JP2661654B2 - エチレン−ビニルエステル共重合体の製法 - Google Patents

エチレン−ビニルエステル共重合体の製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はエチレン−ビニルエステ
ル共重合体の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】(その1)エチレン−ビニルエステルと
くに酢酸ビニル共重合体をけん化して得られるエチレン
−ビニルアルコール共重合体はエチレン含量25〜45
モル%、極限粘度[η]ph0.099〜0.110リ
ットル/グラム(以下リットル/グラムをl/gと記
す)を中心とした共重合体が、該共重合体の高度なガス
バリヤー性の特徴を生かして、食品包装容器、油類の包
装容器および油類と接触する部品などを中心に使用さ
れ、食生活の変化とも相俟って需要量の大幅な拡大が認
められる。
【0003】エチレン含量が25モル%未満のエチレン
−ビニルアルコール共重合体はポリビニルアルコール重
合体の耐水性、吸水性、膨潤性等を改良した製品とし
て、また45モル%以上のエチレン含有率を有するエチ
レン−ビニルアルコール共重合体は柔軟性が良好で成形
性に優れるエチレン−ビニルアルコール樹脂としての展
開等が期待される。さらにエチレン含有率が25〜45
モル%で[η]ph0.099〜0.110l/g(1
5重量%含水フェノール、30℃で測定)を越えるエチ
レン−ビニルアルコール共重合体は耐久性、機械的強度
が改良された製品として各種用途分野での各種性能向上
に資することが期待される。以上の如く、従来公知のエ
チレン含有率より低エチレン含有率または高エチレン含
有率を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体、ま
た従来公知の重合度より高重合度のエチレン−ビニルア
ルコール共重合体は従来のエチレン含有率および重合度
の共重合体においては達成し得ない優れた性能を発揮す
る可能性を有しており、その安価かつ合理的な製造方法
の開発が望まれる。
【0004】従来より、エチレン及びビニルエステルを
共重合する際、溶液重合の場合、重合溶媒としてメタノ
ール、t−ブタノール等のアルコールが主として用いら
れることは公知である。従来、エチレン−ビニルエステ
ル共重合体の製造方法において、ジメチルスルホキシド
を重合溶媒とする開示は見当らない。従来法において、
メタノール等のアルコールを重合溶剤とした場合、50
℃以下の温度領域において、重合体のエチレン含量が5
0モル%以上の高エチレン含量となると重合系に溶媒が
20重量%程度存在しても、系内に重合体が析出し、不
均一な溶液となることが認められており、特に、連続重
合を考えた場合、操作上不都合である。また、溶液重合
の場合、重合系内の溶媒濃度が高くなるほど得られる重
合体の重合度は低下することが知られており、高重合度
の重合体を取得するためには従来公知のメタノール等の
溶媒の場合、重合温度の引下げ、重合速度の抑制、メタ
ノール添加量の抑制等工程上好ましくない処理を必要と
する。また60℃以上の高温での共重合の場合、反応熱
が大きくなり、系内を均一温度に保つことが困難であ
り、特にラジカル重合系では暴走反応が起こる危険性も
大きく適当な重合方法とはいえない。
【0005】一方ジメチルスルホキシドを用いて酢酸ビ
ニルを単独重合することは特公昭36−3999(米国
特許第3080350号)などにより知られているが、
エチレンと酢酸ビニルを共重合することの記載はない
し、またジメチルスルホキシドがエチレンと酢酸ビニル
がラジカル共重合するに際し、どのような機能を果す
か、また得られる共重合体の内部構造にどのような影響
を及ぼすかの記載がなされていない。
【0006】(その2)エチレン−ビニルエステル共重
合体のけん化方法としては、メタノール等のアルコール
溶媒を使用して、アルカリ性触媒を使用する均一けん化
法、メタノール水系等の溶媒を使用して、アルカリ性触
媒を使用する不均一けん化法が公知である。しかしなが
ら、メタノールを溶媒としたけん化反応においては、エ
チレン含量の増加に伴なってけん化反応速度は大幅に減
少する。さらにまた均一系けん化法の場合、従来、メタ
ノリシス反応により生成したエチレン−ビニルアルコー
ル共重合体は、メタノール溶液の状態で、水を中心とし
た該共重合体の非溶媒または、メタノールと非溶媒の混
合溶媒中に押出し、ストランド状、チップ状等のある一
定の形状に成形、乾燥の1次工程を経て、製品化される
のが一般的であり、不均一系に比較して工業的には有利
である。該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、溶
融(乾式成形)又は、特定の溶媒に溶解した溶液(湿式
成型)の状態で、繊維状、ホローファイバー状、フィル
ム状、粒子状等所望の形状に第2次の成型を受け最終製
品となる。かかる公知の一般的な製造方法は以下に述べ
る各種の改良すべき問題点を包含している。
【0007】1)エチレン −酢酸ビニル共重合体は、
エチレン含有量の上昇と共にメタノールに対する溶解性
が減少傾向を示し、均一系のメタノリシス反応の実施に
は、高温、加圧等、好ましからざる条件が必要となる。
【0008】2)エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタ
ノリシスにより生成するエチレン−ビニルアルコール共
重合体は、エチレン含有量が25〜45モル%より低エ
チレン側および高エチレン側の双方においてメタノール
に対する溶解性が減少し、特に低エチレン側では100
℃を越える高温加圧の状態においても、もはや工業的に
充分な濃度で均一状態を保ち得ず均一系でのメタノリシ
ス反応を実施し得ない。
【0009】3)エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタ
ノリシス反応は、酢酸ビニル重合体のメタノリシスに比
較して、反応速度が遅く、多量の触媒、メタノールを必
要とし、上述の共重合体のメタノールに対する溶解性と
相俟って、高温、加圧の反応系を必要とする。その為、
触媒使用量等の原材料費、スチームを中心としたユーテ
ィリティー、反応器の設備投資額等が増大し、製造コス
トの上昇の要因となる。
【0010】さらに、従来の研究によれば、エチレン−
酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの含有率が40モル
%以下である場合にはその溶解性が著しく低いため加水
分解が困難であり、従ってBestian(米国特許N
o3344129)は、それらのポリマーのメタノール
あるいはエタノール中でのアルコリシスはポリマーの溶
媒への溶解度が著しく小さいためその速度が極めて小さ
いことを報告している。そして同一反応生成物中に加水
分解された分子および非分解の分子の両者を含有する不
均一な物質が得られる。Bestianによれば反応溶
媒として芳香族炭化水素とアルコールとの混合物を使用
するRolandの方法(米国特許2386347)は
ビニルエステル/エチレンのモル比が1/5以下の場合
にのみ有効である。ポリマー中の酢酸ビニル含有率が低
い場合には、必要となる芳香族炭化水素の量が著しく多
く、不経済となり、またその反応速度も極めて遅い。こ
れらの問題を克服するためBestianは炭素原子数
4〜8のアルコールを反応溶媒として使用することによ
り溶解性の改善を述べているが高温の採用も示唆してい
る。
【0011】Imaiらの米国特許3080350(特
公昭36−4539号)には極性の大きな非プロトン性
の溶媒、ジメチルスルホキシドを使用して酢酸ビニルの
重合を行ない、更に得られたポリ酢酸ビニルをポリビニ
ルアルコールに加水分解またはアルコリシスする方法が
述べられているが、エチレンと酢酸ビニルとを共重合す
ること、さらに該共重合体をアルコリシスすることによ
りエチレン−ビニルアルコール共重合体を得ることの記
載はないし、またジメチルスルホキシドがエチレン−酢
酸ビニル共重合体をアルコリシスするに際し、どのよう
な機能を果すのか、また得られるエチレン−ビニルアル
コール共重合体にどのような影響を及ぼすのかの記載が
なされていない。
【0012】ジメチルスルホキシドを反応溶媒として使
用すると酢酸ビニルのサポニン化の速度が増大すること
が報告されている。(Vinson,J.Chem.E
d.,46,877(1969))。しかしVinso
nのサポニン化は、かなりの量の水の存在下で起こるこ
とにより、エチレン−酢酸ビニル共重合物の場合、生成
するエチレン−ビニルアルコール共重合物が水に不溶の
ため、不均一系の反応となってしまう。
【0013】更に、Johnらの米国特許378000
4(特開昭49−71082)により、エチレン−ビニ
ルエステル共重合物のアルコリシス反応をジメチルホル
ムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性の
反応媒体中および場合によっては、炭化水素系の反応媒
体を併用し、固相におけるアルコリシス反応を行う方法
も開示されているが、均一な液相での開示は見当らな
い。
【0014】(その3)エチレン−酢酸ビニルエステル
共重合体のメタノール溶媒中での水酸化ナトリウムを触
媒としたメタノリシス反応により製造されるエチレン−
ビニルアルコール共重合体はメタノール溶液の状態で、
水を中心とした該共重合体の非溶媒又はメタノールと非
溶媒の混合溶媒中に押出し、ストランド状、チップ状等
に成形し、乾燥の後製品化される。該製品は溶融(乾式
成型)又は特定の溶媒に溶解した溶液(湿式成型)の状
態で繊維状、中空糸状、フィルム状、シート状、粒子状
等所望の形状に第2次の成型を受け最終製品となる。か
かる公知の一般的な成形方法は前記した1)、2)、
3)のほかに次のような問題点を包含している。
【0015】4)エチレン−ビニルアルコール共重合体
は熱安定性が充分でなく、水系への押出し成形後におけ
る長時間の乾燥等において熱的劣化を受け易く、第2次
成型時のいわゆるゲル、ブツの原因となる熱劣化物を生
成し易い。
【0016】5)重合度が[η]ph0.099〜0.
10l/gを越える高重合度のエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体は溶液粘度が高く、乾燥時等にゲル状物質
が生成し易く、再溶解時に未溶解部が残存する傾向を示
す。
【0017】(その4)メタノリシス反応により生成し
たエチレン−ビニルアルコール共重合体はメタノール溶
液の状態で、水を代表例とした該共重合体の非溶媒又は
メタノールと非溶媒の混合溶媒中に押出し、ストランド
状、チップ状等に成形し、乾燥の後製品化される。該製
品は熔融(乾式成型)又は特定の溶媒に溶解した溶液
(湿式又は乾湿式成型)の状態で繊維状、中空糸状、フ
ィルム状、シート状、粒子状等所望の形状に第2次の成
型を受け最終製品となる。かかる公知の一般的な製造方
法は前記した1)〜5)のほかに次のような問題点を包
含している。
【0018】6)メタノールを含有するエチレン−ビニ
ルエステルの共重合系において、メタノールの共存量の
増加とともに生成するエチレン−ビニルエステル共重合
体の重合度は低下する。従って重合度の低下を抑制する
ためには重合温度の引下げ、重合速度の抑制、メタノー
ル添加量の抑制等工程上好ましくない処理を必要とす
る。
【0019】7)広範なエチレン含量のEVOHを得よ
うとしてもメタノールを用いた重合ではエチレン含量の
上限に限界があるため高エチレン含量のEVOHを得る
ことは極めてむづかしい。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】第1の課題は、前記
(その1)の問題点を解決し従来公知のエチレン−ビニ
ルエステル共重合体の製造規格(エチレン含有率、重合
度)の幅を拡張すると共に安価かつ合理的な製法を確立
することである。
【0021】第2の課題は、前記(その2)の問題点を
解決し、従来公知のエチレン−ビニルアルコール共重合
体のより安価かつ合理的な製法を確立することである。
【0022】第3の課題は、前記(その3)の問題点を
解決し、従来のエチレン−ビニルアルコール共重合体成
形物の製法にくらべ安価かつ合理的なエチレン−ビニル
アルコール共重合体成形物の製法を確立することであ
る。
【0023】第4の課題は、前記(その4)の問題点を
解決し、従来公知のエチレン−ビニルアルコール共重合
体の製造規格(エチレン含量、重合度)の幅を拡張する
と共に安価かつ合理的なエチレン−ビニルアルコール共
重合体成形物の製法を確立することである。
【0024】
【課題を解決するための手段】前記第1の課題を解決す
るための手段は、エチレンとビニルエステルをラジカル
開始剤の存在下に共重合するに際し、重合溶媒としてジ
アルキルスルホキシドを使用してエチレン−ビニルエス
テル共重合体を得る方法である。
【0025】すなわち、本発明によれば重合度低下の小
さいエチレン−ビニルエステル共重合体を得ることがで
きるし、さらに生成するエチレン−ビニルエステル共重
合体に対してジアルキルスルホキシドは良溶媒であるこ
とから、エチレン−ビニルエステル共重合体は、エチレ
ン含量の広い範囲にわたって均一の重合系を保持するこ
とが可能であり、さらにまた後続の未反応ビニルエステ
ル除去工程においても系中のジアルキルスルホキシド濃
度を調整することにより均一の溶液状態をそのまま保持
することが可能であり、工程の安定な連続化を実現でき
る。
【0026】本発明者らの検討によればメタノール20
重量部、酢酸ビニル80重量部の系で50℃で反応を行
い、エチレン含量60モル%のエチレン−酢酸ビニル重
合体(EVA)を得ようとした場合、低重合率の段階か
ら、重合系にEVAが析出し、重合系が不均一になるの
に対し、上記の設定条件に従ったジメチルスルホキシド
系の場合、重合率70%程度でも、重合系への重合体の
析出は認められなかった。また、メタノール10重量
部、酢酸ビニル90重量部の系で、40℃で反応を行
い、重合率20%で得られた重合体をけん化して得たエ
チレン含量が32モル%のEVOHの[η]phが0.
