JP2807701B2 - 高クロム鋳鉄製ロッカーアーム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は高クロム鋳鉄製ロッカーアームの研磨加工に
関するものである。

［従来の技術］ 自動車用内燃機関の動弁機構に一体鋳造の高クロム鋳
鉄製ロッカーアームを用いることは特開昭63−303030号
によって公知である。しかし、このロッカーアームは高
クロム鋳鉄の特性として表面に（Fe、Cr）7C3等の粗硬
な炭化物が析出するため、自身の耐摩耗性は優れている
が、表面が粗い場合にはカム等の相手材に対する攻撃性
が強く、そのままでは相手材を過大摩耗させる。

［発明が解決しようとする課題］ 相手材の摩耗を限度以下にするために行なうロッカー
アームの研磨加工は、コストの面から適正でなければな
らないが、ロッカーアームの表面粗さが同一であって
も、高クロム鋳鉄の種類によって、相手材の摩耗に差を
生ずるため、ロッカーアームの研磨加工を適確に決定す
ることができないという問題があった。

本発明はこの問題を解決するためになされたものであ
り、その目的とするところは、ロッカーアームの表面粗
さと高クロム鋳鉄の組織を最適にコントロールすること
により相手材の摩耗を限度以下にすることができるロッ
カーアームを提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 前記目的を達成するため、本発明が採用する手段は、
高クロム鋳鉄の表面に析出した炭化物の形状に最適に研
磨仕上げするロッカーアームの表面粗さを次のとおり規
定したことにある。すなわち、スーパーフィニッシュに
より、ロッカーアーム摺動部の表面粗さをRa0.05〜0.2
とするように研磨加工する。

ここで、高クロム鋳鉄は成分組成が重量％で、C:2.5
〜3.7％、Si:1.0〜2.0％、Mn:0.5〜1.0％、Cr:15〜20
％、Ni:0.3〜0.7％、P:0.3％以下、S:1.0％以下であ
り、必要に応じて、Ｗ、Mo、Ｖ、Nb、Ta、Ti、Ｂの中の
１種又は２種以上を合計で３〜10％含み、残部Fe及び不
可避的不純物からなる。

［作用］ 一般に表面粗さRaとカム・カムフォロワーの摺動条件
（PV値）及び摩耗量は比例的関係にあるから、析出炭化
物の形状が同じであれば、ロッカーアーム摺動部の表面
粗さRaを小さくする程、相手材の摩耗も減少する。他
方、ロッカーアームの表面粗さが同じ場合、炭化物は平
均球状化率が小さい程相手材に対する攻撃性が強くな
る。したがって、相手材の摩耗量を同一にするために
は、炭化物の球状化率すなわち炭化物の形状に応じてロ
ッカーアーム摺動部の表面粗さRaを規定する必要があ
る。

本発明のロッカーアームにおいて、相手カムの摩耗を
抑制できる表面粗さの規定値はRa0.05〜0.2である。

［実施例］ 次に、本発明を実施例に基づいて説明する。

第１表に示す成分組成を持つ高クロム鋳鉄製ロッカー
アームを一体鋳造後に熱処理した。そこで、高クロム鋳
鉄を顕微鏡組織写真によって調べた結果、炭化物は針状
粒状混在でその平均球状化率は41％、平均粒径は18μｍ
で分散量は面積率で35％であった。

ついで、それぞれに程度の異なる研磨加工及び研磨条
件（砥石周速、送り速度）を施して表面粗さRaの異なる
６種類のロッカーアームを得た。それらのロッカーアー
ムを発明の規定に従って、３種類の実施例１〜３と３種
類の比較例１−３に区分けした。

各実施例及び比較例のロッカーアームとその相手材の
摩耗を次の実機耐久試験によって測定した。

使用エンジン：直列４気筒OHC型2000ccガソリンエン
ジン 駆動方式：モータリング バルブスプリング荷重：標準より20％増大 カムシャフト：チル鋳鉄 潤滑油:7.5W−30市場回収油 エンジン回転数:600rpm 耐久時間:600hr 耐久試験の結果は第２表に示すとおりであった。この
表から比較例、のロッカーアームによる相手材カム
の摩耗量は57〜75μｍであるのに対して実施例ロッカー
アームによる相手材カムの摩耗量は10〜20μｍであるか
ら、本発明の方法によって相手材の摩耗は大幅に減少す
ることがわかる。又、ロッカーアームの摩耗量も実施例
の８〜12μｍに対して比較例、は18〜20μｍである
から、本発明の方法によってロッカーアーム自身の耐摩
耗性も改善することがわかる。なお、表面粗さを極端に
低減した比較例においては、ロッカーアームの摩耗量
が８μｍ、相手カムの摩耗量が９μｍであった。このよ
うに摩耗量は優れた性能を示すが、本願の実施例と比
較した場合、同等の性能しか示さないことが分る。表面
粗さをRa0.01と極端に低減することは、製造を困難とし
コスト高を招くこととなる。そのため、本願において
は、表面粗さの規定値をRa0.05〜0.2と選定した。

［発明の効果］ 従来は高クロム鋳鉄製ロッカーアームをどの程度に研
磨すればよいか不明であったため、適正な研磨加工をす
ることができなかった。実施例からわかるとおり、表面
粗さがRa0.01までの研磨仕上を行なえば、摩耗量は少な
いコスト高となり、Ra0.2（0.2は含まず）〜0.8の研磨
仕上であれば、研磨加工が不足して相手材を早期に摩耗
させる。本発明は高クロム鋳鉄の炭化物の形状に基づい
て研磨加工の表面粗さを規定しているため、本発明の方
法によって高クロム鋳鉄製ロッカーアームを研磨加工す
れば、ロッカーアーム自身の耐摩耗性が向上することは
当然であるが、相手材の耐摩耗性も大幅に改善されると
いう優れた効果を奏する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷本 一郎 神奈川県横浜市神奈川区宝町２番地 日 産自動車株式会社内 (72)発明者 鶴田 誠次 神奈川県厚木市恩名1370番地 株式会社 アツギユニシア内 (72)発明者 川村 治 栃木県下都賀郡野木町野木1111 日本ピ ストンリング株式会社内 (72)発明者 高橋 輝夫 栃木県下都賀郡野木町野木1111 日本ピ ストンリング株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F01L 1/18 C22C 37/08

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】成分組成が重量％で、C:2.5〜3.7％、Si:
   1.0〜2.0％、Mn:0.5〜1.0％、Cr:15〜20％、Ni:0.3〜0.
   7％、P:0.3％以下、S:0.1％以下の範囲であり、必要に
   応じてＷ、Mo、Ｖ、Nb、Ta、Ti、Ｂの中の１種又は２種
   以上を３〜10％含み、残部Fe及び不可避的不純物よりな
   る高クロム鋳鉄製ロッカーアームの研磨加工法におい
   て、CBN砥石によるスーパーフィニッシュにより表面粗
   さをRa0.05以上、0.2以下とし、平均粒径が20μｍ以下
   でかつその形状が外接円面積に対するその実面積比率
   （以下球状比率と呼ぶ）の平均値が40％以上の硬質炭化
   物がHv700以上の硬さのマルテンサイト母相中に面積率
   で30％以上、45％未満析出した組織を有することを特徴
   とした高クロム鋳鉄製ロッカーアーム。