JP2852312B2 - 大径角形鋼管の熱処理工法 - Google Patents

大径角形鋼管の熱処理工法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、既成の大径角形鋼管の
熱処理工法にかかり、より詳しくは、帯鋼板または一枚
板鋼板を、冷間塑性加工により折曲げ、その長手側縁継
目を突合わせ溶接して規格どおりの大径角形鋼管を成形
した後、これを熱処理装置に装入して、前記鋼管素材の
冷間加工に基づき生じた残留応力、鋼材の加工硬化、特
に折曲げコーナーR部鋼材の劣化に対する材質改善を目
的として熱処理を施すことにより、局部材質の靭性の劣
化を改善し、残留応力を軽減することにより、均一で高
品質な厚肉大径角形鋼管を製造するための大径角形鋼管
の熱処理工法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄骨構造物の柱材(コラム)として需要
が伸びている厚肉大径角形鋼管の量産方法は、従来、次
に述べるような工法が実施されている。 (1)連続成形法 熱間圧延コイルをレベラーに掛けフラットな帯鋼板に
し、その両側縁の幅決めをする。また、必要に応じ、開
先をとる。 前記帯鋼板を、ブレークダウン、クラスター、フィン
パススタンド等の加工段を通して搬送し、その間、該鋼
板を順次、冷間塑性変形して、その直角断面を円形に近
い形状に成形し、 あるいは、一枚鋼板をUOプレス成形法により、冷間
塑性変形して円形に近い形状に成形した後、
【0003】その継目を高周波溶接法または電弧溶接
法など溶接手段を利用して溶接し、丸鋼管を形成する。 前記丸鋼管の溶接熱を徐冷してから、サイザー、スケ
アリングスタンド、タークスヘッド等の冷間塑性加工に
よって同鋼管断面を角形に変形し、大径角形鋼管を形成
する。 (2)個別成形法 一枚鋼板を、冷間プレス加工により、その長手軸方向
に並行して複数回、それぞれ、略、90°近くに曲げ、 前記鋼板の長手軸方向直角断面を、略、一部開口した
五角形近似形状に成形する。または、同断面を、略、コ
字形断面形状に成形する。
【0004】前記五角形近似鋼材の両端面相互を溶接
してつなぎ、長手軸方向に連続した前記鋼管を形成した
後、これをスクイズロールに装入して、その断面を冷間
塑性加工により正規の角形形状に成形しつつ高周波また
は電弧溶接などの溶接法を適用して、鋼材の長手軸方向
縁の継目を突合せ溶接し、 または、前記コ字形鋼材を一対向き合わせて角形近似
断面鋼管状に形成し、相互の脚端を突合せ溶接して六角
形鋼管とし、その長手軸方向前後端面を互いに溶接をし
てつなぎ、軸方向に連続した前記鋼管を形成して、 これを角形成形ロールに装入し、冷間塑性加工によ
り、その断面を規格どおりの角形鋼管形状に成形する。
【0005】その後、鋼管の端面溶接部を切断して、
規格長の大径角形鋼管をつくる。上述、従来公知の成形
工法においては、いずれの場合にも角形鋼管コーナーR
部成形のために平坦ないし円弧状曲面の厚肉鋼板を成形
ロール、プレス加工などの冷間塑性加工により、略、90
゜折曲げる工程が含まれている。ところで、厚肉鋼板を
冷間で、略、90゜曲げ加工をした場合、前記コーナーR
部における鋼板断面の中立面を境にして、内外側素材に
引張り力または圧縮力が働きながら変形が行われるた
め、鋼板の塑性変形が著しく進み、変形個所、特にコー
ナーR部材質の機械的特性が劣化し、脆性破壊を生じる
原因となる。たとえば、鋼管コーナーR部鋼材は、冷間
折曲げ加工に基づく当該材質の歪み硬化、靭性の低下、
高い残留応力などが相俟って、当該鋼材には冬期低温時
に施す溶接加工に基づく溶接割れ、溶融亜鉛メッキ施工
