JP2863338B2 - L−フコースデヒドロゲナーゼの製造方法 - Google Patents

L−フコースデヒドロゲナーゼの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はL−フコースデヒドロゲ
ナーゼの製造方法に関する。更に詳しくは細菌を培養し
て、その培養物よりL−フコースデヒドロゲナーゼを製
造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】L−フコースは生体内の複合糖鎖の非還
元末端に存在してその物質の抗原性や情報伝達に関与す
るなどの機能を持つほか、胃、腸、粘液や海藻フコイダ
ンの構成糖としても存在する。また、悪性疾患患者の血
清中の結合型L−フコースが増加するという報告〔キャ
ンサー リサーチ( Cancer Research )、第37巻、第
4101〜4103頁(1977)〕や、肝硬変、悪性
疾患患者において尿中遊離型L−フコースが増加すると
いう報告〔クリニカル ケミストリー( ClinicalChemis
try )、第36巻、第3号、第474〜476頁(19
90)〕もある。つまり、尿、血清、粘液など様々な試
料中のL−フコースを測定することにより、病態や生体
内でのL−フコースの代謝変化などの情報が得られる。
L−フコースの測定方法は化学法やHPLCによる方
法、酵素法等があるが、L−フコースデヒドロゲナーゼ
を用いた酵素法が最も迅速簡便である。L−フコースデ
ヒドロゲナーゼとしてはシュードモナド( Pseudomonad
)由来〔ジャーナル オブ バイオロジカル ケミスト
リー ( Journal of BiologicalChemistry ) 、第240
巻、第11号、第4493〜4497頁(196
5)〕、ブタ肝臓由来〔ジャーナル オブ バイオロジ
カル ケミストリー、第244巻、第4785〜479
2頁(1969)〕、シュードモナス( Pseudomonas )
由来〔アグリカルチュラル アンドバイオロジカル ケ
ミストリー ( Agricultural and Biological Chemistry
)、第39巻、第11号、第2227〜2234頁(1
975)〕、羊肝臓由来〔アーカイブズ オブ バイオ
ケミストリーアンド バイオフィジクス ( Archieves o
f Biochemistry and Biophysics ) 、第139巻、第8
3〜86頁(1970)〕、ウサギ肝臓由来〔ジャーナ
ル オブ バイオケミストリー、第86巻、第1559
〜1565頁(1979)〕、プルラリア ( Pullulari
a )由来〔カナディアン ジャーナル オブ ミクロバ
イオロジー ( Canadian Journal of Microbiology ) 、
第30巻、第753〜757頁(1984)〕、コリネ
バクテリウム ( Corynebacterium )由来(特開昭62−
155085号)、シュードモナス由来〔アグリカルチ
ュラル アンドバイオロジカル ケミストリー、第53
巻、第6号、第1493〜1501頁(1989)〕の
ものが知られており、L−フコースデヒドロゲナーゼは
L−フコースの定量に広く用いられている非常に有用な
酵素である〔アグリカルチュラルアンド バイオロジカ
ル ケミストリー、第39巻、第11号、第2227〜
2234頁(1975)、ジャーナル オブ バイオケ
ミストリー、第86巻、第1559〜1565頁(19
79)〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、L−
フコースデヒドロゲナーゼを工業的に安価に製造する新
しい方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明はL−フコースデヒドロゲナーゼの製造方法に関す
るものであって、アルスロバクター属に属し、L−フコ
ースデヒドロゲナーゼ生産能を有する微生物を培養し、
培養物からL−フコースデヒドロゲナーゼを採取するこ
とからなる。
【0005】本発明で用いられるアルスロバクター ( A
rthrobacter ) 属に属する細菌はL−フコースデヒドロ
ゲナーゼを培養物中に著量生産することが可能で、また
後述するごとく非常に精製が容易であり、かつ優れた性
質を有している。
【0006】まず、本発明に使用される菌株としては、
アルスロバクター属に属するL−フコースデヒドロゲナ
ーゼ生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよ
