JP2820469B2 - 防湿フィルム - Google Patents

防湿フィルム

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JP2820469B2 JP30448589A JP30448589A JP2820469B2 JP 2820469 B2 JP2820469 B2 JP 2820469B2 JP 30448589 A JP30448589 A JP 30448589A JP 30448589 A JP30448589 A JP 30448589A JP 2820469 B2 JP2820469 B2 JP 2820469B2
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【発明の詳細な説明】 〔発明の背景〕 (産業上の利用分野) 本発明は、高度な防湿性能を有するプラスチックフィ
ルムに関するものである。更に詳しくは、本発明は、透
明で水蒸気などのガスをほとんど透過しない、液晶ディ
スプレイのバックライト用EL素子等のパッケージフィル
ムに好適な、高度な防湿性能を有するフィルムに関する
ものである。
(従来の技術) 液晶表示素子は、低消費電力であるという最大の特徴
を生かして、デジタルウォッチ及び電子式卓上計算機等
のディスプレイ用素子として定着し、液晶ゲームが登場
したことによって爆発的に需要を拡大し、その後、車載
用、楽器用、OA用、FA用など用途が多様化して来てい
る。一方、有機分散型のエレクトロルミネセンス(EL)
素子は薄型、軽量の特徴を生かして液晶表示素子用の安
価な平面発光のバックライト(補助光源)として用途が
広がりつつある。有機分散型のEL素子は、ZnS:Mn、ZnS:
Cuなどの蛍光物質の発光輝度が吸湿により著しくそこな
われるため、防湿性能のすぐれた透明なフィルムにより
パッケージされて使用される。
従来、上記液晶ディスプレイのバックライトとして使
用される有機分散型のEL素子のパッケージには、フッ素
化樹脂フィルム、特にポリ塩化三フッ化エチレン(PCTF
E)を主体にした積層フィルムが、すぐれた防湿性能、
透明性を有するところから賞用されている。
上記有機分散型のEL素子用パッケージフィルムとして
は、一般には厚さが70〜300μm程度のPCTFEフィルム
に、ヒートシール用のシーラントとして厚さが20〜100
μm程度のポリオレフィンを積層したフィルムが使用さ
れており、このフィルムは水蒸気をほとんど透過しない
ところから、既存の透明なプラスチックフィルムでは最
も防湿性能がすぐれたものであると言われている。
また最近では、透明なプラスチック基材フィルムの表
面に金属酸化物、特にケイ素、あるいはアルミニウム系
の透明な酸化物薄膜を設けた透明プラスチックフィルム
がガスバリヤ性の包装材として商品化されている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、有機分散型のEL素子の従来のパッケー
ジ用フィルムであるフッ素化樹脂フィルム、特にポリ塩
化三フッ化エチレン(PCTFE)を主体にした積層フィル
ムは、極めて高価であるためにバックライトの製造コス
トが高くなるという問題があった。また、PCTFEを主体
にした積層フィルムは、雰囲気の温度が50℃を越えると
その防湿性能がかなり劣化するため、高温下でのEL素子
の寿命が極端に短なるという問題があった。
このような理由から、液晶ディスプレイの製造コスト
ダウンおよび性能アップを目的とした、バックライト用
の有機分散型EL素子のパッケージフィルムとして、PCTF
Eよりも安価で防湿性能のすぐれた透明なプラスチック
フィルムの開発が望まれていた。
さらに、透明なプラスチック基材フィルムの表面に金
属酸化物の透明な薄膜を設けた透明プラスチックフィル
ムは、現状のままでは防湿性能が充分ではなく、液晶デ
ィスプレイのバックライト用の有機分散型EL素子のパッ
ケージフィルムとして使用できるまでには至っていな
い。
この発明は上述の背景に基づいてなされたものであ
り、その目的とするところは、優れた透明性・防湿性を
有し、強度及び経済性の面でも優れ、特に、高度の防湿
性能が要求される液晶ディスプレイのバックライト用EL
素子等のパッケージフィルムとして好適な材料を提供す
ることである。
〔発明の概要〕
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、上記課題解決のために鋭意検討の結
果、特定のポリビニルアルコールフィルム上にケイ素酸
化物薄膜を形成したフィルムが、すぐれた透明性および
防湿性能を有するとともに、このフィルムをケイ素酸化
