JP2870901B2 - 選択的加水分解によるジデオキシヌクレオシド誘導体の製造方法 - Google Patents

選択的加水分解によるジデオキシヌクレオシド誘導体の製造方法

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JP2870901B2 JP33195289A JP33195289A JP2870901B2 JP 2870901 B2 JP2870901 B2 JP 2870901B2 JP 33195289 A JP33195289 A JP 33195289A JP 33195289 A JP33195289 A JP 33195289A JP 2870901 B2 JP2870901 B2 JP 2870901B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、選択的加水分解による下記構造式(V)で
示される2′,3′−ジデオキシヌクレオシド誘導体の製
造方法に関する。
(式中、Bは核酸塩基を、R3は炭素数が1−12個の加水
分解可能なアシル基または水素を表す。) このジデオキシヌクレオシド誘導体は公知化合物では
あるが、抗ウィルス活性があることから、医薬分野への
適用が期待されている(例えば、H.Mitsuya and S.Broa
der,Proc.Natl.Acad.Soi.USA,Vol.83,1911,1986年参
照)。
〔従来の技術〕
シクロデキストリンを用いた選択性の高い合成反応は
意欲的に研究がなされており、エステル加水分解、アミ
ド加水分解、脱炭酸などの結合開裂反応を触媒する。シ
クロデキストリンと反応基質とが包接化合物を形成し、
化学反応が分子錯体内反応として進行することから、シ
クロデキストリンは酵素モデルとして広範に用いられて
いる。ヌクレオチドとシクロデキストリンとのインタラ
クションについても研究されており(HoffannらBiochem
istry 1970,9,3542)、小宮山らは、ヌクレオシドとシ
クロデキストリンとの包接について研究を進め、α−シ
クロデキストリン触媒による、2′,3′−サイクリック
モノフォスフェートの位置選択的2′位切断反応を見出
している(J.Am.Chem.Soc.,111,3046,1989)。また、最
近になって、植村らはチミジン誘導体の酵素による位置
選択的アセチル化、及び脱アセチル化反応を発見した。
以上のように、ヌクレオシド誘導体の選択的加水分解法
は、合成化学の分野にとどまらず、生化学分野・遺伝子
工学分野も含めて近年重要な研究ターゲットとなってい
る。
上記式(V)で示される2′,3′−ジデオキシヌクレ
オシド誘導体は、例えばエイズ治療薬などに利用できる
など、抗ウィルス作用を有する化合物として注目されて
いる。(特開昭61−280500号公報及びJ.Med.Chem.,30,4
40(1987)参照) 2′,3′−ジデオキシヌクレオシド誘導体(V)の合
成法としてはラジカル還元(J.Med.Chem.,30,862,198
7)や光還元(J.Am.Che.Soc,108,3115,1986)を使う方
法、ジオールのオレフィン化反応を適用する方法(Core
y−Winter反応J.Org.Chem.,54,2217,1989,Eastwood反応
J.Org.Chem.,53,5179,1988)、ジデオキシ糖を合成しグ
リコシル化する方法(グルタルミン酸よりTetrahedron
Lett.,29,1239,1988,DマンニトールよりNucleosides,Nu
cleotides,903,1989)等が知られている。また、もう一
つ重要なルートとしてアシルオキシ基とハロゲン原子を
2′位、3′位(または3′位、2′位)にもつヌクレ
オシド誘導体を中間体とするルートが知られている。本
化合物は、Moffattらの方法(J.Am.Chem.Soc.,95,4025,
1973,US Patent3658787或はJ.Org.Chem.,39,30,198
3)、Robinsらの方法(J.Am.Chem.Soc.,98,8213,197
6)、Engelsの方法(Tetrahedron Lett.21,4339,198
0)、Reeseらの方法(Synthesis 304,1983)、及び出願
人の先願に係る特開平1−224390号公報に開示の方法等
により合成される。このヌクレオシド誘導体より2′,
3′−ジデオキシヌクレオシド誘導体を合成する方法と
