JP2735411B2 - 大径角形鋼管の成形工法および装置 - Google Patents

大径角形鋼管の成形工法および装置

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JP2735411B2 JP20230891A JP20230891A JP2735411B2 JP 2735411 B2 JP2735411 B2 JP 2735411B2 JP 20230891 A JP20230891 A JP 20230891A JP 20230891 A JP20230891 A JP 20230891A JP 2735411 B2 JP2735411 B2 JP 2735411B2
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forming roll
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拓 中島
教雄 中島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大径角形鋼管の熱的二
段成形工法および、その装置にかかり、より詳しくは、
肉厚帯鋼板または一枚板鋼板を、その長手方向に平行し
て冷間塑性加工により折曲げ、両側縁継目を突合わせ溶
接して大径丸鋼管を成形した後、引続いて熱処理装置を
通して前記鋼管を一定時間、所定温度に均一に加熱し、
複数段よりなる角形成形ロール装置に搬送して前記鋼管
断面を順次、角形に成形する工程において、前記角形成
形ロール装置を予備成形ロール工程と仕上げ成形ロール
工程とに二分し、少なくとも予備成形ロール工程終了ま
でに、以前に加えられた冷間の塑性変形、その他による
鋼材の加工硬化、劣化を除去・調質するとともに、仕上
げロール成形工程においては、前記鋼管を冷間加工によ
り規格どおりに角形整形して材質の均一強化を図り、ま
た、熱処理に基づき生じる鋼管の歪み、捩れ、曲がり等
を矯正するようにした大径角形鋼管、特に、そのコーナ
ー部材質の残留応力を除去し、靭性を改善することを特
徴とする肉厚大径角形鋼管の熱的二段階成形工法および
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄骨構造物のコラムとして需要が伸びて
いる、肉厚大径角形鋼管の量産方法には従来、略、次の
ような工法が実施されている。 熱間圧延コイルをレベラーに掛けフラットな帯鋼板に
し、その両側縁を幅決めをする。 前記帯鋼板を、ブレークダウン、クラスター、フィン
パススタンド等の加工段に直列に通して搬送し、その
間、該鋼板を順次、冷間成形して、その直角断面を円形
に近い形状に成形し、 あるいは、一枚板鋼板をOUプレス成形法により、円
形に近い形状に成形した後、 その継目を、高周波抵抗法、または電弧溶接法などに
より溶接して、丸鋼管を形成する。 前記丸鋼管の溶接熱を徐冷してから、サイザー、スケ
アリングスタンド、タークスヘッド等の冷間加工工程を
経て、同鋼管を角形断面に整形し大径角形鋼管を形成す
る。
【0003】上述成形工法においては、いずれの場合に
も角形鋼管成形のために平坦ないし円弧状曲面の厚肉鋼
板を成形ロールなどを用いた冷間塑性加工によって略、
90゜折曲げる工程が含まれている。なお、厚肉鋼板に対
する冷間の90°折り曲げ加工は、上述のロール成形によ
る角形鋼管成形工法のみならず、プレス加工によって直
接的に角形鋼管を成形する場合にも施されている。とこ
ろで、厚肉鋼板を冷間で、略、90゜折曲げ加工をした場
合には、前記コーナー部の鋼板断面における中立面を境
にして、その外側材料には引張り力が、内側材料には圧
縮力が働きながら変形が行われるため、当該個所には所
要のRを施しているにもかかわらず塑性変形が進み、変
