JP2812137B2 - 耐摩耗性のすぐれたＦｅ基焼結合金製バルブガイド部材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、すぐれた耐摩耗性を
示す内燃機関の構造部材の１つであるＦｅ基焼結合金製
バルブガイド部材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、内燃機関のバルブガイド部材とし
て、多くのＦｅ基焼結合金が適用されていることは良く
知られるところである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】一方、近年の内燃機関
の高出力化および高速化はめざましく、これに伴ない、
これの構造部材の使用条件は一段と苛酷さを増し、特に
中心孔に挿通されて往復動するバルブとの間ではげしい
摺動摩耗を受けるバルブガイド部材には、より一層の耐
摩耗性の向上が要求されるが、従来の多くのＦｅ基焼結
合金製バルブガイド部材はこれに対応できる十分な耐摩
耗性をもつものではないのが現状である。

【０００４】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、苛酷な条件下での実用ですぐれ
た耐摩耗性を発揮するＦｅ基焼結合金製バルブガイド部
材を開発すべく研究を行なった結果、内燃機関のバルブ
ガイド部材を、重量％で（以下、％は重量％を示す）
Ｃ：１〜４％、 Ｃｕ：１．５〜６％、Ｐ：
０．１〜０．８％、を含有し、残りがＦｅと不可避不純
物からなる組成、並びにパーライトを主体とする素地
に、硬質のＦｅ−Ｃ−Ｐ化合物と遊離黒鉛が分散分布
し、かつ前記遊離黒鉛中には、粒径：７０〜５００μｍ
の粗大遊離黒鉛が、全体に占める割合で０．５〜１０面
積％存在する組織を有するＦｅ基焼結合金で構成する
と、この結果のＦｅ基焼結合金製バルブガイド部材は、
上記硬質のＦｅ−Ｃ−Ｐ化合物による硬さ向上と、上記
遊離黒鉛、特に上記粗大遊離黒鉛による自己潤滑効果の
向上とが相まって、一段とすぐれた耐摩耗性を示すよう
になるという研究結果を得たのである。

【０００５】したがって、この発明は上記の研究結果に
もとづいてなされたものであって、Ｃ：１〜４％、
Ｃｕ：１．５〜６％、Ｐ：０．１〜０．８％、を
含有し、残りがＦｅと不可避不純物からなる組成、並び
にパーライトを主体とする素地に、硬質のＦｅ−Ｃ−Ｐ
化合物と遊離黒鉛が分散分布し、かつ前記遊離黒鉛中に
は、粒径：７０〜５００μｍの粗大遊離黒鉛が、全体に
占める割合で０．５〜１０面積％存在する組織を有する
Ｆｅ基焼結合金で構成してなる耐摩耗性のすぐれたＦｅ
基焼結合金製バルブガイド部材に特徴を有するものであ
る。

【０００６】つぎに、この発明のバルブガイド部材を構
成するＦｅ基焼結合金の成分組成および組織を上記の通
りに限定した理由を説明する。 （Ａ） 成分組成 （ａ） Ｃ Ｃ成分には、素地のパーライトを形成して、これを強化
するほか、硬質のＦｅ−Ｃ−Ｐ化合物を形成して硬さを
向上させ、さらに粗大遊離黒鉛を含む遊離黒鉛としても
分布して自己潤滑性を著しく向上させ、もって耐摩耗性
の一層の向上をはかる作用があるが、その含有量が１％
未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方その含
有量が４％を越えると急激な脆化が起って所望の強度保
持が困難になることから、その含有量を１〜４％と定め
た。

【０００７】（ｂ） Ｃｕ Ｃｕ成分には、素地に固溶して、これを強化するほか、
パーライト素地を安定化させる作用があるが、その含有
量が１．５未満では前記作用に所望の効果が得られず、
一方その含有量が６％を越えても前記作用により一層の
向上効果は現われず、むしろ脆化傾向が現われるように
なることから、その含有量を１．５〜６％と定めた。

【０００８】（ｃ） Ｐ Ｐ成分には、焼結性を改善し、もって強度を向上させる
ほか、上記の通り硬質のＦｅ−Ｃ−Ｐ化合物を形成し、
遊離黒鉛との共存において耐摩耗性を向上させる作用が
あるが、その含有量が０．１％未満では前記作用に所望
の効果が得られず、一方その含有量が０．８％を越える
と、素地が硬化しすぎるようになると共に、粗大なＦｅ
−Ｃ−Ｐ化合物が析出するようになって被削性が悪化す
るほか、相手攻撃性も増すようになることから、その含
有量を０．１〜０．８％と定めた。

