JP2822370B2 - 水質浄化堤 - Google Patents

水質浄化堤

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博和 辻
衛 石垣
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    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W10/00Technologies for wastewater treatment
    • Y02W10/10Biological treatment of water, waste water, or sewage

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  • Biological Treatment Of Waste Water (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、海洋に構築される水質
浄化堤に係り、特に、所望の浄化領域を取り囲むように
して構築される水質浄化堤に関する。
【0002】
【従来の技術】ウオーターフロント・リバーフロントに
おいて、アメニティに富んだ親水空間を確保するために
は、良好な水環境が不可欠である。広域水域の水質浄化
にあたっては、河川などからの流入負荷あるいは堆積ヘ
ドロからの溶出負荷などの低減がまず第一であるが、実
際の汚濁水を直接浄化するには、自然の持つ水質浄化機
能を最大限活用し、安価にかつ大規模に行う必要があ
る。
【0003】かかる背景において、石積み浄化堤なる海
洋構造物が注目されており、例えば特公平4―2004
3号公報に開示されている。
【0004】図2は、従来の石積み浄化堤を断面図で示
したものである。
【0005】同図でわかるように、石積み浄化堤1は、
礫あるいは石を堤体材2として海底3から積み上げて台
形状に形成し、これを所定の被覆石4で被覆したもので
ある。
【0006】かかる石積み浄化堤を所定の海域を取り囲
むようにして配置しておくと、潮の干満や波が生じた
際、堤体材2の間隙を通して外部の海水5が石積み浄化
堤1の内部水域6に移動するが、堤体材2である礫の表
面には微生物群からなる生物膜が付着形成されているた
め、プランクトン等の海水中の汚濁成分は、かかる生物
膜によって付着あるいは捕捉される。また、生物膜によ
って付着捕捉された濁り成分は、礫間に棲息する貝類や
甲殻類によって摂取され除去される。
【0007】したがって、礫間を通過した海水は、濾過
されて清浄な海水となる。
【0008】かくして、石積み浄化堤は、自然生態系の
水質浄化機能によって清浄な水質の内水域を創造できる
海岸構造物であることがわかってきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
石積み浄化堤は、安定性を考慮して、通常、台形状に形
成されるため、海底付近における堤体幅は、海面付近の
堤体幅よりも大きくなる。また、堤体幅が大きくなるに
つれて、海水の移動速度も遅くなる。
【0010】したがって、海水が石積み浄化堤の礫と接
触する時間は、海面から深くなるにつれて急激に長くな
り、その結果、海水に溶存する酸素(DO)が礫間に生
存する生物や生物膜によって多量に消費されるいわゆる
DO消費の増大を招く。
【0011】このような事態は、石積み浄化堤の内部水
域に溶存酸素の少ない海水が流入し、内部水域を海洋生
物が棲息しにくい環境に変えてしまうという問題を生じ
ていた。
【0012】上述の問題を解決するには、海底付近の海
水の移動を遮断したりあるいは通水管等を埋設すること
によって礫間接触時間を少なくし、上述のDO消費を低
減する方法が考えられるが、前者は、石積み浄化堤のも
つ水質浄化機能を減ずることとなり、後者は、特に台風
やシケ等の場合に海底から巻き上げられた多量の懸濁物
質が通水管を通して石積み浄化堤の内部水域に流入して
しまうという別の問題を生じる。
【0013】また、石積み浄化堤の構造はそのままとし
て内部海域のエアレーションを別途行う方法も考えられ
るが、きわめて不経済となる。
【0014】本発明は、上述した事情を考慮してなされ
たもので、水質浄化機能を低下させることなく、海水中
のDO消費を抑制することができる水質浄化堤を提供す
ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の水質浄化堤は請求項1に記載したように、
所定の堤体材をほぼ台形状に積み上げて構成した水質浄
化堤において、下層を形成する前記堤体材の透水係数を
上層を形成する前記堤体材の透水係数よりも大きくした
ものである。
【0016】また、本発明の水質浄化堤は請求項2に記
載したように、所定の堤体材をほぼ台形状に積み上げて
構成した水質浄化堤において、下層を形成する前記堤体
材の径に対する上層を形成する前記堤体材の径の比率
を、下層の堤体幅に対する上層の堤体幅の比率と実質的
に同一としたものである。
【0017】
【作用】本発明の水質浄化堤においては、下層を形成す
る堤体材の透水係数を上層を形成する堤体材の透水係数
よりも大きくしてあるため、上層と同じ透水係数の堤体
材を使用した場合に比べて、下層における海水の移動速
度は大きくなる。
【0018】そのため、例えば、下層を形成する堤体材
の径に対する上層を形成する堤体材の径の比率を、下層
の堤体幅に対する上層の堤体幅の比率と実質的に同一に
設定すると、下層の礫間接触時間を上層の礫間接触時間
とほぼ同等にすることが可能となり、下層におけるDO
消費は、従来に比べて大幅に抑制される。
【0019】
【実施例】以下、本発明の水質浄化堤の実施例につい
て、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実
質的に同一の部品等については同一の符号を付してその
説明を省略する。
【0020】図1は、本実施例に係る水質浄化堤11を
断面図で示したものである。
【0021】同図でわかるように、本実施例の水質浄化
堤11は、法勾配が外側1:3、内側が1:2、天端に
おける堤体幅L1 が5m、堤体高さが4m、底面におけ
る堤体幅L2が25mのほぼ台形状に形成してある。
【0022】すなわち、かかる堤体幅の比は、 L1/L2=1/5 (1) となっている。
【0023】また、上層の堤体材2には、外径寸法が2
0cm程度の礫を用いる一方、下層の堤体材12には、
100cm程度の礫を用いてあり、堤体材12の径に対
する堤体材2の径の比率を、下層の堤体幅L2 に対する
上層の堤体幅L1の比率とほぼ同一に設定してある。
【0024】堤体材2および堤体材12は、石材、コン
クリート材など、生物膜が付着するとともに貝等の生物
が棲息できるような材料であればなんでもよい。
【0025】ここで、透水係数Kと堤体材の有効径Dと
の間には、aを所定の比例定数として、一般的に、 K=aD2 なる関係があり、堤体材の有効径の比率は、1:5であ
るので、上層の透水係数K1と下層の透水係数K2との間
には、 K1/K2=1/25 (2) の関係が成り立つ。
【0026】一方、所定深さにおける海水の礫間移動速
度Vは、Lをその深さにおける堤体幅、bを所定の比例
定数として、 V=bK/L と表すことができるので、海水が堤体幅Lを移動する時
間すなわち礫間接触時間tは、 t=L/V=L2/(bK) と表すことができる。
【0027】したがって、上層の礫間接触時間t1と下
層の礫間接触時間t2との間には、 t1/t2=(L1/L22/(K1/K2) (3) なる関係が成立する。
【0028】(3)式に(1)式および(2)式を代入すると、 t1/t2=(L1/L22/(K1/K2)=1 が得られ、上層及び下層の礫間接触時間が等しくなるこ
とがわかる。
【0029】ちなみに、透水係数を全断面で均一とした
従来の場合には、 t1/t2=(L1/L22 となるため、仮にL1/L2=1/3とした場合でも下層
における礫間接触時間は上層の9倍となる。
【0030】かかる水質浄化堤11を所定の海域を取り
囲むようにして配置しておくと、潮の干満や波が生じた
際、堤体材2および堤体材12の間隙を通して外部の海
水5が水質浄化堤11の内部水域6に移動し、それらの
海水は、間隙を移動中に堤体材2および堤体材12の表
面に付着した微生物群からなる生物膜によって汚濁成分
が除去されて清浄な海水となる。
【0031】ここで、下層における礫間接触時間は、上
述したように上層における礫間接触時間とほぼ同等であ
って、従来の数分の1に短縮されるので、下層における
DO消費は従来に比べて大幅に抑制される。
【0032】このように、本実施例の水質浄化堤は、濁
り物質が多い海面付近においては、比較的小さな径の堤
体材を用いて高いレベルの浄化機能を確保する一方、濁
