JP2850554B2 - 傾斜機能材から成るリング結合体及びその製造法 - Google Patents
傾斜機能材から成るリング結合体及びその製造法Info
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- F05C—INDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
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- Combustion Methods Of Internal-Combustion Engines (AREA)
- Ceramic Products (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱膨張率の異なる傾
斜機能材から成るリング結合体及びその製造法に関す
る。
斜機能材から成るリング結合体及びその製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、セラミック組込型ピストンとし
て、実開昭60−141446号公報に開示されたもの
がある。該公報に開示されたセラミック組込型ピストン
は、アルミニウム合金から成るピストン本体の燃焼室側
の凹部にセラミック部材を組み込んだものであり、セラ
ミック部材の外周に熱膨張係数が10〜23×10- 1
/℃の耐熱耐食性金属リングで且つ頭部に複数の締結用
孔を備えた突出部を有する金属リングを接合して該突端
をセラミック部材の上端面より突出させ、前記金属リン
グの外周に前記ピストン本体の凹部に設けられた雌ねじ
部に螺着する雄ねじ部を螺刻した組立体とし、この組立
体を前記ピストン本体に締着した後、前記締結用孔を含
む突出部を除去したものである。
て、実開昭60−141446号公報に開示されたもの
がある。該公報に開示されたセラミック組込型ピストン
は、アルミニウム合金から成るピストン本体の燃焼室側
の凹部にセラミック部材を組み込んだものであり、セラ
ミック部材の外周に熱膨張係数が10〜23×10- 1
/℃の耐熱耐食性金属リングで且つ頭部に複数の締結用
孔を備えた突出部を有する金属リングを接合して該突端
をセラミック部材の上端面より突出させ、前記金属リン
グの外周に前記ピストン本体の凹部に設けられた雌ねじ
部に螺着する雄ねじ部を螺刻した組立体とし、この組立
体を前記ピストン本体に締着した後、前記締結用孔を含
む突出部を除去したものである。
【0003】また、内燃機関用ピストンとして、実開昭
58−98455号公報に開示されたものがある。該内
燃機関用ピストンは、アルミニウム、鋳鉄等の金属材料
より成るピストン基部に、コバール、42アロイ等の熱
膨張率が3〜9×10- 6 /℃の金属体を介してセラミ
ックスを結合したものである。
58−98455号公報に開示されたものがある。該内
燃機関用ピストンは、アルミニウム、鋳鉄等の金属材料
より成るピストン基部に、コバール、42アロイ等の熱
膨張率が3〜9×10- 6 /℃の金属体を介してセラミ
ックスを結合したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、リエントラ
ント型ピストンにおける燃焼室では、燃焼室入口即ち燃
焼室開口部のリップ先端部を先尖りに鋭く形成すると、
スキッシュ流及び逆スキッシュ流の乱れが増大し、燃料
と空気との混合が均一化され、燃焼状態が良好になる。
ント型ピストンにおける燃焼室では、燃焼室入口即ち燃
焼室開口部のリップ先端部を先尖りに鋭く形成すると、
スキッシュ流及び逆スキッシュ流の乱れが増大し、燃料
と空気との混合が均一化され、燃焼状態が良好になる。
【0005】しかしながら、従来のようなアルミニウム
材或いはセラミックファイバー強化アルミニウム材から
形成したピストンでは、燃焼室を構成するリップ部の先
端を先尖りにシャープに形成すると、リップ部先端の温
度は高温になり、リップ部に加わる熱負荷即ち熱応力の
ためにリップ部の溶損現象、クラック発生等の破損が発
生し、リップ部の先端を鋭くするにも限界があった。ま
た、リップ部の先端部を耐熱性に優れた非アルミニウム
材、例えば、ニレジスト、スチール、Fc、セラミック
ス等を使用した場合にも同様な現象が発生すると共に、
ピストンヘッド本体を構成するアルミニウム材との間
に、熱膨張率に大きな差が生じ、境界面或いは接合面に
剥離等が発生し、問題があった。
材或いはセラミックファイバー強化アルミニウム材から
形成したピストンでは、燃焼室を構成するリップ部の先
端を先尖りにシャープに形成すると、リップ部先端の温
度は高温になり、リップ部に加わる熱負荷即ち熱応力の
ためにリップ部の溶損現象、クラック発生等の破損が発
生し、リップ部の先端を鋭くするにも限界があった。ま
た、リップ部の先端部を耐熱性に優れた非アルミニウム
材、例えば、ニレジスト、スチール、Fc、セラミック
ス等を使用した場合にも同様な現象が発生すると共に、
ピストンヘッド本体を構成するアルミニウム材との間
に、熱膨張率に大きな差が生じ、境界面或いは接合面に
剥離等が発生し、問題があった。
【0006】そこで、ピストンヘッド本体にリップ部を
組付けるにあたって熱膨張率の大きく異なるセラミック
スとアルミニウム等の金属材料とを結合或いは接合する
場合に、使用温度範囲を拡げ、セラミックスのクラッ
ク、溶損、破損等を防止するため、セラミックスのリッ
プ部と金属材料のピストンヘッド本体との間に熱膨張係
数即ち熱膨張率の異なる傾斜機能材から成るリング結合
体を接合して介在させる方法がとられている。
組付けるにあたって熱膨張率の大きく異なるセラミック
スとアルミニウム等の金属材料とを結合或いは接合する
場合に、使用温度範囲を拡げ、セラミックスのクラッ
ク、溶損、破損等を防止するため、セラミックスのリッ
プ部と金属材料のピストンヘッド本体との間に熱膨張係
数即ち熱膨張率の異なる傾斜機能材から成るリング結合
体を接合して介在させる方法がとられている。
【0007】ところで、傾斜機能材から成るリング結合
体を作製する方法として、図5及び図6に示すような方
法が行われている。該傾斜機能材から成るリング結合体
の製造法は、図5に示すように、熱膨張率の異なるリン
グ12,13,14を各材料の熱膨張係数より大きいテ
ーパ面を両側に形成し、常温で中間リング13が外側リ
ング14のテーパ面で支持され、内側リング12が中間
リング13のテーパ面で支持されるように、予め計算さ
れた内外径寸法を有するように形成し、リング間11と