物薄膜を有する他の透明なプラスチックフィルムで保護
することにより高温、多湿な雰囲気下でも安定した防湿
性能を長期間に亘って持続するとの知見を得、これに基
づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の発明による防湿フィルム
は、下記の通りに定義される中心層(A)および中心層
の一方の面に接合された保護層(B)からなる積層構造
を有するものである。
(a) 中心層(A)は、ケン化度99モル%以上のポリ
ビニルアルコールよりなるフィルムの少なくとも片面に
ケイ素酸化物薄膜を有する透明フィルムからなる。
(b) 保護層(B)は、少なくとも片面に透明なケイ
素酸化物薄膜を有する透明なプラスチックフィルムを少
なくとも1層含む透明フィルムからなる。
又、本発明の第二の発明による防湿フィルムは、下記
の通りに定義される中心層(A)、中心層の一方の面に
接合された保護層(B)および中心層の他方の面に接合
されたシートラント層(C)からなる積層構造を有する
ものである。
(a) 中心層(A)は、ケン化度99モル%以上のポリ
ビニルアルコールよりなるフィルムの少なくとも片面に
ケイ素酸化物薄膜を有する透明フィルムからなる。
(b) 保護層(B)は、少なくとも片面に透明なケイ
素酸化物薄膜を有する透明なプラスチックフィルムを少
なくとも1層含む透明フィルムからなる。
(c) シーラント層(C)は、シール可能な樹脂から
なる。
(発明の効果) 前記の課題が解決される。すなわち、本発明に係る防
湿フィルムは、透明性にすぐれ、かつ、極めてすぐれた
防湿性を有するものであり、柔軟性があって、強度及び
経済性の面でもすぐれたものである。また、苛酷な条件
で長期間使用されても防湿性能がそこなわれることはな
い。したがって、苛酷な条件下で長時間に亘って使用さ
れる液晶ディスプレイのバックライト用EL素子等のパッ
ケージフィルムなど高度な防湿性能が要求される用途に
好適であり、その工業的価値は極めて大である。
〔発明の具体的説明〕
I.本発明防湿フィルムの構造 本発明の第一の発明に係る防湿フィルムは、前記のよ
うに定義される中心層(A)および中心層(A)の一方
の面に接合された保護層(B)からなる積層構造を有す
るものである。
本発明の第二の発明に係る防湿フィルムは、上記中心
層(A)、中心層(A)の一方の面に接合された保護層
(B)および中心層(A)の他方の面に接合されたシー
トラント層(C)からなる積層構造を有するものであ
る。
(1)中心層(A) 本発明に係る防湿フィルムにおいて、中心層はケン化
度が99モル%以上のポリビニルアルコール(以下、「PV
A」と略記する。)よりなるポリビニルアルコールフィ
ルム(以下、「PVAフィルム」と略記する。)の少なく
とも片面に透明なケイ素酸化物薄膜(以下、「SO薄膜」
と略記する。)が形成されてなる透明フィルムである。
PVAフィルム表面に形成されるSO薄膜中のケイ素酸化物
のケイ素の結合エネルギーは、この薄膜の厚み方向に対
し特異な値を示し、PVAフィルム近傍部において表層部
や中央部より大きなエネルギーを有し、このためPVAフ
ィルム以外のフィルムの表面に形成されたSO薄膜に比
し、特別に高度の防湿性能を発揮するものと推定され
る。
中心層のPVAフィルムは、ケン化度99モル%以上であ
るPVAからなることが必要である。99モル%未満のケン
化度のPVAからなるフィルムでは、このフィルムの表面
にSO薄膜を形成してもすぐれた防湿性能は得られない。
PVAフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムで
もよいが、フィルム強度および防湿性能の点から延伸フ
ィルム、特に3×3倍程度延伸された二軸延伸フィル
ム、が好ましい。
PVAフィルム表面に形成するSO薄膜は、フィルムの片
面だけに形成しても、両面に形成してもかまわないが、
高度の防湿性能を長期に保持させるには、むしろ保護層
を積層すべき面だけに形成した方がよい。
PVAフィルム表面にSO薄膜を形成させるには、一酸化
ケイ素、二酸化ケイ素、またはそれらの混合物等を蒸着
原料とし、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオン
プレーティング法のいずれかの方法によることができ
る。その外にも、蒸着原料としてケイ素、一酸化ケイ
素、二酸化ケイ素、またはそれらの混合物等を用い、酸
素ガスを供給しながら行なう反応蒸着法も採用すること
ができる。
PVAフィルム表面にSO薄膜を形成するのに先立って、
薄膜とフィルムの接着強度を上げるため、アンカーコー
