JP2804429B2 - 車軸用軸受装置の軸受隙間測定方法 - Google Patents

車軸用軸受装置の軸受隙間測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車輪に用い
られる車軸用軸受装置、特に車軸に転走面が直接形成さ
れた構造の車軸用軸受装置及びその軸受隙間測定方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】一例として図5に示す車軸用軸受装置
は、外輪21の内周に設けた複列の転走面21a、21
bのうち、転走面21bに対向する転走面23aを内輪
23の外周に、転走面21aに対向する転走面22aを
車軸22の外周に直接形成したものである。外輪21の
外周には車体(図示省略)に固定するためのフランジ2
1cが一体に周設され、車軸22の軸端外周にはハブボ
ルト27を装着するためのフランジ27gが一体に周設
されている。また、車軸22の略中央外周には転走面2
2a、および、内輪23を圧入するための圧入部22c
が肩部22bを介して連設されている。内輪23は車軸
22の圧入部22cに圧入され、車軸22の軸端に螺合
したナット26で固定される。
【0003】ところで、この種の軸受装置にあっては、
軸受の転動寿命、剛性、並びにフレッティングの面か
ら、軸受アキシャル隙間は負、すなわち所定の予圧をか
けて使用するのが有利であるが、隙間管理の面から負隙
間を測定することが困難なため、内輪23を圧入部22
cに圧入することによる隙間の減少分や、ナット26の
締付けによる隙間の減少分を見込んで初期隙間を設定す
るようにしている。すなわち、所望の予圧量に相当する
ナット26の締付けトルクを予め設定しておき、ナット
26の締付けトルクがこの設定値に達するまで内輪23
を車軸22の肩部22b側に押し進めるのである。した
がって、このような予圧(隙間)管理手段では、圧入完
了時において、内輪23の小径端面と車軸22の肩部2
2bとの間に間隔Wがあることが必須になる。
【0004】一般に、一対の内輪を備えた複列型アンギ
ュラー玉軸受では、一対の内輪と外輪との相対的な位置
関係によって軸受隙間(予圧量)が決まるので、例えば
図6に示すようた態様で軸受隙間(負隙間)を測定する
ことが可能である(本出願人による特願平3−5778
7号)。すなわち、軸受アキシャル隙間がゼロになるよ
うに測定用の軸部材32で一対の内輪33を保持した状
態で、軸部材32に設けたエアー通路32aを介して内
輪33間の間隔hから圧縮エアーAを噴出させ、この時
の、圧縮エアーAの背圧等の検出値から間隔hを求めて
おき、組立時に、内輪33間の間隔hを詰めることによ
って負隙間(h)を求めることができる。ところが、図
5に示す軸受装置では、内輪23の車軸2に対する圧入
量によって軸受隙間が決まるので、上記測定方法をその
まま用いることはできない。この種の軸受装置におい
て、ナットの締付けトルクによる間接的な隙間管理を行
なっていた理由はここにある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記構成の軸受装置で
は、軸受寿命や剛性の面から最適予圧量(最適隙間)が
設定されても、それを実測する手段がなく、また、ナッ
トの締付けトルクにバラツキがあることから、信頼性の
点で問題が残っていた。
【0006】さらに、圧入完了時において、内輪23と
肩部22bとの間に間隔Wが存在することが構造上必須
であるため、運転時の衝撃などで、内輪23が肩部22
b側に微動し、必要以上の予圧が軸受に負荷される恐れ
があった。
【0007】そこで、本発明の目的は、上述したような
車軸用軸受装置の軸受隙間を確実にしかも簡易に測定す
ることができる隙間測定方法を提供することにより、こ
の種の軸受装置における信頼性を向上させることにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、肩部近傍にて
外部に開口したエアー通路を車軸に形成し、内輪を車軸
の圧入部に圧入するに際し、軸受アキシャル隙間が正の
状態で圧入を一旦止め、この状態における車軸の肩部と
これに対向する内輪の端面との間の間隔(S)を、上記
エアー通路を介して間隔(S)から噴出させた圧縮エア
ーの背圧、流量又は流速などの検出値から求めると共
に、この状態における軸受アキシャル隙間(Δa’)を
測定し、その後、内輪を車軸の肩部に当接するまで圧入
することにより、Δa=Δa’−Sから負の軸受アキシ
ャル隙間(Δa)を求めるものである。
【0009】
【作用】軸受の組立工程において、軸受アキシャル隙間
が正の状態で内輪の圧入を一旦止め、この状態で車軸の
肩部とこれに対向する内輪の端面との間の間隔(S)、
および、軸受アキシャル隙間を測定し、この隙間量か
ら、内輪の圧入完了までの圧入量(=S)を測定してマ
イナスすることにより、軸受の負隙間を確実に測定する