12、リング間12と13及びリング間13と14にろ
う材15を配置する。この時、外側リング14の熱膨張
率が大きく(例えば、α=15×10-6 /℃)、内側
リング12の熱膨張率が小さく(例えば、α=5×10
- 6 /℃)、中間リング13の熱膨張率は中間の熱膨張
率(例えば、α=15×10- 6/℃)を有するものと
する。次いで、各リング12,13,14を炉内に配置
してろう付け温度(例えば、1100℃)まで昇温する
と、外側リング14の熱膨張が最も大きく成るので、図
6に示すように、外側リング14内に中間リング13が
嵌入し、中間リング13内に内側リング12が嵌入して
接合される。この方法では、ろう付け温度では、各リン
グ12,13,14間のクリアランスが零になるように
接合される。次いで、ろう付け温度から常温に戻すと、
内側リング12は圧縮残留応力が付与され、外側リング
14は引張残留応力が付与されることになる。
体を作製する方法として、図5及び図6に示すような方
法が行われている。該傾斜機能材から成るリング結合体
の製造法は、図5に示すように、熱膨張率の異なるリン
グ12,13,14を各材料の熱膨張係数より大きいテ
ーパ面を両側に形成し、常温で中間リング13が外側リ
ング14のテーパ面で支持され、内側リング12が中間
リング13のテーパ面で支持されるように、予め計算さ
れた内外径寸法を有するように形成し、リング間11と
12、リング間12と13及びリング間13と14にろ
う材15を配置する。この時、外側リング14の熱膨張
率が大きく(例えば、α=15×10-6 /℃)、内側
リング12の熱膨張率が小さく(例えば、α=5×10
- 6 /℃)、中間リング13の熱膨張率は中間の熱膨張
率(例えば、α=15×10- 6/℃)を有するものと
する。次いで、各リング12,13,14を炉内に配置
してろう付け温度(例えば、1100℃)まで昇温する
と、外側リング14の熱膨張が最も大きく成るので、図
6に示すように、外側リング14内に中間リング13が
嵌入し、中間リング13内に内側リング12が嵌入して
接合される。この方法では、ろう付け温度では、各リン
グ12,13,14間のクリアランスが零になるように
接合される。次いで、ろう付け温度から常温に戻すと、
内側リング12は圧縮残留応力が付与され、外側リング
14は引張残留応力が付与されることになる。
【0008】上記の各製造法のように、熱膨張率の異な
る傾斜機能材を作製する場合に、各リングをろう付けす
れば、内側リング12及び外側リング14には、残留応
力が付与される。そこで、例えば、この傾斜機能材を燃
焼室の構造に組付けた場合に、エンジン運転で燃焼室温
度が上昇して、常温より昇温した状態では、内側リング
12については、内側リング12の材料の熱膨張量と残
留圧縮応力の解放による内径を拡げる膨張変位量とをプ
ラスした熱膨張の変位となり、内側リング12の材料物
性値より大きな熱膨張をすることになる。また、外側リ
ング14については、外側リング14の材料の熱膨張量
から残留引張応力の解放による外径を縮める収縮変位量
をマイナスした熱膨張の変位となり、外側リング14の
材料物性値より小さい熱膨張をすることになる。即ち、
従来の傾斜機能材では、内周リング12の実際の熱膨張
量は、残留応力の影響によりその材料物性で決まる熱膨
張率で発生する熱膨張量より大きくなり、また、外周リ
ング14の実際の熱膨張量は、残留応力の影響によりそ
の材料物性で決まる熱膨張率で発生する熱膨張量より小
さくなる。従って、傾斜機能材の熱膨張率に対する傾斜
機能は小さくなってしまう。
る傾斜機能材を作製する場合に、各リングをろう付けす
れば、内側リング12及び外側リング14には、残留応
力が付与される。そこで、例えば、この傾斜機能材を燃
焼室の構造に組付けた場合に、エンジン運転で燃焼室温
度が上昇して、常温より昇温した状態では、内側リング
12については、内側リング12の材料の熱膨張量と残
留圧縮応力の解放による内径を拡げる膨張変位量とをプ
ラスした熱膨張の変位となり、内側リング12の材料物
性値より大きな熱膨張をすることになる。また、外側リ
ング14については、外側リング14の材料の熱膨張量
から残留引張応力の解放による外径を縮める収縮変位量
をマイナスした熱膨張の変位となり、外側リング14の
材料物性値より小さい熱膨張をすることになる。即ち、
従来の傾斜機能材では、内周リング12の実際の熱膨張
量は、残留応力の影響によりその材料物性で決まる熱膨
張率で発生する熱膨張量より大きくなり、また、外周リ
ング14の実際の熱膨張量は、残留応力の影響によりそ
の材料物性で決まる熱膨張率で発生する熱膨張量より小
さくなる。従って、傾斜機能材の熱膨張率に対する傾斜
機能は小さくなってしまう。
【0009】上記のような問題は、前掲実開昭60−1
41446号公報に開示されたセラミック組込型ピスト
ンにも同様な問題がある。即ち、該セラミック組込型ピ
ストンは、アルミニウム合金から成るピストン本体に金
属リングをねじで締着し、該金属リングをセラミック部
材に接合したものであるが、金属とセラミックスとは熱
膨張率が異なり、熱応力を受けるようなピストンヘッド
ではセラミック部材にクラックや亀裂が発生し、セラミ
ック部材の破損の問題がある。
41446号公報に開示されたセラミック組込型ピスト
ンにも同様な問題がある。即ち、該セラミック組込型ピ
ストンは、アルミニウム合金から成るピストン本体に金
属リングをねじで締着し、該金属リングをセラミック部
材に接合したものであるが、金属とセラミックスとは熱
膨張率が異なり、熱応力を受けるようなピストンヘッド
ではセラミック部材にクラックや亀裂が発生し、セラミ
ック部材の破損の問題がある。
【0010】この発明の目的は、上記の課題を解決する
ことであり、例えば、金属製ピストンヘッド本体と半径
方向内向きに先尖りのリング状に伸びて中央に燃焼室開
口を形成する耐熱性に富んだセラミックスから成るリッ
プ部との間に介在させる熱膨張係数即ち熱膨張率の異な
る傾斜機能材から成るリング結合体において、常温と接
合温度とで熱膨張率が逆転するような材料を内側リング
と外側リングとに対して選定し、該リング結合体におけ
る内側リングに引張残留応力を且つ外側リングに圧縮残
留応力を負荷し、実際の熱膨張量をその材料の物性で決
まる熱膨張率に従って発生する熱膨張量を小さくし、傾
斜機能を増大させる傾斜機能材から成るリング結合体及
びその製造法を提供することである。
ことであり、例えば、金属製ピストンヘッド本体と半径
方向内向きに先尖りのリング状に伸びて中央に燃焼室開
