JP2861613B2 - 流速ベクトルセンサ - Google Patents

流速ベクトルセンサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、流体モデル型の実験
における、あるいは溶融流体の鋳型内における流速ベク
トルを検知する流速ベクトルセンサに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、鋳型内における湯流れの状況を検
知する装置としては、例えば、特開昭60−33055
号公報に開示されたものがあり、これは図6に示すよう
に、鋳型11の注湯口19に近接する溶湯の上流部に、
コモン電極20、スタート電極21を設け、また鋳型1
1内に、複数個の検知電極22を分散して配置し、溶湯
が注湯口19から検知電極22に到着したとき、検知電
極22が導通することから、この溶湯の到着時間を計測
して鋳込空間16内の湯流れの状況を定量的に把握しよ
うとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来技術の湯流れ検知装置にあっては、湯流れ状況
検知に有効な情報は、検知点における溶湯の到着時間を
計測して溶湯流の遅速個所を知るだけであったから、各
検知点での流速と流動方向すなわち流速ベクトルを計測
することはできず、各検知点の流速ベクトルは、前記各
検知点の到着時間に基づいて鋳型全体の情報から推定す
るしかなく精度的に問題であった。例えば図4に示すよ
うな不規則な曲面Cをもつダイカスト鋳造部品の鋳型内
部のp、q、r、s点における流速ベクトルを求めるに
は、前記曲面に沿った幾何学的な位置関係を把握するこ
とが必要であり実際上は困難であった。本発明は、この
ような従来技術の問題点に着目してなされたもので、前
記曲面上の点における溶湯すなわち溶融流体の流速ベク
トルを精度よく計測するに好適な流速ベクトルセンサを
提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の流体ベクトルセンサは、導電性保護管内
に検知電極を有し、この検知電極は、所定の辺の長さを
もつ正三角形の3つの頂点に配置された3つの検知点
と、前記正三角形が同一方向を向くように規制する方向
規制手段、例えば、図1に示す合わせキー2とを備えて
いる。前記3つの検知点のうち最も速く流体の到着を検
知した検知点を検知起点として、他の2つの検知点への
流体の到達速度を求め、次に、前記検知起点を座標系の
原点とする局所座標系の速度成分を求めたのち、前記方
向規制手段(合わせキー2)による全体座標系に対する
局所座標系の傾斜角度θ(図3)から座標修正のための
演算処理により、前記局所座標系速度成分から前記流体
モデル型あるいは鋳型の全体座標系の2次元の速度成分
を確定する手段を備えたものである。また、3次元の速
度成分についても同様に、所定長の半径を有する球面体
上、若しくは、所定の辺の長さをもつ正四面体上の4つ
の定点に配置した検知点と、前記球面体、若しくは、正
四面体が同一方向を向くように規制する方向規制手段と
を有し、前記4つの検知点のうち最も速く流体の到着を
検知した検知点を検知起点として、他の3つの検知点へ
の流体の到達速度を求め、次いで、前記検知起点を座標
系の原点とする局所座標系の速度成分を求めたのち、前
記方向規制手段に基づいて、上記2次元の場合に準じて
座標修正のための演算処理により、前記局所座標系速度
成分から上記流体モデル型あるいは鋳型の全体座標系の
3次元の速度成分を確定する手段を備えるように構成し
たものである。
【0005】
【作用】上記の構成により、検知点が流体の到着を検知
することにより、流速ベクトルセンサの各検知点から局
所座標系に沿った流速ベクトルが計測演算される。すな
わち、最も早く流体の到着信号を受信した検知点を原点
とし、他の検知点との信号到着時間差から速度ベクトル
の大きさを求め、各ベクトルセンサの局所座標系に対す
る速度ベクトルを確定することは容易である。
【0006】
【実施例】以下、この発明を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る流速ベクトルセンサ8(以下単
にベクトルセンサ8と記す)の一実施例の全体構成を示
す斜視図である。
【0007】まず本実施例装置の構成を説明すると、本
実施例のベクトルセンサ8は、図1に示すように、3個
の検知電極1は導線を有し、管状に形成された導電性の
保護管3の内部に絶縁体プラグ4を介して固定されてい
る。絶縁体プラグ4は、例えば図示するように保護管3
と螺合して固定するのが好適である。検知電極1を保護
管3にセットし、所要の精度に加工され絶縁体4プラグ
によって棒状体に一体構成されたベクトルセンサ8は、
鋳型の全体座標系の中で指定された方向に向くように整
合させることができる。検知電極1は、一辺の長さが3
mmの正三角形を形成するように平面上に配置され、合
わせキー2の位置と前記正三角形の一頂点とが一致する
ように設定されているから、前記の指定された方向に向
くように整合させるに好適である。
【0008】このように構成されたベクトルセンサ8を
図2に示すように配置し、同図に示す形状を持つアクリ
ル型キャビティ9に装着し、食塩を添加することにより
導電性を付与させた水をゲート6から流速3m/sec
で射出し、0.1msecの感知精度を有する高速セン
サ記録装置を用いて検知時間計測データを収集し流速ベ
クトルを演算するものである。
【0009】次に本実施例の作用を説明する。図3は、
ベクトルセンサ8により流速ベクトルVを計測する場合
の測定原理を示すベクトル図である。本実施例ではベク
トルセンサ8の局所座標系は全体座標系に対してθ度だ
け傾いており、ベクトルセンサ8に組込まれる検知電極
1は3つの検知端子1a、1b、1cを有し、検知端子
1a、1b、1cが流体の到着を検知した時刻をそれぞ
