JP2866911B2 - 磁気ヘッド - Google Patents

磁気ヘッド

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は,ヘッドのコア材料として,高飽和磁束密度
と高周波透磁率を持つ軟磁性層を用いた,高密度記録再
生用磁気ヘッドに関する。
[発明の背景] 例えばオーディオテープレコーダやVTR(ビデオテー
プレコーダ)等の磁気記録再生装置においては,記録信
号の高密度化や高品質化等が進められており,この高記
録密度化に対応して,磁気記録媒体として磁性粉にFe,C
o,Ni等の金属あるいは合金からなる粉末を用いた,いわ
ゆるメタルテープや,強磁性金属材料を真空薄膜形成技
術によりベースフィルム上に直接被着した,いわゆる蒸
着テープ等が開発され,各分野で実用化されている。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] ところで,このような所定の保磁力を有する磁気記録
媒体の特性を発揮せしめるためには,磁気ヘッドのコア
材料の特性として,高い飽和磁束密度を有するととも
に,同一の磁気ヘッドで再生を行なおうとする場合にお
いては,高透磁率を併せて有することが要求される。
従来は,センダスト合金(Fe−Si−Al,Bs10KG)や,
Co系アモルファス合金などが用いられていたが,センダ
スト合金は,膜の内部応力が大きく,また結晶粒が成長
し易く厚膜化が難しい。また,飽和磁束密度Bsが10KG程
度で,今以上の高密度記録には飽和磁束密度Bsが不充分
である。また,Co系アモルファス合金は特性も良く高飽
和磁束密度Bsのものも作製できるが,450℃程度で結晶化
してしまうため,ヘッド形成する際に高温でガラス接合
できず,充分な接合強度が得られないという難点があっ
た。
その他の軟磁性材料としては窒化鉄があり,一般に,
窒素含有雰囲気中で鉄をターゲットとしてイオンビーム
蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成され
る。しかしながら,この軟磁性薄膜は,ガラスボンディ
ング等の際の加熱によって保磁力が大幅に上昇してしま
い特性の安定性が不充分であるという問題があった。
特開昭63−299219号公報には,このような問題点を改
良せんとした次の軟磁性薄膜が記載されている。
「FexNyAz(ただし,x,y,zは各々組成比を原子%とし
て表し,AはSi,Al,Ta,B,Mg,Ca,Sr,Ba,Cr,Mn,Zr,Nb,Ti,M
o,V,W,Hf,Ga,Ge,希土類元素の少なくとも1種を表
す。)なる組成式で示され,その組成範囲が 0.5≦y≦5.0 0.5≦z≦7.5 x+y+z=100 であることを特徴とする軟磁性薄膜。」 しかし,特開昭63−299219号公報に記載の軟磁性薄膜
もまた加熱によって保磁力が上昇するのを避けられない
ので,例えばガラスボンディング工程等の加熱工程を要
する磁気ヘッドの製造に用いることは好ましくない。
さらに一軸異方性を有していないため高周波における
透磁率を高くすることができないという欠点がある。
また,製膜条件にもよるが,一般的に結晶質材料は,
膜を付着する過程でセルフシャドウイング効果によって
柱状晶になり易く,粒界部にボイドが形成されるために
磁気的に不連続になり軟磁気特性が劣化してしまう傾向
がある。このセルフシャドウイング効果は,磁気ヘッド
を作製する際の様に下地に段差がある場合や厚膜化する
場合に特に顕著となり,充分な特性が得られないという
難点があった。
前記公報に記載の軟磁性薄膜には以上のような問題点
があるので,磁気ヘッドコア材料として好ましくなかっ
た。
本発明は,上記従来技術の問題点を改良した磁気ヘッ
ドの提供を目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明によれば次の磁気ヘッドにより上記目的を達成
することができる。
先端対向面及び該対向面から後退して形成される凹
所を有する磁気ヘッドコアの少なくとも該対向面に露出
する軟磁性層を備え,該コアの対向面間にギャップを構
成してなり,前記軟磁性層は,FeaBbNc(但し,a,b,cは各
々原子%を示し,BはZr,Hf,Ti,Nb,Ta,V,Mo,Wの少なくと
も1種以上を表わす。)なる組成式で示され,その組成
は前記三者の三成分組成座標系(Fe,B,N)において W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) の4点を結ぶ線分で囲まれた範囲であり、350〜550℃の
熱処理により得られ、結晶粒径130オングストローム以
下の微細結晶質から成り、単層構造であることを特徴と
する複合磁気ヘッドである。
基板上に下部軟磁性層と絶縁層とコイル導体層と上
部軟磁性層とを順次有し,前記下部軟磁性層と上部軟磁
性層間にヘッドの記録媒体指向面に達するギャップ層を
備えて成り,前記軟磁性層は,FeaBbNc(但し,a,b,cは各
々原子%を示し,BはZr,Hf,Ti,Nb,Ta,V,Mo,Wの少なくと
も1種以上を表わす。)なる組成式で示され,その組成
は前記三者の三成分組成座標系(Fe,B,N)において W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) の4点を結ぶ線分で囲まれた範囲であり,350〜550℃の
熱処理により得られ、結晶粒径130オングストローム以
下の微細結晶質から成り、単層構造であることを特徴と
する薄膜磁気ヘッドである。この組成範囲を点W、X、
Y及びZにより図1に示す。
好ましくは,前記組成範囲は 69≦a≦93 2 ≦b≦15 5.5<c≦22 の範囲である。
