JP2878681B1 - 刈払機 - Google Patents

刈払機

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JP2878681B1
JP2878681B1 JP10085323A JP8532398A JP2878681B1 JP 2878681 B1 JP2878681 B1 JP 2878681B1 JP 10085323 A JP10085323 A JP 10085323A JP 8532398 A JP8532398 A JP 8532398A JP 2878681 B1 JP2878681 B1 JP 2878681B1
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芳郎 山根
忠雄 八代醍
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和彦 竹本
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Kawasaki Motors Ltd
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Kawasaki Jukogyo KK
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Abstract

【要約】 【課題】 構造が簡単でコストが低く、コンパクトで信
頼性と耐久性に優れ、軸方向の隙間の管理が容易で、し
かもメインパイプとクラッチハウジングの結合・分離を
簡単に行える刈払機を提供することを目的とする。 【解決手段】 メインパイプ1の前方に刈刃を備える刈
払機において、後方のクラッチハウジング2に、a)エン
ジンを取り付けるための基部2fと、b)基部2fから前
方に突出した筒部2gと、c)連結部材2hを介して筒部
2gの前方に間隔をおいて一体的に形成された固定枠2
8と、d)筒部2gの前端面2aと固定枠28の後端面2
8aとによってはさまれており周囲の大半が開放状態に
ある空間2iとを形成する。また、メインパイプ1とク
ラッチハウジング2とが軸方向に相対移動するのを防止
するための留め具31を、メインパイプ1の外周に固定
してクラッチハウジング2における上記の空間2iにお
さめている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】請求項に係る発明は、メイン
パイプの前方に刈刃を有する刈払機に関するものであ
る。ただし、後方にはエンジン等を備えていて、それら
がメインパイプに対して相対回転自在に取り付けられた
刈払機に限る。
【0002】
【従来の技術】草刈りなどに使用する刈払機は、一般
に、メインパイプの前方端部に回転式の刈刃を有し、そ
れを回転駆動するためのエンジンをクラッチハウジング
とともにメインパイプの後方端部に備えている。メイン
パイプ内を通るドライブシャフトを介してエンジンの駆
動力で刈刃を回転させることにより、雑草等を刈り取る
のである。メインパイプの中ほど(エンジン寄りの部
分)には肩掛け用のベルトが取り付けてあり、作業者
は、そのベルトを肩に掛けて刈払機を支えたうえ、メイ
ンパイプに取り付けたハンドルを握ることによって刈刃
の位置を定め、かつ動かす。図3は発明に係る刈払機を
例示する側面図であるが、刈刃7やエンジン3・クラッ
チハウジング2・メインパイプ1・肩掛け用ベルト9・
ハンドル11についての全体的な配置は従来の刈払機も
図3と同様である。
【0003】刈払機のうちには、クラッチハウジングお
よびエンジンをメインパイプに対して相対回転自在な状
態に取り付けたものがある。エンジンがフロート式の気
化器を有する場合などにおいては、刈刃およびメインパ
イプの向きが変わってもエンジンが傾かないようにする
必要があるため、エンジン等をメインパイプとは相対回
転自在なように取り付けるのである。その場合、エンジ
ンとクラッチハウジングとは一体に接合されるのが通常
であるため、相対回転するための構造はメインパイプと
クラッチハウジングとの間に設けることになる。
【0004】従来の刈払機においてメインパイプとクラ
ッチハウジングとを相対回転自在に連結した構造を、図