形個所、特にコーナー部材質の機械的特性が劣化し、当
該部分に脆性破壊が生じる条件を備えるおそれがある。
たとえば、冷間折曲げ加工によって生じる当該材質の歪
み硬化(引っ張り加工側の伸び、靭性低下など)、高い
残留応力等が相俟って、冬期低温時に施す溶接加工に基
づく局部材質の溶接割れ、溶融亜鉛メッキ施工の際の材
料割れなどが発生する場合がある。
【0004】この種大径角形鋼管をコラムとして使用す
る鉄骨構造物、建築物等は一般に、一度施工した後は、
長期にわたり自重および構造物に付帯する重量を歪みな
く支承することは勿論、地震、台風等の外力による過酷
な繰返し荷重にも安全に耐えることが要求され、しか
も、これらのコラムは原則的に交換・補修が可能でない
といった状態で施工されている場合が多い。殊に最近の
建築物は、高層建築が主流を占め、また、各部屋毎に冷
暖房装置を設備する、OA機器、電算機の類が設置され
るなど、建物に付帯する設備重量が増加する傾向にある
ため、厚肉大径角形鋼管を柱材として採用するケースが
増加する傾向があるので、コラムの使用により、上述の
ような鋼管材質の劣化の問題は、ますます無視すること
ができない状況になっている。
【0005】このような事情に鑑み、鋼管成形時におけ
る厚肉鋼板の冷間塑性加工に基づく材質の劣化が、改め
て問題視されている。そこで、近来、充分な靭性を備
え、残留応力の少ないコーナー部材質を備えた高品質の
角形鋼管の提供が、需要者層から要望されている。
【0006】冷間成形の厚肉大径角形鋼管が内包する、
この種の材質的問題点を解決するために、従来、メーカ
ーは、 オフラインで、規格長さの既製丸鋼管、シームレスパ
イプなどを、油、ガス等の化石燃料または電気エネルギ
ーを熱源として加熱し、これを複数段の圧延機を通して
熱間成形により断面を角形にすることを提案している。
上記工法によるときは、製品の品質は良好であるが、成
形時に鋼管の両端部が変形するため材料の歩留りが悪い
とか、熱処理歪みを無視できないとか、鋼管を一本宛加
工するので生産性が低いとかいった問題点がある。ま
た、鋼管全体を高温加熱するから、焼き鈍ましコストが
掛かる。
【0007】別に成形済みの大径角形鋼管を焼鈍炉に
入れて、材質の残留応力が略、除去されるまで全体的に
加熱し、靭性を改善した後、徐冷する工法も知られてい
る。この場合にも、上記同様の問題点があり得る。 あるいは、熱間圧延コイルをレベラーに掛けて帯鋼板
にし、成形ロールスタンドおよび電弧溶接、高周波溶接
装置などを通し冷間塑性加工により丸鋼管に成形した
後、同丸鋼管をインラインで電気エネルギー、ガス、ま
たは油等の化石燃料を利用して加熱し、複数段の成形ロ
ール装置を通して角形鋼管断面に熱間成形した後、徐冷
し、製品にする。上述工法は、インライン加熱なので、
スムーズに行けば、前述項の場合よりも歩留りが良
く、生産性も向上するが、一度、製造ラインが故障した
り、溶接欠陥等が生じてラインが停止すると、著しく生
産性、歩留りが悪くなる。
【0008】また、製造ライン中に、ガス、油等の化石
燃料を利用する加熱炉を設備する場合は、鋼管の成形ス
ピードが速い(高周波溶接工法を用いて良好な溶接継手
を得るためには、ある程度の溶接スピードが要求される
から)ために、鋼管の内部応力が完全に解消する鋼材の
3 変態点温度まで鋼管を加熱するのに、ラインの中途
に200m〜300mの長さの加熱炉を設置するスペー
スが必要になり、製造ラインが長大になり過ぎて立地条
件の選定が困難になるとか、設備投資額が予想以上に膨
らむおそれがある。加えて、ガス、油等の化石燃料を丸
鋼管の加熱に利用すると、熱源を鋼管の内側に入れるこ
とができないため、素材を均一に加熱することがむずか
しく、鋼管の温度管理の面で問題があり、これが、鋼管
断面の成形不具合、歪みの発生に関係するので、結局、
均等な品質の製品が得られない場合もあり得る。
