JP2874901B2 - 新規血栓溶解剤およびその製造方法 - Google Patents

新規血栓溶解剤およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は新規プラスミノーゲン活性化因子誘導体、該
誘導体を産生する細胞、該誘導体をコードするDNA配列
および該誘導体の製造法にかかわる。本発明による新規
プラスミノーゲン活性化因子誘導体は、プラスミノーゲ
ンをフィブリン溶解活性を有するプラスミンに変換する
作用を有し、種々の血栓症の治療薬として用いることが
できる。
〔従来の技術〕
ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(以下、TPAと
略記する)は、ヒト・メラノーマ細胞(Bowes melanom
a)の分泌するTPAについてよく研究され、527のアミノ
酸残基から成る糖蛋白質である[Pennica,D.ら(1983
年)「ネイチャー(Nature)」,301巻,214頁]。TPA
は、フィブリン溶解能を有しないプラスミノーゲンを該
活性を有するプラスミンに変換する酸素で血栓溶解作用
を有している。
TPAは現在、血栓症の治療に用いられている〔Grossba
rd,E.B.(1987年)「ファーマシューティカル・リサー
チ(Pharmaceutical Research)」,4巻,375頁〕。しか
し、TPAの最大の欠点はその血中からの急速なクリアラ
ンスである。血流中に投与されたTPAは、主に肝臓で代
謝されると推定され〔Fuchs,H.E.ら(1985年)「ブラッ
ド(Blood)」,65巻,539頁〕、その血中半減期は僅かに
2分である〔Collen,D.ら(1985年)サーキュレーショ
ン(Circulation)」,72巻,384頁〕。従って、血栓症の
治療には大量のTPAの投与が必要である。TPAのような蛋
白の大量投与による血栓症治療は、極めて高価な治療に
なるばかりでなく、抗原抗体反応による副作用という懸
念されるべき問題を含んでいる。
従って、TPA分子の化学的修飾(WO84/01786)(特開
昭63−06938)[Berger,H.ら(1988年)「ブラッド(Bl
ood)」,71巻,1641頁]、酵素的修飾(特開昭62−28258
2)(EPO 253 582 Al)、あるいは遺伝子工学的改変
(特開昭61−243024,特開昭62−130690,特開昭62−2729
76,特開昭62−269688,特開昭62−282582,特開昭64−633
79)等により血中持続性の改良された、即ち血中半減期
の長いTPAの誘導体作製の試みが行われている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記のように、化学修飾、酵素修飾、遺伝子工学的手
法等によって、多くの血中持続性の向上したTPA誘導体
が発明されている。しかしこれらのTPA誘導体は、血中
持続性が大幅に向上した反面、TPAの特徴的な性質であ
るフィブリン溶解能の極端な低下が認められ、優れた治
療効果を示すには至っていない。また改変によりTPAと
しての酵素活性が著しく低下している例もある。血中持
続性が向上し、かつTPAの特性をできるだけ保持したTPA
誘導体は、より少量の投与での血栓治療が期待でき、そ
の開発の意義は極めて大きい。
本発明は、血中半減期が長く、かつフィブリン溶解能
の強い新規TPA誘導体を提供しようとするものである。
また本発明は、該TPA誘導体を産生する動物培養細胞の
作製法および該動物培養細胞を利用した該TPA誘導体の
製造方法を提供しようとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
TPAはN末端からフィンガー領域、成長因子領域、ク
リングル1、クリングル2およびセリンプロテアーゼ活
性を有する領域の5つの領域から成る〔Pennica,D.ら
(1983年)「ネイチャー(Nature)」,301巻,214頁〕。
TPAの成長因子領域を欠失したTPA誘導体の作製と性質
については、いくつかの記述がある(特開昭62−19862
3,特開昭62−269688,特開昭64−63379)〔Larsen,R.G.
ら(1988年)「ジャーナル.オブ.バイオロジカル.ケ
ミストリー(Journal of Biological Chemistry)」263
巻,1023頁〕〔Browne,J.M.ら(1988年)「ジャーナル.