5に示す。メインパイプ1の一端(後方端。図5の右
方)は、クラッチハウジング2の内側に、潤滑性のある
ブッシング1aを介して挿入されている。クラッチハウ
ジング2の内側には、適宜にエンジン(図3の符号3)
の回転駆動力を受けるクラッチドラム21が配置され、
その前方に、刈刃(図3の符号7)へ至るドライブシャ
フト4が接続されている。クラッチドラム21とドライ
ブシャフト4とを支持するためには、クラッチハウジン
グ2内に軸受23が配置され、その内側に、クラッチド
ラム21と一体化されドライブシャフト4と連結された
ボス部22が通されている。
【0005】クラッチハウジング2に対して軸受23や
メインパイプ1の前後方向(軸長方向)の位置を定める
ためには、図5のように三つの止め輪24・25・3
1’が使用されている。これらのうち止め輪24はクラ
ッチハウジング2の内面に設けたもので、軸受23等が
後方へ移動するのを防止する。また、止め輪25はボス
部22に設けたもので、クラッチドラム21やボス部2
2が後方へ移動するのを防いでいる。もう一つの止め輪
31’はメインパイプ1の外周上に取り付けていて、ワ
ッシャ27’と係合してメインパイプ1が前方へ移動す
るのを防止している。また、メインパイプ1の先端に当
接するようにスペーサ26’が設けられており、軸受2
3を介して止め輪24に係合しメインパイプ1の後方へ
の移動を止めている。なお図5において符号8は、肩掛
け用ベルト(図3の符号9)を取り付けるためのハンガ
ーで、図のようにクラッチハウジング2の上部と連結さ
れている。ハンガー8の部分を上にして吊すことによ
り、クラッチハウジング2(およびエンジン(図3の符
号3))の上下向きを、刈刃(図3の符号7)やメイン
パイプ1の向きにかかわらず一定に保つのである。
【0006】図5と同様の構造を有する刈払機は、たと
えば実開昭59−64619号公報に記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の刈払機では、上
記(図5を参照)のとおりメインパイプ1の外周に設け
られた止め輪31’とクラッチハウジング2の内周に設
けた止め輪24とによって、メインパイプ1とクラッチ
ハウジング2との間の前後方向位置を拘束し、かつ両者
を相対回転自在に連結しているため、つぎのような課題
が存在する。すなわち、イ ) 止め輪31’を取り付けるための溝をメインパイプ
1に形成することが容易ではない。溝の機械加工そのも
のに手間がかかるうえ、メインパイプ1はかなりの長尺
物(全長が1.5m前後)であるため、加工のための取
り扱いが簡単ではないのである。
【0008】ロ) メインパイプ1は、上記のように溝を
形成されるにもかかわらず十分な機械的強度をもつ必要
があるため、その素材として、かなりの肉厚を有する重
いものが使用されねばならない。メインパイプ1が重い
ものになると刈払機全体の重量も増し、使用上好ましく
ない。
【0009】ハ) ブッシング1aの交換など、クラッチ
ハウジング2内のメンテナンスを行うのが容易でない。
たとえば、もしブッシング1aを交換しようとすれば、
クラッチハウジング2等を図5のようにエンジンから
分離したうえ、止め輪24を外す(この作業はドラム
21の穴21aを通して行う)ことによりボス部22と
ともに軸受23をクラッチハウジング2内から引き出
し、スペーサ26’を取り外したうえでメインパイプ
1上の止め輪31’を外し、クラッチハウジング2内
からメインパイプ1を引き抜き、その後にクラッチハ
ウジング2からブッシング1aを引き出す−といった
手順が必要である。
【0010】ニ) メインパイプ1とクラッチハウジング
2との間には、それらの前後方向位置を定めるため多く
の部品や加工部分が介在しており、少なからず前後方向
(軸長方向)のガタがある。両者の前後方向の位置は止
め輪31’と止め輪24等によって定められているが、
それらの前後に少しずつ隙間があり、それらが加算され
て実質的な隙間の大きさが相当なものになるからであ
る。
【0011】一方、上記の課題を解決するため、実開昭
59−23924号公報に記載のような刈払機が提案さ
れている。すなわち同公報には、クラッチハウジングの
外端付近においてメインパイプ(アウターパイプ)に固
定した係合体を、クラッチハウジングに対し回動自在