さらに好ましくは,結晶粒径が300Å以下であり,軟
磁性層が一軸異方性を有する。
[好適な実施態様及び作用] 本発明の磁気ヘッドの軟磁性層は,Fe及びNと,特定
の添加元素B,即ち,Zr,Hf,Ti,Nb,Ta,V,Mo,Wの少なくとも
1種以上の元素とから成り,これらFeとNと特定の添加
元素B(2種以上も含む)の三者は,前記特定の組成範
囲内にある。
最も好ましい範囲は,保磁力が1.5Oe以下(さらには1
Oe以下)を示す組成範囲である。
なお,第1図において,点E,F,G,H,I,Jにより囲まれ
た範囲内(0<b≦20、0<c≦22の範囲(但し、b≦
7.5かつc≦5の範囲を除く)、好ましくは、さらにb
≧0.5かつc≧0.5の要件を具備する範囲)、特に点Q、
K、L、U及びMにより囲まれた範囲内(69≦a≦93、
2≦b≦15、5.5<c≦22の範囲)、あるいは点P、
Q、R、S、T、U及びVにより囲まれた範囲内であっ
て本願発明の磁気ヘッドにおける軟磁性層の組成の範囲
外においても,ある程度の軟磁性を示すものも存在す
る。なお、点P、Q、R、S、T、U及びVの前記三者
の三成分組成座標系(Fe,B,N)における座標は、次のと
おりである。
P(91,2,7) Q(92.5,2,5.5) R(87,7.5,5.5) S(73,12,15) T(69,12,15) U(69,9,22) V(76,5,19) 前記添加元素BがZrである場合,軟磁性層の好ましい
組成範囲は, Fed(Zre N1-e100-d 77≦d≦88 0.3≦e≦0.38 で示される範囲である。この組成範囲を点W,X,Y,Zによ
り第1図に示す。これらの点W,X,Y,Zの座標は,ほぼ次
のとおりである。
W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) 即ち,この範囲では,Feを77〜88原子%含み,かつ,
軟磁性層中のZrの含有率b(原子%)とNの含有率c
(原子%)の比c/bがおよそ1.63〜2.33となっている。
この組成範囲の軟磁性層は,良好な軟磁性(例えば,保
磁力Hc<5Oe)を有する。
前記添加元素は,一種又は二種以上にすることができ
る。例えばZrのみ添加することができるが,その他の添
加元素でZrの一部(例えば添加されるZrのうちの30原子
%)を置き換えることができる。
また,FeはCo,Ni又はRuの一種以上で置き換えることが
できる。例えば軟磁性層を構成するFeのうちの30原子%
程度まで置き換えることができる。
本発明の磁気ヘッドの軟磁性層は,例えばRFスパッタ
法等の気相析着法により前記特定組成の非晶質層を得
て,この非晶質層を例えば350〜550℃で熱処理し前記非
晶質層の一部ないし全部を結晶化させて形成することが
できる。好ましくは,磁界中で熱処理して一軸磁気異方
性を誘導し前記非晶質層の一部ないし全部を結晶化させ
て形成する。
本発明の薄膜磁気ヘッドの軟磁性層を前記の方法によ
り形成する場合,形成される基板の種類により形成後の
軟磁性層の諸特性に差が生じる場合があるので,適宜基
板を選択して製造することが好ましい。
[実施例] 以下,まず本発明の磁気ヘッドの軟磁性層として用い
られる軟磁性薄膜の製造例及び特性について詳述する。
以下の軟磁性膜又は軟磁性層について,その組成が前記
三者の三成分組成座標系(Fe,B,N)において W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) の4点を結ぶ線分で囲まれた範囲外のものは本発明の磁
気ヘッドにおける軟磁性層に含まれない参考例又は比較
例である。
(実施例1) Fe100-yZry(y=5.0,10.0,15.0(at%))の組成の
合金ターゲットを作製し,それぞれ2.5〜12.5モル%の
窒素を含む,窒素含有アルゴンガス雰囲気中で,ガス圧
力0.6Pa,投入電力200Wの条件で高周波スパッタリングを
行ない種々の組成の非晶質合金膜を得た。これらの各薄
膜を磁界中で熱処理し,軟磁性薄膜を得て,それらの飽
和磁束密度Bs,保磁力Hcを測定した。BsおよびHcの測定
は交流BHトレーサー(印加磁界50Hz,25Oe,ただしHc>25
の場合は,90Oe)による(以下同様)。基板には結晶化
ガラス基板(PEG3130C HOYA型)及び単結晶サファイア
基板を用いた。また膜厚はいずれも0.6μm程度とし
た。これらの結果を第1−A表に示す。なお,Hcは容易
軸方向の値で示す。また,一部の軟磁性薄膜について
は,5MHzにおける透磁率μ及び磁歪について測定した。
磁歪は,膜に応力を加えた時のBH特性の変化から磁歪の
正負判定を行なった。この結果も第1−A表に示す。
第1−A表中のNo.2、4、12、14、22及び24は参考例
である。
一方,第1−B表には,スパッタ時の雰囲気中に窒素
を含有しない以外は前記実施例1の軟磁性薄膜の製造方
法と同様にして結晶化ガラス基板上に得られた3種の熱
処理薄膜(比較例1のNo.1,2,3)の組成,飽和磁束密度
Bs及び保磁力Hcの測定結果を示す。
また,前記実施例1の軟磁性薄膜の製造方法により製
造した軟磁性薄膜の組成と保磁力Hcの関係及び磁束の正
負判定(結晶化ガラス基板を用い550℃で熱処理した場
合)を第2図に示す。さらに,Fe−Zr合金ターゲット中
のFe含有量及びスパッタガス中のN2含有量の軟磁性薄膜
製造条件と,保磁力Hcと,飽和磁歪λとの関係(結晶
化ガラス基板を用い550℃で熱処理した場合)を第3図
に示す。
X線回折と電気抵抗率 前記実施例1中のFe80.9Zr6.512.6の組成について
未熱処理(as depo)の薄膜と,250,350,450又は550℃で
熱処理した薄膜についてのX線回折の結果を第4図に示
し電気抵抗率の測定結果を第2表に示す。第4図によれ