く、またこれらの菌株の変異株でも良い。そして、アル
スロバクター属に属しL−フコースデヒドロゲナーゼ生
産能を有する菌株の具体例としては、例えばアルスロバ
クター オキシダンス ( Arthrobacter oxidans ) F1
が挙げられる。本菌は、土壌中より本発明者らが新たに
検索して得た菌株で、その菌学的性質は次のとおりであ
る。
【0007】a)形態的性質 顕微鏡的観察(肉汁寒天培地上で30℃で培養) (1)細胞の形及び大きさ 通常細胞の大きさは0.3〜0.5×3〜5μm、直線
状あるいは若干湾曲した桿菌であり片端あるいは両端が
クラブ状に曲がったものもあり多形成である。 (2)運動性の有無:なし (3)周鞭毛の有無:なし (4)グラム染色性:陽性 (5)胞子の有無 :なし (6)抗酸性 :陰性
【0008】b)各培地における生育状態 (1)肉汁寒天平板培養:30℃の培養で直径2〜4mm
の凸円形コロニーを形成する。表面及び周縁は滑らかで
ある。コロニーの色は、白黄色不透明で光沢がある。 (2)肉汁寒天斜面培養:30℃培養で拡幅によく生育
する。 (3)肉汁ゼラチン穿刺培養:20℃静置培養で表面及
び穿刺線に沿って生育し、ゆっくりとゼラチンを液化す
る。
【0009】c)生理学的性質 (1)カタラーゼ :陽性 (2)デンプンの加水分解:陽性 (3)最適生育条件 :22℃〜37℃、 pH 6.
0〜8.5 (4)酸素に対する態度 :好気性 (5)DNAのGC含量 :60%(Tm法による) (6)ペプチドグリカンタイプ:A3α、Lys−Se
r−Thr−Ala
【0010】上記したごとく本菌はその性状より、バー
ジーズ マニュアル オブ システマティック バクテ
リオロジー( Bergey′s Manual of Systematic Bacter
iology )、第2巻(1986)と対比すると、アルスロ
バクター オキシダンスと認められる。
【0011】なお本菌株はArthrobactor
oxidans F1と表示され工業技術院微生物工業
技術研究所に微工研寄第3674号(FERM
3674)として寄託されている。
【0012】本発明において培地に加える栄養源は、使
用する菌株が利用し、L−フコースデヒドロゲナーゼを
生産するものであればよく、炭素源としては、例えばL
−フコース、D−アラビノース、グリセロール、D−グ
ルコース、シュクロース、マルトース、ラクトース、ク
エン酸、酢酸などが利用でき、窒素源としてはペプト
ン、酵母エキス、コーンスティープリカー、肉エキス、
硫安、塩化アンモニウムなどが適当である。そのほかに
リン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム
塩、鉄塩などの無機質及び金属塩類を加えても良い。な
お、本発明のL−フコースデヒドロゲナーゼは誘導酵素
である故L−フコースを培地に添加すれば著しく酵素生
産量が増大する。例えばL−フコース0.1%添加によ
り無添加に比べて約100倍のL−フコースデヒドロゲ
ナーゼが生産される。
【0013】L−フコースデヒドロゲナーゼ生産菌を培
養するに当り、生産量は培養条件により大きく変動する
が、一般に培養温度は20〜35℃、培地の pH 5.5
〜8.5が良く10〜30時間の通気かくはん培養で本
発明によるL−フコースデヒドロゲナーゼの生産は最高
に達する。培養条件は使用する菌株、培地組成などに応
じ、L−フコースデヒドロゲナーゼの生産量が最大にな
るように設定するのが当然である。
【0014】本発明の菌によって生産されたL−フコー
スデヒドロゲナーゼは菌体内に存在するので、培養物を
固液分離し、得られた湿菌体から通常用いられる超音波
処理、フレンチプレス、ダイノミルなどの種々の破壊手
段を用いて菌体を破壊、あるいはリゾチームなどの細胞
壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解すると無細胞抽出
液が得られる。次に、この抽出液から通常用いられる精
製手段により精製酵素標品を得ることができる。例え
ば、塩析、除核酸、イオン交換カラムクロマト、疎水結
合カラムクロマト、ゲルろ過、アフィニティーカラムク
ロマトなどにより精製を行い、ポリアクリルアミドゲル
電気泳動的に単一な精製L−フコースデヒドロゲナーゼ
を得ることができる。
【0015】本発明により得られるL−フコースデヒド
ロゲナーゼの酵素化学的及び理化学的性質は次のとおり
である。
【0016】(1)作用:本酵素は下記反応式(化1)
のごとく、L−フコースを酸化して、L−フコノ−δ−
ラクトンを生成する。