【0009】さらに、化石燃料による加熱炉は一般に、
熱効率が低い上に排ガス、廃熱に基づく公害対策を構じ
る必要が生じることもある。 一方、電気エネルギーを利用した加熱装置は、加熱の
ためのスペースが小さくて済み、鋼管の均一加熱並びに
加熱温度の管理を徹底することができる利点があるもの
の、電力コストが高くかかり、立地条件によっては必要
とする大容量の電力の入手が困難である場合がある。等
々の技術的問題点があることが知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明工法は、上述し
たような事情を背景にして開発されたもので、鋼管断面
のコーナー部材質の靱性を改善すると共に、残留応力を
許容限度以下にし、鋼管の材質を均一、かつ、安定化さ
せた高品質の大径角形鋼管を製造する工法および装置を
提供することを目的とする。また、本発明工法の別の目
的は、従来、知られているオフライン、インラインの鋼
管加熱による均質な角形鋼管の成形工法に内在する上述
問題点を可及的に解決する新規な熱的二段階成形工法お
よび装置を開発することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述の目的を
達成するために、以下に述べるとおりの各構成要件を具
備する。 (1) 帯鋼板または一枚板鋼板を、成形ロールを通し
て円筒状に成形し継目を溶接して形成した丸鋼管を、引
続き一定時間、所定温度に均一に加熱して当該温度が低
下しないうちに、複数段よりなる成形ロール工程に掛け
て前記鋼管断面形状を順次、角形形状に成形する工法に
おいて、複数段よりなる前記成形ロール工程を、予備成
形ロール工程と仕上げ成形ロール工程とに二分すると共
に、予備成形ロール工程では、熱間(温間を含む)加工
により、その断面形状を完成角形鋼管断面に比べ若干の
加工量を残した角形鋼管近似の半成形鋼管に成形し、同
半成形鋼管を仕上げ成形用ロール工程に送る前に、前記
鋼管全体を常温付近の温度まで冷却して、残りの加工量
を仕上げ成形用ロール工程により冷間加工で仕上げ整形
することを特徴とする大径角形鋼管の成形工法。
【0012】(2) 帯鋼板または一枚板鋼板を、成形
ロールを通して円筒状に成形し継目を溶接して形成する
丸鋼管成形装置、前記丸鋼管全体を一定時間、所定温度
に均一に加熱する加熱炉、前記鋼管断面を順次、角形に
成形する、複数段よりなる成形ロール工程が、少なくと
も、予備成形ロール工程と仕上げ成形ロール工程とより
成る角形鋼管成形ロール装置、前記角形鋼管成形ロール
装置の中間で、予備成形ロール工程と仕上げ成形ロール
工程との間に設置した、鋼管全体を常温付近の温度まで
冷却させる冷却装置とよりなり、前記予備成形ロール工
程を含む装置は、丸鋼管断面形状を熱間(温間を含む)
加工によって完成角形鋼管断面形状に比べ若干の加工量
を残した角形鋼管近似断面よりなる半成形鋼管に成形す
ると共に、前記仕上げ成形ロール工程を含む装置は、そ
の半成形鋼管の残りの加工量を冷間加工によって仕上げ
整形することを特徴とする大径角形鋼管の成形装置。
【0013】
【作用】市場に流通している大径角形鋼管について問題
視されている材質的欠陥は、鋼管成形工程中の冷間塑性
加工に基づく厚肉鋼管コーナー部の材質の靭性の低下、
残留応力の存在等、局部材質の劣化による構造材の弱体
化である。 (1)上述のような事情に鑑み、本発明では、 丸鋼管を成形した後、同鋼管を角形成形ロール工程に
送り込む前に、丸鋼管全体を一定時間、熱処理して、A
1 変態点またはA3 変態点近くまで均一に加熱すること
により冷間塑性加工による鋼材の残留応力、溶接歪みを
除去する。 前記丸鋼管は、大径で厚肉鋼板よりなり熱容量が大で
あるから、加熱鋼管を予備成形ロール工程に装入する時
点では、なお、熱処理温度を保持している。
【0014】前記鋼管温度が低下しないうちに、同鋼