ば,550℃熱処理の薄膜の結晶粒径は半値幅から約130Å
であることがわかった。なお,as depoの薄膜及び250℃
熱処理の薄膜はアモルファスであり,350℃及び450℃熱
処理の薄膜は微結晶から成り,550℃熱処理の薄膜はさら
に成長した微結晶から成ることがわかった。これらの微
結晶は薄膜の軟磁性に寄与すると考えられ,このよう
な、微結晶の生成はN及びZrの存在によるものと考えら
れる。第2表によれば熱処理温度を高めることによっ
て,この薄膜の抵抗率は低下していくが,550℃まで温度
を上げて熱処理した場合でも,その値は,純鉄,パーマ
ロイなどよりはるかに高く,Fe−Si合金,センダストと
ほぼ同等の値となっている。従って,磁気ヘッドのコア
として用いた場合には,渦電流損失が小さく有利であ
る。
ビッカース硬度 さらにFe80.9Zr6.512.6の組成の薄膜について,ビ
ッカース硬度を測定した結果Hv=1000(kg/mm2,加重10
g)の値が得られた。この値は従来から磁気ヘッド材料
として用いられているセンダストやCo系アモルファス合
金(Hv=500〜650)に比べてはるかに高く,耐摩耗性も
従来より充分高めることができる。
BH曲線 前記実施例1と同様に製造されたいくつかの薄膜の交
流BHトレーサーによるBH曲線を第5図に示した。
第5図に示したサンプルは,製膜後1kOeの磁界中,10T
orrN2雰囲気中において550℃,60分間熱処理してある。
この図から明らかな様に,磁界中熱処理によって薄膜に
は明確な面内一軸異方性が誘導されている。従って,こ
の薄膜の困難軸方向を磁化方向とすることによって,1MH
zより高い周波数での透磁率を充分高くすることがで
き,この点からも磁気ヘッド材料として有利である。ま
た,この異方性磁界Hkは,組成によって3〜18Oeと変化
するため,目標とする透磁率の大きさ,使用する周波数
範囲によって材料を選ぶことができる。例えば10MHz以
下において高い透磁率を得たい場合には,Hk=3〜5Oeと
なる組成を用い,それ以上高い周波数でも透磁率を劣化
させないためには,Hkがもっと高い組成を用いることも
できる。
MH曲線 第6図には,前記実施例1中のFe80.9Zr6.512.6
組成の薄膜についてVSMを用いて測定したMH曲線の結果
について示した。図中(a)は製膜直後(as depo)の
薄膜について,(b)は550℃の磁界中熱処理後の薄膜
についてのMH曲線を示している。(反磁界補正は行なっ
ていない。ただし,サンプル形状は,φ5mm×t0.63μm
であった。)VSMを用いて測定した保磁力は,交流BHト
レーサーで求めた値より一桁以上小さく,(b)より約
50mOeと求まった。この値はセンダストやCo系アモルフ
ァス合金とほぼ同等であり,軟磁気特性が優れているこ
とが解る。また,(b)より4πMs=14.5KGと求まり,
この値はセンダストやCo系アモルファス合金より充分高
く,高保持力媒体に記録するための磁気ヘッド材料とし
て有利である。
熱処理前の薄膜の4πMsは13.0KGであり熱処理後より
やや低い。また,垂直異方性(Hk400 Oe)をもってお
り,Hcも高く,軟磁気特性は悪い。
耐食性 前記実施例1中のFe80.9Zr6.512.6の組成の薄膜に
ついて耐食性の評価を,水道水に約一週間浸漬した後の
表面状態の変化から行なった。その結果,本サンプルの
表面状態は鏡面のまま全く変化しなかった。比較のため
に,Co88.4Nb8.0Zr3.6アモルファス合金膜及びFe−Si合
金(電磁鋼板)についても同様の実験を行なった。その
結果Co−Nb−Zr合金も全く変化しなかったが,Fe−Si合
金は全面に錆が発生した。以上より,本発明の磁気ヘッ
ドの軟磁性層として用いられる軟磁性薄膜は,耐食性に
も優れていることが解った。
次に,本発明の磁気ヘッドの軟磁性層の組成範囲外の
組成の軟磁性薄膜について述べる。
(比較例2) Fe91.2Zr3.94.9の非晶質合金膜を形成し,1 kOeの磁
界中350℃及び550℃で時間熱処理を行なった。前記非晶
質合金膜(as depo),これを350℃で熱処理した膜,及
び550℃で熱処理した膜の交流BHトレーサーによるBH曲
線を,夫々第7図の(a)〜(c)に示す。未熱処理の
非晶質合金膜(as depo)は,軟磁性を有していない
(a)。これを350℃で熱処理した膜は,一軸異方性を
示す(b)。しかし,550℃で熱処理した膜は,その特性
が悪くなっている(c)。
磁気ヘッド製造時に,溶融ガラスによる溶着(ガラス
ボンディング)が行なわれることがあり,通常550℃程
度に加熱して行なわれる。上記組成範囲の膜を用いた場
合,このガラスボンディング時の加熱により,最終的に
得られた磁気ヘッドにおいて良好な軟磁性を示さない。
即ち,前記組成範囲の場合には,熱的に不安定な軟磁性
薄膜しか得ることができない。
(実施例2) Fe92.5Zr7.5の組成の合金ターゲットを用い,2.5,5.0,
7.5,10.0又は12.5モル%の窒素を夫々含む窒素含有アル
ゴンガス雰囲気中で高周波スパッタリングを行ない,種
々の組成のFe−Zr−N非晶質薄膜をサファイア基板(R
面)上に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を350℃又は550℃で
1時間熱処理して,Fe−Zr−N軟磁性薄膜を得た。得ら
れたFe−Zr−N軟磁性薄膜の組成,飽和磁束密度Bs,保
磁力Hcを第3表に示す。
(比較例3) スパッタ時の雰囲気中に窒素を含有しない以外は前記
実施例2と同様にして得た熱処理薄膜の組成,飽和磁束
密度Bs,保磁力Hcも第3表に示す。
(実施例3) Fe90Zr10(at%)の組成のターゲットを用い,6.0モル
%の窒素を含有する窒素含有アルゴンガス雰囲気中でガ