に、かつ軸方向移動を規制して設けた刈払機が開示され
ている。具体的には、係合体の一端側に切欠き溝を設
け、切欠き溝をネジで締め付けることにより係合体をメ
インパイプへ固定するとともに、他端側に鍔を設け、そ
の鍔をクラッチハウジングにスナップリングや蓋体で軸
方向移動を規制したものや、逆にクラッチハウジングの
端部に鍔を設け、それをメインパイプに固定された係合
体と嵌合して軸方向の移動を規制したもの、係合体全体
をクラッチハウジング内におさめ、その軸方向移動をス
ナップリングで規制したものなど、種々の方法が開示さ
れている。
【0012】しかしながら、そのような構造には下記の
ような点で未だ改善の余地がある。すなわち、 1) 構造が複雑で部品点数が多い、もしくは加工箇所が
多い、または組み立て工数が多くなるなど、コスト的に
不利な点が多い。
【0013】2) 係合体の軸方向移動の規制を鍔やスナ
ップリングで行う構造であるため、接触面の大きさが制
限され、摩耗対策等の耐久性向上をはかろうとすると部
品が大型化したり構造が複雑化したりする。
【0014】3) 構造が簡単な切欠き溝をネジにより締
め付ける方式の場合、鍔部の影響を受け、切欠き部を長
くしなければ締め付けが安定しがたく、全体が大きくな
る。
【0015】4) 軸方向の隙間の管理がやり難い。
【0016】本発明は、上記のような課題に鑑みなされ
たもので、構造が簡単でコストが低く、コンパクトで信
頼性と耐久性に優れ、軸方向の隙間の管理が容易で、し
かもメインパイプとクラッチハウジングの結合・分離を
簡単に行えるクラッチハウジングとメインパイプとの軸
方向移動規制手段をもつスイベル機構つきの(つまりエ
ンジンとメインパイプとを相対回転自在にした)刈払機
を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載した刈払
機は、メインパイプの前方に刈刃を備え、後方には、メ
インパイプと相対回転自在な状態にクラッチハウジング
およびエンジンを備える刈払機において、クラッチハウ
ジングに、a)エンジンを取り付けるための基部と、b)基
部から前方に突出しメインパイプを回動自在に支持する
筒部と、c)連結部材を介して筒部の前方に一体的に形成
され、筒部の前端面から平行に離間して位置する固定枠
と、d)筒部の前端面と固定枠の後端面とによってはさま
れており上記連結部材の部分以外では周囲が開放状態に
ある空間とを形成し、メインパイプとクラッチハウジン
グとが軸方向に相対移動するのを防止するための留め具
を、メインパイプの外周に固定してクラッチハウジング
における上記の空間におさめた−ことを特徴とする。
なお、連結部材は上記の空間の周囲のうち限られた部分
にのみ設けて残りの部分を上記のとおり開放状態にし、
その開放状態の部分から上記の空間内に留め具を入れる
ことができるようにする。上記したクラッチハウジング
の基部と筒部、連結部材および固定枠は、アルミニウム
またはその合金のダイキャスト等によって一体に成形す
るのがよい。
【0018】この刈払機では、上記のようにメインパイ
プの外周に留め具を固定したうえ、その留め具をクラッ
チハウジングにおける上記e)の空間におさめることによ
って、メインパイプとクラッチハウジングとを相対回転
自在に保ちながら、両者が軸方向(前後方向)に相対移
動するのを防止する。メインパイプの外周に固定する留
め具は、従来(図5を参照)のような止め輪である必要
はなく、それをメインパイプの外周に固定するにも種々
の手段を採用することが可能である。そのような点か
ら、この刈払機にはつぎのような作用がある。
【0019】イ) 止め輪用の溝などを機械加工によって
メインパイプに形成する必要がないので、製造コストが
低い。
【0020】ロ) やはりメインパイプに溝などを形成す
る必要がないことから、メインパイプの強度を確保しや
すい。したがって、メインパイプを薄型の軽量なものに
し、ひいては刈払機を軽量化することが可能になる。
【0021】ハ) 留め具の前後方向位置の拘束を解いて
クラッチハウジングからメインパイプを抜き取ることが
容易であるため、ブッシングやドライブシャフト等につ
いてのメンテナンスを簡単に行える。
【0022】ニ) 留め具の軸方向移動の規制を、クラッ
