JP2949881B2 - 燃焼室の構造及びその製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ピストンヘッド本体
に形成したキャビティ壁面にリング状リップ部を接合し
て燃焼室開口を形成した燃焼室の構造及びその製造法に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、セラミック組込型ピストンとし
て、実開昭６０−１４１４４６号公報に開示されたもの
がある。該公報に開示されたセラミック組込型ピストン
は、アルミニウム合金から成るピストン本体の燃焼室側
の凹部にセラミック部材を組込んだものであり、セラミ
ック部材の外周に熱膨張係数が１０〜２３×１０^{- 1} ／
℃の耐熱耐食性金属リングで且つ頭部に複数の締結用孔
を備えた突出部を有する金属リングを接合して該突端を
セラミック部材の上端面より突出させ、前記金属リング
の外周に前記ピストン本体の凹部に設けられた雌ねじ部
に螺着する雄ねじ部を螺刻した組立体とし、この組立体
を前記ピストン本体に締着した後、前記締結用孔を含む
突出部を除去したものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、直噴式ディ
ーゼルエンジンの燃焼室において、ピストンヘッド本体
に形成する燃焼室としてリエントラント型燃焼室を用い
る場合、燃焼室開口を形成するリップ部の先端を先尖り
にシャープに形成することによって、シリンダ内と燃焼
室内とを出入りする空気の乱れ即ちスキッシュ流及び逆
スキッシュ流の乱れが増加し、空気と燃料との混合が促
進され、混合気生成が早くなり、燃焼状態が良好になっ
てスモークの発生を低減できる燃焼を確保することがで
きる。

【０００４】しかしながら、従来のようなアルミニウム
材或いはセラミックファイバー強化アルミニウム材から
形成したピストンでは、燃焼室を構成するリップ部の先
端を先尖りにシャープに形成すると、リップ部先端の温
度は高温になり、リップ部に加わる熱負荷即ち熱応力の
ためにリップ部の溶解現象、クラック発生等の破損が発
生し、リップ部の先端を鋭くするにも限界があった。ま
た、リップ部の先端部を耐熱性に優れた非アルミニウム
材、例えば、ニレジスト、スチール、Ｆｃ、セラミック
ス等を使用した場合には、ピストンヘッド本体を構成す
るアルミニウム材との間に、熱膨張率に大きな差が生
じ、境界面或いは接合面に剥離等が発生し、問題があっ
た。

【０００５】上記のような問題は、前掲実開昭６０−１
４１４４６号公報に開示されたセラミック組込型ピスト
ンにも同様な問題がある。即ち、該セラミック組込型ピ
ストンは、アルミニウム合金から成るピストン本体に金
属リングをねじで締着し、該金属リングをセラミック部
材に接合したものであるが、金属とセラミックスとは熱
膨張率が異なり、熱応力を受けるようなピストンヘッド
ではセラミック部材にクラックや亀裂が発生し、セラミ
ック部材の破損の問題がある。

【０００６】そこで、燃焼室を形成するリップ部を耐熱
性に富んだセラミックスで形成し、リップ部の先端部を
シャープに形成し、該リップ部を熱膨張率の異なる傾斜
機能金属材から成るリング結合体でピストンヘッド本体
のキャビティ壁面に取付けると共に、リップ部からピス
トンヘッド本体への熱伝導を良好に構成することが考え
られる。しかしながら、リップ部、リング結合体及びピ
ストンヘッド本体は互いに接合する場合に、各部材は異
種の材料であるため、該各部材の接合面を良好にしなけ
れば、接合面での熱流を良好にすることはできない。各
部材の接合面を良好にする手段としてメタルフローが考
えられる。例えば、リップ部とリング結合体とを接合す
る場合には、リング結合体をメタルフローしてリップ部
をリング結合体に接合し、また、リング結合体とピスト
ンヘッド本体のキャビティ壁面とを接合する場合には、
キャビティ壁部をメタルフローしてリング結合体をキャ
ビティ壁面に接合することである。

