JP2843403B2 - 新規なポリビニルアルコール系重合体およびポリビニルアルコール系重合体の製造方法 - Google Patents

新規なポリビニルアルコール系重合体およびポリビニルアルコール系重合体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 A.産業上の利用分野 本発明は、新規なポリビニルアルコール系重合体およ
びポリビニルアルコール系重合体の製造方法に関する。
本発明のポリビニルアルコール系重合体の製造方法に
よれば、本発明の新規なポリビニルアルコール系重合体
をはじめとする高いシンジオタクテイシテイおよびけん
化度を有する高重合度のポリビニルアルコール系重合体
を簡便に得ることができる。
B.従来の技術 ポリ酢酸ビニル系重合体のけん化物などのポリビニル
アルコール系重合体は、数少ない結晶性の水溶性高分子
として優れた界面特性および強度特性を有することか
ら、紙加工、繊維加工、エマルジヨン用の安定剤等に利
用されているのをはじめとして、ビニロンフイルム、ビ
ニロン繊維などの原料として重要な地位を占めているの
は周知の通りであるが、最近はゲルの素材として注目さ
れるなど、新分野への展開も積極的に図られている。
ところで、従来市販されているポリビニルアルコール
系重合体は、立体規則的にはいわゆるアタクテイツク
(ダイアツド表示でシンジオタクテイシテイ含量約53モ
ル%)である。立体規則性に優れたポリビニルアルコー
ル系重合体は、水素結合の影響でアタクテイツク体とは
顕著に異なつた物性を示すことが知られており、特にシ
ンジオタクテイシテイがダイアツド表示で55モル%以上
のポリビニルアルコール系重合体は結晶し易くなるな
ど、従来のポリビニルアルコール系重合体の可能性を拡
げるものとして期待されている。
シンジオタクテイシテイの高いポリビニルアルコール
系重合体を得る方法としていくつかの方法が提案されて
おり、その一つとしてピバリン酸ビニルの重合体をけん
化する方法が知られている。例えば、坂口らはピバリン
酸ビニルをアセトン−水混合溶媒中、水酸化カリウムの
存在下でけん化することによりポリビニルアルコール系
重合体を得たことを報告している〔高分子化学、第27
巻、第758〜762頁(1970年)参照〕。Nozakura(野桜)
らの報告によれば、ピバリン酸ビニルをアセトン−メタ
ノール混合溶媒中またはジオキサン−メタノール混合溶
媒中、次いでメタノール中でそれぞれ水酸化カリウムの
存在下にけん化することによりポリビニルアルコール系
重合体を得たとされている〔ジャーナル・オブ・ポリマ
ー・サイエンス:ポリマー・ケミストリー・エデイシヨ
ン(Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry E
dition)第11巻、第279〜288頁(1973年)参照〕。ま
た、Imaiらの報告によれば、ピバリン酸ビニルをアセト
ン中、次いでジメチルスルホキシド中で、それぞれ水酸
化カリウムの存在下にけん化することにより、ポリビニ
ルアルコール系重合体を得たとされている〔ジヤーナル
・オブ・ポリマー・サイエンス:ポリマー・ケミストリ
ー・エデイシヨン(Journal of Polymer Science:Ploym
er Chemistry Edition)第26巻、第1961〜9168頁(1988
年)参照〕。
C.発明が解決しようとする課題 一般に、ポリピバリン酸ビニルのように側鎖がかさ高
いポリビニルエステルは、その立体障害のために加水分
解を受けにくく、通常ポリ酢酸ビニルに対して実施する
ような条件下でのアルカリけん化方法では十分にけん化
度の高いポリビニルアルコール系重合体は得られない。
例えば、上記の坂口らの報告では、得られたポリビニル
アルコール系重合体のケン化度は約52%であるにすぎな
い。一方、上記のNozakuraらの報告では得られたポリビ
ニルアルコール系重合体のけん化度および重合度は不明
であるが、本発明者らの追試によれば、Nozakuraらが報
告した方法に従つてポリピバリン酸ビニルをけん化する
とある程度けん化度の高いポリビニルアルコール系重合
体は得られるものの黒褐色に着色し、低重合度化してい
ることが判明した。しかも、この方法はけん化反応を繰
返して実施するために操作上煩雑である。また、上記の
Imaiらの報告によれば得られたポリビニルアルコール系
重合体の重合度が低いが、これはけん化反応中に重合度
低下が生起したためであると考えられる。しかも、Imai
らが報告した方法は、けん化反応を二段階で実施するた
め操作上煩雑である。
しかして本発明の目的の1つは、シンジオタクテイシ
テイに富みかつ高いけん化度を有する高重合度の新規な
ポリビニルアルコール系重合体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シンジオタクテイシテイに
富みかつ高いけん化度を有する高重合度のポリビニルア
ルコール系重合体を容易にかつけん化反応工程における
重合度低下を抑制して製造する方法を提供することにあ
る。
D.課題を解決するための手段 本発明によれば、上記の目的は、式 で示されるビニルアルコール単位および一般式 (式中、R1は水素原子または化水素基を表し、R2および
R3はそれぞれ炭化水素基を表す) で示されるビニルエステル単位からなり、ビニルアルコ
ール単位を55〜99.99モル%の範囲内、ビニルエステル
単位を45〜0.01モル%の範囲でそれぞれ含有し、シンジ