してはパラジウム触媒による直接還元や、またオレフィ
ン体経由の方法(MoffattらJ.Org.Che.,39,30,1974,US
Patent3817982,RobinsやTetrahedron,Lett.,367,1984)
等が知られている。
(発明が解決しようとする課題) 以上のように2′,3′−ジヌクレオシド誘導体(V)
は種々の合成法が開発されてはいるが、 (a) 高価な反応試剤を用いる。
(b) 数多くの生成物が生成する。
(c) 工程数が長い。
(d) スケールアップ時に、反応や処理の操作性に問
題がある。
等の問題からより優れた合成法の開発が課題となってい
た。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、2′,3′−ヌクレオシド誘導体(V)
を合成するうえで、下記構造式 (式中、Bは核酸塩基を、R1とR2は炭素数1−12個の加
水分解可能なアシル基を、Xは水素原子、ハロゲン原子
または炭素数1−12個のアルキル基もしくはアシル基
を、それぞれ表す。) で示されるヌクレオシド誘導体(I),(II)に着目
し、(I),(II)のアシル基の選択的加水分解反応を
鋭意検討した結果、ヌクレオシド誘導体(I),(II)
にシクロデキストリン存在下、適当な無機塩を加えるこ
とにより選択的に加水分解が進行し、下記構造式 で示されるヌクレオシド誘導体(III),(IV)が得ら
れること、およびこの誘導体(III),(IV)の水酸基
を脱離能の高い置換基に変えた後、更に水素添加反応に
付し、更に加水分解に付することにより、目的とする
2′,3′−ジデオキシヌクレオシド誘導体(V)が得ら
れることを見出し、この発見に基づき本発明を完成する
にいたった。
本発明におけるシクロデキストリンを用いたヌクレオ
シド類のアシル基の選択的加水分解反応については、核
酸化学上これまでに例がなく、核酸化学分野、あるいは
合成化学分野において新規で重要な発見である。
本発明において、Bで表わされる核酸塩基は、糖残基
に9位で接合しているプリン塩基、1位で結合している
ピリミジン塩基、1位で結合しているイミダゾール塩基
または1位で結合しているトリアゾール塩基を表わす。
R1〜R3のアシル基の例としてはアセチル基、プロピオニ
ル基、ベンゾイル基など、ハロゲン原子はフッ素、塩
素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。Bのプリン
塩基としてはアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キ
サンチン、6−クロロプリン、6−メルカプトプリン、
6−メチルチオプリン、2,6−ジクロロプリン、2−ク
ロロプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ6−ク
ロロプリン、2−アミノプリン等が例示でき、ピリミジ
ン塩基としてはウラシル、シトシン、チミン、5−フル
オロウラシル、5−クロロウラシル、5−ブロモウラシ
ル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、オロチ
ア酸等が例示できる。イミダゾール塩基としては5−ア
ミノ−4−イミダゾール−3−カルボキサミド等が例示
できる。必要な場合、塩基部分のアミノ基等は保護され
ていてもよい。
前記ヌクレオシド誘導体(I)(II)の中で3′−デ
オキシ−3′−ブロモ−2′−5′−0−ジアセチルア
デノシン(VI)は例えば前記特開平1−224390号公報に
記載の方法により合成される。化合物(VI)をβ−シク
ロデキストリンを溶解した水溶液中、適当な無機塩を加
えることにより、高選択的に2′位の加水分解が進行
し、5′−0−アセチル−3′−デオキシ−3′−ブロ
モアデノシン(VII)が得られた。
シクロデキストリンについてはα−、β−、γ−体の
少なくとも一種が用いられるが、特にβ−シクロデキス
トリンが好ましい。シクロデキストリンを溶解する水溶
液は、有機溶媒を含有していても良いが、水単独系が更
に好ましい。また無機塩としては、炭酸水素塩、炭酸
塩、リン酸塩、等を用いることができるが、特に炭酸水
素ナトリウムが好ましい。使用する水の量は、原料に対
して1−100g/、シクロデキストリンの量は原料に対
して0.01−10当量、塩基の原料に対して0.1−10当量の
範囲で用いられる。
(表1)に無機塩の種類を変えた際の5′位に対する