オブ.バイオロジカル.ケミストリー(Journal of Bio
logical Chemistry)」263巻,1599頁〕。
成長因子領域を欠くTPA誘導体は、血中持続性が向上
したもののインビトロ血栓溶解能が著しく低下してお
り、天然型TPAの良い特性を失っている。
本発明者らは、成長因子領域を欠くTPAのインビトロ
フィブリン溶解能の低下は、欠失によって新たに生じた
不自然なフィンガー領域とクリングル1領域の連結部に
あると考え、遺伝子工学的手法を用いて改良に努めた。
その結果、驚くべき事に、成長因子領域の部分欠失体の
中に従来の同領域欠失体と同等の血中持続性を保持しつ
つも、インビトロ血栓溶解能が著しく改善されたものが
あることを発見した。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、成長因子
領域の欠失したTPA誘導体のさらなる改良であり、遺伝
子工学的手法により達成されるものである。したがって
改良型TPAの作成にはTPAのアミノ酸配列をコードするDN
A配列が不可欠である。そのようなDNA配列の取得は、TP
AcDNAあるいは染色体DNAのクローニング、あるいはTPAc
DNA,染色体DNAやTPAアミノ酸配列をもとにDNAを化学合
成することによって達成できるだろう。TPAcDNAは、ペ
ニカ等[Pennica,D.ら(1983年)ネイチャー(Nature)
301巻,214頁]が単離している。TPAのアミノ酸配列およ
びcDNAに対する番号付けは、彼等が提案しているものに
従った。TPA染色体DNAはニイ等[Ny,T.ら(1984年)プ
ロシーディング.オブ.ザ.アカデミー.オブ.サイエ
ンス.ユーエスエイ(Proceeding of the Academy of S
cience USA)81巻、5355頁]とブラウンら[Brown,M.J.
ら(1985年)ジーン(Gene)33巻,279頁]とデーゲンら
[Degen,S.J.F.ら(1986年)ザ.ジャーナル.オブ.バ
イオロジカル.ケミストリー(The Journal of Biologi
cal Chemistry)261巻,6972頁〕がそれぞれ単離してい
る。TPA染色体遺伝子のエクソンに対する番号付けは、
ニイらに従うことにする。本発明者らは、染色体DNA利
用発現ベクターpSVePA−1(特開昭62−14783)によっ
て形質転換されたCHO−Kl細胞よりmRNAを抽出し、cDNA
の合成およびクローニングを行なった。実施例にあるよ
うに新たに取得したTPAcDNAおよびpSVePA−1に含まれ
る染色体DNAを利用してTPA誘導体作成の基本となる発現
ベクターpSVeCPA−1を作成した。
従来の技術で作成され、血中持続性およびフィブリン
溶解能が評価されている成長因子領域の欠失したTPA誘
導体に関しては、ラーセンらLarsen,R.G.ら(1988年)
ザ.ジャーナル.オブ.バイオロジカル.ケミストリー
(The Journal of Biological Chemistry)263巻,1023
頁〕もしくはブローネら[Browne,J.M.ら(1988年)ジ
ャーナル.オブ.バイオロジカル.ケミストリー(Jour
nal of Biological Chemistry)263巻、1599頁]の報告
がある。成長因子領域の欠失したこれらTPA誘導体は、
いずれもアミノ酸51番目から87番目までを欠失したもの
であり、この誘導体は本発明の対照であり、本発明にか
かる成長因子領域の欠失体あるいは部分欠失体を作成す
るためのもとになるものである。この誘導体は彼等の行
なった方法で、作成することができる。彼等は、合成DN
Aプライマーを利用したループアウト法を採用している
が、それ以外にカセット式変異導入法も有効である。即
ち51番目から87番目までのアミノ酸をコードするcDNA配
列bp340−bp450を欠失したDNA配列を化学的に合成する
ことによっても作成することができる。上記方法による
51番目から87番目迄のアミノ酸を欠失したTPA誘導体を
コードするDNA配列の作成方法については、比較例に詳
細に記した。65番目から89番目のアミノ酸あるいは75番
目から84番目のアミノ酸が欠失体したTPA誘導体の作製
もループアウト法あるいはカセット式変異導入法いずれ
でも可能である。カセット式変異導入法を採用した場
合、合成するDNA配列は、cDNAのすべてであっても一部
であっても良い。一部のみ合成した場合は、適当な制限
エンドヌクレアーゼとT4DNAリガーゼを組み合わせれ
