JP2812657B2 - トナー用樹脂組成物及びトナー - Google Patents

トナー用樹脂組成物及びトナー

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JP2812657B2
JP2812657B2 JP6175323A JP17532394A JP2812657B2 JP 2812657 B2 JP2812657 B2 JP 2812657B2 JP 6175323 A JP6175323 A JP 6175323A JP 17532394 A JP17532394 A JP 17532394A JP 2812657 B2 JP2812657 B2 JP 2812657B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真等に使用する
トナー用樹脂組成物及びトナーに関し、詳しくは、静電
荷像を現像する方式の内のいわゆる乾式現像方式に使用
されるトナー用樹脂組成物及びトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真等において静電荷像を現像する
方式として、乾式現像方式が多用されている。乾式現像
方式においては、通常、トナーはキャリアーと呼ばれる
鉄粉あるいはガラスビーズ等との摩擦によって帯電し、
これが感光体上の静電潜像に電気的引力によって付着
し、次に用紙上に転写され、熱ロール等によって定着さ
れて永久可視像となる。
【0003】定着の方法としては、トナーに対して離型
性を有する材料で表面を形成した加熱ローラの表面に、
被定着シートのトナー像画を圧接触させながら通過させ
ることにより行う加熱ローラ法が多用されている。
【0004】加熱ローラ法においては、消費電力等の経
済性を向上させるため、及び複写速度を上げるため、よ
り低温で定着可能なトナー用樹脂が求められている。低
温定着性を高めるために、低分子量エステル化合物をス
チレン−アクリル共重合樹脂に混合してなるトナー用樹
脂組成物(特開昭63−66563号公報)等が提案さ
れている。しかしながら、これらの方法では、確かにト
ナーの低温定着性を高め得るものの、このようなトナー
用樹脂を用いた場合には、定着時に、像を形成するトナ
ーの一部が熱ローラの表面に移行しがちであった。その
結果、熱ローラ表面に移行したトナーが次に送られてく
る用紙に再び移行し、画像を汚すという現象(オフセッ
ト)が発生し易いという問題があった。
【0005】上記のような問題を解決するため、ビニル
系樹脂に植物系ワックスを離型剤として加える技術(特
開昭60−247250号公報、特開平1−10936
0号公報)が提案されている。しかし、このような技術
においても、植物系ワックスとビニル系樹脂成分との相
溶性がいまだ不十分であるため、植物系ワックスの離型
剤としての性能が充分に発揮されないだけでなく、トナ
ーから植物系ワックスが遊離し易いために感光ドラム等
の汚染につながり易いという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来技術の欠点を解消し、低温定着性に優れ、耐オフ
セット性に優れ、感光ドラム等の汚染を生じさせ難
い、かつ保存安定性に優れたトナー用樹脂組成物及び
トナーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、遊離脂肪酸または遊離アルコールと反応し、結合し
得る官能基を有するビニル系共重合体と、融点65〜9
0℃の植物系ワックスとを含み、前記植物系ワックス中
の遊離脂肪酸または遊離アルコールが前記ビニル系共重
合体にグラフトされていることを特徴とするトナー用樹
脂組成物である。
【0008】また、請求項2に記載の発明は、遊離脂肪
酸または遊離アルコールと反応し、結合し得る官能基を
有するビニル系共重合体と、融点65〜90℃の植物系
ワックスとを含むトナーであって、前記植物系ワックス
中の遊離脂肪酸または遊離アルコールが前記ビニル系共
重合体にグラフトされていることを特徴とするトナーで
ある。
【0009】請求項1に記載のトナー用樹脂組成物及び
請求項2に記載のトナーは、それぞれ、上記構成を有
し、それによって上記課題を達成するものである。すな
わち、請求項1,2に記載の発明(本発明)では、遊離
脂肪酸または遊離アルコールと反応し、結合し得る官能
基を有するビニル系共重合体に植物系ワックス中の遊離
脂肪酸または遊離アルコールがグラフトされており、そ
れによってビニル系共重合体と植物系ワックスとの相溶
性が高められている。従って、耐オフセット性を低下さ
せることなく、低温定着性が高められており、さらに、