2′位の加水分解速度比(K)及び各化合物の生成比を
示す。
表より明らかなように炭酸水素ナトリウム、あるいは
リン酸水素二ナトリウムを用いたケースが最も加水分解
選択性の良い結果が得られる。本加水分解選択性につい
ては、同一化合物(VI)をシクロデキストリンのない系
で塩を加えても、室温では反応は全く進行せず、加熱条
件下でも非常に加水分解は遅く、分解が優先すること、
また塩酸で加水分解する際には5′位加水分解が優先
し、その速度比は約6であり、水酸化ナトリウムで加水
分解すると2′位選択性が高く、速度比はやはり約6で
あることから、シクロデキストリンの存在によって明ら
かに2′位の加水分解が選択的に触媒されていることは
明らかである。また、1H−NMRによって、シクロデキス
トリンの添加によって、アデニンプロトンが高磁場シフ
トすることからアデニンとシクロデキストリンが包接状
態となっていることが推測される。
更に、(VII)の2′位を種々の置換基で保護する事
により、以下に例示した様に、パラジウム還元における
デオキシヌクレオシドに対するジデオキシヌクレオシド
の生成割合を著しく向上せしめることができる。
run R4 R5 DDA/DA 1 Ac Ac 5 2 〃 n−BuCO 11 3 〃 PhCO 16 4 〃 Ms(CH3SO2) 40 以上のようなヌクレオシド誘導体(I)(II)を用い
た、2′,3′−ジデオキシヌクレオシド誘導体(V)の
簡便な合成法を見いだすにいたり、本発明であるシクロ
デキストリンによる選択的加水分解反応の有用性が非常
に高いものであることが明らかとなった。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1(工程1)又は実施例2(工程1) 水1にβ−シクロデキストリン50gを加え、加熱し
完全に溶解させる。これを室温まで冷却した後、3′−
デオキシ−3′−ブロモ−2′,5′−0−ジアセチルア
デノシン10gを加え、さらに炭酸水素ナトリウム2.5gを
1時間かけて加えた。引き続き2時間撹拌を続けた後、
酢酸エチル500mlで3回抽出し溶媒を留去すると、5′
−0−アセチル−3′−デオキシ−3′−ブロモアデノ
シン7g(収率78%)が得られた。1 H−NMRデータ(300MHz) 2.06(3H,s)4.37(1H,brs) 4.39(1H,brs)4.57−4.64(2H,m)5.01(1H,m) 5.89(1H,d,J=4.03Hz)6.51(1H,d,J=5.13Hz) 7.33(2H,brs)8.17(1H,s)8.30(1H,s) M.S.データ MH+=373 実施例1(工程2) 5′−0−アセチル−3′−デオキシ−3′−ブロモ
アデノシン1g(2.7mmol)をピリジン10mlに加え、さら
にメタンスルホニルクロライド340mg(1.1eq)を加え
た。室温で30分撹拌し、ピリジンを減圧留去した。残渣
を30mlの水にあけ、クロロホルム30mlで2回抽出した。
有機層を水で洗った後、硫酸マグネシウムにより乾燥さ
せ、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィーによ
り精製し、2′−0−メシル−5′−0−アセチル−
3′−デオキシ−3′−ブロモアデノシン1.09gを得た
(収率90%)。1 H−NMRデータ 2.07(3H,s)3.38(3H,s)4.37−4.41(2H,m)4.61−4.
66(1H,m)5.05−5.10(1H,m)5.99(1H,d,J=5.5Hz)
6.18(1H,d,J=4.5Hz)7.43(2H,brs)8.19(1H,s)8.3
7(1H,s) M.S.データ MH+=451 実施例2(工程2) 5′−0−アセチル−3′−デオキシ−3′−ブロモ
アデノシン1g(2.7mmol)をピリジン10mlに加え、さら
にベンゾイルクロライド418mg(1.1eq)を加えた。室温
で2時間撹拌し、ピリジンを減圧留去した。残渣を30ml
の水にあけ、クロロホルム30mlで2回抽出した。有機層
を水で洗った後、硫酸マグネシウムにより乾燥させ、溶
媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製
し、2′−0−ベンゾイル−5′−0−アセチル−3′
−デオキシ−3′−ブロモアデノシン1.18gを得た(収
率92%)。1 H−NMRデータ 2.12(3H,s)4.50(2H,m)4.62(2H,m)6.01(1H,s)6.
