JP2817879B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ゴム弾性、柔軟性、耐熱性、耐オゾン性及
び成形加工性に優れた熱可塑性エラストマー(以下「TP
E」と略称する)に関するものである。
近年、ゴム的な軟質材料であって、加硫工程を要せ
ず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有するTPEが、
自動車部品、家電部品、医療、食品用機器部品、電線、
雑貨等の分野で注目されている。
〔従来の技術〕
このようなTPEには現在、ポリオレフィン系、ポリウ
レタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の種々の
形式のポリマーが開発され、市販されている。
しかしながら、これ等TPEは、ゴムとしての広い用途
分野の一つである加硫ゴムの用途に於いて品質面で加硫
ゴムの水準には達しておらず、従って、加硫ゴム分野で
の利用は極めて限定されているのが実情である。
例えば、ポリオレフィン系TPEは比較的安価で、耐熱
性や耐候性にすぐれている反面柔軟性に劣り、最も柔軟
なものでもJIS-A硬度(JIS-K-6301)で70程度であり、
一般の加硫ゴムの硬度60に比べて未だ硬すぎる欠点を有
する。
同様に、ポリエステル系TPEやポリウレタン系TPEも市
販品中最も柔軟なものでもJIS-A硬度が70〜90程度と硬
く、加硫ゴムの用途に適さないものである。
また、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロックポ
リマー(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレン(SI
S)ブロックポリマー等のポリスチレン系TPEは、前記の
TPEに比べてすぐれた柔軟性を有するが、ポリマー内の
ポリブタジエンブロックあるいはポリイソプレンブロッ
クに二重結合を有しているため耐熱老化性(熱安定
性)、耐候性及び耐オゾン性に問題がある。
例えば、スチレン系エラストマーとポリエステル系エ
ラストマーの配合物として、スチレン系エラストマーに
SBSやSISを用いたものが特開昭50-82162号公報に紹介さ
れているが、これ等は耐オゾン性や熱安定性等に十分な
性能を有するものではなかった。
一方、スチレンと共役ジエンのブロック共重合体の分
子内二重結合を水素添加することによって熱安定性の向
上したブロック共重合体を得ることができることはよく
知られている。このようなブロック共重合体をゴム成分
として用い、これとポリオレフィン樹脂、オイル、フィ
ラー等を配合したいわゆるスチレン系TPEは、オレフィ
ン系TPEに比べてすぐれた柔軟性加工性等を有するもの
であるが、まだ加硫ゴムに比べてゴム弾性の点で劣って
いる。
なお、ここで「ゴム弾性」とは、特に引張り特性に於
いて降伏点のような変曲点が出来るだけ少なく、かつあ
る硬度に於いて従来のTPEに比べて、高モジュラス(例
えば、300%伸長時の応力が高いこと)であることを意
味するものである。つまり、このような特性を有するTP
Eは加硫ゴムに近いゴム弾性を示すものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者等は、柔軟性とゴム弾性に秀れ、かつ良好な
耐熱性、耐オゾン性および成形加工性を有するTPEを開
発すべく鋭意検討した。
〔課題を解決するための手段〕
その結果、特定のモノビニル置換芳香族炭化水素と共
役ジエンとのブロック共重合体の水素添加誘導体、ゴム
用軟化剤及びポリエステル系エラストマーを配合するこ
とにより、柔軟性、耐熱性、耐オゾン性および成形加工
性に秀れ、かつ加硫ゴムに匹敵するゴム弾性を有するTP
Eが得られることを見い出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、成分Aとして、一般式 AB−
A)n又はA−BA−B)n〔但し、式中のAはモノ
ビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロック、Bはその
中のオレフィン型二重結合の80%以上が水素添加されて
いる共役ジエンのエラストマー性重合体ブロックであ
り、nは1〜5の整数〕で表されるブロック共重合体の
水素添加誘導体30〜70重量%と、成分Bとして、ゴム用
軟化剤70〜30重量%の合計100重量部に対し、さらに、
成分Cとして、ポリエステル系エラストマー20〜150重
量部を配合してなることを特徴とする熱可塑性エラスト
マーである。
本発明で用いられる上記成分Aは、上記一般式で表わ
されるブロック共重合体の水素添加誘導体である。
重合体ブロックAを構成する単量体のモノビニル置換
芳香族炭化水素としては、種々のものが挙げられるが、
特にスチレン、α−メチルスチレンが好適である。ま
た、重合体ブロックBの共役ジエン単量体としては、ブ
タジエンもしくはイソプレンが好適で、それら両者の混
合物でもよい。ブタジエンを単一の共役ジエン単量体と
して使用して重合体ブロックBを形成する場合には、エ
ラストマー性を保持する目的で、ポリブタジエンにおけ
るミクロ構造中の1,2−ミクロ構造が20〜50%となる重
合条件を採用することが好ましく、特に1,2−ミクロ構
造が35〜45%のものが適している。また、重合体ブロッ
クBの前記共重合体中に占める割合は、少なくとも65重
量%にすることが好ましい。
上記重合体ブロックAの平均分子量は5000から12500
0、ブロックBは15000から250000の範囲にあることが好
ましい。
上記一般式のブロック共重合体の水素添加誘導体の製
造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表
