JP2853879B2 - 卵食品 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、卵を調理した食品に関し、詳しくは、ゆで
卵を破砕及び／又は裏ごしして、ケーシングに充填した
食品に関する。

「従来の技術」 ゆで卵を調理した食品として、にしき卵、吹き寄せ
卵、タルト卵等と称される食品が知られている。これら
は、ゆで卵の白身と黄身とを別々に破砕又は裏ごしし、
成型して製造されるが、もろくて形がくずれやすい。に
しき卵は、破砕又は裏ごしされたゆで卵を調味した後、
流し箱と称する四角型の金箱に白身と黄身とが層状にな
るように充填するか、あるいは、巻きすまたは和紙の上
に白身と黄身とを所望の位置に配置した後、巻き込んだ
ものを、蒸すことにより得られる。

この場合、白身と黄身との配置の仕方により、例え
ば、第２図に示されるように、白身21と、黄身22とが二
層になったにしき卵20、第３図に示されるように、白身
21、21と、黄身22とが三層になったにしき卵20、第４図
に示されるように、白身21と、黄身22とが渦巻状になっ
たタルト卵20等、種々の形状のものがあり、その形状に
よって名称が異なっている。

にしき卵等は、惣菜または菓子として供されており、
調理方法が上記のように手数がかかり、また、白身の白
色と、黄身の黄色との配色が美しいことから、高級品と
され、もてなし料理、おせち料理等に用いられることが
多い。にしき卵等は、柔らかく、ふっくらと仕上げられ
たものが好ましいとされている。

「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、従来のにしき卵等は、柔らかく、ふっ
くらと仕上げられているために、傷が付きやすく、所望
の大きさに切ったり、箸やフォークで持ち上げたりする
場合に、割れたり、くずれたりしやすい。また、ゆで卵
を裏ごししたものを成形してあるので、内部に多数の空
隙を有し、そのため、保存時に乾燥しやすく、風味が飛
散しやすく、更に腐敗もしやすい。

したがって、本発明の目的は、にしき卵等の好ましい
風味、白色と黄色との美しい配色等を損なうことなく、
割れたり、くずれたりしにくく、乾燥を防止し、長期保
存性に優れ、更に、取り出し易い卵食品を提供すること
にある。

「課題を解決するための手段」 上記目的を達成するため、本発明の卵食品の一つは、
破砕及び／又は裏ごしされたゆで卵の白身及び／又は黄
身が、ゴム製の収縮性のケーシングに充填されているこ
とを特徴とする。

本発明の卵食品のもう一つは、破砕及び／又は裏ごし
されたゆで卵の白身及び／又は黄身が、熱収縮性のケー
シングに充填されていることを特徴とする。

以下、本発明の卵食品について、好ましい態様を挙げ
ながら、更に詳細に説明する。

本発明において、ゆで卵は、卵を殻ごと茹でた普通の
ものを用いる。

ゆで卵を調理する方法は、にしき卵等を調理する方法
と同様でよい。

すなわち、まず、ゆで卵を白身と黄身とに分離し、別
々に破砕及び／又は裏ごしし、必要に応じて調味する。
ただし、白身と黄身を一緒に破砕及び／又は裏ごしして
混合してもよい。

調味料としては、砂糖または蜂蜜と、塩とが好ましく
用いられ、必要に応じて山芋、白餡、はんぺん、上新
粉、化学調味料等を加えてもよく、更に、海草、たらこ
等を加えて、味や風味だけでなく、彩りを変えることも
できる。また、調味料の添加量は、卵の白身、黄身に対
して、それぞれ、砂糖または蜂蜜が20〜30重量％、塩が
0.2〜３重量％が好ましい。

ただし、本発明では、調味料を添加せずに卵の白身及
び／又は黄身だけを用いてもよい。調味料を用いない場
合には更に結着しにくくなるので、卵だけを粉砕して固
めた製品は、これまでに知られていない。本発明では、
卵だけを用いても、後述するように収縮性のケーシング
に充填することによって、結着が可能となる。

本発明においては、上記のようにして調理された白身
及び／又は黄身を、収縮性のケーシングに充填する。収
縮性のケーシングとしては、ゴム製のケーシングや、熱
収縮性のケーシングなどが好ましく採用される。

ゴム製のケーシングとしては、ラテックス、天然ゴム
等の材質からなるものが用いられ、卵を充填することに
より弾力性をもって風船状に伸び、かつ、食品としての
安全性に悪影響を与えないものが好ましい。例えば、玉
羊羹に用いられている、楊枝でつつくと破裂して中身が
取り出せるゴム風船等が好ましい。