45(1H,s)7.51(3H,m)8.07(2H,m)8.31(1H,s)8.40
(1H,s) M.S.データ MH+=477 実施例1(工程3) 2′−0−メシル−5′−0−アセチル−3′−デオ
キシ−3′−ブロモアデノシン500mg(1.1mmol)をアセ
トニトリル10mlに溶かし、炭酸ナトリウム水(Na2CO314
1mg(1.3mmol)を水2mlに溶解)と10%Pd/C(dryで59mg
(5mol%)を加え、水素雰囲気下、2時間室温で撹拌し
た。HPLCで反応の完結を確認した後反応液をろ過し、残
渣は水10mlで洗った。ろ液と洗液を合わせ有機溶剤を減
圧で留去した。25%NaOHを加えpH13とし、室温で30分撹
拌し、得られたケン化液を合成吸着樹脂SP−207を用い
て精製し、DDAを183.5mg得た(収率71%)。ケン化液中
のDDAと3DA及び2DAの生成モル比は62(DDA/3DA+2DA=6
2)であった。
DDA1 H−NMRデータ 1.99−2.09(1H,m)2.19−2.27(1H,m)2.47−2.64(2
H,m)3.65(1H,dd,J=12.45,5.13Hz)3.82(1H.dd,J=1
2.45,3.10Hz)4.35(1H,m)6.30(1H,m)8.18(1H,s)
8.31(1H,s) M.S.データ MH+=236 実施例2(工程3) 2′−0−ベンゾイル−5′−0−アセチル−3′−
デオキシ−3′−ブロモアデノシン1.0g(2.1mmol)を
アセトニトリル20mlに溶かし、炭酸ナトリウム水(Na2C
O3267mg(2.5mmol)を水4mlに溶解)と10%Pd/C(dryで
111mg(5mol%)を加え、水素雰囲気下、2時間室温で
撹拌した。HPLCで反応の完結を確認した後反応液をろ過
し、残渣は水20mlで洗った。ろ液と洗液を合わせ有機溶
剤を減圧で留去した。25%NaOHを加えpH13とし、室温で
30分撹拌し、得られたケン化液を合成吸着樹脂SP−207
を用いて精製し、DDAを345mg得た(収率70%)。ケン化
液中のDDAと3DA及び2DAの生成モル比は16(DDA/3DA+2D
A=16)であった。
〔発明の効果〕
以上から明らかな如く、本発明によれば、ヌクレオシ
ド誘導体の製造に関し、収率および純度が一段と向上
し、工業化が非常に有利となった。これにより、本発明
は薬理活性を示すジデオキシヌクレオシド等の各種物質
の製造が容易となり、医薬産業上の貢献が大いに期待さ
れるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07H 19/06 C07H 19/06 19/16 19/16 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 405/04 C07D 473/04 C07D 473/18 C07D 473/30 C07D 473/34 C07H 19/06 C07H 19/16

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記構造を有するヌクレオシド類化合物
    (I)もしくは(II)を溶液中でシクロデキストリン及
    び無機塩存在下に加水分解してヌクレオシド類化合物
    (III)もしくは(IV)に変え、この化合物(III)もし
    くは(IV)の水酸基を脱離能の高い置換基に変えた後、
    更に水素添加反応に付し、更に加水分解に付することを
    特徴とするジデオキシヌクレオシド誘導体(V)の製造
    方法 ただし、式中、 B:核酸塩基、 R1,R2:炭素数が1−12個の加水分解可能なアシル基 R3:炭素数1−12の加水分解可能なアシル基もしくは水
    素 X:水素原子、ハロゲン原子、炭素数1−12個のアルキル
    基、炭素数1−12個のアシル基 を表す。
  2. 【請求項2】シクロデキストリンとしてβ−シクロデキ
    ストリンを用いる請求項(1)に記載の方法
  3. 【請求項3】無機塩として炭酸水素ナトリウムを用いる
    請求項(1)に記載の方法
  4. 【請求項4】核酸塩基が糖残基に9位で結合しているア
    デニン、ヒポキサンチン、グアニン、キサンチンのいず
    れか一種である請求項(1)記載の方法
  5. 【請求項5】核酸塩基が糖残基に1位で結合しているウ
    ラシル、シトシン、チミンのいずれか一種である請求項
    (1)に記載の方法
  6. 【請求項6】R1,R2がともにアセチル基である請求項
    (1)に記載の方法
  7. 【請求項7】脱離能の高い置換基として炭素数1−12の
    アシル基、スルホニル基、又はアリールスルホニル基を
    用いる請求項(1)に記載の方法
  8. 【請求項8】スルホニル基としてメタンスルホニル基、
    トリフルオロメタンスルホニル基、パラトルエンスルホ
    ニル基のいずれか一種を用いる請求項(7)に記載の方
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