トナーの凝集や感光ドラムの汚染といった現象もなく、
かつトナーの保存安定性も高められる。
【0010】本発明に用いられるビニル系共重合体は、
スチレン系単量体、アクリル酸エステル単量体またはメ
タクリル酸エステル単量体を構成単位とするものである
ことが好ましい。
【0011】スチレン系単量体の具体例としては、スチ
レンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレ
ン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エ
チルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブ
チルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、p−n−
ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n
−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェ
ニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロル
スチレンなどを挙げることができる。
【0012】アクリル酸エステル単量体もしくはメタク
リル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メ
チル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリ
ル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n
−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチ
ルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタ
クリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタク
リル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリ
ル酸ステアリルなどのアクリル酸またはメタクリル酸の
アルキルエステルの他、アクリル酸2−クロルエチル、
アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、ア
クリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロ
キシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アク
リル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル
酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノ
エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリ
ル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロ
キシブチル、メタクリル酸グリシジル、ビスグリシジル
メタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレ
ート、メタクリロキシエチルホスフェートなどを挙げる
ことができ、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル
酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−
ブチルなどが特に好ましく用いられる。
【0013】その他のビニル系単量体としては、アクリ
ル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン
酸などのアクリル酸及びそのα−あるいはβ−アルキル
誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコ
ン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘
導体及びジエステル誘導体;コハク酸モノアクリロイル
オキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオ
キシエチルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0014】本発明におけるビニル系共重合体は、好ま