【０００７】ところで、リップ部とリング結合体とを接
合する場合或いはリング結合体とピストンヘッド本体の
キャビティ壁面とを接合する場合に、図３に示すよう
に、被メタルフロー側の部材即ちリップ部８又はリップ
部８とリング結合体６とを接合したリップ組立体７の形
状を断面三角形に形成した場合には、メタルフロー側の
部材は加熱加圧によって塑性変形し、次いでメタルフロ
ーして被メタルフロー側の接合面に接合するが、メタル
フロー側の部材を加圧する時、被メタルフロー側の部材
即ちリップ部８又はリップ組立体７は、図３の矢印で示
すように、接合面に対して垂直な方向の剪断応力を受け
ることになる。そのため、被メタルフロー側の部材は、
テーパ面で小さくなった下部に最大剪断応力が作用し、
該部材が破損する可能性がある。

【０００８】また、リップ部とリング結合体とを接合す
る場合或いはリング結合体とピストンヘッド本体のキャ
ビティ壁面とを接合する場合に、接合面の一部の面、例
えば、被メタルフロー側の部材をメタルフロー側の部材
で支持するためのテーパ面を互いに密着する程度にまで
加工するには、加工精度が要求され、コストアップにな
る原因になる。例えば、図４又は図５に示すように、メ
タルフロー側と被メタルフロー側の各部材の接触面とな
るテーパ面にも僅かな隙間２１が存在するものである。
このような隙間２１が存在する状態で、メタルフローを
行えば、この隙間２１がそのまま残ってしまい、強度を
低下させるだけでなく、熱伝導を低下させ、リップ部か
らピストンヘッド本体への熱流の障害になる。

【０００９】そこで、この発明の目的は、上記の課題を
解決することであり、金属製ピストンヘッド本体のキャ
ビティ壁面に接合した熱膨張率が異なる傾斜機能材から
成るリング結合体及び前記リング結合体の内周面に接合
した耐熱性に富んだセラミックスから成るリップ部から
構成し、該燃焼室の形状を燃焼室側壁面が半径方向内向
きのテーパ面で先尖りに伸びる燃焼室開口を形成した場
合に、リップ部及びリング結合体をメタルフローで接合
するに当たって、メタルフロー側の部材を加熱加圧する
時に被メタルフロー側の部材に発生する応力を良好に受
けることができるように、被メタルフロー側の部材の接
合面について径方向の寸法が短い部分即ち下部外周面を
テーパ面に形成して剪断応力の方向を変更し、該部分の
破損を防止する燃焼室の構造を提供することである。

【００１０】この発明の別の目的は、金属製ピストンヘ
ッド本体のキャビティ壁面に接合した熱膨張率が異なる
傾斜機能材から成るリング結合体及び前記リング結合体
の内周面に接合した耐熱性に富んだセラミックスから成
るリップ部から製作し、該燃焼室の形状を燃焼室側壁面
が半径方向内向きのテーパ面で先尖りに伸びる燃焼室開
口を形成する場合に、リップ部及びリング結合体をメタ
ルフローで接合する工程において、まず、メタルフロー
側となる部分を加熱加圧して塑性変形させて該部分を被
メタルフロー側の接合面に密着させ、次いでメタルフロ
ー側となる前記部分をメタルフローして前記接合面に接
合させ、前記接合面を完全に密着させ、接合面即ち境界
面での熱伝導を良好にして前記リップ部から前記ピスト
ンヘッド本体への熱流を良好にし、前記リップ部の溶損
を防止する燃焼室の製造法を提供することである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、金属製ピストンヘッド本体に形成したキャ
ビティ壁面に熱膨張率が異なる傾斜機能材から成るリン
グ結合体の外周面をメタルフローで接合すると共に、前
記リング結合体の内周面に耐熱性に富んだセラミックス
から成るリップ部の外周面をメタルフローで接合して燃
焼室側壁面が半径方向内向きのテーパ面で先尖りに伸び
る燃焼室開口を形成した燃焼室の構造において、被メタ
ルフロー側となる前記リング結合体の下部外周面及び前
記リップ部の下部外周面を半径方向内向きに伸びるテー
パ面に形成したことを特徴とする燃焼室の構造に関す
る。

