JP2846392B2 - 温間成形用制振複合アルミニウム材、その成形品およびプレス成形方法 - Google Patents

温間成形用制振複合アルミニウム材、その成形品およびプレス成形方法

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JP2846392B2 JP2032750A JP3275090A JP2846392B2 JP 2846392 B2 JP2846392 B2 JP 2846392B2 JP 2032750 A JP2032750 A JP 2032750A JP 3275090 A JP3275090 A JP 3275090A JP 2846392 B2 JP2846392 B2 JP 2846392B2
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【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】 本発明は制振性、成形性、強度に優れ軽量な温間成形
用制振複合アルミニウム材、その成形品およびプレス成
形方法に関する。
【従来の技術】
制振性の必要なプレス成形品の軽量化を図るには制振
複合アルミニウム材の使用が考えられる。しかし制振ア
ルミニウム材はその優れた特性にも係わらずプレス成形
加工には不向きとされ、平板状のままで使用されること
が一般的であった。一部プレス成形品として使用される
場合でも打ち抜き加工、曲げ加工、浅絞り加工までしか
できず、深絞り加工、張出し加工は困難であった。また
その場合でも、制振複合アルミニウム材を構成するアル
ミニウム合金は伸び向上を計るためMg、Mn、Cu、Cr等の
強度向上に有効な添加成分を含ませることができないた
め材料強度は低いものであった。
【発明が解決しようとする問題点】
この発明は、上記した従来における問題点、すなわち
高強度でかつ温間プレス成形に適した制振複合アルミニ
ウム材とその成形品およびプレス成形方法品を提示する
ものである。
【問題点を解決するための手段】
すなわち、 第1請求項はMg2.0%以上6.0%以下、Be0.0001%以上0.
01%以下を含有し、Mn2.0%以下、Cr0.5%以下、Zr0.5
%以下、V0.5%以下、Cuが2.0%以下、Zn2.5%以下の1
種または2種以上を含有し残部Al及び不可避不純物より
なり、250℃での伸び率40%以上の二枚のアルミニウム
合金板材の間にガラス転移点0℃以上90℃以下の樹脂材
を挟んだ温間成形用制振複合アルミニウム材、 第2請求項は第1請求項の制振複合アルミニウム材より
なる温間プレス成形品、 第3請求項は第1請求項の制振複合アルミニウム材を、
温度を180℃以上300℃以下としたダイスおよびブランク
ホルダー間に全周を加圧して挟み一定時間保持した後、
上記ダイスとブランクホルダーの温度より20℃以上250
℃以下低い温度にしたポンチでプレス加工することを特
徴とする温間プレス成形方法である。 まず樹脂を挟むアルミニウム材には、Mg2.0%以上6.0
%以下、Be0.0001%以上0.01%以下を含有し、Mn2.0%
以下、Cr0.5%以下、Zr0.5%以下、V0.5%以下、Cuが2.
0%以下、Zn2.5%以下の1種または2種以上を含有し残
部Al及び不可避不純物よりなるアルミニウム合金材を使
用する。 Mgが2.0%未満では室温時の強度が低く高温時の伸び
が低い。Mgが6.0%を越えると圧延時割れが発生し易
く、板厚1.0mm以下の薄板圧延では多数回の焼鈍や耳割
れ部の除去が必要となりコスト高となるからである。 Beは圧延板表面のMgの酸化を抑制し、表面を安定化す
る。これにより、金型への、ビルドアップが抑制され、
型かじり性が向上する。添加量は1ppm未満では効果がな
いが100ppmを超えると効果が飽和する。 Mn2.0%以下、Cr0.5%以下、Zr0.5%以下、V0.5%以
下、Cuが2.0%以下、Zn2.5%以下の1種または2種は強
度向上、引張り強さと0.2%耐力の比を1.7以上にするた
めおよび伸び率を向上するために添加する。しかしMnが
0.80%、Crが0.25%、Zrが0.5%、Vが0.5%をそれぞれ
越えれば、温間成形性が低下するとともに、常温での成
形性も低下し、また鋳造時に粗大な金属間化合物を生成
され易くなる、またCuが2.0%、またはZnが2.5%を越え
れば耐食性が低下する。したがってMnは2.0%以下、Cr
は0.25%以下、Zrは0.5%以下、Vは0.5%以下、Cuは2.