ト剤を使用することも可能である。好適なアンカーコー
ト剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン
系、有機チタン系などの接着促進剤及びポリウレタンポ
リエステル系などの接着剤をあげることができる。又、
アンカーコート剤としてポリエチレン系、ポリエステル
系、ポリアミド系の無溶剤タイプの接着剤を使用しても
よい。
SO薄膜を形成させるPVAよりなる基材フィルムの厚さ
は、5〜400μmの範囲で選ぶことができる。中でも10
〜200μmの範囲で選ぶのが好ましい。
なお、SO薄膜は、10重量%以下であればその中に不純
物としてカルシウム、マグネシウムまたはそれらの酸化
物等が混入していても、目的とする防湿フィルムの防湿
性能の極端な低下は認められない。
PVAよりなる基材フィルムの少なくとも片面に形成さ
せるSO薄膜の厚さは、100〜5000Åの範囲で選ぶのがよ
い。SO薄膜の厚さが100Å未満であると、防湿性能が不
十分であり、また5000Åを越えると、フィルムにカール
が発生して問題となったり、透明な薄増自体に亀裂や剥
離が生じ易いので好ましくない。
なお、この中心層(A)は、前記PVAフィルムの片面
に透明なSO薄膜を有する透明フィルム一枚からなる単層
体、もしくは、PVAフィルムの片面に透明なSO薄膜を有
する透明フィルム2枚以上を透明な接着剤を用いて接着
積層した積層体のいずれであってもよい。この場合に用
いることのできる接着剤としては、ウレタン系、アクリ
ル系、ポリエステル系等のものをあげることができる。
(2)保護層(B) 本発明において、前記中心層(A)の一方の面、好ま
しくはSO薄膜側の面には、少なくとも片面にSO薄膜を有
する別の透明なプラスチックフィルムを少なくとも1層
含む透明なプラスチックフィルムからなる透明層(B)
が積層されている。保護層(B)を構成する上記SO薄膜
を有するプラスチックフィルムのSO薄膜は、引っ掻きや
押し潰しを受けて防湿性能が損われる恐れがあるので、
本発明積層体の外表面側に露出されて位置しないことが
望ましい。
保護層(B)の中に少なくとも1層含まれるSO薄膜を
有する透明なプラスチックフィルムは、特に限定されな
いが、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリエチレ
ンなど、吸湿性の少ないプラスチックよりなる二軸延伸
フィルムを基材フィルムとし、その少なくとも片面にSO
薄膜を設けたフィルムが好んで使用される。
これら基材フィルムの少なくとも片面にSO薄膜を形成
するには、前述のPVAフィルム表面にSO薄膜を形成した
のと同じ方法を採用することができる。
保護層(B)としては、該SO薄膜を有する透明フィル
ムだけの単層体、該フィルムを2枚以上積層した積層
体、或は、これら単層体もしくは積層体のSO薄膜面をSO
薄膜を有しない一般的な透明フィルムで被覆した被覆積
層体のいずれであってもよい。
保護層(B)を、上記の如き積層体、もしくは被覆積
層体とする場合には、積層用接着剤としては、ウレタン
系、アクリル系、ポリエステル系等のものを用いること
ができる。
(3)シーラント層(C) 本発明の第二の発明に係る防湿フィルムにおいては、
中心層(A)の他方の面、好ましくはPVAフィルム側の
面には、ヒートシール、超音波シール、高周波シールは
どの従来公知のシール方法でシール可能なシーラント層
が積層されている。
このシーラント層は、シール可能な樹脂からなり、接
着積層されたフィルムもしくは押出ラミネートされたコ
ート層とすることができる。
特に、ヒートシールは比較的安価な設備により簡単に
シールできることから、好んで使用される。ヒートシー
ル可能なシーラント層としては、低密度ポリエチレン、
エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチ
レン−アクリル酸塩共重合体(アイオノマー)等の一般
的なものを使用できるが、EL素子用パッケージフィルム
等高度な防湿の用途には、シール面からの透湿を防ぐ意
味から、エチレン−アクリル酸共重体(EAA)、エチレ
ン−エチルアクリレート(EEA)が好ましい。
(4)積層構造の形成 保護層(B)、または保護層(B)及びシーラント層
(C)を中心層(A)面に接合する場合には、ウレタン
系接着剤、アクリレ系接着剤、ポリエステル系接着剤な
どを用いるドライラミネート法および押出ラミネート法
など、公知の方法を採用することができる。また、シー
ラント層(C)としてフィルムを接合する場合、このフ
ィルムは未延伸のものおよび一軸または二軸に延伸した