オタクテイシテイがダイアツド表示で55モル%以上であ
り、かつ酢化して得られるポリ酢酸ビニル系重合体のベ
ンゼン中、30℃での極限粘度が0.70dl/g以上であるポリ
ビニルアルコール系重合体を提供することによつて達成
され、また一般式 (式中、R1、R2およびR3は前記定義のとおりである) で示されるビニルエステルの単独重合体または共重合体
を酸素の実質的な不存在下または酸化防止剤の存在下で
けん化することを特徴する式(I)で示されるビニルア
ルコール単位および一般式(II)で示されるビニルエス
テル単位からなるポリビニルアルコール系重合体の製造
方法を提供することによつて達成される。
先ず本発明のポリビニルアルコール系重合体について
述べる。該重合体は、式(I)で示されるビニルアルコ
ール単位と一般式(II)で示されるビニルエステル単位
を必須成分として含有し、ビニルアルコール単位含量が
55〜99.99モル%の範囲内であり、かつビニルエステル
単位含量が45〜0.01モル%の範囲内である。好ましく
は、ビニルアルコール単位含量が60〜99.99モル%の範
囲内であり、かつビニルエステル単位含量が40〜0.01モ
ル%の範囲内であり、好ましくはビニルアルコール単位
含量70〜99.99モル%およびビニルエステル単位含量30
〜0.01モル%であり、より好ましくはビニルアルコール
単位含量80〜99.99モル%およびビニルエステル単位含
量20〜0.01モル%、さらにより好ましくはビニルアルコ
ール単位含量90〜99.99モル%およびビニルエステル単
位含量10〜0.01モル%である。ビニルエステル単位含量
が増加するに従い該重合体の結晶性が良好となり、特に
ビニルアルコール単位含量96〜99.99モル%およびビニ
ルエステル単位含量4〜0.01モル%、好ましくはビニル
アルコール単位含量97〜99.99モル%およびビニルエス
テル単位含量3〜0.01モル%の場合には該重合体の結晶
性が著しく良好なものになる。一般式(II)における
R1、R2およびR3がそれぞれ表すことのある炭化水素基と
しては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルな
どの低級アルキル基;フエニルなどのアリール基;シク
ロヘキシルなどのシクロアルキル基などの炭素数1〜18
の炭化水素基が好ましい。ビニルエステル単位を与える
モノマーに対応する一般式(III)で示される ビニルエステルの汎用性の高さなどを考慮すると、
R1、R2およびR3がそれぞれメチル基であることが好まし
い。本発明のポリビニルアルコール系重合体は、55〜9
9.99モル%のビニルアルコール単位と45〜0.01モル%の
ビニルエステル単位の残余の構成モノマー単位として、
他の置換されていてもよいエチレン基を有していてもよ
い。かかる置換されていてもよいエチレン基としては、
例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸
ビニル等の一般式(III)で示されるビニルエステル以
外のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブ
チレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセ
ン等のオレフイン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロ
トン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等のα,β−不飽
和カルボン酸類、その塩、モノアルキルエステルまたは
ジアルキルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロ
ニトリル等のα,β−不飽和ニトリル類;アクリルアミ
ド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の不飽
和アミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、
メタリルスルホン酸等のオレフインスルホン酸類または
その塩類;イソプロピルビニルエーテル等のアルキルビ
ニルエーテル流;ポリオキシエチレンメチルアリルエー
テル等のポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル
類;イソプロピルアリルエーテル等のアルキルアリルエ
ーテル類;酢酸アリル等の飽和カルボン酸アリルエステ
ル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン;塩化ビニ
ル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフイン;1−ビニ
ル−2−メチルイミダゾール、1−ビニル−2,3−ジメ
チルイミダゾリニウムクロリド等のアミノ基または第4
級アンモニオ基含有ビニル化合物などのモノマーに由来
する基を挙げることができる。これらの置換されていて
もよいエチレン基の含量は通常、5モル%以下である。
本発明のポリビニルアルコール系重合体の重合度に関
しては、該重合体のビニルアルコール部分を酢化して得
られるポリ酢酸ビニル系重合体についてベンゼン中、30
℃で測定した極限粘度〔η〕の値を代用して表現する。
本発明のポリビニルアルコール系重合体においては、そ
れから得られるポリ酢酸ビニル系重合体の極限粘度が0.