しくは、その重量平均分子量が2万〜40万であり、さ
らに好ましくは4万〜30万である。前記重合体の重量
平均分子量が2万未満では耐オフセット性が悪化するこ
とがあり、また40万を越えると定着性が低下すること
がある。
【0015】さらに、上記ビニル系共重合体は、ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定さ
れる分子量分布において極大値を持つが、少なくとも
0.3万〜5万の間と、20万以上とのそれぞれに極大
値があることが望ましい。極大値が0.3万未満である
と保存安定性が悪化することがあり、5万より大きいと
定着性が低下することがある。また、20万未満だと耐
オフセット性が悪くなることがある。
【0016】さらに、本発明におけるビニル系共重合体
は保存安定性の点からガラス転移点が58℃以上である
ことが望ましく、さらに65℃以上であることがより好
ましい。
【0017】本発明に用いられる融点65〜90℃の植
物系ワックスとしては、ライスワックス、カルナウバワ
ックス、木蝋、キャンデリラワックス等を挙げることが
できる。
【0018】なお、本発明においてガラス転移点及び融
点とはDSC(示差熱分析)による熱吸収のピーク温度
である。植物系ワックスの融点が65℃より低いと、ト
ナーの保存安定性が悪くなる。逆に90℃より高いと、
トナーの熔融開始温度を低下させる効果が低下するため
に低温での定着が困難になる。
【0019】植物系ワックスの含有量は、ビニル系共重
合体100重量部に対し1〜50重量部であることが望
ましく、さらに好ましくは5〜40重量部である。この
添加量が1重量部よりも少ないと、植物系ワックス添加
の効果はほとんど得られず、逆に50重量部を越える
と、トナーから植物系ワックスが遊離し易くなり、感光
ドラム等の汚染につながる。
【0020】本発明におけるグラフトとは、植物系ワッ
クス中の遊離脂肪酸や遊離アルコールを、それらと反応
し得る官能基を持つビニル系共重合体と化学的に結合さ
せることである。例えば、遊離脂肪酸と反応し得る官能
基としては、水酸基、グリシジル基やアミン基等が挙げ
られ、遊離アルコールと反応し得る官能基としては、カ
ルボキシル基やグリシジル基等が挙げられる。
【0021】植物系ワックス中の遊離脂肪酸や遊離アル
コールをビニル系共重合体にグラフトすることにより、
ビニル系共重合体と植物系ワックスの相溶性が向上し、
植物系ワックスの分散性が高められ、ビニル系共重合体
から植物系ワックスがブリードし難くなる。
【0022】ビニル系共重合体の合成法としては、懸濁
重合、乳化重合、溶液重合、塊重合等が利用できる。こ
のビニル系共重合体と植物系ワックス中の遊離脂肪酸や
遊離アルコールとをグラフトさせる方法としては、ビニ
ル系共重合体と植物系ワックスとを熱熔融ブレンドする
ことによりグラフト化させてもよく、より均一にするた
めに溶剤にビニル系共重合体と植物系ワックスを溶解し
加熱することによりグラフト化させてもよい。好ましく
は、植物系ワックスの存在下でビニル系共重合体を重合
する方法が用いられる。さらに好ましくは、植物系ワッ
クスの存在下でビニル系共重合体を溶液重合させる方法
が用いられる。また、トナー作製時にグラフト化させて
もよく、この場合はビニル系共重合体及び植物系ワック
スに着色剤等の添加剤を混合し熱熔融混練する場合に、
ビニル系共重合体と植物系ワックス中の遊離脂肪酸や遊
離アルコールとがグラフトするように混練温度を調節
し、グラフト化させればよい。
【0023】本発明のトナー用樹脂組成物では、本発明
の目的を達成し得る範囲内で、酢酸ビニル、塩化ビニ
ル、エチレン等のモノマーが前記ビニル系共重合体に共
重合されてもよく、またこれらモノマーの重合体が混合
されていてもさしつかえない。また、ポリエステル樹
脂、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂等が混合されてい
てもよい。さらに、脂肪族アミド、ビス脂肪族アミド、
金属石鹸またはパラフィン等がトナー用樹脂組成物中に
混合されていてもよい。
【0024】本発明のトナーは、前記樹脂組成物中に着
色剤、電荷制御剤、必要に応じて磁性粉等を分散混合
し、熱熔融混練及び粉砕することにより製造される。着
色剤としてはカーボンブラック、アニリンブラック、フ
タロシアニンブルー、キノリンイエロー、ランプブラッ
ク、ローダミン−B、キナクリドン等を例示することが
でき、通常、樹脂組成物に対して1〜10重量%が添加
される。
【0025】電荷制御剤には、正帯電用及び負帯電用電