チハウジングにおける筒部の前端面と固定枠の後端面と
によって行うため、構造が簡単であるうえ、接触面を広
くとって摩耗の進行を抑えることが容易である。
【0023】請求項2に記載の刈払機はとくに、肩掛け
用ベルトを取り付けるべく上記クラッチハウジングの筒
部の上部から前方にハンガーブラケットを延ばし、その
ハンガーブラケットを上記の連結部材としたことを特徴
とする。
【0024】ハンガーブラケットはほとんどの刈払機に
設けられるものであるため、上記の連結部材をこのよう
にハンガーブラケットにて構成すると、固定枠を支持す
るためだけの目的でわざわざ連結部材をクラッチハウジ
ングに形成する必要がなくなり、クラッチハウジングの
構成が簡単になる。刈払機においては重量物であるエン
ジンに近い位置に重心があり、その位置はクラッチハウ
ジングにも極めて近いため、肩掛け用ベルトを取り付け
るためのハンガーブラケットを上記のようにクラッチハ
ウジングに設けることは、作業者に刈払機をバランスよ
く支持させ得るという利点をももたらす。
【0025】請求項3に記載の刈払機は、とくに、上記
の固定枠を、クラッチハウジングの筒部に対して取り外
し可能なように取り付けたことを特徴とする。
【0026】このような刈払機の場合には、固定枠を取
り外しできるので、その取り付け位置を調整することで
留め具の側方の隙間(ガタ)の調整が可能である。ま
た、必要により固定枠とメインパイプの間にブッシュを
入れる等により固定枠部分でもメインパイプを支えるこ
とができる。
【0027】請求項4に記載の刈払機は、さらに、上記
留め具の前方および後方の端面に接触させて樹脂製のス
ペーサを配置したことを特徴とする。
【0028】この構成により、この刈払機では、上記の
留め具とそれを拘束するクラッチハウジング等との間に
樹脂製のスペーサを使用することになる。その樹脂とし
て自己潤滑性の高いもの(たとえばフェノール樹脂やポ
リアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂など)を使用す
れば、留め具とクラッチハウジングとの間に存在する隙
間を限りなくゼロに近くしながらも、それらの間の摩擦
を極めて小さくしてメインパイプとクラッチハウジング
との相対回転を円滑化することができる。
【0029】上記のスペーサは、留め具やクラッチハウ
ジングとともにメインパイプの外側にあるため、交換す
ることが難しくない。したがって、厚さ(つまりメイン
パイプの前後方向の寸法)の異なるものに交換すること
によって、メインパイプとクラッチハウジングとの間に
ガタを発生させる上記の隙間を最適化する(つまり限り
なくゼロに近くする)ことも可能である。また、長期間
の使用によって摩耗したとき、そのスペーサを交換する
こともできる。
【0030】
【発明の実施の形態】発明の実施についての一形態を図
1〜図3に示す。図3は、発明に係る刈払機を例示する
全体図である。図1は、その図3の刈払機におけるI部
の詳細図(ただしエンジン3を取り外した状態を示す)
であり、メインパイプ1とクラッチハウジング2との間
の連結構造を縦断面図にて示している。また図2は、図
1におけるII−II断面図であって留め具31の詳細を示
す。
【0031】図3の刈払機は、先に説明したように、メ
インパイプ1の後方(図3における右方)にクラッチハ
ウジング2およびエンジン3を備え、そのエンジン3に
よって前方端部にある刈刃7を回転駆動する。すなわ
ち、まず、エンジン3の駆動力は、クラッチハウジング
2内の遠心クラッチ20およびクラッチドラム21を介
してドライブシャフト4に伝わり、その前方(図3の左
方)の軸受部分の先にある傘歯車4aを回転させる。一
方、メインパイプ1の先にはギヤケース5が連結されて
おり、その内部には、上記の傘歯車4aと噛み合う傘歯
車6aを有する回転軸6が軸受を介して支持されてい
る。その回転軸6のうちギヤケース5から突出した先端
の部分に刈刃7が設けられているので、ドライブシャフ
ト4の回転は傘歯車4a・6aを介して回転軸6に伝わ
り、回転軸6とともに刈刃7が回転する。なお、クラッ
チハウジング2とエンジン3とは、ボルト3aによって
一体的に結合されている。
【0032】メインパイプ1のうち後方寄りの部分に
は、ハンガー8を介して肩掛け用ベルト9を取り付けて
