JP2877765B2 - 杭、壁状構造物の構築方法及び杭圧入引抜機 - Google Patents

杭、壁状構造物の構築方法及び杭圧入引抜機

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JP2877765B2
JP2877765B2 JP20614396A JP20614396A JP2877765B2 JP 2877765 B2 JP2877765 B2 JP 2877765B2 JP 20614396 A JP20614396 A JP 20614396A JP 20614396 A JP20614396 A JP 20614396A JP 2877765 B2 JP2877765 B2 JP 2877765B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土留め壁の構築な
どに用いられる杭、壁状構造物の構築方法及び杭圧入引
抜機に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、土留め等の目的で杭(矢板)を
連続して打ち込む工法が知られている。従来、例えば、
護岸工事などでは、岸に沿って矢板を連続して打ち込む
ことにより、土留めや止水を行い、次いで、矢板で土留
めされた部分において、掘削、護岸壁の構築等を行い、
次いで、護岸壁の構築後に矢板の除去、埋め戻し等を行
っていた。
【0003】このような工法においては、護岸壁の構築
を行う前に、上述のように矢板により土留めを行う仮設
工事が必要となるとともに、護岸壁の構築後、矢板の除
去や埋め戻し等の作業を行う必要があり効率が悪かっ
た。そこで、本出願人は、仮設工事を不要とするため
に、プレキャストコンクリート(PC)製の角柱状の杭
を、例えば、岸に沿って連続して打ち込むことにより、
PC杭からなるPC壁体を構築するPC壁体工法を開発
した。
【0004】上記PC壁体工法によれば、PC杭からな
るPC壁体自体が土留めとなるとともに護岸壁となるの
で、基本的に仮設工事を必要とせず、上述のようにPC
杭を連続して打ち込むだけで護岸壁を構築することがで
きる。従って、大幅な工期の短縮とコストの低減を図る
ことができる。
【0005】また、本出願人は、杭の圧入に際して、既
に打ち込まれた杭を掴んで、該杭から反力を取った状態
で他の杭の圧入もしくは引き抜きを行う杭圧入引抜機を
既に開発しており、上述のPC壁体工法においても、P
C杭を上記杭圧入引抜機を用いて圧入するようになって
いる。また、杭圧入引抜機は、従来の鋼矢板や鋼管矢板
を圧入することができるとともに、矢板を撤去する際な
どに、打ち込まれた矢板を引く抜くことができるように
なっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、鋼管矢板や
鋼矢板が基本的に板状(鋼管の場合には、板体を丸めて
円筒にした形状)であるのに対して、上記PC杭は、角
柱状であり、内部に上下端に連通する空洞部を有するも
のとしても、下端面の面積が大きく、圧入に際して大き
な先端抵抗を生じることになる。
【0007】従って、上述のPC壁体工法に用いられる
PC杭を圧入するには、高い圧力(油圧)を必要とする
とともに、地盤の性状によっては、油圧だけによる圧入
が困難であり、圧入に際して、ジェット噴流水を用いる
ジェット工法を併用する必要が生じることがあり、鋼管
矢板や鋼矢板の圧入よりも施工に手間とコストがかかる
可能性があった。
【0008】また、PC杭は、圧入に耐えるとともに土
留め壁等として機能するために高い強度を要求され、高
強度のプレストレスコンクリートを用いることが好まし
く、製造に際して鋼管杭、鋼矢板よりも高いコストがか
かる。なお、上述のようなコストアップを考慮しても、
PC杭を連続して圧入することにより護岸壁等の壁状構
造物を構築できるので、鋼矢板等により仮設の土留め壁
を構築した後に本設の護岸壁等を構築する場合に対し
て、大幅なコストの低減を図ることができるが、さらな
るコストの低減が求められていた。
【0009】また、上述の杭圧入引抜機は、圧入すべき
杭を掴むチャックを有して上下動する昇降体を有し、チ
ャックで杭を掴んだ状態で、昇降体を下降させることに
より、杭を圧入するようになっているが、上述のPC杭
や鋼矢板や鋼管矢板のように杭の形状には様々なものが
あり、一つのチャックで種類の異なる杭に対応すること
が困難であった。
【0010】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、杭を連続して圧入することにより本設の壁状構