【化1】L−フコース+NAD+ 又はNADP+ → L
−フコノ−δ−ラクトン+NADH又はNADPH+H
+
【0017】(2)基質特異性:3mMのリン酸を含む1
25mM グリシン−NaOH緩衝液中で補酵素にNAD
+ を用いて各種の糖に対する反応速度を調べると、本酵
素はL−フコースに最もよく作用しL−ガラクトースや
D−アラビノースにも作用する(表1)。
【0018】
【表1】 表 1 ──────────────────────────────────── 基 質(10mM) 相 対 活 性(%) ──────────────────────────────────── L−フコース 100 L−ガラクトース 83 D−アラビノース 49 D−リキソース 2.0 L−リボース 0.5> L−アロース 0.5> L−グルコース 0.5> L−キシロース 0.5> ──────────────────────────────────── D−フコース、D−ガラクトース、L−アラビノース、 L−リキソース、D−リボース、D−グルコース、 D−キシロース、D−マンノース、L−マンノース、 L−ラムノース、L−ソルボース、D−フラクトース 0 ────────────────────────────────────
【0019】また本酵素は補酵素としてNAD+ あるい
はNADP+ を使用することができる。相対活性比は上
記緩衝液中でL−フコース(10mM)を基質に用いた場
合(NAD+ ):(NADP+ )=100:22の反応
速度を示す。
【0020】(3)至適pH及びpH安定性:本酵素の至適
pHは基質にL−フコースとNAD+ を用い、50mMのブ
リトンとロビンソンの緩衝液を用いると pH 7.2〜
7.4付近にある(図1)。また本酵素を30℃におい
てそれぞれのpHで60分間処理した時は pH 6.0〜1
0.5まで安定であった(図3)。なお図1及び図3に
おいて、横軸はpH、縦軸は相対活性(%)を示す。
【0021】(4)至適温度及び熱安定性:本酵素は4
3℃に至適温度を有している(図2)。また本酵素を p
H 8.0においてそれぞれの温度で10分間処理したと
き40℃まで安定であった(図4)。なお図2及び図4
において、横軸は温度(℃)、縦軸は相対活性(%)を
示す。
【0022】(5)分子量:本酵素の分子量をポリアク
リルアミドゲル電気泳動法により求めると、約3960
0であった。
【0023】(6)等電点:IsogelアガロースIEFプ
レートpH範囲3〜7を用いて等電点電気泳動を行ったと
ころ本酵素の等電点は3.6であった。
【0024】(7)金属塩の影響:本酵素は表2に示す
様に、HgCl2 、AgCl2 、CdCl2 により強く
阻害された。その他の2価の陽イオンにより少し阻害さ
れた。
【0025】
【表2】 表 2 ──────────────────────────────── 金 属 塩(1mM) 相 対 活 性(%) ──────────────────────────────── HgCl2 、AgCl2 0 CdCl2 2.4 ZnCl2 58 FeCl3 64 CoCl2 74 CuCl2 75 CaCl2 77 NiCl2 82 MgCl2 84 MnCl2 87 NaCl 99 KCl 99 ───────────────────────────────
【0026】(8)km値:3mMのリン酸を含む125
mMのグリシン−NaOH緩衝液 pH 8.0を用いてライ
ンウイバ−バーク( Lineweaver-Burk )プロットにより
本酵素のkm値を求めた。L−フコースに対するkm値
はNAD+ を補酵素とした場合は0.69mM、NADP
+ を補酵素とした場合は0.035mMであった。また、
L−フコースを基質に用いた場合NAD+ に対するkm
値は0.27mM、NADP+ に対するkm値は0.00
18mMであった。
【0027】(9)酵素活性測定法:L−フコースデヒ
ドロゲナーゼの活性は次のようにして測定した。すなわ
ち30mM L−フコース1.0ml、5mMリン酸を含む2
00mMグリシン−NaOH緩衝液( pH 8.0)1.8
ml、15mM NAD+ 0.1ml及び0.1〜0.3U/
mlとなる様に希釈した酵素液0.1mlを(反応液総量
3.0ml)混合し、37℃、10分間反応させた後、3
40nmにおける吸光度を測定する(O.D.サンプ
ル)。別に対照として酵素溶液の代りに蒸留水0.1ml
を加え同様の操作によって吸光度を測定し(O.D.ブ
ランク)、△O.D.340 (O.D.サンプル−O.
