JP2870918B2 - 励起光共振型レーザ - Google Patents

励起光共振型レーザ

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は励起光の外部への漏れをきわめて小さくした
励起光共振型レーザに関するものである。
[従来の技術] 従来の励起光源を半導体レーザ(LD)とした固体レー
ザの基本的構成図を第4図に示す。
LD1から発振した励起光は、凸レンズ2等の結合光学
系により収束された発振光共振ミラー5を通じてYAG結
晶等のレーザ媒質3へ入射される。レーザ媒質3へ入射
した励起光は、レーザ媒質3を励起し発振光を生じ、該
発振光は発振光共振ミラー対5、5′で構成される発振
光共振器により共振し、所定の強度に達したところで発
振光共振ミラー5′より出射する。該発振光を短波長化
するためのKH2PO4、KTiOPO4、KNbO3等の非線形光学結晶
4が該発振光の光軸上に配置されており、短波長化しな
い場合は配置されない。
従来、発振光共振ミラー対5、5′は発振光に対して
は高い反射率で励起光に対しては極力低い反射率となる
ような光学膜が形成されていた。
[発明の解決しようとする課題] ここで、例えばレーザ媒質としてYAG結晶を用い、946
nmの光を発振する場合、あるいはさらに発振光共振器内
に非線形光学結晶を挿入し、473nmの青色光を発生させ
る場合、発振光の自己吸収の関係からレーザ媒質の長さ
を1mm以下に抑えることが多い。
しかしこの場合レーザ媒質の長さが短いため励起光の
うち約40%がYAG結晶に吸収され残りはそのまま発振光
共振器の外部へ散逸する。そのため充分に高いレーザ出
力が得られない。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、前述の問題点を解決すべくなされたもので
あり、レーザ媒質を外部より励起する励起光源と、レー
ザ媒質と、レーザ媒質より発振した発振光を共振させる
発振光共振ミラー対と、該励起光源からの励起光をレー
ザ媒質を挟んで多重反射させ励起光共振器外部への励起
光の散逸を防ぐ励起光共振ミラー対とからなることを特
徴とする励起光共振型レーザを提供する。
従来、発振光共振ミラー対はレーザ発振光に対する波
長に対してのみ発振光共振器を構成していたが、本発明
は以下に示すような、励起光の共振を生ずる別個の励起
光共振ミラー対を用いるか、または、励起光に対しても
共振を生ずる反射率を有する発振光共振ミラー対を用い
る、という2種の構成により、レーザ出力を向上させう
る。
第1の方法として、発振光共振ミラー対と別個にもう
1つの励起光共振ミラー対をレーザ媒質を挟んで共振器
外部に付加し、付加した励起光共振ミラー対の反射率を
励起光に対して励起光共振器を構成するように調整す
る。
その基本的構成を第3図に示す。励起光源のLD31から
出た励起光は凸レンズ32等の結合光学系により収束さ
れ、該励起光が入射する第1の励起光共振ミラー36を通
じてレーザ媒質33、非線形光学結晶34を通過した後、第
2の励起光共振ミラー36′によって反射され再び非線形
光学結晶34、レーザ媒質33を通過して励起光共振ミラー
対36、36′間で反射を繰り返す。このとき、励起光共振
ミラー対36、36′はレーザ媒質33を挟んで発振光共振器
外部に、励起光の光軸が発振光の光軸と同一となるよう
設けてもよく、その場合発振光共振ミラー対35、35′は
励起光に対しては反射率を極力小さくする。また、励起
光はレーザ媒質33のみを通過するよう構成してもよい。
通常第2の励起光共振ミラー36′の反射率routを励起
光に対して約100%とし、入力側の第1の励起光共振ミ
ラー36の反射率rinを、レーザ媒質、非線形光学結晶等
の励起光共振器内部の合計の透過率をtとしてrin=t2r
outとなるように選ぶと、LD31からの励起光はほぼ100%
励起光共振器に入り、多重反射を繰り返す。rinは100%
以下の反射率であるにもかかわらず、励起光の光源側へ
の反射(戻り)はほぼ0になる。このとき、励起光は反
射を繰り返しながらほとんどがレーザ媒質に吸収され