造物を構築する際のコストの低減を図ることが可能な
杭、壁状構造物の構築方法及び杭圧入引抜機を提供する
ことを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
杭は、上下端が開口した鋼管状、鋼矢板状もしくはH型
状の鋼材からなる杭本体と、杭本体の上部の外周に設け
られたコンクリート部とを備え、杭本体の上部にコンク
リート部を有することにより鋼材からなる杭とコンクリ
ート杭とを接合した状態で、かつ、上部の少なくとも一
部を露出させた状態で、地盤に圧力で圧入されたことを
上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、多数の
上記杭をコンクリート部同士が互いの側面を当接する状
態に連続して打ち込むことにより、上述の従来のPC杭
と同様にコンクリート製の壁状構造物を構築することが
できる。
【0012】そして、上記杭を圧入する際には、鋼材か
らなる杭本体が地盤に打ち込まれることになるので、従
来のPC杭よりも先端抵抗が小さく、従来のPC杭を圧
入する場合よりも小さな圧力で容易に圧入することがで
きる。また、杭の上部だけがコンクリート製となってい
るので、杭全体を鋼材よりもコストのかかるコンクリー
ト製とした場合に比較して、コストの低減を図ることが
できる。
【0013】また、上記杭でコンクリートの壁状構造物
を構築した場合に、地盤に打ち込まれた多数の杭本体が
基礎杭として作用し、壁状構造物を強固なものとするこ
とができる。また、上記杭本体の上部にコンクリート部
を設ける際に、基本的には、杭本体の上部の周囲にコン
クリート部が形成されることになり、杭本体よりコンク
リート部の方が太くなる。そこで、コンクリート部同士
が互いに当接するように杭を連続して圧入した場合に
は、連続して圧入された地盤中の杭本体同士の間には間
隔があくことになる。
【0014】従って、比較的地下水位が高いような場所
に、上記杭を連続して圧入しても、地盤中の杭本体同士
の間に間隔があいていることにより地下水脈の流れを遮
断することがない。また、地下水位が高く緩い砂地盤等
の液状化しやすい区域においては、地下水の移動を妨げ
ないようにすることで、液状化する可能性を低減するこ
とができる。
【0015】なお、上記杭本体は、例えば、周知の鋼矢
板や鋼管矢板と同様の鋼材からなる杭である。また、上
記コンクリート部は、予め、工場等において形成された
プレキャストコンクリートである。また、上記コンクリ
ート部は、高強度コンクリートであることが好ましく、
予めPC(プレストレスコンクリート)鋼材等によりテ
ンションをかけたプレストレスコンクリートであること
が好ましい。
【0016】また、コンクリート部は、多数の上記杭を
連続して圧入した場合に壁状となるように板状もしくは
角柱状であることが好ましい。また、コンクリート部
は、必ずしも板状や角柱状に限定されるものではなく、
構築された壁状構築物に凹凸ができるような形状でも良
いが、護岸壁や土留め壁等として用いる場合に、隣接す
るコンクリート部同士の間に隙間が生じない形状である
必要がある。
【0017】本発明の請求項2記載の壁状構造物の構築
方法は、上記請求項1記載の杭を連続して圧入すること
により壁状構造物を構築する壁状構造物の構築方法であ
って、上記杭の少なくとも上記コンクリート部の下側が
地盤に埋設されるとともに、連続して圧入された際に隣
接する上記杭の上記コンクリート部同士が互いに当接す
るように、上記杭を連続して地盤に圧力で圧入すること
を上記課題の解決手段とした。上記構成によれば、上記
請求項1記載の杭の上述の作用効果と同様の作用効果を
得ることができる。
【0018】本発明の請求項3記載の杭圧入引抜機は、
既に打ち込まれた杭を掴んで、該杭から反力を取った状
態で他の杭の圧入もしくは引き抜きを行う杭圧入引抜機
であって、既に打ち込んだ杭を掴んで反力を取る本体部
と、該本体部上に左右に回転可能に設けられた旋回部
と、上記杭を掴んだ状態で上下動可能に上記旋回部の側
面に並列に設けられ、上記杭の圧入もしくは引き抜きを
行う複数の昇降体とを具備してなり、上記複数の昇降体
は、それぞれ異なる種類の杭を掴持可能に形成され、か
つ、杭の圧入引き抜きに際して、上記旋回部を回転する
ことにより複数の昇降体を切り換えて使用可能となって
いることを上記課題の解決手段とした。
【0019】上記構成によれば、杭を掴んだ状態で上下