もののいずれであってもよい。シーラント層の積層順序
は、中心層(A)のSO薄膜形成の前でも、後でもかまわ
ない。
包装する内容物によっては、防湿フィルムの性能とし
て防湿性能以外に紫外線遮断能が必要とされるが、本発
明による防湿フィルムでは必要に応じて紫外線遮断性能
を付与することが可能である。例えば、前記中心層
(A)に前記保護層(B)、または保護層(B)及びシ
ーラント層(C)、を接着剤層を介して積層する際に、
接着剤層に紫外線吸収能を有する物質を添加しておくこ
とにより、紫外線遮断能を有する防湿フィルムを得るこ
とができる。使用する紫外線吸収剤は、ベンゾフェノ
ン、ベンゾトリアゾール系など市販のものが1種或は何
種類か組合わせて用いられ、必要とされる紫外線吸収能
によって紫外線吸収剤の使用量が決められる。なお、紫
外線遮断能は、層(A)〜(C)形成フィルムとして紫
外線吸収能を有する物質を配合したものを使用すること
によっても付与することができることはいうまでもな
い。
本発明に係る防湿フィルムの厚さは、強度、柔軟性、
経済性などの点から50〜500μの範囲が好ましく、より
好ましくは100〜300μの厚さである。接着剤層を除いた
各層の厚さの比(A):(B):(C)は、1:1〜10:1
〜10であることが好ましい。
なお、中心層(A)と保護層(B)との間、または中
心層とシーラント層(C)との間に、全体の厚さ調整の
ために、透明なプラスチックフィルムを介在させること
もできる。介在させるプラスチックフィルムは、透明で
あれば特に限定されないが、保護層(B)を形成するプ
ラスチックフィルムと同種のものが好んで使用される。
介在させるプラスチックフィルムの厚さは、防湿フィル
ム全体の厚さとの関係で選択される。
(5)本発明に係る防湿フィルムの具体例 第1〜9図は、この発明のフィルムの構成例を断面略
図で示すものである。
第1〜4図は、本発明の第1発明に係る防湿フィルム
の積層構造例を示すものである。
第1図は、第1発明に係る防湿フィルムの基本構造を
示すものであって、中心層(A)は、PVAフィルム1の
片面に透明なSO薄膜2を有する透明フィルムの単層体か
らなり、そのSO薄膜2側に、透明なプラスチックフィル
ム3の片面に透明なSO薄膜4を有する透明フィルムの単
層体からなる保護層(B)が、SO薄膜4を内側にして接
着剤層aを介して積層された構成となっている。
第2図は、第1発明に係る防湿フィルムの、他の構造
例を示し、中心層(A)のSO薄膜2側に、透明なプラス
チックフィルム3の片面に透明なSO薄膜4を有する透明
フィルムを2枚接着積層した積層体よりなる保護層
(B)が、SO薄膜4を内側にして接着剤層aを介して積
層された構成となっている。
第3図は、第1発明に係る防湿フィルムの他の構造例
を示し、中心層(A)のSO薄膜2側に、透明なプラスチ
ックフィルム3の片面に透明なSO薄膜4を有する透明フ
ィルムのSO薄膜4側に、SO薄膜を有しない透明フィルム
5を接着積層した積層体よりなる保護層(B)が、プラ
スチックフィルム3を内側にして接着剤層aを介して積
層された構成となっている。
第4図は、第1発明に係る防湿フィルムの更に他の構
造例を示し、中心層(A)は、PVAフィルム1の片面に
透明なSO薄膜2を有する透明フィルムを2枚接着積層し
た積層体よりなり、そのSO薄膜2側に、透明なプラスチ
ックフィルム3の片面に透明なSO薄膜4を有する透明フ
ィルム2枚とSO薄膜を有しない透明フィルム5とを順次
接着積層した積層体よりなる保護層(B)が、プラスチ
ックフィルム3を内側にして接着剤層aを介して積層さ
れた構成となっている。
第5〜9図は、本発明の第2発明に係る防湿フィルム
の積層構造例を示すもである。
第5図は、第2発明に係る防湿フィルムの基本構造を
示すものであって、第1図に示す防湿フィルムの中心層
のPVAフィルム1側に、接着剤層aを介してシール可能
な樹脂よりなるシーラント層6が積層された構成となっ
ている。
第6図は、第2発明に係る防湿フィルムの他の構造例
を示し、第2図に示す防湿フィルムの中心層のPVAフィ
ルム1側に、接着剤層aを介してシール可能な樹脂より
なるシーラント層6が積層された構成となっている。
第7図は、第2発明に係る防湿フィルムの更に他の構
造例を示し、第3図に示す防湿フィルムの中心層のPVA
フィルム1側に、接着剤層aを介してシール可能な樹脂
よりなるシーラント層6が積層された構成となってい
る。
第8図は、第2発明に係る防湿フィルムの更に他の構
造例を示し、中心層(A)は、PVAフィルム1の片面に
透明なSO薄膜2を有する透明フィルムよりなり、そのSO
薄膜2側に、透明なプラスチックフィルム3の片面に透