る。
第2の方法は、レーザ光発振用の発振光共振ミラー対
を励起光に対する励起光共振器としても兼用にするもの
である。その基本的構成は第4図の従来例と同じである
が、発振光共振ミラー対5、5′の光学膜の励起光に対
する反射率を上述のように調整する。
1つの光学膜で励起光と発振光の2つの波長に対して
おのおの最適の反射率となるよう調整する。すなわち、
発振光に対しては高い反射率(励起光源側はほぼ100%
で出力側は90%以上100%未満)となるようにし、励起
光に対しては上述の共振を生ずる反射率とする。
この場合、発振光共振ミラー対が励起光共振ミラー対
を兼用しているので、第1の方法よりも構成が簡単にな
る。また、レーザ媒質3の励起光光入射側の面に光学膜
を形成して共振器を構成してもよく、その場合発振光共
振ミラー5がなくなるのでさらに簡単な構成になる。
これらの方法はYAG結晶の946nmの発振光だけでなく、
例えばルビー(Ti:Al2O3)、アレキサンドライト(Cr:B
eAl2O4)結晶等を600〜700nmの短波長の半導体レーザで
励起するときにも有効である。従来、この波長帯の励起
光に対しては、これらのレーザ媒質は吸収率が低く、従
来の方法では励起が困難であったものが、本発明により
高出力のレーザ発振が可能になる。
本発明においては、励起光源としてLD以外の各種固体
レーザ、ガスレーザ、液体レーザ、色素レーザ等が使用
できるが、LDがコンパクト化、軽量化の点で好ましい。
レーザ媒質としては上記の固体のものの他に気体、液体
等各種のものが使用できる。また、非線形光学結晶は青
色レーザ等の短波長化されたレーザを得る場合、発振光
の光軸上の出力側へ設けられるが、短波長化しない場合
は設けない。その材料としてはKNbO3、KTiOPO4、KH2P
O4、β−BaB2O4結晶等が用いられる。
[作用] 本発明の励起光共振による励起光共振器外への励起光
の散逸を防ぐという機能について以下に示す。
今、励起光源から出た励起光の強度をP1、励起光共振
器内部を通過し励起光源側の第1の励起光共振ミラーか
ら励起光源へ戻ってくる励起光の強度をPrとし、励起光
源側の第1の励起光共振ミラーの励起光に対する反射率
をrin、レーザ媒質を挟んで反対側の位置にある第2の
励起光共振ミラーの励起光に対する反射率をrout、励起
光共振器内部の励起光が通過するレーザ媒質、非線形光
学結晶等の励起光に対する合計の透過率をt、とする
と、P1とPrの比は式1で表される。
ただし、ψは励起光共振器内部の位相シフト量で、rm
=t2routである。このとき、励起光共振器長または励起
光波長をψ=0、すなわち最も強い共振状態にするよう
選ぶと、P1とPrの比は式2のようになる。
ここで、rin=rm=t2routとするとPr/P1=0とな
り、反射波の強度を0にできる。すなわち、すべてのP1
は励起光共振器内に入り外部へ出てこない。
このことは物理的には、第1の励起光共振ミラーで直
接励起光源側へ反射される励起光P1′と、励起光共振器
内で多重反射している励起光が第1の励起光共振ミラー
から励起光源側へ漏れてくる励起光P2′とが、強度が同
じで互いに逆位相のとき反射波が0となることを意味
し、このときrin=t2rout、ψ=0である。
[実施例] 本発明の第1の実施例を第1図に示す。
レーザ媒質16のNd:YAG結晶の表面に設けられた励起光
入力側の発振光兼励起光共振ミラーの面15と出力側の発
振光兼励起光共振ミラー19(曲率半径はR=5cm)とで
発振光及び励起光用の共振器を構成する。
発振光兼励起光共振ミラーの面15の反射率rinは発振
波長(946nm)に対して99.9%、励起光波長(809nm)に
対して約36%である。Nd:YAG結晶の長さは1mmである。
発振光兼励起光共振ミラー19の面18の反射率routは946n
m及び809nmに対して99.9%である。
励起光源のLD11は、GaAlAs半導体レーザでソニー社製
SLD−303−Vである。結合光学系にはコリメータレンズ
12、シリンドリカルレンズ13、フォーカシングレンズ14
を使用する。レーザ媒質であるNd:YAG結晶と非線形光学