荷制御剤がある。正帯電用電荷制御剤としては、ニグロ
シン染料、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジン等
を、負帯電用電荷制御剤としては、クロム錯体、鉄錯体
等を例示することができる。これらの電荷制御剤は、樹
脂組成物に対し、通常、0.1〜10重量%添加され
る。
【0026】
【作用】請求項1に記載のトナー用樹脂組成物及び請求
項2に記載のトナーでは、特定のビニル系共重合体と、
植物系ワックスとを含む樹脂組成物において、上記ビニ
ル系共重合体に、植物系ワックス中の遊離脂肪酸または
遊離アルコールがグラフトされているため、ビニル系共
重合体と植物系ワックスとの相溶性が高められ、植物系
ワックスの分散性が高められている。従って、植物系ワ
ックスが離型剤としての機能を充分に果たす。その結
果、耐オフセット性を低下させることなく低温定着性が
高められる。また、感光ドラムの汚染やトナーの凝集が
生じ難い。しかも、トナーの保存安定性も高められる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。以
下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0028】実施例1 〔樹脂組成物の製造〕スチレン15部及びアクリル酸n
−ブチル5部を重合して得られた分子量の極大値が50
0000の樹脂20部と、ライスワックス(融点81
℃)12部と、キシレン100部とをフラスコに投入
し、溶解した。このフラスコ内を窒素ガスで置換した
後、キシレンの沸点まで加熱した。キシレンの還流が起
きた状態で攪拌しながら、スチレン66部、アクリル酸
n−ブチル10部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
4部及び過酸化ベンゾイル(重合開始剤)3.2部の混
合液を2時間かけて滴下し、溶液重合を行った。滴下終
了後、キシレンの還流下で攪拌しながら、1時間かけて
熟成を行い、分子量の極大値が10000の低分子量重
合体を重合した。
【0029】次に、フラスコ内の温度を180℃まで徐
々に上げながら、減圧下にキシレンを脱溶剤して、本発
明の樹脂組成物Aを得た。なお、分子量の極大値は、ゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によ
り測定した。GPCの測定条件は、カラム温度;40
℃、溶剤;テトラヒドロフラン、流速;1ml/分、試
料濃度;0.2重量%、試料の量;100μl、カラ
ム;KF−80Mを2本及びKF−802.5(いずれ
もShodex社製)である。
【0030】〔トナーの製造〕上記により得られた樹脂
組成物Aを使用し、 樹脂組成物A…100部 クロム含金染料(オリエント化学工業社製、商品名S
−34)…1.5部 カーボンブラック(三菱化成社製、商品名MA−10
0)…6.5部 を配合・混合し、150℃で熔融混練した。次に、混練
物をジェットミルで粉砕し、直径約10μmのトナー粒
子を得た。このトナー粒子に対して疎水性シリカ(日本
アエロジル社製、商品名R972)0.3重量%を添加
し、本発明のトナーAを得た。
【0031】実施例2 実施例1において、ライスワックスの部数を40部に変
更し、またメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの代わり
にメタクリル酸を使用したこと以外は、実施例1と同様
にして、本発明のトナーBを得た。
【0032】実施例3 実施例1において、ライスワックスの代わりにキャンデ
リラワックス(ミツバ貿易社製;融点72℃)を使用し
たこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のトナー
Cを得た。
【0033】実施例4 〔樹脂組成物の製造〕スチレン15部及びアクリル酸n
−ブチル5部を重合して得られた分子量の極大値が50
0000の樹脂20部と、キシレン100部とをフラス
コに投入し、溶解した。このフラスコ内を窒素ガスで置
換した後、キシレンの沸点まで加熱した。キシレンの還
流が起きた状態で攪拌しながら、スチレン66部、アク
リル酸n−ブチル10部、メタクリル酸2−ヒドロキシ
エチル4部及び過酸化ベンゾイル(重合開始剤)3.2
部の混合液を2時間かけて滴下し、溶液重合を行った。
滴下終了後、キシレンの還流下で攪拌しながら、1時間
かけて熟成を行い、分子量の極大値が10000の低分
子量重合体を重合した。その後、フラスコ内の温度を1
80℃まで徐々に上げながら、減圧下にキシレンを脱溶
剤して、ビニル系共重合体Dを得た。このビニル系共重