70dl/g以上である。極限粘度が0.70dl/g以上である場合
にはポリビニルアルコール系重合体から形成されるゲル
の機械的強度が高く、繊維およびフイルムの機械的強度
も高い。しかしながら、前記の極限粘度が高すぎる場合
にはポリビニルアルコール系重合体の成形が難しくなる
ため、極限粘度の上限は好ましくは15.0dl/gである。
本発明のポリビニルアルコール系重合体のシンジオタ
クテイシテイは重水素化ジメチルスルホキシド(d6−DM
SO)溶媒中での1H−NMR測定に基づくダイアツド表示で5
5モル%以上であり、好ましくは57モル%以上である。
シンジオタクテイシテイがダイアツド表示で55モル%以
上である場合には、ポリビニルアルコール系重合体が結
晶し易く、融点が高いゲル、繊維およびフイルムを形成
することができる。
本発明のポリビニルアルコール系重合体をはじめとす
る一般式(I)で示されるビニルアルコール単位および
一般式(II)で示されるビニルエステル単位からなるポ
リビニルアルコール系重合体は、前述のとおり一般式
(III)で示されるビニルエステルの単独重合体または
共重合体を酸素の実質的な不存在下または酸化防止剤の
存在下でけん化することにより、容易にかつけん化反応
工程における重合度低下を抑制して製造することができ
る。
次にポリビニルアルコール系重合体の製造方法につい
て説明する。
本発明の製造方法で使用するビニルエステルを表す一
般式(III)においてR1、R2およびR3がそれぞれ表すこ
となる炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、
プロピル、ブチルなどの低級アルキル基;フエニルなど
のアリール基;シクロヘキシルなどのシクロアルキル基
などの炭素数1〜18の炭化水素基が好ましい。ビニルエ
ステルの汎用性の高さなどを考慮すると、R1、R2および
R3がそれぞれメチル基であることが好ましい。
すなわち、ビニルエステルとしてはピバリン酸ビニル
が好ましく、その他のビニルエステルとしてはバーサチ
ツク酸ビニルの単独重合体および共重合体も好ましく用
いられる。一般式(III)でここで、共重合体の場合の
コモノマー単位は、けん化によつてビニルアルコール単
位を生成する単位とそれ以上の単位に分けられる。前者
のコモノマー単位はタクテイシテイーの制御を目的に共
重合されるもので、酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオ
ン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサイ
テイツク酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビ
ニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類であり、そ
の供重合組成はシンジオタクテイシテー量との関係で設
定される。一方、後者のコモノマー単位は主として変性
を目的に供重合されるもので、本発明の趣旨を損なわな
い範囲で使用される。このような単位としては、たとえ
ば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等
のオレフイン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸
メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、
アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アク
リル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸
2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸
オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸
およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチ
ル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロ
ピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチ
ル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチル
ヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタ
デシル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、
N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミ
ド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリ
ルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およぞそ
の塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびそ
の塩と4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびそ
の誘導体等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミ
ド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリ
ルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸および
その塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよ
びその塩とその4級塩、N−メチロールアクリルアミド
およびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体、メチル
ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ピロピル
ビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブ
チルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−
ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステ
アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロ
ニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビ
ニル、塩化ビニリデン、フツ化ビニル、フツ化ビニリデ
ン等のハロゲン化ビニル類、酢酸アリル、塩化アリル等
のアリル化合物、マレンイン酸およびその塩とエステ
ル、イタコン酸およびその塩とエステル、ビニルトリメ
トキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペ
ニル等である。
前記の本発明のポリビニルアルコール系重合体のよう
なシンジオタクテイシテイに富むポリビニルアルコール
系重合体を得る目的においては、本発明の方法に従うけ
ん化反応に対するポリマーは、一般式(III)で示され
るビニルエステルの単独重合体であるか、または使用す
るコモノマーの種類などに応じて一様ではないが、通常
一般式(III)で示されるビニルエステルを全モノマー
に対して55モル%以上の割合で使用したコモノマーと共
重合させて得られる該ビニルエステルの共重合体である
ことが望ましい。なお、一般式(III)で示されるビニ
ルエステルの単独重合体または共重合体は、該ビニルエ
ステルを塊状重合、溶液重合、けん濁重合およびエマル
ジヨン重合などの通常の方法で単独重合させるか、また
は該ビニルエステルとコモノマーとを通常の方法で共重
合させることにより製造される。
ビニルエステルの重合温度については特に制限はない
が、−80〜300℃の範囲から適宜選択される。重合湿間
が70〜200℃の場合には、得られたポリビニルアルコー
ル系重合体は1,2.−グリコール結合量が1.8モル%以上
で、かつシンジオタクテイシテイが55モル%以上とな
る。重合湿度が70℃未満の場合には1,2−グリコール結
合量が1.8モル%未満となり、重合温度が300℃を超える
とシンジオタクテイシテイが55モル%未満となる。
本発明の方法に従うけん化反応は、塩基性物質の存在
下に行われ、該塩基性物質の使用量、溶媒の種類などに
応じてエステル交換反応および直接けん化反応のいずれ
の反応条件を選択することもできる。塩基性物質として
は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの
アルカリ金属水酸化物;カリウムメトキシド、カリウム
エトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメト
キシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アル
コキシドなどが挙げられる。これらの塩基性物質を用い
て以下のごとくけん化反応が実施される。即ち、一般式
(III)で示されるビニルエステルの単独重合体または
共重合体を溶解または十分に膨潤させ得る溶媒中、酸素
の実質的な不存在下または酸化防止剤の存在下で、上記
塩基性物質を用いてけん化する。
けん化に使用される溶媒としては、一般式(III)で
示されるビニルエステルの単独重合体または共重合体を
溶解または膨潤させ得るものであれば使用可能である
が、さらには塩基性物質に対して大きい溶解度を持つも
のおよび生成するポリビニルアルコール系重合体を膨潤
または溶解させるものが望ましく、これらの性質を有す
る溶媒として、たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサ
ンなどの環状エーテル;アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジメチルス
ルホキシドなどのスルホキシド;ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミドなどのアミド;トルエン、ベ
ンゼンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノー
ル、t−ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサ
ノールなどのアルコール等が単独でまたは混合して使用
される。特にメチルイソブチルケトン、テトラヒドロフ
ラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、メタノー
ル、エタノール、t−ブタノールなどのアルコールなど
が好適に使用される。なお、これらの溶媒が少量の水を
含有していても特に問題はない。
けん化系を酸素の実質的な不存在下とする方法とし
て、通常、酸素の除去処理が施された窒素ガス、アルゴ
ンガスなどの不活性ガスを系内に導入しバブリングする
方法が採用されるが、本発明の製造方法において酸素除
去の手段、方法に特に制限はなく、けん化反応に悪影響
を及ぼさない酸素吸着剤をけん化系に添加することによ
つて系内を酸素の実質的な不存在下とすることも可能で
ある。ポリマー溶液、溶媒によるポリマー膨潤物、ポリ
マー分散液などの状態のけん化系においてポリマー含有
反応混合物における溶存酸素濃度は、ウインクラーの溶
存酸素定量法(Winkler's method)による定量値で5×
10-4モル/以下であることが望ましい。酸素の実質的
な存在下でけん化反応を行う場合には、反応系に酸化防
止剤を添加しない限り、ビニルエステルの単独重合また
は共重合体の著しい重合度低下を伴なうため高いけん化
度を有する高重合度のポリビニルアルコール系重合体を
得ることは困難である。
本発明の方法で使用し得る酸化防止剤としては、けん
化反応に悪影響を及ぼさずかつけん化系において酸化防
止活性を喪失しない酸化防止剤であればとくに限定され
ることはなく、例えば、 で示される化合物〔IRGANOX 1010(日本チバガイギー
社製)〕、 で示される化合物〔IRGANOX 1098(日本チバガイギー
社製)〕などのヒンダードフエノール系酸化防止剤;ヒ