135l/gであるのに対し、ジメチルスルホキシド溶
媒では同一条件下での反応において、同一重合速度、重
合率、エチレン含量での条件下で比較したEVOHの
[η]phは0.149l/gであった。かかる実験事
実は、メタノールに比べて、ジメチルスルホキシドを重
合溶媒として、エチレンおよびビニルエステルを共重合
させた場合、極限粘度が高い共重合体が得られることを
示すものである。本発明により得られるエチレン−ビニ
ルエステル共重合体をけん化して得られるEVOHの
[η]phは、好ましくは0.4l/g以下、さらには
0.35l/g以下、さらには0.3l/g以下であ
る。また下限については好ましくは0.05l/g以
上、さらには0.06l/g以上、さらには0.07l
/g以上である。
【0027】本発明におけるエチレンとビニルエステル
の共重合反応による共重合体の製造は、重合系内のジア
ルキルスルホキシドが1重量%以上共存するビニルエス
テルとの混合溶液に対して、エチレンの加圧下にラジカ
ル開始剤を添加することにより実施される。共重合体の
エチレン含量、極限粘度は重合系のエチレン圧力、重合
温度、重合速度、重合率、ビニルエステルモノマーと溶
媒の組成等により種々変化し、所望のエチレン含量、極
限粘度の共重合体の取得の為には上記条件の厳密な調整
を必要とする。
【0028】本発明における共重合体のエチレン含量は
0.1〜80モル%が好ましい。共重合体のエチレン含
量が0.1モル%未満の場合にはけん化して得られるエ
チレン−ビニルアルコール共重合体がポリビニルアルコ
ールにくらべ耐水性などの性能改善の効果が実質的に発
現しない。好適なエチレン含量は1モル%以上であり、
さらには5モル%以上、10モル%以上さらには20モ
ル%以上である。またエチレン含量が80モル%を越え
る領域では共重合体がジメチルスルホキシドに対して溶
解し難く適当でない。共重合体の溶解性から判断すると
エチレン含量70モル%以下の共重合体がさらに望まし
い。
【0029】本発明においてビニルエステルとしては炭
素数5以下の低級脂肪酸のビニルエステルなどがあげら
れ、代表的には酢酸ビニルがあげられ、さらにはプロピ
オン酸ビニルなどもあげられる。また本発明において
は、エチレン、ビニルエステル以外で、これらと共重合
可能なエチレン性不飽和単量体を、本発明の目的が損な
わない範囲で使用することもできる。ここでエチレン性
不飽和単量体としては、例えば「ポバール(改定新
版)」(高分子刊行会、1981年4月1日発行)28
1〜285頁およびそこに引用の文献に記載のモノマー
を代表例として例示できる。
【0030】代表的なモノマーとしては、たとえばオレ
フィン(炭素数3〜18のオレフィンなど)、カルボン
酸ビニル(バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル
など)、アルキルビニルエーテル(ラウリルビニルエー
テル、メチルビニルエーテルなど)、(メタ)アクリレ
ート類{メチル(メタ)アクリレートなど}、アクリル
アミド類(アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N
−ジメチルアクリルアミドなど)、不飽和カルボン酸
(エステル)又は(無水物)(アクリル酸、クロトン
酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、これらのエ
ステル、無水物など)、スルホン酸モノマー(ビニルス
ルホン酸、アクリルスルホン酸など)、カチオン性モノ
マー(ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイ
ミダゾール、ビニルピリジン、ビニルサクシイミドな
ど)、その他(ビニレンカーボネート、アリルアルコー
ル、アリルアセテートなど)があげられる。
【0031】本発明において用いるジアルキルスルホキ
シドとしては低級アルキル基から構成され、エチレン−
ビニルエステル共重合体およびエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体に対する溶解性等の観点から低級アルキル
基の炭素数は一般に3以下が好ましい。ジアルキルスル
ホキシドの具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジ
エチルスルホキシド、ジi−プロピルスルホキシド、ジ
n−プロピルスルホキシド、メチルエチルスルホキシ
ド、メチルi−プロピルスルホキシド等を例示できる
が、ジメチルスルホキシドが、高重合度のエチレン−ビ
ニルエステル共重合体が得られること、さらには熱的、
化学的安全性が優れ、また入手しやすいことから特に好
ましい。またジアルキルスルホキシド中の含水率は2重
量%以下、好ましくは1重量%以下であることがより好
ましい。
【0032】本発明においては共重合は液相で進行す
る。ここで液相とは実質的に均一な液相をいう。
【0033】重合系におけるジアルキルスルホキシドの
含有量(ジアルキルスルホキシドとビニルエステルの合
計量に対するジアルキルスルホキシドの含有量)は1重
量%以上が好ましく、所望のEVAのエチレン含量、極
限粘度にもよるが、重合系の除熱、異常重合の防止等を
考慮した安定性、均一溶液状態の保持、ラジカル開始剤
の仕込み方法等を勘案すれば3重量%以上、さらには5
重量%以上が好適である。
【0034】重合系のジアルキルスルホキシドの含有量
が1重量%未満の場合には実質的に塊状重合の場合と同
等となり、異常重合反応等の生起を防止し難く、ラジカ
ル開始剤の仕込みも容易でなく好ましくない。ジアルキ
ルスルホキシドの含有量の上限については特に具体的な
限定条件はないが、共重合体の生産効率等の観点からは
80重量%未満、さらには70重量%未満が好適であ
る。エチレン含量が0.1〜80モル%の共重合体は所
望の該重合体の極限粘度、重合条件との絡みの中でエチ
レン圧力を設定し製造される為にエチレン圧力を一義的
には決定できないが、常圧から100kg/cm2程度
の圧力が一般的である。重合温度は共重合体の極限粘度
およびエチレン含量と密接に関連しているが、約0〜8
0℃の範囲から選ばれる。通常の極限粘度を有する共重
合体を得る場合は40〜80℃の範囲から選ばれ、また
より高極限粘度の共重合体を得る場合は、より低温、た
とえば40℃以下の重合温度から選択される。
【0035】本共重合で使用するラジカル開始剤として
は従来公知の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチ
ルバレロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイ
ル、イソプロピルパーオキシジカーボネートなどの過酸
化物がそのまま採用できる。開始剤の使用量はビニルエ
ステルモノマー基準で0.001〜1.0重量%、好ま
しくは0.01〜0.5重量%である。開始剤の仕込み
量により、重合熱の除去を調節するとともに、共重合体
の極限粘度等に係わる重合速度の調節を実施する。
【0036】次に本発明における重合方法としては、バ
ッチ反応方式、半回分反応方式、連続反応方式いずれの
方式も採用出来るが、重合熱の除去、共重合体の品質の
安定化、重合系の安定性等の観点からは連続方式の採用
が望ましい。
【0037】本共重合により製造された共重合体、未反
応ビニルエステルモノマー、エチレン、ジアルキルスル
ホキシド、微量の開始剤からなる均一溶液は必要に応じ
開始剤の失活処理の後溶液中の溶解エチレンを回収し、
次工程の未反応ビニルエステルモノマー回収工程に送ら
れビニルエステルモノマーの回収を行なう。本回収系で
は回収系の粘度を考慮して適宜ジアルキルスルホキシド
を添加し、溶液粘度を特定の範囲に保ちながらビニルエ
ステルモノマーの回収を実質的に均一な液相で実施する
ことが可能である。重合系の溶液粘度としては500ポ
イズ以下が好まく、好適には300ポイズ以下、さらに
好適には100ポイズ以下である。下限値についてはと
くに限定されないが約1ポイズである。また本回収操作
はビニルエステルモノマーの熱安定性を考慮し、一般に
缶液温度を100℃、好ましくは80℃以下に保持し
て、常圧または減圧下(いずれの場合でもビニルエステ
ルの沸点以上の状態で)に実施するのが好ましい。後続
のけん化工程においてアルコリシスの反応試剤として使
用する低級アルコールを本回収系に添加し、ビニルエス
テルモノマーと低級アルコール特にメタノールの共沸を
利用してビニルエステル、たとえば酢酸ビニルモノマー
の回収を低温、常圧で実施するのも好ましい実施態様の
1つである。本回収系は撹拌槽形式、塔形式、薄膜蒸発
器の利用等により実施されるが、回収効率、設備投資、
連続処理への対応等の観点から塔形式、薄膜蒸発器の利
用が好ましい。ビニルエステルモノマーの残存は後続の
アルコリシス工程における着色要因とも成り得る為、モ
ノマー回収の処理を受けた溶液中の残存量は0.5wt
%以下さらには0.2wt%以下程度までの低減が好ま
しい。
【0038】本発明により得られたEVAなどのエチレ
ン−ビニルエステル共重合体をけん化することによりエ
チレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を得る
ことができるが、そのけん化方法としては、通常の方法
アルカリけん化、酸けん化いずれも採用出来るが、メタ
ノール溶媒中で苛性ソーダまたは、ナトリウムメチラー
トなどのアルカリを触媒としたけん化方法が最適であ
る。けん化反応の際のメタノール溶媒中には重合時に使
用したジメチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキ
シドが含まれていても差し支えない。
【0039】次に前記第2の課題を解決するための手段
は、エチレン−ビニルエステル共重合体のアルコリシス
において、溶媒としてジアルキルスルホキシドを使用
し、液状でアルコリシスすることにより、エチレン−ビ
ニルアルコール共重合体を得る方法である。かかる方法
は従来の方法に比較して著しく加速されたアルコリシス
を実現するものである。かかる本発明の実施により、従
来法での上記の問題点(その2)は合理的に解決され、
安価な製品コストを実現できる。本発明は従来公知のメ
タノールに対して、低級アルキル基から成るジアルキル
スルホキシドを反応系の溶媒として用い、該溶媒のエチ
レン−ビニルエステル共重合体およびエチレン−ビニル
アルコール共重合体に対する特異な溶解挙動を効果的に
利用することにより、エチレン含有率、極限粘度を従来
規格から拡大しても、常に均一状態での反応を実現する
ものである。
【0040】本発明は、エチレン−ビニルエステル共重
合体を、ジアルキルスルホキシドと低級アルコールの混
合系に均一溶解し実施されるが、本発明者らの詳細な検
討によれば本発明におけるエチレン−ビニルエステル共
重合体のアルコリシスの反応速度は、低級アルコール単
独の溶媒系に比較して増大することが判明した。エチレ
ン−ビニルエステル共重合体は、ビニルエステル単独重
合体に比べて、一般に反応速度が小さく、反応温度の上
昇、アルカリ性触媒の使用量増加等好ましからざる条件
の採用を余儀なくされているが、本発明の完成により、
温和な条件下での反応の実施が可能となる。
【0041】従来公知の低級アルコール単独の溶媒系で