【００１２】また、この発明は、金属製ピストンヘッド
本体に形成したキャビティ壁面に熱膨張率が異なる傾斜
機能材から成るリング結合体の外周面をメタルフローで
接合すると共に、燃焼室側壁面が半径方向内向きのテー
パ面で先尖りに伸びて燃焼室開口を形成する耐熱性に富
んだセラミックスから成るリップ部の外周面を前記リン
グ結合体の内周面にメタルフローで接合する燃焼室の製
造法において、メタルフロー側となる部分を加熱加圧し
て塑性変形させ、該部分を被メタルフロー側の接合面に
密着させて接合させる工程、を有する燃焼室の製造法に
関する。

【００１３】

【作用】この発明による燃焼室の構造及びその製造方法
は、以上のように構成されており、次のように作用す
る。即ち、この燃焼室の構造は、被メタルフロー側とな
るリング結合体の下部外周面及びリップ部の下部外周面
を半径方向内向きに伸びるテーパ面に形成したので、接
合面に働く応力は接触面に垂直に作用することになり、
メタルフロー側の部材を加熱加圧する場合に、該部材に
よって接触面に垂直な方向に発生する被メタルフロー側
の部材への剪断応力の方向即ち力の作用線は径の大きい
側へ変わる。従って、被メタルフロー側の部材の径の小
さい部分の損傷を避けることができる。

【００１４】また、この燃焼室の製造法は、メタルフロ
ー側となる部分を加熱加圧して塑性変形させ、該部分を
被メタルフロー側の接合面に密着させ、次いで、メタル
フロー側となる前記部分をメタルフローして前記接合面
に接合させるので、各部材間に存在する隙間は最初に加
熱加圧して塑性変形させた工程で、塑性変形した部材が
前記隙間に確実に密着状態に侵入し、完全に隙間は埋め
られる。従って、両者は強固に接合され、しかも接合面
の接触面は密着状態に接合され、接合面での熱伝導の障
害はなく、熱伝導が良好になる。

【００１５】

【実施例】以下、図面を参照して、この発明による燃焼
室の構造及びその製造法の実施例を説明する。図１はこ
の発明による燃焼室の構造の一実施例を示す概略断面
図、及び図２は図１の燃焼室を製作するための被メタル
フロー側になるリップ部を示す拡大断面図である。

【００１６】この発明による燃焼室の構造を備えたピス
トンは、図１に示すように、ピストンヘッド本体２に形
成した燃焼室１を形成するキャビティ１０の上方を覆う
ようにリップ部８を有するリエントラント型ピストンで
ある。このリエントラント型ピストンは、鋳込み成形し
たピストンスカート及び該ピストンスカートに固定され
且つ燃焼室１を構成するキャビティ１０を備えたアルミ
ニウム、アルミニウム合金等の金属材料から成るピスト
ンヘッド本体２から成り、燃焼室１はキャビティ１０の
上面に燃焼室開口３及び該燃焼室開口３より面積の大き
いキャビティ１０の底面４を有しているものである。ピ
ストンヘッド本体２に形成されたキャビティ１０の壁面
１７は、下部が半径方向内向きに伸びるテーパ面１７Ｔ
に形成され、上部がストレートに伸びる円筒面１７Ｓに
形成されている（図４参照）。