0%以下、Znは2.5%以下の範囲内とした。 以上の各成分の残部はAlおよび不可避的不純物とすれ
ばよい。なおアルミニウム合金における不可避的不純物
としては一般にFe、Si等が含有されるが、Fe0.4%以
下、Si0.4%以下であれば特に性能が著しく損なわれる
ことはない。但し、Fe,Siはいずれも少ない方が成形性
がいっそう良好となるから、Fe,Siの量はそれぞれ0.2%
以下に規制することが好ましい。 さらに鋳塊結晶粒微細化のためTiもしくは、Tiおよび
Bを添加してもよい。但し、初晶TiAl3粒子晶出のた
め、Tiは0.15%とする。またTiB2粒子生成防止のため、
Bは500ppm以下とする。 なお伸びが大きい方が変形能がよく、張出しや伸びフ
ランジの成形性が優れているが温間においても同様であ
り、250℃での伸び率は40%以上が必要である。 上記アルミニウム合金材に挟まれる制振樹脂として
は、ガラス転移点が0℃以上90℃以下のものを用いる。
樹脂の種類はポリエステル、エポキシ、ポリエチレン、
ポリオレフィン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリ
ル、ゴム等いずれでもよい。 ガラス転位点が0℃未満では通常の室温における取扱
い性が劣り、ガラス転位点が90℃を越える場合も通常の
室温における使用時制振性が劣る。 これらの樹脂をアルミニウム材と複合するには樹脂を
溶媒に溶かしてロールコーター等で塗布して加熱圧着す
る塗布タイプとフイルム状の樹脂を挟んで加熱圧着する
フイルム接着タイプとがある。本願の温間成形用制振複
合アルミニウム材にはいずれの方式を用いてもかまわな
いが、フイルム接着タイプで接着剤によりアルミニウム
と接合するタイプは材料温度が高温となる温間成形の場
合フイルムとアルミニウム材間で剥離しないような接着
剤を選択しなければならない。本願の方法では塗布タイ
プのポリエステル樹脂の方が成形時の剥離が発生せず良
好な性能を示す。 上記のようなアルミニウム合金材と樹脂とよりなる制
振複合アルミニウム材を、ダイスおよびブランクホルダ
温度を180℃以上300℃以下としたダイスとブランクホル
ダ間で全周を加圧して挟み、一定時間保持した後ダイス
とブランクホルダ温度より20℃以上250℃以下低い温度
としたポンチによりプレス加工する。 制振複合アルミニウム材を高温のダイスおよびブラン
クホルダ温度間で全周を加圧して挟み一定時間保持する
のは、制振複合アルミニウム材を高温としアルミニウム
材の耐力の低下と伸びの向上を計る為である。すなわ
ち、200℃で室温時の2.5倍の伸び率となり複雑形状の成
形が可能となるので180℃以上とした。 また300℃を越えると連続成形時、カジリ、焼き付き
を発生し、生産の安定性が得られず、また潤滑油が変質
し洗浄不能となる。よってダイスおよびブランクホルダ
の温度を300℃以下とした。 制振複合アルミニウム材の全周を加圧して挟むのは、
中央部の樹脂を流出させないためである。このようにす
ると外周部の樹脂の一部のみが流出するだけで、意外に
も成形品の制振性は良好である。 ダイスとブランクホルダ温度より低い温度としたポン
チによりプレス加工する理由は、低い温度としたポンチ
肩R部の材料強度と、高温としたダイスおよびブランク
ホルダによって挟んだフランジ部分の変形応力との差を
確保するためで、ポンチ温度が20℃以上低い場合に差は
確保できる。 この温度差が大きいほどポンチ肩R部の材料強度とフ
ランジ部分の変形応力との差は大きくなり深絞り性は向
上することは自明の事であるが、制振複合アルミニウム
材の用途例にあるような複雑形状成形ではポンチ温度が
低いとポンチと材料の接触点近傍の材料温度が低温とな
りすぎ伸びが低下し成形時破断しやすくなる。この伸び
を確保するためポンチ温度は250℃以下としたが、好ま
しくはダイス、ブランクホルダの温度とポンチ温度の関