時の割れ、などが発生する場合がある。また、これらの
割れの存在、母材の微小欠陥に基づき、低温時の使用中
に厚肉鋼板に大負荷が働いたとき、同鋼板に脆性破壊が
生じるおそれがある。
【0006】この種の大径角形鋼管を柱材として使用す
る鉄骨構造物、建築物等は一般に、一度施工した後は、
長期にわたり当該構造物に加えられた所定の重量を安全
に支承することが要求され、しかも、これらの柱材は原
則的に交換・補修が可能でない、または極めて困難とい
った状態で施工されている場合が多い。殊に最近の建築
物は、高層建築が主流を占め、また、各部屋毎に冷暖房
装置を設備するとか、OA機器、電算機の類が設置され
るなど、建物に付帯する設備重量が増加する傾向にある
ため、対策として厚肉大径角形鋼管を柱材として施工す
るケースが増加する傾向があるので、前記冷間成形厚肉
鋼管の使用により生じる、上述のような問題点は、ます
ます無視することができない状況になっている。
【0007】このような事情に鑑み、冷間塑性加工によ
る鋼管成形時の材質の劣化が、改めて問題視されてい
る。そこで、近来、充分な靭性を備え、残留応力の少な
いコーナーR部を形成した鋼材よりなる高品質の角形鋼
管の提供が需要者層から要望されるようになってきた。
市場に流通している厚肉大径角形鋼管に内在する、この
種の材質的問題点を解決するために、メーカー側では、 既製の丸鋼管、シームレスパイプなどを、油、ガス等
の化石燃料または電気エネルギーを熱源として加熱し、
その鋼管温度が低下する前に複数段の角形成形ロールを
通して成形し、同断面を角形形状に加工することを提案
している。上記工法によるときは、製品の品質は良好で
あるが、断面成形時に鋼管の両端部が形状不良となって
材料の歩留りが悪いとか、加熱、冷却時、鋼管に不均一
熱歪みが生じるのを無視できないとか、鋼管を一本宛加
工するので生産性が低いとかいった問題点がある。ま
た、鋼管全体を高温加熱するから、焼き鈍ましコストが
かさむ。
【0008】別に、既成の大径角形鋼管を焼鈍炉に入
れ、鋼材の残留応力が略、除去される程度まで全体的に
加熱し、コーナーR部材質の靭性を改善した後、徐冷す
る工法も知られている。この場合にも、上記同様の問題
点があり得る。 あるいは、熱間圧延コイルをレベラーに掛けて帯鋼板
とし、成形ロールスタンドおよび電弧溶接、高周波溶接
装置などを通し、冷間塑性加工により前記鋼板を丸鋼管
に成形した後、同鋼管を電気エネルギーまたはガス、油
等の化石燃料を用いて加熱し、その温度が冷えないうち
に複数段の角形成形ロール装置を通して鋼管断面を熱間
で角形形状に成形した後、徐冷し、大径角形鋼管を製造
する(特願平2−180497号参照)工法も考えられ
ている。
【0009】上述、工法は、鋼管加熱時の熱的不均一に
基づく成形断面の不良、特に冷却時における鋼材の温度
分布の不均一による変形歪が問題であり、これを均一温
度分布にするための温度管理がむずかしく、また、冷却
ゾーンを充分長く採り、鋼管を徐冷する必要がある。さ
らに、成形鋼管を均一徐冷しようとしても丸鋼管と異な
り、角形鋼管では冷却時に、冷媒ガスの熱気流が鋼管コ
ーナーR部で乱れ、鋼管断面を均一に冷却することが困
難である。そして、一旦、鋼管に変形が生じると、その
変形を矯正することは角形鋼管の場合、非常に難しい。
また、製造ライン中に、化石燃料を使用する加熱炉を設
備する場合は、ラインの中途に100 m〜150 mのスペー
スが必要になり、工場立地の選定が困難になるとか、設
備投資額が予想以上に膨らむおそれがある。
【00010】加えて、ガス、油等の化石燃料による加
熱は、熱源を鋼管の内側に入れることができないため、