管を予備成形ロール工程に装入することにより、以後の
工程を実質的に熱間成形と同等の塑性加工として、前記
厚肉鋼板の90°の折曲げによる局部材質の劣化、残留応
力の増加を回避し、 その段階での加工度を、鋼管の直角断面形状を最終製
品断面形状に比べて、若干の加工量(度)を残した角形
近似断面に成形し、 その半成形鋼管を徐冷または強制冷却してから、
【0015】仕上げ成形ロール工程に搬入して、残り
の若干の加工量を冷間塑性変形によって整形し、規格断
面の角形鋼管を得ると共に、 前記塑性加工により、熱処理などに基づき半成形鋼管
に生じた歪み、捩じり、曲がりなどを矯正する一方、 冷間塑性変形により鋼管素材に加工硬化を生じさせる
ことにより、前工程において施した冷間塑性加工に基づ
く厚肉鋼板の局部材質の劣化を解消するための熱処理に
よる歪みを矯正すると共に、前記熱処理により軟化した
鋼材を加工硬化させ、機械的性質を向上させる。
【0016】 (2)これによって、 丸鋼管断面を角形近似断面の形状にまで形成する工程
は、鋼材の熱処理および実質的に熱間塑性加工を経てい
るから、鋼管コーナー部を含めて鋼板材質に残留応力が
少ない、靭性を改善するとか、溶接加工歪みが解消する
等々、それ以前の工程で鋼板に加えられた冷間における
機械的変形などが同材質に悪影響を及ぼすことが殆どな
い。 熱処理、熱間塑性加工および(強制)冷却工程を経る
ことにより、半成形鋼管に生じる熱処理歪みの総和は、
略、鋼管全体の加工量の数%程度を出ない。 常温付近にまで冷却した半成形鋼管を仕上げ成形ロー
ル工程に搬入し、最後の数%程度の加工量の整形を冷間
塑性加工によって施すことにより、鋼管断面形状を規格
に沿った形状に整形する。
【0017】したがって、その際、半成形鋼管に生じ
ている熱処理歪みを上記加工変形によって矯正すること
ができる。 若干量程度の冷間による加工変形により、鋼管素材に
加工硬化を生じさせ、熱処理によって軟化した鋼材を強
化する。 同成形により鋼管断面コーナー部を材質劣化を伴なう
ことなくシャープに形成することができ、鋼管の使い勝
手を良好にし、同一鋼材を用いた場合に、より断面係数
を大にする。 予備成形ロール工程は熱間塑性変形、仕上げ成形ロー
ル工程では、冷間ではあるが若干程度の加工量で済むた
め、角形成形工程の駆動動力が節減できる。
【0018】本発明においては、規格長さの鋼管端面
を、その長手軸方向に連続して仮付け溶接することによ
り、連続丸鋼管の場合と同等な処理・加工を施すことが
でき、必要な加工・成形後は、前記仮付け溶接継手部分
を切断して単位の角形鋼管とすることができる。いずれ
にしても、それ以前に冷間で加えられた機械的加工など
に基づく鋼管コーナー部の残留応力を除去し、局部鋼材
の靭性を改善した後、最終工程において若干量の冷間加
工で角形鋼管を整形することにより、鋼管の歪みを矯正
し、均一で高品質な大径角形鋼管を得ることができる。
【0019】(3)本発明工法・装置では、鋼管全体を
3 変態点まで加熱するのに化石燃料の燃焼加熱のみで
は鋼管を所要温度まで加熱するのに前述のとおり長大な
加熱炉の設備が必要になって、生産ラインの立地条件の
選択が困難になるおそれがあるため、設備費および稼動
コストが若干高く付くことには目をつむって、省スペー
スで、鋼管周壁のすべてを均一に、かつ、効率良く正確
に加熱・制御することができる高周波加熱装置を、イン
ラインで設備する。
【0020】ただし、鋼管の加熱手段として、大量に
入手が容易で比較的にコストの低い化石燃料を利用する
加熱装置を高周波加熱装置と併用した、複合加熱手段を
採用することは妨げない。しかし、その場合も、少なく
とも鋼管周壁全体および内外、長手軸方向共、均一温度
に加熱することができることを要する。本発明工法にお
いて、電力を利用した加熱装置と、化石燃料を用いた加
