JP2856780B2 - 磁気記録媒体とその記録方法 - Google Patents

磁気記録媒体とその記録方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は磁気記録媒体、とくに複製、改竄、偽造等を
防止する安全性の高い磁気記録媒体とその記録方法に関
する。
[従来技術] 近年、磁気カードはますますその用途を広げ、金券類
似の目的に使用されるまでに至っている。このため、偽
造等が困難な安全性ないし保護性(セキュリティ)の高
い保護機能を有する磁気カードが要望され、種々の提案
がなされている。例えば磁気記録媒体に光学的または電
気的な他機能を付加して複雑化するなどの方法は装置が
煩雑になり高価なものになる。一方、磁気特性の異なる
材料を混合したり、多層にするなどの方法は安全性が高
く、比較的安価な方式と考えられている。しかしこの方
法は最近の磁気記録再生装置、磁気測定器等の普及によ
り読取りが比較的容易になる欠点があり、必ずしも十分
でない。
[発明の目的] 本発明は情報の記録及び読取りが困難で、安全性の高
い磁気記録媒体を提供するものである。
[発明の概要] すなわち本発明は保磁力が室温で同一か極めて近いが
他の温度では十分に異った少なくとも2つの磁性材料を
用いた磁気記録媒体であり、通常の磁気測定では判別を
困難にし、さらに通常の磁気記録再生装置ではそれぞれ
の磁性材料への異なった磁気情報の記録を困難にする。
一方、異なった磁気情報の記録はそれぞれの磁性材料の
キュリー温度の差を利用して容易に行いうるようにす
る。
すなわち本発明は、 1)少なくとも2種類の異なる磁性体よりなり、室温で
の磁化曲線の微分曲線dM/dHが1つのピークであるか、
またはピークが2つ以上のときは隣接する2つのピーク
の間の谷または変曲点の高さが該2つのピークの高さの
平均値の1/2以上であり、かつ熱減磁曲線の微分曲線dM/
dTが2つの隣接ピークの間に谷を示し、該谷の高さが前
記2つのピークの高さの平均値の1/2以下となるような
磁性材料によって構成される磁気記録媒体に、室温より
も高い温度に加熱して前記少なくとも2種類の異なる磁
性体に別々の信号を記録したことを特徴とする記録済み
の磁気記録媒体、および、 2)少なくとも2種類の異なる磁性体よりなり、室温で
の磁化曲線の微分曲線dM/dHが1つのピークであるか、
またはピークが2つ以上のときは隣接する2つのピーク
の間の谷または変曲点の高さが該2つのピークの高さの
平均値の1/2以上であり、かつ熱減磁曲線の微分曲線dM/
dTが2つの隣接ピークの間に谷を示し、該谷の高さが前
記2つのピークの高さの平均値の1/2以下となるような
磁性材料によって構成される磁気記録媒体に、室温より
も高い温度に加熱して前記少なくとも2種類の異なる磁
性体に別々の信号を記録し、室温に戻すことを特徴とす
る磁気記録媒体の記録方法を提供する。
[発明の実施例] 図面にしたがって本発明を説明する。以下では2種の
磁性体より成る単一磁気記録層及び2種の磁性体を別々
の層にした2層式磁気記録層を有する磁気記録媒体につ
いて述べるが、2種以上の磁性体で1層以上の磁気記録
層を構成することも本発明に含まれる。第1図は本発明
の一実施例である磁気記録媒体の断面模型図である。基
体1上に2種類の磁性体からなる磁気記録層2、保護層
3が形成されている。第2図はもう一つの実施例である
磁気記録媒体の断面模型図であり、基体1上に磁気記録
層が二つの層2A、2Bに分離され、各々には異なる磁性体
が分散されている。磁性体は以下に示す磁気及び温度特
性を有することを要件とする。第1、2図のいずれの構
成によるにせよ、本発明の原理は同一である。以下にこ
れを述べる。第3図は保磁力のほぼ等しい、2種類の磁
性体よりなる磁気記録層2の磁化Mと磁化の微分dM/dH
を磁界Hに対して表したものであり、この場合保磁力の
分布を示すと考えられる微分曲線にはただ一つのピーク
が観察される。第4図および第5図は保磁力の若干異な
る2種類の磁性体よりなる磁気記録層2のMとdM/dHの
曲線を磁界Hに対して表したものであり、第4図では2
つのピークの間に谷が、また第5図は変曲点が現れる場
合を示したものである。第4図における2つのピークの
高さをそれぞれh1、h2、谷の高さをh3とすると h3<1/4・(h1+h2) (1) となる場合には磁気記録媒体の記録電流特性は第6図に
示すような曲線となり、記録電流i1、i2を用いることに
より、異なった磁性体に、それぞれ異なった磁気情報が
記録可能になってしまう。一方、第3図のようにピーク
が一つであるかまたは、 h3≧1/4・(h1+h2) (2) となる場合には第7図に示すようにこれとは逆に磁気情
