JP2797087B2 - ロータリースクリーン用スクリーンシリンダーを製造するためのメッキ方法及び装置、並びにロータリースクリーン用スクリーンシリンダー - Google Patents

ロータリースクリーン用スクリーンシリンダーを製造するためのメッキ方法及び装置、並びにロータリースクリーン用スクリーンシリンダー

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JP2797087B2 JP15017396A JP15017396A JP2797087B2 JP 2797087 B2 JP2797087 B2 JP 2797087B2 JP 15017396 A JP15017396 A JP 15017396A JP 15017396 A JP15017396 A JP 15017396A JP 2797087 B2 JP2797087 B2 JP 2797087B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、網目状金属の円筒体か
らなるロータリースクリーン用スクリーンシリンダーを
製造するためのメッキ方法及びメッキ装置、並びにこの
メッキ装置を用いて製造されたロータリースクリーン用
スクリーンシリンダーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】これまで、網目状金属の円筒体からなる
ロータリースクリーン用スクリーンシリンダーの周面を
電気メッキする際に使用されるメッキ装置としては、メ
ッキ液が貯溜されるメッキ槽の内部に網目基質が配置さ
れ、この網目基質の外側に陽極が設けられ、網目基質を
メッキ液中に浸漬させて回転させながら、陽極と網目基
質(陰極)との間に電流を流して電気メッキする構造の
ものが一般的である。ところが、このような従来より知
られているメッキ装置を使用して電気メッキを行った場
合、網目基質の内周面側にはメッキ層が析出しにくく、
網目基質の外周面側に優先的にメッキ層が析出するの
で、図8に示されるように、得られるシリンダーの拡大
断面形状において、第一メッキ工程で得られた網目基質
7の内周面8a’側における第二メッキ層の厚みの方
が、網目基質7の外周面8b’側の厚みよりも小さく、
内面側が平坦に近く、外面側が球面状にふくれた第二メ
ッキ層8が形成され、外周面へのメッキ層の析出と共に
開口率が低くなる。ところで、ロータリースクリーン用
スクリーンシリンダーにおいては、型際が良く、図柄の
輪郭及び細線が鮮明にプリントできるものが望まれてお
り、このようなプリントを得るには、スクリーン内にあ
る捺染糊が外側に出やすく、高メッシュの開口率の良
い、又、必要な剛性のある最小の厚さのスクリーンシリ
ンダーが必要である。上記の要望があるにもかかわら
ず、従来のメッキ装置を用いて製造されたロータリース
クリーン用スクリーンシリンダーの場合には、布基材上
に印捺を行った際に、特に合繊布に要求される比較的高
粘性の捺染糊が、シリンダーの外側に移行しにくいため
に色相が薄くなり、捺染糊の盛りが悪く、立体感のある
図柄を有する製品を得ることが困難であった。又、図柄
の細線部分についてはシャープに印捺できず、微細な図
柄が再現しにくいという問題点もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の従来
のメッキ方法及び装置における問題点を解決し、網目状
金属の円筒体からなる網目基質の内周面側におけるメッ
キ層析出と外周面側におけるメッキ層析出とを任意に調
整することが可能なメッキ方法及びメッキ装置を提供す
ることを課題とする。又、本発明は、従来のロータリー
スクリーン用スクリーンシリンダーに比べて、シリンダ
ーの外周面側だけでなく内周面側にも厚くメッキ層が析
出されており、シリンダー断面における内面側のコーナ
ー部が大きな丸みを帯びた形状であることによって、比
較的高粘性の捺染糊であっても容易にシリンダーの外周
面側へ流出し、立体感のある図柄がシャープに再現でき