熱炉との複合加熱手段を設備すれば比較的に熱処理コス
トを低減することができると共に、それによって加熱設
備の長大化を防止することができるから、立地条件の選
択が比較的に容易になる等々のメリットが得られる。 なお、丸鋼管周壁の加熱のために、化石燃料を利用す
る加熱炉を使用しようとすれば、同手段をオフラインで
設備することができる。これによって、加工能率が若
干、低下することを免れないとしても、全体的に鋼管の
加熱、焼鈍コストを大幅に低下させることができる。 さらに、角形鋼管のコーナー部と平坦部との材質が同
一の機械的性質を有するよう丸鋼管の加熱工程におい
て、コーナー予定部を選び局部加熱を重ねて施すことが
できる。これによって、全体的には温間加工であって、
生産性の向上と省エネルギー化を図ることができる。
【0021】(4)半成形鋼管の冷却は、自然放冷と強
制冷却とを併用するとか、搬送鋼管周壁に対し直角方向
周辺から均等に放水を施すなどして、可及的に均一に冷
却し、歪みの発生を防ぐと共に鋼管冷却ゾーンを短くす
る必要がある。 ただし、半成形鋼管は、複数段の予備整形ロールを通
過する毎に、熱エネルギーを放出しているから、冷却ゾ
ーンにまで搬送されたときには、その加熱温度が相当に
低下しているものと推定される。 ここでは冷却ゾーンにおける鋼管温度は、必ずしも正
しく常温まで低下させることを要しない。 もっとも、以後の工程をオフラインにすれば、自然放
冷によって鋼管を徐冷し、充分に鋼材を焼き鈍ます時間
が得られる。
【0022】(5)要するに半成形鋼管断面を形成する
予備成形ロール工程までは、鋼材に加えられた機械的変
形に基づく残留応力、靭性低下を熱処理によって解消
し、実質上熱間加工によって行うようにしたので、成形
が容易であって、鋼管周壁の四個所を、略90゜に折曲げ
ることにより生じる鋼管コーナー部の加工硬化、残留応
力、材質劣化が実用上差支えない程度に改善、除去さ
れ、成形鋼管内に残留応力が存在するおそれがない。ま
たは、コーナー部の材質の劣化は殆んどないに等しい。
したがって、本発明工法および装置によれば、昨今問題
視されている大径角形鋼管の隅角部塑性変形に基づく鋼
管コーナー部の材質劣化の欠陥を、実用上差支えない程
度に除去することができる。
【0023】
【実施例】以下に、本発明工法および前記工法を実施す
るための大径角形鋼管の製造ラインの一実施例を図面に
沿って説明するが、右ラインを構成する各工程における
設備の具体的構造は、本出願当時の当業界における公知
技術の範囲内で任意に部分的変形が可能であるから、格
別の理由を示すことなしに、本実施例記載の具体的構造
のみに基づいて、本発明工法の構成要件を限定的に解釈
することは許されない。
【0024】図1は、本発明工法および同工法を実施す
る大径角形鋼管の成形装置の一実施例のレイアウトを示
す概略ブロック図で、図2は、前記装置の各工程に対応
する厚肉鋼板の成形状態を示すものである。図中、材料
の搬送方向に沿って直線的に、1は、アンコイラーでコ
イル状厚肉鋼板11を巻き戻し、これをレベリングに掛け
て連続的に歪みを矯正し、平面鋼板12を成形する。 2は、幅決め装置で、前記平面帯鋼板11の両側をトリミ
ングカッターによって切断し、所要幅に成形する。 3は、丸鋼管成形ロール装置で、プリフォーム、ブレー
クダウンロール、クラスター、フィンパスロール、高周
波溶接装置4、スクイズロール等より成り、前記帯鋼板
は、同装置を通過する間に、丸断面の電縫鋼管14に成形
される。前記丸鋼管は、直径が565 mmであって、板厚
は、22mmであつた。
【0025】5は、調質炉(加熱装置)であって、厚肉
丸鋼管を高周波誘導加熱装置に通して鋼板全体を均一
に、かつ、所定時間加熱・調質する。当該加熱温度は鋼
材の材質に応じて、450 ℃〜1050℃の範囲を可とする。
加熱時間の長短にもよるが、より高温加熱の方が冷間変