D.ブランク)を求めた。L−フコースデヒドロゲナー
ゼ活性は下記の計算式(数1)によって求められる。
【0028】
【数1】 単位/ml=〔(△O.D.340 ×3.0<ml>)/(6.22×10<分>× 0.1<ml>×d)〕×df 6.22:340nmにおけるNADHのミリモル分子吸光係数 d:光路長(cm) df:希釈率
【0029】なお、アルスロバクター オキシダンスF
1はα−フコシダーゼも生産する。α−L−フコシダー
ゼはα−L−フコシド結合に作用して、L−フコースを
遊離させる酵素で、細菌、カビ、放線菌、植物、軟体動
物、ほ乳類に見出されている。一方、高等動物由来の糖
タンパク質、糖脂質等の複合糖質中の糖鎖部分には、α
−L−フコシル基が頻繁に見出されており、これらの糖
鎖の構造と機能の関係を研究するためにα−L−フコシ
ダーゼが使用されている。また、複合糖質に含まれてい
るL−フコースはα−L−フコシダーゼで処理すること
により、遊離型のL−フコースとして定量することがで
きる。最近、α−L−フコシダーゼの製造に関する報告
がいくつかあり〔アグリカルチュラル アンド バイオ
ロジカル ケミストリー、第49巻、第3179頁(1
985)(特開昭62−155086号)〕、これらの
酵素は糖鎖の構造解析や、糖鎖中に含まれるL−フコー
スの遊離、定量に利用されている。
【0030】本発明で用いられているアルスロバクター
属に属する細菌は該菌株を培養することにより、培養物
中に著量のα−L−フコシダーゼを生産することが可能
で、精製も容易である。また生産されるα−L−フコシ
ダーゼも酵素学的に優れた性質を有している。
【0031】α−L−フコシダーゼの生産菌株として
は、アルスロバクター属に属するα−L−フコシダーゼ
生産能を有する菌株であればいかなる菌株でもよく、ま
たこれらの菌株の変異株でも良い。そして、アルスロバ
クター属に属しα−L−フコシダーゼ生産能を有する菌
株の具体例がアルスロバクター オキシダンスF1であ
る。α−L−フコシダーゼの製造において培地に加える
栄養源は、使用する菌株が利用し、α−L−フコシダー
ゼを生産するものであればよく、炭素源としては、例え
ばL−フコース、D−アラビノース、グリセロール、D
−グルコース、シュクロース、マルトース、ラクトー
ス、クエン酸、酢酸などが利用でき、窒素源としてはペ
プトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、肉エキ
ス、硫安、塩化アンモニウムなどが適当である。そのほ
かにリン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウ
ム塩、鉄塩など無機質及び金属塩類を加えても良い。
【0032】またα−L−フコシダーゼもL−フコース
デヒドロゲナーゼと同じ誘導酵素である故、L−フコー
スを培地に添加すれば著しく酵素生産量が増大する。例
えばL−フコース0.1%添加により無添加に比べて約
100倍のα−L−フコシダーゼが生産される。α−L
−フコシダーゼ生産菌を培養するに当り、生産量は培養
条件により大きく変動するが、一般に培養温度は20〜
35℃、培地の pH 5.5〜8.5が良く、10〜30
時間の通気かくはん培養でα−L−フコシダーゼの生産
は最高に達する。培養条件は使用する菌株、培地組成な
どに応じ、α−L−フコシダーゼの生産量が最大になる
ように設定すれば良い。α−L−フコシダーゼ生産菌に
よって生産されたα−L−フコシダーゼは菌体内に存在
するので、培養物を固液分離し、得られた湿菌体から通
常用いられる超音波処理、フレンチプレス、ダイノミル
などの種々の破壊手段を用いて菌体を破壊、あるいはリ
ゾチームなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶
解すると無細胞抽出液が得られる。次に、この抽出液か
ら通常用いられる精製手段により精製酵素標品を得るこ
とができる。例えば、塩析、除核酸、イオン交換カラム
クロマト、疎水結合カラムクロマト、ゲルろ過、アフィ
ニティーカラムクロマトなどにより精製を行い、ポリア
クリルアミドゲル電気泳動的に単一な精製α−L−フコ
シダーゼを得ることができる。
【0033】得られるα−L−フコシダーゼの酵素化学
的及び理化学的性質は次のとおりである。 (1)作用:
【0034】
【化2】
【0035】本酵素は上記反応式(化2)のごとく、α
−L−フコシドに作用して、L−フコースを遊離する。
【0036】(2)基質特異性:合成基質ではp−ニト
ロフェニル−α−L−フコピラノシドに作用する。他の
p−ニトロフェニル糖化合物(p−ニトロフェニル−β
−L−フコピラノシド、p−ニトロフェニル−α−L−
グルコピラノシドなど)には全く作用しない。また天然
基質では、人乳由来の2′−フコシルラクトースや、ブ
タ顎下腺ムチンの糖鎖などに作用する。
【0037】(3)至適pH及びpH安定性:本酵素の至適
pHは図5の曲線で表されるごとく pH 8.5付近であっ
た。本酵素を25℃においてそれぞれのpHで60分間処
理したときのpH安定性を図6に示した。図6より明らか
なように本酵素は pH 5.5〜9.5の間で安定であ
る。なお図5及び図6において、横軸はpH、縦軸は相対
活性(%)を示す。
【0038】(4)至適温度及び熱安定性:本酵素の至
適温度は図7の曲線で表されるごとく34℃に至適温度
を有している。本酵素を pH 8.0においてそれぞれの
温度で60分間処理したときの熱安定性を図8に示し
た。本酵素は26℃まで安定であったが50℃でも約7
0%の残存活性を示した。なお、図7及び図8におい
て、横軸は温度(℃)、縦軸は相対活性(%)を示す。
【0039】(5)分子量:本酵素の分子量はセファク
リルS−200(ファルマシア社製)を用いたゲルろ過
法により求めると約43000であった。
【0040】(6)等電点:ファルマライト( pH 3〜
10、ファルマシア社製)を用いた等電点電気泳動法に
より求めた本酵素の等電点は約3.8であった。
【0041】(7)金属イオンの影響:本酵素は表3に
示すように、Ag+ 、Hg2+、及びCu2+などにより強
力に阻害された。
【0042】
【表3】 表 3 金属イオン(1mM) 相対活性(%) ───────────────────────────── 無添加 100 Ag+ 0 Hg2+ 0 Cu2+ 0 Zn2+ 90 Ni2+ 94 Mn2+、Mg2+、Na+ 、Ca2+ 100
【0043】(8)km値:ラインウイバー−バーク
プロットにより本酵素のp−ニトロフェニル−α−L−
フコピラノシドに対するkm値を求めたところ0.04
7mMであった。
【0044】(9)酵素活性測定法:α−L−フコシダ
ーゼ活性の測定は次のようにして求めた。すなわち10
mMp−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド0.1
ml、100mMリン酸緩衝液( pH 8.5)1.3ml及び
適当に希釈した酵素液0.1ml、反応液量1.5mlで3
7℃、10分間反応させた後、0.25M Na2 CO
3の1.5mlを添加して反応を停止させ、405nmの吸
光度を測定する(O.D.サンプル)。別に対照として
酵素溶液の代りに蒸留水0.1mlを加え同様の操作によ
って吸光度を測定し(O.D.ブランク)、△O.D.