動して杭の圧入もしくは引き抜きを行うことができる複
数の昇降体を有し、かつ、各昇降体がそれぞれ種類の異
なる杭の圧入及び引き抜きを行うことが可能となってい
るとともに、上記旋回部を回転することにより複数の昇
降体を切り換えて使用可能となっているので、基本的に
一つの杭圧入引抜機で種類の異なる杭に対応することが
できる。
【0020】また、上述の請求項1記載の杭は、鋼材か
らなる杭本体の上部にコンクリート部を有し、一つの杭
が鋼材からなる杭とコンクリート杭とを接合した状態と
なっており、基本的に一種類の杭しか圧入できない一つ
の昇降体を有する従来の杭圧入引抜機では、杭を圧入す
ることが困難であるが、請求項3記載の杭圧入引抜機を
用いれば、杭圧入に際して、杭の下部の杭本体部分を圧
入する際には、複数の昇降体のうちの鋼材かなる杭本体
に対応した昇降体を用いて杭を圧入し、ある程度杭を圧
入し、杭の上部のコンクリート部を昇降体で掴む必要が
生じた段階で、旋回部を回転して複数の昇降体のうちの
コンクリート部に対応した昇降体を用いて杭を掴んで圧
入することが可能となる。
【0021】すなわち、請求項3記載の杭圧入引抜機を
用いることにより、請求項1記載の杭を容易に圧入する
ことができる。なお、上記請求項1記載の杭は、仮設で
はなく本設の壁状構造物を構築するためのものであり、
基本的には引き抜く必要はないが、請求項3記載の杭圧
入引抜機は、杭の引き抜きも可能となっている。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態の一
例の杭、杭圧入引抜機及び壁状構造物の構築方法を図面
を参照して説明する。図1および図2は、この一例の杭
1及び杭圧入引抜機10を示すものである。図1及び図
2に示すように、この一例の杭1は、鋼管からなる杭本
体2と、杭本体2の上部の外周に設けられたコンクリー
ト部3からなる。なお、図1において、杭1は、鋼管か
らなる杭本体2の内部を図示できるように、杭1の中心
部を透視した状態に図示されており、実際の杭1の外観
は図5〜図12に図示されている。
【0023】上記杭本体2は、基本的に鋼管杭であり、
上下端がそれぞれ開口した円筒状のものである。上記コ
ンクリート部3は、杭本体2の上部において鋼管の周囲
を覆うように設けられたもので、角柱状の形状を有する
ものであるが、その内部を上端部分まで杭本体2が貫通
した状態となっており、コンクリート部2の上端面に
は、杭本体2内部に連通する開口が形成されている。
【0024】また、コンクリート部3の周囲には、例え
ば、美観を向上するための仕上げが施されている。ま
た、コンクリート部3は、高強度のプレストレスコンク
リートからなり、工場等で予め形成されるプレキャスト
コンクリートとなっている。また、コンクリート部3を
遠心成形するものとしても良い。
【0025】次に、杭圧入引抜機10について説明す
る。この一例の杭圧入引抜機10は、図1に示すよう
に、地盤に隣接して圧入された二つの杭1をそれぞれ掴
持する二つのクランプ11、11を備えたサドル12
と、上記サドル12に前後にスライド移動可能に設けら
れたスライド部(図3に図示)13と、該スライド部1
3上に左右に少なくとも180度以上旋回可能に設けら
れた旋回部(マスト)14と、該旋回部14の側面に上
下にスライド移動可能に設けられ、かつ、打ち込むべき
杭1の杭本体2を掴持可能な第一のチャック15を備え
た第一の昇降体16と、上記旋回部14の第一の昇降体
16の設けられた側面の反対側の側面に上下にスライド
移動可能に設けられ、かつ、打ち込むべき杭1のコンク
リート部3を掴持可能な第二のチャック17を備えた第
二の昇降体18とを有する。
【0026】上記クランプ11は、杭1の上端面の開口
から杭本体2の内部に挿入された状態で図示しない油圧
シリンダを作動させることにより左右もしくは前後に開
いて広がるようになっており、このようにクランプ11
を杭本体2内で開いてクランプ11を杭本体2の内面に
押し付けることで、クランプ11が杭1を掴めるように
なっている。
【0027】そして、二つのクランプ11、11がそれ
ぞれ連続して圧入された杭1、1を掴むことにより、杭
圧入引抜機10が一列に連続して圧入された杭1…上に
支持されるようになっているとともに、杭1…の圧入に
際して杭1…から反力をとることができるようになって
いる。なお、各クランプ11は、基本的には、周知の鋼
管矢板用の杭圧入引抜機10のクランプ11とほぼ同様
の構成となっている。また、既に圧入された杭1、1か
ら反力を取って杭1を圧入する際に、既に圧入された杭
