JP2818284B2 - ポリプロピレンの成形物およびその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレンの成形物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はポリプロピレンの成形物に関する。詳しく
は、特定の結晶構造を有するポリプロピレンの成形物に
関する。
〔従来技術〕
シンジオタクチックポリプロピレンは従来より知られ
ていたが、従来のシンジオタクチックポリプロピレンは
立体規則性の低いものであり、これに対しJ.A.EWEN(J.
Am.Chem.Soc.,1988,110,6255−6256)らによって極めて
立体規則性の良好なシンジオタクチックポリプロピレン
が得られることが示された。この立体規則性の良好なポ
リプロピレンの結晶構造としては平面ジグザグ構造とラ
セン構造のものが知られていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
高度に立体規則性のシンジオタクチックポリプロピレ
ンの他の安定な結晶構造が発見されれば物性の面で新た
な特徴が期待される。
〔課題を解決するための手段〕 本発明者らは、高度に立体規則性のシンジオタクチッ
クポリプロピレンの新たな安定な結晶構造について鋭意
探索し特定の結晶構造が安定であることを見出し本発明
を完成した。
即ち、本発明は実質的にシンジオタクチック構造を有
するポリプロピレンを成形してなるX線回折によって定
められた格子定数がa=5.72、b=7.64、c=11.6Å、
α=73.1゜、β=88.8゜、γ=112.0゜である三斜晶で
あるポリプロピレンの成形物である。本発明はまたその
製造方法であり、質実的にシンジオタクチック構造を有
するポリプロピレンを溶融成形した後急冷して得た成形
物を延伸した後、炭化水素化合物の蒸気で処理すること
を特徴とする新規な結晶構造のポリプロピレンの成形物
の製造方法である。
本発明についてその製造方法の一例を示すことでさら
に説明する。最も簡便には後述の方法で合成できる高立
体規則性のシンジオタクチック構造のポリプロピレンを
溶融成形した後、急冷して成形物とし、ついで延伸する
ことで実質的にトランスジグザグ構造の結晶構造からな
るポリプロピレンの成形物とすることができ、この成形
物を炭化水素溶媒の蒸気で処理することで製造すること
が出来る。
シンジオタクチックポリプロピレンとしては古くより
その存在は知られている従来のバナジウム化合物とエー
テルおよび有機アルミニウムからなる触媒で低温重合し
て得た物を精製して用いたのでは充分な性能を成形物を
得ることができず、これらの方法によるものは後述の高
立体規則性のシンジオタクチックポリプロピレンとは異
なり常温の炭化水素溶分として精製される。従ってこの
ようなものは本発明の成形物に用いられない。J.A.EWEN
らにより初めて発見された(J.Am.Chem.Soc.,1988,110,
6255−6256)非対称的な配位子を有する遷移金属化合物
とアルミノキサンからなる触媒によって得られるシンジ
オタクチックペンタッド分率が0.7を越えるようなタク
ティシティーの良好なポリプロピレンが好ましく利用さ
れる。
本発明において実質的にシンジオタクチック構造であ
るポリプロピレンを製造するための触媒としては、上記
文献に記載された化合物が例示できるが、異なる構造の
触媒であっても、プロピレンの単独重合を行ったときシ
ンジオタクチックペンタッド分率が0.7以上のポリプロ
ピレンを製造することができる触媒係であれば利用でき
る。
非対称な配位子を有する遷移金属化合物としては上記
文献に記載されたイソプロピル(シクロペンタジエニル
−1−フルオレニル)ハフニウムジクロリド、あるいは
イソプロプル(シクロベンタジエニル−1−フルオレニ
ル)ジルコニウムジクロリドなどが例示され、またアル
ミノキサンとしては、 (式中Rは炭素数1〜3の炭化水素残基。)で表される
化合物が例示でき、特にRがメチル基であるメチルアル
ミノキサンでnが5以上、好ましくは10以上のものが利
用される。上記遷移金属化合物に対するアルミノキサン
の使用割合としては10〜1000000モル倍、通常50〜5000
モル倍である。また重合条件については特に制限はなく