明なSO薄膜4を有する透明フィルム2枚とSO薄膜を有し
ない透明フィルム5とを順次接着積層した積層体よりな
る保護層(B)が、プラスチックフィルム3を内側にし
て接着剤層aを介して積層され、中心層(A)のPVAフ
ィルム1側には、接着剤層aを介してシール可能な樹脂
よりなるシーラント層6が積層された構成となってい
る。
第9図は、第2発明に係る防湿フィルムの更に他の構
造例を示し、第4図に示す防湿フィルムの中心層のPVA
フィルム1側に、接着剤層aを介してシール可能な樹脂
よりなるシーラント層6が積層された構成となってい
る。
(6)本発明に係る防湿フィルムの機能の解析 上記の構成を有するこの発明による防湿フィルムの機
能は、下記の通りである。この記載は発明のより良い理
解のためであり、発明の範囲を限定するものではない。
この発明の防湿フィルムにおいては、中心層(A)、
具体的には中心層(A)のPVAフィルム表面に形成したS
O薄膜が保護層(B)、すなわちPVAフィルムとは別のフ
ィルム表面にSO薄膜を形成したプラスチックフィルムを
含む積層で保護することにより、高温領域においても極
めてすぐれた防湿性が実現される。
すなわち、一般に、PVAフィルム表面に形成したSO薄
膜のケイ素の結合エネルギーは、フィルム近傍部におい
て表層部や中央部より大きなエネルギーを持ち、かかる
SO薄膜を有するPVAフィルムは常温下ではすぐれた防湿
性能を有する。しかし、高温、多湿の雰囲気下では、PV
Aフィルムが吸湿し、寸法変化を起こすことにより表面
のSO薄膜が破壊され、せっかくの防湿性がそこなわれ
る。この問題はPVAフィルムを保護フィルムで保護する
ことによって解決されようが、通常のフィルム、或はPV
DCフィルム、PVDCをコーティングしたフィルム等では高
湿時の防湿性能の劣化が著しくて、50℃以上ではPVAフ
ィルムの吸湿防止効果はほとんど期待できない。これに
対して、本発明で保護層(B)として使用するケイ素酸
化物薄膜を有するプラスチックフィルムを含む透明フィ
ルムは、高温領域での防湿性能の劣化がごくわずかであ
るため、高温領域でも中心層の透明フィルムを有効に保
護して、SO薄膜を有するPVAフィルムのすぐれた防湿性
能が高温でも保持できると考えられる。
II.実験例 以下の実験例は、本発明を実施例にもとづいて、また
比較例と対照させながら詳細に説明するものである。本
発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定
されるものではない。
なお、以下の諸例において、得られたフィルムの透湿
度及び透明性は、次の方法によって測定したものであ
る。また、ケイ素酸化物の透明な薄膜の厚さは、水晶式
膜厚計によって測定した。
(イ)フィルムの透湿度(gr/m2・24H): 所定の防湿フィルムから100×100mmの3方シールの袋
を作成し、袋の中に防湿剤として顆粒状の無水塩化カル
シウム30grを充填したのち、残りの1辺をシールする事
によりサンプルとする。該サンプルを夫々10個ずつ40℃
×90%RH、50℃×90%RH、60℃×90%RHの雰囲気下に約
500時間置き、全体の重量変化から防湿フィルムの透湿
度を求めた。
(ロ)フィルムの透明性(%): 日立製作所製の分光光度計を用いて可視光におけるフ
ィルムの光線透過率を測定し、500nmにおける光線透過
率をフィルムの透明性とした。
実施例1 ケン化度99.9モル%のPVAフィルム(延伸倍率3×3
倍、二軸延伸、厚さ12μ)の表面に、5×10-5Torrの真
空下、電子ビーム加熱方式で、純度99.9%の一酸化ケイ
素(SiO)を加熱蒸発させて、PVA基材フィルムの片面
に、厚さ1000Åのケイ素酸化物の透明な薄膜を形成させ
て、透明フィルム(A)を得た。
一方、ポリエチレンテレフタレートのフィルム(以
下、「PETフィルム」と略記する。)(延伸倍率3×3
倍、二軸延伸、厚さ12μ)の片面に、上記と同じ方法に
より厚さ1000Åのケイ素酸化物を形成させて、透明なプ
ラスチックフィルム(B)を得た。
フィルム(B)のSO薄膜面と、フィルム(A)のSO薄
膜面同志をウレタン系接着剤を用いて積層して、第1図
に示すような透明な2層構成の積層プラスチックフィル
ムを得た。
得られたフィルムについて、前述の方法により透湿度
および透明性を測定した。測定結果は表1に示す通りで
あった。
実施例2 実施例1に記載の例において、ケン化度が99.9モル%
のPVAフィルムにかえて、ケン化度が99.0モル%のPVAフ
ィルムを用いた以外は、同例におけると同様の手法によ