口を形成する耐熱性に富んだセラミックスから成るリッ
プ部との間に介在させる熱膨張係数即ち熱膨張率の異な
る傾斜機能材から成るリング結合体において、常温と接
合温度とで熱膨張率が逆転するような材料を内側リング
と外側リングとに対して選定し、該リング結合体におけ
る内側リングに引張残留応力を且つ外側リングに圧縮残
留応力を負荷し、実際の熱膨張量をその材料の物性で決
まる熱膨張率に従って発生する熱膨張量を小さくし、傾
斜機能を増大させる傾斜機能材から成るリング結合体及
びその製造法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、内側リングと該内側リングの外周面に接合
した外側リングから製作した熱膨張率の異なる傾斜機能
材から成るリング結合体において、常温(使用温度)で
前記内側リングの熱膨張率が前記外側リングの熱膨張率
より小さく且つ接合温度で前記内側リングの熱膨張率が
前記外側リングの熱膨張率より大きく、常温(使用温
度)で前記内側リングに引張残留応力が且つ前記外側リ
ングに圧縮残留応力が負荷されたことを特徴とする傾斜
機能材から成るリング結合体に関する。
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、内側リングと該内側リングの外周面に接合
した外側リングから製作した熱膨張率の異なる傾斜機能
材から成るリング結合体において、常温(使用温度)で
前記内側リングの熱膨張率が前記外側リングの熱膨張率
より小さく且つ接合温度で前記内側リングの熱膨張率が
前記外側リングの熱膨張率より大きく、常温(使用温
度)で前記内側リングに引張残留応力が且つ前記外側リ
ングに圧縮残留応力が負荷されたことを特徴とする傾斜
機能材から成るリング結合体に関する。
【0012】また、この発明は、内側リングと該内側リ
ングの外周面に接合した外側リングから製作した熱膨張
率の異なる傾斜機能材から成るリング結合体の製造法に
おいて、接合温度で内側リングの熱膨張率が外側リング
の熱膨張率より大きく、常温で外側リングの熱膨張率が
内側リングの熱膨張率より大きくなるような常温と接合
温度とで熱膨張率が逆転する材料で前記内側リングと前
記外側リングを製作し、次いで前記内側リングと前記外
側リングとをろう付け又は拡散接合で互いに接合するこ
とを特徴とする傾斜機能材から成るリング結合体の製造
法に関する。
ングの外周面に接合した外側リングから製作した熱膨張
率の異なる傾斜機能材から成るリング結合体の製造法に
おいて、接合温度で内側リングの熱膨張率が外側リング
の熱膨張率より大きく、常温で外側リングの熱膨張率が
内側リングの熱膨張率より大きくなるような常温と接合
温度とで熱膨張率が逆転する材料で前記内側リングと前
記外側リングを製作し、次いで前記内側リングと前記外
側リングとをろう付け又は拡散接合で互いに接合するこ
とを特徴とする傾斜機能材から成るリング結合体の製造
法に関する。
【0013】或いは、この発明は、内側リングと該内側
リングの外周面に接合した外側リングから製作した熱膨
張率の異なる傾斜機能材から成るリング結合体の製造法
において、焼結温度で内側リングの熱膨張率が外側リン
グの熱膨張率より大きく、常温で外側リングの熱膨張率
が内側リングの熱膨張率より大きくなるような常温と焼
結温度とで熱膨張率が逆転する材料を選定し、該材料を
内側リング成形体と外側リング成形体を成形する型で一
体構造のリング成形体を成形し、該リング成形体を焼成
して一体構造の焼結体を製作し、前記内側リングに引張
残留応力を且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負荷し
たことを特徴とする傾斜機能材から成るリング結合体の
製造法に関する。
リングの外周面に接合した外側リングから製作した熱膨
張率の異なる傾斜機能材から成るリング結合体の製造法
において、焼結温度で内側リングの熱膨張率が外側リン
グの熱膨張率より大きく、常温で外側リングの熱膨張率
が内側リングの熱膨張率より大きくなるような常温と焼
結温度とで熱膨張率が逆転する材料を選定し、該材料を
内側リング成形体と外側リング成形体を成形する型で一
体構造のリング成形体を成形し、該リング成形体を焼成
して一体構造の焼結体を製作し、前記内側リングに引張
残留応力を且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負荷し
たことを特徴とする傾斜機能材から成るリング結合体の
製造法に関する。
【0014】
【作用】この発明による傾斜機能材から成るリング結合
体及びその製造法は、以上のように構成されており、次
のように作用する。即ち、この傾斜機能材から成るリン
グ結合体は、常温(使用温度)と接合温度とで熱膨張率
が逆転する材料で内側リングと外側リングを製作し、常
温(使用温度)で前記内側リングに引張残留応力を与え
且つ前記内側リングに接合した前記外側リングに圧縮残
留応力を与えたので、使用状態で昇温した時には、前記
内側リングは残留応力の解放による内径の収縮で熱膨張
は小さくなり、前記外側リングは残留応力の解放による
外径の膨張で熱膨張は大きくなり、傾斜機能が大きくな
る。従って、内側リングに低熱膨張率の材料から成るリ
ップ部を接合し且つ外側リングに高熱膨張率の材料から
成るピストンヘッド本体を接合した燃焼室に組み込んだ
場合に、前記リング結合体は該燃焼室にマッチした熱膨
張を起こして前記リップ部に対して良好な緩衝機能を提
供できる。
体及びその製造法は、以上のように構成されており、次
のように作用する。即ち、この傾斜機能材から成るリン
グ結合体は、常温(使用温度)と接合温度とで熱膨張率
が逆転する材料で内側リングと外側リングを製作し、常
温(使用温度)で前記内側リングに引張残留応力を与え
且つ前記内側リングに接合した前記外側リングに圧縮残
留応力を与えたので、使用状態で昇温した時には、前記
内側リングは残留応力の解放による内径の収縮で熱膨張
は小さくなり、前記外側リングは残留応力の解放による
外径の膨張で熱膨張は大きくなり、傾斜機能が大きくな
る。従って、内側リングに低熱膨張率の材料から成るリ
ップ部を接合し且つ外側リングに高熱膨張率の材料から
成るピストンヘッド本体を接合した燃焼室に組み込んだ
場合に、前記リング結合体は該燃焼室にマッチした熱膨
張を起こして前記リップ部に対して良好な緩衝機能を提
供できる。
【0015】また、この傾斜機能材から成るリング結合
体の製造法は、内側リングと外周リングとをろう付け又