405 (O.D.サンプル−O.D.ブランク)を求め
た。α−L−フコシダーゼ活性は下記の計算式(数2)
によって求められる。
【0045】
【数2】 単位/ml=〔(△O.D.<O.D.サンプル−O.D.ブランク>×3.0 <ml>)/(17.8×10<分>×0.1<ml>×d)〕×df 17.8:p−ニトロフェノールのミリモル分子吸光係数
【0046】
【実施例】以下に本発明によるL−フコースデヒドロゲ
ナーゼの製造方法を実施例をもって示すが、本発明が以
下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。なお
%は他に特記せぬ限りw/v%である。
【0047】実施例1 L−フコース0.1%、ペプトン0.5%、KHPO
の0.3%及びMgSO,・7HOの0.05
%、pH7.0からなる培地100mlを分注して殺菌
(120℃、20分間)した500mlの三角フラスコ
にアルスロバクター オキシダンスF1〔微工研寄第
3674号(FERM P−3674)〕を接種し3
0℃で30時間培養したところ、この培養物中のL−フ
コースデヒドロゲナーゼ活性は1.1単位/1mlであ
った。
【0048】実施例2 アルスロバクター オキシダンスF1〔微工研寄第
674号(FERMP−3674)〕を酵母エキス
0.5%、ペプトン1.0%、KHPOの0.3%
及びMgSO・7HOの0.1%、pH7.0から
なる培地600mlを分注して殺菌(120℃、20分
間)した2リットルの三角フラスコに接種し、30℃で
24時間培養して種培養液とした。ペプトン0.5%、
KHPOの0.3%、MgSO・7HOの0.
1%、及び消泡剤(日本油脂社製CB−442)0.0
1%、pH7.0からなる培地14リットルを30リッ
トル容のジャーファーメンターに入れ、120℃で20
分間殺菌した。冷却後、別殺菌(120℃、20分間)
した3%L−フコース500ml及び上記の種培養液6
00mlを接種し、30℃で24時間、毎分10リット
ルの通気量と毎分300回転のかくはん速度の条件で培
養した。培養終了後、培養液を遠心分離して菌体を集
め、50mMリン酸緩衝液(pH8.0、以下の全操作
はpH8で行った)500mlに懸濁した後、超音波処
理で菌体を破砕し、この破砕液を遠心分離して上澄液5
40mlを得た。この上澄液のL−フコースデヒドロゲ
ナーゼ活性は、38.0単位/mlであった。この上澄
液にポリエチレンイミン(2%、pH7.5)25ml
を徐々に添加し、遠心分離をして上澄液を得た。この上
澄液をあらかじめ50mMリン酸緩衝液で緩衝化したD
EAE−セファロースCL−6B(ファルマシア社製)
のカラム(直径5.0cm×長さ10cm)に吸着さ
せ、吸着物を0mMから800mMの塩化ナトリウムで
グラジエント溶出して活性画分を集めた。次にこの活性
画分に、塩化ナトリウムを添加し4M濃度とした。これ
をあらかじめ4M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩
衝液で緩衝化したフェニルセファロースCL−4B(フ
ァルマシア社製)のカラム(直径2.5cm×長さ20
cm)に吸着させ、吸着物を3M塩化ナトリウム含有2
0mMリン酸緩衝液で洗浄後、1M塩化ナトリウム含有
20mMリン酸緩衝液で溶出し、活性画分を集めた。こ
の活性画分を限外ろ過により濃縮し、濃縮液をあらかじ
め100mMリン酸緩衝液で緩衝化したセファクリルS
−200(ファルマシア社製)のカラム(直径2.5c
m×長さ130cm)でゲルろ過を行い活性画分を集め
た。この酵素溶液の比活性は280(単位/mg.タン
パク質)であり、ポリアクリルアミドゲル電気泳動的に
ほぼ均一であった。以上の精製工程を表4及び表5に示
す。
【0049】
【表4】 表 4 ──────────────────────────────────── 工 程 総タンパク量(mg) 総活性(単位) ──────────────────────────────────── (1)菌体抽出液 38600 20500 (2)ポリエチレンイミン処理 27000 19700 (3)DEAE−セファロース CL−6B 324 16900 (4)フェニル−セファロース CL−4B 67.2 12300 (5)限外ろ過 60.2 12100 (6)セファクリルS−200 36.4 10200 ────────────────────────────────────
【表5】 表 5 ────────────────────────── 比活性(単位/mg) 収 率(%) ────────────────────────── (1) 0.531 100 (2) 0.730 96.0 (3) 52.1 82.5 (4) 183 60.1 (5) 201 59.2 (6) 280 49.8 ──────────────────────────
【0050】参考例1 実施例2に記載と同じ方法で同じ菌株を用い培養を行
い、同様の操作により菌体の超音波処理後の上澄液55
0mlを調製した。この上澄液のα−L−フコシダーゼ活
性は90単位/mlであった。この上澄液に2%のポリエ