ス圧力0.6Pa,投入電力400Wの条件で高周波スパッタリン
グを行ない,サファイア基板(R面,{102}面)上
にFe75.9Zr7.316.8非晶質薄膜を形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を,250℃(参考
例),350℃,450℃,500℃又は550℃で60分間,120分間,18
0分間,240分間,540分間,1140分間,2400分間又は4800分
間等温磁界(<0010>方向に1.1kOe印加)中で熱処理し
て,軟磁性薄膜を得た。得られたFe−Zr−N軟磁性薄膜
のBH特性(測定磁界Hm=25(Oe)),保磁力Hc及び異方
性磁界Hkを第13図に示す。
第14図は,熱処理時間t[min]に対して得られたFe
−Zr−N軟磁性薄膜の(a)保磁力Hc及び(b)異方性
磁界Hkの関係を夫々示す。また,第15図は,(a)熱処
理時間t[min]と熱処理温度と保磁力Hcとの関係,及
び,(b)熱処理時間t[min]と熱処理温度と異方性
磁界Hkとの関係を夫々示す。
これらより,熱処理温度によるBH特性の変化は,350〜
500℃の範囲と,500℃を越える範囲と,350℃未満の範囲
の3つの温度域で異なることがわかる。
また,前記Fe75.9Zr7.316.8非晶質薄膜を,250℃で4
800分間(参考例),350℃で240分間,450℃で180分間,50
0℃で180分間又は550℃で1140分間夫々熱処理して得ら
れた5種類の軟磁性薄膜の組成(at%),軟磁性薄膜の
Zr含有率(at%)とFe含有率(at%)との比Zr/Fe,N含
有率(at%)とZr含有率(at%)との比N/Zr,及びBH特
性(測定磁界Hm=25(Oe))を第4表に示す。下記各組
成は,Fe91.2(Zr・NX8.8但しx=N/Zrで表現できる。
第4表中の1,3及び5のものは参考例である。
第4表によれば,N/Zrの値は,熱処理温度250℃までの
範囲内と,350℃〜500℃の範囲内でほぼ一定であり,熱
処理温度約300℃付近と約500℃付近にN/Zrの値が急に変
化する熱処理温度が存在するということが推定できる。
X線回折パターン 前記実施例3で得られたFe−Zr−N軟磁性薄膜と,熱
処理前のFe75.9Zr7.316.8非晶質薄膜(as depo)のX
線回折パターン(線源CuKα線40kV,30mA,λ=1.5405
Å)を第16図に示す。以下,このX線回折パターンにつ
いて述べる。
as depoの薄膜の場合,典型的なハローパターンを示
しており,非晶質化していることを裏付けている。
主ピークの位置は熱処理温度が高くなるにつれ広角側
にずれ,550℃熱処理で最終的に2θ=44.6゜となりαFe
(110)ピークと一致している。250℃×4800分では2θ
=43.7゜となる。350℃から500℃の熱処理では2θ≒44
゜である。
主ピークの半値幅からScherrerの式により求めた結晶
粒サイズは,250℃から450℃で約100Å,500℃×180分で
約120Å,550℃×1140分で約170Å(550℃×60分間では
約130Å(実施例1及び第4図参照))と温度×時間に
より連続的に大きくなっている。
550℃熱処理の時間と主ピークの位置,結晶粒サイズ
の関係は下記の様になっている。
このことから,550℃熱処理では比較的早く微細なαFe
相が析出するが,時間とともにわずかながら結晶粒の成
長が生じていることが解る。
また,550℃熱処理では,αFe以外に新たにFe3Zr,ZrN
と思われるピークが観測され,これらが微細に析出して
きていると考えられる。
(実施例4) Fe90Zr10(at%)の組成のターゲットを用い,5.0モル
%の窒素を含有する窒素含有アルゴンガス雰囲気中でガ
ス圧力0.6Pa,投入電力200Wの条件で高周波スパッタリン
グを行ない,サファイア基板(R面)上にFe−Zr−N非
晶質薄膜を形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜(厚さ約0.6μm)
の磁化の温度変化(室温の磁化で規格化してある。)を
VSMにより測定した。その結果を第17図に示す。測定
は,室温から開始して約3℃/minで昇温しながら行な
い,試料Bは340℃で120分間,試料Dは450℃で60分
間,試料Eは500℃で60分間,試料Gは520℃で180分
間,試料Fは550℃で120分間保持した。その後今度は,
−3℃/minで室温まで降温しながら測定した。第17図よ
り,熱処理前のFe−Zr−N非晶質薄膜(as depo)のキ
ュリー温度は,約250℃であり,少なくとも340℃以上で
温度保持すると磁化の値が上昇し,キュリー温度が上昇
していくことがわかる。550℃で120分間保持した場合,
キュリー温度は700℃以上となり,熱処理によってαFe
のキュリー温度(770℃)に近づいていくことがわか
る。室温での磁化は,いずれの場合もas depoの非晶質
薄膜より高いが,520〜550℃保持でほぼ飽和し,as depo
の非晶質薄膜の1.12〜1.14倍となっている。
実施例3及び実施例4からわかったことを熱処理温度
ごとに述べる。
(a)熱処理前(as depo) 構造的には,非晶質である。軟磁性は得られておら
ず,キュリー温度がαFeに比べてかなり低く,磁気モー
メントが熱処理後よりも低い。これらはFe系の比晶質合
金として,考え得る特性である。また,Nの含有量は16.8
%と多く,N/Zr=2.3となっている。
(b) 250℃熱処理(参考例) BH特性はas depoよりはやや改善され,Hcが5〜7Oeを
示していた。熱処理時間を長くすることにより4800分で
結晶化がX線的に確認され,また一軸異方性膜(Hc=1.