は拡散接合で互いに接合すると、前記内側リングに引張
残留応力を負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を
負荷したリング結合体を容易に製作することができる。
体の製造法は、内側リングと外周リングとをろう付け又
は拡散接合で互いに接合すると、前記内側リングに引張
残留応力を負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を
負荷したリング結合体を容易に製作することができる。
【0016】或いは、この傾斜機能材から成るリング結
合体の製造法は、内側リングと外周リングとを接合した
リング結合体を製作するのに、内側リングとなる材料と
外側リングになる材料とを成形型に入れ、内側リング成
形体と外側リング成形体とが一体構造になった複合リン
グ成形体を成形し、次いで該複合リング成形体を焼成し
てリング焼結体を製作することで容易に製造できる。そ
して、このリング結合体には、前記内側リングに引張残
留応力を負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負
荷させることができる。
合体の製造法は、内側リングと外周リングとを接合した
リング結合体を製作するのに、内側リングとなる材料と
外側リングになる材料とを成形型に入れ、内側リング成
形体と外側リング成形体とが一体構造になった複合リン
グ成形体を成形し、次いで該複合リング成形体を焼成し
てリング焼結体を製作することで容易に製造できる。そ
して、このリング結合体には、前記内側リングに引張残
留応力を負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負
荷させることができる。
【0017】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明による傾斜
機能材から成るリング結合体及びその製造法の実施例を
説明する。図1はこの発明による傾斜機能材から成るリ
ング結合体の製造法を達成するための一実施例を示す説
明図、図2は材料の物性で決まる熱膨張率の例を示すグ
ラフ、及び図3はこの発明による傾斜機能材から成るリ
ング結合体をピストンヘッド本体に形成した燃焼室に適
用した一実施例を示す概略図である。
機能材から成るリング結合体及びその製造法の実施例を
説明する。図1はこの発明による傾斜機能材から成るリ
ング結合体の製造法を達成するための一実施例を示す説
明図、図2は材料の物性で決まる熱膨張率の例を示すグ
ラフ、及び図3はこの発明による傾斜機能材から成るリ
ング結合体をピストンヘッド本体に形成した燃焼室に適
用した一実施例を示す概略図である。
【0018】図3には、ピストンヘッド本体2に形成し
た燃焼室1を形成するキャビティ10の上方を覆うよう
に半径方向内向きに先尖り形状で伸び且つ燃焼室開口3
を備えたループ状リップ部8を有するリエントラント型
ピストンが示されている。このリエントラント型ピスト
ンは、鋳込み成形したピストンスカート及び該ピストン
スカートに固定され且つ燃焼室1を構成するキャビティ
10を備えたアルミニウム等の金属材から成るピストン
ヘッド本体2から成り、燃焼室1はキャビティ10の上
面に燃焼室開口3及び該燃焼室開口3より面積の大きい
キャビティ10の底面4を有しているものである。
た燃焼室1を形成するキャビティ10の上方を覆うよう
に半径方向内向きに先尖り形状で伸び且つ燃焼室開口3
を備えたループ状リップ部8を有するリエントラント型
ピストンが示されている。このリエントラント型ピスト
ンは、鋳込み成形したピストンスカート及び該ピストン
スカートに固定され且つ燃焼室1を構成するキャビティ
10を備えたアルミニウム等の金属材から成るピストン
ヘッド本体2から成り、燃焼室1はキャビティ10の上
面に燃焼室開口3及び該燃焼室開口3より面積の大きい
キャビティ10の底面4を有しているものである。
【0019】この燃焼室の構造は、ピストンヘッド本体
2に形成したキャビティ10に形成したキャビティ壁
面、該キャビティ壁面に接合したリング結合体7、及び
該リング結合体7に接合し且つピストンヘッド本体2か
ら半径方向内向きにテーパ面で先尖りにループ状に伸び
て中央部に燃焼室開口3を形成するリップ部8を有して
いる。リング結合体7は、熱膨張係数即ち熱膨張率αの
異なる傾斜機能材から成る同心円上に配置された複数の
リング、即ち外側リング5及び内側リング6を互いに接
合して構成されている。
2に形成したキャビティ10に形成したキャビティ壁
面、該キャビティ壁面に接合したリング結合体7、及び
該リング結合体7に接合し且つピストンヘッド本体2か
ら半径方向内向きにテーパ面で先尖りにループ状に伸び
て中央部に燃焼室開口3を形成するリップ部8を有して
いる。リング結合体7は、熱膨張係数即ち熱膨張率αの
異なる傾斜機能材から成る同心円上に配置された複数の
リング、即ち外側リング5及び内側リング6を互いに接
合して構成されている。
【0020】この燃焼室の構造において、リップ部8
は、耐熱性に富み且つ高温強度に富んだ低熱膨張率のセ
ラミックス、例えば、窒化珪素(Si3 N4 )、炭化珪
素(SiC)等から製作されている。このリップ部8
は、燃焼室開口3を形成する先端部は半径方向内向きに
伸びるテーパ面で極めて鋭角に先尖りのアール状態に形
成され、外周面を中央を境に上下を半径方向内向きに傾
斜したテーパ面を備える形状に製作されている。
は、耐熱性に富み且つ高温強度に富んだ低熱膨張率のセ
ラミックス、例えば、窒化珪素(Si3 N4 )、炭化珪
素(SiC)等から製作されている。このリップ部8
は、燃焼室開口3を形成する先端部は半径方向内向きに
伸びるテーパ面で極めて鋭角に先尖りのアール状態に形
成され、外周面を中央を境に上下を半径方向内向きに傾
斜したテーパ面を備える形状に製作されている。
【0021】リング結合体7は、図1又は図3に示すよ
うに、同心円上に配置して互いに接合した外側リング5
及び内側リング6から成り、内側リング6の熱膨張率α
と外側リング5の熱膨張率αは異なるものであり、リン
グ結合体7は熱膨張率αが異なる傾斜機能材として製作
されている。即ち、内側リング6を材料Aで製作し、外
側リング5を材料Bで製作する。図2に示すように、常
温或いは運転時の実働温度(例えば、エンジン燃焼室で
は、400〜500℃)では、内側リング6の材料Aの
熱膨張率αが外側リング5の材料Bの熱膨張率αより小
さくなっており、また、ろう付け温度、拡散接合温度或