結晶17であるKNbO3の励起光に対する透過率は合計で約6
0%なので、t2routは0.36となりrinは36%とした。この
とき、809nmで200mWの励起光に対して473nmで2mWの青色
出力が得られた。非線形光学結晶17のKNbO3はl=3.7mm
のものを使用した。
本発明の第2の実施例を第2図に示す。
励起光源のLD21は、GaAlAs半導体レーザで波長809nm
のソニー社製SLD−303−Vであり、結合光学系にはコリ
メータレンズ22、シリンドリカルレンズ23、フォーカシ
ングレンズ24を使用した。レーザ媒質は長さ1mmのNd:YA
G結晶27で、非線形光学結晶28は長さ3.7mmのKNbO3であ
る。
発振光共振器用の発振光共振ミラー対26、26′の凹型
内面の曲率半径は10cmで、YAGレーザの発振光ω(波長9
46nm)と第2高調波2ω(波長473nm)に対する各々の
反射率は、r26(ω)=99.9%、r26′(ω)=99.9%、
r26(2ω)=99.9%、r26′(2ω)=97%である。
また、励起光共振ミラー対25、25′の凹型内面の曲率
半径は20cmで、励起光(809nm)に対する反射率はNd:YA
G結晶27の励起光透過率が約61%なので、r25=0.61
2r25′=0.612×0.999=0.37となり37%とした。このと
き、波長809nmで200mWの励起光に対して、波長473nmで1
mWの青色レーザ出力が得られた。
[発明の効果] 本発明は、励起光源からの励起光が励起光共振器の外
部へほとんど散逸せず、同じ励起光源で高出力のレーザ
発振が可能、すなわち、高効率のレーザ発振が可能にな
るという優れた効果を有する。例えばNd:YAGレーザの場
合高効率の946nmレーザの発振及び473nmの第2高調波発
振が可能となり、また従来InGaAlP系半導体レーザの波
長600〜700nmの励起光がほとんど透過して励起が困難で
あったTi:Al2O3レーザの励起が、前記の小型化された半
導体レーザで可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第3図は本発明の実施例を示し、励起光共振型
レーザの基本的構成図であり、第4図は従来例の基本的
構成図である。 1、11、21、31:LD、3、16、27、33:レーザ媒質、4、
17、28、34:非線形光学結晶、5、5′、26、26′、3
5、35′:発振光共振ミラー、15、18:発振光兼励起光共
振ミラーの面、25、25′、36、36′:励起光共振ミラ
ー。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レーザ媒質を外部より励起する励起光源
    と、レーザ媒質と、レーザ媒質より発振した発振光を共
    振させる発振光共振ミラー対と、該励起光源からの励起
    光をレーザ媒質を挟んで多重反射させ励起光共振器外部
    への励起光の散逸を防ぐ励起光共振ミラー対とからなる
    ことを特徴とする励起光共振型レーザ。
  2. 【請求項2】該発振光共振ミラー対が該励起光共振ミラ
    ー対の機能を兼用する請求項1記載の励起光共振型レー
    ザ。
  3. 【請求項3】非線形光学結晶が発振光共振ミラー対の間
    に設けられる請求項1又は2記載の励起光共振型レー
    ザ。
  4. 【請求項4】該励起光共振ミラー対は、発振光共振器外
    部で励起光の光軸が発振光の光軸と同一の位置となるよ
    うに設けられる請求項1又は3記載の励起光共振型レー
    ザ。
  5. 【請求項5】該励起光共振ミラー対は、レーザ媒質を挟
    んで励起光源側の第1のミラーとそれに対向する位置に
    ある第2のミラーとからなり、第1のミラーの反射率を
    rin、第2のミラーの反射率をrout、該励起光共振器内
    部の励起光に対する透過率をtとするとrin=t2rout
    ある請求項1、2、3又は4記載の励起光共振型レー
    ザ。
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