はアルコリシスにより生成するエチレン−ビニルアルコ
ールの低級アルコールに対する溶解性が小なることよ
り、均一系でのアルコリシス反応を実施するためには反
応温度を上昇させ溶解性の向上を計る以外に方策を取り
得なかった。該溶解性の制約により、従来公知の方法で
はエチレン含有率25モル%以下および45モル%以上
程度のエチレン−酢酸ビニル共重合体の均一系アルコリ
シスは非常に難しく、実質的に不可能な場合も存在す
る。本発明はかかる状況に対しても解決策を与えるもの
である。ジアルキルスルホキシドは、エチレン−ビニル
エステル共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共
重合体双方の良溶媒であり、反応系の温度を上昇させる
ことなく反応系を均一に保持でき、温度上昇による触媒
失活の増大、共重合体の熱的劣化など好ましからざる現
象を回避出来る。
【0042】本発明においてはアルコリシスは液相で進
行するが、ここで液相とは実質的に均一な液相をいう。
【0043】次に本発明の反応系ではアルコリシス反応
により酢酸などの脂肪酸の低級アルコールエステルが副
生し、さらに、けん化度を上げるためには、アルコリシ
ス平衡を生成系側に寄せることが必要となるため、エス
テル、たとえば酢酸エステルの系外への効率的な留去が
望まれる。本発明者らの詳細な検討により、本反応系に
共存するジアルキルスルホキシドには酢酸エステルと低
級アルコールの分離効率を向上せしめる効果が存在する
ことが判明した。該混合物の留出除去方法としては、槽
型式における減圧蒸留除去、塔型式において、反応塔の
中段からジアルキルスルホキシドに溶解したエチレン−
ビニルエステル共重合体を導入し、下段からアルコール
ベーパーを吹吸みけん化反応を行いつつ、上段から低級
アルコールと、脂肪酸アルコールエステルを留出させる
方法が好ましい実施態様の1つとして推奨出来る。かか
る効果を利用すれば該混合物の分離に要する蒸留塔の分
離段数、還流比を大幅に削減でき、設備費、ユーティリ
ティー費の削減に対する寄与は大きい。
【0044】エチレン−ビニルアルコール共重合体のけ
ん化度は最終の用途により種々変えることができ、好ま
しくは20%以上、さらには50%以上であり、さらに
高度なガスバリヤー性の特徴を生かす分野に使用する場
合はけん化度99.0%以上が好適であり、さらに好ま
しくは99.5%以上である。本反応系に用いるジアル
キルスルホキシドは低級アルキル基から構成され、エチ
レン−ビニルエステル共重合体およびエチレン−ビニル
アルコール共重合体に対する溶解性等の観点から低級ア
ルキル基の炭素数は一般に3以下が好ましい。ジアルキ
ルスルホキシドの具体例としては、ジメチルスルホキシ
ド、ジエチルスルホキシド、ジi−プロピルスルホキシ
ド、ジn−プロピルスルホキシド、メチルエチルスルホ
キシド、メチルi−プロピルスルホキシド等を例示でき
るが、熱的、化学的安定性、入取価格等を勘案すれば、
ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドが好まし
く、上記条件に対する総合的な判断からジメチルスルホ
キシドが特に好ましい。ジアルキルスルホキシドの使用
量は、エチレン−ビニルエステル共重合体およびエチレ
ン−ビニルアルコール共重合体を均一に溶解する量であ
れば特に限定されないが、溶液粘度等を考慮すれば、エ
チレン−ビニルエステル共重合体のジアルキルスルホキ
シド溶液としての濃度で0.1〜70重量%(エチレン
−ビニルエステル共重合体およびジアルキルスルホキシ
ドの合計量に対して)が適当であり、さらに好ましくは
1〜50重量%である。
【0045】本発明においては、アルコリシス用の反応
試剤として低級アルコールを使用する。エチレン−ビニ
ルエステル共重合体のアルコリシス反応によるエチレン
−ビニルアルコール共重合体の製造方法は公知である
が、酢酸ビニルのホモポリマーであるポリ酢酸ビニルに
比較して、アルカリ性触媒によるアルコリシス反応の反
応速度が一般に小さく、エチレン含有率の増大に伴ない
反応速度は減少傾向を示す。エチレン−ビニルエステル
共重合体のアルコリシス反応に関して種々検討の結果、
該アルコリシス反応には低級アルコールの使用が好まし
く、炭素数1〜5の1級の低級アルコールの使用が好適
と判断されるに至った。炭素数1〜5の1級の低級アル
コールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパ
ノール、n−ブタノール、i−ブタノール、n−アミル
アルコール、i−アミルアルコールなどをその具体例と
して例示できるが、アルコリシス反応の反応速度、エチ
レン−ビニルエステルに対する溶解性等を勘案すればメ
タノール、エタノールの使用が好適であり、反応速度の
観点からメタノールの使用が特に好ましい。低級アルコ
ールの使用量については、エチレン−ビニルエステル共
重合体のアルコリシス反応によりエチレン−ビニルアル
コールを製造するに充分な量であれば特に限定要因はな
いが、エチレン−ビニルエステル共重合体の平均分子量
から算出されるモル数に対して1.0〜50倍モル、ア
ルコリシスの反応平衡、仕込み低級アルコールの後処理
コスト等を考慮すれば1.5〜30倍モルが好適であ
り、2.0〜20をさらに好適な範囲として開示でき
る。
【0046】本発明のアルコリシス反応は、アルカリ性
触媒の共存下に実施されるが、該アルカリ性触媒として
は、ポリ酢酸ビニル又は、エチレン−ビニルエステル共
重合体のアルカリ性触媒によるアルコリシス反応に使用
される従来公知の触媒をそのまま使用できる。その具体
例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸
化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメ
チラート、t−ブトキシカリウムなどのアルカリ金属ア
ルコラート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウ
ンデセン−7(DBU)で代表される強塩基性アミン、
さらには炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素アルカリ金属塩
などを開示できるが、取り扱いの容易さ、触媒コスト等
から水酸化ナトリウムの使用が好ましい。触媒の使用量
は、必要けん化度、反応温度等により異なるが、エチレ
ン−ビニルエステル共重合体の平均分子量から算出され
るモル当り、0.001〜1.0のモル比が一般的であ
る。
【0047】本発明におけるアルコリシスの反応温度
は、室温から150℃程度まで必要に応じ任意の温度を
採用し得るが、常圧の反応系で高い反応速度を得るため
は40〜120℃、さらには50〜100℃が好適な温
度範囲として推奨される。エチレン−ビニルエステル共
重合体のアルコリシス反応は撹拌槽型式、塔型式等が考
えられるが、反応塔の中段から該共重合体を溶解したジ
アルキルスルホキシド溶液を導入し、下段からアルコー
ルベーパーを吹込み、副生した酢酸エステルを上段から
抜取る塔型式が好ましい実施様態の1つとして推奨出来
る。
【0048】また本発明においては酸素を実質的に除去
した状態、たとえば、酸素濃度5×10-4mol/l以
下の状態でアルコリシスを行なうことが重合度低下が少
ないので好ましい。反応系の酸素濃度をこのレベル以下
にするためには、純度99.9%以上の窒素ガスで置換
するか、60°以上に加熱したあと窒素かアルゴンで置
換する方法がある。
【0049】次に第3の課題を解決するための手段は、
エチレン−ビニルエステル共重合体(A)を溶媒として
ジアルキルスルホキシドを使用し、溶液でアルコリシス
を行ない、エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)
溶液を製造する工程・・・工程(I)
【0050】工程(I)の前記共重合体(B)溶液を前
記共重合体(B)の非溶媒又は非溶媒の含有割合が少な
くとも20重量%以上である混合溶媒と接触させて、所
望の形状に湿式または乾湿式成形する工程・・・工程
(II)の組合せから成る前記共重合体(B)成形物の製
法である。
【0051】この発明はジアルキルスルホキシドおよび
反応試剤としての低級アルコール共存系に均一に溶解
し、アルカリ性触媒によるアルコリシス反応を実施し、
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)を均一溶液
として取得するものである。該均一溶液は必要に応じて
濃度調整を実施した後、従来公知の手法で行なわれてい
る共重合体(B)のストランド状、チップ状への第1次
の析出工程を経ず、溶液状態のままで任意の形状(繊維
状、中空糸状、フィルム状、シート状、粒子状等)に第
2次成形(湿式又は乾湿式成形)される。かかる本発明
の実施により、従来法で指摘される上記の問題点は合理
的に解決され、安価な製品コストを実現できる。本発明
は従来公知のメタノールに対して、ジアルキルスルホキ
シドを反応系の溶媒として用い、該溶媒の上記共重合体
(A)および(B)に対する特異な溶解挙動を効果的に
利用することにより、エチレン含量、重合度を従来規格
から拡大しても常に均一状態での反応を実現し、工程の
安定化を達成すると共に、共重合体(B)は工程途中で
単離することなく溶液状態を保って最終の成形工程に送
ることにより、反応系、成型上の劣化を極力抑制し品質
の安定化に資するものである。アルコリシスの条件は前
記した条件と同様である。
【0052】得られた共重合体(B)の溶液は共重合体
(B)のけん化度を確認後アルカリ性触媒を中和失活さ
せ、必要に応じ前記共重合体(B)の溶液の濃度調整を
実施する。ジアルキルスルホキシドの沸点は低級アルコ
ール、脂肪酸低級アルコールエステルの沸点に比べて一
般に高く、共重合体(B)を共重合体(B)のジアルキ
ルスルホキシド溶液として取得することも可能であり、
また、低級アルコール、脂肪酸低級アルコールエステル
を少量含有するジアルキルスルホキシド溶液とすること
もできる。かかる処理を行なった共重合体(B)含有の
ジアルキルスルホキシド溶液は成形工程に送られ、共重
合体(B)の非溶媒又は非溶媒の含有割合が少なくとも
20重量%以上である混合溶媒と接触し、繊維状、中空
糸状、フィルム状、シート状、粒子状、ストランド状、
球状等所望の形状に湿式又は乾湿式成形される。非溶剤
の含有割合が20重量%を下回る場合には、共重合体
(B)の非溶媒含有系への溶出が増大し、凝固による湿
式又は乾湿式成形が不完全となり好ましくない。非溶媒
の含有割合は共重合体(B)の凝固を完全に実施する観
点から40重量%以上、さらに50重量%以上が好適で
ある。凝固温度は成形時の形状にもよるが一般に−20
℃〜100℃であり、−10℃〜50℃をより好適な範
囲として推奨できる。さらに本発明では前記共重合体
(B)のジアルキルスルホキシド溶液を、たとえば基材
上に押出したあと、これを共重合体(B)の非溶媒又は
非溶媒の含有割合が少なくとも20重量%以上の混合溶
媒と接触(たとえば浸漬)して成形物を得ることもでき
る。なお上記の湿式または乾湿式成形により得られた成
形物、とくに粒子状物、球状物についてはそのまま、あ
るいはストランド状物については所望の大きさに切断し