鋼材を均一に加熱することが困難で、温度管理の面で問
題があり、これが、鋼管断面の成形不具合、歪みの発生
に関係し、結局、高品質の製品が得られない場合もあり
得る。一方、電気エネルギーを利用した加熱装置は、加
熱炉のためのスペースが小さくて済み、鋼管断面の均一
加熱並びに加熱温度の管理を徹底させる利点があるもの
の、極めて大容量の電力が必要で、加熱コストが高くか
かる上に、立地条件によっては必要とする大容量の電力
の入手が困難である場合がある。等々の技術的問題点が
あることが知られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明工法は、上述し
たような事情を背景にして開発されたもので、鋼管コー
ナーR部材質の機械的特性を改善すると共に、残留応力
を許容限度以下にし、鋼材を均一、かつ、安定化させた
高品質な大径角形鋼管を製造する熱処理工法を提供する
ことを目的とする。また、本発明工法の別の目的は、従
来公知の熱処理工法を利用して、均一な材質よりなる角
形鋼管を成形する方法に内在する上述問題点を、可及的
に解決する新規な大径角形鋼管の比較的に経済的な熱処
理工法を開発することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の目的を
達成するために、以下に述べるとおりの各構成要件を具
備する。 (1) 帯鋼板または一枚鋼板を、冷間プレス加工また
は/および冷間ロール成形により折曲げ、その直角断面
を近似角形とした後、その長手軸方向開口縁を突合せ溶
接して形成した大径角形鋼管の直角周面に対し、その周
辺鋼材を均一に加熱すると共に、各コーナーR部を中央
にし、前記R部終端から両側に少なくとも、素材板厚×
1.0の幅の範囲内で周辺温度よりも150 ℃内外、高温
度に加熱し、その上限温度を略、650 ℃程度としたの
ち、炉冷または空冷により冷却して鋼管の材質の熱処理
・調質をすることを特徴とする大径角形鋼管の熱処理工
法。
【0013】
【作用】市場に流通している大径角形鋼管について問題
視されている材質的欠陥は、鋼管成形工程中の冷間塑性
変形に基づく厚肉鋼管コーナーR部材質の靭性の低下、
残留応力の増加等、局部材質の劣化による構造材の弱体
化である。 (1)上述のような事情に鑑み、本発明方法では、 冷間塑性変形により規格どおりに成形した大径角形鋼
管について、その長手方向直角断面内で、特にそのコー
ナーR部付近のみを予熱する一方、断面全体を均一に加
熱することによって、コーナーR部付近を鋼材のA1
態点またはA3 変態点近くまで均等に局部加熱すること
ができる加熱装置の中に、同鋼管を長手軸方向に沿って
移動させる。もしくは、前記加熱装置を、鋼管長手軸方
向に沿って移動させる。なお、鋼管加熱の順序は、上記
と逆であっても良い。その際、鋼管の配置を、その長手
軸方向が垂直になるよう鋼管を設置すれば、直角断面内
で鋼管加熱温度を均一にすることが比較的に容易であ
る。 前記鋼管直角断面中で、その各コーナーR部の加熱温
度と他の平坦面の加熱温度との温度差を、略、100 〜15
0 ℃に設定することによって、鋼材の加熱歪み、または
加熱による軟化に対する変形抵抗を維持し、熱処理中、
コーナーR部と平坦面との間の不均一加熱歪みが異常に
大きくなって、その影響が鋼管外形に現われることを防
止する。
【0014】鋼管のコーナーR部形成のための冷間塑
性変形による当該鋼板材質の劣化範囲は、研究の結果、
せいぜいコーナーR部および、そのR部両終端から平坦
面方向に鋼材板厚の長さだけの幅、を含む領域であるこ
とを検知しているので、上記局部加熱の対象域には、少
