JP2847494B2 - ドライスポットの改良及び発生防止方法 - Google Patents

ドライスポットの改良及び発生防止方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゴルフ場の芝生面に発生
するドライスポットを防止し、また、発生したドライス
ポットを改良し、ゴルフコースを良好な管理状態に保つ
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ゴルフ場のサンドのベントグリー
ンにドライスポットが発生し、大きな問題になってい
る。このドライスポットとは、グリーンに局所的に発生
する不定形で原因不明の乾燥害であり、症状が進行する
と、最終的には芝生の枯死に至るものである。
【0003】ドライスポットの発生原因としては、土壌
の固結、散水ムラ、降雨・散水の表面流去、土壌の撥水
性などが挙げられるが、土壌の撥水性による原因が最も
多い。一旦土壌の含水率が低下し、撥水性を示すように
なると、散水しても水が浸透しにくくなり散水の十分な
効果が得られなくなる。撥水性の原因については、微生
物による撥水性物質の生成などが指摘されているが、完
全には解明されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ドライスポットの発生
を防止する対策としては、土壌の含水率を低下させない
こと、すなわち、散水管理の徹底、ウェッティングエー
ジェントを散布し、土壌のぬれ性を改善するなどの方法
が行われている。しかし、散水管理の徹底のためには多
大の人手を有し、場所によっては水の確保が困難な場合
があり、また、市販のウェッティングエージェントを散
布する方法については、その効果の持続性に問題があ
り、散布回数が多くなること、泡立ちが大きいため、消
泡剤を併用しなければならないなどの問題があった。
【0005】本発明者は上記問題点に鑑み鋭意研究した
結果、アセチレンアルコール誘導体を芝生面に散布する
ことにより、従来のウェッティングエージェントに比
べ、少ない添加量でドライスポットの発生を効果的に防
止でき、また発生したドライスポットを改良できること
を見出すと同時に、前記アセチレンアルコール誘導体に
水溶性高分子保水剤を併用することによって、長期間に
わたりドライスポットを防止でき、かつ効率的に改良で
きることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ゴ
ルフ場の芝生面にアセチレンアルコール誘導体を散布す
ることを特徴とするゴルフ場の芝生面のドライスポット
の改良及び発生防止方法を提供するものである。
【0007】また、本発明は、前記アセチレンアルコー
ル誘導体がアセチレングリコールにエチレンオキサイド
を付加した化合物であることを特徴とするゴルフ場の芝
生面のドライスポットの改良及び発生防止方法を提供す
るものである。
【0008】さらに、本発明は、前記アセチレンアルコ
ール誘導体を散布する場合において、さらに水溶性高分
子保水剤を併用して散布することを特徴とするゴルフ場
の芝生面のドライスポットの改良及び発生防止方法を提
供するものである。
【0009】また、本発明は、前記水溶性高分子保水剤
が、水溶性高分子のカチオン変性物であることを特徴と
するゴルフ場の芝生面のドライスポットの改良及び発生
防止方法を提供するものである。
【0010】以下に本発明を更に詳細に説明する。本発
明は、ゴルフ場の芝生面に、アセチレンアルコール誘導
体またはこれと水溶性高分子保水剤とを併用して散布す
ることにより、ゴルフ場の芝生面のドライスポットの発
生を防止し、また発生したドライスポットを改良して減
少させることができる。
【0011】本発明において使用されるアセチレンアル
コール誘導体としては、例えば下記式「化1」で示され
るアセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加し
たものが好適に用いられる。
【化1】 式中、Rはメチル基、Rはメチル基、エチル基、プ
ロピル基、イソブチル基、ィソアミル基等を表す。m、
nは整数で、m+n≧1である。
【0012】また、アセチレンアルコール誘導体と併用
して散布される水溶性高分子保水剤としては、例えば、
メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメ
チルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセ
ルロース誘導体;グアーガム、キサンタンガム、アラビ
アガムなどの天然ガム類;ポリビニルアルコールまたは
これらのカチオン変性品;ポリアクリルアミド、アルギ
ン酸ソーダ、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコールなどの従来公知の水溶性高分子物質であれば
特に限定されないが、長期間ドライスポットを防止する
ためには、水溶性高分子のカチオン変性物であるカチオ
ン化保水剤を用いることが好ましい。
【0013】本発明においては、上記アセチレンアルコ
ール誘導体を0.01〜0.5重量%水溶液とし、この
水溶液を芝生面に対して処理液が土中に浸透する程度、
即ち0.5〜5.0リットル/m散布するのが好まし
い。
【0014】アセチレンアルコール誘導体水溶液の濃度
が0.01重量%未満では、水の浸透が十分でないこと
があり、また、0.5重量%を超えても効果の向上が見
られないだけでなく、芝の種類によっては薬害の恐れが
ある。
【0015】併用して散布する水溶性高分子保水剤は、
水溶液中に、0.001〜2.0重量%の濃度に溶解し
て使用するのがよい。これ以下だと保水力が十分でな
く、これ以上にしても防止効果は変わらず、また水溶液
が高粘度になるため好ましくない。
【0016】本発明によりドライスポットの発生を防止
または改良できる理由としては、上記アセチレンアルコ
ール誘導体を撥水性を有する土壌に散布した場合、水の
持つ高い表面張力を緩和し、撥水土壌への水の浸透を促
進するためと考えられる。更に、水溶性高分子保水剤を
併用して散布する場合は、土壌中に浸透した水分の保水
力を高めるため、土壌の含水率が高くなり、ドライスポ
ットの発生を長期間防止できるものと思われる。また、
土壌中に高分子ポリマーが浸入、吸着されるため、土壌
の固化、撥水化も防止できる。
【0017】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもの
ではない。なお、水溶液濃度はすべて重量%を表す。
【0018】
【実施例】[実施例1] 富山県内のゴルフ場で7月下旬より、ベントナーセリー
内を2m四方の区画に分け、各区画ごとに、処理剤の水
溶液を2リットル/mの割合でジョーロで散布し、そ
の後1週間にわたって毎朝散水を行い、芝生面の様子を
観察した。処理剤としては下記のもの(No.1〜4)
を用いた。各処理剤散布後の芝生面全体に対するドライ
スポットの面積の変化を表1に示す。
【0019】[No.1:本発明] 下記式「化2」で表されるアセチレングリコール誘導体
(日信化学工業社オルフィンE1004)の0.02%
水溶液
【化2】
【0020】[No.2:本発明] アセチレングリコール誘導体(日信化学工業社オルフィ
ンE1004)が0.02%、カチオン化ヒドロキシエ
チルセルロース(東邦化学工業社製カチナールHC−2
00)が1%となるように溶解した水溶液
【0021】[No.3:比較例] 市販の界面活性剤(環状酸のポリオキシエチレンエステ
ル、アルキル化フェノールのポリオキシエチレンエーテ
ル、消泡剤との混合物)の0.1%水溶液
【0022】[No.4:比較例] 処理剤なし:水
【0023】各処理剤散布後の芝生面全体に対するドラ
イスポットの面積の変化を表1に示す。
【表1】 上記により、アセチレングリコール誘導体の水溶液を散
布した本発明の方法は、市販の界面活性剤を散布した比
較例に比べ、少ない添加量で高いドライスポット改良効
果を持つことが分かる。
【0024】[実施例2] 実施例1と同じゴルフ場のベントナーセリーで、7月下
旬より水の散布量を調整して含水率の高い試験区(A)
と含水率の低い試験区(B及びC)を用意した。この試
験区内を2m四方の区画に分け、各区画ごとに、下記処
理剤の水溶液(No.1〜6)を2リットル/mの割
合で噴霧器で散布後、単位面積当たり5mmの散水を7
日に1度行い、芝生面のドライスポットの発生を観察し
た。各処理剤の水溶液散布後ドライスポットが発生する
までに経過した日数を表2に示す。
【0025】[No.1:本発明] アセチレングリコール誘導体(日信化学工業社オルフィ
ンE1004)が0.02%、カチオン化ヒドロキシエ
チルセルロース(東邦化学工業社製カチナールHC−2
00)が1%となるように溶解した水溶液
【0026】[No.2:本発明] アセチレングリコール誘導体(日信化学工業社オルフィ
ンE1004)か0.02%、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース(信越化学工業社製メトローズ90SH−
4000)が1%となるように溶解した水溶液
【0027】[No.3:参考例] カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(東邦化学工業
社製、カチナールHC−200)の1%水溶液
【0028】[No.4:本発明] アセチレングリコール誘導体(日信化学工業社オルフィ
ンE1004)の0.02%水溶液
【0029】[No.5:比較例] 市販の界面活性剤の0.1%水溶液(環状酸のポリオキ
シエチレンエステルとアルキル化フェノールのポリオキ
シエチレンエーテル、消泡剤との混合物)
【0030】[No.6:比較例]処理剤なし:水
【0031】各処理剤の水溶液散布後にドライスポット
が発生するまでに経過した日数を表2に示す。
【表2】 (試験区Cは、処理剤散布1週間後に降雨を想定して単
位面積当たり50mmの散水を行なった。)
【0032】上記から、アセチレングリコール誘導体と
カチオン化保水剤の水溶液を併用して散布した本発明の
方法は(No.1)、土壌の含水率及び降雨条件に関係
なく、長期間に渡りドライスポットの発生を防止できる
ことが分かる。カチオン化保水剤でない水溶性高分子保
水剤を併用して散布した本発明の方法によっても、長期
間ドライスポットの発生を防止できるが、降雨時には処
理剤の流出が起こり、その防止効果が低下することが分
かる(No.2)。カチオン化保水剤の水溶液のみを散
布した参考例の方法は、含水率が低く既にドライスポッ
トが発生した土壌では効果が少ないが、含水率の高い土
壌に散布する場合は、長期間ドライスポットの発生を防
止できることが分かる(No.3)。
【0033】
【発明の効果】本発明は、ゴルフ場の芝生面に、アセチ
レンアルコール誘導体またはこれと水溶性高分子保水剤
とを併用して散布することにより、ゴルフ場の芝生面の
ドライスポットの発生を防止し、また発生したドライス
ポットを改良して減少させることができる。
【0034】特に、水溶性高分子保水剤にカチオン化保
水剤をアセチレンアルコール誘導体と併用して散布した
場合は、散布液の流出が心配される降雨時においても、
極めて長期間ドライスポットの発生を防止することが出
来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木下 鴻二 福井県武生市北府2−17−33 日信化学 工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭52−141351(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 17/14 A01G 1/00 C09K 17/18 C09K 17/32

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴルフ場の芝生面にアセチレンアルコー
    ル誘導体を散布することを特徴とするゴルフ場の芝生面
    のドライスポットの改良及び発生防止方法。
  2. 【請求項2】 前記アセチレンアルコール誘導体がアセ
    チレングリコールにエチレンオキサイドを付加した化合
    物であることを特徴とする請求項1記載のドライスポッ
    トの改良及び発生防止方法。
  3. 【請求項3】 前記アセチレンアルコール誘導体を散布
    する場合において、さらに水溶性高分子保水剤を併用し
    て散布することを特徴とする請求項1または2記載のド
    ライスポットの改良及び発生防止方法。
  4. 【請求項4】 前記水溶性高分子保水剤が、水溶性高分
    子のカチオン化保水剤であることを特徴とする請求項3
    記載のドライスポットの改良及び発生防止方法。
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