ことができる。間隔(S)の測定は、車軸に形成したエ
アー通路を介して間隔(S)から圧縮エアーを噴出さ
せ、この時の圧縮エアーの背圧、流量又は流速などを検
出することにより求める。
【0010】本発明の測定方法によれば、従来方法のよ
うに、ナットの締付けトルクを厳密に管理しなくても、
負隙間を精度よくしかも簡易に測定することができる。
また、圧入完了時において内輪と車軸の肩部との間に間
隔を設けておく必要がなく、両者を当接させた構造であ
っても隙間測定が可能である。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0012】図1に示す車軸用軸受装置は、後述する軸
受隙間測定方法を用いて負隙間を保証したものである。
この軸受装置は、内周に複列の転走面1a、1bを設け
た外輪1と、外輪1の転走面1bに対向する転走面3a
を外周に設けた内輪3と、外輪1の転走面1aに対向す
る転走面2a、および、内輪3を圧入するための圧入部
2cを肩部2bを介して外周に連設した車軸2と、外輪
1と車軸2および内輪3との間に介在する複列のボール
4a、4bと、ボール4a、4bを保持する保持器5
a、5bと、車軸2の軸端外周に螺合したナット6とで
構成される。外輪1の外周には車体(図示省略)に固定
するためのフランジ1cが一体に周設されている。ま
た、車軸2の一方の軸端外周にはハブボルト7を装着す
るためのフランジ2gが一体に周設され、他方の軸端外
周にはナット6を螺合させるためのねじ部2dが設けら
れている。内輪3は車軸2の圧入部2cに圧入され、車
軸2のねじ部2dに螺合したナット6で固定される。
【0013】さらに、図2に拡大して示すように、車軸
2には、一本の軸方向エアー通路2hと、複数の半径方
向エアー通路2iとが設けられている。軸方向エアー通
路2hは車軸2の軸線に沿って延び、その一端は軸端に
て外部に開口している。複数の半径方向エアー通路2i
は車軸2の半径線に沿って放射状に延び、その一端は軸
方向エアー通路2hの他端に連通し、その他端は肩部近
傍にて外部に開口している。軸方向エアー通路2hの一
端には、軸受隙間を測定する際に、空気・電気変換機等
の検出手段20およびレギュレータ21を介して圧縮エ
アー源22が接続される。
【0014】軸受隙間は、軸受加工工程において、外輪
1の複列の転走面1a、1bのピッチP0と溝径、車軸
2の転走面2aの肩部2からの軸方向寸法P1と溝径、
および、内輪3の転走面3aの小径端面からの軸方向寸
法P2をそれぞれ管理して選択組合せすることによって
所望の負隙間に設定することができる。したがって、従
来装置のように、組立工程において、ナットの締付けト
ルクによって軸受隙間を管理する必要がなく、軸受隙間
の設定が確実であり、しかも、組立後に軸受隙間に変動
をきたすこともない。尚、車軸2については、例えば図
4に示すような加工砥石15を用いて、転走面2a、肩
部2b、圧入部2c、圧入部2cの端面2eを同時研削
すると、寸法P1およびL1(肩部2bから端面2eま
での軸方向寸法)の精度が確保されるので、上記選択組
合せを容易にすることができる。そして、このようにし
て所望値に設定した負隙間を以下に説明する測定方法に
より測定し、これを保証することにより、軸受寿命等に
対する信頼性は格段に向上する。
【0015】軸受アキシャル隙間(Δa)は、内輪3の
圧入工程において、図3a〜dに示す順序で測定され
る。
【0016】まず、図3aに示すように、所定深さHの
凹部(又は爪)10aを有する圧入治具10を用いて内
輪3を車軸2の圧入部2cに圧入する。圧入治具10の
先端を内輪3の大径端面3bに当接させながら内輪3を
車軸2の肩部2bに向けて推し進めてゆくと、圧入治具
10の凹部10aの底が車軸2の軸端に当接した時点で
内輪3はそれ以上進まなくなる。これにより、内輪3の
圧入が一旦止められる。この時点では、内輪3の小径端
面は肩部2bに当接しておらず、両者の間には所定の間
隔Sがあり、また、軸受アキシャル隙間は正である。こ
のような状態は、圧入治具10の深さH、車軸2の肩部
2bから圧入部2cの端面2eまでの軸方向寸法L1、
端面2eから軸端までの軸方向寸法L2、および、内輪
3の幅寸法を管理することによって達成することができ
る。
【0017】つぎに、この状態で、軸方向エアー通路2
hの一端から圧縮エアーAを供給する(図3b)。この
時、軸方向エアー通路2hの一端には、図2に示す態様
で、検出手段20およびレギュレータ21を介して圧縮
エアー源22が接続されている。圧縮エアー源22から
の圧縮エアーAはレギュレータ21にて一定圧力に設定
された後、検出手段20を介して軸方向エアー通路2h
に供給され、さらに、半径方向エアー通路2iを通っ
て、間隔Sから外部に噴出する。間隔Sの大きさと圧縮
エアーAの背圧、流量、流速とは比例関係にあるので、
これらを検出手段20によって検出することにより、間