1、1に該杭1を引き抜く方向に力がかかることにな
り、既に圧入された杭1、1が引き抜かれないようにす
るためには、少なくとも2本以上の杭1、1をクランプ
11、11により掴持している必要があり、できれば3
本以上の杭をクランプ11、11により掴持することが
好ましい。
【0028】そして、この一例においては、二つのクラ
ンプ11、11により二本の杭1、1から反力を取るよ
うになっているが、第一の昇降体16のチャック15を
用いて杭1の杭本体2を掴んで後述するように杭1の圧
入を開始する際に、第二の昇降体18のチャック17で
クランプ11、11に掴まれた二本の杭1、1よりも一
つ後ろの杭1のコンクリート部3を掴んで、該杭1から
も反力を取れるようになっている。
【0029】従って、この一例の杭圧入引抜機は、クラ
ンプ11、11が二つしかなくとも第2のチャック17
を用いることにより、三本の杭1、1から反力を取るこ
とができるようになっている。従って、二つの昇降体1
6、18を設けることによるコストの上昇をクランプ1
1、11の数を一つ減らして抑えることができるように
なっている。
【0030】上記サドル12は、図示しない油圧ジャッ
キによりスライド部13を前後にスライド可能に支持し
ている。上記スライド部13は、図3及び図4に示すよ
うにその上部に旋回部14を回動自在に支持するための
太い円柱状のセンターピン13aを有する。なお図3及
び図4においては、センターピン13aを図示するため
に旋回部14を透視した状態で図示している。
【0031】上記センターピン13aは、その下端部が
センターギア13bとなっており、旋回部14の後述す
るモータギア14aと噛合するようになっている。上記
旋回部14は、上記スライド部13のセンターピン13
aに回動自在に支持されるとともに、旋回部14をセン
ターピン13aを回転軸として回転させるためのオービ
ットモータ14bを有する。
【0032】上記オービットモータ14bは旋回部14
に固定されるとともに、その回転軸にセンターピン13
aのセンターギア13bに噛合する上記モータギア14
aが取り付けられており、オービットモータ14bを作
動させることにより、モータギア14aが遊星歯車状に
センターギア13bの周囲を回転して、旋回部14を回
転させるようになっている。
【0033】上記第一の昇降体16は、図2に示すよう
に二つの油圧シリンダ16a、16aを介して旋回部の
前面に取り付けられ、油圧シリンダ16a、16aによ
り上下に昇降可能となっている。第一の昇降体16の第
一のチャック15は、第一のチャック15の前面側を除
く内側面が円筒状となっているとともに、図示しない油
圧ジャッキにより第一のチャック15の内側面が内方向
に移動して円筒状の杭本体2を挟み込む構成となってい
る。
【0034】すなわち、第一のチャック15は、円筒状
の杭専用のものとなっている。なお、第一のチャック1
5は、基本的に周知の鋼管矢板を圧入する杭圧入引抜機
のチャックとほぼ同様の構成となっているが、第一のチ
ャック15の前面側から杭本体2の第一のチャック15
への着脱が行えるように、前面部に杭本体2が通過可能
な開口15aが形成されている。
【0035】上記第二の昇降体18は、図2に示すよう
に二つの油圧シリンダ18a、18aを介して旋回部の
後面に取り付けられ、油圧シリンダ18a、18aによ
り上下に昇降可能となっている。従って、第一の昇降体
16と第二の昇降体18とは、それぞれ旋回部14の反
対側の側面に取り付けられており、旋回部14を180
度回転させることにより、第一の昇降体16の位置と第
二の昇降体18との位置とを入れ換えられるようになっ
ている。
【0036】第二の昇降体18の第二のチャック17
は、前面側が開口したコ字状に形成され、図示しない油
圧ジャッキにより第二のチャック17の左右の内側面が
内方向に移動して角柱状の杭本体2を挟み込む構成とな
っている。すなわち、第二のチャック17は角柱状の杭
専用のものとなっている。なお、第二のチャック17
は、基本的に周知の角柱状のPC杭を圧入する杭圧入引
抜機のチャックとほぼ同様の構成となっているが、第二
のチャック17の前面側から杭1のコンクリート部3の
第二のチャック17への着脱が行えるように、前面部に
コンクリート部3が通過可能な開口17aが形成されて
いる。
【0037】次に、上述の杭1を上述の杭圧入引抜機1
0で連続して圧入することにより壁状構造物を構築する
壁状構造物の構築方法を説明する。まず、上述の杭圧入
引抜機10の基本的な動作としては、上記クランプ1