不活性媒体を用いる溶媒重合法、或いは実質的に不活性
媒体の存在しない塊上重合法、気相重合法も利用でき
る。重合温度としては−100〜200℃、重合圧力としては
常圧〜100kg/cm2で行うのが一般的である。好ましくは
−100〜100℃、常圧〜50kg/cm2である。またシンジオタ
クチック構造が実質的に失なわれない程度に小量の他の
オレフィンとの共重合体も利用できる。
ここで共重合に用いる他のオレフィンとしてはエチレ
ンあるいは炭素数4〜20のα−オレフィンが例示でき具
体的にはブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オ
クテン−1、4−メチルペンテン−1などが例示され
る。プロピレンに対する重合の割合としては通常20wt%
以下、より好ましくは10wt%以下の他のオレフィンが共
重合する条件で重合される。
成形物として利用するためにはプロピレンの単独重合
体ではシンジオタクチックペンタッド分率(A.Zambelli
ら Macromolecules vol 6 687(1973),同 vol 8 925
(1975))が0.7以上であるのが好ましく、0.7より小さ
いと実質的に完全なトランスジザグ構造の結晶構造を有
するポリプロピレン成形物とすることができず、より好
ましくは0.75以上である。また共重合体を用いる場合に
は、13C−NMRでテトラメチルシランを基準として約20.2
ppmに観測されるピーク強度が約19〜22ppmに観測される
プロピレンの全メチル基の強度の0.3以上、より好まし
くは0.5以上である。
この13C−NMRで測定する連鎖分布は短周期での構造の
乱れの尺度であるが物性を良好にするためには長周期で
の構造の乱れも少ないことが必要であり、そのため尺度
として沸騰n−ペンタン可溶分があり、その値として10
wt%以下であることが好ましい。ここで沸騰n−ペンタ
ン可溶分は、パウダー状のポリマーをソックレー抽出器
に入れ沸騰n−ペンタンで6時間抽出し抽出されたポリ
マーの抽出前のポリマーに対する割合として算出され
る。
また上記触媒系でも重合に際して実質的に一段重合で
行うことで分子量分布が狭く135℃でゲルパーミエーシ
ョンクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数
平均分子量の比(以下、MW/MNと略記する)が通常1.5〜
3.5程度であるポリマーが得られるが、2種の遷移金属
化合物(金属として例えばジルコニウムとハフニウムな
ど2種類のものを用いると効果的である。)を用いた
り、分子量の異なるものを2種以上混合するなどして3.
5以上であるような広い分子量分布のものを製造するこ
とができ、どの様な分子量分布を有するものも本発明に
利用することができる。好ましい分子量としては、135
℃テトラリン溶液で測定した極限粘度として0.5〜20.0d
l/g程度であるのが一般的である。
上記の実質的にシンジオタクチック構造のポリプロピ
レンは、加熱溶融し特定の形状に成形される。成形方法
としては特に制限は無く、押出成形法、射出成形法など
が採用できる。
本発明において、好ましくは成形体を溶融した状態か
ら100℃/min以上の速度で急冷することが行われ、この
ようなものを用いることで延伸により簡単に実質的にト
ランスジグザグ構造とすることができる。延伸100℃以
下、より好ましくは50℃以下の比較的低温で行うことが
好ましく、100℃を越える温度で行うと結晶構造が変化
し好ましくない。また冷却をゆっくり行うと他の結晶形
が生じ、高度の延伸を行わないと実質的にトランスジグ
ザグ構造とすることが困難となる。成形に際して結晶化
核剤を利用することも勿論可能であり、また延伸方法と
しても特に制限はなく通常の1軸あるいは2軸の延伸が
採用でき、他にロール延伸のような方法であってもよ
い。延伸倍率としては好ましくは3.0倍以上であり、通
常3.0〜100倍程度である。こうして得られた成形物はつ
いで炭化水素化合物の蒸気で処理される。炭化水素化合
物としては炭素数5〜25の炭化水素化合物、特に好まし
くは炭素数6〜25の芳香族炭化水素化合物が挙げられ、
特にベンゼンおよびその水素の一部または全部がアルキ
ル基で置換したものが好ましく用いられ、具体的には、