いは焼結温度等の接合温度TH (例えば、1000〜1
100℃)では、内側リング6の材料Aの熱膨張率αが
外側リング5の材料Bの熱膨張率αより大きくなってい
る。即ち、材料Aと材料Bとの熱膨張率αは、リング結
合体7の使用状態の上昇した温度TR より高いが、接合
温度TH より低い状態の逆転温度TX (キューリ点)で
逆転している。上記のような材料A,Bを選定して内側
リング6と外側リング5を製作すれば、常温で内側リン
グ6に引張残留応力が負荷され、また、外側リング5に
圧縮残留応力が負荷される状態にリング結合体7を製作
することができる。
うに、同心円上に配置して互いに接合した外側リング5
及び内側リング6から成り、内側リング6の熱膨張率α
と外側リング5の熱膨張率αは異なるものであり、リン
グ結合体7は熱膨張率αが異なる傾斜機能材として製作
されている。即ち、内側リング6を材料Aで製作し、外
側リング5を材料Bで製作する。図2に示すように、常
温或いは運転時の実働温度(例えば、エンジン燃焼室で
は、400〜500℃)では、内側リング6の材料Aの
熱膨張率αが外側リング5の材料Bの熱膨張率αより小
さくなっており、また、ろう付け温度、拡散接合温度或
いは焼結温度等の接合温度TH (例えば、1000〜1
100℃)では、内側リング6の材料Aの熱膨張率αが
外側リング5の材料Bの熱膨張率αより大きくなってい
る。即ち、材料Aと材料Bとの熱膨張率αは、リング結
合体7の使用状態の上昇した温度TR より高いが、接合
温度TH より低い状態の逆転温度TX (キューリ点)で
逆転している。上記のような材料A,Bを選定して内側
リング6と外側リング5を製作すれば、常温で内側リン
グ6に引張残留応力が負荷され、また、外側リング5に
圧縮残留応力が負荷される状態にリング結合体7を製作
することができる。
【0022】上記のような材料A,Bは、インコロイ、
コバール、マンガン鋼、インバー、鉄−ニッケル系合
金、鉄−ニッケル−コバルト系合金、SUS、ハステロ
イ等の材料から種々の組み合わせが考えられる。図4
は、これらの材料の温度Tと熱膨張率(線膨張係数)α
との関係を示すグラフである。図4において、グラフの
右端は、900℃程度であり、作動温度TR 以上の温度
で熱膨張率αの逆転をしている状態が分かる。図4にお
いて、符号AはSUS、符号Bは鉄−ニッケル系合金、
符号Cはハステロイ、符号Dは鉄−ニッケル系合金、符
号Eはインコロイ、符号Fはモリブデン鋼、符号Gはニ
ッケル−マンガン−鉄系合金でインバー、符号Hはスー
パインバーの一例を示すものである。例えば、内側リン
グ6を材料Aをコバールを選定した場合に、外側リング
5の材料Bを上記条件に適合する材料に適合するものを
選定すればよい。
コバール、マンガン鋼、インバー、鉄−ニッケル系合
金、鉄−ニッケル−コバルト系合金、SUS、ハステロ
イ等の材料から種々の組み合わせが考えられる。図4
は、これらの材料の温度Tと熱膨張率(線膨張係数)α
との関係を示すグラフである。図4において、グラフの
右端は、900℃程度であり、作動温度TR 以上の温度
で熱膨張率αの逆転をしている状態が分かる。図4にお
いて、符号AはSUS、符号Bは鉄−ニッケル系合金、
符号Cはハステロイ、符号Dは鉄−ニッケル系合金、符
号Eはインコロイ、符号Fはモリブデン鋼、符号Gはニ
ッケル−マンガン−鉄系合金でインバー、符号Hはスー
パインバーの一例を示すものである。例えば、内側リン
グ6を材料Aをコバールを選定した場合に、外側リング
5の材料Bを上記条件に適合する材料に適合するものを
選定すればよい。
【0023】上記のように、リング結合体7を外側リン
グ5と内側リング6とを接合して製作すれば、例えば、
ピストンヘッドに形成した燃焼室1にリング結合体7を
組込んで使用した場合に、エンジン運転時の作動温度T
R (例えば、450℃)では、内側リング6は、材料物
性で決まる熱膨張率に従って発生する熱膨張の変位量か
ら引張残留応力の解放による内径を収縮する変位量がマ
イナスされた小さな変位量となり、また、外側リング5
は、材料物性で決まる熱膨張率に従って発生する熱膨張
の変位量と圧縮残留応力の解放による外径を拡大する変
位量とがプラスされた大きな変位量となる。従って、例
えば、アルミニウム製ピストンヘッド本体2にリング結
合体7を介して耐熱性に富んだセラミックスから成るリ
ップ部8を組付けた場合に、リップ部8の熱膨張は小さ
く、ピストンヘッド本体2の熱膨張は大きくなるので、
リップ部8側の内側リング6はリップ部8の熱膨張にマ
ッチでき、また、ピストンヘッド本体2側の外側リング
5はピストンヘッド本体2の熱膨張にマッチすることが
でき、リップ部8とピストンヘッド本体2に対してリン
グ結合体7の傾斜機能は増大する。
グ5と内側リング6とを接合して製作すれば、例えば、
ピストンヘッドに形成した燃焼室1にリング結合体7を
組込んで使用した場合に、エンジン運転時の作動温度T
R (例えば、450℃)では、内側リング6は、材料物
性で決まる熱膨張率に従って発生する熱膨張の変位量か
ら引張残留応力の解放による内径を収縮する変位量がマ
イナスされた小さな変位量となり、また、外側リング5
は、材料物性で決まる熱膨張率に従って発生する熱膨張
の変位量と圧縮残留応力の解放による外径を拡大する変
位量とがプラスされた大きな変位量となる。従って、例
えば、アルミニウム製ピストンヘッド本体2にリング結
合体7を介して耐熱性に富んだセラミックスから成るリ
ップ部8を組付けた場合に、リップ部8の熱膨張は小さ
く、ピストンヘッド本体2の熱膨張は大きくなるので、
リップ部8側の内側リング6はリップ部8の熱膨張にマ
ッチでき、また、ピストンヘッド本体2側の外側リング
5はピストンヘッド本体2の熱膨張にマッチすることが
でき、リップ部8とピストンヘッド本体2に対してリン
グ結合体7の傾斜機能は増大する。
【0024】次に、この発明による傾斜機能材から成る
リング結合体の製造法の一実施例を説明する。リング結
合体7を構成する内側リング6と外側リング5とは、図
2に示す材料A,Bを使用する。即ち、内側リング6の
材料Aの熱膨張率αは、接合温度TH (例えば、110
0℃)で外側リング5の材料Bの熱膨張率αより大き
く、常温で外側リング5の熱膨張係数αが内側リング6
の熱膨張係数αより大きくなる。即ち、常温と接合温度
とで熱膨張係数が逆転する材料で内側リング6と外側リ
ング5とをそれぞれ製作する。次いで、内側リング6と
外側リング5とを、炉中に隣接して配置し、境界面にろ
う材を配置して接合温度にまで上昇し、外側リング5と