係は特願昭63−315648に示したように第2図の太線内、
さらに好ましくは斜線内の範囲である。 本願発明による成形品としては自動車オイルパン、エ
ンジンカバー、エンジンルーム遮蔽板、ダッシュパネ
ル、フロアパネル、ギアカバー、チェーンカバー、マフ
ラーカバー、マフラー、エンジンカバー、ブロワハウジ
ング、オイルパン、等の自動車、二輪車、農耕機等の部
品やモーターカバー、コンプレッサーカバー、エバポレ
ーターカバー、等の冷凍温度調節機器部品や携帯型カセ
ットテープレコーダー、CD、コンピューターケース、ハ
ードディスクケース、フロッピーディスクケース、スピ
ーカーフレーム等の音響電子部品、チエーンソーカバ
ー、発電機カバー、草刈機カバー、生け垣トリマカバー
等の野外部品等がある。 本発明に用いる温間成形加工装置の1例を第2図に示
す。1が制振複合アルミニウム材である。 2はダイス、3はポンチ、4はブランクホルダ、5は
発熱体である。また本温間成形装置は複雑形状、即ち同
時に2個の成形部を形成するものとなっている。
【実施例】
第1表に示す本発明成分範囲内の成分組成のアルミニ
ウム合金1−4および本発明成分範囲外の合金5−7に
ついて、常法に従いDC鋳造し、得られた鋳塊に530 ℃×10時間の均質化処理を施した後、常法に従い3mmま
で熱間圧延しその後冷間圧延を施して板厚1.5mmとし中
間焼鈍を施し、更に冷間圧延にて板厚0.48mmとした。 この板厚0.48mmの冷間圧延板に対し、320℃×2時間
の焼鈍を施して最終の圧延板を得た。 この各圧延板について300℃において50%の伸びを与
える温間引張り加工後の室温強度を調べた結果を第2表
に示す。 第2表から、この発明の実施例のアルミニウム合金板
材は温間成形後も用途例にあるような各種匡体として実
用上支障のない程度の強度を有していることが判る。 また各圧延板にたいし250℃の温間引張り試験を行な
い、伸びを調べた結果を第3表に示す。 試験は250℃の温度で30分保持してから引張り速度を
5×10−2/秒としておこなった。 第3表から、本発明のアルミニウム合金板材はすべて
250℃での伸び率が40%以上になっていて温間成形性が
良好であることが推測される。 このように成分組成と、250℃での伸び率が本願発明
の範囲内のアルミニウム合金は温間成形性が良好でかつ
温間成形後の強度も高いので、次に述べるように樹脂材
を挟んだ制振複合アルミニウム材とした場合にも温間プ
レス性が良好となる。 さらに各圧延板をクロメート処理し、片面にバーコー
ターにて転移点温度40℃のポリエステル樹脂を乾燥塗膜
厚で20μm塗布した2枚のアルミニウム板の樹脂面同士
を張り合わせ後230℃で加熱圧着し制振複合アルミニウ
ム合金材とした。これを温間成形加工し成形性(成形高
さ)、型カジリ性と成形後の制振性(打撃音の減衰耳判
定)について比較した結果を第4表に示す。 なお制振性の試験の比較材としてJIS A5182P−O
板厚1.0mmの成形品を用いた。 成形試験は第1図に示した装置を使用しダイス、ブラ
ンクホルダの温度は250℃とし制振アルミニウム合金板
ブランク260mm×180mmを挟んで1分間保持後100℃とし
たポンチにより速度200mm/分で成形した。潤滑材は特願
平1−119356、1−119357、1−119358、1−119359、
1−119360、1−119361に記載のいずれも好ましいが、
第4表の実施例は特願平1−119356に記載のカーボン数
C=16のアルキル基よりなる脂肪酸のカリウム石鹸であ
って水に対する溶解度が20%に達する温度が50℃未満の
もの5%〜20%および粒度3.0μmの二硫化モリブデン
粉末5%を水に含有させた潤滑剤を使用した。 第4表から、この実施例のアルミニウム合金板材より
なる制振アルミニウム合金材は温間成形加工における成
形性が良好で、型かじりが少なく、成形後の制振性に優
れており、従って量産規模での成形に適している事が判