ば、本来のcDNA配列の一部分を合成DNAと置き換えるこ
とが可能である。使用する制限エンドヌクレアーゼは、
数多く考えられるが、本発明を達成するためには BglI
Iと NarIの組み合わせが好適である。より好ましく
は、合成DNAとcDNA配列bp190付近からbp323付近迄を含
む BglIIと DraIIIで切断、単離して得た約130bpの断
片とbp457付近からbp519付近迄を含む HaeIIIと NarI
で切断、単離して得た約60bpの断片を組合せれば良い。
これら3個の断片を連結後、前述のTPA発現ベクターpSV
eCPA−1の欠失、変異以外は相同な部分、即ち BglII
とNarIでの切断で生ずる約330bpの断片と置き換えるこ
とによって目的のTPA誘導体発現ベクターが作成でき
る。参考例1に75番目から84番目までのアミノ酸を欠失
したTPA誘導体の作成方法に関して詳細に記した。
発現ベクターpSVeCPA−1は、TPA遺伝子の上流にSV40
のウイルスの初期プロモーターがTPA遺伝子が発現可能
な形で存在しており、動物細胞に導入された際、TPAあ
るいはTPA誘導体を生産しうるように設計されている。
もちろんプロモーターとしてはSV40以外にTPA遺伝子を
発現可能なものならいかなるものでも利用することがで
きる。
65番目から89番目までのアミノ酸を欠失したTPA誘導
体は、制限酵素 HaeIIIを利用すればより容易に作成す
ることができる。上記TPA誘導体発現ベクターの作成方
法については実施例2に詳細に記した。
発現ベクターの動物培養細胞への導入とTPA誘導体生
産細胞の作成 動物細胞へのDNAの導入法として、トランスフェクシ
ョン効率に差はあるが、リン酸カルシウム法[Wigler,
M.ら(1977年)セル(Cell),11巻,233頁],マイクロ
インジェクション法[Anderson,W.F.ら(1989年)プロ
シーティング.オブ.ザ.ナショナル.アカデミー.オ
ブ.サイエンス.ユーエスエー(同上)、77巻、5399
頁]、リポゾーム法、DEAE−デキストラン法或いは細胞
融合法〔Schoffner,W.ら(1980年)プロシーディング.
オブ.ザ.ナショナル.アカデミー.オブ.サイエン
ス.ユーエスエー(同上),77巻,2163頁〕電気導入法
〔達家雅明ら、(1987年)細胞工学、6巻,494頁〕など
が利用できる。TPA誘導体発現ベクターを細胞に導入
後、適当な選択マーカー遺伝子によって獲得した形質に
より形質転換株を得ることができる。動物細胞での選択
マーカー遺伝子としては、Ecogpt〔Mulligaan,R.C.ら
(1980年)サイエンス(Science),209巻,1422頁〕,neo
〔Southern,P.J.ら(1982年)ジャーナル.オブ.モレ
キュラー.アンド.アプライド.ジェネティックス(Jo
urnal of Molecular and Applied Genetics)1巻,327
頁〕,dhfr〔Wigler,M.ら(1980年)プロシーディング.
オブ.ザ.ナショナル.アカデミー.オブ.サイエン
ス.ユーエスエー(同上),77巻,327頁〕等の遺伝子が
用いられる。TPA誘導体発現ベクターは、これら選択マ
ーカー遺伝子を同一プラスミド内に含んでいてもあるい
は別のプラスミドであっても形質転換株の取得は可能で
ある。得られた形質転換株がTPA誘導体を生産するか否
かは、それぞれの形質転換細胞の培養液に含まれるプラ
スミノーゲン活性化活性を測定することによって決定で
きる。
TPA誘導体の精製 TPA誘導体生産株の培養は、宿主となる動物細胞株に
応じた培養法により行なうことができる。培養上清から
のTPA誘導体の回収精製は、CPG、キレーティング セフ
ァロース、Con−Aセファロース、イオン交換体、オク
チルセファロース、セファデックスゲルでのクロマトグ
ラフィー、抗体カルムクロマトグラフィーや電気泳動等
を用いて行なうことができる。プラスミノーゲン活性化
活性は、プラスミノーゲン含有フィブリン平板を用いる
方法[Mackie,M.ら(1981年)ブリティッシュ.ジャー
ナル.オブ.ヘマトロジー(British Journal of Hemat
orogy)47巻,77頁〕やプラスミンの合成基質S2251の分
解を測定する方法[Allen,R.A.とPepper,D.S.(1981
年)トロンボシス.アンド.ヘモスタシス(Thrombosis
and Haemostasis)45巻,43頁]CLT法〔Gaffney,P.T.と
Curtis,A.D.(1985年)トロンボシス.アンド.ヘモス