なくとも、前記領域の全部が含まれていることが条件と
なる。 角形鋼管用材質には、SS400 、SM400A、SM490A、SM49
0B、SM490C、SM520B、C または非調質高張力鋼60Kgなど
を選択できるが、その何れの鋼材に対しても上記工法を
適用でき、所望の効果を奏する。 角形鋼管コーナーR部の局部加熱には誘導加熱方式を
採用することにより、加熱温度の分布、加熱温度の管理
が容易にでき、また、当該鋼材結晶を細粒化する効果も
生じる。
【0015】前記加熱鋼管の冷却は、炉冷または空冷
で徐冷却しても良いし、或る程度の放冷後、噴霧および
水シャワーを用いて鋼管四周から均等に急冷しても良
い。 前記冷却装置には、冷却部、不冷却部を直列に交互に
並べ、ここに加熱鋼管を通し、冷却媒体には空気、水ま
たは両者混合による冷却流体等を用いて、冷却対象鋼材
を短い部分に分け、順次、徐々に冷却するような多段冷
却技術を採用し、可及的に熱処理歪みの発生を回避する
ようにしても良い。 鋼管の冷却に水を使用する場合には、極めて大量の冷
却水を消費し、加えて使用後の汚水の処理、再生装置が
大規模になるので設備費がかさむおそれがある。しかし
冷却装置における鋼管温度は、必ずしも正確に常温まで
低下させることを要しない。また、同装置において常温
付近まで冷却した鋼管は、それ以後、冷却水によって冷
しても、これに基づく曲がり、捩じれなど、発生しな
い。
【0016】(2)本発明方法に採用する加熱装置に
は、低周波または高周波加熱装置を選定することが望ま
しい。これによれば、鋼管の長手軸方向に直角な断面内
外における加熱温度分布の調整、加熱温度の制御が容易
で、装置の保守管理が簡単であり、加熱装置に要するス
ペースが小さくて済むけれども、熱処理に要するコスト
が若干かさむことは免れない。 ただし、鋼管の加熱手段として、大量に入手が容易
で、比較的にコストの低い化石燃料を利用する加熱装置
を低、高周波加熱装置と併用した、いわゆる、複合加熱
手段を採用することができる。しかし、その場合も、少
なくとも鋼管の長手軸方向に直角な断面内において、鋼
管周壁全体および鋼板の内外共、均一温度に加熱するこ
とができるものでなければならない。電力を利用した加
熱装置と、化石燃料を用いた加熱炉との複合加熱手段を
設備すれば比較的に熱処理コストを低減することができ
ると共に、それによって電力も低減することができるか
ら、立地条件の選択が比較的に容易になる等のメリット
が得られる。 また、環境が許せば、化石燃料を用いた加熱炉のみを
用いることによって、上述既成鋼管の熱処理を行なうよ
う計画しても良いことは勿論である。
【0017】(3)これによって、 帯状鋼板または一枚鋼板から角形鋼管を形成する工程
で、鋼板に加えられた冷間塑性変形による鋼材中の残留
応力の発生、靭性の低下など鋼板材質の劣化、特に鋼管
コーナーR部を含めた局部材質の機械的特性の欠陥を改
善し、また、溶接加工歪みが解消する等々の材質改善策
を講じた、高品質で均一な大径角形鋼管を提供すること
ができる。 大径角形鋼管の熱処理コストを大幅に節減することが
でき、比較的に低コストで高品質な大径角形鋼管を提供
できる。 低温状態で厚肉角形鋼管コーナーR部付近に溶接加工
を施した場合にも、当該個所に溶接割れなどが生じるお
それがない。
【0018】角形鋼管を溶融亜鉛めっき加工する際に
も、鋼管材の一部から亀裂が生じる不都合は起きない。 鋼管長手軸に対する捩じり力が大きく掛っても、鋼管
コーナーR部付近から先に破壊することはない。 いずれにしても、本発明方法では、既成の冷間成形によ
る角形鋼管のコーナーR部と平坦部との材質が同一の機