内側リング6とをろう付けして互いに接合する。場合に
よっては、内側リング6と外側リング5とを拡散接合で
互いに接合してリング結合体7を製作することができ
る。
リング結合体の製造法の一実施例を説明する。リング結
合体7を構成する内側リング6と外側リング5とは、図
2に示す材料A,Bを使用する。即ち、内側リング6の
材料Aの熱膨張率αは、接合温度TH (例えば、110
0℃)で外側リング5の材料Bの熱膨張率αより大き
く、常温で外側リング5の熱膨張係数αが内側リング6
の熱膨張係数αより大きくなる。即ち、常温と接合温度
とで熱膨張係数が逆転する材料で内側リング6と外側リ
ング5とをそれぞれ製作する。次いで、内側リング6と
外側リング5とを、炉中に隣接して配置し、境界面にろ
う材を配置して接合温度にまで上昇し、外側リング5と
内側リング6とをろう付けして互いに接合する。場合に
よっては、内側リング6と外側リング5とを拡散接合で
互いに接合してリング結合体7を製作することができ
る。
【0025】或いは、この発明による傾斜機能材から成
るリング結合体の製造法の別の実施例を説明する。この
実施例の製造法でも、上記実施例の製造法と同様に、リ
ング結合体7を構成する内側リング6と外側リング5と
は、図2に示す材料A,Bを使用するものである。例え
ば、リング状の成形型の半径方向中央に隔壁を配置し、
該成形型の隔壁より半径方向内側に材料Aの原料粉末又
はスラリーを投入すると共に、成形型の隔壁より半径方
向外側に材料Bの原料粉末又はスラリーを投入する。次
いで、成形型から隔壁を取外し、プレスで各原料粉末又
はスラリーを同時に押圧成形し、内側リング成形体と外
側リング成形体から成る一体構造の複合リング成形体を
成形する。該複合リング成形体を硬化乾燥させた後、複
合リング成形体を焼成して一体構造のリング焼結体を作
製する。このリング焼結体は、半径方向内側には材料A
から成る内側リング6且つ半径方向外側には材料Bから
成る外側リング5が一体構造に接合された構造を有して
いる。このリング結合体7は、常温で内側リング6に引
張残留応力を且つ外側リング5に圧縮残留応力を負荷し
た状態に構成されている。
るリング結合体の製造法の別の実施例を説明する。この
実施例の製造法でも、上記実施例の製造法と同様に、リ
ング結合体7を構成する内側リング6と外側リング5と
は、図2に示す材料A,Bを使用するものである。例え
ば、リング状の成形型の半径方向中央に隔壁を配置し、
該成形型の隔壁より半径方向内側に材料Aの原料粉末又
はスラリーを投入すると共に、成形型の隔壁より半径方
向外側に材料Bの原料粉末又はスラリーを投入する。次
いで、成形型から隔壁を取外し、プレスで各原料粉末又
はスラリーを同時に押圧成形し、内側リング成形体と外
側リング成形体から成る一体構造の複合リング成形体を
成形する。該複合リング成形体を硬化乾燥させた後、複
合リング成形体を焼成して一体構造のリング焼結体を作
製する。このリング焼結体は、半径方向内側には材料A
から成る内側リング6且つ半径方向外側には材料Bから
成る外側リング5が一体構造に接合された構造を有して
いる。このリング結合体7は、常温で内側リング6に引
張残留応力を且つ外側リング5に圧縮残留応力を負荷し
た状態に構成されている。
【0026】この発明による傾斜機能材から成るリング
結合体を燃焼室に組み込んだ場合には、次のように作用
する。即ち、エンジンが運転された場合に温度差によっ
てリップ部8とピストンヘッド本体2との間で熱膨張差
によって大きな熱応力が生じても、傾斜機能材から成る
リング結合体7が大きな傾斜機能を発揮して緩衝材とし
て機能し、リップ部8とピストンヘッド本体2との間で
温度差による熱膨張差を吸収する。それ故に、燃焼室1
に温度変化が発生してリップ部8とピストンヘッド本体
2との間に熱膨張差が発生しても、リップ部8にクラッ
ク、亀裂等が発生せず燃焼室1が破壊されるようなこと
がない。しかも、リップ部8は先尖りで鋭角形状であっ
て燃焼ガスからの熱の流入が大きいが、リップ部8に流
入した熱はリング結合体7及び金属リング体6を通じて
ピストンヘッド本体2方向へ妨げられずに流れ、ピスト
ンスカート、ピストンリング等を通じてシリンダライナ
側へ流出する。従って、リップ部8の温度を高温に維持
することなく、温度上昇を抑えるので、リップ部8のエ
ッジを鋭角な先尖りの形状に構成しても、耐熱性で製作
されているので、該エッジが溶損したり、割れたりする
ことがない。
結合体を燃焼室に組み込んだ場合には、次のように作用
する。即ち、エンジンが運転された場合に温度差によっ
てリップ部8とピストンヘッド本体2との間で熱膨張差
によって大きな熱応力が生じても、傾斜機能材から成る
リング結合体7が大きな傾斜機能を発揮して緩衝材とし
て機能し、リップ部8とピストンヘッド本体2との間で
温度差による熱膨張差を吸収する。それ故に、燃焼室1
に温度変化が発生してリップ部8とピストンヘッド本体
2との間に熱膨張差が発生しても、リップ部8にクラッ
ク、亀裂等が発生せず燃焼室1が破壊されるようなこと
がない。しかも、リップ部8は先尖りで鋭角形状であっ
て燃焼ガスからの熱の流入が大きいが、リップ部8に流
入した熱はリング結合体7及び金属リング体6を通じて
ピストンヘッド本体2方向へ妨げられずに流れ、ピスト
ンスカート、ピストンリング等を通じてシリンダライナ
側へ流出する。従って、リップ部8の温度を高温に維持
することなく、温度上昇を抑えるので、リップ部8のエ
ッジを鋭角な先尖りの形状に構成しても、耐熱性で製作
されているので、該エッジが溶損したり、割れたりする
ことがない。
【0027】また、リップ部8は、熱膨張率が小さく耐
熱性に富んだセラミックス等の材料で製作するので、燃
焼室開口3を形成するリップ部8のエッジを極めて鋭角
に形成し且つ該形状を高温状態でも維持できる。従っ
て、ピストンの上昇の圧縮行程で発生するスキッシュ流
及びピストン下降の爆発行程で発生する逆スキッシュ流
を増大することができ、空気と燃料との混合を促進して
カーボン発生量を抑制し且つ燃料消費量を低減する燃焼
を行わせ、燃焼状態を改善することができる。
熱性に富んだセラミックス等の材料で製作するので、燃
焼室開口3を形成するリップ部8のエッジを極めて鋭角
に形成し且つ該形状を高温状態でも維持できる。従っ
て、ピストンの上昇の圧縮行程で発生するスキッシュ流
及びピストン下降の爆発行程で発生する逆スキッシュ流
を増大することができ、空気と燃料との混合を促進して
カーボン発生量を抑制し且つ燃料消費量を低減する燃焼
を行わせ、燃焼状態を改善することができる。