るスクリーンシリンダーを提供することを課題とするも
のでもある。
【0004】本発明者らは、スクリーンシリンダーの開
口率を高めるために、回転しながら電気メッキされる網
目基質の内側の位置と外側の位置にそれぞれ陽極を設
け、網目基質の内周面側にメッキ層が多く析出するよう
にし、網目基質の内側に位置する陽極と外側に位置する
陽極とを適宜選択して、あるいは同時に2つの陽極を使
用し電流密度を適宜選択して電気メッキを行うことによ
り、所望の厚み及び断面形状を有し、かつ開口率の大き
なロータリースクリーン用スクリーンシリンダーが得ら
れることを見い出し、本発明を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のメッキ方法は、
網目状金属の円筒体からなるロータリースクリーン用ス
クリーンシリンダーを製造するためのものであって、メ
ッキ液が貯溜されたメッキ槽の内部に、陰極として作用
する円筒体状の金属製の網目基質を配置し、前記網目基
質の内側には第一陽極を配置し、前記網目基質の外側に
は第二陽極を配置し、前記第一陽極と第二陽極のいずれ
か一方又は両陽極に、前記網目基質との間に電流を流す
ことによって網目基質の周面を電気メッキするものであ
る。本方法によると、網目基質とその内側にある第一陽
極との間に電流を流すことで、網目基質の内周面側への
メッキ層析出を多くすることができ、逆に、網目基質と
その外側にある第二陽極との間に電流を流すことで、網
目基質の外周面側へのメッキ層析出を多くすることがで
き、又、網目基質と両陽極との間に同時に電流を流すこ
とで、網目基質の内周面と外周面を同時に電気メッキで
きる。この際、第一陽極−網目基質間の電流(電流密
度)と、第二陽極−網目基質間の電流(電流密度)を変
えても良い。
【0006】図1(a)及び(b)は本発明のメッキ方
法を示す概略図であり、本方法では、メッキ液Lが貯溜
されたメッキ槽1の内部に、陰極として作用する、円筒
体状の金属製の網目基質7をメッキ液Lに浸漬した状態
で配置し、この網目基質7の内側に第一陽極3を配置
し、網目基質7の外側に第二陽極4を配置し、第一陽極
3と第二陽極4のいずれか一方又は両陽極と、網目基質
7との間に電流を流し、網目基質7を回転させながら電
気メッキする。図1では、電源との接続状態が省略され
ているが、網目基質7は電源の陰極に、第一陽極3及び
第二陽極4は電源の陽極に接続されており、網目基質7
の取り付け方法は特に限定されない。尚、本発明では、
第一陽極3は、網目基質7の内周面が均一にメッキでき
るように、網目基質7の中心軸線上に配置されることが
好ましいが、網目基質7がその中心軸を軸として回転す
るので、必ずしも第一陽極3は網目基質7の中心軸線上
になくても良く、網目基質7の母線に対して平行に配置
されれば良い。一方、第二陽極4は、網目基質7の外周
面よりも外側で、網目基質7の母線に対して平行に配置
されれば良い。本発明では、網目基質7は、その中心軸
がメッキ液Lの液面と平行に配置されても、図10に示
されるようにして鉛直方向に吊り下げられた状態で配置
されても良く、前者の場合には、網目基質7の一部が母
線に沿ってメッキ液Lの液面から露出しても良い(図1
(a)及び(b)参照)。
【0007】又、本発明のメッキ装置は、網目状金属の
円筒体からなるロータリースクリーン用スクリーンシリ
ンダーを製造するためのメッキ装置であって、前記メッ
キ装置が、メッキ液を内部に貯溜可能なメッキ槽と、円
筒体状の金属製の網目基質を取り付け保持可能な構造を
有する保持部材と、前記保持部材に前記網目基質を取り
付けた際の、該網目基質の内側に配置された第一陽極
と、該網目基質の外周面よりも外側に配置された第二陽
極とを具備し、前記保持部材が、該保持部材を介して前
記網目基質と電源の陰極とが電気的に接続される構造を
有し、しかも、前記網目基質が、該網目基質の中心軸を
軸として回転する構造を有する。
【0008】図2(a)及び(b)には、本発明のメッ
キ装置の好ましい一例における内部構造が示されてお