械的性質を有するよう、その熱処理工程においてコーナ
ーR部を選び重複して局部加熱することにより、曲げ塑
性加工量の大きいコーナーR部の加熱温度をより高めて
当該材質の改善を図り、かつ局部材質の靭性を改善して
鋼管熱処理の目的を達成し、全体加熱のために要するエ
ネルギー量に対し省エネルギー化を図ることができる。
【0019】(4)要するに、本発明方法によれば、鋼
管断面の四個所の鋼板を冷間塑性加工により、略、90゜
曲げることから生じる鋼管コーナーR部材質の加工硬
化、残留応力の増加、材質劣化が完全に改善、除去され
た大径角形鋼管を得ることができ、または、コーナーR
部材質の劣化は殆んどないに等しい。したがって、本発
明方法によれば、昨今問題視されている大径角形鋼管の
隅角部冷間塑性変形に基づく鋼管コーナーR部の材質劣
化、大きな残留応力の存在などの欠陥を、比較的経済的
に除去することができる。
【0020】
【実施例】以下に、本発明方法の一実施例を図面に沿っ
て説明するが、右方法を構成する各工程の具体的構成
は、本出願当時の当業界における公知技術の範囲内で任
意に部分的変形が可能であるから、格別の理由を示すこ
となしに、本実施例の具体的説明のみに基づいて、本発
明方法の構成要件を限定して解釈することは許されな
い。
【0021】図1は、本発明工法を実施するときの大径
角形鋼管の加熱温度分布状態を指示する概略斜視図で、
図2は、前記大径角形鋼管のコーナーR部を含む一部断
面図、図3は、前記加熱温度分布曲線の一部展開図を示
すものである。図中、1は、厚肉大径角形鋼管、たとえ
ば使用鋼材はSM490Aで、鋼板厚は22mm、500 mm径角形
鋼管、 rは、コーナーR部の外側曲率半径、 r=nt
(n:通常2〜4) tは、前記鋼板の板厚(本実施例では22mm)を示す。
図1、2において鋼板断面部にハッチを施してある部分
は、当該鋼板が冷間で曲げ塑性加工されて影響を受け変
化した材質劣化部分を示すもので、その鋼管周方向の範
囲は、おおむね、コーナーR部を含み、その両側でコー
ナーR部終端2から鋼板1の板厚tだけ鋼板平坦部3側
に伸びた部分4、4を限界とする領域と重なっているこ
とを確めている。なお、図2に記載の鋼管断面鋼板中、
コーナーR部内側の細線および点線により囲まれた部分
は、図7に掲げた「後熱処理によるエネルギー遷移曲
線」を得るためのテストピース鋼材を採取した位置を示
すものである。
【0022】図1、3に示す、角形鋼管コーナーR部鋼
板周辺の加熱温度分布曲線は、y軸を温度、x軸は鋼管
長手軸に直角方向に採った鋼板周辺方向であって、分布
曲線のうち、やや平坦な山頂の形状をなす部分の曲線の
温度は、略、650 〜700 ℃であって、当該部分は、鋼管
コーナーR部と一致している。そして、上記平坦な山頂
の形状の曲線は、略、前述の断面部にハッチを施した鋼
板断面の部分をカバーしていることに留意されたい。上
述、鋼管断面における加熱温度、加熱範囲は、熱処理の
間中は、常に鋼管長手軸に対して、軸対称が保持されな
ければ、鋼管長手軸直角方向に熱応力歪みが生じるおそ
れがある。このため、鋼管の管軸方向を垂直状態にして
熱処理するようにすれば、比較的容易に軸対称が得られ
る。上述のとおり、少なくとも鋼管コーナーR部鋼板周
辺は、全体的に鋼材のA1 変態点付近まで加熱され、所
要の加熱保持時間を経過後、徐々に冷却することによっ
て熱処理され、冷間塑性加工の影響を受けて劣化した当
該部分鋼板材質の機械的特性を大幅に改善することがで
きる。
【0023】図3を参照して、前記平坦な山頂の麓に連
なる曲線は、略、水平であり、その温度は、略、500 ℃
を示す。上記水平曲線は、図1に示すように角形鋼管周