形による素材の加工硬化、残留応力の除去、脆性の改善
ならびに以下の角形予備成形における熱間ロール加工の
目的に適合するが、鋼材表面に対する肌あれの程度は、
より低温加熱のほうが、良好であることは当然である。
【0026】6は、角形鋼管への予備成形ロールであっ
て、同ロールの鋼管に対する加工量(度)は、たとえ
ば、最終成形段迄、すなわち全成形工程が五工程より構
成されているときには、三工程より構成され、予備成形
ロールを通過した半成形鋼管16断面形状は、最終製品20
断面に比べて略、5%〜10程度の加工量を残している。
勿論、状態に応じて、10%を超えた、15%以下の仕上げ
加工量を残しておいて良い。要するに、仕上げ成形によ
って再度鋼材、特にコーナー部の材質劣化が目立って生
じないことが必要とされる。予備成形工程に装入される
丸鋼管14は、その前工程において加熱・調質されたまま
であるから、高温のまま成形ロールに掛かり、そこでは
熱間塑性変形が行われるので角形成形加工に基づく材質
の諸種の劣化は生じない。この成形工程では、鋼管に対
し熱間塑性加工が施こされるので加工量の大きさに比べ
駆動動力が少なくて済む。成形ロールには、加熱鋼管か
ら熱エネルギーが伝導するので、ロール、その他に対す
る冷却手段を設備しなければならない。
【0027】7は、鋼管の冷却ゾーンで、ここでは、加
工された半成形鋼管を可及的に均等に、かつ、全体的に
素早く冷却することが求められている。もっとも、予備
成形工程を通って、加熱鋼管は複数の成形ロールに熱エ
ネルギーを供給しているから、加工済みの半成形鋼管
は、相当に冷えている。ここでは、熱間成形および冷却
ゾーンにおける制御から漏れた不均一な温度分布によっ
て、鋼管の軸方向の曲がり、断面形状の歪み、板厚方向
に対する凹み、ゆがみ等を生じるとしても、その程度は
全体加工量の略、5%以下と見てよい。また、冷却ゾー
ンにおける当該冷却温度は、略、室温に近いものであ
る。この段階において、鋼管素材は全体として、母材に
近い靭性を維持し残留応力が低い状態を保持している。
【0028】8は、鋼管の仕上げ成形ロールで、二工程
より成り、ここでの鋼管断面に対する加工量は、さきに
述べたように、略、5%〜15%程度である。この仕上げ
加工によって、鋼管断面形状を規格どおり、材質の劣化
を招くことなく、そのコーナー部分をシャープに、たと
えば略、R<2tに整形する。 ただし、R=外側曲率半径、t=鋼管素材の板厚 かつ、冷却後、生じた角形鋼管の捩じれ、断面変形、曲
がりを矯正する。同工程における加工量は、歪矯正加工
に近いものであって、その整形により、改めて鋼管材質
の劣化を招くことはない。さらに、熱処理によって軟化
した鋼材の機械的強度を高める。 9は、切断機であって、走行切断機構を設備し、連続整
形される厚肉大径角形鋼管の搬送スピードに沿ってミー
リングを移動させながら、前記整形鋼管を長手軸方向規
格長毎に切断して、単位の製品20とする。 10は、製品搬出テーブルであって、前記規格長鋼管を積
重ね、保管する。要すれば、溶接継手、その他の部分の
探傷検査、歪矯正を行った後、市場に出荷する。
【0029】図2中、11は、熱間圧延コイル、12は、平
面を構成する厚肉帯鋼板、14は、丸鋼管断面、16は、熱
間塑性加工により成形された角形断面近似鋼管、18は、
冷間加工の最終角形鋼管断面で、たとえば450 mmスクエ
ァーである。20は、同型の製品を示している。以上のと
おりであって、本実施例における、その他の作用、効果
の詳細は、さきに述べた(作用)の項に説明したとおり
であるから、参照されたい。
【0030】
【発明の効果】本発明工法および装置は、以上述べたと
おりであるから、 (1)冷間塑性加工により整形されている従来の大径角
形鋼管において問題視されている厚肉鋼管材質の加工硬
化、各コーナー部材質の劣化、局部素材に生じた残留応