タシス(同上)53巻,134頁〕ELISA法〔Holvoest,T.ら
(1985年)トロンボシス アンド ヘモスタシス(同
上)55巻,684頁〕によって測定できる。
血栓溶解能の評価 本発明が提示するTPA誘導体は、血栓の溶解にかかわ
る種々の性質すなわち比活性、フィブリン親和性、活性
のフィブリン依存性、プロテアーゼ抵抗性、血中持続
性、プラスミノーゲン活性化活性、インビトロ血栓溶解
能あるいは阻害剤感受性等のいずれかにおいて改善され
た性質を持つ。フィブリン親和性は、フィブリンクロッ
トへの取込みを指標とする方法に従って測定することが
できる〔Collen,D.ら(1988年)ブラッド(Blood)71
巻,216頁〕。インビトロ血栓溶解能は、125I−フィブリ
ンからの放射能の遊離を指標する方法に従って測定する
ことができる〔Larsen,G.R.ら(1988年)ザ.ジャーナ
ル.オブ.バイオロジカル.ケミストリー(同上)263
巻,1023頁〕。活性のフィブリン依存性あるいはプラス
ミノーゲン活性化活性は、プラスミンの合成基質S2251
を利用するコレンら〔Collen,Dら(1982年)ザ.ジャー
ナル.オブ.バイオロジカル.ケミストリー(同上)25
7巻,2912頁〕の方法にて測定することができる。血中持
続性に関してはベーベら〔Beebe,D.P.ら(1986年)トロ
ンボシス リサーチ(同上)43巻,663頁〕あるいはマッ
トソンら〔Mattson,Ch.ら(1983年)トロンボシス リ
サーチ(同上)30巻,91頁〕が報告しており、それらに
記載の方法で血中半減期が測定できる。
〔発明の効果〕
血中持続性以外に、生体内における血栓溶解能に影響
する因子は、フィブリン親和性、フィブリンによる活性
化、プラスミノーゲン活性化活性、プロテアーゼ抵抗
性、阻害剤感受性など様々である。本発明が提供する新
規TPA誘導体は、天然型TPAに比べてはるかに改善された
血中持続性を持ち、且つ既に知られている成長因子領域
の欠失誘導体よりも天然型TPAに近いインビトロ血栓溶
解能を保持している点で、心筋梗塞等の血栓症の治療に
用いることができ、現在試みられている治療方法を改善
することができる。
〔実施例〕
以下に実施例を示すが、本発明に係わる諸実験は、内
閣総理大臣の定める「組換えDNA実験指針」に従って行
なった。また実施例中のファージ、プラスミド、DNA、
種々の酵素、大腸菌等を扱う詳しい諸操作は以下にあげ
る雑誌、成書を参考とした。
1.蛋白質 核酸 酵素、26巻、4号(1981年)臨時増刊
遺伝子操作(共立出版) 2.遺伝子操作実験法、高木康敬 編著(1980年)講談社 3.遺伝子操作マニュアル、高木康敬 編著(1982年)講
談社 4.Molecular Cloning a laboratory manual,T.Maniatis
ら編(1982年)Cold Spring Harbor Laboratory 5.Methods in Enzymology,65巻、L.Grossmamら編(1980
年)Academic Press 6.Methods in Enzymology,65巻、R.Wu編(1979年)Acad
emic Press 実施例1 TPA発現ベクターpSVeCPA−1の作成 TPA発現ベクターpSVeCPA−1は以下に記述するステッ
プを経て作成した。
a.TPAのcDNAクローンpCH79は以下の様にして作成した。
まず、染色体DNA利用TPA発現ベクターpSVePA−1(特
開昭62−14783)を導入したCHO−K1細胞から、既知のグ
アニジン−ホットフェノール法に準じ、トータルRNAを
抽出した。次に、オリゴdTセルロースクロマトグラフィ
ーにより、ポリA+mRNAを調製し、ショ糖濃度勾配遠心法
によって分子量分画してTPAのmRNAを含む画分を得た。
市販のcDNA合成キット(アマシャム社製)にこの画分を
供してcDNAを合成し、市販のλgt10利用cDNAクローニン
グキット(アマシャム社製)を用いて、cDNAライブラリ
ーを作成した。このライブラリーに対して、pSVePA−1
を制限酵素XbaIで切断、単離した第10,11及び12エクソ
ンを含む約2.5Kbの断片をプローブとして用い、通常の
方法でプラークハイブリダイゼイションを行なって陽性
ファージを選択した。得られた陽性ファージDNAを調製
し、制限酵素HindIII(宝酒造株製)で消化後アガロー
スゲル電気泳動を行なって、クローニングに用いたと同
じXbaI2.5Kb断片をプローブとしてサザンハイブリダイ