り、この図に示されるように、本発明のメッキ装置は、
メッキ槽1、保持部材2、第一陽極3及び第二陽極4を
具備する。本発明のメッキ装置におけるメッキ槽1の内
部には、電気メッキに使用されるメッキ液が貯溜され、
その材質としては、合成樹脂製のものが一般的である。
【0009】又、本発明の装置には、円筒体状の金属製
の網目基質7を取り付け保持可能な構造を有する保持部
材2が設けられており、電気メッキを実施する際には、
この保持部材2に網目基質7を取り付け、網目基質7を
メッキ液中に浸漬する。この際、網目基質7をメッキ液
の液面に対して平行に浸漬保持する場合には、図2
(a)に示されるように、保持部材2に、網目基質7の
左右両端部内に嵌め込み可能な形状を有する嵌入保持部
10を設けて、網目基質7全体を安定して固定できる構
造とすることが好ましく、このような嵌入保持部10に
は、網目基質7の着脱が容易に行えるようにテーパーを
設けるのが一般的である。尚、本発明の装置では、この
保持部材2を介して、網目基質7が電源の陰極と接続さ
れるようになっており、保持部材2は、全体が導電性を
有する材質からなるものが一般的であるが、部分的に保
持部材2と網目基質7が電気的に接続される構造のもの
であっても良い。
【0010】そして、本発明のメッキ装置にあっては、
保持部材2に網目基質7を取り付けた際の網目基質7の
内側の位置に、第一陽極3が、該網目基質7の中心軸と
平行、即ち、網目基質7の母線と平行に配置されてお
り、電源の陽極に接続された第一陽極3と、保持部材2
を介して電源の陰極に接続された網目基質7との間に電
流を流した際、第一陽極3と網目基質7との間に存在す
るメッキ液により、網目基質7の内周面へのメッキ層の
析出量が外周面の析出量よりも多くなる。本発明におけ
る第一陽極3は、棒状のものであっても管状のものであ
っても良く、特にその構造が限定されるものではない
が、通常は網目基質7の長手方向の長さと実質的に同じ
長さを有するものが好ましい。又、第一陽極3と網目基
質7とは同心円的に配置、即ち、第一陽極3が網目基質
7の中心軸線上に位置するように配置されることが好ま
しく(図2(b)参照)、この際、図6に示されるよう
にして、第一陽極3の外周面に陽極隔膜16が設けられ
ても良い。尚、本発明における第一陽極3は、図3に示
されるように、網目基質7の回転中心に位置するパイプ
シャフト9を中心とする円周上に、丸棒状のニッケル製
第一陽極3’が複数本、等角度間隔をあけて配置され、
各陽極3’が電気的に接続(図面では実線で示されてい
る)された構造のものであっても良い。
【0011】又、本発明の装置における保持部材2は、
網目基質7の中心軸を軸として回転可能に設けられてお
り、本発明のメッキ装置による網目基質7の周面への電
気メッキは、メッキ液中で網目基質7を軸回転させなが
ら行われる。図2に例示した装置では、保持部材2と第
一陽極3とが、電気絶縁部材11を介して電気的に絶縁
された状態で一体化し、駆動装置12により軸回転する
パイプシャフト9と共に、第一陽極3と網目基質7が一
定速度で回転する構造になっているが、本発明の装置
は、第一陽極3が回転しない構造のものであっても良
く、第一陽極3と網目基質7との電気的絶縁構造につい
ても図2に例示したものに限定されない。
【0012】更に、本発明のメッキ装置には、保持部材
2に網目基質を取り付けた際の該網目基質の外周面より
も外側の位置に、電源の陽極に接続された第二陽極4が
設けられており、この第二陽極4と保持部材2との間に
電流を流した際、第二陽極4と網目基質7との間に電流
が流れ、網目基質7の内周面よりも外周面の方に多く
(厚く)メッキ層が析出する。本発明における第二陽極
4も、特にその構造が限定されるものではないが、ポリ
プロピレン製の繊維で織られた袋の中にニッケルチップ
(小片)を入れたものが特に適しており、この場合に
は、第二陽極4は、メッキ槽1とは電気的に絶縁された
状態で、メッキ液中に浸漬されるようにしてメッキ槽1
の上方から吊り下げられて設けられる。