隔Sの大きさを求めることができる。このようにして間
隔Sを求めると、さらに、外輪1の軸方向の振れから軸
受アキシャル隙間Δa’を測定する(図3c)。
【0018】その後、図3dに示すように、圧入治具1
1を用いて、内輪3を車軸2の肩部2bに当接するまで
圧入する。この時の圧入ストロークはSである。以上に
より、Δa=Δa’−Sから負の軸受アキシャル隙間Δ
aを求めることができる。
【0019】尚、上記実施例では、内輪3の圧入を一旦
止めるための手段として所定の深さHを有する圧入治具
10を用いているが(図3a)、他の手段として、圧入
当初から圧縮エアーAを供給し、これにより間隔Sを管
理しながら適当な治具で内輪3を圧入してゆき、間隔S
が所望値になった時点で内輪3の圧入を一旦止めること
もできる。
【0020】また、本発明の軸受隙間測定方法は、外輪
の複列の転走面に対向する転走面を有する一対の内輪を
車軸に嵌合するタイプの車軸用軸受にも同様に適用する
ことができる。また、図5に示すような、内輪と車軸の
肩部との間に間隔Wを設けたタイプの車軸用軸受装置に
も(エアー通路を設けることにより)適用可能である。
この場合、内輪の圧入完了後に、さらに、間隔Wを上記
と同様にして求めることにより、Δa=Δa’−(S−
W)から負のアキシャル隙間Δaを求めることができ
る。
【0021】
【発明の効果】本発明は、以下に示す効果を有する。
【0022】(1)軸受の組立工程において、軸受アキ
シャル隙間が正の状態で内輪の圧入を一旦止め、この状
態で軸受アキシャル隙間を測定し、この隙間量から、内
輪の圧入完了までの圧入量をマイナスして負隙間を求め
るので、従来のように、ナットの締付けトルクを厳密に
管理しなくても、負隙間を精度よくしかも簡易に測定す
ることができる。
【0023】(2)隙間測定は、車軸のエアー通路を介
して間隔(S)から噴出させた圧縮エアーの背圧、流量
又は流速などを検出することにより行なうので、軸受隙
間を確実にかつ簡易に測定することができる。
【0024】(2)負隙間が確実に保証されるため、軸
受の初期隙間の範囲を大きくすることができ、これによ
り、不良率を低減することができる。
【0025】(3)内輪を車軸の肩部に当接させた構造
であっても、軸受隙間の測定が可能なので、内輪の微動
による位置ずれを回避し、安定した軸受隙間を維持する
ことができる。
【0026】(4)内輪を車軸の肩部に当接するまで圧
入し、かつ、本発明の軸受隙間測定方法を用いて組立完
了後の負隙間を保証した軸受装置は、軸受寿命、剛性、
フレッテイングの面で信頼性が格段に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係わる車軸用軸受装置を示す断面図で
ある。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】実施例に係わる軸受隙間測定方法を工程順に示
す断面図でる。
【図4】車軸の製造工程を示す図である。
【図5】従来の車軸用軸受装置を示す断面図である。
【図6】一対の内輪を有する複列型アンギュラー玉軸受
における軸受隙間測定方法の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 外輪 1a 転走面 1b 転走面 1c フランジ 2 車軸 2a 転走面 2b 肩部 2c 圧入部 3 内輪 3a 転走面 4a ボール 4b ボール Δa 軸受アキシャル隙間(負隙間) Δa’ 軸受アキシャル隙間(正隙間) S 間隔

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外周にフランジを周設し、内周に複列の
    転走面を設けた外輪と、外輪の転走面のうち一方に対向
    する転走面を外周に設けた内輪と、外輪の転走面のうち
    他方に対向する転走面、および、内輪を圧入する圧入部
    を肩部を介して外周に連設した車軸と、外輪と内輪およ
    び車軸との間に介在する複列のボールとを有する車軸用
    軸受装置の軸受隙間を測定する方法であって、 肩部近傍にて外部に開口したエアー通路を車軸に形成
    し、内輪を車軸の圧入部に圧入するに際し、軸受アキシ
    ャル隙間が正の状態で圧入を一旦止め、この状態におけ
    る車軸の肩部とこれに対向する内輪の端面との間の間隔
    (S)を、上記エアー通路を介して間隔(S)から噴出
    させた圧縮エアーの背圧、流量又は流速などの検出値か
    ら求めると共に、この状態における軸受アキシャル隙間
    (Δa’)を測定し、その後、内輪を車軸の肩部に当接
    するまで圧入することにより、 Δa=Δa’−Sから負の軸受アキシャル隙間(Δa)
    を求めることを特徴する車軸用軸受装置の軸受隙間測定
    方法。
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