【００１７】この燃焼室の構造において、リップ部８
は、耐熱性に富み且つ高温強度に富んだ材料、例えば、
窒化珪素（Ｓｉ₃ Ｎ₄ ）、炭化珪素（ＳｉＣ）等のセラ
ミック材料から製作されている。リップ部８の形状は、
半径方向内向きにテーパ面１１で先尖り形状に伸びて燃
焼室開口３を形成したループ状リングであり、下側をテ
ーパ面１１に且つ上側をピストンヘッド上面となる平面
に形成されている。特に、このリップ部８は、燃焼室開
口３を形成する先端は極めて鋭角に先尖りのアール状態
に形成され、外周面９を中央付近を境に少なくとも下側
を半径方向内向きに傾斜したテーパ面９Ｔに形成してい
る。図２では、外周面９は、上側をストレートの円筒面
９Ｓに形成し且つ下側をテーパ面９Ｔの円錐面に形成さ
れている。このテーパ面９Ｔは、下側のテーパ面１１に
対して垂直方向に伸びている。リップ部８の円筒面９Ｓ
は、場合によっては、内向きに僅かにテーパ面を形成す
ることもできる。従って、リップ部８を、後述のメタル
フロー側の部材即ちリング結合体６にメタルフローで接
合する場合に、リング結合体６を加熱加圧して塑性変形
させる時に、リング結合体６からリップ部８に作用する
接合面となる部分にかかる剪断応力は、下側のテーパ面
１１に平行な方向に変わる。それ故、従来のように、リ
ップ部８の下端部２２が破損するような状態を避けるこ
とができる。

【００１８】上記のリップ部８に関する構成について
は、リップ部８の外周面９を接合した後述の熱膨張率の
異なる傾斜機能材から成るリング結合体６についても同
様である。即ち、図１に示すように、リング結合体６の
外周面５の下側にはテーパ面５Ｔに形成され且つ上側に
は円筒面９Ｓ或いはテーパ面が形成されている。

【００１９】この燃焼室は、ピストンヘッド本体２に形
成したキャビティ１０に形成したキャビティ壁面５に外
周面をメタルフローで接合し且つ内周面にリップ部８を
メタルフロー等で接合した傾斜機能材から成るリング結
合体６を有している。このリング結合体６は、図４に示
すように、熱膨張率の異なる複数のリング１２，１３，
１４，１５をろう付け等で接合して形成した傾斜機能材
から製作されている。リング結合体６の上下面は、下側
をテーパ面１１に且つ上側をピストンヘッド上面となる
平面に形成されている。リング結合体６の内周面１６
は、リップ部８をメタルフローで接合するため、リップ
部８の外周面９Ｔにほぼ対応するテーパ面１６Ｔの形状
に形成されている。また、リング結合体６の外周面５
は、図２に示すリップ部８の外周面９と同様に、上側を
ストレートの円筒面或いは内向きのテーパ面５Ｓに形成
し且つ下側をテーパ面５Ｔの円錐面に形成されている。
即ち、リング結合体６をメタルフローしてリップ部８を
接合してリップ組立体を製作し、次いで、該リップ組立
体をピストンヘッド本体２のキャビティ壁面５に接合す
る場合に、ピストンヘッド本体２のキャビティ壁部をメ
タルフローしてリップ組立体を接合するが、この時、リ
ング結合体６の外周面５についても、リップ部８の場合
と同様に、少なくとも外周面下部をテーパ面５Ｔに形成
する。リング結合体６の外周面５を金属材料から成るピ
ストンヘッド本体２に形成したキャビティ壁面１７に対
向配置することによって、ピストンヘッド本体２の円筒
面１７Ｓとリング結合体６の外周面５のテーパ面５Ｔと
の間に隙間２０が形成される。そこで、ピストンヘッド
本体２のキャビティ壁部の肉盛り即ち突出部１８をメタ
ルフローさせ、金属材料を塑性変形させて上記隙間２０
に流動させ、ピストンヘッド本体２にリング結合体６を
接合させる（図５、図６及び図７参照）。