たペレット状物とし、これを溶融成形、さらには湿式成
形、乾式成形、乾湿式成形により繊維状、中空糸状、フ
ィルム状、シート状、ボトル状に成形することもでき
る。
【0053】共重合体(B)の非溶媒としては、エチレ
ン含量によりその効果は異なるものの、水、メタノー
ル、エタノール等の低級アルコール、酢酸メチル、酢酸
エチル等のエステル類、アセトン、ジエチルケトンなど
のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテルなど
のエーテル類などジアルキルスルホキシドと相溶性を有
する溶媒類およびその混合物を例示できる。低エチレン
含有率の共重合体(B)の場合には一般にメタノールを
中心としたアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢
酸メチルなどのエステル類が有効であり、高エチレン含
有率の共重合体(B)では水、酢酸メチル等のエステル
類等が有効である。本湿式又は乾湿式方式の成形法の採
用により、従来法の乾燥時等を中心とした熱的劣化によ
るゲル・ブツの生成も防止でき、製品性能の向上を実現
できる意義は大きい。非溶媒と併用される溶媒としては
ジアルキルスルホキシド、とくにジメチルスルホキシド
が代表例としてあげられる。
【0054】該手法により成形された成形物は耐水性等
の改良された高性能EVOH繊維、人工腎用等の透過性
能に優れるEVOH中空糸膜、偏光膜等の光学用高性能
フィルム、産業資材用フィルム、熱安定性の良好なバリ
ヤー性内包材、シーリング材、澱粉との良相溶性を生か
した生分解性材料などへの各種展開が可能である。
【0055】上記の各種形状に成形された共重合体
(B)は溶媒としてのジアルキルスルホキシド、失活触
媒等を抽出洗浄後乾燥し製品化される。
【0056】次に第4の課題を解決するための手段は、
エチレンとビニルエステルを重合溶媒としてジアルキル
スルホキシドを使用しラジカル開始剤の存在下に共重合
してエチレン−ビニルエステル共重合体(A)溶液を製
造する工程・・・工程(I)’
【0057】工程(I)’の前記共重合体(A)溶液か
ら、前記溶液の粘度を500ポイズ以下に保った状態
で、残存する未反応ビニルエステルを留出除去する工程
・・・工程(II)’
【0058】工程(II)で得られる前記共重合体(A)
溶液を液状でアルコリシスを行ない、エチレン−ビニル
アルコール共重合体(B)溶液を製造する工程・・・工
程(III)’
【0059】工程(III)’の前記共重合体(B)溶液
を共重合体(B)の非溶媒又は非溶媒の含有割合が20
重量%以上であるジアルキルスルホキシド/非溶媒の混
合溶媒と接触させて、所望の形状に湿式または乾湿式成
形する工程・・・工程(IV)’の組合せから成る前記共
重合体(B)成形物の製法である。
【0060】この発明の工程(I)’の重合工程、(I
I)’の残存モノマーを留出除去する工程、(III)’の
アルコリシス工程および(IV)’の非溶媒との接触工程
は前記したとおりである。
【0061】この発明は従来公知のメタノールに対し
て、ジアルキルスルホキシドを重合および鹸化(メタノ
リシス)の反応溶媒とし、該溶媒の重合系における特異
な挙動を効果的に利用することにより、従来法に較べて
重合度低下の小なる共重合体の製造を可能とし、またエ
チレン含量、重合度を従来規格から拡大しても常に均一
状態での反応を実現し、工程の安定化、短縮化を達成す
るものである。また本発明によれば共重合体(B)を工
程途中で単離することなく、溶液状態を保って温和な条
件下に反応を進め、それをそのまま湿式又は乾湿式成形
に製品とすることもできる。この場合、多くの成形工程
を経ないので、工程に由来する共重合体の(熱的)劣化
を極力抑制し、品質の安定化を計ることができる。
【0062】またこの発明は本発明者らの詳細な検討に
より、ジアルキルスルホキシド溶媒系で、メタノール溶
媒系に較べて重合度低下の小さいエチレン−ビニルエス
テル共重合系を構築したものである[工程(I)’]。
また本共重合系は生成する共重合体(A)に対してジア
ルキルスルホキシドが一般に良溶媒であることからエチ
レン含量の広い範囲にわたった均一な反応系を保持する
ことが可能であり、後続の未反応ビニルエステル除去工
程[工程(II)’]においても系中のジアルキルスルホ
キシドにより濃度調整することにより溶液の粘度を50
0ポイズ以下とし、均一の溶液状態をそのまま保持する
ことが可能であり、工程の安定な連続化を実現できる。
【0063】本発明における工程(III)’は工程(I
I)’で得られる共重合体(A)のジアルキルスルホキ
シド溶液に反応試剤としての低級アルコールを添加した
均一溶液系でアルコリシス反応が実施されるが、本発明
者らの詳細な検討によれば、本発明における共重合体
(A)のアルコリシスの反応速度は低級アルコール単独
の溶媒系に較べて増大することが判明した。前述の如
く、共重合体(A)はビニルエステル単独重合体に較べ
て一般に反応速度が小さく、反応温度の上昇、アルカリ
性触媒の使用量増加等好ましからざる条件の設定を余儀
なくされるが、本発明の完成により、温和な条件下での
反応の実施が可能となる。
【0064】従来公知の低級アルコール単独の溶媒系で
はアルコリシスにより生成する共重合体(B)の低級ア
ルコールに対する溶解性が小なることより、均一系での
アルコリシス反応実施のためには反応温度を上昇させ溶
解性の向上を計る以外に方策を取り得なかった。該溶解
性の制約により、従来公知の方法ではエチレン含有率2
5モル%以下および45モル%以上程度の共重合体
(A)の均一系アルコリシスは非常にむつかしく実質的
に不可能な場合も存在する。本発明はかかる状況に対し
ても解決策を与えるものである。ジメチルスルホキシド
は共重合体(A)および(B)双方の良溶媒であり、反
応系の温度を上昇させることなく反応系を均一に保持で
き、温度上昇による触媒失活の増大、共重合体の熱的劣
化など好ましからざる現象を回避できる。
【0065】またこの発明の反応系ではアルコリシス反
応により脂肪酸の低級アルコールエステルが副生し、ア
ルコリシス平衡を生成系側に寄せる必要から、脂肪酸エ
ステルの系外への効率的な留去が望まれる。本発明者ら
の詳細な検討により、本反応系に共存するジメチルスル
ホキシドには脂肪酸エステルと低級アルコールの分離効
率を向上せしめる効果が存在することが判明した。かか
る効果を利用すれば該混合物の分離に要する蒸留塔の分
離段数、還流比を大幅に削減でき、設備費、ユーティリ
ティー費の削減に対する寄与は大きい。
【0066】この発明により成形された成形物は耐水性
等の改良された高性能EVOH繊維、人工腎用等の透過
性能に勝れるEVOH中空糸膜、偏光膜等の光学用高性
能フィルム、産業資材用フィルム、熱安定性の良好なバ
リヤー性内包材、シーリング材、澱粉との良相溶性を生
かした生分解性材料などへの各種展開が可能である。
【0067】上記の各種形状に成形された共重合体
(B)は溶媒としてのジメチルスルホキシド、失活触媒
等を抽出洗浄後乾燥し製品化される。
【0068】さらに本発明により取得されるEVOHは
DMSO系重合に由来する立体構造の特異性および/ま
たはDMSO系鹸化による残存エステル基の分布挙動
(残存エステル基の分布がよりランダムであること)か
ら、従来の低級アルコー中での重合および/または鹸化
により取得される、重合度および鹸化度が同一のEVO
Hに較べて融点が低下傾向を示すなど本発明に特有な物
性を示す。このことは後述する実施例7−1から明らか
である。本物性を利用すれば、たとえばEVOHの溶融
延伸成形においては熱的劣化によるゲル、ブツ発生の抑
制、延伸速度、延伸倍率の向上、ボイド、クラックの低
減、厚みむらの向上、長時間にわたる安定操業の確保等
への寄与が期待される。
【0069】本発明により得られるEVOHの残存エス
テル基の分布がよりランダム(よりシャープ)であるこ
とはブロックキャラクターにより表示され、ブロックキ
ャラクターの値が大きいほどよりランダム(よりシャー
プ)であることを示す。本発明により得られるEVOH
は、好ましくはブロックキャラクター0.2以上、さら
に好ましくは0.25以上、さらに好適には0.3以上
の値を示す。ここでブロックキャラクターとは、次式に
よって算出される。 ブロックキャラクター=(OH−OAC)/2(OH)(OAC) ここで(OH−OAC)とは、二連鎖{ビニルアルコー
ル単位−ビニルアルコール単位の二連鎖のモル分率(A
1)+ビニルアルコール単位−ビニルエステル単位の二
連鎖のモル分率(A2)+ビニルエステル単位−ビニル
エステル単位の二連鎖のモル分率(A3)}の合計モル
分率(A1+A+23)に対するビニルアルコール単位
−ビニルエステル単位の二連鎖のモル分率(A2)の割
合を示すものである。
【0070】またビニルアルコール単位−ビニルアルコ
ール単位の二連鎖のモル分率(A1)は13C−NMRス
ペクトルによりδが45.7〜48ppmの領域のピー
クの吸収強度から求められ、ビニルアルコール単位−ビ
ニルエステル単位のモル分率(A2)はδが43.5〜
45.5ppmの領域のピーク吸収強度から求められ
る。またビニルエステル単位−ビニルエステル単位の二
連鎖のモル分率(A3)はEVOH中のビニルアルコー
ル単位とビニルエステル単位の合計量のモル分率を2乗
した値から前記A1およびA2引き算することによって求
められる。また上記式中(OH)および(OAC)は、
それぞれ二連鎖およびそれ以上の連鎖の中のビニルアル
コール単位およびビニルエステル単位のモル分率を示
す。
【0071】以下実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明は実施例により限定を受けるものではな
い。なお実施例中、EVAの[η]phとはEVAを完
全けん化(けん化度99.4モル%以上)して得たEV
OHの極限粘度を表わす。
【0072】
【実施例】
実施例1 容量が3Lの撹拌機付き高圧オートクレーブに、ジメチ
ルスルホキシド(DMSO)(含水率0.1重量%)2
52g、酢酸ビニル(VAC)1009g(DMSO/
VAc=2/8、重量比)、アゾビスイソブチロニトリ
ル(AIBN)0.040重量%(対酢酸ビニル)を仕
込み、エチレン置換を充分行った後、反応温度60℃で
エチレン圧力を43kg/cm2Gとして5時間重合を
行った。重合終了後、重合液に1200gのDMSOを
加え未反応モノマーを蒸発除去(50mmHg以下、4
0℃)した。なお追出し開始直後の溶液の粘度は12ポ
イズ、追出し終了時の溶液の粘度は21ポイズであっ
た。さらに未反応モノマーを蒸発除去後の溶液を純水中
へ投入し、EVAを沈殿させた。水洗を行った後、さら
にポリマーを水中で加熱煮沸することにより、未反応モ
ノマーおよび溶媒を除去精製し、乾燥を充分に行い、重
合率50%で、エチレン含量32モル%のEVAを得
た。このEVA25gをメタノール(MeOH)100
gに溶解し、次いでこの溶液に10%−苛性ソーダ(N
aOH)メタノール溶液29.5g(NaOH/EVA
=0.2、モル比)を加えて、60℃に0.5時間保っ
た後、更に該NaOH溶液29.5gを加えて、2時間
60℃に保ちけん化反応を行った。ここに得られたポリ
マー溶液を酢酸水溶液中に投入し、析出沈殿させ、0.