合体D100部とライスワックス(融点81℃)12部
とを、ニーダーにより180℃で熔融混練し、グラフト
化させ、本発明の樹脂組成物Dを得た。
【0034】〔トナーの製造〕樹脂組成物Aの代わりに
樹脂組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様にして本
発明のトナーDを得た。
【0035】実施例5 〔樹脂組成物の製造〕実施例4で得られたビニル系共重
合体D100部と、ライスワックス(融点81℃)12
部と、キシレン100部とをフラスコに投入し、溶解し
た。このフラスコ内を窒素ガスで置換した後、キシレン
の沸点まで加熱した。キシレンの還流が起きた状態で攪
拌しながら1時間かけてグラフト化させた。その後フラ
スコ内の温度を180℃まで徐々に上げながら、減圧下
にキシレンを脱溶剤して、本発明の樹脂組成物Eを得
た。
【0036】〔トナーの製造〕樹脂組成物Aの代わりに
樹脂組成物Eを用いた以外は、実施例1と同様にして本
発明のトナーEを得た。
【0037】実施例6 〔樹脂組成物の製造〕実施例4で得られたビニル系共重
合体D100部とライスワックス(融点81℃)12部
とを粉体ブレンドし、樹脂組成物Fを得た。
【0038】〔トナーの製造〕実施例1において熔融混
練条件を180℃に変更した以外は、実施例1と同様に
してビニル系共重合体Dにライスワックスがグラフト化
されている本発明のトナーFを得た。
【0039】比較例1 実施例1においてライスワックスを使用しないこと以外
は、実施例1と同様にして比較例1のトナーGを得た。
【0040】比較例2 実施例3においてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル4
部をスチレン4部に置き換えたこと以外は、実施例3と
同様にして比較例2のトナーHを得た。
【0041】比較例3 実施例6においてトナー製造時に熔融混練温度を130
℃にする以外は、実施例6と同様にして比較例3のトナ
ーIを得た。
【0042】実施例1〜6及び比較例2〜3で得られた
樹脂組成物のグラフトの有無の確認 実施例1〜5及び比較例2において各植物系ワックスを
除いた樹脂組成物をそれぞれ作製した。次に、植物系ワ
ックスを除いたそれぞれの樹脂組成物に対して該樹脂組
成物に対応した実施例及び比較例の植物系ワックスを前
記実施例及び比較例と同等の部数比率で粉体ブレンド
し、樹脂組成物と植物系ワックスとがグラフトしていな
い状態での酸価の測定を以下の要領で行った。
【0043】樹脂約2gを精秤し、フェノールフタレイ
ン溶液を指示薬として加えメチルエチルケトン30ml
に溶解させた。この溶液に水酸化カリウム−イソプロピ
ルアルコール溶液にて中和滴定を行い、酸価を測定し
た。この測定値を酸価(I)として表1に示した。
【0044】一方、実施例1〜5及び比較例2で得られ
た樹脂組成物の酸価を上記と同様の方法により測定し、
この測定値を酸価(II)として表1に示した。上記酸価
(I)及び酸価(II)の比較により、樹脂組成物のグラ
フト化の有無を確認した。
【0045】また、実施例6及び比較例3で作製した樹
脂組成物の酸価を上記と同様な方法で測定し、この測定
値を酸価(I)として表2に示した。一方、樹脂組成物
を前記実施例6及び比較例3においてトナー作製時に適
用した熔融混練条件で熔融混練し、熔融混練した樹脂組
成物の酸価を上記と同様の方法により測定し、この測定
値を酸価(II)として表2に示した。
【0046】上記酸価(I)及び酸価(II)の比較によ
り、トナー作製時のグラフト化の有無を確認した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】表1及び表2から明らかなように、グラフ
トしているサンプルでは、グラフト化が起こると酸価が
小さくなっている。これは、グラフト点となるカルボキ
シル基が、グラフト化により減少したことを示してい
る。
【0050】電子写真用トナーの評価 上記実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたトナー
(A〜I)について下記の項目の試験を行った。
【0051】(1)非オフセット温度領域及び非オフセ
ット温度幅 まず、上記実施例及び比較例で得た各トナー4部と、樹
脂被膜を施していないフェライトキャリア(パウダーテ
ック社製、商品名FL−1020)96部とを混合して
二成分系現像剤を作製した。次に該現像剤を使用して市
販の複写機(シャープ社製、商品名SF−9800)に
てA4版の転写紙に縦2cm、横5cmの帯状の未定着
画像を複数作製した。