ドロキノンなどのフエノール系酸化防止剤;SANOL LS−
770(日本チバガイギー社製)などのヒンダードアミン
系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は
単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよ
い。酸化防止剤を添加することによつて特にけん化系の
酸素を除去する操作を実施しなくてもけん化工程でのビ
ニルエステルの単独重合体または共重合体の重合度低下
を抑制することが可能である。また、酸化防止剤を使用
する場合にけん化系中に存在する酸素の少なくとも一部
を除去することによつて、酸化防止剤の使用量をより少
なくしても上記の重合度低下抑制効果を充分に達成する
ことが可能となる。
一般式(III)で示されるビニルエステルの単独重合
体または共重合体およびそれから生成するポリビニルア
ルコール系重合体のようなポリマーの、けん化系におけ
るポリマー含有反応混合物中での濃度は、一般式(II
I)で示されるビニルエステルの単独重合体または共重
合体の重合度に応じて適宜決定することができるが、通
常3〜70重量%の間に設定される。塩基性物質の添加量
は、一般式(III)で示されるビニルエステルの単独重
合体または共重合体中に含まれる全ビニルエステル単位
〔即ち、一般式(III)で示されるビニルエステルに由
来する一般式(II)で示されるビニルエステル単位と、
場合によりコモノマーとして使用されることのある一般
式(III)で示されるビニルエステル以外のビニルエス
テルに由来するビニルエステル単位とを包含するビニル
エステル単位〕に対する塩基性物質のモル比で表され、
通常、塩基性物質/全ビニルエステル単位(モル比)が
0.005〜10の間に設定される。この上限値および下限値
は目標とするけん化度、使用する溶媒および塩基性物質
の種類などによつて変化するが、一般に0.005未満では
けん化度が十分に上がらず、10より大ではけん化反応は
問題なく進行するが、酸化による分子量低下を生じやす
い。なおこの塩基性物質の使用量は、一般式(III)で
示されるビニルエステルの共重合体が全ビニルエステル
単位以外のモノマー単位において明らかに塩基性物質と
反応する基(たとえばカルボキシル基)を含む場合およ
び酸化防止剤が塩基性物質と反応する場合には、これら
で消費される量を補償して設定される。けん化の温度は
通常20℃〜120℃の間に設定されるが、高温では分子量
低下を生じやすい。けん化に要する時間は、目的とする
けん化度;けん化において採用する溶媒、塩基性物質、
モル比および温度等により適宜決められる。けん化反応
終了後はけん化反応系に残存している塩基性物質を直ち
に酸を用いて中和するのが好ましい。酸としては塩酸、
硫酸、硝酸、リン酸、炭酸などの無機酸とか、ギ酸、酢
酸、安息香酸などの有機酸が挙げられるが、なかでも有
機酸が好ましく、有機酸のなかでも酢酸が最も好まし
い。けん化反応終了後、直ちに、残存している塩基性物
質を中和しない場合には、得られたポリビニルアルコー
ル系重合体の重合度が低下するので好ましくない。また
けん化反応終了後の不必要な加熱は、着色および分子量
低下の原因となるので避けるべきである。
以上のようにして生成したポリビニルアルコール系重
合体は、通常採用される手法(たとえば塩基性物質の中
和およびそれに続く洗浄操作)により精製される。
E.実施例 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本
発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
参考例1 5mlのピバリン酸ビニル、10mlの蒸留水、0.5mlの乳化
剤〔 (mの平均値は18)で示される硫酸化ポリエチレングリ
コールエーテルを65%、水を26%の割合でそれぞれ含有
する混合液〔花王(株)製レベノールWZ〕〕およびテフ
ロン製回転子をPyrex製ケルダールフラスコ中に入れ、
凍結融解を繰り返して脱気し減圧封管した。これを0℃
の恒温槽中に保持し、撹拌下、150Wの高圧水銀ランプを
照射しながら、10時間重合した。重合終了後、反応混合
物を大量のメタノール中に投入してポリマーを回収し、
メチルエチルケトン−水系による再沈精製を行い、60℃
で減圧乾燥した。このようにしてピバリン酸ビニルの単
独重合体を得た。なお、重合率は55.5%であつた。
参考例2 5mlのピバリン酸ビニルの代りに3mlのピバリン酸ビニ
ルと2mlの酢酸ビニルの混合物を使用する以外は参考例
1におけると同様にして重合ならびにポリマーの回収お
よび精製を行い、ピバリン酸ビニルと酢酸ビニルの共重
合体を得た。なお、重合率は65%であつた。
実施例1〜7 分液ロート、還流管および窒素導入管を備えた300ml
の反応容器に、参考例1で得られたピバリン酸ビニルの
単独重合体または参考例2で得られたピバリン酸ビニル
と酢酸ビニルの共重合体の2gを入れ、200mlのけん化溶
媒を加えて溶解した後、99.9%の窒素をバブリングする
ことにより酸素を除去した。塩基性物質を25重量%の濃
度となるようにメタノール中に溶解または分散させた混
合物に99.9%の窒素をバブリングすることにより窒素を
除去した。このようにして得られたポリマー溶液および
塩基性物質−メタノール混合物における溶存酸素濃度を
ウインクラーの溶存酸素定量法で定量した結果、どちら
も3×10-5モル/以下であることが判明した。この塩
基性物質−メタノール混合物を上記の分液ロートに仕込
み、反応容器内温をけん化温度まで上げ、窒素気流下分
液ロートから所定時間で塩基性物質のメタノール溶液を
添加しながら、けん化を実施した。けん化は酢酸6.8を
メタノール10.1gとともに添加して塩基性物質を中和
し、氷冷することにより停止した。反応終了後、生成物
をろ過し、メタノールで十分に洗浄して、60℃で減圧乾
燥した。採用したけん化条件ならびに得られたポリビニ
ルアルコール系重合体の色調および分析結果を第1表に
示す。
なお、上記の酢化は次のようにして行われる。即ち、
測定対象となるポリビニルアルコール系重合体を40℃で
減圧乾燥し、得られた乾燥重合体の1gを酢酸150ml、無
水酢酸400mlおよびピリジン30mlとともに窒素ガス雰囲