5時間放置した。液切り後、更に0.5時間酢酸水溶液
中に侵し、最後に水道水中に0.5時間侵し放置した。
次に得られたポリマーを、粉砕し、充分乾燥し、EVO
Hを得た。
【0073】得られたEVOHのけん化度は、99.5
モル%で、[η]phは0.119l/gであった。一
方対照(比較例1)として、60℃で、メタノール24
3g、酢酸ビニル972g(MeOH/VAc=2/
8、重量比)、アゾビスイソブチロニトリル0.104
重量%(対酢酸ビニル)を仕込み、エチレン置換を充分
に行った後、反応温度60℃エチレン圧力を41kg/
cm2Gとして、5時間重合を行い、ジメチルスルホキ
シド系の場合と同様の後処理を行い、重合率50%、エ
チレン含量32モル%のEVAを得、更にジメチルスル
ホキシド系に準じた条件下でけん化反応を行うことによ
りけん化度99.5モル%、[η]ph=0.097l
/gのEVOHを得た。なお、両者の重合系において
は、反応は常に均一な液相に保たれたまま進行すること
を、重合途中のサンプリングした重合溶液の状態から確
認した。これらの結果から、ジメチルスルホキシドを溶
媒とした溶液重合の場合、メタノール溶媒系で重合して
得るEVOHに比して極限粘度の高い重合体が得られる
ことが示唆される。
【0074】実施例2〜5 実施例1に準じた条件で、ジメチルスルホキシドの使用
量を変えて重合を行ない、得られたEVAを実施例1に
準じた条件下でけん化反応を行い、得られたEVOH
(エチレン含量32モル%、けん化度99.4〜99.
7モル%)の極限粘度を測定した。また、対照として、
ジメチルスルホキシドを用いない、塊状重合、メタノー
ル系での溶液重合を、ジメチルスルホキシドの系と同様
の組成で重合を行った(比較例2〜6)。なお重合は、
極限粘度低下の影響を見る為、全て、同一重合速度、重
合率にし、また、同一エチレン含量になる様にエチレン
圧力を設定した(表1、図1)。
【0075】
【表1】
【0076】表1からも分かる様に、ジメチルスルホキ
シド、メタノール溶媒いずれにおいても、酢酸ビニル量
に対する溶媒量の比率が高くなるほど、極限粘度の低下
の割合は高くなっていることが分かるが、図1より、ジ
メチルスルホキシドを溶媒とした場合、同一組成のメタ
ノール溶媒を使用して得られる重合体(EVOH)より
も、極限粘度の高いものが得られることが明らかであ
る。なお比較例2の塊状重合は重合系の内温が上昇傾向
にあり、注意深い冷却操作が必要であった。
【0077】実施例6〜8 重合開始剤として、2,2’−アゾビス−2,4−ジメ
チルバレロニトリル(AVN)を用いて、重合温度40
℃でジメチルスルホキシドの使用量を変えて、それ以外
は実施例1に準じて重合けん化を行った。なお、この場
合も、対照として、ジメチルスルホキシドを用いない塊
状重合、メタノール系での溶液重合を、ジメチルスルホ
キシドの系と同様の組成で重合し、極限粘度低下の影響
を見る為、全て、同一重合速度、重合率にし、また、同
一エチレン含量になる様に、エチレン圧力を設定した
(比較例7〜10)。重合条件と、結果を表2に示した
が、表1との比較から明らかなように、重合温度が低く
なっても、ジメチルスルホキシドを用いた場合の酢酸ビ
ニル量に対する溶媒量の比率が、得られるEVOHの極
限粘度の低下に及ぼす影響は、メタノール系のそれに対
して、非常に少ないことが明らかである。なお、この場
合も、実施例1〜5同様ジメチルスルホキシド系、メタ
ノール系両方の重合系において、系は常に均一な液相に
保たれたまま、反応が進行することを確認した(表
2)。
【0078】
【表2】
【0079】実施例9 酢酸ビニル639g、ジメチルスルホキシド160g
(DMSO/VAc=2/8、重量比)、2,2’−ア
ゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)
0.116%(対酢酸ビニル)を用い、反応温度50
℃、エチレン圧力を70kg/cm2Gとして、実施例
1に準じて重合を行った。重合中、各時間毎に重合液を
サンプリングし、重合禁止剤添加後赤外線乾燥機によ
り、蒸発乾固を行うことにより、固形分の経時変化を追
い、重合系の均一性を(EVA濃度の均一性、析出EV
Aの有無)調べた。また、サンプリング溶液の状態から
も均一性を確認した。上記条件設定下、重合時間6時間
で、重合率30%のEVAを得た。更に、重合後の溶液
を実施例1の方法に準じてけん化(NaOH/EVA=
0.25、モル比、×2回、他の条件は実施例1に同
じ)、後処理を行い、エチレン含量60モル%、けん化
度99.5%、[η]ph=0.088l/gのEVO
Hを得た。固形分の経時変化を図2に示すが、直線が得
られることより、系が常に均一な状態で進行しているこ
とが分かる。また、サンプリング溶液の状態も、透明で
ポリマーの析出もなく均一であった。
【0080】対照(比較例A)として、ジメチルスルホ
キシドの代りに、メタノールを用いた反応を、酢酸ビニ
ル624g、メタノール156g、AVN0.118%
(対酢酸ビニル)を用い、50℃、エチレン圧力62.
5kg/cm2Gの条件下に行った。メタノール系の場
合も、ジメチルスルホキシド系同様、重合時間6時間
で、重合率30%のEVAを得た。実施例9に準じたけ
ん化反応後、エチレン含量60モル%、鹸化度99.5
%、[η]ph=0.075l/gのEVOHを得た。
ジメチルスルホキシドの系同様、重合中の固形分の経時
変化を追い、重合系の均一性を調べた。結果を図2に併
記したが、低重合率からプロットがばらつき良好な直線
関係は得られなかった。また、サンプリングした溶液の
状態は、白濁していた。このことから、高エチレン含量
のEVAの重合の際、ジメチルスルホキシドを溶媒とし
て用いた場合、メタノール系と比較して、系が常に均一
状態に保ったまま重合を進行させることができることが
判る。
【0081】また、高エチレンタイプのポリマーの重合
の際にも、ジメチルスルホキシドを用いた場合の酢酸ビ
ニル量に対する溶媒量の比率が、得られるEVOHの極
限粘度の低下に及ぼす影響は、メタノール系のそれに比
して非常に少ないことが分かる。
【0082】実施例10〜11 実施例9において、ジメチルスルホキシドの使用量を変
え、それ以外は実施例9と同様にして重合けん化を行っ
た。対照として、メタノール系での溶液重合、塊状重合
も行った(比較例11〜14)。重合条件は、全て、同
一重合速度、重合率、同一エチレン含量になる様に設定
した。また、固形分の経時変化および溶液の状態から、
系内の均一性を調べた。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】表3から明らかな様に、ジメチルスルホキ
シド溶媒の場合メタノール溶媒と比較して、重合系が常
に均一状態を保ったまま反応が進行し、かつ極限粘度低
下の少ない重合体が得られることが分かる。
【0085】実施例12 酢酸ビニル1371g、ジメチルスルホキシド343
g、アゾビスイソブチロニトリル0.018%(対酢酸
ビニル)を用い、反応温度60℃、エチレン圧力を3.
5kg/cm2Gとして、それ以外は実施例1に準じて
重合を行い、重合時間4時間で、重合率40%、エチレ
ン含有率5モル%の重合体を得た。実施例1の方法に準
じてけん化(NaOH/EVAc=0.1、モル比、×
2回、他の条件は実施例1に同じ)後のEVOHの
[η]phは0.236l/gであった。また重合途中
のサンプリング溶液の状態も、透明でポリマーの析出も
なく均一であった。
【0086】実施例13 実施例1に準じて、重合した後のEVA溶液を、エチレ
ンパージ後、3Lセパラブルフラスコに移し、該溶液
に、ジメチルスルホキシド1360gを添加した後、5
0℃、減圧下(100mmHg以下)で系外へ残存モノ
マーを留出させた。なお追出し開始直後の溶液の粘度は
10ポイズ、追出し終了時の溶液の粘度は15ポイズで
あった。留出液中の酢酸ビニル量を測定し、留出液がジ
メチルスルホキシド100%の時点で留出を中止した。
留出中、留出後とも溶液の状態は均一であった。
【0087】実施例2−1 撹拌機、コンデンサー、温度計ならびに窒素ガス導入管
を装備した5lセパラブルフラスコに、エチレン含有率
5モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
([η]ph=0.224l/g)340g、メタノー
ル660g、ジメチルスルホキシドを1700gを入
れ、70℃で加熱撹拌を行い均一の溶液とした。この溶
液に3%の水酸化ナトリウム−メタノール溶液51.6
gを添加して、70℃にて20分間反応を行った。反応
後の溶液の状態は均一であった。この時、反応液の一部
をサンプリングし、中和後、メタノール中で析出、洗浄
を繰り返した。その後、粉砕、乾燥を行い、けん化度9
7.8%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EV
OH)を得た。更に、20分間反応を行った溶液につい
て、アルコリシスの平衡を生成系側に寄せるため、メタ
ノール、酢酸メチルの混合液を、減圧蒸留により系外へ
留出させた。系外への留出量が780gとなった所で中
和により反応を停止し、上記と同様の後処理を行い、け
ん化度99.9%のEVOHを得た。また、反応停止時
の溶液の状態は均一であった。
【0088】実施例2−2 実施例2−1に準じて、エチレン含有率32モル%のE
VA([η]ph=0.111l/g)100g、メタ
ノール170g、ジメチルスルホキシド580gを入
れ、60℃で加熱撹拌を行い、均一の溶液とした。この
溶液に3%の水酸化ナトリウム−メタノール溶液160
gを添加して、60℃にて30分間反応を行った。反応
後の溶液の状態は均一であった。反応時間中、各時間毎
に反応液をサンプリングし、中和後、1g/Lの酢酸−
純水溶液中にポリマーを析出後、30分間浸した。酢酸
水溶液を入れ換え、更に30分間酸処理を行い、液捨て
後、水道水に30分間浸した。
【0089】その後、粉砕、乾燥してEVOHを得た。
けん化反応時間とけん化度の関係を図3に示したが、反
応開始2分後のけん化度は75%で最終けん化度98.
