JP5407998B2 - 鋼矢板及びその製造方法 - Google Patents
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前記のように、ウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開くようになると、土留め壁等とした用いた場合の壁厚方向の高さ寸法が小さくなることから、断面2次モーメントが格段に小さくなり、土留め壁等として用いた壁体に水平力が作用した場合、設計上期待する曲げ剛性を得ることができなくなる。
前記のウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開く変形は、鋼矢板の曲げ剛性低下を招き、土留め壁として用いた場合の安全性にも影響する因子であることから、前記の変形に伴う曲げ剛性低下を極力なくすことが必要になる。
前記の隅角部6の変形を抑制するために、ウェブとフランジとの屈曲接続部の隅角部の板厚を厚くすることにより、変形を抑制する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来技術では、隅角部の板厚を厚くすることにより変形を抑制するものであるが、その分、使用鋼材重量が多くなるという問題がある。
例えば、特許文献3の技術では、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制するものであり、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できない。
このように、継手剛性を大きくすることによって継手の変形を抑制するようにした場合には、継手断面が大きくなり、使用する鋼材が多くなり重量が重くなる。
また、鋼矢板の継手を局所的に熱処理して強度を増加させ、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制しても、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できないという問題があった。
本発明は、使用鋼材量を多くすることなく、鋼矢板の打込み時及び引抜き時に変形しやすい隅角部の強度を高めることによって、鋼矢板の全体断面の変形を抑制し、安定した打設性を発揮し、くり返し打設性にも優れた鋼矢板及びその製造方法を提供することを目的とする。
第2発明では、鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする。
第3発明では、鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理され、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、前記鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明の鋼矢板において、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、前記鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする。
第6明では、第1発明〜第5発明のいずれかの鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする。
第7発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする。
第8発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする。
第9発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする。
また、第10発明の鋼矢板の製造方法では、第1〜9発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする。
また、第11発明の鋼矢板の製造方法ではでは、第1〜9発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする。
また、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高める範囲は、鋼矢板長手方向全長でもよいし、特に変形の生じやすい先端部(鋼矢板の先端「打設時に下端となる側」から鋼矢板の有効幅(W)の5倍程度以下までの部分的な範囲)であってもよいので、使用場所に応じて、適宜設計することができ、また、工場又は現場において、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を鋼矢板の長手方向の所定の範囲、熱処理して、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高めることができると共にじん性の確保も可能となる。また、本発明の鋼矢板の製造方法は、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を熱処理するだけであるので、簡単な方法で容易である等の効果が得られる。
強度を高めた前記隅角部6aを設ける場合には、鋼矢板1における一つ又は複数の隅角部6の内、少なくとも一つ又は複数の隅角部6を熱処理して、他の部分に比べて強度を高めるようにしてもよい。
また、隅角部6を熱処理する場合に、隅角部6に接続する側の接続用フランジ2の巾方向の一部、あるいは隅角部6に接続する側のウェブ3の巾方向の一部を、隅角部6の熱処理と同時に熱処理を行うことができる。隅角部6に接続する継手側フランジ4における隅角部6側の巾方向の一部も、前記と同様に熱処理して行うことができる。
隅角部6に接続する側のウェブ3又はフランジ2,4の巾方向の一部を熱処理する場合の巾寸法については、鋼矢板全体の強度を加味して、設計により設定される。
前記の鋼矢板の高周波誘導加熱は、熱間加工により鋼矢板を製造しているオンライン上で行う場合には、隅角部6を除く部分の材質が定まった後、隅角部6を加熱して、水冷することにより冷却する。
前記のような高周波誘導加熱は、工場においては、容易に行うことができるが、現場においも、隅角部6をガスバーナー等により加熱し、水冷により冷却して焼き入れしたり、水冷後、600℃以下の温度で焼き戻しすることにより、強度の向上と共にじん性の確保も可能な新規な鋼矢板とすることができる。