気下、封管中において130℃で8時間、次いで70℃で24
時間加熱下に反応させる。このようにして得られる反応
混合物をエーテルに加え、生じた沈殿物をアセトンおよ
びエーテルをそれぞれ溶媒および沈殿剤として使用する
再沈殿精製操作に2回付することにより極限粘度測定に
供するポリ酢酸ビニル系重合体を得ることができる。
以上の実施例1で得たポリビニルアルコールについ
て、水、DMSOへの溶解性を検討した。結果を第2表に示
す。
実施例8 ポリマー溶液および塩基性物質−メタノール混合物に
おける窒素のバブリングを行わず、ポリマー溶液に酸化
防止剤(日本チバガイギー社製 IRGANOX 1010)の0.0
1gを添加し、かつけん化の雰囲気を空気に変更する以外
は、実施例1〜7におけると同様にしてけん化、生成物
の回収およびポリビニルアルコール系重合体の精製およ
び酢化を行つた。採用したけん化条件ならびに得られた
ポリビニルアルコール系重合体の色調および分析結果を
第1表に示す。
比較例 ポリマー溶液および塩基性物質−メタノール混合物に
おける窒素のバブリングを行わず、かつけん化の雰囲気
を空気に変更する以外は、実施例1〜7におけると同様
にしてけん化、生成物の回収およびポリビニルアルコー
ル系重合体の精製を行つた。採用したけん化条件ならび
に得られたポリビニルアルコール系重合体の色調および
分析結果を第1表に示す。なお、けん化反応に使用した
ポリマー溶液および塩基性物質−メタノール混合物にお
ける酸素溶存濃度はいずれも1.6×10-3モル/以上で
あつた。
実施例9 撹拌機を備えた耐圧容器に、ピバリン酸ビニルモノマ
ー90部を仕込み、窒素ガスによる加圧、放出を繰り返し
系を窒素置換した。別途ピバリン酸ビニルモノマー10部
に開始剤として2,2−アゾビス(2,2,4−トリメチルペン
タン)(VR−110;和光純薬(株)製)0.000277部を溶解
した溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングで窒素置
換した。
耐圧容器を昇温し、内温が120℃に達したところで開
始剤を溶解したピバリン酸モノマー溶液を注入し、重合
を開始した。2時間後冷却して重合を停止し、内容物を
大量のメタノール中に投入し、生成ポリマーを回収し
た。ポリマーは、アセトン−メタノール系で2回再沈生
成を行ない、減圧下60℃で乾燥した。得られたポリマー
は8.2部であつた。
次に、このポリマー1部を窒素置換したテトラヒドロ
キシフラン49部に溶解して60℃に保持した後、別途調整
し窒素置換した25%の水酸化カリウムのメタノール溶液
10.5分を添加し十分に撹拌した。この時ポリマー溶液お
よび水酸化カリウム溶液における溶存酸素濃度を、ウイ
ンクラーの方法で定量した結果、どちらも3×10-5モル
/以下であつた。けん化系は、約5分でゲル化した
が、さらに25分間、60℃に保持した後、酢酸3.4部をメ
タノール10.1部とともに添加して水酸化カリウムを中和
した。続いてゲルを粉砕した後、メタノールによるソツ
クスレー洗浄を実施し、ポリビニルアルコールを得た。
得られたポリビニルアルコール0.1部に無水酢酸10
部、ピリジン2部を加えて封管した後、120℃で3時間
加熱し、酢化した。ポリ酢酸ビニルは、n−ヘキサンに
沈殿させアセトン−n−ヘキサン系で2回再沈を繰り返
し精製した。
得られたポリビニルアルコールをd6−DMSOに溶解し、
NMRを測定したところけん化度99.6モル%、シンジオタ
クテイシテイー60.2モル%、1,2−グリコール結合量2.2
9モル%であつた。また該ポリビニルアルコールを酢化
して得たポリ酢酸ビニルについて、ベンゼン中30℃で測
定した〔η〕は3.65であつた。
実施例10〜12 撹拌機を備えた反応容器に、ピバリン酸ビニルモノマ
ー600部、メタノール200部を仕込み、窒素ガスバブリン
グにより系を窒素置換した。別途メタノール26部に開始
剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.0712部
を溶解した溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングで
窒素置換した。反応容器を昇温し、内温が60℃に達した
ところで開始剤を溶解したメタノール溶液を注入し重合
を開始した。190分後重合率が50%に達したところで冷
却して重合を停止し、t−ブタノールを時どき添加しな
がら減圧下で未反応のピバリン酸ビニルモノマーを除去
してポリピバリン酸ビニルのt−ブタノール溶液とし
た。続いて減圧下t−ブタノールを除去してポリピバリ
ン酸ビニルを得た。
次に撹拌機と還流冷却管を備えた反応器に、このポリ
ピバリン酸ビニル10部を計り取り、減圧脱気−窒素ガス
導入を繰り返して窒素置換した後、別途窒素置換した表
1に示すけん化反応に使用するけん化溶媒90部を加えて
60℃に加温、撹拌溶解した。続いて別途調整し窒素置換
した25%の水酸化カリウムのメタノール溶液21部を添加
し十分に撹拌混合した。この時ポリマー溶液および水酸
化カリウム溶液における溶存酸素濃度を、ウインクラー
の方法で定量した結果、どちらも3×10-5モル/以下
であつた。窒素ガスシール下で60℃に2時間保持した
後、酢酸6.8部をメタノール20部とともに添加して水酸
化カリウムを中和した。続いてゲルを粉砕した後、メタ
ノールによるソツクスレー洗浄を実施し、ポリビニルア
ルコールを得た。得られたポリビニルアルコール0.5部
に無水酢酸10部、ピリジン2部を加えて封管した後120
℃で8時間加熱して酢化した。得られたポリ酢酸ビニル
はn−ヘキサンに沈殿させアセトン−n−ヘキサン系で
2回再沈を繰り返し精製した。
ポリビニルアルコールはd6−DMSOに溶解してNMRを測
定し、けん化度、シンジオタクテイシテイー、および1,
2−グリコール結合量を求めた。酢化して得たポリ酢酸
ビニルはベンゼンに溶解し、30℃で〔η〕を測定した。
シンジオタクテイシテイーは61.4モル%、1,2−グリコ
ール結合量は1.70モル%であつた。結果を表3に示す。
実施例13 撹拌機を備えた耐圧容器に、ピバリン酸ビニルモノマ
ー90部を仕込み、窒素ガスによる加圧、放出を繰り返し
系を窒素置換した。別途ピバリン酸ビニルモノマー10部
に開始剤として2′,2−アゾビスイソブチロニトリル0.