また、熱収縮性のケーシングとしては、熱収縮性を有
する合成樹脂フィルム、可食性フィルムなどが用いられ
るが、特にコラーゲンフィルムなどの可食性フィルムが
好ましい。

また、ケーシングの形状は、通常のゴム風船のよう
に、膨らますことにより球状になるものが好ましいが、
棒状、その他の形状になるものでもよい。ここでいう球
状とは、真球のみでなく、卵型等であってもよい。

なお、ケーシングの大きさは、白身及び／又は黄身を
充填した状態で、直径１〜5cmが食べ易さの点から好ま
しい。

このケーシングは、充填する卵の白身と黄身の美しい
配色が目視できるように透明なものが好ましいが、その
表面には、例えば正月用、お祝い用に「寿」の文字を印
刷しておくなど、必要に応じた模様または文字を印刷し
ておいてもよい。

上記ケーシングに、前記のように裏ごしして調味した
白身及び／又は黄身を充填する。この充填装置として
は、例えば自動充填結索機「JB−R1」（商品名、備南工
業株式会社製）など公知の装置を用いることができる。

白身及び／又は黄身の充填方法は、例えば、白身を充
填した後、黄身を充填する方法、白身と黄身とがまだら
状になるように混合したものを充填する方法、白身と黄
身とが所望の模様を形成するように充填する方法、ある
いは白身のみ、または黄身のみ充填する方法等、所望に
応じた方法で充填できる。

このようにしてケーシングに白身及び／又は黄身は黄
身を充填し終ったあと、ケーシングの充填口を、中に空
気が残らないように密閉する。

本発明においては、このまま卵食品として用いること
もできるが、好ましくは、更に加熱処理して結着力を高
め、保存性を向上させる。加熱処理は、例えば、蒸煮、
湯中浸漬等により、85℃程度で、５分間〜１時間行なう
ことが好ましい。熱収縮性のケーシングの場合には、こ
の加熱処理においてケーシングが収縮し、ゆで卵に結着
力を付与する。

本発明の卵食品は、ケーシングがゴム製の場合には、
爪楊枝等で表面を突くことによりケーシングが破裂し
て、内部の卵食品を取り出すことができる。また、ケー
シングが可食性の場合には、そのまま食べることができ
る。

なお、本発明の卵食品は、にしき卵のような食品に限
らず、ゆで卵をそのまま破砕してケーシングに充填した
り、エビ、カニ、白身魚などの魚介類や肉類などを混合
してケーシングに充填した食品であってもよい。

「作用」 本発明の卵食品は、例えばゴム製のケーシングに充填
されている場合には、ゴムの弾力性により均一に白身及
び／又は黄身を加圧し、破砕又は裏ごしされた白身及び
／又は黄身の粒子を結着させることができ、白身及び／
又は黄身の充填量を調節することにより、所望の硬さの
卵食品にすることができる。また、熱収縮性のケーシン
グに充填されている場合には、加熱処理したときにケー
シングが収縮し、破砕又は裏ごしされた白身及び／又は
黄身を加圧し、白身及び／又は黄身の粒子を結着させる
ことができる。そのため、ケーシングから取出した後、
箸やフォークで持ち上げるとき、あるいは適当な大きさ
に切るとき、くずれてしまうのを防止できる。

また、ケーシング内に密閉されているので、長期間保
存しても、乾燥したり、風味が飛散したり、外部から細
菌が侵入して腐敗したりすることがなく、更に、保存、
運搬中に割れたり、くずれたりすることが少なく、従来
のにしき卵等より、商品としての取り扱いが容易にな
る。

更に、ゴム製のケーシングに充填された場合には、爪
楊枝等で表面を突くだけで、ケーシングを破裂して除去
することができるので、適当な大きさのケーシングに充
填すれば、従来のにしき卵等のように所望の大きさに切
り分けたりする煩雑さもなくなる。

また、ケーシングに充填した形で取り出すことができ
るので、にしき卵等と同様の風味でありながら、所定形
状に美しく成形された、目新しい形の卵食品を得ること
ができる。

ケーシングの表面には、文字や模様を施すことがで
き、ケーシングごと皿等の容器に盛り付けることができ
るので、おせち料理、もてなし料理等として、より好ま
しいものになる。