これに伴って、断面ハット形の鋼矢板の重量は、[126kg/m2÷96.0kg/m2=1.31]となり、1.31倍に増加する。
本発明を適用して、図15(a)に示す断面ハット形の鋼矢板1Bの隅角部6の焼き入れで、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの少なくとも接続用フランジ2部分の板厚増大分の強度上昇が確保できれば、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの形態に1ランク上げずに、図15(a)に示す形態の断面ハット形の鋼矢板1Bで対処できることとなり、経済的な鋼矢板となる。
隅角部6の焼き入れにより強度を向上させる場合に、例えば、[図15(b)に示す形態の接続用フランジの板厚]÷[図15(a)に示す形態の接続用フランジの板厚]=13.2mm÷10.8mm=1.22 となるため、この場合は、図15(a)に示す形態の鋼矢板1Bの隅角部6を焼き入れ(又は焼き入れ焼き戻し)によって、1.22倍以上に強度を高めれば、打ち込み時における隅角部の塑性変形がほとんどなくなり、鋼材重量を増加させることなく、打ち込み性の向上を図ることが可能となる(表4参照)。
以上より、本発明を適用して鋼矢板における隅角部6の強度を高める場合に、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜3.45倍である場合が望まれるが、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜1.35倍又は1.13倍〜2.36倍が、現実的で実用性が高い。
継手部5の強度を高めた継手部5aとすると、継手の変形あるいは離脱を防止することができる。
継手強度を、強度が高められた隅角部と同様に、少なくとも1.13倍、又は1.13倍以上〜2.36倍、或いは1.13倍以上〜3.45倍以下となるようにしてもよい。
このように、隅角部及び継手部を熱処理して両方の強度を高めた鋼矢板とすると、一層鋼矢板の拡開変形あるいは継手の変形・離脱を防止することができる。
鋼矢板の隅角部及び継手部を熱処理する場合には、少なくとも、図5に示すように、鋼矢板の先端部の隅角部及び継手部を熱処理するのが望ましい。
尤も、鋼矢板を貫入させる地層中間層に硬質地層がある場合には、図6に示すように、
鋼矢板の先端部及び中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理して、強度を高めた隅角部6a又は隅角部6a及び継手部5aとした形態の鋼矢板としてもよい。
鋼矢板長手方向中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理する長さ範囲としては、硬質地層の厚さ寸法程度の範囲を熱処理すればよい。
鋼矢板長手方向の先端部の隅角部6及び継手部5を熱処理して強度を高める場合には、先端から鋼矢板の有効巾の5倍程度の範囲内において、例えば、鋼矢板の有効巾の整数倍、熱処理してもよい。
以下の形態では、相違する部分を主に説明し、同様な部分については、同様な符号を付して、説明を簡単にする。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
この形態でも、接続用のウェブ3と継手側のフランジ4の屈曲接続部である各隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6a(6)を備えた鋼矢板(断面ハット形の鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
従って、本発明の鋼矢板では、直線状鋼矢板の巾方向中間部の板状部の中間を折り曲げて、隅角部を形成し、その隅角部を挟んで板状部の一側部をウェブ、他側部をフランジとする断面V字状の鋼矢板とする場合も含まれる。このような断面V字状の鋼矢板あるいは断面W字状の鋼矢板等の特殊な断面形態の鋼矢板は、壁体における隅部等の接続部の鋼矢板として用いられ、このような鋼矢板に適用することも可能である。
1B 鋼矢板
1C 鋼矢板
1D 鋼矢板
1E 鋼矢板
2 接続用フランジ
3 ウェブ
4 継手側フランジ
5 継手部
5a 強度を高められた継手部
6 隅角部
6a 強度が高められた隅角部
7 継手嵌合部
Claims (11)
- 鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理されることにより、熱処理が行われない鋼矢板の強度の1.13倍以上3.45倍以下となるように熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする鋼矢板。
- 鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする鋼矢板。
- 鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理され、
鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、前記鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする鋼矢板。 - 鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部が熱処理後の保証降伏強度で400N/mm 2 〜700N/mm 2 に熱処理されることにより、前記鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする請求項1記載の鋼矢板。
- 熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
- 熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼矢板。
- 鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼矢板。
- 鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼矢板。
- 鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼矢板。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
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