1、11を既に圧入された杭1、1の上面から杭本体2
内部に挿入するとともに油圧シリンダ(図示略)によ
り、クランプ11、11を開くことで、杭圧入引抜機1
0を既に圧入した杭1…上に支持させた状態とする。
【0038】そして、第一の昇降体16を杭圧入引抜機
10の前面側に位置させた状態で、第一の昇降体16の
第一のチャック15にこれから圧入する杭1の杭本体2
を掴持させる。次いで、第一の昇降体16を上に上げた
状態から下に下げた状態とすることにより、杭1を下方
に移動して杭1を第一の昇降体16の一回分のストロー
クだけ圧入する。
【0039】次に、第一のチャック15による杭本体2
の掴持を緩めて杭1を引き上げないようにして、第一の
昇降体16だけを上昇させ、再び、第一のチャック15
に杭本体2を掴持させて第一の昇降体16を下降させる
ことにより上述の一回分のストロークだけ杭1を圧入す
る。そして、上述の操作を繰り返すことにより、杭1を
圧入していく。なお、杭1の圧入に際しては、先に圧入
された杭1のコンクリート部3の側面に次に圧入する杭
1のコンクリート部3の側面が当接するようにする。
【0040】次に、図5に示すように、第一の昇降体1
6を上昇させた場合に、第一の昇降体16が杭1のコン
クリート部3の下面にぶつかる可能性がある所まで杭1
が圧入された段階で、図6に示すように、第一のチャッ
ク15による杭本体2の掴持を解除するとともに、スラ
イド部を後方にスライド移動させ、旋回部14、第一の
昇降体16及び第二の昇降体18を後方側に移動する。
この際に、第一のチャック15の前面側が杭本体2を通
過させることが可能なように開口しているので、第一の
昇降体16を後方に移動させることにより、第一の昇降
体16(第一のチャック15)と杭1とを完全に切り離
すことができる。
【0041】次に、旋回部14を左もしくは右に180
度回転させることにより、杭圧入引抜機10の前面側に
あった第一の昇降体16を後面側に移動させるととも
に、後面側にあった第二の昇降体18を前面側に移動さ
せて、図7に示すように、第一の昇降体16の位置と第
二の昇降体18の位置とを入れ換える。なお、この際に
は、上述のようにスライド部を後方に移動させることに
より、第一の昇降体16及び第二の昇降体18が圧入中
の杭1にぶつかるようなことがない。
【0042】また、第二の昇降体18の第二のチャック
17は、下方に延出した形状となっており、上下動可能
な第二の昇降体18を最も下に位置させた状態で、第二
のチャック17の下端部がサドル13よりも下になるよ
うになっているので、旋回部14を回転させる際には、
第二の昇降体18をその最も下の位置より上方に昇降さ
せた状態としておく必要がある。
【0043】次に、スライド部13を前方にスライド移
動させて旋回部14を基の位置に戻すことにより、図8
に示すように、第二の昇降体18の第二のチャック17
に杭1のコンクリート部3を配置した状態とすることが
できる。なお、第二のチャック17の前面側がコンクリ
ート部3を通過させることが可能なように開口している
ので、第二の昇降体18を前方に移動させることによ
り、上述のように第二のチャック17にコンクリート部
3を配置した状態にできる。
【0044】次に、第二のチャック17により圧入中の
杭1のコンクリート部3を掴持させて、図9に示すよう
に第二の昇降体17を下方に移動させることにより、杭
1を下方に移動して杭1を第二の昇降体18の一回分の
ストロークだけ圧入する。
【0045】次に、第二のチャック17によるコンクリ
ート部3の掴持を緩めて杭1を引き上げないようにし
て、図10に示すように、第二の昇降体18だけを上昇
させ、再びで、第二のチャック18にコンクリート部3
を掴持させて、図11に示すように第二の昇降体18を
下降させることにより上述の一回分のストロークだけ杭
1を圧入する。そして、上述の操作を繰り返して杭1を
圧入していくことにより、図12に示すように、少なく
ともコンクリート部3の下側の杭本体2の部分が地盤中
に埋設されるまで、杭1を圧入することができる。
【0046】なお、上述の杭圧入引抜機10による杭1
の圧入の基本動作では、既に、複数の杭1を打ち込んだ
状態で説明を行ったが、最初の杭1を圧入する際には、
既に圧入された杭1から反力を取ることができないの
で、例えば、杭圧入引抜機10専用の重量の有る台座等
を用い、該台座に杭圧入引抜機10をセットした状態で
杭1を圧入する。
【0047】また、上記杭圧入引抜機10により連続し
て杭1を圧入させるためには、杭圧入引抜機10を既に