4Oe)が得られた。主ピークの位置は,Fe3Zr(440)ピー
クに対応している。熱処理後のN含有量は,as depoと変
わらない。
(c) 350〜500℃熱処理 主ピークは,Fe3Zr(400)とαFe(110)ピークの中間
に位置するが,ZrN(200)付近にもブロードな盛り上が
りが見られ,複雑な状態になっていると考えられる。BH
特性的には,Hc0.7〜0.9Oe,Hk=9〜12Oeで熱処理時間
×温度が大きくなるにつれHkが大きくなる傾向にある。
キュリー温度はこの範囲で連続的に変化しているが,室
温の磁化は,熱処理前の1.06〜1.08倍とほぼ一定であ
る。熱処理後のN含有量は500℃では熱処理前よりもや
や低下するが,N/Zr2の領域である。
(d) 550℃熱処理 主ピークは,明らかにαFe(110)ピークに対応して
おり,新たに,Fe3Zr,ZrNと思われるピークも出現してく
る。このことから550℃熱処理後には(110)配向したα
Feの微細結晶(粒径100〜200Å程度)とさらに微細なFe
3Zr,ZrN等が析出しているものと考えられる。しかし,
キュリー温度は,αFeのキュリー温度770℃よりも低め
であり,これは結晶粒が微細なことと関係していると考
えられる。
Hcは長時間熱処理で低下し約400分で極小となり,そ
の後またわずかに増加する。Hkは時間とともに低下し,
約250分でほぼ等方的になる。
熱処理後のN含有量は熱処理時間に依存し,60分熱処
理ではN/Zr1.8,1140分熱処理ではN/Zr1.1まで低下
している。550℃熱処理により一部の窒素はN2ガスとし
て試料外に放出されるものと考えられる。
このように,Fe−Zr−N非晶質薄膜を熱処理すると,
熱処理温度によって得られる軟磁性薄膜の構造及び性質
が異なる。ことことは,実施例1の電気抵抗率を示す第
2表とも対応する。
以上の内容を第18図に模式的に示した。
(実施例5) Fe90Zr10の組成の合金ターゲットを用い,6.0モル%の
窒素を含有する窒素含有アルゴンガス雰囲気中で高周波
スパッタリングを行なうことにより,Fe76.2Zr7.316.5
とFe75.9Sr7.316.8の2種の組成の非晶質薄膜を夫々
サファイア基板(R面)上に形成した。ただし前者φ6
インチターゲットを用い全圧0.15Pa,投入電力1kWで,後
者はφ4インチターゲットを用い全圧0.6Pa,投入電力40
0Wでスパッタリングした。
前記基板上に形成したFe76.2Zr7.316.5非晶質薄膜
を550℃で60分間磁界中熱処理して,Fe77.8Sr7.614.6
軟磁性薄膜(膜厚は約1μm)を得た。また,前記基板
上に形成したFe75.9Zr7.316.8非晶質薄膜を550℃で磁
界中熱処理して,軟磁性薄膜を得た。軟磁性薄膜の組成
は,熱処理時間が60分間の場合にFe79.2Zr7.513.3
あり,1140分間の場合にはFe83.2Zr8.08.8であった。
得られたこれらの軟磁性薄膜の組成,飽和磁束密度Bs,
保磁力Hc及び異方性磁界Hkを第5表に示す。
(実施例6) Fe100-yHfy(y=5.0,10.0,15.0(at%))の組成の
合金ターゲットを用い,2,4,6,8,10又は12モル%の窒素
を含む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で高周波スパッタ
リングを行なうことにより,種々の組成のFe−Hf−N非
晶質薄膜をサファイア基板(R面)上に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を350℃又は550℃,
1.1kOeの磁界中で1時間熱処理して,Fe−Hf−N軟磁性
薄膜(膜厚約1μm)を得た。得られたFe−Hf−N軟磁
性薄膜の組成,飽和磁束密度Bs,保磁力Hcを第6表に示
す。
なお、第6表中のNo.8〜11は参考例である。
(比較例4) スパッタ時の雰囲気中に窒素を含有しない以外は前記
実施例6と同様にして得た3種の熱処理薄膜の組成,飽
和磁束密度Bs,保磁力Hcも第6表に示す。
(実施例7) Fe100-yTay(y=5.0,10.0,15.0(at%))の組成の
合金ターゲットを用い,2,4,6,8,10又は12モル%の窒素
を含む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で高周波スパッタ
リングを行なうことにより,種々の組成のFe−Ta−N非
晶質薄膜をサファイア基板(R面)上に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を350℃又は550℃,
1.1kOeの磁界中で1時間熱処理して,Fe−Ta−N軟磁性
薄膜(膜厚約1μm)を得た。得られたFe−Ta−N軟磁
性薄膜の組成,飽和磁束密度Bs,保磁力Hcを第7表に示
す。
なお、第7表中のNo.1、5、7及び8は参考例であ
る。
(比較例5) スパッタ時の雰囲気中に窒素を含有しない以外は前記
実施例7と同様にして得た熱処理薄膜の組成,飽和磁束
密度Bs,保磁力Hcも第7表に示す。
(実施例8) Fe100-yNby(y=5.0,10.0,15.0(at%))の組成の
合金ターゲットを用い,2,4,6,8又は10モル%の窒素を含
む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で高周波スパッタリン
グを行なうことにより,種々の組成のFe−Nb−N非晶質