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメ
ン、メジチレン、シメンなどが例示される。
この蒸気での処理は通常100℃以下好ましくは50℃以
下で行われ、処理時間としては数分〜数日、好ましくは
1時間〜10日程度である。こうして製造された新規な結
晶構造からなる成形物(実施例1)のX線回折の円筒カ
メラで撮影した繊維写真を第1図に示す。X線回折の測
定結果から決定した結晶構造を第2図に示す。
本発明のポリプロピレンの成形物の結晶構造は格子定
数a=5.72、b=7.64、c=11.6Å、α=73.1゜、β=
88.8゜、γ=112.0゜である三斜晶系の結晶である。
〔実施例〕
以下に実施例を示しさらに本発明を説明する。
実施例1 定法にしたがって合成したイソプロピルシクロペンタ
ジエニル−1−フルオレンをリチウム化し、四塩化ジル
コニウムと反応し再結晶することで得たイソプロピル
(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニ
ウムクロリド0.2gと東ソー・アクゾ(株)製メチルアル
ミノキサン(重合度16.1)30gを用い、内容積200のオ
ートクレーブでトルエン80加え、重合圧力3kg/cm2
G、20℃で2時間重合し、ついでメタノールとアセト酢
酸メチルで脱灰処理し塩酸水溶液で洗浄し、ついで濾過
して5.6kgのシンジオタクチックポリプロピレンを得
た。このポリプロピレンは13C−NMRによればシンジオタ
クチックペンタッド分率は0.935であり、135℃テトラリ
ン溶液で測定した極限粘度ηは1.45dl/g、1,2,4−トリ
クロロベンゼンで測定したMW/MNは2.2であった。このポ
リプロピレンにステアリン酸カルシウムと2,6−ジ−t
−ブチルフェノールをそれぞれ10/10000と、10/10000の
タルクを加え造粒した後、40mmの押出機で14本穴のダイ
で温度220℃、スクリュー回転数64rpmで紡糸した。ダイ
からでたストランドは−10℃のブラインに導入して急冷
した。得られた繊維の太さは370 D/14本であり引張試験
をしたところ最高強度は480g、伸びは680%であった。
また25℃で10倍に延伸したものの最高強度は780g、伸び
は25%であり極めて透明性の良好なものであった。この
延伸糸を40℃のベンゼン蒸気で24時間処理したものの物
性は最高強度は820g、伸びは20%であった。この糸のX
線回折の円筒カメラで撮影した繊維写真を第1図に示
す。X線回折の測定結果から決定した結晶構造を第2図
に示す。
〔発明の効果〕
本発明の成形物は強度にすぐれまた透明性も良好であ
り工業的に極めて価値がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のポリプロピレン成形物の一例である実
施例1の25℃で10倍に延伸し、さらに40℃のベンゼン蒸
気で処理した繊維の、円筒カメラで撮影したX線回折像
(写真)であり、第2図は第1図のX線回折の結果より
求めた繊維の結晶構造を表す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29K 23:00 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B29C 55/00 - 55/30 B29C 71/00 D01F 6/06,6/46 D01F 11/06 C08J 7/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的にシンジオタクチック構造を有する
    ポリプロピレンを成形してなるX線回折によって定めら
    れた格子定数がa=5.72、b=7.64、c=11.6Å、α=
    73.1゜、β=88.8゜、γ=112.0゜である三斜晶である
    ポリプロピレンの成形物。
  2. 【請求項2】実質的にシンジオタクチック構造を有する
    ポリプロピレンを溶融成形した後急冷して得た成形物を
    延伸した後、炭化水素化合物の蒸気で処理することを特
    徴とする新規な結晶構造のポリプロピレンの成形物の製
    造方法。
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