いる。またそのやや前方には、後方から見てU字状に湾
曲したハンドル11を、ブラケット11aによりメイン
パイプ1上に固定している。草刈り作業等を行うとき作
業者は、ベルト9を肩に掛けて刈払機を支えたうえ、ハ
ンドル11の両端部を握ってメインパイプ1を上下左右
に動かし、かつ左右に傾ける。そうすることによって、
刈刃7の位置を上下左右に移動したりその向き(左右へ
の傾き)を変えたりして広く雑草等を刈り取るのであ
る。
【0033】刈刃7やメインパイプ1については作業中
に上記のように向きを変える必要があるが、エンジン3
については、それがフロート式の気化器(図示せず)を
有するために大きく傾けることができない。そのためこ
の刈払機では、エンジン3と一体化させたクラッチハウ
ジング2を、メインパイプ1に対して相対回転自在な状
態に連結するとともに前記のハンガー8に連結してい
る。肩掛け用ベルト9で支持されるために常に上を向く
ハンガー8にクラッチハウジング2を連結することによ
り、クラッチハウジング2とエンジン3とが左右へ傾か
ないようにし、かつ、それらとメインパイプ1とを相対
回転自在に連結することにより、メインパイプ1と刈刃
7の向きを自由に操作できるようにしており、いわゆる
スイベル式といわれる連結方式となっている。なお、相
対回転自在とはいえ、クラッチハウジング2からメイン
パイプ1が抜けないなど、両者の前後方向(軸長方向)
の相対的位置が変わらないようにしていることは言うま
でもない。
【0034】上記のような連結状態を説明するためにク
ラッチハウジング2の周辺を図示すると、図1のとおり
である。クラッチハウジング2の内部にはクラッチドラ
ム21が内蔵されており、それは、ボス部22を介して
ドライブシャフト4に接続されている。ボス部22とド
ライブシャフト4との接続は、前者の内側に形成された
スプライン22aと後者の外周に形成されたスプライン
4aとの結合によっている。ボス部22の外側は軸受2
3を介してクラッチハウジング2内に支持されており、
そのことによりクラッチドラム21やドライブシャフト
4はクラッチハウジング2の中心線上に保持されてい
る。ボス部22上における軸受23の内輪の位置(前後
方向の位置)は、ボス部22の外周に形成した肩(段
差)の部分と、同じ外周上に取り付けた止め輪25とに
よって定められる。またクラッチハウジング2の内周に
おける軸受23の外輪の位置は、クラッチハウジング2
の内周に形成した肩(段差。プレート26を当てた部
分)と、同じ内周に設けた止め輪24とによって定めら
れている。こうして軸受23の位置が拘束されるため
に、その軸受23だけでなくクラッチドラム21やボス
部22がクラッチハウジング2の前後方向にずれ動くの
が防止されている。
【0035】クラッチハウジング2は、エンジン3を取
り付けるフランジ2eや上述のクラッチドラム21、そ
のボス部22、ドライブシャフト等を軸受23を介して
支える部分等からなる基部2fと、基部2fから前方に
突出して設けられ、メインパイプを回転自在に支える筒
部2gと、筒部2gの上部に一体に形成され前方向きに
延びて刈払機のハンガー8を固定するハンガーブラケッ
ト2hと、そのブラケット2hの下方に設けられていて
後述する留め具31を収納する空間2iと、空間2iの
前方にハンガーブラケット2hと一体に設けられ留め具
31の移動を制限する固定枠28とから構成されてい
る。そして上記空間2iは、筒部2gの前端面2aとそ
れに平行に離間して設けられた固定枠28の後端面28
aとハンガーブラケット2hとから側方が外部に開放す
るように構成されている。
【0036】クラッチハウジング2に対してメインパイ
プ1を回転自在に連結する構造としては、図1のとお
り、メインパイプ1の後端部分をクラッチハウジング2
の筒部2gに挿入するとともに、メインパイプ1の外面
と筒部2gの内面との間に、自己潤滑性のある材料から
なるブッシング1aを差し入れている。ブッシング1a
が後方へ移動するのを防止するためには、軸受23に当
てた前記のプレート26の内側部分をブッシング1aや
メインパイプ1のすぐ後方の位置に配置している。ブッ
シング1aが少しでも後方へ移動するとそのプレート2
6に当たり、それ以上は後方へ移動しない。
【0037】クラッチハウジング2に対するメインパイ