3%であった。30分間反応を行った溶液について、実
施例2−1に準じて、アルコリシスの平衡を生成側に寄
せるため、メタノール、酢酸メチルの混合液を、減圧蒸
留により系外へ留出させた。系外への留出量が260g
でのサンプリング試料を上記同様の後処理を行い、けん
化度を測定したところ99.4%であった。更に反応系
にメタノールを190g添加して、同様に減圧蒸留を行
い、系外への留出量が150gとなった所で、中和によ
り反応を停止、同様に後処理を行い、けん化度99.8
%のEVOHを得た。また留出開始直後の留出液中のメ
タノールと酢酸メチルの重量比は1:9であった。反応
中および反応停止時の溶液の状態は均一な液相であっ
た。
【0090】比較例2−1 実施例2−2において、ジメチルスルホキシドの変わり
にメタノールを使用し、同一の触媒量(対EVA中のV
ACモル比)で反応を行った。反応時間30分までのけ
ん化度の経時変化を、上記実施例と同様の後処理を行
い、調べた。反応開始2分後のけん化度は55%で、3
0分間反応後の最終けん化度は95%であった。結果を
図3に併記したが、図3からも明らかな様に、ジメチル
スルホキシドを反応系に共存させることにより、メタノ
ール単独系と比較して、加速されたアルコリシスを実施
可能なことが分かる。さらに、30分間反応を行った溶
液について、メタノール、酢酸メチルの混合液を、減圧
蒸留により系外へ留出させた。留出開始直後の留出液中
の、メタノールと酢酸メチルの重量比は、2:8であっ
た。系外への留出量が260gでのサンプリング試料を
後処理後、けん化度測定したところ、96.5%であっ
た。
【0091】実施例2−1と比較例2−1の留出液中の
メタノールと酢酸メチルの重量比の比較によりアルコリ
シスの平衡を生成側に寄せるため、副生酢酸メチルを系
外へ留去する際、反応系にジメチルスルホキシドが共存
すると、メタノール単独系に比して、酢酸メチルとメタ
ノールの分離効率が向上し、酢酸メチルの系外への効率
的な留去が達成出来ることが分かる。反応中および反応
停止時の溶液の状態は、ジメチルスルホキシド系同様均
一であった。
【0092】実施例2−3 実施例2−1に準じて、エチレン含有率27モル%のE
VA([η]ph=0.109l/g)100g、メタ
ノール170g、ジメチルスルホキシド550gを使用
し、60℃にて均一溶解後、3%−水酸化ナトリウム−
メタノール溶液150gを添加し、同一温度で30分間
反応を行った。反応中および反応後の溶液の状態は均一
であった。この反応液の一部をサンプリングし、後処理
したEVOHのけん化度は反応時間2分で77%で、3
0分で98.6%であった。30分間反応を行った溶液
について、上記実施例同様、アルコリシスの平衡を生成
側に寄せるため、メタノール、酢酸メチルの混合液を減
圧蒸留により系外へ留出させた。系外への留出量が25
0gでのサンプリング試料について、後処理後、けん化
度を測定した所99.5%であった。更に、反応系に、
メタノール190g添加して、同様に減圧蒸留を行い、
系外への留出量が150gとなった所で、中和により反
応を停止、後処理を行い、けん化度99.8%のEVO
Hを得た。反応中および反応停止時の溶液の状態は均一
であった。
【0093】比較例2−2 実施例2−3において、ジメチルスルホキシドの代りに
メタノールを使用し、同一の触媒量(対EVA中のVA
Cモル比)で反応を行った。反応開始時の溶液の状態は
均一であったが、触媒添加後、5分後から、系内にEV
OHが析出し始め、10分後には、固化してしまった。
30分後に、固体を取り出し、ミキサー破砕後、後処理
して得たEVOHのけん化度は、96.0%であった。
また、反応開始2分後のけん化度は58%であった。
【0094】実施例2−4 実施例2−1に準じて、エチレン含有率60モル%のE
VA([η]ph=0.077l/g)100g、メタ
ノール180g、ジメチルスルホキシド760gを使用
し、60℃にて均一溶解後、3%−水酸化ナトリウム−
メタノール溶液260gを添加し、同一温度で40分間
反応を行った。40分間反応後のEVOHのけん化度
は、97.2%であった。40分間反応を行った溶液に
ついて、メタノール、酢酸メチルの混合液を、減圧蒸留
により系外へ留出させた。系外への留出量が、350g
でのサンプリング試料について、後処理後、けん化度を
測定した所、99.0%であった。更に、反応系にメタ
ノール200g添加後、減圧蒸留を行い、留出量が16
0gとなった所で反応を中止した。後処理後の最終けん
化度は、99.4%であった。反応中および反応停止時
の溶液の状態は均一であった。
【0095】比較例2−3 実施例2−4において、ジメチルスルホキシドの代り
に、メタノールを使用し、同一触媒量(対EVA中のV
ACモル比)で反応を行った。60℃にてポリマーは完
全に溶解せず、白濁した状態であった。触媒添加後、系
は均一になり、40分間反応を行った。40分間反応後
のEVOHのけん化度は94.2%であった。更に、メ
タノール、酢酸メチルの混合液を、減圧蒸留により系外
へ留出させた。系外への留出量が350gでのサンプリ
ング試料のけん化度は、95.6%であった。更に反応
系にメタノールを200g添加後、減圧蒸留行い、実施
例2−4におけるジメチルスルホキシド共存の系より、
多く留出さた。留出量200gで反応を中止し、後処理
を行い、けん化度を測定したところ、97.4%であっ
た。
【0096】実施例2−5 実施例2−2に準じて、エチレン含有率32モル%のE
VA([η]ph=0.111l/g)100g、メタ
ノール170g、ジエチルスルホキシド780g、3%
−水酸化ナトリウム−メタノール溶液160gを使用
し、60℃で30分間反応を行った。30分間反応後の
サンプリング試料のけん化度は98.0%であった。更
に、留出液260gでけん化度99.3%を得、メタノ
ール190g添加後、留出液150gでけん化度99.
6%のEVOHを得た。留出開始直後の留出液中のメタ
ノールと酢酸メチルの重量比は1:9であった。反応中
および反応停止時の溶液の状態は均一であった。
【0097】実施例2−6 実施例2−2に準じて、エチレン含有率32モル%のE
VA([η]ph=0.111l/g)100g、エタ
ノール320g、ジメチルスルホキシド580g、3%
−水酸化ナトリウム−エタノール溶液160gを用い、
60℃で40分間反応を行った。40分間反応後のサン
プリング試料のけん化度は、96.5%であった。更に
留出液380gでけん化度98.5%を得、エタノール
270g添加後、留出液220gで、けん化度99.5
%のEVOHを得た。反応中および反応停止時の溶液の
状態は均一であった。
【0098】実施例3−1 撹拌機、還流冷却器、触媒液導入口、サンプリング口を
備えた内容5lのセパラブルフラスコにエチレン−酢酸
ビニル共重合体(エチレン含量5モル%、[η]ph=
0.181l/g)328g(3.95モル)、メタノ
ール710g(22.19モル)、ジメチルスルホキシ
ド1700gを仕込み、系内を窒素ガスにて置換した。
油浴中にて撹拌下に昇温を開始し、60℃にてエチレン
−酢酸ビニル共重合体を溶解した。ついで、水酸化ナト
リウム1.58g(0.0395モル)をメタノール5
0mlに溶解した触媒液をN2雰囲気下に一括添加し反
応を開始し、60℃、30分にわたり反応を継続した。
30分反応後におけるサンプリングにより求めた生成エ
チレン−ビニルアルコール共重合体のけん化度は97.
8%であった。上記反応器に減圧蒸留装置を設置し、缶
液温度70℃一定の条件下に得られた反応液から副生し
た酢酸メチルおよびメタノールを常圧又は減圧下に留去
し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の追込みけん
化を実施した。副生酢酸メチルおよびメタノールの留出
開始直後における留出液中の酢酸メチル/メタノールの
重量比は9/1であり、酢酸メチル/メタノールの共沸
蒸留組成(8/2)を上まわる留出組成を示した。上記
条件下1.5時間にわたり留出操作を行ない、ドライア
イス−アセトン冷却浴中に留出液900gが留出し、缶
液中のエチレン−ビニルアルコール共重合体のけん化度
は99.8%であった。上記の反応系および追込みけん
化系を通じて反応系は常に均一状態を保持した。追出し
けん化後の缶液に酢酸2.37g(0.0395モル)
を添加し、触媒を失活させた後、減圧下に缶液温度を9
0℃以下に保って、缶液中のエチレン−ビニルアルコー
ル共重合体の濃度調整を実施し、エチレン−ビニルアル
コール共重合体の17重量%ジメチルスルホキシド溶液
を取得した。以上の操作により取得したエチレン−ビニ
ルアルコール共重合体溶液を乾湿式の紡糸装置に紡糸原
液として仕込み、紡糸原液のヘッド温度80℃、凝固浴
組成メタノール/DMSO=7/3(重量比)、凝固浴
温度5℃の条件下に紡糸操作を実施した。後続の工程に
て糸中に残留するDMSOのメタノールによる抽出除
去、湿熱延伸、乾燥、乾熱延伸を実施することによりエ
チレン−ビニルアルコール共重合体繊維を取得した。本
繊維の強度、伸度は15.2g/dr、4.5%であ
り、一定荷重下(200mg/dr)での溶断を尺度と
する耐熱水性を示すWTb値は130℃であった。
【0099】実施例3−2 エチレン−酢酸ビニル共重合体としてエチレン含量10
モル%、[η]ph=0.271l/gの共重合体31
7g(3.95モル)を使用した以外は実施例3−1と
同様な方法により、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメ
タノリシス、追込みけん化、触媒失活処理、濃度調整を
実施し、けん化度99.7%のエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体の7重量%のジメチルスルホキシド溶液を
取得した。上記全操作を通じて反応系は均一状態を保持
した。該溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上
に流延し、10℃のメタノール凝固浴に浸漬してフィル
ム化した後、メタノール抽出浴に導入し、ジメチルスル
ホキシドの抽出除去を行なった。次いで、室温にて自然
乾燥し、150℃で6倍に一軸延伸し、更に定長下にて
窒素ガス雰囲気中190℃で3分間熱固定し、ゲル、ブ
ツのほとんど認められない厚さ24μmのエチレン−ビ
ニルアルコール共重合体フィルムを取得した。
【0100】実施例3−3 エチレン−酢酸ビニル共重合体としてエチレン含量32
モル%、[η]ph=0.106l/gの共重合体26
6g(3.95モル)を使用し、水酸化ナトリウム7.
9g(0.198モル)をメタノリシス触媒とした以外
は実施例3−1と同様な方法により、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体のメタノリシス、追込みけん化、触媒失活
処理、濃度調整を実施し、けん化度99.5%のエチレ
ン−ビニルアルコール共重合体の25重量%のジメチル
スルホキシド溶液を取得した。上記全操作を通じて反応
系は均一状態を保持した。該溶液を70℃に加温し、シ
ート成形機のスリットから3℃に保持した冷却水中に押
出し、凝固せしめて厚さ600μの白色不透明なシート
状の湿潤ゲルを取得した。このゲルを水中65℃にて3
分間浸漬処理したのち、40℃にて60分間乾燥を行な
い厚さ480μのシートを取得した。
【0101】実施例3−4 実施例3−1においてメタノールのかわりにエタノール
1021g(22.2モル)、ジメチルスルホキシドの
かわりにジエチルスルホキシド1700gを使用し、水
酸化ナトリウムのかわりに水酸化カリウム4.43g
(0.079モル)を用いた以外は実施例3−1と同様
な方法により、エチレン−酢酸ビニル共重合体のエタノ
リシス、追込みけん化、仕込み水酸化カリウムと等モル
の酢酸添加による触媒失活処理、濃度調整を実施し、け
ん化度99.6モル%のエチレン−ビニルアルコール共
重合体を15重量%のジエチルスルホキシド溶液を取得
した。上記全操作を通じて反応系は均一状態を保持し
た。該操作により取得したエチレン−ビニルアルコール
共重合体溶液を流上湿式法の紡糸装置に紡糸原液として
仕込み、紡糸原液のヘッド温度60℃、凝固浴組成エタ
ノール/ジエチルスルホキシド=4/1(重量比)、凝
固浴温度5℃の条件下に紡糸操作を実施した。後続の工
程にて系中に残留するジエチルスルホキシドのエタノー
ルによる抽出除去、湿熱延伸、乾燥、乾熱延伸を実施す
ることによりエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維
を取得した。本繊維の強度、伸度はそれぞれ14.9g
/dr、4.8%であった。
【0102】実施例3−5 実施例3−1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体
としてエチレン含量33モル%、[η]ph=0.14
8の共重合体261g(3.90モル)を使用し、水酸
化ナトリウム7.9g(0.198モル)をメタノリシ
ス触媒として用いた以外は実施例3−1と同様な方法に
より、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノリシス、
追込みけん化、仕込み水酸化ナトリウムと等モルの酢酸
添加による触媒失活処理、濃度調整を実施し、けん化度
99.8%のエチレン−ビニルアルコール共重合体の1
3重量%のジメチルスルホキシド溶液を取得した。上記
全操作を通じて反応系は均一状態を保持し、器壁へのゲ
ル付着等は認められなかった。凝固浴として−7℃に保
った30重量%ジメチルスルホキシド水溶液を用い、内
部注入剤を窒素とし、該溶液を紡糸原液として湿式中空
糸製造装置の円環状ノズルよりノズルドラフト1.5に
て押出すことによりエチレン−ビニルアルコール共重合
体の中空糸を作成した。後続の40℃、6分の湿熱処
理、水洗、アセトン洗浄、乾燥の各工程を経て6ml/
mmHg・hr/m2の透水性を有する中空糸を得た。
【0103】実施例3−6 実施例3−1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体
としてエチレン含量70モル%、[η]ph=0.07
81l/gの共重合体174g(4.0モル)、メタノ
ール384g(12.0モル)、ジメチルスルホキシド
1700gを使用し、水酸化ナトリウム16g(0.4
モル)をメタノリシス触媒として用い、さらに追込みけ
ん化により酢酸メチル/メタノールを留去後、メタノー
ル256g(8.0モル)を添加し追込みけん化を再度
実施した以外は実施例3−1と同様な方法により、エチ
レン−酢酸ビニル共重合体のメタノリシス、追込みけん
化、仕込み水酸化ナトリウムと等モルの酢酸添加による
触媒失活処理、濃度調整を実施し、けん化度99.5%
のエチレン−ビニルアルコール共重合体を12重量%の
ジメチルスルホキシド溶液を取得した。上記全操作を通
じて反応系は均一状態を保持した。該操作により取得し
たエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を直径0.