【００２０】リング結合体６は、内側のリングの熱膨張
率が外側のリングの熱膨張率より小さい傾斜機能材から
製作されている。例えば、リング結合体６の傾斜機能材
は、リップ部８とピストンヘッド本体２との両者の熱膨
張率の中間の熱膨張率を有する金属材料、例えば、ニッ
ケル系、コバルト系、鉄系の金属材料から製作されてい
る。具体的には、最内周側リング１２をコバール（Ｋｏ
ｖｅｒ）、４２アロイ等で製作し、最外周側リング１５
をインコロイ（Ｉｎｃｏｌｌｏｙ）で製作し、中間のリ
ング１３，１４をコバールとインコロイとの中間の熱膨
張率を有する材料で製作し、各リング１２，１３，１
４，１５をろう付け等で接合して一体構造に構成されて
いる。各リングを上記のような材料で製作することによ
って、リップ部８側に位置するリング１２はリップ部８
の熱膨張率に近い熱膨張率の材料から構成でき、また、
ピストンヘッド本体２側に位置するリング１５はピスト
ンヘッド本体２の熱膨張率に近い熱膨張率の材料から構
成できることになる。従って、リング結合体６は、内周
側から外周側に向かって段階的に熱膨張率が変化するよ
うに構成され、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック
材料に近い熱膨張率からアルミニウム、アルミニウム合
金等の金属材料の熱膨張率に近い状態に構成される。

【００２１】次に、この発明による燃焼室の製造法の一
実施例を、図４、図５、図６及び図７を参照して説明す
る。この燃焼室の製造法の実施例では、図４に示すよう
に、リップ部８をリング結合体６にメタルフローで接合
してリップ組立体７を使用し、該リップ組立体７をピス
トンヘッド本体２のキャビティ壁面１７にメタルフロー
で接合する場合について説明する。図４はリップ組立体
７を示す概略断面図、図５はこの発明による燃焼室の製
造法においてリップ組立体をピストンヘッド本体に接合
するに先立って配置した状態を示す説明図、図６はピス
トンヘッド本体のメタルフローする部分を加熱加圧して
塑性変形させた状態を示す説明図、及び図７はピストン
ヘッド本体にリップ組立体をメタルフローで接合した状
態を示す説明図である。

【００２２】図４に示すように、リング結合体６を熱膨
張率の異なる傾斜機能材から成る複数のリング１２，１
３，１４，１５から製作した後に、該リング結合体６の
内周面１６にリップ部８の外周面９をメタルフロー等で
接合してリップ組立体７を製作する。また、ピストンヘ
ッド本体２には、キャビティ１０を形成する壁面１７に
リップ組立体７に隣接するキャビティ壁部分にピストン
ヘッド本体２の上面より突出する肉盛り部即ち突出部１
８が形成されている。

【００２３】リップ組立体７を製作した後に、該リップ
組立体７の外周面５をピストンヘッド本体２に形成した
キャビティ１０の壁面１７に配置して設定する。この場
合、ピストンヘッド本体２の壁面１７は、下半分には半
径方向内向きに伸びるテーパ面１７Ｔが形成され且つ上
半分はストレートに伸びる円筒面１７Ｓに形成されてい
る。そして、リップ組立体７の外周面即ちリング結合体
６の外周面５は、下半分にはテーパ面５Ｔが形成され且
つ上半分にはテーパ面或いは円筒面５Ｓが形成されてい
る。しかしながら、通常、加工精度上、壁面１７のテー
パ面１７Ｔとリング結合体６のテーパ面５Ｔとは整合せ
ず、僅かな隙間２１が形成されるものである。

【００２４】そこで、この燃焼室の製造法では、上記隙
間２１をメタルフローに先立って埋めて隙間２１を無く
すために、次の処理を行う。即ち、突出部１８にプレス
治具２４を当接させ、該プレス治具２４に近接して高周
波コイル２２を配置すると共に、下側にも高周波コイル
２６を配置する。プレス治具２４は、Ｓ５０Ｃ等で製作
されており、高周波コイル２２，２６に電流を流すこと
によって、直接に或いはプレス治具２４を通じてピスト
ンヘッド本体２のキャビティ壁部付近であるテーパ面１
７Ｔ付近を高周波加熱し、該キャビティ壁面１７に設け
た突出部１８を治具プレス２４で加圧し、ピストンヘッ
ド本体２のキャビティ壁部を塑性変形させ、ピストンヘ
ッド本体２のテーパ面１７Ｔをリング結合体６のテーパ
面５Ｔに密接させる。