プ1の前後方向位置を定めるためには、前記の空間2i
内に留め具31を配設しメインパイプ1の外周に留め具
31を固定し、クラッチハウジング2の筒部2gの前端
2aおよび固定枠28の後端28aによって、その留め
具31が前後へ移動しないように拘束している。留め具
31は、図2のようにC字形状のものとし、C字の開放
側には軸方向に前端から後端にまで割り溝31gが設け
られており、割り溝31gと直角方向に割り溝のボス3
1e・31f間に通した一本のボルト32でメインパイ
プ1上に締め付けることにより固定している。なお、ハ
ンガー8は、前記のようにクラッチハウジング2のハン
ガーブラケット2hに一部を連結しているほか、図3の
ようにその前端付近を、メインパイプ1の外側に回転自
在に設けた回転筒10上に連結している。
【0038】図1のように、留め具31の前端面および
後端面には、自己潤滑性にすぐれるフッ素樹脂でできた
スペーサ36および37を接合している。アルミニウム
合金でできた留め具31がやはりアルミ合金でできたク
ラッチハウジング2や固定枠28と直接に接触すると摩
擦が大きくなり、メインパイプ1とクラッチハウジング
2との相対回転がスムーズでなくなったり、当たり面が
摩耗したりするのを防止するためである。なお、スペー
サ36・37を使用して適宜それらを交換することによ
り、それらをはさむクラッチハウジング2および固定枠
28との間に常に適切な隙間(隙間は小さい方が好まし
いが、隙間がなくなるとやはり上記の相対回転が円滑で
なくなる)を設けられるというメリットもある。留め具
31の両端面には、内側向きの面とは同心の円形の凹部
31aを形成しており、スペーサ36・37の組立を容
易にしている。なお、前記のブッシング1aの前方への
移動は、この留め具32およびスペーサ37によって防
止される。
【0039】かかるように構成されたクラッチハウジン
グ2とメインパイプ1は、以下のように組み付けられ
る。まず、クラッチハウジング2の筒部2gの穴に固定
枠28側からブッシング1aを挿入する。つぎに留め具
31をその両側にスペーサ36・37を嵌めて空間2i
に挿入するとともに、クラッチハウジング2の前端側
(固定枠28の前端)からメインパイプ1をその先端が
前述のプレート26の端面に当たるまで挿入する。そし
て、留め具31をネジ32にて固定することで組付けが
完了する。
【0040】このような構成により、つぎのような作用
がある。すなわち、 1) メインパイプ1をストッパーであるプレート26に
当たるまで挿入し、一本のネジ32を締めるだけでメイ
ンパイプ1をクラッチハウジング2に回動自在に、しか
も前後方向の移動を規制して取り付けることができるの
で、メインパイプ1とクラッチハウジング2との組立・
分解が極めて容易である。
【0041】2) クラッチハウジング2の留め具31を
挿入する空間2iは側方が外部に開放された状態にあ
り、ダイカストで機械加工なしに形成でき、しかも幅方
向寸法は累積誤差等がないので精度の高いものにでき
る。
【0042】3) 筒部2gの前端面2aと固定枠28の
後端面28aとが留め具31(スペーサーを介して)の
両側面に接触するようにしているので、部品を大きくす
ることなく接触面を大きくでき、振動等に対し耐摩耗性
が高い構成となる。また、作動をスムースに行うととも
にたたき音の防止等のため樹脂製のスペーサを容易に設
けることができる。
【0043】4) 留め具31は、円筒状の部材にメイン
パイプ1と嵌合する穴を設け、その全幅にわたり半径方
向の割り溝を設け、その部分をネジで締め付けるだけの
簡単な構成のものでよいので、コンパクトでしかも信頼
性の高いものにできる。
【0044】5) 留め具31はクラッチハウジング2の
中間部の目立たない箇所に配設されているため、外観的
に優れた構成となるうえ、手で引っかけたりする危険性
も少ない。
【0045】以上の実施例においては、クラッチハウジ
ング2の固定枠28を他の部分と一体に構成し、部品点
数の削減や加工・組立の容易化等をはかったが、場合に
よっては、固定枠28を筒部2gとは別体とし、ハンガ
ーブラケット2h等にネジ止め等で分解可能に取り付け
るようにしてもよい。かかる構成にすると、固定枠28
の内方のメインパイプ1が貫通する穴部でもメインパイ
