JP2845125B2 - テニスラケット用ガット - Google Patents

テニスラケット用ガット

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JP2845125B2 JP6068515A JP6851594A JP2845125B2 JP 2845125 B2 JP2845125 B2 JP 2845125B2 JP 6068515 A JP6068515 A JP 6068515A JP 6851594 A JP6851594 A JP 6851594A JP 2845125 B2 JP2845125 B2 JP 2845125B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はテニスラケット用ガット
に関し、良好な反発性、コントロール性、打球感、ホー
ルド感を有し、かつ、耐久性、耐水性に優れた安価なテ
ニスラケット用ガットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、テニスラケット用ガットとし
て、牛や羊の腸、鯨筋等の動物筋に適度の撚りをかけて
樹脂によりコーティングした天然ガットが提供されてい
る。この天然ガットは伸びが大きく、反発性、コントロ
ール性、打球感、ホールド感は良好であるが、耐久性、
耐水性が低く、高価であるという問題がある。
【0003】これに対して、従来より、種々の合成繊維
製のテニスラケット用ガットが提供されている。この合
成繊維製のテニスラケット用ガットは、耐久性、耐水性
は良好であるが、反発性等は天然ガットより劣るため、
できる限り天然ガットに近い反発性等が得られるように
物性を設定している。具体的には、従来の合成繊維製の
ガットでは、非常に低荷重(3kg以下)の場合にのみ
測定可能な動的粘弾性スペクトルにおける弾性率や、5
00mm/sec以下の静的な引張試験における初期弾
性係数、ヤング率等を天然ガットに近い値に設定してい
る。この低荷重下での弾性率や、静的な引張試験での初
期弾性係数等の測定結果によれば、天然ガットは高弾性
率であるため、合成樹脂製のガットの特性は、弾性率が
高いほど天然ガットに近いことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般にテニス
ラケット用ガットは、18kg〜32kg(40lb〜
70lb)の張力でラケットに張設した状態で使用さ
れ、また、打球時にボールと接触している時間は、3/
1000秒〜5/1000秒の間である。従って、上記
従来のテニスラケット用ガットは、実際の使用条件と大
きく異なる条件下での物性を天然ガットに近づけようと
しているに過ぎない。
【0005】これに対して本発明者らは実際の使用条件
にできる限り近い条件でガットの物性を評価した。具体
的には、サンプル長40mm、初期荷重を27kg(6
01b)としたガットに、片振幅を1.5%とした10
Hzの正弦波歪を与えて貯蔵ばね定数K1を測定した。
【0006】ここで、サンプル長は図3(A)中、Lで
示すように、ガット11の上端と下端をチャック12
A,12Bに取付けて吊り下げたときの、チャック12
A,12B間のガット11の長さである。また、初期荷
重は、ガット11の下端に荷重を加えない状態から、図
3(B)中Fで示すように静的に付加した荷重である。
さらに、片振幅は、図3(C)中Aで示すように、初期
荷重を加えた状態から上下方向に振動させた場合の上方
側及び下方側(片側)の振幅である。この片振幅をパー
セントで表示する場合は、下記の式のようになる。
【0007】(片振幅)=(片振幅A)/{(サンプル
長L)+(初期荷重Fによるのび)}×100 (%)
【0008】ガットの初期荷重を27kgに設定したの
は、上記ラケットに張設したときの張力(18kg〜3
2kg)に対応させたものである。また、片振幅を1.
5%に設定したのは、27kgで張設したガットに約3
0m/secのボールが衝突した際に生じる伸び(1〜
2%)に対応させたものである。この条件下で測定した
貯蔵ばね定数K1は、天然ガットでは123kg/cm
であり、従来の合成繊維製のガットでは190kg/c
m以上であった。このように従来の合成繊維製のガット
では、実際にボールを打球する際に近い条件下での伸び
が天然ガットと比較して小さく、ボールの反発性、コン
トロール性、打球感、ホールド感が良好でないことが判
明した。
【0009】本発明は、かかる従来の合成繊維製のテニ
スラケット用ガットにおける問題を解決し、良好な反発
性、コントロール性、打球感、ホールド感を有し、かつ
耐久性、耐水性に優れた安価な合成繊維製のテニスラケ
ット用ガットを提供することを目的としてなされたもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】従って、請求項1は、サ
ンプル長40mm、初期荷重27kgの状態で片振幅
1.5%、周波数10Hzの正弦波歪を与えた時の貯蔵
ばね定数が80〜190kg/cmであることを特徴と
する合成繊維製のテニスラケット用ガットを提供するも
のである。
【0011】ここで貯蔵ばね定数とは、荷重の振幅を△
F、たわみの振幅を△L、荷重とたわみの位相差をδと
すると下記の式で定義される。
【0012】K1=(△F/△L)*cosδ