00125部を溶解した溶液を調整し、窒素ガスによるバプ
リングで窒素置換した。
耐圧容器を昇温し、内温が60℃に達したところで開始
剤を溶解したピバリン酸ビニルモノマー溶液を注入し、
重合を開始した。90分後冷却して重合を停止し、内容物
を大量のメタノール中に投入し、生成ポリマーを回収し
た。ポリマーは、アセトン−メタノール系で2回再沈生
成を行ない、減圧下60℃で乾燥した。得られたポリマー
は6.5部であつた。
次に、このポリマー1部を窒素置換したテトラヒドロ
フラン49部に溶解して60℃に保持した後、別途調整し窒
素置換した25%の水酸化カリウムのメタノール溶液10.5
部を添加し十分に撹拌した。この時ポリマー溶液および
水酸化カリウム溶液における溶存酸素濃度を、ウインク
ラーの方法で定量した結果、どちらも3×10-5モル/
以下であつた。けん化系は、約5分でゲル化したが、さ
らに25分60℃に保持した後、酢酸3.4部をメタノール10.
1部とともに添加して水酸化カリウムを中和した。続い
てゲルを粉砕した後、メタノールによるソツクスレー洗
浄を実施し、ポリビニルアルコールを得た。得られたポ
リビニルアルコール0.1部に無水酢酸10部、ポリジン2
部を加えて封管した後、120℃で3時間加熱、酢化し
た。ポリ酢酸ビニルは、n−ヘキサンに沈殿させアセト
ン−n−ヘキサン系で2回再沈を繰り返し精製した。
得られたポリビニルアルコールをd6−DMSOに溶解し、
NMRを測定したところけん化度99.7モル%、シンジオタ
クテイシテイー61.5モル%、1,2−グリコール結合量1.7
0モル%であつた。また該ポリビニルアルコールを酢化
して得たポリ酢酸ビニルについて、ベンゼン中30℃で測
定した〔η〕は6.80dl/gであつた。
実施例14 撹拌機を備えた反応容器に、ピバリン酸ビニルモノマ
ー100部と2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.00827
部を仕込み、減圧脱気−窒素ガス導入を繰り返し系を窒
素置換した。ただちに冷却を開始し反応容器の内温が−
30℃に達したところで、撹拌下高圧水銀灯(ウシオ電機
(株)製、型式UM452、定格消費電力450W)を5cmの距離
から照射し重合した。70分後水銀灯の照射を中止し、内
容物を大量のメタノール中に投入して生成ポリマーを回
収した。ポリマーは、アセトン−メタノール系で2回再
沈生成を行ない、減圧下60℃で乾燥した。得られたポリ
マーは5.4部であつた。
次に、このポリマー1部を窒素置換したメチルエチル
ケトン49部に溶解して60℃に保持した後、別途調整し窒
素置換した25%の水酸化カリウムのメタノール溶液10.5
部を添加し十分に撹拌した。この時ポリマー溶液および
水酸化カリウム溶液における溶存酸素濃度を、ウインク
ラーの方法で定量した結果、どちらも3×10-5モル/
以下であつた。けん化系は、約5分でゲル化したが、さ
らに25分60℃に保持した後、酢酸3.4部をメタノール10.
