JP2866147B2 - 微細酸化物を分散させた鋼の製造方法 - Google Patents

微細酸化物を分散させた鋼の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、鋼中に微細な酸化物を分散させることによ
り、微細組織をもつ特性の優れた鋼を製造する方法に関
するものである。
(従来の技術) 従来、鋼の製造において、脱酸生成物等の介在物が鋼
材質に悪影響を及ぼすことから、これら介在物数を極力
少なくするか、その性質を無害化する方法が採られてい
る。すなわち、溶鋼を攪拌して脱酸生成物を浮上、分離
したり、連鋳でのロングノズル使用による2次酸化の防
止をすること、また介在物組織をコントロールして変形
しやすい無害ものにすることが前記の採られうる方策で
あるが、厳格な品質要求に合わせ、極端に介在物数を低
減することは、コストが指数函数的に増大し、方法によ
っては逆に汚染源となるおそれが生じる。また、全ての
介在物組織をコントロールして無害化することは困難で
あり、比較的大型サイズの介在物がコントロールされな
いまま残ることがある。
このような大型サイズの介在物は有害であるが、逆に
微細な酸化物を分散させることによって、鋼材の靱性の
向上を計ることが例えば、特開昭61−238940号公報に開
示されている。すなわち少量のTiを脱酸元素として添加
し、2次脱酸生成物を微細分散させることにより、これ
が変態核となってオーステナイト粒内から微細なフェラ
イトが生成して組織を微細化し、特に溶接熱影響部の靱
性が向上することが記述されている。
本発明者らは、上記変態核の他の一つにMnSがあり、
多数の微細MnSを鋼中に分散析出させることで組織を微
細化できることを特開平1−228643号公報(特願昭63−
53458号)に開示している。すなわち、溶鋼中にZr,Ti,C
e,YおよびHfなどの脱酸元素を投入固溶させ、一定速度
で冷却凝固させることにより生成した脱酸生成物(Zr
O2,TiO2,Ce2O3など)を核として、上記機能を有するM
nSが均一かつ微細に析出することを提案した。
(発明が解決すべき課題) 本発明は、鋼の組織の微細化、それに伴う品質の向上
を安定して得るために、上述したMnSの核となる酸化物
(脱酸生成物)をさらに一層微細分散させる鋼の製造方
法を提供することを目的とするものである。
(課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため本発明の要旨とするところ
は、重量%としてMn:0.3〜2.0%、Si:0.05〜0.5%、Al:
0.01%以下、さらにTi:0.002〜0.05%およびZr:0.002〜
0.05%を含有する炭素鋼を製造するに際し、溶鋼中にあ
らかじめMnとSiを添加して予備脱酸した後に、脱酸元素
としてTi次いでZrを添加し、該溶鋼をその後凝固するこ
とを特徴とする微細酸化物を分散させた鋼の製造方法に
ある。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明が製造対象とする炭素鋼は、Mn乃至Zrを上記し
た範囲に含有するほか、軟鋼、高張力鋼等一般に使用す
る鋼材(板)に含有する成分を添加(あるいは含有)す
ることを妨げるものでない。
前述したように、鋼中に析出する微細なMnSは、変態
核となって鋼組織を微細にする。本発明は、MnSの析出
核となる酸化物(脱酸生成物)をさらに一層の微細化す
るものである。すなわち、酸化物が微細分散すれば、そ
の上に析出するMnSも多くなり、これがより一層の組織
の微細化につながる。
本発明は、溶鋼にまずMn,Siを添加して予備脱酸を行
う。Mn,Siは弱脱酸元素であるが溶鋼中溶存酸素と反応
して1次脱酸し、脱酸生成物MnO,SiO2となって一部は浮
上除去されるが、一部は鋼中に残留する。鋼中に残留し
たMnO,SiO2は両者の複合酸化物(Mn−シリケート)とな
り、この複合酸化物がMnSの析出サイトとなる。このMn
−シリケートは比較的大型サイズの混合物であり、これ
を微細化し、かつMnSの析出量(個数)を増大させるた
めにZrおよびTiを添加する。本発明は、この両元素添加
にあたって、Tiを先にし、その後にZrを添加する2段添