圧入された杭1…上で前進させる必要がある。そして、
杭圧入引抜機10を順次前進させるとともに杭1を順次
圧入させる際には、まず、図12に示すように、杭1の
圧入が終了した時点で、旋回部14を180度回転させ
て第一の昇降体16を杭圧入引抜機10の前面側に移動
させる。
【0048】次いで、スライド部13を前方にスライド
移動させて、旋回部14を第一の昇降体16が次の杭1
を圧入できる位置まで移動させる。次に、この状態のま
ま、第一の昇降体16に圧入すべき杭1の杭本体2をセ
ットして上述のように第一の昇降体16による圧入を行
う。
【0049】この際には、スライド部13及び旋回部1
4が前方に延出した状態で、大きな力で杭1の圧入を開
始する必要があり、杭圧入引抜機10に大きなモーメン
トがかかることになるので、二つのクランプ11、11
で既に圧入された杭1、1を掴んで杭圧入引抜機10を
杭1、1上に支持することが難しくなり、杭圧入引抜機
10を安定して支持するためには、三つのクランプ11
を用いることが好ましいが、上述のように、後方側の第
二の昇降体18の第二のチャック17で既に圧入された
杭1を掴むことにより、第二の昇降体18が三番目のク
ランプとして作用し、杭圧入引抜機10を杭1上に安定
した状態で支持させることができる。
【0050】次に、杭1を杭圧入引抜機10の荷重が支
持可能な状態まで圧入した段階で、第一の昇降体16を
上昇させとともに第一のチャック15で圧入中の杭1の
杭本体2を掴み、クランプ11、11による杭1、1の
掴持を解除する。この状態では、第一の昇降体16が圧
入中の杭1に固定され、サドル13や旋回部14の既に
圧入された杭1、1への固定が解除された状態となって
いる。この状態で、第一の昇降体16を下方に移動する
ように作動すると、サドル13側が持ち上げられ、クラ
ンプ11、11が杭1、1の杭本体2、2の内部から上
方に出された状態となる。
【0051】この状態で、さらに、スライド部13を後
方側に移動させるように作動させると、サドル13側が
圧入中の杭1に引き寄せられるように前進することにな
る。次いで、第一の昇降体16を上方に移動するように
作動させると、サドル13が下方に移動し、クランプ1
1、11が先程の杭1、1より一つ前にずれた杭1、1
の杭本体2、2内部に挿入される。
【0052】そして、クランプ11、11により杭1、
1を掴むと図5に示す状態となり、上述のように杭1を
圧入していくことができる。また、図5に示す状態にお
いて、第一の昇降体16の第一のチャック15で圧入中
の杭1を掴むとともに、第二の昇降体18を下降させて
第二のチャック17で前から四本目の既に圧入された杭
1を掴み、この状態で、第一の昇降体16及び第二の昇
降体18を上方に移動するように作動すると、サドル1
2の部分が下側に押し付けられ、サドル121の下側の
二本の杭1、1を下方に押圧して少し押し込むことが可
能となる。すなわち、第一及び第二のチャック15、1
7に掴まれた杭1、1から反力をと取ってサドル12の
下側の二本の杭1、1を圧入することができる。
【0053】このようにサドル12で二本の杭1、1を
圧入することで、既に圧入された杭1、1の天端位置を
容易に集成することができる。すなわち、各杭1、1の
天端の高さを容易に揃えることができる。また、この際
に、クランプ11、11による杭1、1の掴持を解除し
ておけば、サドル12を上述のように下方に押し下げる
ことで、サドル12の下側の二本の杭1、1の高さが同
等となるように調整することができる。
【0054】以上のようにこの一例の杭圧入引抜機10
は、下部が鋼管杭状で上部がコンクリート杭状の杭1を
一台で容易に圧入することができる。すなわち、従来
は、杭圧入引抜機のチャックが杭の種類毎に形状が異な
るので、種類が違う杭を圧入する場合には、異なる杭圧
入引抜機を用いるか、昇降体の部分を取り外して別の昇
降体に付け替える必要があるのに対して、この一例の杭
圧入引抜機10は、二つの昇降体16、18と二つのチ
ャック15、17を有するので、一台で二種類の杭の圧
入引き抜きを容易に行うことができるとともに、第一の
例の杭1のように、下部が鋼管杭状で上部がコンクリー
ト杭状のものでも、杭圧入引抜機の交換もしくは昇降体
の取り外しと取り付けを行う必要がなく、容易に圧入す
ることができる。
【0055】また、上記杭1は、従来のPC杭と同様に
仮設ではなく本設の壁状構造物を構築することができる
とともに、地盤に圧入される部分が鋼管となっているの
で、PC杭よりも先端抵抗が少なく、容易に圧入するこ