1部とともに添加して水酸化カリウムを中和した。続い
てゲルを粉砕した後、メタノールによるソツクスレー洗
浄を実施し、ポリビニルアルコールを得た。得られたポ
リビニルアルコール0.1部に無水酢酸10部、ピリジン2
部を加えて封管した後、120℃で3時間加熱、酢化し
た。ポリ酢酸ビニルは、n−ヘキサンに沈殿させアセト
ン−n−ヘキサン系で2回再沈を繰り返し精製した。得
られたポリビニルアルコールをd6−DMSOに溶解し、NMR
を測定したところけん化度99.6モル%、シンジオタクテ
イシテイ−64.0モル%、1,2−グリコール結合量0.80モ
ル%であつた。また該ポリビニルアルコールを酢化して
得たポリ酢酸ビニルについて、ベンゼン中30℃で測定し
た〔η〕は2.95dl/gであつた。
実施例15 撹拌機を備えた耐圧容器に、ピバリン酸ビニルモノマ
ー90部を仕込み、窒素ガスによる加圧、放出を繰り返し
系を窒素置換した。別途ピバリン酸ビニルモノマー10部
に開始剤として2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−
ジメチルバレロニトリル)0.000091部を溶解した溶液を
調整し、窒素ガスによるバブリングで窒素置換した。
耐圧容器を昇温し、内温が30℃に達したところで開始
剤を溶解したピバリン酸ビニルモノマー溶液を注入し、
重合を開始した。10時間後冷却して重合を停止し、内容
物を大量のメタノール中に投入し、精製ポリマーを回収
した。ポリマーは、アセトン−メタノール系で2回再沈
生成を行ない、減圧下60℃で乾燥した。得られたポリマ
ーは4.2部であつた。
次に、このポリマー1部を窒素置換したテトラヒドロ
フラン49部に溶解して60℃に保持した後、別途調整し窒
素置換した25%の水酸化カリウムのメタノール溶液10.5
部を添加し十分に撹拌した。この時ポリマー溶液および
水酸化カリウム溶液における溶存酸素濃度を、ウインク
ラーの方法で定量した結果、どちらも3×10-5モル/
以下であつた。けん化系は、約5分でゲル化したが、さ
らに25分間、60℃に保持した後、酢酸3.4部をメタノー
ル10.1部とともに添加して水酸化カリウムを中和した。
続いてゲルを粉砕した後、メタノールによるソツクスレ
ー洗浄を実施し、ポリビニルアルコールを得た。得られ
たポリビニルアルコール0.05部に無水酢酸10部、ピリジ
ン2部を加えて封管した後、120℃で3時間加熱、酢化
した。ポリ酢酸ビニルは、n−ヘキサンに沈殿させアセ
トン−n−ヘキサン系で2回再沈を繰り返し精製した。
得られたポリビニルアルコールをd6−DMSOに溶解し、
NMRを測定したところけん化度99.7モル%、シンジオタ
クテイシテイ−61.9モル%、1,2−グリコール結合量1.4
2モル%であつた。また該ポリビニルアルコールを酢化
して得たポリ酢酸ビニルについて、ベンゼン中30℃で測
定した〔η〕は9.72dl/gであつた。
F.発明の効果 本発明によれば、上記の実施例から明らかなとおり、
着色が少なく、シンジオタクテイシテイに富む高重合度
のポリビニルアルコール系重合体を、けん化工程におけ
る重合度低下を抑制して製造することをはじめて見い出
したものである。さらに本発明によれば、特に高けん化
度、高重合度のシンジオタクテイシテイーに富むポリビ
ニルアルコール系重合体を製造することができる。
本発明のポリビニルアルコール系重合体は、シンジオ
クテイシテイが高く、また分岐構造が少ない(即ち、リ
ニヤリテイーが高い)ことに特徴がある。
また本発明は高シンジオタクテイツクポリビニルビニ
ルアルコール系重合体へ1,2−グリコール結合を積極的
に導入することにより、結晶化にはマイナスとなるもの
の、共重合や部分けん化による方法と異なり、非晶領域
での分子間水素結合にプラスとして作用するために、上
述のようにシンジオタクテイシテイの高いことに加えて
加工性が良好になり、公知のポリビニルアルコール系重
合体の用途はもちろん、該重合体の特徴を生かした用
途、さらには高シンジオタクテイシテイ−ポリビニルア
ルコール系重合体を利用したいが、加工性の悪さのため
に使用できなかつた用途等に好適に用いられる。
本発明のポリビニルアルコール系重合体の用途とし
て、高強力繊維、高弾性率繊維、耐水性繊維、耐熱性繊
維、耐水性フイルム、耐熱性フイルム、高強力ゲル材
料、繊維処理剤、紙加工剤等が例示され、工業的な価値
が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で得られたポリビニルアルコール系
重合体のd6−DMSO中で測定した1H−NMRスペクトル〔400
MHz,日本電子(株)製 GX−400を使用〕である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−319505(JP,A) 特公 昭43−26867(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 8/12 C08F 16/06 C08F 216/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 で示されるビニルアルコール単位および一般式 (式中、R1は水素原子または炭化水素基を表し、R2およ
    びR3はそれぞれ炭化水素基を表す)で示されるビニルエ
    ステル単位からなり、ビニルアルコール単位を55〜99.9
    9モル%の範囲内、ビニルエステル単位を45〜0.01モル
    %の範囲でそれぞれ含有し、シンジオタクテイシテイが
    ダイアツド表示で55モル%以上であり、かつ酢化して得
    られるポリ酢酸ビニル系重合体のベンゼン中、30℃での
    極限粘度が0.70dl/g以上であるポリビニルアルコール系
    重合体。
  2. 【請求項2】一般式 (式中、R1、R2およびR3は請求項1における定義のとお
    りである) で示されるビニルエステルの単独重合体または共重合体
    を酸素の実質的な不存在下または酸化防止剤の存在下で
    けん化することを特徴とする式 で示されるビニルアルコール単位および一般式 (式中、R1、R2およびR3は請求項1における定義のとお
    りである) で示されるビニルエステル単位からなるビニルアルコー
    ル系重合体の製造方法。
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