【0013】尚、本発明の装置では、網目基質7の周面
への均質なメッキ層が析出されるようにするために、図
2(a)及び(b)に示されるように、第二陽極4とし
て、一対の第二陽極4a、4bが、保持部材2に取り付
けられた網目基質7を挟んで対向する位置に、網目基質
7の母線に対して平行に配置されることが好ましく、各
第二陽極と網目基質7との距離は同じであることが好ま
しい。更に、本発明では特に、網目基質7の外周面と第
二陽極4a、4bの内側面との間隔が一定となるよう
に、図4(a)に示される如く、網目基質7の外側に位
置する第二陽極4a、4bを、網目基質7の直径に対応
した同心円断面形状とし、これをそれぞれ網目基質7と
同心円的に配置することが特に好ましく、図4(b)に
示される同心円断面形状を有する第二陽極4を網目基質
7と同心円的に配置しても良い。更に、本発明のメッキ
装置にあっては、保持部材2に網目基質7を取り付けた
際の、該網目基質7の斜め下方に、該網目基質7の母線
に対して平行になるようにして、メッキ液を網目基質7
に向かって供給するためのメッキ液噴出管5を設けるこ
とが好ましい。このメッキ液噴出管5には、管の長手方
向に沿って直線上に複数個のメッキ液噴出孔6が設けら
れており、各メッキ液噴出孔6からは、網目基質7に向
かってメッキ液が供給されるようになっている。ただ
し、メッキ液噴出管5からのメッキ液の噴出方向は、図
2(b)に示される方向に限定されるものではない。本
発明では、図2(a)に示されるように、メッキ液が網
目基質7に沿ってシリンダーの中心より分かれてシリン
ダーの軸方向と平行に流れ、メッキ槽1の両端軸の軸受
け溝よりオーバーフロー受槽17を経て循環する構造と
することが好ましい。
【0014】図2(a)及び(b)には、本発明のメッ
キ装置として、メッキ液の液面に対して網目基質を平行
な方向に架設してメッキを実施する横型タイプの装置が
例示されているが、本発明のメッキ装置は、網目基質を
鉛直方向に吊り下げた状態でメッキ液中に浸漬し、網目
基質を回転させながら電解メッキを行う縦型タイプ(図
10参照)の装置であっても良く、縦型タイプの装置の
場合、電気メッキの進行と共に陽極側に生じるニッケル
酸化物の不純物が沈降除去でき、シリンダーへの付着が
防止できるという利点がある。
【0015】本発明のメッキ装置を用いてロールにメッ
キ層を析出させる際に使用されるメッキ液は、これまで
ニッケルメッキ液として知られている組成のものが種々
使用できるが、電着応力の少ない開孔率を大きくする点
で特に適したニッケルメッキ浴としては、スルファミン
酸ニッケル、臭化ニッケル及びホウ酸を含むスルファミ
ン酸浴が挙げられ、一般的な添加剤を配合しても良い。
尚、このスルファミン酸浴のpH値としては3.5〜
4.5が一般的である。
【0016】次に、上述のメッキ装置を用いて製造され
る本発明のロータリースクリーン用スクリーンシリンダ
ーについて説明する。本発明のロータリースクリーン用
スクリーンシリンダーは、電気メッキにより形成された
円筒体状の第一メッキ網目基質7の表面に、電気メッキ
により形成された第二メッキ層8が施されたもので、図
7(a)〜(d)に示される拡大断面図から理解される
ように、第二メッキ層8において、第一メッキ網目基質
7の周面に対して垂直方向の内周面側の最大成長厚みd
1 、外周面側の最大成長厚みd2 、及び該周面に対して
水平方向の成長厚みd3 が、式d1 /d2 =0.75〜
1.25及びd3 /d2 =0.35〜0.45を満たす
ことを特徴とする。又、本発明は、上記特徴を有するロ
ータリースクリーン用スクリーンシリンダーにおいて、
式d1 /d2 >1である、即ち、第一メッキ網目基質7
の内周面側の方が、外周面側よりも厚くメッキされてい
ることを特徴とするものでもある。
【0017】図7(a)〜(d)には、本発明のロータ
リースクリーン用スクリーンシリンダーの拡大断面形状
の具体例が示されており、図9には、特に好ましいスク
リーンシリンダーの一例として、図8と同様の断面形状