とができる。また、鋼管よりも比較的高価なコンクリー
ト部が、杭1の上部の地盤より露出する部分だけに用い
られているので、杭1のコストを低減することができ
る。
【0056】従って、この一例の杭1を用いて壁状構造
物を構築することにより、従来のPC壁体工法よりさら
にコストの低減を図ることができる。また、この一例の
杭1においては、コンクリート部3の径が杭本体2の径
より大きくなっているので、コンクリート部3同士を互
いに当接させた状態で連続して圧入することにより、壁
状構造物を構築した場合には、杭本体2同士の間隔が図
1等に示すように開くことになる。
【0057】従って、杭1により壁状構造物を構築する
ものとしても、壁状構造物の地下部分が地下水脈の流れ
を遮断することがない。また、液状化しやすいような地
域において、上述のような壁状構造物を構築した場合
に、地震時に地下水の流れを遮断して液状化が起きやす
くなるのを防止することができる。
【0058】なお、上記例では、杭1を圧入する場合の
説明を行ったが、杭圧入引抜機10に圧入の逆の操作を
すれば、杭1の引き抜きも行うことができる。また、上
記例においては、杭本体2を鋼管状としたが、杭本体2
は鋼管状に限られるものではなく、周知の鋼矢板状の形
状や、H型鋼状の形状や、その他の形状の鋼材からなる
ものを用いることができる。
【0059】また、上記コンクリート部の形状も角柱状
に限られるものではない。なお、杭の形状を変更した場
合には、チャック15、17も杭に対応して変更する必
要がある。また、杭圧入引抜機10に設けられる昇降体
16、18及びチャック15、17は、二つに限られる
ものではなく、三つ以上でも良い。また、上記例におい
ては、杭1により形成された壁状構造物の前面と後面と
が両方露出した状態に図示したが、壁状構造物が土留め
壁や護岸壁等して用いられる場合には、例えば、後面側
が土砂に覆われた状態となる。
【0060】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の杭によれば、多
数の上記杭をコンクリート部同士が互いの側面を当接す
る状態に連続して打ち込むことにより、上述の従来のP
C杭と同様にコンクリート製の壁状構造物を容易に構築
することができる。また、上記杭を圧入する際には、鋼
材からなる杭本体が地盤に打ち込まれることになるの
で、従来のPC杭よりも先端抵抗が小さく、従来のPC
杭を圧入する場合よりも小さな圧力で圧入することがで
きる。また、杭の上部だけがコンクリート製となってい
るので、杭全体を鋼材よりもコストのかかるコンクリー
ト製とした場合に比較して、コストの低減を図ることが
できる。
【0061】また、上記杭でコンクリートの壁状構造物
を構築した場合に、地盤に打ち込まれた多数の杭本体が
基礎杭として作用し、壁状構造物を強固なものとするこ
とができる。また、上記杭本体の上部にコンクリート部
を設ける際に、基本的には、杭本体の上部の周囲にコン
クリート部が形成されることにより、杭本体よりコンク
リート部の方が太くなり、コンクリート部同士が互いに
当接するように杭を連続して圧入した場合に、連続して
圧入された地盤中の杭本体同士の間には間隔が空くこと
になる。
【0062】従って、比較的地下水位が高いような場所
に、上記杭を連続して圧入しても、地盤中の杭本体同士
の間に間隔が空いていることにより、壁状構造物により
地下水脈の流れを遮断するのを防止することができる。
また、地下水位が高く緩い砂地盤等の液状化しやすい区
域においては、地下水の移動を妨げないようにすること
で、液状化する可能性を低減することができる。
【0063】本発明の請求項2記載の壁状構造物の構築
方法によれば、上記請求項1記載の杭の上述の効果と同
様の効果を奏することができる。本発明の請求項3記載
の杭圧入引抜機によれば、杭を掴んだ状態で上下動して
杭の圧入もしくは引き抜きを行うことができる複数の昇
降体を有し、かつ、各昇降体がそれぞれ種類の異なる杭
の圧入および引き抜きを行うことが可能となっていると
ともに、上記旋回部を回転することにより複数の昇降体
を切り換えて使用可能となっているので、基本的に一つ
の杭圧入引抜機で種類の異なる杭に対応することができ
る。
【0064】また、上述の請求項1記載の杭のように、
鋼材からなる杭本体の上部にコンクリート部を有し、一
つの杭が鋼材からなる杭とコンクリート杭とを接合した
状態となっている杭を容易に圧入することが可能とな
る。また、複数の昇降体のうちの一つの昇降体を用いて