【0052】次に、表層がフッ素樹脂で形成された熱定
着ロールと、表層がシリコーンゴムで形成された圧力定
着ロールとが対になって回転する定着機を、ロール圧力
が1kg/cm2 及びロール速度が100mm/秒にな
るように調整し、該熱定着ロールの表面温度を段階的に
変化させて、各表面温度において前記未定着画像を有す
る転写紙上のトナー像の定着を行った。このとき余白部
分にトナー汚れが生じるか否かの観察を行い、汚れが生
じない温度領域を非オフセット温度領域とした。また、
非オフセット温度領域の最大値と最小値の差を非オフセ
ット温度幅とした。
【0053】(2)定着強度 前記定着機の熱定着ロールの表面温度を150℃及び1
70℃に設定し、前記未定着画像が形成された転写紙の
トナー像の定着を行った。そして、形成された定着画像
に対して綿パッドによる摺擦を施し、下記の式によって
定着強度を算出し、低温定着性の指標とした。画像濃度
はマクベス社製の反射濃度計RD−914を使用した。
【0054】
【数1】
【0055】(3)保存安定性 前記トナーA〜Iの各20gを150ccのボトルに充
填し、50℃の恒温槽中で24時間放置した後、トナー
のケーキング状態を目視により確認した。
【0056】(4)感光ドラム汚染 前項(1)における現像剤を使用して市販の複写機(東
芝社製、商品名BD−3810)で1万枚の連続コピー
試験を行い、試験後に感光ドラムの汚れを目視で評価し
た。
【0057】上記試験結果を、表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】表3の試験結果から明らかなように、実施
例のトナーA〜Fでは、低温度から高温度までオフセッ
トが発生せず、その非オフセット温度幅も75℃〜80
℃という実用上十分な範囲を維持していることが確認さ
れた。また、定着温度150℃における定着強度が65
%以上あり、実用上十分な定着強度を有することが確認
された。さらに、保存安定性も良好であり、感光ドラム
の汚染もないことが確認できた。
【0060】これに対して、比較例1では定着温度15
0℃における定着強度が45%と低かった。また比較例
2や3のようにビニル系共重合体に植物系ワックス中の
遊離脂肪酸または遊離アルコールをグラフトしていない
系では、定着強度や非オフセット温度領域は良好である
が、保存安定性が不良であり、感光ドラムの汚染も見ら
れた。
【0061】
【発明の効果】以上のように、請求項1に記載の発明の
トナー用樹脂組成物では、遊離脂肪酸または遊離アルコ
ールと反応し、結合し得る官能基を有するビニル系共重
合体に対し特定の範囲の融点を有する植物系ワックスが
配合されており、かつ植物系ワックス中の遊離脂肪酸ま
たは遊離アルコールが上記ビニル系共重合体にグラフト
されているため、ビニル系共重合体及び上記植物系ワッ
クスの相溶性が高められている。
【0062】従って、十分な非オフセット温度領域を維
持したまま、すなわち優れた耐オフセット性を維持した
まま低温で定着させることができる。またトナーの保存
安定性も高められ、さらに感光ドラム等の汚染も生じ難
い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保田 英之 静岡県静岡市用宗巴町3番1号 株式会 社巴川製紙所化成品事業部内 (56)参考文献 特開 平7−43943(JP,A) 特開 平7−64325(JP,A) 特開 平1−238672(JP,A) 特開 平3−5764(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G03G 9/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遊離脂肪酸または遊離アルコールと反応
    し、結合し得る官能基を有するビニル系共重合体と、融
    点65〜90℃の植物系ワックスとを含み、前記植物系
    ワックス中の遊離脂肪酸または遊離アルコールが前記ビ
    ニル系共重合体にグラフトされていることを特徴とす
    る、トナー用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 遊離脂肪酸または遊離アルコールと反応
    し、結合し得る官能基を有するビニル系共重合体と、融
    点65〜90℃の植物系ワックスとを含むトナーであっ
    て、前記植物系ワックス中の遊離脂肪酸または遊離アル
    コールが前記ビニル系共重合体にグラフトされているこ
    とを特徴とするトナー。
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