り2層構成の透明なプラスチックフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例3 実施例1に記載の例において、PVAフィルム表面のSO
薄膜の厚さを200Åとした以外は、同例におけると同様
の手法により2層構成の透明なプラスチックフィルムを
得た。
得られたフィルムについて実施例1におけると同様の
評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例4 実施例1に記載の例において、透明なプラスチックフ
ィルム(B)に代えて、この透明なプラスチックフィル
ム(B)2枚をウレタン系接着剤によって積層した積層
体を用いたほかは、同例におけると同様にして、第2図
に示すような、3層構成の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例5 実施例1において得られた2層構成の積層プラスチッ
クフィルムのPVAフィルム面の側に、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体フィルム(以下「EVAフィルム」と略記す
る。無延伸、厚さ60μm)をウレタン系接着剤を用いて
積層して、第5図に示すような、シーラント層を接合し
た3層構成の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例6 実施例2において得られた2層構成の積層プラスチッ
クフィルムのPVAフィルム面の側に、EVAフィルム(無延
伸、厚さ60μm)をウレタン系接着剤を用いて積層し
て、第5図に示すような、シーラント層を接合した3層
構成の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例7 実施例3において得られた2層構成の積層プラスチッ
クフィルムのPVAフィルム面の側に、PVAフィルム(無延
伸、厚さ60μm)をウレタン系接着剤を用い積層して、
第5図に示すような、シーラント層を接合した3層構成
の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
実施例8 実施例4において得られた2層構成の積層プラスチッ
クフィルムのPVAフィルム面の側に、EVAフィルム(無延
伸、厚さ60μm)をウレタン系接着剤を用い積層して、
第6図に示すような、シーラント層を接合した4層構成
の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例1 実施例1に記載の例において、SO薄膜を有するPVAフ
ィルム(フィルム(A))の保護フィルムとして、SO薄
膜を有しないPETフィルムを使用した以外は、同例にお
けると同様の手法で2層構成の透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は、表1に示す通りであっ
た。
比較例2 実施例1に記載の例において、SO薄膜を有するPVAフ
ィルムにかえて、SO薄膜を有しないPVAフィルムを用い
た以外は、同例におけると同様の手法により2層構成の
透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1と同様の評価を
行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例3 実施例1に記載の例において、ケン化度が99.9モル%
のPVAフィルムにかえてケン化度が94.0モル%のPVAフィ
ルムを用いた以外は、同例におけると同様の手法により
2層構成の透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例4 実施例1に記載の例において、中心層のPVAフィルム
にかえて、PETフィルムを使用した以外は、同例におけ
ると同様の手法により2層構成の透明なフィルムを得
た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例5 実施例5に記載の例において、SO薄膜を有するPVAフ
ィルム(フィルム(A))の保護フィルムとして、SO薄
膜を有しないPETフィルムを使用した以外は、同例にお
けると同様の手法で3層構成の透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は、表1に示す通りであっ
た。
比較例6 実施例5に記載の例において、SO薄膜を有するPVAフ
ィルムにかえて、SO薄膜を有しないPVAフィルムを用い
た以外は、同例におけると同様の手法により3層構成の
透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1と同様の評価を