プ1を容易に支持できる。またその場合、固定枠28の
取付部分を長穴等で軸方向に調整可能に構成すれば、ク
ラッチハウジング2とメインパイプ1の軸方向の隙間
(ガタ)を調整できる。
【0046】図4は、以上に説明した刈払機においてメ
インパイプとクラッチハウジングとの連結状態を一部変
更した形態を示している。図4の場合にも、メインパイ
プ1は、潤滑性のあるブッシング1aを介してクラッチ
ハウジング42の内側に挿入されることにより、クラッ
チハウジング42とはスムーズに相対回転するようにな
っている。そしてこの例でも、メインパイプ1の外周に
留め具51を固定し、その留め具51の前後方向位置を
クラッチハウジング42およびそれと一体に連結した部
材(後述のスリーブ43・44)で拘束することによ
り、クラッチハウジング2に対するメインパイプ1の前
後方向位置を一定にしている。
【0047】図4の形態が図1〜図3の形態と相違する
のは下記の点である。すなわち、 a) 留め具51は、メインパイプ1の外周上に溶接によ
って固定している。その溶接は、メインパイプ1等に熱
変形が生じないよう入熱量を少なくして留め具51とメ
インパイプ1との隅部に施工している。ただし、図1お
よび図2と同様に、ボルト等で締め付けることによりメ
インパイプ1上に留め具51を固定しても差し支えな
い。
【0048】b) クラッチハウジング42に連結した部
材としては、留め具51の前後にスリーブ43およびス
リーブ44を設けることとし、それらはネジを介してク
ラッチハウジング42の前端部に結合させている。それ
らスリーブ43・44と留め具51との間に設ける隙間
の大きさを、ネジを回すことによって簡単に調節できる
ようにするためである。具体的には、図4のように、ク
ラッチハウジング42の前端部に外ネジ42xと内ネジ
42yとを形成しておき、外ネジ42xには、前後方向
に長くて留め具51の前方にまで達するスリーブ43の
後部を結合させ、内ネジ42yには、留め具51の後端
面に届く短い直円筒状のスリーブ44を結合させてい
る。そして外ネジ42xおよび内ネジ42y上で各スリ
ーブ43・44と隣接する部分には、ダブルナット効果
でネジ結合の緩みを防止すべくナット43a・44aを
それぞれはめ付けている。
【0049】c) 留め具51の前端面および後端面に接
触させる樹脂(フッ素樹脂等)製のスペーサ46・47
については、留め具51に面する上記スリーブ43・4
4の端面に、ビス46a・47aによってそれぞれ固定
している。したがってこの形態では、クラッチハウジン
グ42に対するメインパイプ1のスムーズな回転を保障
するための隙間は、留め具51の両端面と各スペーサ4
6・47との間に設けることになる。ただし、図1の形
態と同様に、スペーサ46・47を留め具51の側に取
り付けるとともに上記のような隙間をスペーサ46・4
7とスリーブ43・44との間に設けるのも差し支えな
い。
【0050】図4のような形態を採用した刈払機におい
ては、とくに上記b)の構成に基づいて、留め具51付近
に設ける上記隙間の大きさを調整するのが容易である。
したがって、その隙間を十分に小さくすれば、留め具5
1を備えるメインパイプ1は、スリーブ43・44を有
するクラッチハウジング42に対して、相対回転の円滑
さを確保しながらも前後方向にはガタのないよう適切に
拘束される。前後方向にガタがないならば、刈払機は、
それを使用する作業者に不快な音や振動を感じさせるこ
とがない。
【0051】
【発明の効果】請求項1に記載した刈払機には下記のよ
うな効果がある。すなわち、イ ) 止め輪用の溝などを機械加工によってメインパイプ
に形成する必要がないので、製造コストが低い。
【0052】ロ) やはりメインパイプに溝などを形成す
る必要がないことから、メインパイプの強度を確保しや
すい。したがって、メインパイプを薄型の軽量なものに
し、ひいては刈払機を軽量化することが可能になる。
【0053】ハ) 留め具の前後方向位置の拘束を解いて
クラッチハウジングからメインパイプを抜き取ることが
容易であるため、ブッシングやドライブシャフト等につ
いてのメンテナンスを簡単に行える。
【0054】ニ) 留め具の軸方向移動の規制を、クラッ
チハウジングにおける筒部の前端面と固定枠の後端面と