加法を採用したことに最大の特徴がある。
Tiを先に添加し、Zrを後にするのは、TiはZrに比べて
脱酸力が弱く、添加後も次ぎの酸化物(ZrO2)を生成し
うるだけの溶存酸素が残る。また、TiはMn−シリケート
に作用し、この一部を還元して複合酸化物となってMnS
の析出サイトを形成し、MnSの析出個数を増加させる。
Zrは、Ti添加後の溶存酸素と結合し、ZrO2を生成す
る。このZrO2は、溶鋼中でMn−シリケート複合酸化物と
衝突し、これを微細化すると共にZrがMn−シリケートと
反応し、これを還元して微細化に役立っている。すなわ
ちZr添加により前記複合酸化物は微細になり、結果的に
MnSの微細化に役立つ。
このように本発明においては、予備脱酸(Mn,Si)し
た後、TiとZrを前後して添加することにより、生成した
複合酸化物およびMnSの微細化に極めて効果的である。
TiとZrを同時、またはZr→Tiの順で添加した場合は、
脱酸力の違いから、ZrO2が優先的に生成するため、Ti添
加の効果はTi→Zrの順に添加した場合に比べて極めて小
さい。
以下本発明における各元素の添加理由を説明する。
Mnは前記Siと同様脱酸材としての役割を果たし、Siと
共に脱酸生成物を形成し、MnSを形成する核となる。一
方Mnは、本発明の目的であるMnSを析出するために必要
であり0.3%以下ではMnSを十分析出させることはできな
い。しかし、2.0%を超えると加工が困難となるのでこ
の値を上限とした。
Siは、脱酸材であり、Mnと共に脱酸生成物(SiO2,Mn
O)を生成する。これらの脱酸生成物は、複合化し、そ
の上にMnSを析出する核の役割を果たす。一方多量に含
有すると加工性が劣化するので0.5%を上限とした。
Alは、強脱酸元素であるため、少量のAlでもMnOやSiO
2を還元し、Al2O3を形成する。すなわち、他の酸化物個
数を十分な量とすることの妨げとなり、またAl2O3が多
量になるとクラスターを形成し、大型介在物となって、
微細効果を減殺する。従ってAl量は少ない程よく、許容
限界として0.01%とした。
Ti,Zrは前記したように酸化物を微細化し、かつMnSを
微細分散させるためにそれぞれ0.002%以上が必要であ
り、また0.05%を超えて添加するとMn−シリケートの還
元量が大きく、酸化物の凝集化による微細化が阻害され
る傾向が大きくなるからである。
(実施例) 高周波誘導加熱により1kgの溶鋼を溶解し、Ti,Zrを添
加する実験を行った。純鉄を溶解し、1570℃で成分調整
後、Mn,Si添加の後にTiおよびZrを添加した。本発明材
ではZrの添加順序をTi→Zrとし、比較材ではZr→Tiとし
た。Ti,Zr添加後は30秒間保定してから坩堝内で放冷凝
固させた。なお、Mn,Si添加前の溶存酸素濃度はいずれ
の場合も200ppmであった。
得られた鋼塊より試料を採取し、酸化物およびMnSの
個数をX線マイクロアナライザーにより調査した。
第1表に鋼塊の科学分析値および酸化物、MnS個数を
示す。本発明の条件では、酸化物、MnS個数は十分得ら
れるのに対し、比較材では不十分であった。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明法によれば、鋼中により
微細な酸化物を均一に分散させることができ、これによ
り鋼の組織をより一層微細化し、特性の向上に役立つこ
とが明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21C 7/06 B22D 27/20 C22C 38/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%としてMn:0.3〜2.0%、Si:0.05〜0.
    5%、Al:0.01%以下、さらにTi:0.002〜0.05%およびZ
    r:0.002〜0.05%を含有する炭素鋼を製造するに際し、
    溶鋼中にあらかじめMnとSiを添加して予備脱酸した後
    に、脱酸元素としてTi次いでZrを添加することを特徴と
    する微細酸化物を分散させた鋼の製造方法。
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