6mmの振動式ノズルを有する粒子化装置に仕込み、2
0℃の水を凝固浴として、70ヘルツの振動下に粒子化
を実施し、平均粒径1.5mmの球状湿潤ゲルを取得し
た。この球状ゲルを水洗、乾燥することにより平均粒径
0.55mmで短軸/長軸の平均比が0.9である粒径
分布のシャープな球状共重合体を得た。
【0104】比較例3−1 実施例3−1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体
のかわりに[η]ph=0.186l/gの酢酸ビニル
重合体344g(4.0モル)、メタノール2400g
を用い、ジメチルスルホキシドを添加しなかった以外は
実施例3−1と同一の条件下にメタノリシス反応を実施
した。メタノリシス反応開始直後から反応系は不均一と
なり、均一系での反応は不可能であった。
【0105】比較例3−2 実施例3−1において、エチレン−酢酸ビニル共重合体
としてエチレン含量90モル%、[η]ph=0.06
78l/gの共重合体135g(4.0モル)を用いた
以外は実施例3−1と同一の条件下にメタノリシス反応
を実施した。反応系への上記共重合体の溶解性は不充分
であり、完全溶解しなかった。不均一系の状態でそのま
まメタノリシス反応を2時間実施したが、反応系は不均
一の状態のままであった。また反応後のけん化度は52
%にとどまった。
【0106】実施例4−1 電磁撹拌装置、サンプリング口を備えた内容5lのオー
トクレーブに蒸留精製した酢酸ビニル(VAc)2.7
4kg(31.86モル)、ジメチルスルホキシド(D
MSO)0.69kg(VAc/DMSO=4/1、重
量比)、アゾビスイソブチロニトリル0.159g
(0.0058wt%/VAc)を仕込み、系内をエチ
レンガスにて充分に置換した後調圧装置によりエチレン
圧力3kg/cm2一定に保って60℃まで昇温し、6
0℃一定の条件下にエチレンと酢酸ビニルの共重合反応
を開始した。サンプリングにより反応過程を追跡しなが
ら5時間にわたって重合反応を実施した。重合系は全反
応過程にわたって均一溶液であり、5時間後における重
合率は30%であった。該溶液からのサンプル採取によ
り求めたエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含量
は5モル%、けん化後のEVOHとしての[η]ph=
0.247l/gであった。上記重合溶液に重合禁止剤
を添加し、該重合液を撹拌機、減圧蒸留装置、触媒液導
入口、サンプリング口を備えた内容10lのセパラブル
フラスコにN2雰囲気下に導入し、DMSO3700g
を添加した。油浴中にて撹拌下に系内温度を60℃まで
上昇させ、缶液温度60℃一定の条件下に減圧度を変化
させながら(50mmHg〜5mmHg)残存VAcの
追出し操作を実施した。なお追出し開始直後の溶液の粘
度は11ポイズ、追出し終了時の溶液粘度は19ポイズ
であった。2kgの留出液を採取することにより缶液中
の残存VAcは0.02%となったことを確認した。本
追出し操作は均一溶液の状態で実施できた。ついで、6
0℃に保持した缶液にメタノール1700g(53.1
3モル)を添加し、撹拌下に水酸化ナトリウム3.82
g(0.096モル)をメタノール100mlに溶解し
た触媒液をN2雰囲気下に一括添加し反応を開始し、6
0℃、30分にわたり反応を継続した。30分反応後に
おけるサンプリングにより求めた生成エチレン−ビニル
アルコール共重合体のけん化度は97.8%であった。
上記反応器に減圧蒸留装置を設置し、缶液温度70℃一
定の条件下に得られた反応液から副生した酢酸メチルお
よびメタノールを常圧又は減圧下に留去し、エチレン−
ビニルアルコール共重合体の追込み鹸化を実施した。副
生酢酸メチルおよびメタノールの留出開始直後における
留出液中の酢酸メチル/MeOHの重量比は9/1であ
り、酢酸メチル/メタノールの共沸蒸留組成(8/2)
を上まわる留出組成を示した。上記条件下1.5時間に
わたり留出操作を行ない、ドライアイス−アセトン冷却
浴中に留出液2250gが留出し、缶液中のエチレン−
ビニルアルコール共重合体のけん化度は99.8%であ
った。上記の反応系および追込みけん化系を通じて反応
系は常に均一状態を保持した。追込みけん化後の缶液に
酢酸5.76g(0.096モル)を添加し、触媒を失
活させた後、減圧下に缶液温度を90℃以下に保って、
缶液中のエチレン−ビニルアルコール共重合体の濃度調
整を実施し、エチレン−ビニルアルコール共重合体の1
2重量%ジメチルスルホキシド溶液を取得した。以上の
操作により取得したエチレン−ビニルアルコール共重合
体溶液を乾湿式の紡糸装置に紡糸原液として仕込み、紡
糸原液のヘッド温度80℃、凝固浴組成メタノール/D
MSO=7/3(重量比)、凝固浴温度5℃の条件下に
紡糸操作を実施した。後続の工程にて糸中に残留するD
MSOのメタノールによる抽出除去、湿熱延伸、乾燥、
乾熱延伸を実施することによりエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体繊維を取得した。本繊維の強度、伸度は、
それぞれ16.5g/dr、4.7%であり、一定荷重
下(200mg/dr)での溶断を尺度とする耐熱水性
を示すWTb値は135℃であった。
【0107】実施例4−2 実施例4−1において、重合系へのアゾビスイソブチロ
ニトリルの添加量を0.225g(0.0082wt%
/VAc)、エチレン圧力を7kg/cm2とした以外
は実施例4−1と同一の条件下に重合反応を実施し、重
合率31%で、エチレン含量10モル%、EVOHとし
ての[η]ph=0.210l/gのエチレン−酢酸ビ
ニル共重合体を得た。該溶液からの残存VAc追出しも
実施例4−1と同一の条件下に実施し、残存VAc量は
0.02%以下であることを確認した。なお追出し開始
直後の溶液の粘度は9ポイズ、追出し終了後の溶液の粘
度は15ポイズであった。上記工程を通じて系は常時均
一状態を保持した。メタノリシス反応、追込みけん化、
溶液濃度調整も実施例4−1と同様に実施し、けん化度
99.7%でEVOHの6重量%のジメチルスルホキシ
ド溶液を取得した。上記全操作を通じて反応系は均一状
態を保持した。該溶液をポリエチレンテレフタレートフ
ィルム上に流延し、10℃のメタノール凝固浴に浸漬し
てフィルム化した後、メタノール抽出浴に導入し、ジメ
チルスルホキシドの抽出除去を行なった。次いで、室温
にて自然乾燥し、150℃で6倍に一軸延伸し、更に定
長下にて窒素ガス雰囲気中190℃で3分間熱固定し、
ゲル、ブツのほとんど認められない厚さ20μmのエチ
レン−ビニルアルコール共重合体フィルムを取得した。
【0108】実施例4−3 実施例4−1において重合系へのアゾビスイソブチロニ
トリルの添加量を1.10g(0.04wt%/VA
c)、エチレン圧力を43kg/cm2とした以外は実
施例4−1と同一の条件下に重合反応を実施し、重合率
30%で、エチレン含量32モル%、EVOHとしての
[η]ph=0.119l/gのエチレン−酢酸ビニル
共重合体の溶液を得た。該溶液からの残存VAc追出し
も実施例4−1と同一の条件下に実施し、残存VAc量
は0.02%以下であることを確認した。なお追出し開
始直後の粘度は5ポイズ、追出し終了時の粘度は7ポイ
ズであった。上記工程を通じて系は常に均一状態を保持
した。メタノリシス触媒として水酸化ナトリウム19.
1g(0.48モル)を用いたメタノリシス反応、追込
みけん化、溶液濃度調整も実施例4−1と同様に実施
し、けん化度99.5%でEVOH21重量%のDM
SO溶液を取得した。上記全操作を通じて反応系は均一
状態を保持した。該溶液を70℃に加温し、シート成形
機のスリットから3℃に保持した冷却水中に押出し、凝
固せしめて厚さ600μの白色不透明なシート状の湿潤
ゲルを取得した。このゲルを水中65℃にて3分間浸漬
処理したのち、40℃にて60分間乾燥を行ない厚さ4
50μのシートを取得した。
【0109】実施例4−4 実施例4−1と同一の方法にてエチレンと酢酸ビニルの
共重合、残存VAc追出し、メタノリシス、追込みけん
化を実施し、後続の濃度調整にてけん化度99.8%、
10重量%のジメチルスルホキシド溶液を取得した。該
操作により取得したエチレン−ビニルアルコール共重合
体溶液を流上湿式法の紡糸装置に紡糸原液として仕込
み、紡糸原液のヘッド温度60℃、凝固浴組成メタノー
ル/DMSO=4/1(重量比)、凝固浴温度5℃の条
件下に紡糸操作を実施した。継続の工程にて糸中に残留
するDMSOのメタノールによる抽出除去、湿熱延伸、
乾燥、乾熱延伸を実施することによりエチレン−ビニル
アルコール共重合体繊維を取得した。本繊維の強度、伸
度はそれぞれ16.2g/dr、4.9%であった。
【0110】実施例4−5 実施例4−1において、重合温度40℃、重合系へのア
ゾビスイソブチロニトリルの添加量を2.33g(0.