報を分離して異なった磁性体に記録することは困難とな
る。磁気記録再生装置が一般化してくると、磁気測定器
により判別された磁性体の保磁力の差は単に記録電流を
変更するだけで磁気情報を分離して記録可能となるか
ら、十分な安全性は確保できなくなる。よって本発明で
はh3≧1/4・(h1+h2)の条件を満たす磁性体を用い
る。次に本発明は通常の磁気記録再生装置では異なった
磁性体へ異なった磁気情報記録を不可能にし、熱磁気記
録を併用することにより初めてこれを可能とする磁気記
録媒体とするために、熱特性が前記2種の磁性体で互に
異なるような材料から選択する。すなわち室温でほぼ同
一保磁力を有するが、そのキュリー温度が互いに異なる
磁性体におけるこのキュリー温度の差を利用して磁気記
録媒体を加熱し、その温度における保磁力の差を利用し
て、異なった情報を記録する。第8図は2種類のキュリ
ー温度の異なる磁性体を第1図及び第2図の構成で用い
た磁気記録媒体の磁化Mの熱減磁曲線およびその微分曲
線dM/dTを示したものである。キュリー温度付近では保
磁力は零に近ずくから、2種類の磁性体のキュリー温度
の差が大きい場合は図中の温度t1で、微少な記録電流に
より一方の磁性体にのみ記録することが可能である。第
9図は2種類の磁性体のキュリー温度の差が小さい場合
の熱減磁曲線およびその微分曲線を示したものである。
この場合、2つピークの間に谷を生じるが、さらにキュ
リー温度の差が小さくなると谷は消えて、変曲点のみが
現われる。いま2つのピークの高さをそれぞれh4、h5
し、谷の高さをh6としたとき、 h6≦1/4・(h4+h5) (3) となる場合には、それぞれの磁性体に分離して磁気情報
を記録することが可能である。よって本発明で用いる磁
性体はこの条件を満たす必要がある。これに対し、 h6>1/4・(h4+h5) (4) の場合には保磁力の差が小さいため、分離して磁気情報
を記録することができない。まとめると、本発明では構
成上式(2)、(3)を満足させる2種以上の磁性材料
を用いる。
一方、磁性材料のキュリー温度が高すぎる場合には熱
により基体の変形が起こるから適切な温度が必要であ
る。汎用のプラスチック基体を利用するには少なくとも
1つの磁性材料のキュリー温度は200℃以下であること
が好ましい。具体的実施例によりさらに詳細に説明す
る。
実施例1 125μm厚ポリイミドフィルム(デュポン社製カプト
ン)上に下記に示す塗料組成物Aを乾燥後約10μmとな
るよう塗布、乾燥した後60℃、48時間保存し硬化させ
る。
組成物A Co被着γFe2O3 100重量部 (保磁力7000e) 界面活性剤A 2 フェノキシ樹脂 15 ウレタン樹脂 15 イソシアネート樹脂 6 溶剤 250 つぎに下記に示す塗料組成物Bを上記で得られた塗料
組成物Aの塗膜上に乾燥後約5μmとなるよう塗布、乾
燥し、60℃、48時間保存、硬化させる。この上に約2μ
mの保護層を形成し、試料1を得た。
塗料組成物B CrO2(保磁力7200e) 100重量部 界面活性剤B 2 フェノキシ樹脂 15 ウレタン樹脂 15 イソシアネート樹脂 6 溶剤 250 実施例2 125μm厚ポリイミドフィルム(デュポン社製カプト
ン)上に下記に示す塗料組成物Aを乾燥後約8μmとな
るよう塗布、乾燥しさらに約2μmの保護層を塗布し、
試料2を得た。
塗料組成物C Co被着γFe2O3 50重量部 (保磁力7000e) CrO2(保磁力7200e) 50 界面活性剤A 2 界面活性剤B 2 フェノキシ樹脂 15 ウレタン樹脂 15 イソシアネート樹脂 6 溶剤 250 実施例1および実施例2で得られた試料1および試料
2を磁気測定したところ下表のように示すようにただ1
つのピークよりなる微分曲線が得られた。
さらに試料1および試料2に用いた2種類の磁性材料
を同比率に混合して熱減磁特性を測定したところ第8図
とほぼ同様の曲線が観察され、この微分曲線は全く重な
らない2つのピークが得られた。
つぎに試料1、2を用いて25℃で磁気記録再生特性を
測定した。ヘッドギャップ30μmの磁気ヘッドを用い、
記録密度210FCIで記録電流特性を測定し、第10図を得
た。この図は2種類の磁性材料にそれぞれ異なった磁気
情報を記録できる最適電流は存在しないことを示してい
る。そこで試料1を約120℃に加熱しながら記録電流5mA
で記録し、室温まで冷却して再生したところ4.6Vの出力
を得た。これはCrO2のみが磁化されたことによる。すな
わち室温で同一の保磁力であっても磁気情報を一方の磁
性材料にのみ記録可能である。
つぎに記録電流40mA、記録密度210FCIで試料1を記録