【0028】
【発明の効果】この発明による傾斜機能材から成るリン
グ結合体及びその製造法は、以上のように構成したの
で、次のような効果を有する。即ち、この傾斜機能材か
ら成るリング結合体は、内側リングと外側リングとを、
常温で内側リングの熱膨張率が外側リングの熱膨張率よ
り小さく且つ接合温度で前記内側リングの熱膨張率が前
記外側リングの熱膨張率より大きくなる材料で接合して
構成したので、常温で前記内側リングに引張残留応力を
負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負荷させる
ことができる。従って、使用の昇温時には、前記内側リ
ングの実際の熱膨張量が材料の物性で決まる熱膨張率に
従って生じる熱膨張より小さくなり、また、前記外側リ
ングの実際の熱膨張量が材料の物性で決まる熱膨張率に
従って生じる熱膨張より大きくなる。従って、このリン
グ結合体を、例えば、ピストンヘッドに形成する燃焼室
のアルミニウム製ピストンヘッド本体と低熱膨張率のセ
ラミックスから成るリップ部との間に組み込んだ場合
に、前記リップ部と前記ピストンヘッド本体との熱膨張
差を吸収するため、傾斜機能として極めてマッチした熱
膨張を起こし、傾斜機能が大きくなる。
グ結合体及びその製造法は、以上のように構成したの
で、次のような効果を有する。即ち、この傾斜機能材か
ら成るリング結合体は、内側リングと外側リングとを、
常温で内側リングの熱膨張率が外側リングの熱膨張率よ
り小さく且つ接合温度で前記内側リングの熱膨張率が前
記外側リングの熱膨張率より大きくなる材料で接合して
構成したので、常温で前記内側リングに引張残留応力を
負荷し且つ前記外側リングに圧縮残留応力を負荷させる
ことができる。従って、使用の昇温時には、前記内側リ
ングの実際の熱膨張量が材料の物性で決まる熱膨張率に
従って生じる熱膨張より小さくなり、また、前記外側リ
ングの実際の熱膨張量が材料の物性で決まる熱膨張率に
従って生じる熱膨張より大きくなる。従って、このリン
グ結合体を、例えば、ピストンヘッドに形成する燃焼室
のアルミニウム製ピストンヘッド本体と低熱膨張率のセ
ラミックスから成るリップ部との間に組み込んだ場合
に、前記リップ部と前記ピストンヘッド本体との熱膨張
差を吸収するため、傾斜機能として極めてマッチした熱
膨張を起こし、傾斜機能が大きくなる。
【0029】また、この発明による傾斜機能材から成る
リング結合体をピストンヘッドに形成した燃焼室に組付
けた場合には、前記リング結合体でリップ部とピストン
ヘッド本体との熱膨張差を吸収すると共に、特に、前記
外周リングはエンジン駆動時の昇温時に前記外周リング
の物性から決まる熱膨張率で発生する熱膨張より大きい
熱膨張の変形にすることができる。これに対して、前記
内側リングは昇温時に前記内側リングの物性から決まる
熱膨張率で発生する熱膨張より小さい熱膨張の変形にす
ることができる。従って、前記リップ部を低熱膨張率の
セラミックスで製作し、ピストンヘッド本体を高熱膨張
率の金属材料で製作した場合に、熱膨張率の相違で発生
する熱膨張差を吸収する傾斜機能を大きく発揮させるこ
とができ、構造上極めてマッチした傾斜機能を提供でき
る。
リング結合体をピストンヘッドに形成した燃焼室に組付
けた場合には、前記リング結合体でリップ部とピストン
ヘッド本体との熱膨張差を吸収すると共に、特に、前記
外周リングはエンジン駆動時の昇温時に前記外周リング
の物性から決まる熱膨張率で発生する熱膨張より大きい
熱膨張の変形にすることができる。これに対して、前記
内側リングは昇温時に前記内側リングの物性から決まる
熱膨張率で発生する熱膨張より小さい熱膨張の変形にす
ることができる。従って、前記リップ部を低熱膨張率の
セラミックスで製作し、ピストンヘッド本体を高熱膨張
率の金属材料で製作した場合に、熱膨張率の相違で発生
する熱膨張差を吸収する傾斜機能を大きく発揮させるこ
とができ、構造上極めてマッチした傾斜機能を提供でき
る。
【0030】また、前記リップ部は、前記ピストンヘッ
ド本体からの熱膨張の影響が前記リング結合体の傾斜機
能材で緩和されるので、耐熱性に富んだセラミックスで
形成でき、前記リップ部の先端部を半径方向内向きのテ
ーパ面で鋭角に先尖りに形成できる。しかも、前記リッ
プ部のエッジを鋭角に形成することによって、ピストン
の上昇の圧縮行程で発生する燃焼室内へ流入するスキッ
シュ流、及びピストン下降の爆発行程で発生する燃焼室
内から流出する逆スキッシュ流を増大することができ、
該スキッシュ流及び該逆スキッシュ流による噴霧燃料と
空気との混合を一層良好に達成でき、従来のリエントラ
ント型ピストンに比較して、カーボン発生量を抑制し且
つ燃料消費量を低減して燃焼を改善することができる。
ド本体からの熱膨張の影響が前記リング結合体の傾斜機
能材で緩和されるので、耐熱性に富んだセラミックスで
形成でき、前記リップ部の先端部を半径方向内向きのテ
ーパ面で鋭角に先尖りに形成できる。しかも、前記リッ
プ部のエッジを鋭角に形成することによって、ピストン
の上昇の圧縮行程で発生する燃焼室内へ流入するスキッ
シュ流、及びピストン下降の爆発行程で発生する燃焼室
内から流出する逆スキッシュ流を増大することができ、
該スキッシュ流及び該逆スキッシュ流による噴霧燃料と
空気との混合を一層良好に達成でき、従来のリエントラ
ント型ピストンに比較して、カーボン発生量を抑制し且
つ燃料消費量を低減して燃焼を改善することができる。
【0031】また、前記リップ部を傾斜機能材の前記リ
ング結合体を介してピストンヘッド本体に密接状態に組
付けることで、燃焼室の先端部の前記リップ部から外周
部の前記ピストンヘッドまで各境界での熱流が妨げられ
ることがなく、良好に熱は伝導されて前記リップ部の先
端部の熱をピストンヘッド本体、ピストンリング、シリ
ンダライナ等を通じて外部へ移動させ、燃焼ガスによっ
て前記リップ部の先端部が高温になっても直ちに熱を移
動させて高温状態に維持されるのを回避し、高温による
前記リップ先端部の溶損を防止することができる。
ング結合体を介してピストンヘッド本体に密接状態に組
付けることで、燃焼室の先端部の前記リップ部から外周
部の前記ピストンヘッドまで各境界での熱流が妨げられ
ることがなく、良好に熱は伝導されて前記リップ部の先
端部の熱をピストンヘッド本体、ピストンリング、シリ
ンダライナ等を通じて外部へ移動させ、燃焼ガスによっ
て前記リップ部の先端部が高温になっても直ちに熱を移
動させて高温状態に維持されるのを回避し、高温による