行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例7 実施例5に記載の例において、ケン化度が99.9モル%
のPVAフィルムにかえてケン化度が94.0モル%のPVAフィ
ルムを用いた以外は、同例におけると同様の手法により
3層構成の透明なフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例8 実施例5に記載の例において、中心層のPVAフィルム
にかえて、PETフィルムを使用した以外は、同例におけ
ると同様の手法により3層構成の透明なフィルムを得
た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表1に示す通りであった。
比較例9 ポリ塩化三フッ化エチレンフィルム(日東電工製「ニ
トフロン」、シーラント付、総厚さ250μ)を用い、実
施例1におけると同様の評価を行った。測定結果は表1
に示す通りであった。
実施例9〜10 実施例1において用いたのと同種のフィルム(A)、
すなわちPVAフィルムの片面にSO薄膜を有する透明フィ
ルム(1枚)、を中心層とし、この中心層のSO薄膜面の
側に、同例において用いたのと同種のフィルム(B)、
すなわちPETフィルムの片面にSO薄膜を有する透明フィ
ルム2枚(実施例9)または3枚(実施例10)およびSO
薄膜を有しないPETフィルム(2軸延伸、厚さ100μm)
をウレタン系接着剤を用いて順次積層した積層体を保護
層として接合し、また前記中心層のPVAフィルム面の側
には、エチレン−エチルアクリレート共重合体フィルム
(以下「EEAフィルム」と略記する。無縁し、厚さ40μ
m)をウレタン系接着剤を用いて積層して、第8図に示
すような構成の、夫々シーラント層を接合した2種類の
透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
実施例11 実施例1において用いたのと同種のフィルム(A)を
中心層とし、この中心層のSO薄膜面の側に、PETフィル
ム(2軸延伸、厚さ100μm)の片面にSO薄膜を有する
透明フィルムを保護層として、SO薄膜面同志が接する如
くにウレタン系接着剤を用いて接合し、また前記中心層
のPVAフィルム面の側には、実施例9におけると同様に
してEEAフィルムよりなるシーラント層を接合し、第5
図に示すような構成の透明な積層フィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1におけると同様
の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであった。
実施例12〜14 実施例9に記載の例において、中心層のSO薄膜の厚さ
を200μmとした(実施例12)、保護層のSO薄膜の厚さ
を200μmとした(実施例13)、またはシーラント層の
厚さを80μmとした(実施例14)ほかは同例におけると
同様にして、第8図に示すような構成の、夫々シーラン
ト層を接合した3種類の透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
実施例15〜16 実施例9に記載の例において、PVAフィルムの片面にS
O薄膜を有する透明フィルム2枚(実施例15)、または
3枚(実施例16)をウレタン系接着剤を用いて積層した
ものを中心層としたほかは、同例におけると同様にし
て、第9図に示すような構成の、夫々シーラント層を接
合した2種類の透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
実施例17〜18 実施例9に記載の例において、片面にSO薄膜を有する
PETフィルムに代えて、片面にSO薄膜を有するポリプロ
ピレンフィルム(以下「OPPフィルム」と略記する。2
軸延伸、厚さ20μm)を用いた(実施例17)、またはSO
薄膜を有しないPETフィルムに代えて、SO薄膜を有しな
いOPPフィルム(2軸延伸、厚さ40μm)を用いた(実
施例18)ほかは、同例におけると同様にして、第8図に
示すような構成の、夫々シーラント層を接合した2種類
の透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
実施例19〜20 実施例9に記載の例において、中心層のSO薄膜の厚さ
を50μmとした(実施例19)、保護層のSO薄膜の厚さを
50μmとした(実施例13)ほかは同例におけると同様に
して、第8図に示すような構成の、夫々シーラント層を