ゼイション法により解析した。その結果、CH79と名づけ
たクローンには、HindIIIで約2.2Kbに切断されるプロー
ブ陽性の断片が含まれていることが分かった。このHind
III約2.2Kb断片をアガロースゲル電気泳動法にて単離
後、同じくHindIIIで消化したpUC19〔宝酒造(株)製〕
とT4DNAリガーゼを用いて連結後、E.coli DH1に導入し
てpCH79を作成した。このcDNAクローンpCH79のcDNA部分
の塩基配列をM13法を利用した市販のキット〔宝酒造
(株)製〕にて決定した。5′末端に存在する発現ベク
ター由来のHindIII認識部位より約150bp下流に BglII
の認識部位が存在し、塩基配列はその下流約1500bpの終
始コドンTGAまでbp585のCがT及びbp1725のAがCであ
った以外は、ペニカら〔Pennica,Dら(1983年)ネイチ
ャー(Nature)301巻,214頁〕が報告した塩基配列と一
致しており、さらに、TGAコドンから約410塩基下流には
発現ベクターに由来するHindIII部位が存在していた。
b.TPA発現ベクターpSVeCPA−1の作成 pSVeCPA−1は、第1図に示した手順により作成し
た。pSVeSalI(特開昭62−14783)を制限酵素 NcoIで
切断後、大腸菌内での複製起点およびアンピシリン耐性
を付与する約4.7 Kb断片を単離し、さらにT4DNA リガ
ーゼを用いて環状化後E.coli DH1に導入して pSVeSalI
−HindIIIを作成した。従って、このベクターはHindIII
認識部位をはさんでSV40の複製起点を含む初期プロモー
ター領域とSV40のポリアデニル化シグナルを含む配列が
それぞれ存在している。次に、pSVeSalI−HindIIIをHin
dIIIにて切断後、pSVePA−1をHindIII及びBglIIで切
断、単離して得たTPA染色体DNAの全第2エクソンと第3
エクソンの一部を含む約1.9 Kbと、pCH79をHindIII及び
BglIIで切断したTPAcDNAを含む約2Kb断片とをT4DNA
リガーゼにて連結後、E.coli DH1に導入してpSVeCPA−
1を作成した。このTPA発現ペクターpSVeCPA−1は、第
2エクソンから第3エクソンのBglII認識部位までが染
色体DNA由来であり、それ以降がcDNAより成り、天然型
のTPAを発現する遺伝子をコードしている。
比較例 DGFS発現ベクターの作成 天然型のTPAの51番目から87番目までのアミノ酸を欠
失したTPA誘導体をDGFSと名づけ、その発現ベクターpSV
eDH−1を第2図に示した手順により作成した。pSVeCPA
−1を BglII及びNarIで消化し約0.33Kbの断片を得、
さらにこれを DraIII及び HaeIIIで消化して得られる
BglII−DraIII約130bp, HaeIII−NarI約60bp断片を単
離した。
DNA合成機(381A DNAシンセサイザー、アプライド
バイオシステムズ)にて、以下の配列を合成した。
それぞれの1本鎖DNAを合成、常法に従ってアニール
し、2本鎖DNAとした後、これとpSVeCPA−1の BglII
−NarI約8.1Kb断片と BglII−DraIII 130bp断片と Ha
eIII−NarI60bp断片とをT4DNAリガーゼで連結後、E.col
i DH1に導入してDGFS発現ベクターpSVeDH−1を作成し
た。
参考例1 DGFIII発現ベクターの作成 天然型のTPAの75番目から84番目までのアミノ酸を欠
失したTPA誘導体をDGFIIIと名づけ、その発現ベクターp
SVePAD3を第3図に示した手順により作成した。pSVeCPA
−1をBglII及びNarIで消化し約0.33Kbの断片を得、さ
らにこれを DraIII及びHaeIIIで消化して得られている
BglII−DraIII約130bp, HaeIII−NarI約60bp断片を単離
した。
DNA合成機(381A DNAシンセサイザー、アプライド
バイオシステムズ)を用いて以下のDNAを合成した。
それぞれの1本鎖DNAを合成後、E1−1とE1−2,E2−1
とE2−2,E5−1とE5−2の組み合わせで常法に従ってア
ニールし、2本鎖DNAとした。これら3種の2本鎖DNAと
pSVeCPA−1の BglII−NarI約8.1Kb断片とBglII−DraI
II 130bp断片とHaeIII−NarI60bp断片とをT4DNAリガー
ゼで連結してDGFIII発現ベクターpSVePAD3を作成した。