を有する第一メッキ網目基質7に対し、第二メッキ層8
が、外周面側よりも内周面側の方が厚く(1<d1 /d
2 ≦1.25)メッキされた構造のものが示されてい
る。ここで、本発明のロータリースクリーン用スクリー
ンシリンダーの拡大断面形状(図9)と、従来のものの
拡大断面形状(図8)とを比較してみると、従来品の断
面形状が、内面側が平坦で、内面側のコーナー部のRが
小さく、印捺基材と接する側の外面側が球面状であるの
に対し、本発明品では、内面側のコーナー部のRが大き
く、印捺時に捺染糊が外側方向に押し出される際の抵抗
が小さくなる形状となっているために、比較的高粘性の
捺染糊の流出が容易となり、立体感のある図柄を鮮明に
再現するのに適している。特に高粘性の糊は、疎水性の
テトロン等の合成繊維布帛への捺染に好都合である。た
だし、本発明のロータリースクリーン用スクリーンシリ
ンダーの拡大断面形状は、図7(a)〜(d)及び図9
に例示したものに限定されるものではなく、種々の印捺
条件に合わせて適宜、最適断面形状が選択される。
【0018】以下に、本発明のロータリースクリーン用
スクリーンシリンダーを製造する際の手順を説明する。
まず、図5(a)に示されるように、円筒体の外周面に
網状の導電部13が形成され、しかも、この導電部13
によって囲まれる部分に非導電部14が形成されたマザ
ーロール15を準備し、このマザーロール15の表面に
電気メッキを施すことにより、導電部13上に選択的に
メッキ層を析出させ、円筒体状の第一メッキ網目基質7
を形成し、この円筒体をマザーロール15から抜き取
る。このようにして得られた第一メッキ網目基質7の拡
大断面形状は、内周面側が平坦で、外周面側が湾曲した
半円形状となる(図5(b)参照)。
【0019】そして、この第一メッキ網目基質7を、図
6に示されるようにして、前述の本発明のメッキ装置に
おける保持部材2に取り付け保持し、これを、メッキ槽
の内部に貯溜されたメッキ液中に浸漬して回転させなが
ら、第一メッキ網目基質7の内側に配置された第一陽極
が陽極となって、第一メッキ網目基質7が陰極となるよ
うにしてそれぞれ電源に接続し、電気メッキを行う。こ
の場合、メッキ層は、第一メッキ網目基質7の周面全
面、即ち、内周面側にも外周面側にも析出するが、この
ようにして析出されるメッキ層の厚みは、第一メッキ網
目基質7の内周面側の方が外周面側よりも大きくなる。
この際、必要に応じて、第一メッキ網目基質7と、その
外側に位置する第二陽極との間に電流を流して、第一メ
ッキ網目基質7の外周面側からもメッキ層を析出させ、
所望の断面形状を有するロータリースクリーン用スクリ
ーンシリンダーを得る。
【0020】このようにして製造された本発明のロータ
リースクリーン用スクリーンシリンダーは、メッキ層が
スクリーンシリンダー面に対して垂直方向に優先して成
長しており、開孔率が良く、しかも印捺糊が出易く、印
捺糊の盛りが良いために、このシリンダーを用いて布基
材上への印捺を行った場合、立体感及びボリューム感の
ある図柄を有する製品が製造できる。又、本発明のスク
リーンシリンダーは、印捺糊の切れが良く、型際が良い
ので細い線が再現でき、鮮明な模様の製品を製造するの
に適している。
【0021】
【実施例】金属製の円筒状基体の外周面に銅メッキ層を
形成し、この銅メッキ層に型押しによって網目状に多数
の凹部を形成した後、銅メッキ層上に更にクロムメッキ
層を形成し、このクロムメッキ層上に形成された凹部内
に絶縁性樹脂を充填して非導電部を形成した後、この外
周面を研磨処理し、図5(a)に示した構成のマザーロ
ールを作製した。このようにして作製したマザーロール
の導電部の線幅は15〜20μmである。そして、ニッ
ケルメッキ浴として、スルファミン酸ニッケル200〜
400g/l、臭化ニッケル5〜15g/l及び、ホウ
酸20〜30g/lを含む一般的なスルファミン酸浴
(pH値:約4.0)を調製し、このスルファミン酸ニ
ッケルメッキ浴を用いて、浴温50℃、電流密度1〜4
A/dm2 、通電時間60分間の作業条件にて、前記マ