薄膜をサファイア基板(R面)上に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を350℃又は550℃,
1.1kOeの磁界中で1時間熱処理して,Fe−Nb−N軟磁性
薄膜(膜厚約1μm)を得た。得られたFe−Nb−N軟磁
性薄膜の組成,飽和磁束密度Bs,保磁力Hcを第8表に示
す。
なお、第8表中のNo.1、3、6〜10は参考例である。
(比較例6) スパッタ時の雰囲気中に窒素を含有しない以外は前記
実施例8と同様にして得た熱処理薄膜の組成,飽和磁束
密度Bs,保磁力Hcも第8表に示す。
(実施例9) Fe90Zr10(at%)の組成のターゲットを用い,6.0モル
%の窒素を含む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で,高周
波スパッタリングを行なうことにより,Fe−Zr−N非晶
質薄膜を基板上に形成した。基板としては,フェライト
基板上に形成した。基板としては,フェライト基板上に
SiO2膜を製膜して成るSiO2膜被覆フェライト基板を用い
た。前記非晶質薄膜は,前記SiO2膜の表面に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を,550℃,1時間磁界
中(磁界強度1.1kOe)で熱処理して,一軸磁気異方性を
有する軟磁性薄膜(膜厚5.9μm)を得た。得られた軟
磁性薄膜の組成は,前記基板のかわりにサファイア基板
を用いる以外は同一の条件で得られた軟磁性薄膜の組成
から,Fe77.8Zr7.614.6と推定した。
得られた軟磁性薄膜の電気抵抗率ρは77μΩ・cmであ
り,ビッカース硬度Hvは1010kg/mm2であった。また,得
られた軟磁性薄膜の透磁率の周波数特性を第19−A図に
示し,B−Hカーブを第19−B図に示す。
(実施例10) Fe90Hf10(at%)の組成のターゲットを用い,4.0モル
%の窒素を含む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で,高周
波スパッタリングを行なうことにより,Fe−Hf−N非晶
質薄膜を基板上に形成した。基板としては,フェライト
基板上に形成した。基板としては,フェライト基板上に
SiO2膜を製膜して成るSiO2膜被覆フェライト基板を用い
た。前記非晶質薄膜は,前記SiO2膜の表面に形成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜の膜厚は4.7μmで
あった。これを550℃,1.1[kOe]の磁界中で1時間熱処
理し軟磁性薄膜を得た。そして,この薄膜の透磁率およ
び異方性磁界Hkを測定してからさらに,時間以外は前記
と同様な条件で2時間の追加の熱処理を行った(合計3
時間の熱処理)。ここでまた透磁率および異方性磁界を
測定し,さらに時間以外は前記と同様な条件で3時間の
追加の熱処理(合計6時間の熱処理)をして,透磁率お
よび異方性磁界Hkを測定した。得られた3種の軟磁性薄
膜のうちの2種の組成は,前記基板のかわりにサファイ
ア基板を用い膜厚を1μmとした以外は同一の条件で得
られた軟磁性薄膜の組成から,夫々,Fe77.4Hf7.515.1
(1時間熱処理),及びFe82.6Hf7.79.7(6時間熱処
理)と推定した。
得られた軟磁性薄膜(6時間熱処理)の電気抵抗率ρ
は60μΩ・cmであり,ビッカース硬度Hvは1100kg/mm2
あった。この軟磁性薄膜(6時間熱処理)の透磁率の周
波数特性を第20−A図に示し,B−Hカーブを第20−B図
に示す。
また,前記3種の熱処理段階の透磁率(1MHz)で,μ
1MHz及び異方性磁界Hkを第20−C図に示す。第20−C図
は,Fe−Hf−N薄膜の熱処理時間に対する透磁率μ1MHz
及び異方性磁界Hkの変化を示している。
(参考例) Fe85Ta15(at%)の組成のターゲットを用い,6.0モル
%の窒素を含む窒素含有アルゴンガス雰囲気中で,高周
波スパッタリングを行なうことにより,Fe−Ta−N非晶
質薄膜を基板上に形成した。基板としては,フェライト
基板上にSiO2膜を製膜して成るSiO2膜被覆フェライト基
板を用いた。前記非晶質薄膜は,前記SiO2膜の表面に形
成した。
前記基板上に形成した非晶質薄膜を,550℃,1時間磁界
(磁界強度1.1kOe)中で熱処理して,一軸磁気異方性を
有する軟磁性薄膜(膜厚5.6μm)を得た。得られた軟
磁性薄膜の組成は,前記基板のかわりにサファイア基板
を用いる以外は同一の条件で得られた軟磁性薄膜の組成
から,Fe69.8Zr11.518.7と推定した。
得られた軟磁性薄膜の電気抵抗率ρは86μΩ・cmであ
り,ビッカース硬度Hvは1220kg/mm2であった。また,得
られた軟磁性薄膜の透磁率の周波数特性を第21−A図に
示し,B−Hカーブを第21−B図に示す。
以下,図面の第8〜10図により本発明の磁気ヘッドの
実施例について説明する。
(実施例11) 第8図は,本発明の複合磁気ヘッドの先端拡大斜視図
であり,第9図は,第8図の複合磁気ヘッドの矢視A拡
大図(記録媒体指向面拡大図)である。
フェライトコア1は,先端対向面1a,1a′および該対
向面から後退して形成される凹所1b,1b′を有し,所定
の位置(図示せず)で結合し一体になっている。フェラ
イトコアの先端対向面1a,1a′及び該対向面から後退し
て形成される凹所1b,1b′は,本発明において特定され