再生したところ8.0Vの出力を得た。これを約120℃に加
熱しながら再生したところ3.0Vの出力を得た。これはCr
O2が消磁されCo被着γFe2O3の磁化による出力のみが検
出されたためである。これらの操作を用いれば、異なっ
た磁気情報をそれぞれの磁性材料に記録することが可能
である。例えばCo被着γFe2O3層に真のデータを、CrO2
層に新のデータとは異なる情報を記録すれば上記操作に
より真のデータを読み取ることが可能となる。
[発明の効果] 磁気記録媒体に2種の磁性体に別々の記録を行った場
合に、本発明の場合には常温で両者を区別して読取るこ
とは不可能である。これに対して、加熱しながら読み取
ると一方の記録は消去されもう他方の記録が読み取り可
能となる。従って、この記録媒体は通常の記録再生装置
では区別して記録することもできないし、真のデータを
読取ることもできず安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例による磁気記録媒体の断面
図、第2図は本発明の他の実施例による磁気記録媒体の
断面図、第3図はほぼ保磁力が等しい2種の磁性体を有
する第1図または第2図の記録媒体の総合的な磁化特性
Aと微分磁化特性Bを示すグラフ、第4図は保磁力が若
干ちがう2種の磁性体を有する第1図または第2図の磁
気記録媒体の特性の同様なグラフ、第5図は第4図の場
合よりも保磁力が接近した場合の同様なグラフ、第6図
は式(1)を満足する記録媒体の記録特性を表わすグラ
フ、第7図は式(2)を満足する記録媒体の記録特性を
表わすグラフ、第8図は式(3)を満足する磁気記録媒
体の磁化とその微分の温度依存性を表わすグラフ、第9
図は2つの微分ピークが接近している場合の同様なグラ
フ、第10図は本発明の実施例による25℃での記録特性を
示すグラフ、及び第11図は本発明の実施例による120℃
における記録特性を示すグラフである。 1:基体 2:磁気記録層 3:保護層
フロントページの続き (72)発明者 石黒 銀矢 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 実開 平1−113823(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/706 G11B 5/80 G11B 5/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも2種類の異なる磁性体よりな
    り、室温での磁化曲線の微分曲線dM/dHが1つのピーク
    であるか、またはピークが2つ以上のときは隣接する2
    つのピークの間の谷または変曲点の高さが該2つのピー
    クの高さの平均値の1/2以上であり、かつ熱減磁曲線の
    微分曲線dM/dTが2つの隣接ピークの間に谷を示し、該
    谷の高さが前記2つのピークの高さの平均値の1/2以下
    となるような磁性材料によって構成される磁気記録媒体
    に、室温よりも高い温度に加熱して前記少なくとも2種
    類の異なる磁性体に別々の信号を記録したことを特徴と
    する記録済み磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】1つの層に1つ、または2つ以上の磁性材
    料を含む複数層よりなる特許請求の範囲第1項記載の記
    録済み磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】少なくとも1つの磁性材料のキュリー温度
    が200℃以下である特許請求の範囲第1項または第2項
    記載の記録済み磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】少なくとも2種類の異なる磁性体よりな
    り、室温での磁化曲線の微分曲線dM/dHが1つのピーク
    であるか、またはピークが2つ以上のときは隣接する2
    つのピークの間の谷または変曲点の高さが該2つのピー
    クの高さの平均値の1/2以上であり、かつ熱減磁曲線の
    微分曲線dM/dTが2つの隣接ピークの間に谷を示し、該
    谷の高さが前記2つのピークの高さの平均値の1/2以下
    となるような磁性材料によって構成される磁気記録媒体
    に、室温よりも高い温度に加熱して前記少なくとも2種
    類の異なる磁性体に別々の信号を記録し、室温に戻すこ
    とを特徴とする磁気記録媒体の記録方法。
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