実施例2 DGFI発現ベクターの作成 天然型TPAの65番目のアミノ酸から89番目のアミノ酸
までを欠失したTPA誘導体をDGFIと命名しその発現ベク
ターpSVePAD5を第4図に示した手順で作成した。
天然型TPA発現ベクターpSVeCPA−1を BglII及び N
arIで消化し約0.33Kb及び約 8.1Kbの断片をそれぞれ調
製した。約 0.33 Kbの断片を制限酵素 HaeIIIで消化
後、両末端が HaeIIIで切断された約75bpの断片を除去
し、これと上記約 8.1Kbの断片とをT4DNA リガーゼで
環状化後、E.coli DH1に導入して、pSVePAD5を作成し
た。
参考例2 DGFSとDGFIIIのトランジェント発現及びそのザイモグラ
フィー分析 TPA発現ベクターpSVePAD3およびpSVeDH−1をそれぞ
れ使用し、CHO−K1(ATCC,CCL−61)を宿主として、チ
ェンら[Chen,C.and Okayama,H.ら(1987年)モレキュ
ラー アンド セルラー バイオロジー(Molecular an
d Cellular Biology)7巻、2745頁]の方法に準じて形
質転換を行なった。即ち、プラスミド[TPA発現ベクタ
ー:pSV2neo−dhfr=300:1(重量比)]−リン酸カルシ
ウム共沈殿物を予め5%牛胎血清(FCS)を含むMD培地
(MCDB302:ダルベッコ変法MEM=1:1、シグマ)で生育さ
せた細胞(5X105細胞/10ml培地/直径10cm培養皿)に加
え、15時間後に培地を洗浄して更新した。さらに48時間
後、培地を5μg/ml、インシュリン、1mg/ml牛血清アル
ブミン、7mM ε−アミノカプロン酸、50μMフォイパン
(小野薬品工業)を含むMD無血清培地に変え、さらに48
時間培養を続けた。次の培養液中に含まれるTPA誘導体
をドッドらの方法[Doddら(1986年)スロンボシスアン
ドヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)、55
巻、94頁]に従って、フィブリンザイモグラフィーによ
る分析に供した。DGFSあるいはDGFIIIは、CHO細胞の生
産するリコンビナントTPA(特開昭62−14783)よりもア
ミノ酸欠失を反映する分子量の低下が確認できた。(第
5図) 実施例3 マーカーベクターpSV2neo−dhfrの作成 pSV2neo−dhfrは以下の手順で作成した。pSV2dhfr
(アメリカン タイプカルチャー コレクション rDNA
Vectors 37146)を制限酵素PvuIIで切断し、そこにBam
HIリンカーd(pCGGATCCG)[宝酒造(株)製]をT4DNA
リガーゼで連結後、E.coli DH1に導入してpSV2Bdhfr
を作成した。pSV2BdhfrをBamHIで消化して得られる dh
fr遺伝子を含む約2Kbの断片をアガロース電気泳動法に
より調製し、pSV2neo(アメリカン タイプカルチャー
コレクション rDNA Vectors 37149)をBamHIで切断し
たDNAとをT4DNA リガーゼを用いて環状化後、E.coli D
H1に導入し、neoとdhfr遺伝子が同発現方向に挿入され
たpSV2neo−dhfrを作成した。
実施例4 TPA発現ベクターの動物培養細胞への導入とTPAの生産 TPA発現ベクターpSVePAD5、或いはpSVeDH−1をそれ
ぞれ使用し、CHO−K1(ATCC,CCL−61)を宿主として、
チェンらの方法(同上)に準じて形質転換を行なった。
即ち、プラスミド[TPA発現ベクター:pSV2neo−dhfr=3
00:1(重量比)]−リン酸カルシウム共沈殿物を予め5
%牛胎児血清(FCS)を含むMD培地(MCDB302:ダルベッ
コ変法MEM=1:1、シグマ)で生育させた細胞(5x105
胞/10ml培地/直径10cm培養皿)に加え、15時間後に培
地を洗浄して更新した。さらに48時間後、培地を5%FC
S、800μg/mlG418硫酸塩(ギブコ)、7mMε−アミノカ
プロン酸、50μMフォイパン(小野薬品工業)を含むMD
培地に変え、さらに約2週間培養を続けG418耐性株を分
離した。G418耐性株を12穴マルチディッシュ(リンブロ
ー社製)の底面全体に成育させ、上記培地で24時間培養
し、培地中に含まれるDGFIあるいはDGFSの含量を実施例
6にあるような蛋白定量された標品を標準としてその活
性をプラスミノーゲン含有フィブリン平板を用いて測定
した。[Mackie,Mら(1981年)ブリティッシュ ジャー
ナル オブ ヘマトロジー(British Journal of Hemat