る。 またダイス、ブランクホルダとポンチの温度を各種変
化させて本発明合金2の制振アルミニウム合金板につい
て温間加工し成形性(成形高さ)を比較し第5表に示し
た。 制振アルミニウム合金板ブランク260mm×180mmを挟ん
で1分間保持後ポンチにより速度200mm/分で成形した。
潤滑材は特願平1−119356記載のカーボン数C=16のア
ルキル基よりなる脂肪酸のカリウム石鹸であって水に対
する溶解度が20%に達する温度が50℃未満のもの5%〜
20%および粒度3.0μmの二硫化モリブデン粉末5%を
水に含有させた潤滑剤を使用した。 第5表から本発明の制振複合アルミニウム材は本願第
3請求項のダイス・ブランクホルダ、ポンチの温度範囲
(第1図領域abcd)にある時、温間プレス成形性に優れ
ている事がわかる。
【発明の効果】
本願発明によれば、上記したように軽量性と制振性と
強度が必要で複雑な形状を有する物品が容易に得られ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はダイス・ブランクホルダ温度T1および、ポンチ
温度T2に対する好ましい加工領域を示すグラフである。 領域abcdが本願第3請求項の範囲、その中の斜線の入っ
た領域が最適の加工領域である。 直線eはT1=T2の線である。 第2図は第3請求項のプレス成形法を表わす模式図。 1……制振複合アルミニウム材、2……ダイス 3……ポンチ、4……ブランクホルダー、5……発熱体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 15/01 B32B 15/08 B21D 22/20 C22C 21/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Mg2.0%以上6.0%以下、Be0.0001%以上0.
    01%以下を含有し、Mn2.0%以下、Cr0.5%以下、Zr0.5
    %以下、V0.5%以下、Cuが2.0%以下、Zn2.5%以下の1
    種または2種以上を含有し残部Al及び不可避不純物より
    なり、250℃での伸び率40%以上の二枚のアルミニウム
    合金板材の間にガラス転移点0℃以上90℃以下の樹脂材
    を挟んだ温間成形用制振複合アルミニウム材。
  2. 【請求項2】Mg2.0%以上6.0%以下、Be0.0001%以上0.
    01%以下を含有し、Mn2.0%以下、Cr0.5%以下、Zr0.5
    %以下、V0.5%以下、Cuが2.0%以下、Zn2.5%以下の1
    種または2種以上を含有し残部Al及び不可避不純物より
    なり、250℃での伸び率40%以上の二枚のアルミニウム
    合金板材の間にガラス転移点0℃以上90℃以下の樹脂材
    を挟んだ制振複合アルミニウム材よりなる温間プレス成
    形品。
  3. 【請求項3】Mg2.0%以上6.0%以下、Be0.0001%以上0.
    01%以下を含有し、Mn2.0%以下、Cr0.5%以下、Zr0.5
    %以下、V0.5%以下、Cuが2.0%以下、Zn2.5%以下の1
    種または2種以上を含有し残部Al及び不可避不純物より
    なり、250℃での伸び率40%以上でかつ伸び率20%以上
    の二枚のアルミニウム合金板材の間にガラス転移点0℃
    以上90℃以下の樹脂材を挟んだ制振複合アルミニウム材
    を、温度を180℃以上300℃以下としたダイスおよびブラ
    ンクホルダー間に全周を加圧して挟み一定時間保持した
    後、上記ダイスとブランクホルダーの温度より20℃以上
    250℃以下低い温度にしたポンチでプレス加工すること
    を特徴とする温間プレス成形方法。
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