更に、可食性のケーシングに充填された場合には、そ
のまま食べることができ、形くずれの問題など全く起こ
らない。

「実施例」 実施例１ 第１図には、本発明の卵食品の一実施例の断面図が示
されている。

この卵食品１は、裏ごしされ、調味された白身11と、
裏ごしされ、調味された黄身12とが、ゴム製の球状のケ
ーシング13に充填され、密封されている。

この卵食品は、次のようにして得られた。

まず、卵10個を、茹でて、固ゆで卵にした後、白身と
黄身を別々にし、別々に裏ごしする。

次いで、砂糖を、白身に40g、黄身に45g入れ、塩を、
白身に1.5g、黄身に1.5g加えて軽く混ぜる。

風船状のゴム製のケーシング13に、自動充填結索機
「JB−R1」（商品名、備南工業株式会社製）を用いて、
上記のようにして得られた白身11及び黄身12を２層にし
て充填し封止して、直径3cmのほぼ球形の卵食品１と
し、これを85℃の湯中に、30分間浸漬して加熱処理し
た。

この卵食品１のケーシング13を、爪楊枝の先で突いて
破裂させ、中の卵食品を取り出して、箸で持ち上げたと
ころ、割れたり、崩れたりすることなく、球状のままで
あった。

また、この卵食品は、半球が白色で、半球が黄色であ
って、美しく、新鮮な外観であり、更に、これを試食し
たところ、従来のにしき卵等と同様な味、風味であっ
た。

実施例２ 実施例１と同様に処理した裏ごしされ、調味されたゆ
で卵の白身と黄身とを軽く混合し、実施例１と同様のケ
ーシングの表面に、寿の文字を施したケーシングに、実
施例１と同様の充填結索機を用いて充填し封止し、85℃
で、40分間蒸煮して、直径3cmの球状の卵食品を得た。

この卵食品は、白身と黄身とがまだら状の模様をな
し、表面に寿の文字が施されていて、正月のおせち料理
や、結婚式のもてなし料理にふさわしいものであった。

また、この卵食品のケーシングを、爪楊枝の先で突い
たところ、ケーシングが簡単に破裂して、球状の卵食品
を容易に取り出すことができた。

更に、この卵食品を、箸で持ち運んでも壊れてしまう
ことなく、またこれを試食したところ、従来のにしき卵
等と同様のふっくらした風味、味であった。

実施例３ ゆで卵をミキサーで破砕し、少量の塩を添加混合して
調味し、これをコラーゲンからなる可食性ケーシングに
ソーセージ用のスタッフファーで充填して封止した。こ
れを85℃の湯中に、30分間浸漬して加熱処理した。

こうして得られた卵食品は、ソーセージのような形状
をなし、マヨネーズなどの調味料とあえてそのまま食べ
ることができた。

「発明の効果」 以上説明したように、本発明の卵食品は、従来のにし
き卵等の味、風味を損なうことなく、乾燥を防止し、風
味の飛散を防止し、腐敗を防止することができる。

また、従来のにしき卵等の割れやすさ、崩れやすさ等
の問題を解決し、ケーシングに充填したままの状態で運
搬、保存することができ、取り扱いが容易であり、ケー
シングから取り出した後、箸等で持ち上げてもこわれに
くい。

更に、ケーシングからも取り出しやすく、従来のにし
き卵等に比べて形状も斬新である。

加えて、ケーシングの表面に文字や模様を施すことこ
とにより、おせち料理、もてなし料理等として、よりふ
さわしくなる。

また、可食性のケーシングに充填した場合には、その
まま食べたり、ほぐしてマヨネーズなどの調味料とあえ
たり、サラダトッピングとしても使用できるなど、種々
の用途に手軽に利用できて便利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す断面図、第２図は従来
のにしき卵の一例を示す斜視図、第３図は従来のにしき
卵の他の例を示す斜視図、第４図は従来のタルト卵の一
例を示す斜視図である。 図中、１は卵食品、11は裏ごしされ、調味されたゆで卵
の白身、12は裏ごしされ、調味されたゆで卵の黄身、13
はゴム製の球状のケーシングである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−272954（ＪＰ，Ａ) 実開 昭64−17196（ＪＰ，Ｕ) 「完本料理大事典」第21版（昭和52年 12月10日）主婦と生活社編、発行ｐ. 289 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A23L 1/32

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】破砕及び／又は裏ごしされたゆで卵の白身
   及び／又は黄身が、ゴム製の収縮性のケーシングに充填
   されていることを特徴とする卵食品。
2. 【請求項２】破砕及び／又は裏ごしされたゆで卵の白身
   及び／又は黄身が、熱収縮性のケーシングに充填されて
   いることを特徴とする卵食品。
3. 【請求項３】前記ゆで卵の白身及び／又は黄身に調味料
   が混合されている請求項１又は２記載の卵食品。
4. 【請求項４】前記白身と前記黄身とが別々の相をなして
   前記ケーシングに充填されている請求項１〜３のいずれ
   か１つに記載の卵食品。
5. 【請求項５】前記ケーシングが可食性のケーシングであ
   る請求項２記載の卵食品。