【０００９】（ｂ） 粗大遊離黒鉛 一般に、粉末冶金法にて遊離黒鉛分散型Ｆｅ基焼結合金
を製造するに際して、原料粉末として用いられる黒鉛粉
末は、２００mesh以下の粒度をもつものを使用するのが
普通であり、この場合Ｆｅ基焼結合金の素地に分散分布
する遊離黒鉛は、平均粒径で３０μｍ以下の粒径をもつ
ようになるものであり、したがってこの発明のＦｅ基焼
結合金では、一般に原料粉末として用いられている粒度
の黒鉛粉末と、これに加えて相対的に粗粒の黒鉛粉末、
すなわち２００〜３０meshの粒度をもった黒鉛粉末を用
いて、Ｆｅ基焼結合金基地中に７０〜５００μｍの粒径
をもった粗大遊離黒鉛を０．５〜１０面積％の割合で分
散分布させるものである。これら粗大遊離黒鉛の粒径お
よび割合は経験的に定められたものであって、その粒径
が７０μｍ未満でも、その割合が０．５面積％未満でも
所望のすぐれた自己潤滑効果を確保することができず、
一方その粒径が５００μｍを越えると、これが破壊の起
点となって折損し易くなり、またその割合が１０面積％
を越えると急激な強度低下をきたすようになるという理
由で７０〜５００μｍの粒径を有する粗大遊離黒鉛の割
合を０．５〜１０面積％と定めたのである。

【００１０】

【実施例】つぎに、この発明のバルブガイド部材を実施
例により具体的に説明する。原料粉末として、粒度：−
８０meshのＦｅ粉末、同−２００meshの炭素粉末と同２
００〜３０meshの範囲内の所定の粒度を有する粗大炭素
粉末、同−１００meshのＣｕ粉末、同−１５０meshのＦ
ｅ−２７％Ｐ合金粉末、および同−２００meshのＣｕ−
８％Ｐ合金粉末を用い、これら原料粉末をそれぞれ表１
に示される配合組成に配合し、１％のステアリン酸亜鉛
を加えてＶ型ミキサーにて３０分間混合した後、６ton
／cm² の圧力で圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉
体を、天然ガスの分解ガス雰囲気中、温度：６５０℃に
２０分間保持して脱脂し、引続いて１０５０〜１１５０
℃の範囲内の所定温度に昇温し、この温度に６０分間保
持して焼結し、焼結後仕上加工を施すことにより、実質
的に配合組成と同じ成分組成を有すると共に、いずれも
パーライトを主体とした素地に微細なＦｅ−Ｃ−Ｐ化合
物と遊離黒鉛が分散分布し、かつ７０〜５００μｍの粒
径の粗大遊離黒鉛がそれぞれ表１に示される割合で存在
する組織を有するＦｅ基焼結合金で構成された長さ：５
０mm×外径：１２mm×内径：６．６mmの寸法の本発明Ｆ
ｅ基焼結合金製バルブガイド部材（以下、本発明バルブ
ガイドという）１〜１１をそれぞれ製造した。また、比
較の目的で、表１に示される通り成分組成および粗大遊
離黒鉛の割合のうちのいずれか（表１に※印を付す）が
この発明の範囲から外れたＦｅ基焼結合金で構成された
比較Ｆｅ基焼結合金製バルブガイド部材（以下、比較バ
ルブガイドという）１〜４をそれぞれ製造した。

【００１１】

【表１】

【００１２】つぎに、この結果得られた各種バルブガイ
ドを、排気量：２０００ccのＤＯＨＣ型エンジンのアル
ミ鋳物製シリンダヘッドの排気側に圧入して取付け、内
径の仕上げ加工を行なった状態で、燃料として無鉛ガソ
リンを用い、回転数：６０００r.p.m.で５００時間運転
の実機試験を行ない、バルブシート側の端縁から長さ方
向５mmの内面位置での内径を測定し、試験前の内径に対
する試験後の内径変化量を摩耗量として測定した。これ
らの測定結果を表１に示した。

【００１３】

【発明の効果】表１に示される結果から、本発明バルブ
ガイド１〜１１は、いずれもきわめて高速の長時間連続
運転にもかかわらず、すぐれた耐摩耗性を示すのに対し
て、比較バルブガイド１〜４に見られるように、これを
構成するＦｅ基焼結合金の成分組成および粗大遊離黒鉛
の割合のうちのいずれかでもこの発明の範囲から外れる
と所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができないこ
とが明らかである。上述のように、この発明のＦｅ基焼
結合金製バルブガイド部材は、苛酷な条件下での使用に
際してもすぐれた耐摩耗性を発揮し、内燃機関の高性能
化および高速化に十分対応できる特性をもつものであ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 星野 和之 新潟県新潟市小金町３−１ 三菱マテリ アル株式会社 新潟製作所内 (72)発明者 田中 一郎 東京都港区芝五丁目33番８号 三菱自動 車工業株式会社内 (72)発明者 佐々木 正司 東京都港区芝五丁目33番８号 三菱自動 車工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭52−20908（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−312003（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−41699（ＪＰ，Ａ) 特公 昭56−2142（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C22C 38/00 304 B22F 5/00 C22C 33/02 103 F01L 3/00 - 11/06 F01L 15/00 - 35/04

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重量％で、 Ｃ：１〜４％、 Ｃｕ：１．５〜６％、 Ｐ：０．１〜０．８％、 を含有し、残りがＦｅと不可避不純物からなる組成、並
   びにパーライトを主体とする素地に、硬質のＦｅ−Ｃ−
   Ｐ化合物と遊離黒鉛が分散分布し、かつ前記遊離黒鉛中
   には、粒径：７０〜５００μｍの粗大遊離黒鉛が、全体
   に占める割合で０．５〜１０面積％存在する組織を有す
   るＦｅ基焼結合金で構成したことを特徴とする耐摩耗性
   のすぐれたＦｅ基焼結合金製バルブガイド部材。