れt1、t2、t3とし、t1<t2<t3、すなわち、検知
端子1aが最も速く流体の到着を検知したものと仮定し
ておく。因みに請求項1記載の検知点とは、例えば実施
例の検知電極1の検知端子1a、1b、1cを指すもの
である。ここで、 1a、1b、1c:検知端子(ただし1aを原点とす
る) t1、t2、t3:流体検知信号到着時刻 V:ベクトルセンサ8が検知した速度ベクトル V1:検知端子1aから検知端子1bへ向かう分速ベク
トル V2:検知端子1aから検知端子1cへ向かう分速ベク
トル Vx:全体座標系x軸方向の分速成分 Vy:全体座標系y軸方向の分速成分 Lx、Ly:センサの局所座標系 VLx:局所座標系Lx軸方向の分速成分 VLy:局所座標系Ly軸方向の分速成分とすると、分速
ベクトルV1、V2のなす角度は60°に設定されている
から、
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】上記(数5)からVx、Vyを求めることが
できる。すなわち、
【0016】
【数6】
【0017】
【数7】
【0018】上記演算により全体座標系の速度ベクトル
を確定することができる。
【0019】以上、上記の実施例のように、同一平面上
に正三角形を形成するように配設した検知電極1a、1
b、1cを備えたベクトルセンサ8を鋳造型内に配設す
ることにより、従来は計測が不可能であった不規則な曲
面を有する鋳型内の流速ベクトルを全体座標系に対して
一意的に求めることが可能となるものである。
【0020】上記実施例に示すように、本発明の流速ベ
クトルセンサ8は、下記の点でも実用的に好適な条件を
備えている。
【0021】(a)ベクトルセンサ8の検知電極1は流
速ベクトルの計算が容易なように正三角形上に配置され
ている。
【0022】(b)ベクトルセンサ8は全体座標系に対
する位置決めが容易な合わせキー2を備える一体の棒状
体である。
【0023】上記実施例に示すように、本発明は各ベク
トルセンサの配置が全体座標系に対する座標データとし
て得られている場合、速度ベクトルを全体座標系に対し
てプロットし、あるいは速度コンターを描くことは容易
であるから、理論的には複雑な3次元曲面へ拡張するこ
とも可能であって、例えば、図5に示すような球面S上
に検知電極1′の検知端子1′a、1′b、1′c、
1′dを配置したもの、または正四面体上に配置したも
のなどへの応用が可能である。
【0024】
【発明の効果】本発明の実施により、不規則な曲面をも
つ流体モデル型あるいはダイカスト鋳造部品の鋳型内部
の点における流速ベクトルを容易に計測することが可能
であって、溶湯の充填過程を詳細にかつ定量的に知るこ
とができると共に、特に3次元局面に沿って流動する流
体解析プログラムの解析結果の検証も容易に実施可能な
流速ベクトルセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る流速ベクトルセンサの一実施例を
示す斜視図である。
【図2】本発明に係る流速ベクトルセンサの一実施例の
アクリル型配置図である。
【図3】本発明の流速ベクトルセンサによる流速ベクト
ルの解析図である。
【図4】3次元曲面における流速ベクトルの関係を示す
図である。
【図5】本発明の拡張実施例におけるベクトルセンサの
配置を示す図である。
【図6】従来技術による湯流れ測定装置を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
1、1′…検知電極 1a、1b、1c…検知端子 1′a、1′b、1′c、1′d…検知端子 2…合わせキー 3…保護管 4…絶縁体プラグ 5…導線 6…ゲート 7…ビスケッ
ト 8…ベクトルセンサ 9…キャビテ
ィ 11…鋳型 12…注湯空
間 13…湯口 14…湯道 16…鋳込空間 19…注湯口 20…コモン電極 21…スター
ト電極 22…検知電極 23…導通検
出回路 24…時間測定装置 25…出力装

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性保護管内に検知電極を有し、流体モ
    デル型あるいは鋳型内に配設され、流体の流体速度を計
    測する流体ベクトルセンサであって前記検知電極は、 所定の辺長を有する正三角形の3つの頂点に配置した検
    知点と、 前記正三角形が同一方向を向くように規制する方向規制
    手段とを有し、 前記3つの検知点のうち最も速く流体の到着を検知した
    検知起点から他の2つの検知点への到達速度を求め、 前記検知起点を原点とする局所座標系による前記到達速
    度の速度成分を求めたのち、 前記方向規制手段に基づく座標修正演算処理により、前
    記局所座標系の速度成分から前記流体モデル型あるいは
    鋳型の全体座標系の2次元の速度成分を確定する手段を
    備える ことを特徴とする流速ベクトルセンサ。
  2. 【請求項2】導電性保護管内に検知電極を有し、流体モ
    デル型あるいは鋳型内に配設され、流体の流体速度を計
    測する流体ベクトルセンサであって、 前記検知電極は、 所定の半径を有する球面体上、若しくは、所定の辺長を
    有する正四面体上の4つの定点に配置した検知点と、 前記球面体、若しくは、正四面体が同一方向を向くよう
    に規制する方向規制手段とを有し、 前記4つの検知点のうち最も速く流体の到着を検知した
    検知起点から他の3つの検知点への到達速度を求め、 前記検知起点を原点とする局所座標系による前記到達速
    度の速度成分を求めたのち、 前記方向規制手段に基づく座標修正演算処理により、前
    記局所座標系の速度成分から前記流体モデル型あるいは
    鋳型の全体座標系の3次元の速度成分を確定する手段を
    備えることを特徴とする流速ベクトルセンサ。
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