【００２５】次いで、ピストンヘッド本体２のキャビテ
ィ壁部付近即ち突出部１８と該突出部近傍を更に加熱
し、その部分をメタルフローさせて塑性流動させ、リン
グ結合体６の上半分のテーパ面又は円筒面５Ｓとピスト
ンヘッド本体２のキャビティ壁面１７とで形成される隙
間２０にメタルフローで流動させ、ピストンヘッド本体
２とリップ組立体７とを密着状態に接合させる。しか
も、ピストンヘッド本体２の金属材料が空間部２０に侵
入することによって、リップ組立体６はピストンヘッド
本体２の上下壁体で包み込まれた状態になるので、機械
的にも強固に結合される。ピストンヘッド本体２とリッ
プ組立体７とを接合した後、ピストンヘッド本体２のキ
ャビティ頂面を切削加工して滑らかな面に仕上げる。

【００２６】次に、図８を参照して、この発明による燃
焼室の製造法の別の実施例を説明する。この実施例は、
上記実施例に比較して、リップ組立体７のリング結合体
６の外周面５とピストンヘッド本体２のキャビティ壁面
１７との間に形成される隙間２５の位置が相違する以外
は、全く同一の製造法であるので、重複する説明は省略
する。即ち、リング結合体６とピストンヘッド本体２の
キャビティ壁面１７との加工時には、上記実施例の隙間
２１だけでなく、図８に示すように、リング結合体６の
外周面５とキャビティ壁面１７のテーパ面１７Ｔとの間
に形成される隙間２５が、下方に向かって開放状態にな
る場合もある。

【００２７】この発明による燃焼室の構造及びその製造
法は、上記のように構成されているので、次のように作
用する。即ち、エンジンが運転された場合に温度差によ
ってリップ部８とピストンヘッド本体２との間で熱膨張
差によって大きな熱応力が生じても、傾斜機能材から成
るリング結合体６が緩衝材として機能し、リップ部８と
ピストンヘッド本体２との間で温度差による熱膨張差を
吸収する。それ故に、燃焼室１に温度変化が発生してリ
ップ部８とピストンヘッド本体２との間に熱膨張差が発
生しても、リップ部８にクラック、亀裂等が発生せず燃
焼室１が破壊されるようなことがない。しかも、リップ
部８は先尖りで鋭角形状であって燃焼ガスからの熱の流
入が大きいが、リップ部８に流入した熱はリング結合体
６を通じてピストンヘッド本体２方向へ妨げられずに流
れ、ピストンスカート、ピストンリング等を通じてシリ
ンダライナ側へ流出する。従って、リップ部８の温度を
高温に維持することなく、温度上昇を抑えるので、リッ
プ部８のエッジを鋭角な先尖りの形状に構成しても、耐
熱性で製作されているので、該エッジが溶損したり、割
れたりすることがない。

【００２８】また、リップ部８は、熱膨張率が小さく耐
熱性に富んだセラミックス等の材料で製作するので、燃
焼室開口３を形成するリップ部８のエッジを極めて鋭角
に形成し且つ該形状を高温状態でも維持できる。従っ
て、ピストンの上昇の圧縮行程で発生するスキッシュ流
及びピストン下降の爆発行程で発生する逆スキッシュ流
を増大することができ、空気と燃料との混合を促進して
カーボン発生量を抑制し且つ燃料消費量を低減する燃焼
を行わせ、燃焼状態を改善することができる。