前記リップ先端部の溶損を防止することができる。
【0032】また、この発明による傾斜機能材から成る
リング結合体を製造するには、上記材料で内側リングと
外側リングを製作し、次いで、内側リングと外側リング
とをろう付け接合又は拡散接合で互いに接合すること
で、前記内側リングに引張残留応力を負荷し且つ前記外
側リングに圧縮残留応力を負荷したリング結合体を容易
に製作することができる。
リング結合体を製造するには、上記材料で内側リングと
外側リングを製作し、次いで、内側リングと外側リング
とをろう付け接合又は拡散接合で互いに接合すること
で、前記内側リングに引張残留応力を負荷し且つ前記外
側リングに圧縮残留応力を負荷したリング結合体を容易
に製作することができる。
【0033】或いは、この発明による傾斜機能材から成
るリング結合体を製造するには、上記材料の特性を有す
る原料で内側リング成形体と外側リング成形体を成形
し、型で一体構造の複合リング成形体を成形し、該複合
リング成形体を焼成して一体構造の焼結体を製作するこ
とで、前記内側リングに引張残留応力を負荷し且つ前記
外側リングに圧縮残留応力を負荷させたリング結合体を
容易に製造することができる。
るリング結合体を製造するには、上記材料の特性を有す
る原料で内側リング成形体と外側リング成形体を成形
し、型で一体構造の複合リング成形体を成形し、該複合
リング成形体を焼成して一体構造の焼結体を製作するこ
とで、前記内側リングに引張残留応力を負荷し且つ前記
外側リングに圧縮残留応力を負荷させたリング結合体を
容易に製造することができる。
【図1】この発明による傾斜機能材から成るリング結合
体の製造法を達成するための一実施例を示す説明図であ
る。
体の製造法を達成するための一実施例を示す説明図であ
る。
【図2】図2は材料の物性で決まる熱膨張係数の例を示
すグラフである。
すグラフである。
【図3】この発明による傾斜機能材から成るリング結合
体をピストンヘッド本体に組付けて構成した燃焼室を示
す断面図である。
体をピストンヘッド本体に組付けて構成した燃焼室を示
す断面図である。
【図4】リング結合体を製作するための各種材料の温度
と熱膨張率との関係を示すグラフである。
と熱膨張率との関係を示すグラフである。
【図5】複数のリングを接合してリング結合体を形成す
る製造法の一例を示す説明図である。
る製造法の一例を示す説明図である。
【図6】図5に示す製造法で形成したリング結合体を示
す説明図である。
す説明図である。
1 燃焼室 2 ピストンヘッド本体 3 燃焼室開口 5 外側リング 6 内側リング 7 リング結合体 8 リップ部 10 キャビティ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F02F 3/00 F02F 3/00 301 F02F 3/00 302 F02F 3/26 B21C 37/06 B23P 11/02
Claims (3)
- 【請求項1】 内側リングと該内側リングの外周面に接
合した外側リングから製作した熱膨張率の異なる傾斜機
能材から成るリング結合体において、常温で前記内側リ
ングの熱膨張率が前記外側リングの熱膨張率より小さく
且つ接合温度で前記内側リングの熱膨張率が前記外側リ
ングの熱膨張率より大きく、常温で前記内側リングに引
張残留応力が且つ前記外側リングに圧縮残留応力が負荷
されたことを特徴とする傾斜機能材から成るリング結合
体。 - 【請求項2】 内側リングと該内側リングの外周面に接
合した外側リングから製作した熱膨張率の異なる傾斜機
能材から成るリング結合体の製造法において、接合温度
で内側リングの熱膨張率が外側リングの熱膨張率より大
きく、常温で外側リングの熱膨張率が内側リングの熱膨
張率より大きくなるような常温と接合温度とで熱膨張率
が逆転する材料で前記内側リングと前記外側リングを製
作し、次いで、前記内側リングと前記外側リングとをろ
う付け接合又は拡散接合で互いに接合することを特徴と
する傾斜機能材から成るリング結合体の製造法。 - 【請求項3】 内側リングと該内側リングの外周面に接
合した外側リングから製作した熱膨張率の異なる傾斜機
能材から成るリング結合体の製造法において、焼結温度
で内側リングの熱膨張率が外側リングの熱膨張率より大
きく、常温で外側リングの熱膨張率が内側リングの熱膨
張率より大きくなるような常温と焼結温度とで熱膨張率
が逆転する材料を選定し、該材料を内側リング成形体と
外側リング成形体を成形する型で一体構造のリング成形
体を成形し、該リング成形体を焼成して一体構造の焼結
体を製作し、前記内側リングに引張残留応力を且つ前記
外側リングに圧縮残留応力を負荷したことを特徴とする
傾斜機能材から成るリング結合体の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3055486A JP2850554B2 (ja) | 1991-02-28 | 1991-02-28 | 傾斜機能材から成るリング結合体及びその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3055486A JP2850554B2 (ja) | 1991-02-28 | 1991-02-28 | 傾斜機能材から成るリング結合体及びその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04272451A JPH04272451A (ja) | 1992-09-29 |
JP2850554B2 true JP2850554B2 (ja) | 1999-01-27 |
Family
ID=12999956
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3055486A Expired - Lifetime JP2850554B2 (ja) | 1991-02-28 | 1991-02-28 | 傾斜機能材から成るリング結合体及びその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2850554B2 (ja) |
-
1991
- 1991-02-28 JP JP3055486A patent/JP2850554B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH04272451A (ja) | 1992-09-29 |
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