る軟磁性層2,2′及びSiO2層3,3′を順次備えている。軟
磁性層2,2′は磁気ヘッドのコアの一部を形成してい
る。前記フェライトコア1の先端対向面1aと1a′間に存
在する軟磁性層部分は,互いに対向しており,この軟磁
性層対向面間にギャップが構成されている。前記フェラ
イトコアの凹所ないしエッジ部に前記軟磁性層を介して
備えられたSiO2層部分は,ガラス充填部5,5′と結合し
ている。
前記軟磁性層としては,次の2種のものを夫々用い
た。
(1)組成がFe80.9Zr6.512.6であり,一軸磁気異方
性を有する軟磁性層 (2)組成がFe82.6Hf7.79.7であり,一軸磁気異方性
を有する軟磁性層 第8〜9図に示された複合磁気ヘッドの製造方法の一
例を次に概説する。
フェライトコア半体の先端対向面1a及び該対向面から
後退して形成される凹所1bに,例えば前記軟磁性薄膜の
製造例ないしそれに準ずる方法で軟磁性層2を形成す
る。前記軟磁性層に所定の方法でSiO2層を形成する。こ
のようにして,フェライトコア半体に前記2種の層を形
成して成る多層状のコア半体を得る。この多層状のコア
半体とともにヘッドを構成するもう一方の多層状コア半
体を同様の製造方法により得る。
以上のようにして得られた一対の多層状コア半体を所
定の方向に突合せ,コア半体の凹所への溶融ガラスの充
填・冷却により前記一対のコア半体同士を接合して,図
示された複合磁気ヘッドを製造する。
(実施例12) 第10図は,本発明の薄膜磁気ヘッドのギャップデプス
方向(記録媒体指向面に対して垂直方向)の概略拡大断
面図であり,以下この図に基づいて説明する。
フェライトコア基板10は,下部軟磁性層11,絶縁層12,
コイル導体層13及び上部軟磁性層15を順次有する。前記
下部軟磁性層11と上部軟磁性層15の間には,ヘッドの記
録媒体指向面20に達する磁気ギャップ層14が存在する。
上部軟磁性層15のもう一方の面には,軟磁性層を保護す
るための保護層16が設けられている。保護層16は,接合
ガラス層18により保護板19と接合している。
前記下部軟磁性層11及び上部軟磁性層15としては,次
の2種のものを夫々用いた。
(1)組成がFe80.9Zr6.512.6であり,一軸磁気異方
性を有する軟磁性層 (2)組成がFe82.6Hf7.79.7であり,一軸磁気異方性
を有する軟磁性層 第10図に示された薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例を
次に概説する。
フェライト基板10上に厚さ10μmの下部軟磁性層11を
形成する。下部軟磁性層11は,例えば前記軟磁性層の製
造例ないしそれに準ずる方法で形成する。次に下部軟磁
性層11上の所定の位置にSiO2等によりなる非磁性絶縁層
12及びCu,Al等よりなるコイル導体層13を適宜形成した
後,コイル導体層13を含む非磁性絶縁層12の断面を図に
示すように略台形状にイオンミリングにより加工する。
次にギャップ層14を形成し,後に形成する上部軟磁性層
15と直接接合する所定の位置(図示せず)よりギャップ
層14を除去して,下部軟磁性層11と同様の方法により,
所定の位置(図示せず)で下部軟磁性層11に接合した厚
さ10μmの上部軟磁性層15を形成する。
次に保護層16を上部軟磁性層15の上に形成する。
保護層16が形成された後,前記保護層16を平坦化し,
接合ガラス層(SiO2−PbO−B2O3系ガラス)18を介して
保護板19と接合し記録媒体指向面20を平滑にして,本発
明の一実施例である薄膜磁気ヘッドを製作した。
(実施例13) 第11図は,本発明の一実施例である複合磁気ヘッドの
先端拡大斜視図である。第12図は,前記複合磁気ヘッド
の記録媒体指向面(矢視A)概略拡大図である。
磁気ヘッドコア33は,軟磁性層31とSiO2等の絶縁層32
を交互に積層して成り,先端対向面33a,33a′及び該対
向面から後退して形成される凹所33b,33b′を有する。
前記対向面には,軟磁性層の端面が露出する。即ち,前
記対向面の大部分は軟磁性層の端面で構成されている。
SiO2からなるギャップ層Gは,前記対向面間に形成され
ている。磁気ヘッドコア33の側面は,非磁性基板34〜37
と結合している。充填ガラス部38は,非磁性基板34と36
の間に充填され,磁気ヘッド全体の接合強度を増大させ
ている。
本発明の磁気ヘッドは,従来の磁気ヘッドと比較して
より高硬度の軟磁性層を有するので,上記のような複合
磁気ヘッドにおいても,その記録媒体指向面はより一層
の高耐摩耗性(高耐久性)を有する。
前記軟磁性層としては,次の2種のものを夫々用い
た。
(1)組成がFe80.9Zr6.512.6であり,一軸磁気異方
性を有する軟磁性層 (2)組成がFe82.6Hf7.79.7であり,一軸磁気異方性
を有する軟磁性層 [発明の効果] 本発明の磁気ヘッドの軟磁性層は,上述の説明からも
明からな様に,センダスト合金やアモルファス軟磁性合
金よりもはるかに高い飽和磁束密度を有し,かつ,磁歪
を零とすることができ,低保磁力,高透磁率の優れた軟
磁気特性を有する。
また,軟磁性層は,電気抵抗率もセンダスト並に高く
一軸異方性を有することができ,その大きさも組成や熱
処理時間によって制御することができるので,目的に応
じた高周波透磁率を得ることができる。さらに650℃ま
での熱処理によっても特性が劣化しないことから,ガラ
スボンディングなどに対する耐熱性にも優れており,あ