ザーロールの外周面にニッケルメッキを施し、マザーロ
ールの導電部上に選択的に第一メッキ層を形成した。得
られた第一メッキ層をマザーロールから抜き取り、網状
にニッケル金属からなる筒状体の第一メッキ網目基質を
得た。この第一メッキ網目基質の厚さは35〜50μm
である。
【0022】その後、この第一メッキ網目基質を、図2
(a)及び(b)に示される構造を有した本発明のメッ
キ装置の保持部材に取り付け保持させ、前記と同様のス
ルファミン酸ニッケルメッキ浴中にて、浴温50℃、電
流密度1〜5A/dm2 、しかも、網目基質を0.5〜
5回転/分の速度で回転させながら2つの陽極を使用し
てニッケルメッキを施し、本発明のロータリースクリー
ン用スクリーンシリンダー(平均厚さ100μm、d1
/d2 = 0.75、d3 /d2 = 0.40)を得た。
【0023】
【発明の効果】本発明のメッキ方法では、電流の流れる
陽極を適宜選択することで、網目基質の内周面側へのメ
ッキ層の析出量と外周面側へのメッキ層の析出量が調整
でき、特に第一陽極の使用により網目基質の内周面側に
メッキ層を多く析出させることで、スクリーンシリンダ
ーの開口率の低下を防止でき、本方法は、開口率の良い
ロータリースクリーン用スクリーンシリンダーを製造す
るのに好適である。又、本発明のメッキ装置は、網目基
質の内側に位置する第一陽極と、外側に位置する第二陽
極とを適宜選択して使用することができる構造を有して
おり、二次メッキでは比較的短時間で一定厚みのメッキ
層が形成でき、この装置を用いた電気メッキの場合、網
目基質の内周面と外周面を交互にメッキすることがで
き、その結果、所望の厚み及び断面形状を有するメッキ
層が形成されたメッキ製品を得ることができる。更に、
このようなメッキ装置を用いて得られる本発明のロータ
リースクリーン用スクリーンシリンダーは、開孔率が良
好で、印捺糊の盛りが良く、立体感のある図柄を有する
製品を製造するのに好適で、しかも、印捺糊の切れが良
く、鮮明な模様の製品を製造するのに適したものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は、本発明のメッキ方法に使用
する装置の概略図であり、(a)は、この装置の正面図
で、(b)は、この装置の側面図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明のメッキ装置の好ま
しい一例における内部構造を示す図であり、(a)は、
装置を上方から見たときの図で、(b)は、装置を側方
から見たときの図である。
【図3】複数の第一陽極3’が等角度間隔をあけて配置
されてなる第一陽極と、網目基質7との位置関係を示す
図である。
【図4】(a)、(b)は、第一陽極3と、網目基質7
と、第二陽極4a、4b及び4の好ましい位置関係を示
す図である。
【図5】(a)は、マザーロール15の表面に電気メッ
キを施し、導電部13上にメッキ層を析出させ、円筒体
状の第一メッキ網目基質7を形成する際の図であり、
(b)は、この網目基質7をマザーロール15から抜き
取った際の図である。
【図6】保持部材2に、第一メッキ網目基質7を取り付
け保持する際の状態を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明のロータリースクリ
ーン用スクリーンシリンダーにおける断面形状を示す拡
大図である。
【図8】従来のロータリースクリーン用スクリーンシリ
ンダーにおける断面形状を示す拡大図である。
【図9】本発明のロータリースクリーン用スクリーンシ
リンダーの特に好ましい一例における断面形状を示す拡
大図である。
【図10】網目基質7が鉛直方向に配置されるタイプの
本発明のメッキ装置の概略図である。
【符号の説明】
1 メッキ槽 2 保持部材 3 第一陽極 4、4a、4b 第二陽極 5 メッキ液噴出管 6 メッキ液噴出孔 7 網目基質(第一メッキ網目基質) 8 第二メッキ層 9 パイプシャフト 10 嵌入保持部 11 電気絶縁部材 12 駆動装置 13 導電部 14 非導電部 15 マザーロール 16 陽極隔膜 17 オーバーフロー受槽