085wt%/VAc)、エチレン圧力を32kg/c
2とした以外は実施例1と同一の条件下に重合反応を
実施し、重合率20%で、エチレン含量32モル%、E
VOHとしての[η]ph=0.143l/gのエチレ
ン−酢酸ビニル共重合体の溶液を得た。該溶液からの残
存VAc追出しも実施例4−1と同一の条件下に実施
し、残存VAc量は0.02%以下であることを確認し
た。上記工程を通じて系は常に均一状態を保持した。メ
タノリシス触媒として水酸化ナトリウム26.9g
(0.67モル)を用いたメタノリシス反応、追込みけ
ん化、溶液濃度調整も実施例4−1と同様に実施し、け
ん化度99.6%で12重量%のDMSO溶液を取得し
た。各工程を通じて反応系は均一状態を保持し、器壁へ
のゲル付着等は確認されなかった。凝固浴として−7℃
に保った30重量%ジメチルスルホキシド水溶液を用
い、内部注入剤を窒素とし、該溶液を紡糸原液として湿
式中空糸製造装置の円環状ノズルよりノズルドラフト
1.5にて押出すことによりエチレン−ビニルアルコー
ル共重合体の中空糸を作成した。後続の40℃、6分の
湿熱処理、水洗、アセトン洗浄、乾燥の各工程を経て
6.3ml/mmHg・hr/m2の透水性を有する中
空糸を得た。
【0111】実施例4−6 実施例4−1において、酢酸ビニル1800g(20.
93モル、DMSO1200g(VAc/DMSO=6
/4、重量比)、アゾビスイソブチロニトリル2.36
g(0.131wt%/VAc)、エチレン圧力65k
g/cm2、重合時間6時間とした以外は実施例4−1
と同様な方法により重合反応を実施し、重合率30%
で、エチレン含量60モル%、EVOHとしての[η]
ph=0.0854l/gのエチレン−酢酸ビニル共重
合体の溶液を得た。重合系は常時均一系を保った。残存
VAcの追出し操作においてはDMSO4800gを添
加し実施例4−1と同様な操作により実施し、系は均一
状態を保持した。メタノリシス反応はメタノール150
0g(47.1モル)、水酸化ナトリウム31.4g
(0.79モル)の添加により実施し、さらに追込みけ
ん化により酢酸メチル/メタノールを留去後、メタノー
ル973g(30.4モル)を添加し、追込みけん化を
再度実施した以外は実施例4−1と同様な方法により、
エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノリシス、追込み
けん化、仕込み水酸化ナトリウムと等モルの酢酸添加と
による触媒失活処理、濃度調整を実施し、けん化度9
9.6%のエチレン−ビニルアルコール共重合体の1
1.5重量%のジメチルスルホキシド溶液を取得した。
上記全操作を通じて反応系は均一状態を保持した。該操
作により取得したエチレン−ビニルアルコール共重合体
溶液を直径0.6mmの振動式ノズルを有する粒子化装
置に仕込み、20℃の水を凝固浴として、65ヘルツの
振動下に粒子化を実施し、平均粒径1.5mmの球状湿
潤ゲルを取得した。この球状ゲルを水洗、乾燥すること
により平均粒径0.55mmで短軸/長軸の平均比が
0.9である粒径分布のシャープな球状共重合体を得
た。
【0112】比較例4−1 実施例4−1において、DMSOのかわりにメタノール
0.69kg(VAc/メタノール=4/1、重量
比)、アゾビスイソブチロニトリル0.39g(0.0
14wt%/VAc)を仕込み、エチレンを共存させな
い以外は同一の条件下に酢酸ビニルの単独重合を5時間
実施した。重合率は50%であり、重合体の分析よりポ
リビニルアルコールとしての[η]ph=0.210l
/gであった。残存VAc追出しはDMSOのかわりに
メタノール3.5kgを添加して、常圧の条件下に実施
し、缶液として35wt%濃度のポリ酢酸ビニルのメタ
ノール溶液を取得した。上記操作において系は均一状態
であった。該ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に6.4
g(0.16モル)の水酸化ナトリウムを添加し、実施
例4−1と同一の条件下にメタノリシス反応を実施し
た。メタノリシス反応開始直後から反応系は不均一とな
り、均一系での反応は不可能であった。
【0113】比較例4−2 実施例4−1において、DMSOのかわりにメタノール
0.69kg(VAc/メタノール=4/1、重量
比)、アゾビスイソブチロニトリル3.23g(0.1
18wt%/VAc)を仕込み、エチレン圧力を62.
5kg/cm2、重合温度50℃とした以外は実施例4
−1と同一の条件下に重合反応を実施した。重合系から
採取したサンプルは不透明であり、系が不均一状態であ
ることが認められた。6時間後の重合率は30%であ
り、エチレン含量は60モル%、EVOHとしての
[η]ph=0.0749l/gであった。上記操作に
より取得した不透明な共重合体溶液にメタノール3.0
kgを添加し常圧の条件下に実施例4−1に順じた残存
VAcの追出しを実施した。VAcの追出しの進行に伴
ない缶液系は白濁し、エチレン−酢酸ビニル共重合体の
析出が認められ、均一状態でのVAc追出しは困難であ
った。
【0114】実施例5−1〜5−4 実施例2−1に準じて、エチレン含量(PVAc)、
20、32、47、60モル%のEVAを表4に示す条
件下で、40℃にて60分間反応を行った。けん化後の
ポリマーを析出させる溶媒は、エチレン含量、ケン化度
に応じて、水、エタノール、両者の混合溶媒を適宜用い
た。反応後の溶液の状態は全て均一であった。図4に、
けん化度の経時変化を示す。また、対照として、実施例
5−1において、ジメチルスルホキシドの代わりにメタ
ノールを使用し、その他の条件は同じにしてけん化反応
を行った。反応後固化したポリマーは、粉砕後、中和、
後処理を行った(比較例5−1〜5−5)。メタノール
系の場合、エチレン含量によって異なるが、反応中、反
応後で固体あるいはスラリー状であった。図5に、メタ
ノール系の場合のけん化度の経時変化を示す。図4と図
5を比較すると分かるように、ジメチルスルホキシドを
溶媒にした場合、メタノール系に比較して、反応が非常
に速いことが分かる。図4、図5より、それぞれの溶媒
系で、各エチレン含量における反応速度を求め、その比
(DMSO系けん化/MeOH系けん化)を求めた(図
6)。図6より分かるように、反応速度比は、エチレン
含量が高くなるに従って、増大し、これより、ジメチル
スルホキシドを用いたけん化反応は、非常に特異的であ
るといえる。
【0115】
【表4】
【0116】実施例6−1〜6−5 実施例1に準じた条件で、ジメチルスルホキシド、酢酸
ビニルを等量(DMSO/VAc=5/5,重量比)仕
込み、エチレン圧力を変化させて同一重合速度、重合率
になるよう開始剤量を調整して重合を行い、得られたE
VAを実施例1に準じた条件下でけん化反応を行い得ら
れたEVAを実施例1に準じた条件下でけん化反応を行
い得られた各種エチレン含量のEVOH(けん化度9
9.4〜99.7モル%)の極限粘度を測定した。ま
た、対照として、ジメチルスルホキシドを用いない、メ
タノール系での溶液重合を、ジメチルスルホキシドの系
と同様の組成で重合を行った(比較例6−1〜6−
5)。なお、重合は、極限粘度低下の影響を見る為、全
て、同一重合速度、重合率にし、また、同一エチレン含
量になる様にエチレン圧力を設定した(表5,図7)。
図7からも分かるように、エチレン含量が高くなって
も、ジメチルスルホキシドを溶媒とした溶液重合の場
合、メタノール溶媒系で重合して得るEVOHに比して
極限粘度の高い重合体が得られる。
【0117】
【表5】
【0118】実施例7−1 実施例3−1に準じた方法で、エチレン含量32モル%
のEVA([η]ph=0.111l/g)100g、
メタノール96g、ジメチルスルホキシド1788gを
使用し、水酸化ナトリウム2.0gをメタノリシス触媒
として用い、反応温度40℃で、2分間反応を行い、実
施例3−1と同様の後処理を行い、鹸化度76.5モル
%の部分鹸化EVOHを得た。この得られたEVOHの
融点は、116.4℃、ブロックキャラクターは0.3
45であった。また対照として(比較例7−1)、実施
例7−1のジメチルスルホキシドの代わりに、メタノー
ルを使用した以外は、同様の方法で、反応温度40℃、
90分間反応を行い、同様の後処理を行うことにより、
鹸化度76.5モル%の部分鹸化物を得た。この得られ
たEVOHの融点は、143.8℃、ブロックキャラク
ター0.118であった。上記の様に、DMSO溶媒系
で鹸化した場合、MeOH溶媒系で鹸化した場合に比較
して同一の鹸化度でも、融点が低くなること、さらに得
られるEVOH中の残存アセチル基の分布がよりランダ
ム(よりシャープ)であることがわかる。
【0119】
【発明の効果】広範なエチレン含量を有するエチレン−
ビニルエステル共重合体を得ることができるし、また重
合系は実質的に均一な液相に保たれているので、得られ
るEVAおよびそれをけん化して得られるEVOHの品
質も均一であり、また残存モノマー回収も、容易であ
る。さらにまたメタノールを用いた溶液重合にくらべ重
合度の高いEVAを得ることもできる。アルコリシスの
反応速度は、低級アルコール単独の溶媒系に比較して増
大し、さらにまたアルコール反応系は実質的に均一な液
相に保たれているので、得られるEVOH共重合体の品
質も均一である。またエチレン含量の増加に伴なうアル
コリシス反応速度の減少はわずかであり、興味あること
には、メタノール溶媒を用いた場合にくらべ、反応速度
比(ジアルキルスルホキシドを使用した場合の反応速度
/メタノールを使用した場合の反応速度)はエチレン含
量の増加とともに増加傾向を示す。したがって本発明は
高エチレンEVAのアルコリシス反応に極めて有効であ
る。
【0120】EVOHの製法から、EVOHを用いた成
形物の製法までを直結して実施することができるので、
製造コストが安価である。
【0121】広範なエチレン含量を有するEVAの製法
から、EVAをけん化してEVOHを得る工程およびE
VOHを用いた成形物の製法までを直結して実施するこ
とができるので製造コストが安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2〜5および比較例2〜6における、溶
媒量(重量%)を横軸にし、EVOHの極限粘度(l/
g)を縦軸とするグラフである。
【図2】実施例9および比較例における、重合時間
(hr)(誘導期日は除く)を横軸にし、重合液をサン
プリングし、蒸発乾固して得たEVAの固形分の濃度
(重合液に対する重量%)を縦軸とするグラフである。
【図3】実施例2−2および比較例2−1における、け
ん化時間(分)を横軸にし、EVOHのけん化度(%)
を縦軸とするグラフである。
【図4】実施例5−1〜5−4における、けん化時間
(分)を横軸にし、EVOHのけん化度(%)を縦軸と
するグラフである。
【図5】比較例5−1〜5−5における、けん化時間
(分)を横軸にし、EVOHのけん化度(%)を縦軸と
するグラフである。
【図6】実施例5−1〜5−4および比較例5−1〜5
−5における、エチレン含量(モル%)を横軸とし、反
応速度比(DMSO系けん化/MeOHけん化)を縦軸
とするグラフである。
【図7】実施例6−1〜6−5および比較例6−1〜6
−5における、エチレン含量(モル%)を横軸にし、E
VOHの極限粘度(l/g)を縦軸とするグラフであ
る。
【符号の説明】
1 実施例2〜5(ジメチルスルホキシドを用いた溶液
重合) 2 比較例2(塊状重合)、比較例3〜6(メタノール
を用いた溶液重合) 3 実施例9(ジメチルスルホキシドを用いた溶液重
合) 4 比較例(メタノールを用いた溶液重合) 5 実施例2−2 6 比較例2−1
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青山 明正 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (72)発明者 守谷 健 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 審査官 杉原 進

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンおよびビニルエステルをラジカ
    ル開始剤の存在下に共重合するに際し、重合溶媒として
    ジアルキルスルホキシドを使用することを特徴とするエ
    チレン−ビニルエステル共重合体の製法。
  2. 【請求項2】 重合系が液相で、かつ粘度が500ポイ
    ズ以下に保たれた状態で、重合系から残存モノマーを留
    出除去する請求項1記載のエチレン−ビニルエステル共
    重合体の製法。
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