ology)、47巻、77頁]。
実施例5 形質転換株のメソトレキセート(Mtx)による選択及び
培養 実施例4で得たpSVePAD5あるいはpSVeDH−1の形質転
換株をそれぞれ直径10cmの培養血に103から105個の細胞
を植え50nMから200nMのMtxを含むMD培地で約1ヵ月培養
を続け、Mtxに対して耐性を示す株を分離した。これら
の耐性株が24時間あたり生産するDGFIあるいはDGFSの量
を実施例4に示したようにフィブリン平板法により測定
した。表−1には実施例4および8で得られたDGFIある
いはDGFSの生産株名及びその力価を示した。Mtxで選択
した細胞からは親株よりも高いTPA生産性を示す株が得
られた。また、これらの細胞はMD無血清培地(MD培地、
7mM ε−アミノカプロン酸、50μMフォイパン 1mg/ml
牛血清アルブミン5μg/mlインシュリン)においてもTP
Aを生産した。
実施例6 TPA誘導体DGFSおよびDGFIの回収、精製 以下にTPA誘導体およびDGFIの回収、精製の工程を示
す。工程途中のTPA抗原の検出には、市販のELISAキット
(IMUBIND TPA ELISA KIT,アメリカンダイアグノステイ
カ社製)を用いた。10PAD5−17−1あるいは10DH1−18
−2を実施例8で示したMD無血清培地にて培養し得たDG
FSあるいはDGFIを含む培養液を、1M Nacl,50μMフォイ
パンを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化したC
PG−10(エレクトロヌクレオニクス社製)カラムにチャ
ージし、平衡化に用いたと同じ緩衝液にて洗浄した。CP
G−10カラムを通過した培養液および洗浄液中にDGFSあ
るいはDGFIは、ほとんど検出されなかった。CPG−10カ
ラムよりDGFSあるいはDGFIを1M Nacl,0.5M KSCN,1Mε−
アミノカプロン酸および50μMフォイパンを含む20nMリ
ン酸緩衝液(pH7.5)にて溶出した。溶出液をそのまま1
M Nacl,0.01%Tween 80および50μMフォイパンを含む2
0mMリン酸緩衝液(pH7.5)にて平衡化したConA−Sephar
ose(ファルマシア社製)カラムにチャージした。平衡
化に用いたと同じ緩衝液にて洗浄後、2M KSCN,0.4M α
−メチルマンノシド,0.01%Tween 80および50μMフォ
イパンを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にて溶出し
た。ELISAを利用してConA Sepharoseの通過培養液、洗
浄および溶出液中に含まれるTPA抗原を検出したとこ
ろ、DGFIあるいはDGFSはほとんどConA Sepharoseに吸着
し、溶出回収されていることが分かった。
溶出液を0.15M,Nacl 0.01%Tween 80および50μMフ
ォイパンを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に対して透
析後、同緩衝液にて平衡化した抗体カラム(PAM−2−S
epharose,アメリカンダイアグノステイカ社製)にチャ
ージした。0.3MKSCN,0.15M NaCl,0.01%Tween 80を含む
20mMリン酸緩衝液(pH7.5)にて洗浄後、3MKSCN,0.15M
NaCl,0.01%Tween 80を含むリン酸緩衝液にて溶出し
た。溶出液中に含まれるDGFIあるいはDGFSをSDS−ポリ
アクリルアミド電気泳動にかけて精製度を分析した。そ
の電気泳動図6に示した。DGFIあるいはDGFSと思われる
単一のバンドが検出された。同溶出液中に含まれる蛋白
量をウシ血清アルブミンを標準としてローリー法にて測
定した。その結果DGFIは10PAD5−17−1の培養液約2Lよ
り2.3mgがDGFSは10DH1−18−2の培養液約2Lより4.1mg
が、回収、精製されていることが分かった。
実施例7 インビトロ血栓溶解能測定 DGFIおよびDGFSのインビトロ血栓溶解能を125I−フィ
ブリンからの放射能の遊離を測定するラーセンら(同
上)の方法に従って測定した。4.55μg/mlヒト リジン
タイププラスミノーゲン、0.1M NaCl,0.001%Tween 80
を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.2)に5mg/mlとなるよう
にヒトフィブリノーゲンを溶解後、ヒトトロンビンを1.