杭を圧入する際に、残りの昇降体のうちの少なくとも一
つの昇降体が既に圧入された杭を掴むようにすることに
より、本体部だけではなく、昇降体でも既に圧入された
杭から反力を取ることができるので、本体部の構成を簡
略化しても既に圧入された杭から十分な反力を得ること
ができる。従って、本体部の構成を簡略化することによ
り、複数の昇降体を設けることによる杭圧入引抜機のコ
ストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の杭及び杭圧入引抜
機を示す杭の一部を透視した側面図である。
【図2】上記例の杭及び杭圧入引抜機を示す平面図であ
る。
【図3】上記例の杭圧入引抜機を示す一部を透視した側
面図である。
【図4】上記例の杭圧入引抜機を示す一部を透視した平
面図である。
【図5】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構造
物の構築方法を説明するための側面図である。
【図6】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構造
物の構築方法を説明するための側面図である。
【図7】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構造
物の構築方法を説明するための側面図である。
【図8】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構造
物の構築方法を説明するための側面図である。
【図9】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構造
物の構築方法を説明するための側面図である。
【図10】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構
造物の構築方法を説明するための側面図である。
【図11】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構
造物の構築方法を説明するための側面図である。
【図12】上記例の杭及び杭圧入引抜機を用いた壁状構
造物の構築方法を説明するための側面図である。
【符号の説明】
1 杭 2 杭本体 3 コンクリート部 10 杭圧入引抜機 11 クランプ(本体部) 12 サドル(本体部) 13 スライド部(本体部) 14 旋回部 15 第一のチャック 16 第一の昇降体 17 第二のチャック 18 第二の昇降体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E02D 5/30 E02D 7/20 E02D 11/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上下端が開口した鋼管状、鋼矢板状もし
    くはH型状の鋼材からなる杭本体と、杭本体の上部の外
    周に設けられたコンクリート部とを備え、杭本体の上部
    にコンクリート部を有することにより鋼材からなる杭と
    コンクリート杭とを接合した状態で、かつ、上部の少な
    くとも一部を露出させた状態で、地盤に圧力で圧入され
    たことを特徴とする杭。
  2. 【請求項2】 上記請求項1記載の杭を連続して圧入す
    ることにより壁状構造物を構築する壁状構造物の構築方
    法であって、 上記杭の少なくとも上記コンクリート部の下側が地盤に
    埋設されるとともに、連続して圧入された際に隣接する
    上記杭の上記コンクリート部同士が互いに当接するよう
    に、上記杭を連続して地盤に圧力で圧入することを特徴
    とする壁状構造物の構築方法。
  3. 【請求項3】 既に打ち込まれた杭を掴んで、該杭から
    反力を取った状態で他の杭の圧入もしくは引き抜きを行
    う杭圧入引抜機であって、 既に打ち込んだ杭を掴んで反力を取る本体部と、 該本体部上に左右に回転可能に設けられた旋回部と、 上記杭を掴んだ状態で上下動可能に上記旋回部の側面に
    並列に設けられ、上記杭の圧入もしくは引き抜きを行う
    複数の昇降体とを具備してなり、 上記複数の昇降体は、それぞれ異なる種類の杭を掴持可
    能に形成され、かつ、杭の圧入引き抜きに際して、上記
    旋回部を回転することにより複数の昇降体を切り換えて
    使用可能となっていることを特徴とする杭圧入引抜機。
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