力を除去して許容量以下にすると共に、全体的に高品質
の大径角形鋼管を得ることができる。 (2)冷間で若干量の仕上げ成形加工を施すことによ
り、材質劣化を伴なうことなくコーナー部を可及的にシ
ャープにした角形鋼管を成形して、使い勝手を良好にす
る一方、同一鋼材を用いて、より断面係数が大きい品質
の良い鋼管を提供する。
【0031】(3)数%程度の仕上げ加工によって、そ
れまでに生じた熱処理などに基づく鋼材の歪を矯正する
と共に、鋼材の機械的性質を向上させる。 (4)その他、前述(作用)の項において述べた各効果
を奏する。等々、公知の工法および装置には期待するこ
とができない、格別の作用、効果を奏するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明工法を実施する大径角形鋼管成形装置の
一実施例ラインのブロック図。
【図2】前記装置中の各工程に対応する鋼管素材の断面
形状図。
【符号の説明】
1 アンコイラー 2 鋼板幅決め装置 3 丸鋼管成形ロール 4 高周波溶接装置 5 調質(加熱)炉 6 角形鋼管予備成形ロール 7 冷却ゾーン 8 角形鋼管仕上げ成形ロール 9 切断機 10 製品搬出テーブル 11 熱間圧延コイル 12 帯鋼板 14 丸鋼管 16 半成形角形近似鋼管 18 角形整形鋼管 20 製品。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−151117(JP,A) 特開 平1−266913(JP,A) 特開 昭61−115614(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 帯鋼板または一枚板鋼板を、成形ロール
    を通して円筒状に成形し継目を溶接して形成した丸鋼管
    を、引続き一定時間、所定温度に均一加熱して当該温度
    が低下しないうちに、複数段よりなる成形ロール工程に
    掛けて前記鋼管断面形状を順次、角形形状に成形する工
    法において、複数段よりなる前記成形ロール工程を、予
    備成形ロール工程と仕上げ成形ロール工程とに二分する
    と共に、予備成形ロール工程では、熱間(温間を含む)
    加工により、その断面形状を完成角形鋼管断面に比べ若
    干の加工量を残した角形鋼管近似の半成形鋼管に成形
    し、同半成形鋼管を仕上げ成形用ロール工程に送る前
    に、前記鋼管全体を常温付近の温度まで冷却して、残り
    の加工量を仕上げ成形用ロール工程により冷間加工で仕
    上げ整形することを特徴とする大径角形鋼管の成形工
    法。
  2. 【請求項2】 帯鋼板または一枚板鋼板を、成形ロール
    を通して円筒状に成形し継目を溶接して形成する丸鋼管
    成形装置、前記丸鋼管全体を一定時間、所定温度に均一
    加熱する加熱炉、前記鋼管断面を順次、角形に成形す
    る、複数段よりなる成形ロール工程が、少なくとも、予
    備成形ロール工程と仕上げ成形ロール工程とより成る角
    形鋼管成形ロール装置、前記角形鋼管成形ロール装置の
    中間で、 予備成形ロール工程と仕上げ成形ロール工程との間に設
    置した、鋼管全体を常温付近の温度まで冷却させる冷却
    装置とよりなり、前記予備成形ロール工程を含む装置
    は、丸鋼管断面形状を熱間(温間を含む)加工によって
    完成角形鋼管断面形状に比べ若干の加工量を残した角形
    鋼管近似断面よりなる半成形鋼管に成形すると共に、前
    記仕上げ成形ロール工程を含む装置は、その半成形鋼管
    の残りの加工量を、冷間加工によって仕上げ整形するこ
    とを特徴とする大径角形鋼管の成形装置。
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