り物質が比較的少ない海底付近においては、比較的大き
な径の堤体材を用いて上層よりも礫間接触距離を小さく
しDO消費を抑制するとともに、台風やシケなどの場合
に海底付近に濁り物質が多くなったときには、所定の浄
化機能を維持できるようにしたので、水質浄化堤のもつ
浄化機能を減ずることなく、下層におけるDO消費を抑
制して水質浄化堤内の海域を生物の棲息に適した環境に
することができる。
【0033】本実施例では、下層における堤体材の径を
上層における堤体材の径よりも大きく設定したが、堤体
材の径ではなく、代わりに堤体材の材質に着目し、例え
ば、透水係数の大きい多孔性材料を下層の堤体材として
用いてもよい。
【0034】また、本実施例では、堤体材を上層と下層
の2つに区分して構成したが、さらに多数の区分に分割
してもよいし、堤体材の径を連続的に変化させる構成と
してもよい。
【0035】また、本実施例で述べた堤体材の寸法およ
び堤体の断面形状の組み合わせは単なる例示にすぎず、
これらの他に上層の礫間接触時間と下層の礫間接触時間
とを同等にすることができる組み合わせは無数にある。
【0036】また、下層の堤体材の径を必ずしも下層の
礫間接触時間が上層の礫間接触時間と同一になるように
設定する必要はなく、浄化機能を損なわない範囲で上層
の礫間接触時間よりも短くなるように、上述の実施例で
いえば100cm以上としてもよい。
【0037】また、DO消費が過度に大きくならない範
囲で、上層の礫間接触時間よりも長くなるように、上述
の実施例でいえば20cm以上100cm未満としても
よい。
【0038】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の水質浄化堤
は、所定の堤体材をほぼ台形状に積み上げて構成した水
質浄化堤において、下層を形成する前記堤体材の透水係
数を上層を形成する前記堤体材の透水係数よりも大きく
したので、水質浄化機能を低下させることなく、海水中
のDO消費を抑制することができる。
【0039】また、本発明の水質浄化堤は、所定の堤体
材をほぼ台形状に積み上げて構成した水質浄化堤におい
て、下層を形成する前記堤体材の径に対する上層を形成
する前記堤体材の径の比率を、下層の堤体幅に対する上
層の堤体幅の比率と実質的に同一としたので、水質浄化
機能を低下させることなく、海水中のDO消費を抑制す
ることができる。
【0040】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る水質浄化堤の断面図。
【図2】従来技術に係る水質浄化堤の断面図。
【符号の説明】
2 堤体材(上層の堤体材) 11 水質浄化堤 12 堤体材(下層の堤体材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮岡 修二 東京都千代田区神田司町二丁目3番地 株式会社大林組東京本社内 (56)参考文献 特開 昭55−129511(JP,A) 特開 平3−278886(JP,A) 特開 平4−363405(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E02B 3/06 C02F 3/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の堤体材をほぼ台形状に積み上げて
    構成した水質浄化堤において、 下層を形成する前記堤体材の透水係数を上層を形成する
    前記堤体材の透水係数よりも大きくしたことを特徴とす
    る水質浄化堤。
  2. 【請求項2】 所定の堤体材をほぼ台形状に積み上げて
    構成した水質浄化堤において、 下層を形成する前記堤体材の径に対する上層を形成する
    前記堤体材の径の比率を、下層の堤体幅に対する上層の
    堤体幅の比率と実質的に同一としたことを特徴とする水
    質浄化堤。
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JP5223051B2 (ja) * 2005-01-26 2013-06-26 うつろ株式会社 「水域の空(utsuro)」による閉鎖性水域を利用した高度浄化方法
JP4858142B2 (ja) * 2006-12-12 2012-01-18 株式会社大林組 海水浄化システム及び海水浄化方法

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