的な方法としては、例えば特公昭42-8704号、同43-6636
号公報等に記載された方法がある。
その製造に際しての水素添加において、重合体ブロッ
クB中のオレフィン型二重結合の80%以上が水素添加さ
れ、中でも重合体ブロックA中の芳香族性不飽和結合の
25%以下が水素添加されたものが好適である。このよう
なブロックポリマーとしては、市販のポリマーである
「KRATON G」(シエルケミカル社製商品名)等を使用で
きる。
本発明で使用できる上記成分Bのゴム用軟化剤として
は、鉱物油系もしくは合成樹脂系が好適である。
鉱物油系軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラ
フィン鎖三者の組み合わせ混合物であって、パラフィン
鎖炭素数が全炭素中の50%以上を占めるものがパラフィ
ン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナ
フテン系、また芳香族炭素数が30%より多いものが芳香
族系と呼ばれて区分されている。これらの中で、本発明
の成分Bとして好ましい鉱物油系軟化剤は、ナフテン系
及びパラフィン系であり、芳香族炭素数が30%以下のも
のである。芳香族系は、本発明で用いる上記成分Aとの
分散上あまり好ましくない。
性状的には、37.8℃動粘度が20〜500cst、流動点が−
10〜−15℃および引火点(COC)が170〜300℃の如きも
のである。
合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポ
リブタジエン等が使用可能であるが、鉱物油系軟化剤の
方が好ましい。
本発明で使用される上記成分Cのポリエステル系エラ
ストマーとしては、 芳香族ポリエステルブロック(a)と非芳香族ポリエ
ステルブロック(b)とからなるブロック共重合体、 芳香族ポリエステルブロック(a)とポリエーテルブ
ロック(c)とからなるブロック共重合体、 芳香族ポリエステルブロック(a)と前記ブロック
(b)およびブロック(c)とからなるブロック共重合
体等がある。
芳香族ポリエステルブロック(a)とは、芳香族ジカ
ルボン酸とジオールとが縮合した構造のポリエステルオ
リゴマーであり、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ
ー、ポリプロピレンテレフタレートオリゴマー、ポリテ
トラメチレンテレフタレートオリゴマー、ポリペンタメ
チレンテレフタレートオリゴマー等が例示できる。
非芳香族ポリエステルブロック(b)とは、(1)脂
肪族または脂環式ジカルボン酸と脂肪族ジオールとが縮
合したポリエステルオリゴマー、(2)脂肪族ラクトン
または脂肪族モノオールカルボン酸から合成されたポリ
エステルオリゴマーであり、前者(1)の例として、1,
4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサン
ジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4′−ジカルボン
酸等の脂環式ジカルボン酸またはコハク酸、シュウ酸、
アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸のうち
の一種以上とエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコ
ール等のジオールのうちの一種以上とを縮合した構造の
ポリエステルオリゴマーがあげられ、後者(2)の例と
してε−カプロラクトン、ω−オキシカプロン酸等から
合成されたポリカプロラクトン系ポリエステルオリゴマ
ーがあげられる。
ポリエーテルブロック(c)としては、例えば、ポリ
(アルキレンオキシド)グリコールなどの平均分子量が
約400〜約6000のポリエーテルオリゴマーがあげられ
る。ここで、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールと
しては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2および1,3
プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレ
ンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシ
ド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシ
ドのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシド
とテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体
などが挙げられる。
ポリエステルエラストマー(成分C)の製造方法とし
ては、その成分からなるオリゴマーのブロックをそれぞ
れ先に合成してから、さらにブロック間をエステル結合
により縮合して製造しても良いし、別の方法として、例
えば、ブロック(b)を先に重合しておいて、さらにブ
ロック(a)の成分単量体と混合して縮合する方法等も
とり得る。
このようなポリエステル系エラストマーとしては、市
販のポリマーである「ペルプレンP」または「同S」
(東洋紡績社製商品名)や「ハイトレル」(東レ・デュ
ポン社製商品名)などがある。
本発明のTPEを構成する各成分の配合割合は、成分A
が成分Aと成分Bの合計量に対して30〜70重量%、好ま
しくは35〜60重量%である。この範囲未満では得られる
TPEのゴム弾性、耐熱性が劣り、一方、この範囲を超え
るものは柔軟性、成形加工性が悪化する。また、成分B
は同じく70〜30重量%、好ましくは65〜40重量%であ