わせて高い硬度と耐食性を持つことから,耐摩耗性も高
く,信頼性が高い。
本発明の磁気ヘッドにおける軟磁性層は,非晶質合金
膜の熱処理によって微結晶化させて形成することができ
るので,層形成にあたってステップカバレッジが良好で
かつ鏡面が得られ易く多層膜化などの手段に依らなくて
も結晶粒の粗大化を防ぐことができるので,厚膜化する
ことが可能である。
従って,本発明の磁気ヘッドは,高保磁力の磁気記憶
媒体に対応することができ,高品質化,高帯域化,高記
録密度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は,本発明の磁気ヘッドにおける軟磁性層の組成
範囲を示す図である。第2図は,実施例1で製造した軟
磁性薄膜の組成と保磁力Hcの関係,及び磁歪の正負判定
を示す図である。第3図は,軟磁性薄膜製造条件とそれ
により製造された軟磁性薄膜の保磁力Hcと飽和磁歪λ
との関係を示す図である。第4図は,熱処理条件の異な
る薄膜のX線回折測定結果を示す図である。第5図は,
組成の異なる薄膜の交流BH曲線を示す図である。第6図
は,VSMより求めた熱処理前後の薄膜の1H曲線を示す図で
ある。第7図は,本発明の磁気ヘッドの軟磁性層の組成
範囲外の組成の軟磁性薄膜の交流BH曲線を示す図であ
る。第8図は,本発明の複合磁気ヘッドの一実施例の概
略先端拡大斜視図である。第9図は,第8図の複合磁気
ヘッドの一実施例の矢視A概略拡大図である。第10図
は,本発明の薄膜磁気ヘッドの一実施例のギャップデプ
ス方向の概略拡大断面図である。第11図は,本発明の複
合磁気ヘッドの一実施例の先端拡大斜視図である。第12
図は,第11図に示された複合磁気ヘッドの矢視A概略拡
大図である。 第13図は,Fe−Zr−N軟磁性薄膜のBH特性,保持力Hc及
び異方性磁界Hkを示す図である。第14図は,熱処理時間
tに対して得られたFe−Zr−N軟磁性薄膜の保磁力Hc及
び異方性磁界Hkの関係を示す図である。第15図は,熱処
理時間tと熱処理温度と保磁力Hcとの関係,及び熱処理
時間tと熱処理温度と異方性磁界Hkとの関係を夫々示す
図である。第16図は,Fe−Zr−N軟磁性薄膜と,熱処理
前の非晶質薄膜のX線回折パターンを示す図である。第
17図は,Fe−Zr−N軟磁性薄膜の磁化の温度変化を示す
図である。第18図は,熱処理時間tと熱処理温度によっ
て得られる軟磁性薄膜の特性の推定を示す図である。第
19−A図,第20−A図及び第21−A図は,夫々,本発明
の一実施例又は参考例の軟磁性薄膜の透磁率の周波数特
性を示す図である。第19−B図,第20−B図及び第21−
B図は,夫々,本発明の一実施例又は参考例の軟磁性薄
膜の容易軸方向(上段)及び困難軸方向(下段)の交流
BH曲線を示す図であり,Bは任意単位である。第20−C図
は,Fe−Hf−N非晶質薄膜の熱処理時間に対するFe−Hf
−N軟磁性薄膜の透磁率μ1MHz及び異方性磁界Hkの変化
を示す図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】先端対向面及び該対向面から後退して形成
    される凹所を有する磁気ヘッドコアの少なくとも該対向
    面に露出する軟磁性層を備え、該コアの対向面間にギャ
    ップを構成してなり、 前記軟磁性層は、FeaBbNc(但し、a,b,cは各々原子%を
    示し、BはZr,Hf,Ti,Nb,Ta,V,Mo,Wの少なくとも1種以
    上を表わす。)なる組成式で示され、その組成は前記三
    者の三成分組成座標系(Fe,B,N)において W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) の4点を結ぶ線分で囲まれた範囲であり、350〜550℃の
    熱処理により得られ、結晶粒径130オングストローム以
    下の微細結晶質から成り、単層構造であることを特徴と
    する複合磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】基板上に下部軟磁性層と絶縁層とコイル導
    体層と上部軟磁性層とを順次有し、前記下部軟磁性層と
    上部軟磁性層間にヘッドの記録媒体指向面に達する磁気
    ギャップ層を備えて成り、 前記軟磁性層は、FeaBbNc(但し、a,b,cは各々原子%を
    示し、BはZr,Hf,Ti,Nb,Ta,V,Mo,Wの少なくとも1種以
    上を表わす。)なる組成式で示され、その組成は前記三
    者の三成分組成座標系(Fe,B,N)において W(88,3.6,8.4) X(88,4.56,7.44) Y(77,8.74,14.26) Z(77,6.9,16.1) の4点を結ぶ線分で囲まれた範囲であり、350〜550℃の
    熱処理により得られ、結晶粒径130オングストローム以
    下の微細結晶質から成り、単層構造であることを特徴と
    する薄膜磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】前記軟磁性層の保磁力は1.5Oe以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】前記軟磁性層が一軸異方性を有することを
    特徴とする請求項1〜3の一に記載の磁気ヘッド。
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