0NIH unit/mlとなるよううに添加し、適当な容器内で37
℃で1時間放置して凝固させた。作成したフィブリンク
ロット当量の酸素液を重層し、37℃で4時間反応させ
た。反応後各容器内の可溶性画分を抜取りr−カウンタ
ーにて試料中に含まれる放射能を測定した。その結果を
第7図に示す。DGFIはDGFSよりも強力なインビトロ血栓
溶解能をもっていることが分かった。
実施例8 DGFS,DGFIの血中半減期測定 精製したDGFIおよびDGFSの300μgをウサギに耳介静
脈よりそれぞれ単回投与し、その血中半減期を測定した
結果、DGFI,DGFSいずれの誘導体も同程度の血中持続性
を示し、その半減期は、第8図に示すように、15分と測
定された。
【図面の簡単な説明】
第1図はベクターpSVeCPA−1の作成法を示す模式図、
第2図はベクターpSVeDH−1の作製法を示す模式図、第
3図はベクターpSVePAD−3の作製法をす模式図、第4
図はベクターpSVePAD5の作製法を示す模式図、第5図は
DGFS及びDGFIIIのフィブリンザイモグラフィー、第6図
はDGFIおよびDGFSのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳
動像、第7図はインビトロ血栓溶解能の測定結果を示す
模式図、第8図は、ウサギに投与したDGFIおよびDGFSの
血中減衰曲線を示す。第1,2,3および4図中、SVe,poly
A,ORI.,Ecogpt,TPAcDNA,Amp.,ATG及びTGAは、それぞれS
V40のDNA複製起点を含む初期プロモーター領域、SV40の
ポリ(A)付加シグナルを含む領域、プラスミドの複製
起点、Ecogpt遺伝子、TPAのcDNA遺伝子、TPAの染色体遺
伝子、アンピシリン耐性遺伝子、TPA遺伝子の翻訳開始
コドン、TPA遺伝子の翻訳終止コドンを示す。第5およ
び6図中CHOrTPAは、CHO細胞で生産したリコンビナント
TPAを示す。 第1,2,3および4図中、円上の黒塗りの部分及び数字
は、TPA染色体遺伝子のエクソンおよびエクソン番号を
表わす。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:91) (56)参考文献 Journal of Biolog ical Chemistry,Vol 263,1988,P.1599−1602 Journal of Biolog ical Chemistry,Vol 263,1988,P.1023−1029

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】天然型ヒト組織プラスミノーゲン活性化因
    子のアミノ酸配列において、65番目から89番目までのア
    ミノ酸を欠失したフィブリン溶解活性を有する組織プラ
    スミノーゲン活性化因子誘導体。
  2. 【請求項2】形質転換された動物培養細胞で産生され、
    グリコシル化された請求項1記載の組織プラスミノーゲ
    ン活性化誘導体。
  3. 【請求項3】動物培養細胞がCHO−K1である請求項2記
    載の組織プラスミノーゲン活性化因子誘導体。
  4. 【請求項4】天然型の組織プラスミノーゲン活性化因子
    と同等なフィブリン溶解活性を有し、かつ血中持続性が
    改善された請求項1ないし3のいずれかに記載の組織プ
    ラスミノーゲン活性化因子誘導体。
  5. 【請求項5】請求項1記載の組織プラスミノーゲン活性
    化因子誘導体をコードするDNA配列。
  6. 【請求項6】DNA配列がcDNAである請求項5記載のDNA配
    列。
  7. 【請求項7】DNA配列が染色体DNAである請求項5記載の
    DNA配列。
  8. 【請求項8】DNA配列がcDNAと染色体DNAのハイブリッド
    DNAである請求項5記載のDNA配列。
  9. 【請求項9】請求項5ないし8のいずれかに記載のDNA
    配列を含む発現ベクターで形質転換された動物培養細
    胞。
  10. 【請求項10】細胞がCHO−K1である請求項9記載の動
    物培養細胞。
  11. 【請求項11】請求項1記載の組織プラスミノーゲン活
    性化因子誘導体をコードするDNA配列を有する発現ベク
    ターで形質転換された動物培養細胞を培養してプラスミ
    ノーゲン活性化因子誘導体を生成せしめ、これを採取す
    ることを特徴とするプラスミノーゲン活性化因子誘導体
    の製造方法。
  12. 【請求項12】動物培養細胞としてCHO−K1を使用する
    請求項11記載の製造方法。
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Non-Patent Citations (2)

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Journal of Biological Chemistry,Vol 263,1988,P.1023−1029
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