接合した2種類の透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
比較例10〜11 実施例9に記載の例において、PVAフィルムの片面にS
O薄膜を有する透明フィルムよりなる中心層に代えて、P
ETフィルム(2軸延伸、厚さ12μm)の片面にSO薄膜を
有する透明フィルム(比較例10)、またOPPフィルム
(2軸延伸、厚さ20μm)の片面にSO薄膜を有する透明
フィルム(比較例11)、を中心層としたほかは同例にお
けると同様にして、第8図に示すような構成の、夫々シ
ーラント層を接合した2種類の透明な積層フィルムを得
た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
比較例12〜13 実施例9に記載の例において、SO薄膜を有しないPVA
フィルムを中心層とした(比較例12)、またはSO薄膜を
有しないPETフィルムのみからなる透明フィルムを保護
層とした(比較例13)ほかは同例におけると同様にし
て、第8図に示すような構成の、夫々シーラント層を接
合した2種類の透明な積層フィルムを得た。
得られた夫々のフィルムについて、実施例1における
と同様の評価を行った。測定結果は表2に示す通りであ
った。
表1および2から、本発明に係る防湿フィルムは、比
較例のフィルムに較べて、高温多湿の条件下でも優れた
防湿性能を発揮することが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】 第1〜9図は、いずれも本発明による防湿フィルムの具
体例を示す断面図である。 A……中心層、B……保護層、C……ヒートシーラント
層、1……ポリビニルアルコールフィルム、2,4……ケ
イ素酸化物薄膜、3,5……保護層用フィルム、a……接
着剤層。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−184127(JP,A) 特開 平1−95038(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 9/00 B32B 7/00 - 7/14

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の通りに定義される中心層(A)およ
    び中心層の一方の面に接合された保護層(B)からなる
    積層構造を有する防湿フィルム。 (a) 中心層(A)は、ケン化度99モル%以上のポリ
    ビニルアルコールよりなるフィルムの少なくとも片面に
    ケイ素酸化物薄膜を有する透明フィルムからなる。 (b) 保護層(B)は、少なくとも片面に透明なケイ
    素酸化物薄膜を有する透明なプラスチックフィルムを少
    なくとも1層含む透明フィルムからなる。
  2. 【請求項2】ケイ素酸化物薄膜が真空蒸着法、スパッタ
    リング法、イオンプレーティング法のいずれかによって
    形成された請求項1記載の防湿フィルム。
  3. 【請求項3】中心層のポリビニルアルコールフィルムの
    厚さが5〜400μmの範囲、ケイ素酸化物薄膜の厚さが1
    00〜5000Åの範囲、で選ばれ、全体の厚さが10〜500μ
    mの範囲である、請求項1または2記載の防湿フィル
    ム。
  4. 【請求項4】下記の通りに定義される中心層(A)、中
    心層の一方の面に接合された保護層(B)および中心層
    の他方の面に接合されたシーラント層(C)からなる積
    層構造を有する防湿フィルム。 (a) 中心層(A)は、ケン化度99モル%以上のポリ
    ビニルアルコールよりなるフィルムの少なくとも片面に
    ケイ素酸化物薄膜を有する透明フィルムからなる。 (b) 保護層(B)は、少なくとも片面に透明なケイ
    素酸化物薄膜を有する透明なプラスチックフィルムを少
    なくとも1層含む透明フィルムからなる。 (c) シーラント層(C)は、シール可能な樹脂から
    なる。
  5. 【請求項5】ケイ素酸化物薄膜が真空蒸着法、スパッタ
    リング法、イオンプレーティング法のいずれかによって
    形成された請求項4記載の防湿フィルム。
  6. 【請求項6】中心層のポリビニルアルコールフィルムの
    厚さが5〜400μmの範囲、ケイ素酸化物薄膜の厚さが1
    00〜5000Åの範囲、保護層とシーラント層との合計厚さ
    が5〜400μmの範囲で選ばれ、全体の厚さが10〜500μ
    mの範囲である、請求項4または5記載の防湿フィル
    ム。
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