【００２９】

【発明の効果】この発明による燃焼室の構造及びその製
造法は、以上のように構成したので、次のような効果を
有する。即ち、この燃焼室の構造は、金属製ピストンヘ
ッド本体に形成したキャビティ壁面に熱膨張率が異なる
傾斜機能材から成るリング結合体の外周面をメタルフロ
ーで接合すると共に、前記リング結合体の内周面に耐熱
性に富んだセラミックスから成るリップ部の外周面をメ
タルフローで接合して燃焼室側壁面が半径方向内向きの
テーパ面で先尖りに伸びる燃焼室開口を形成した燃焼室
の構造において、被メタルフロー側となる前記リング結
合体の下部外周面及び前記リップ部の下部外周面を半径
方向内向きに伸びるテーパ面に形成したので、接合面に
働く応力は接触面に垂直に作用することになり、メタル
フロー側の部材を加熱加圧する場合に、該部材によって
接触面に垂直な方向に発生する被メタルフロー側の部材
への剪断応力の方向は径の大きい側へ変わる。従って、
被メタルフロー側の部材の径の小さい部分にかかる剪断
応力は方向が変えられ、該部分の損傷を避けることがで
きる。

【００３０】従って、前記リップ部の先端から外周部の
前記ピストンヘッド本体まで各境界での熱流が妨げられ
ることがなく良好に熱は伝導されて前記リップ部の先端
部の熱をピストンヘッド外周部、ピストンリング、シリ
ンダライナ等を通じて外部へ移動させ、前記リップ部が
高温になるのを回避して高温による前記リップ部の溶損
を防止できると共に、前記リング結合体で前記リップ部
と前記ピストンヘッドとの熱膨張差を吸収でき、温度差
で熱応力がかかっても前記リップ部の割れ等を回避でき
る。それ故、前記リップ部の先端部を鋭角に先尖り状態
に形成しても、燃焼ガスによって該先端部が高温になっ
ても直ちに熱を移動させて高温状態に維持されるのを回
避し、高温による前記リップ部の先端部の溶損を防止す
ることができる。

【００３１】そこで、前記リップ部を耐熱性に富んだ材
料で構成することで鋭角に先尖りに形成しても該リップ
部のエッジが溶損することを防止し、該鋭角な先尖り状
態のエッジ形状を維持できる。従って、前記リップ部を
鋭角に先尖りに形成でき、前記リップ部のエッジを鋭角
に形成することによって、ピストンの上昇の圧縮行程で
発生する燃焼室内へ流入するスキッシュ流、及びピスト
ン下降の爆発行程で発生する燃焼室内から流出する逆ス
キッシュ流を増大することができ、該スキッシュ流及び
該逆スキッシュ流による噴霧燃料と空気との混合を一層
良好に達成でき、従来のリエントラント型ピストンに比
較して、カーボン発生量を抑制し且つ燃料消費量を低減
して燃焼を改善することができる。

【００３２】また、この燃焼室の製造法は、金属製ピス
トンヘッド本体に形成したキャビティ壁面に熱膨張率が
異なる傾斜機能材から成るリング結合体の外周面をメタ
ルフローで接合すると共に、燃焼室側壁面が半径方向内
向きのテーパ面で先尖りに伸びて燃焼室開口を形成する
耐熱性に富んだセラミックスから成るリップ部の外周面
を前記リング結合体の内周面にメタルフローで接合する
燃焼室の製造法において、メタルフロー側となる部分を
加熱加圧して塑性変形させ、該部分を被メタルフロー側
の接合面に密着させて接合させる工程を有するので、各
部材間に存在する隙間は最初に加熱加圧して塑性変形さ
せた工程で、塑性変形した部材が前記隙間に確実に密着
状態に侵入し、完全に隙間を無くすように隙間に埋めら
れる。従って、両者は強固に接合され、しかも接合面の
接触面は密着状態に接合され、接合面での熱伝導の障害
はなく、前記リップ部から前記ピストンヘッド本体への
熱伝導が良好になる。しかも、前記リップ部と前記ピス
トンヘッド本体との接合面は完全全面接触であり、部分
的接触が無くなるので、フレッチング等が無くなり、耐
久性が大幅に向上する。