辺平坦部に、略、一致する。そして、上記加熱温度もま
た、鋼管長手軸直角方向周辺において均等でなければ、
それに基づいて鋼管に熱応力歪みが生じるおそれがある
こと、前述のとおりである。以上のとおり、鋼管断面の
コーナーR部と周辺平坦部との間に、略、150 ℃程度の
加熱温度差が生じているが、この程度の温度差であれ
ば、加熱による鋼材軟化があっても構成材強度は鋼管断
面内での鋼材の変形抵抗に打ち勝って鋼管外側にまで熱
応力歪みが現われることがない。また、鋼管全体として
はコア(平坦部)部分が比較的に低温加熱されているだ
けなので鋼管素材は軟化することが少なく、熱応力変形
に対して抵抗力が大であり、そのため熱処理後に歪みが
生じ難い。
【0024】本実施例工法によれば、既成の角形鋼管を
全体的に高温熱処理する工法に較べて、処理効果には遜
色がない上に、熱処理コストが極めて少ない。図4、5
および6は、本実施例工法における、時間−熱処理温度
曲線の幾つかを示すもので、x軸方向に時間、y軸方向
に鋼材温度を採った。図4は、化石燃料を用いた加熱炉
に対し鋼管を長手軸方向に徐々に搬入して熱処理した場
合の温度曲線の一例を示すもので、鋼管直角断面は、加
熱によって徐々に、かつ、均等に温度が上昇し、やがて
所定温度に達した後、その状態を少なくとも30min 程度
保持し、それから加熱鋼管を炉冷または空冷工程に搬
出、放置する。なお、炉冷または空冷工程に、冷水噴
霧、シャワーまたは冷気噴射等の手段を付加・配置する
ことにより、冷却スペースを節減することが可能であ
る。この場合にも、角形鋼管の全周面および長手方向を
可能な限り均等に冷却するようにしないと、長手軸方向
直角に歪が発生するおそれがある。また、冷却工程に水
を利用する際には、相当量の用水の確保、用水の消費、
使用後の汚水処理の設備が必要となって設備費がかさむ
上に、使用後水の再利用を図らないと大量の冷却水を浪
費することになる。
【0025】図5は、高周波誘導加熱装置によって鋼管
の加熱を行った場合の温度曲線を示し、鋼管温度の立上
りが急である。このタイプの加熱によって鋼材の結晶粒
の細粒化の効果を生じ、強靱で均質な鋼材を得ることが
できる。炉冷装置が後工程に設けられてない場合には、
加熱鋼管は、誘導加熱装置から搬出されるや否や比較的
に急速に冷却される。ただし、冷却手段が空冷のみの場
合は、かなりの広さの放冷スペースを用意する必要があ
る。その際にも加熱鋼管の四方向から、冷却空気を積極
的に吹付け冷却する手段を設備することが望ましい。
【0026】図6は、鋼管冷却工程に、噴霧とシャワー
を設置した場合の温度曲線の変化を示すもので、鋼管素
材を所要温度、たとえば650 ℃に加熱した状態から、鋼
管壁に四方から冷却空気を吹き付け、または噴霧して均
一に、かつ、徐々に500 ℃付近まで冷却した後、鋼管全
周方向からシャワーを浴びせて鋼管を比較的に急冷した
例である。この場合には、鋼管冷却スペースを節減する
ことができる反面、大量の冷却水の確保、使用済用水の
後処理・再生装置などの大規模施設を用意する必要があ
る。図7は、コーナーR部の後熱処理によるエネルギー
遷移曲線を示している。当該エネルギー遷移曲線を画く
のに使用したテストピースは、図2に示す角形鋼管断面
コーナーR部内側鋼材中の細線および点線で囲んだ部分
を切りだして、整形したものである。上記デーダを吟味
すれば、処理材は、冷間成形材に較べて同一温度での吸
収エネルギーが大きく、材質の靭性が改善されているこ
とが明らかである。
【0027】
【発明の効果】本発明角形鋼管の熱処理方法は、以上述
べたとおりであるから、 (1)軸方向に長い被処理材を、見掛け上長さ方向に短