る。この範囲を超えるものはゴム弾性、耐熱性が劣り、
一方、この範囲未満では柔軟性、成形加工性が悪化す
る。また、成分Cは成分Aと成分Bの合計100重量部に
対して20〜150重量部、好ましくは30〜100重量部であ
る。この範囲未満では成形加工性が劣り、一方、この範
囲を超えた場合は柔軟性が失われる。
本発明は、TPEを得る際にこれらの必須成分を所定量
含有させることを特徴としているが、本発明TPEの基本
的性能をそこなわない範囲でオレフィン系ポリマー、ス
チレン系ポリマー等の必須成分以外のポリマーまたは炭
酸カルシウム、タルク、マイカ、カーボンブラック等の
無機フィラーなどの付加的成分を加えることができる。
さらに目標の品質に合わせて酸化防止剤、紫外線吸収
剤、スリップ剤、流動性改良剤(ポリエチレン系WAX
等)などの添加剤を配合できる。また、成分Aと成分C
の相溶化をさらに高める目的で相溶化剤(例えば、マレ
イン化ポリオレフィン等)を配合することもできる。
本発明のTPEを製造する方法は、機械的溶融混練によ
ることができる。具体的には、バンバリーミキサー、各
種ニーダー、単軸または二軸押出機等の一般的溶融混練
機を用いることができる。
また、本発明のTPEは、射出成形、押出成形、ブロー
成形等の熱可塑性樹脂の成形法が適用可能である。
本発明のTPEの用途としては、家電、自動車部品等の
工業用部品、食品包装材、医療機器部品、日用雑貨等に
用いることができる。
〔実施例〕
実施例において各種の評価に用いた試験法は以下の通
りである。但し、測定試料はすべて5オンスインライン
スクリュータイプ射出成形機にて射出圧力500kg/cm2
射出速度220℃、金型温度40℃にて成形した2mm厚シート
の横方向打抜きにより得た。
(1)JIS-A硬度〔−〕 JIS-K-6301 (2)300%応力〔kg/cm2〕 JIS-K-6301 (3)圧縮永久歪 〔%〕 JIS-K-6301 (70℃×22時間) (4)耐オゾン性 JIS-K-6301 50pphm、20%伸長、40℃、500時間、クラ
ックの有無で評価 (5)成形加工性 先の成形条件にて得られた120mm×80mm×2mm厚さの射
出成形加工シートにて、ショートショットのないこと及
び著しく外観(フローマーク、デラミネーション)が悪
くない場合に成形加工性を良好とした。
また、実施例に用いた各配合成分は次のとおりであ
る。
(1)成分A:スチレン−ブタジエンブロック共重合体の
水素添加誘導体としては、シエルケミカル社製「KRATON
G1651」(Brookfield粘度;20重量%トルエン溶液で200
0cps、77゜F)を用いた。
(2)成分B:ゴム用軟化剤としては、出光興産社製「PW
380」(40℃動粘度381.6cSt)を用いた。
(3)成分C:ポリエステル系エラストマーとしては、東
洋紡績社製「ペルプレン」(ポリエステルエーテルエラ
ストマー)の下記3種類を用いた。
P30B(JIS-A硬度70〔−〕、結晶融点160〔℃〕) P70B(JIS-A硬度96〔−〕、結晶融点200〔℃〕) P150B(JIS-A硬度98〔−〕、結晶融点212〔℃〕) (4)その他:次の2成分を用いた。
オレフィン系樹脂;ポリプロピレン樹脂(「三菱ポリ
プロBC5C」、MFR5g/10分) スチレン−ブタジエンブロック共重合体;シエルケミ
カル社製「カリフレックス TR1102」(Brookfield粘
度;25重量% トルエン溶液で12000cps、77゜F) 実験例 第1表に示した配合に、さらに、この100重量部に対
してフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」0.
1重量部を添加し、L/D33、シリンダー径45mmの2軸押出
機にて220℃設定で溶融混練し、TPEペレットを得た。こ
のペレットを用いて、先述の如く射出成形により厚さ2m
mのシートを成形した。得られたシートにより各種評価
した結果を第1表に示す。
また、第1図からも分かるとおり、実施例のものは比
較例のものに比べて、同等の硬度において応力が高く、
降伏点形状も小さく、かつ応力−伸びがより直線的で良
好なゴム弾性を示すものである。
〔発明の効果〕 本発明の熱可塑性エラストマーは、柔軟性、ゴム弾
性、耐熱性、耐オゾン性及び成形加工性に優れた品質バ
ランスを有するものであるため、広範な用途分野への適
用が可能である。
【図面の簡単な説明】 第1図は、実施例1と比較例2の引張特性を示す図面で
ある。曲線Aが実施例、同Bが比較例である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 91:00) (56)参考文献 特開 昭50−82162(JP,A) 特開 昭58−206644(JP,A) 特開 昭61−131746(JP,A) 特開 昭63−142056(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の成分A30〜70重量%と成分B70〜30重
    量%の合計100重量部に対し、成分C20〜150重量部を配
    合してなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成
    物。 成分A:一般式 AB−A)n又はA−BA−B)n
    〔但し、式中のAはモノビニル置換芳香族炭化水素の重
    合体ブロック、Bはその中のオレフィン型二重結合の80
    %以上が水素添加されている共役ジエンのエラストマー
    性重合体ブロックであり、nは1〜5の整数〕で表され
    るブロック共重合体の水素添加誘導体 成分B:ゴム用軟化剤 成分C:ポリエステル系エラストマー
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