブチルラジカルとなるからであ
る。
本発明に特に有用な錯体の例を第1表に示す。
これらの錯体はフリーラジカル連鎖過程で酸素を吸収
しえる酸素除去剤との併用が好ましい。酸素除去剤の例
としては、フォスフィン、フォスファイト、フォスフォ
ネート、第1錫塩及び酸素により容易に酸化されるその
他の化合物があげられ、有用な例としては、トリメチル
バルビツール酸、2−メルカプトベンゾキサゾール、2
−メルカプトベンゾチアゾール、N,N−ジメチル−2,6−
ジイソプロピルアニリン、N,N−2,4,6−ペンタメチルア
ニリンなどである。N,N−ジアルキルアニリンの例とし
ては、オルト、メタもしくはパラ位の1以上がアルキル
基、フェニル基、アセチル基、エトキシカルボニル基、
カルボニル基、カルボキシレート基、シリル基、アルコ
キシ基、フェノキシ基、アセチルオキシ基、ヒドロキシ
基、ハロゲン基などにて置換されたものであり、なかで
も好適な例としてはオルト位がアルキル基で置換された
ものであり、2,6−ジイソプロピル−N,N−ジメチルアニ
リン、2,6−ジエチル−N,N−ジメチルアニリン、N,N,2,
4,6−ペンタメチルアニリン及びp−t−ブチル−N,N−
ジメチルアニリンなどがあげられる。
本発明の光重合開始剤は増感剤として、4級アンモニ
ウムホウ素塩、4級フォスフィンホウ素塩、N−フェニ
ルグリシン、及び有機過酸化物を併用することにより、
開始剤の感度をあげることができる。すなわち、4級ア
ンモニウムホウ素塩の例としては、テトラメチルアンモ
ニウムn−ブチルトリフェニルホウ素、テトラメチルア
ンモニウムn−ブチルトリアニシルホウ素、テトラメチ
ルアンモニウムn−オクチルトリフェニルホウ素、テト
ラメチルアンモニウムn−オクチルトリアニシルホウ
素、テトラエチルアンモニウムn−ブチルトリフェニル
ホウ素、テトラエチルアンモニウムn−ブチルトリアニ
シルホウ素、トリメチルハイドロゲンアンモニウムn−
ブチルトリフェニルホウ素、トリエチルハイドロゲンア
ンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素、テトラハイ
ドロゲンアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素、
テトラメチルアンモニウムテトラブチルホウ素、テトラ
エチルアンモニウムテトラブチルホウ素などがあげら
れ、4級フォスフィンホウ素塩の例としては、トリフェ
ニルメチルフォスフィンn−ブチルトリフェニルホウ
素、トリフェニルエチルフォスフィンn−ブチルトリフ
ェニルホウ素、トリフェニルメチルフォスフィンn−ブ
チルトリアニシルホウ素、トリフェニルエチルフォスフ
ィンn−ブチルトリアニシルホウ素、テトラフェニルフ
ォスフィンn−ブチルトリフェニルホウ素、テトラフェ
ニルフォスフィンn−ブチルトリアニシルホウ素などが
あげられる。また、本発明で用いられる有機過酸化物は
慣用のすべての有機過酸化物を示す。具体的には、ジア
セチルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシドジベン
ゾイルペルオキシド、p,p′−ジクロルジベンゾイルペ
ルオキシド、p,p′−ジメトキシジベンゾイルペルオキ
シド、p,p′−ジメチルジベンゾイルペルオキシド、p,
p′−ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどのジアシ
ルペルオキシド類、ターシャリ−ブチルハイドロペルオ
キシド、クメンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチル
ヘキサン2,5−ジハイドロペルオキシドなどのハイドロ
ペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドなどの
ケトンペルオキシド類、ターシャリ−ブチルペルオキシ
ドベンゾエート、3,3′,4,4′−テトラ−(t−ブチル
ペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのペルオキ
シカーボネート類などを例示することができる。これら
のうちでは、ジベンゾイルペルオキシド、3,3′,4,4′
−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾ
フェノンなどが好ましい。
さらに、本発明による重合開始剤が使用できるフリー
ラジカル付加重合可能なもしくは架橋可能な化合物は、
慣用のすべてのエチレン性不飽和化合物、特に1価アル
コールまたは多価アルコールのアクリル酸エステルまた
はメタクリル酸エステルまたは4−(メタ)アクロイル
オキシル基含有芳香族ポリカルボン酸及びその酸無水物
などであり、これらのエステルの下にはいわゆるウレタ
ンアクリレートまたはメタクリレートも含むものとし、
また米国特許第3066112号から既知の反応物である2,2−
ビス(4−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロ
ポキシ)−フェニル)プロパンやジ(メタクリロキシエ
チル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2−ビ
ス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパ
ン、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テト
ラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエ
リスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリト
ールヘキサメタクリレート、4−(メタ)アクリロイル
オキシメトキシカルボニルフタル酸及びその酸無水物、
4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフ
タル酸及びその酸無水物などを意味する。
本発明における光重合開始剤は、エチレン性不飽和化
合物を基準として0.01〜10重量%、好ましくは、0.1〜