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−362188(JP,A) 特開 平4−311594(JP,A) 特開 昭57−158396(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C25D 7/00 - 7/04 C25D 21/10

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 網目状金属の円筒体からなるロータリー
    スクリーン用スクリーンシリンダーを製造するためのメ
    ッキ方法であって、メッキ液Lが貯溜されたメッキ槽1
    の内部に、陰極として作用する円筒体状の金属製の網目
    基質7を配置し、前記網目基質7の内側に第一陽極3を
    配置し、前記網目基質7の外側に第二陽極4を配置し、
    前記第一陽極3と第二陽極4のいずれか一方又は両陽極
    に、前記網目基質7との間に電流を流すことによって前
    記網目基質7の周面を電気メッキすることを特徴とする
    ロータリースクリーン用スクリーンシリンダーを製造す
    るためのメッキ方法。
  2. 【請求項2】 網目状金属の円筒体からなるロータリー
    スクリーン用スクリーンシリンダーを製造するためのメ
    ッキ装置であって、前記メッキ装置が、メッキ液を内部
    に貯溜可能なメッキ槽1と、円筒体状の金属製の網目基
    質7を取り付け保持可能な構造を有する保持部材2と、
    前記保持部材2に前記網目基質7を取り付けた際の、該
    網目基質7の内側に配置された第一陽極3と、該網目基
    質7の外周面よりも外側に配置された第二陽極4とを具
    備し、前記保持部材2が、該保持部材2を介して前記網
    目基質7と電源の陰極とが電気的に接続される構造を有
    し、しかも、前記網目基質7が、該網目基質7の中心軸
    を軸として回転することを特徴とするロータリースクリ
    ーン用スクリーンシリンダー製造用メッキ装置。
  3. 【請求項3】 前記第二陽極4として、前記保持部材2
    に取り付けられた網目基質7を挟んで対向する位置に、
    該網目基質7の母線に対して平行な第二陽極4a、4b
    が設けられており、前記第一陽極3が、前記網目基質7
    の中心軸線上に配置され、しかも、前記保持部材2に網
    目基質7を取り付けた際の、該網目基質7の斜め下方に
    は、該網目基質7の母線に対して平行に配置されたメッ
    キ液噴出管5が設けられており、前記メッキ液噴出管5
    が複数個のメッキ液噴出孔6を有し、前記メッキ液噴出
    孔6から、前記保持部材2に取り付けられた網目基質7
    に向かってメッキ液が供給されることを特徴とする請求
    項2記載のメッキ装置。
  4. 【請求項4】 電気メッキにより形成されたロータリー
    スクリーン用スクリーンシリンダーであって、前記シリ
    ンダーが、円筒体状の第一メッキ網目基質7と、該第一
    メッキ網目基質7の表面に施された第二メッキ層8とか
    らなり、前記第二メッキ層8において、前記第一メッキ
    網目基質7の周面に対して垂直方向の内周面側の最大成
    長厚みd1 、外周面側の最大成長厚みd2 、及び該周面
    に対して水平方向の成長厚みd3 が、式d1 /d2
    0.75〜1.25及びd3 /d2=0.35〜0.4
    5を満たすことを特徴とするロータリースクリーン用ス
    クリーンシリンダー。
  5. 【請求項5】 前記第二メッキ層8の成長厚みが、式d
    1 /d2 >1を満たすことを特徴とする請求項4記載の
    ロータリースクリーン用スクリーンシリンダー。
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