い部分に分割して、それら全周壁を所要温度に、加え
て、四っのコーナーR部を均一に局部加熱して、両者の
温度差を150 ℃内外としたから、局部加熱に基づく熱応
力が比較的に小さく、また加熱による鋼管全体の軟化度
が小さいので加熱による角形鋼管長手軸方向に直角な鋼
管の熱膨張歪、熱処理歪が出にくい。 (2)鋼管加熱の平均した温度は比較的に高くなくと
も、鋼管コーナーR部の熱処理温度は高いので、鋼板の
冷間塑性変形によるコーナーR部材質の劣化、脆性化、
大きな残留応力を熱処理により効果的に回復することが
でき、ユーザー要望の材質劣化部が無く、捩りに対して
抵抗力が大きく、均質な鋼板よりなる高品質の大径角形
鋼管を製造することができる。 (3)したがって、熱処理に要する熱エネルギーも比較
的に少なくて良いから、商品コストを圧迫しない。
【0028】(4)また、鋼材表面の肌荒れが少なく、
商品価値の高い大径角形鋼管を得ることができる。 (5)被処理材に生じる歪、捩じれ量が少ないため、冷
却工程後の歪矯正設備が簡単で済む。 (6)既製の被処理材の連続した熱処理工程も可能であ
る。等々、従来公知の鋼材熱処理手段では期待すること
ができない格別の作用および効果を奏する。なお、本発
明は、連続鋼管の熱処理でも、規格長材料の焼き鈍しで
も、単数であっても、また、複数本同時であっても可で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明熱処理方法を実施する大径角形鋼管の加
熱温度分布状態を示す部分斜視図、
【図2】本発明熱処理方法を実施する大径角形鋼管の端
面図、
【図3】本発明熱処理方法を実施する鋼管周面における
加熱温度分布図、
【図4】本発明熱処理方法における温度曲線の一実施
例、
【図5】本発明熱処理方法における温度曲線の他の実施
例、
【図6】本発明熱処理方法における温度曲線の別の実施
例、
【図7】コーナーR部の後熱処理によるエネルギー遷移
曲線を示す。
【符号の説明】
1 角形鋼管 2 コーナーR部端 3 鋼管平坦部
フロントページの続き (73)特許権者 598134835 中島 伸 東京都武蔵野市吉祥寺本町4丁目26番27 号 (72)発明者 中島 功雄 大阪府豊中市東豊中町1−11−5 (72)発明者 中島 拓 兵庫県伊丹市緑ケ丘3−70 (72)発明者 中島 教雄 静岡県袋井市小川町12−26 (72)発明者 中島 伸 東京都武蔵野市吉祥寺本町4−26−27 (56)参考文献 特開 平1−266913(JP,A) 特開 昭61−137625(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21C 37/15 C21D 1/30 C21D 9/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 帯鋼板または一枚鋼板を、冷間プレス加
    工または/および冷間ロール成形により折曲げ、その直
    角断面を近似角形とした後、その長手軸方向開口縁を突
    合せ溶接して形成した大径角形鋼管の直角周面に対し、
    その周辺鋼材を均一に加熱すると共に、各コーナーR部
    を中央にし、前記R部終端から両側に少なくとも、素材
    板厚×1.0の幅の範囲内で周辺温度よりも150 ℃内
    外、高温度に加熱し、その上限温度を略、650 ℃程度と
    したのち、炉冷または空冷により冷却して鋼管材質の熱
    処理・調質をすることを特徴とする大径角形鋼管の熱処
    理工法。
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