【0013】
【作用】本発明に係る合成繊維製のテニスラケット用ガ
ットでは、実際にラケットに張設してボールを打球する
場合に近い条件下、すなわち、サンプル長40mm、初
期荷重27kgの状態で周波数10Hz、片振幅1.5
%の正弦波歪を与えた場合の貯蔵ばね定数を80〜19
0kg/cmに設定しているため、打球時に十分に変形
し、反発性、コントロール性、打球感及びボールのホー
ルド感が良好である。
【0014】
【実施例】次に、図面に示す実施例に基づいて、本発明
について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例
に係る合成繊維製のテニスラケット用ガット1(以下、
「ガット」と略称する。)を示し、この第1実施例で
は、繊維2を3〜2500本程度撚り合わせて樹脂で接
着、コーティングしたマルチフィラメント構造としてい
る。この繊維2は、ナイロン66、ナイロン6等のポリ
アミド樹脂からなる繊維であり、繊維太さを6〜300
0デニールとしている。
【0015】繊維2の撚りのピッチは、短めに設定して
おり、3mm/turn以上7mm/turn以下とし
ている。さらに、後述する加熱延伸の延伸倍率を0〜3
0%に設定している。
【0016】この第1実施例のガット1では、弾性率の
低いポリアミド樹脂製の繊維2を使用し、かつ、繊維太
さ、繊維本数、撚りのピッチ、延伸倍率を上記の範囲で
適宜設定することにより、実際にラケットに張設して打
球する場合に近い条件下での弾性的な物性を天然ガット
に近づけている。すなわち、第1実施例では、サンプル
長40mm、初期荷重を実際にラケットに張設した状態
に対応する27kg(60lb)としたガットに対し
て、27kgでラケットに張設したガットに約30m/
secのボールが衝突した際に生じる伸び(1〜2%)
に対応する1.5%の片振幅であり、周波数が10Hz
の正弦歪を付与したときの貯蔵ばね定数K1を80〜1
90kg/cmの範囲に設定している。
【0017】ここで貯蔵ばね定数K1とは、図2に示す
ように、荷重の振幅を△F、たわみの振幅を△L、荷重
とたわみの位相差をδとすると下記の式で定義される。
【0018】K1=(△F/△L)*cosδ
【0019】第1実施例のガット1では、このように、
実際にラケットに張設して打球する場合に近い条件下で
の貯蔵ばね定数K1を、同じ条件下での天然ガットの貯
蔵ばね定数の値(123kg/cm程度)に近づけて設
定しているため、実際にラケットに張設してテニスボー
ルを打球した場合に十分に変形する。そのため、第1実
施例のガット1は反発性が良好であると共に、ボールを
良くホールドし、打球感、コントロール性が良好であ
る。
【0020】さらに、第1実施例のガットは、ポリアミ
ド樹脂製であるため、天然ガットと比較して、耐久性、
耐水性が良好である。
【0021】第1実施例に係るガットは、下記の公知の
方法により製造される。まず、ペレット状態の樹脂を紡
糸、延伸し、繊維状とする。次に、3本以上の繊維を引
き揃え、あるいは撚り機により3mm/turn以上7
mm/turnのピッチで撚り合わせ、ナイロン、ウレ
タン系、その他の樹脂により接着、コーティングする。
さらに、コーティング後に0〜30%程度の倍率で加熱
延伸を行う。
【0022】第2実施例のガットでは、上記繊維2をポ
リフッ化ビニリデン樹脂製の繊維としている。この場
合、繊維太さは400〜3000デニール、繊維本数3
〜400、撚りのピッチを3〜30mm/turn、延
伸倍率を0〜30%の範囲で適宜設定することにより、
サンプル長40mm、初期荷重27kgの状態で片振幅
1.5%、周波数10Hzの正弦波歪を与えた時の貯蔵
ばね定数K1を80〜190kg/cmの範囲に設定し
ている。第2実施例のガットも上記第1実施例の場合と
同様に、実際にラケットに張設してボールを打球した場
合によく変形し、反発性、ボールのホールド感、打球
感、コントロール性が良好である。また、ポリフッ化ビ
ニリデン樹脂製であるから、天然ガットと比較して耐久
性、耐水性が良好である。
【0023】なお、本発明は、上記実施例に限定される
ものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記
実施例では、ポリアミド樹脂やポリフッ化ビニリデン樹
脂からなる繊維によりガットを形成しているが、ガット
を構成する繊維はこれに限定されるものではなく、弾性
率の低い樹脂からなる繊維であれば、例えば、変性ナイ
ロン等からなる繊維等を用いても良い。
【0024】
【実験例】本発明の効果を確認するための実験を行っ
た。本実験では、本発明に係るナイロン66製のガット
(実験例1〜実験例4)、ナイロン6製のガット(実験
例5)及びポリフッ化ビニリデン製のガット(実験例6
〜実験例8)を準備した。各実験例の繊維太さ、繊維本
数、撚りのピッチ、延伸倍率は下記の表1に示すように
上記実施例の範囲内で設定し、サンプル長40mm、初
期荷重27kg/cmの状態で、片振幅1.5%、周波
数10Hzの正弦波歪を与えた時の貯蔵ばね定数を80
〜190kg/cmの範囲に設定している。
【0025】
【表1】
【0026】また、本実験では、下記の表2に示す比較
例1から比較例4のガットを準備した。比較例1は実験
例1から実験例4に対応する比較例であり、ナイロン6
6製であるが、上記の条件下での貯蔵ばね定数K1を1