【００３３】即ち、メタルフローした前記ピストンヘッ
ド本体のキャビティ壁部は塑性変形して前記リング結合
体の前記テーパ面に確実に密着状態に侵入し、両者はメ
タルフローで確実に且つ密着状態に接合されるので、接
合面での熱流は隙間で妨害されることが無くなり、熱伝
導が良好になる。また、プレス治具を高周波加熱する
と、前記ピストンヘッド本体のキャビティ壁部に形成し
た突出部及びその近傍のみが熱伝導で局部的に加熱さ
れ、前記突出部及びその近傍部分が加熱加圧によって塑
性変形し、次いでメタルフローすることで前記リップ組
立体との間に形成された空間部へ前記突出部及びその近
傍部分が塑性流動し、互いに密着状態に接合すると共
に、構造上機械的にも結合されることになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による燃焼室の構造の一実施例を示す
概略断面図である。

【図２】図１の燃焼室を製作するための被メタルフロー
側になるリップ部を示す拡大断面図である。

【図３】従来の燃焼室の構造に組み込まれたリップ部を
を示す拡大断面図である。

【図４】この発明の燃焼室の構造に組み込むリップ部と
リング結合体とを接合したリップ組立体を示す拡大断面
図である。

【図５】この発明による燃焼室の製造法においてリップ
組立体をピストンヘッド本体に接合するに先立って配置
した状態の一実施例を示す説明図である。

【図６】ピストンヘッド本体のメタルフローする部分を
加熱加圧して塑性変形させた状態を示す説明図である。

【図７】ピストンヘッド本体にリップ組立体をメタルフ
ローで接合した状態を示す説明図である。

【図８】この発明による燃焼室の製造法においてリップ
組立体をピストンヘッド本体に接合するに先立って配置
した状態の別の実施例を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 燃焼室 ２ ピストンヘッド本体 ３ 燃焼室開口 ５ 外周面 ６ リング結合体 ７ リップ組立体 ８ リップ部 ９ 外周面 １０ キャビティ １７ キャビティ壁面 ２０ 隙間 ２１ 隙間 ２５ 隙間

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｆ０２Ｆ 3/00 ３０２ Ｆ０２Ｆ 3/00 ３０２Ａ // Ｂ２１Ｋ 25/00 Ｂ２１Ｋ 25/00 Ｚ

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属製ピストンヘッド本体に形成したキ
   ャビティ壁面に熱膨張率が異なる傾斜機能材から成るリ
   ング結合体の外周面をメタルフローで接合すると共に、
   前記リング結合体の内周面に耐熱性に富んだセラミック
   スから成るリップ部の外周面をメタルフローで接合して
   燃焼室側壁面が半径方向内向きのテーパ面で先尖りに伸
   びる燃焼室開口を形成した燃焼室の構造において、被メ
   タルフロー側となる前記リング結合体の下部外周面及び
   前記リップ部の下部外周面を半径方向内向きに伸びるテ
   ーパ面に形成したことを特徴とする燃焼室の構造。
2. 【請求項２】 金属製ピストンヘッド本体に形成したキ
   ャビティ壁面に熱膨張率が異なる傾斜機能材から成るリ
   ング結合体の外周面をメタルフローで接合すると共に、
   燃焼室側壁面が半径方向内向きのテーパ面で先尖りに伸
   びて燃焼室開口を形成する耐熱性に富んだセラミックス
   から成るリップ部の外周面を前記リング結合体の内周面
   にメタルフローで接合する燃焼室の製造法において、メ
   タルフロー側となる部分を加熱加圧して塑性変形させ、
   該部分を被メタルフロー側の接合面に密着させて接合さ
   せる工程、を有する燃焼室の製造法。