5重量%の量の光重合開始剤を添加することができ、さ
らに増感剤は光重合開始剤1重量部に対して、0.1〜10
重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲で添加でき
る。さらに、酸素除去剤も光重合開始剤と同様な量を添
加することができる。また、必要によって無機の添加
物、色剤として染料及び顔料、溶剤などを加えることが
できる。
本発明による光重合開始剤の適用できる例としては光
重合が使用される写真、スクリーン印刷、枚葉印刷、平
版印刷、凸版印刷、金属表面加工、インキ、プリント基
盤作成用、レジストまたはフォトマスク、白黒またはカ
ラーの転写発色用シートもしくは発色シート作成、複写
機用トナー、複写機用カプセルトナーなどの用途に使用
することができる。また、この光重合開始剤とエチレン
性不飽和化合物及びロイコ系染料または可視領域に吸収
をもつ染料とからなる組成物は、黒またはカラーの転写
発色用シートもしくは発色シート作製に使用することが
でき、さらに、これら組成物はマイクロカプセルに内包
して使用することもできる。また、この他、有床義歯、
歯用補欠材料及び歯の充填組成物、及び歯の目的に対す
る被覆及び接着組成物など歯科治療用の光重合組成物と
して適用することができる。しかし、本発明による光重
合開始剤は、これらの適用例に限定されるものではな
い。
転写発色用シートへの適用の具体的な例としては光重
合開始剤とエチレン性不飽和化合物及びロイコ系染料か
らなる組成物をマイクロカプセルに内包させ、このマイ
クロカプセルをポリビニルアルコールによって原紙また
はフィルム上に塗布し、近赤外光ランプを用いて露光し
た後、転写用の原紙を重ねて加圧ロールで加圧すると画
像に従ってマイクロカプセルが破壊し転写用の原紙に画
像を形成することができる。
(5) 実施例 以下、実施例をあげて本発明をさらに説明する。
実施例 1〜5 トリメチロールプロパントリアクリレート 10g 2価陽イオン染料−ホウ素陰イオン錯体 第2表に表示 N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリン 0.02g からなる混合物を調整し組成物1〜5を作成した。
実施例 6〜9 ペンタエリスリトールトリアクリレート 10g 2価陽イオン染料−ホウ素陰イオン錯体 第2表に表示 増 感 剤 第2表に表示 からなる混合物を調整し組成物6〜9を作成した。
実施例 10〜12 ウレタンアクリレートジメタクリレート(新中村化学社
製、U−108−A) 10g 2価陽イオン染料−ホウ素陰イオン錯体 第2表に表示 増 感 剤 第2表に表示 からなる混合物を調整し組成物10〜12を作成した。
実施例13 トリメチロールプロパントリメタクリレート 6g ウレタンアクリレートジメタクリレート(新中村化学社
製、U−108−A) 4g 2価陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体第2表に表示 増 感 剤 第2表に表示 画像形成用色剤 SO−レッド1(オリエント化学社製) 1g からなる混合物を調整し組成物13を作成した。
実施例 14 トリメチロールプロパントリメタクリレート 6g ウレタンアクリレートジメタクリレート(新中村化学社
製、U−108−A) 4g 2価陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体第2表に表示 増 感 剤 第2表に表示 画像形成用色剤 Oil Yellow GGS(オリエント化学社製) 1g からなる混合物を調整し組成物14を作成した。
比較例 1 実施例1における重合開始剤に代えて第2表に示すよ
うに、従来可視重合型レンジで用いられているカンファ
ーキノンを用いた以外は同様にサンプルを調整し組成物
15を作成した。
以上に示した実施例1〜14及び比較例1によって得ら
れた組成物1〜15をアプリケータを用いてカルトン紙上
膜厚5ミクロンになるように展色し、ジクロイックコー
ト型ハロゲンランプ(1W/cm2)で0.1秒間照射した後、
アート紙に圧着し硬化を評価した。結果は第3表に示
す。
TMABTB: テトラメチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ
素 TMATBB: テトラメチルアンモニウムテトラn−ブチルホウ素 TEABAB: テトラエチルアンモニウムn−ブチルトリアニシルホウ
素 TMHABTB: テトラメチルハイドロゲンアンモニウムn−ブチルトリ
フェニルホウ素 NPG:N−フェニルグリシン BPO:ジベンゾイルペルオキシド TBBPB: 3,3′,4,4′−テトラ−(t−ブチルペルオキシカルボ
ニル)ベンゾフェノン (6) 発明の効果 本発明により、近赤外光によって重合を開始する近赤
外光重合開始剤が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 近藤 邦夫 神奈川県川崎市川崎区扇町5―1 昭和 電工株式会社化学品研究所内 (56)参考文献 特開 平2−3052(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 2/46 - 2/54 G03F 7/028 - 7/031

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I)で表わされる2価陽イオン染
    料−ホウ素陰イオン錯体からなる近赤外光重合開始剤。 一般式(I); (式中、D++は近赤外光領域に吸収をもつ2価の陽イ
    オン色素であり、R1,R2,R3及びR4は各々独立的にアルキ
    ル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、ア
    ルケニル、アルキニル、脂環式及び飽和または不飽和複
    素環式基を示し、R1,R2,R3及びR4の中の少なくとも1個
    は炭素原子数1〜8個のアルキル基である。)
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