91kg/cmに設定している。比較例2は、実験例5
に対応する比較例であり、ナイロン6製であるが、上記
の条件下での貯蔵ばね定数を207kg/cmに設定し
ている。比較例3は、実験例6から実験例8に対応する
比較例であり、ポリフッ化ビニリデン製であるが、上記
の条件下での貯蔵ばね定数を69kg/cmに設定して
いる。比較例4は天然ガットであり、上記の条件下での
貯蔵ばね定数は123kg/cmである。
【0027】
【表2】
【0028】本実験では、上記実験例1〜実験例8及び
比較例1〜比較例4についてフィーリングテストによ
り、反発性、コントール性、打球感、ホールド感を調べ
た。また、耐久性についても試験した。
【0029】上記反発性等のフィーリングテストでは、
各実験例、比較例のガットをラケット(DUNLOP製
DP80International Tour over MID SIZE)に縦糸
を27kg(60lb)、横糸を21.6kg(48l
b)で張設し、108人のアマチュアプレーヤーに実際
にボールを打球させ、反発性等について「良い」と答え
た人数を集計した。
【0030】一方、耐久性の測定は、上記のラケット
(DUNLOP製DP80 International Tour over
MID SIZE)に縦糸27kg(60lb)、横糸21.6
kg(48lb)の張力でガットを張設し、50m/s
ecの速度の硬式用テニスボールを1500回打球して
ガットが切断するか否かを調べた。
【0031】下記の表3は上記フィーリングテスト及び
耐久性測定の結果を示し、表中、反発性から耐久性の欄
では、◎は108人中90人以上が「良い」と答えた場
合、○は108人中70〜89人が「良い」と答えた場
合、△は108人中50〜69人が「良い」と答えた場
合、×は108人中50人未満が「良い」と答えた場合
を示している。また、表3中、耐久性の欄において、○
は1500回までにガットが切断しなかった場合を示
し、×は1500回までに切断したことを示している。
【0032】
【表3】
【0033】上記表3中、ともにナイロン66製である
実験例1から実験例4と比較例1を比較すると、実験例
1から実験例4は反発性、コントロール性、打球感、ホ
ールド感のいずれもが良好であるのに対して、比較例1
は反発性、ホールド感の点で実験例1から実験例4と比
較すると劣る。これより実験例1から実験例4は、貯蔵
ばね定数を80〜190kg/cmの範囲に設定してい
るため、反発性等が良好であることが確認できる。
【0034】また、ともにナイロン6製である実験例5
と比較例2を比較すると、実験例5は反発性、コントロ
ール性、打球感、ホールド感のいずれもが良好であるの
に対し、比較例2は、反発性、打球感、ホールド感が劣
る。これより、実験例5は、貯蔵ばね定数を80〜19
0kg/cmの範囲に設定しているため、反発性等が良
好であることが確認できる。
【0035】さらに、ともにポリフッ化ビニリデン製で
ある実験例6から実験例8と比較例3を比較すると、実
験例6から実験例8は、反発性、コントロール性、打球
感、ホールド感のいずれもが良好であるのに対して、比
較例3は、コントロール性、打球感が劣る。これより実
験例5は、貯蔵ばね定数を80〜190kg/cmの範
囲に設定しているため、反発性等が良好であることが確
認できる。
【0036】また、天然ガットは1500回打球するま
でに切断したのに対して、本発明に係る実験例1〜実験
例8のガットはいずれも1500回までに切断しておら
ず、耐久性が良好であることが確認できる。
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係る合成繊維製のテストラケット用ガットでは、サン
プル長40mm、初期荷重27kgの状態で片振幅1.
5%、周波数10Hzの正弦波歪を与えた時の貯蔵ばね
定数を80〜190kg/cmに設定し、実際にラケッ
トに張設した打球する場合に近い条件下での弾性的な物
性を天然ガットに近い特性に設定しているため、良好な
反発性、コントロール性、打球感、ホールド感を得るこ
とができる。
【0038】また、本発明に係るガットは、ポリアミド
樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等からなる合成繊維に
より形成しているため、耐久性、耐水性が良好であると
共に、天然ガットと比べて安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す概略図である。
【図2】 貯蔵ばね定数を説明するための概略図であ
る。
【図3】 (A),(B),(C)は、サンプル長さ、
初期荷重及び片方振幅を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1 ガット 2 繊維

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サンプル長さ40mm、初期荷重27k
    gの状態で、片振幅1.5%、周波数10Hzの正弦波
    歪を与えた時の貯蔵ばね定数が99〜182kg/cm
    であることを特徴とする合成繊維製のテニスラケット用
    ガット。
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