によって行うため、構造が簡単であるうえ、接触面を広
くとって摩耗の進行を抑えることが容易である。
【0055】ホ) 構成部品の数が少なく構造が簡単であ
る。したがって重量およびコストの面でも有利である。
【0056】ヘ) 軸方向の隙間の管理を行いやすいた
め、ガタを少なくできる。
【0057】請求項2の刈払機の場合には、ト ) ハンガーブラケットに連結部材を兼ねさせるため、
クラッチハウジングの構成が簡単になる。
【0058】請求項3の刈払機の場合には、チ ) 固定枠の取り付け位置を調整することにより、留め
具の側方の隙間(ガタ)の調整が可能である。
【0059】請求項4に記載の刈払機においては、さら
に、リ ) 自己潤滑性の高いスペーサを使用することにより、
留め具の前後の隙間を限りなくゼロに近くして上記のガ
タをさらに小さくしながら、メインパイプとクラッチハ
ウジングとの相対回転を円滑化することができる。
【0060】ヌ) 上記のスペーサを適宜交換することに
よって、上記の隙間を最適化するとともに、長期使用に
よる摩耗に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施についての一形態を示す図であり、
刈払機にけるメインパイプとクラッチハウジングとの間
の連結構造を示す縦断面図(図3の刈払機におけるI部
の詳細図)である。
【図2】図1におけるII−II断面図であって留め具の詳
細を示す図である。
【図3】発明に係る刈払機を例示する全体図である。
【図4】刈払機について他の形態を示す図であり、メイ
ンパイプとクラッチハウジングとの連結構造を示す縦断
面図である。
【図5】従来の刈払機におけるメインパイプとクラッチ
ハウジングとの連結構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】 1 メインパイプ 1a ブッシング 2・42 クラッチハウジング 2h ハンガーブラケット(連結部材) 3 エンジン 7 刈刃 28 固定枠 31・51 留め具 36・37・46・47 スペーサ 43・44 スリーブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹本 和彦 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工 業株式会社 明石工場内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01D 34/68

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メインパイプの前方に刈刃を備え、後方
    には、メインパイプと相対回転自在な状態にクラッチハ
    ウジングおよびエンジンを備える刈払機において、 クラッチハウジングに、a)エンジンを取り付けるための
    基部と、b)基部から前方に突出しメインパイプを回動自
    在に支持する筒部と、c)連結部材を介して筒部の前方に
    一体的に形成され、筒部の前端面から平行に離間して位
    置する固定枠と、d)筒部の前端面と固定枠の後端面とに
    よってはさまれており上記連結部材の部分以外では周囲
    が開放状態にある空間とを形成し、 メインパイプとクラッチハウジングとが軸方向に相対移
    動するのを防止するための留め具を、メインパイプの外
    周に固定してクラッチハウジングにおける上記の空間に
    おさめたことを特徴とする刈払機。
  2. 【請求項2】 肩掛け用ベルトを取り付けるべく上記ク
    ラッチハウジングの筒部の上部から前方にハンガーブラ
    ケットを延ばし、そのハンガーブラケットを上記の連結
    部材としたことを特徴とする請求項1に記載の刈払機。
  3. 【請求項3】 上記の固定枠を、クラッチハウジングの
    筒部に対して取り外し可能なように取り付けたことを特
    徴とする請求項1に記載の刈払機。
  4. 【請求項4】 上記留め具の前方および後方の端面に接
    触させて樹脂製のスペーサを配置したことを特徴とする
    請求項1または2に記載の刈払機。
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