チレンイミン( pH 7.5)を27ml加え生じた沈殿を
遠心分離により除去し上澄液を得た。この上澄液をあら
かじめ50mMリン酸緩衝液( pH 8.0)で緩衝化した
DEAE−セファロースCL−6B(ファルマシア社
製)のカラム(直径4.0cm×長さ10cm)に吸着さ
せ、吸着物を150mMリン酸緩衝液( pH 8.0)で洗
浄後、300mMリン酸緩衝液( pH 8.0)で溶出して
活性画分を集めた。次にこの活性画分を限外ろ過で脱塩
後、50mMリン酸緩衝液( pH 8.0)で緩衝化したD
EAE−セファロースCL−6Bのカラム(直径2cm×
長さ9cm)に再び吸着させ、上記と同様な方法で溶出し
て得た活性画分に塩化ナトリウムを添加し、4M濃度と
した。これをあらかじめ4M塩化ナトリウム含有20mM
リン酸緩衝液( pH 8.0)で緩衝化したフェニルセフ
ァロースCL−4B(ファルマシア社製)のカラム(直
径2.5cm×長さ10cm)に吸着させ、吸着物を4M塩
化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液( pH 8.0)で
洗浄後、3M塩化ナトリウム含有20mMリン酸緩衝液
( pH 8.0)で溶出し活性画分を集めた。この活性画
分をコロジオン膜で濃縮後、あらかじめ100mMリン酸
緩衝液(pH 8.0)で緩衝化したセファクリルS−2
00(ファルマシア社製)のカラム(直径3cm×120
cm)でゲルろ過を行い、得た活性画分にEDTAを1mM
濃度になるように加えて凍結乾燥し、精製酵素粉末を得
た。この粉末の比活性は60.3単位/mgであった。こ
の酵素粉末はポリアクリルアミドゲル電気泳動的に単一
であった。この精製工程を表6及び表7に示す。以上の
ように複合糖質の構造と機能の解明に有用なα−L−フ
コシダーゼを効率よく製造することができる。
【0051】
【表6】 表 6 ─────────────────────────────────── 工 程 総タンパク量(mg) 総活性(単位) ─────────────────────────────────── (1)菌体抽出液 38600 49500 (2)ポリエチレンイミン処理 27000 47600 (3)DEAE−セファロース CL−6B 4440 44800 (4)DEAE−セファロース CL−6B 2800 43700 (5)フェニルセファロース CL−4B 576 31200 (6)セファクリルS−200 435 26200 (7)凍結乾燥 426 25700 ───────────────────────────────────
【表7】 表 7 ────────────────────────── 比活性(単位/mg) 収 率(%) ────────────────────────── (1) 1.28 100 (2) 1.76 96.2 (3) 10.1 90.6 (4) 15.6 88.2 (5) 54.2 63.0 (6) 60.2 53.0 (7) 60.3 52.0 ──────────────────────────
【0052】
【発明の効果】本発明により、L−フコースの定量に有
用なL−フコースデヒドロゲナーゼの新たな工業的生産
に適した製造方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られるL−フコースデヒドロゲ
ナーゼのpHと活性の関係を表すグラフである。
【図2】温度と活性の関係を表すグラフである。
【図3】L−フコースデヒドロゲナーゼを30℃におい
てそれぞれのpHで60分間処理した後のpHと活性の関係
を表すグラフである。
【図4】pH 8.0においてそれぞれの温度で10分間
処理した後の温度と活性の関係を表すグラフである。
【図5】α−L−フコシダーゼのpHと活性の関係を表す
グラフである。
【図6】α−L−フコシダーゼを25℃においてそれぞ
れのpHで60分間処理した後のpHと活性の関係を表すグ
ラフである。
【図7】温度と活性の関係を表すグラフである。
【図8】pH 8.0においてそれぞれの温度で60分間
処理した後の温度と活性の関係を表すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日野 文嗣 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 平5−38285(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 9/04 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルスロバクター属に属するL−フコー
    スデヒドロゲナーゼ生産菌を培養し、培養物よりL−フ
    コースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とするL
    −フコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
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