JP2795827B2 - 人工歯連結体、その調整方法、咬合床製作方法及び総義歯製作方法 - Google Patents

人工歯連結体、その調整方法、咬合床製作方法及び総義歯製作方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工歯配列、咬合
採得を極めて簡便に行なうための人工歯連結体及びそれ
を用いた総義歯の製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、総義歯の製作は、印象採得→模型
作製→基礎床作製→咬合床作製→咬合採得→咬合器装着
→人工歯排列→歯肉形成→ロウ義歯の試適→埋没→流ロ
ウ→レジン填入→重合硬化→取り出し→仕上げ研磨 と
いう極めて多くの、かつ独立した工程からなる。
【0003】そして、高性能の総義歯を得る為には、前
記の工程の総てが重要であり、慎重かつ正確な操作が要
求される。その中でも咬合関係の良否が義歯の性能に大
きく関与するため、咬合採得は最も重要な工程の一つと
なる。
【0004】この咬合採得は、従来、患者の顎堤形態に
合わせて作製した基礎床上に、人工歯を植立するため、
ワックスを盛り上げて作ったロウ堤、いわゆる咬合床を
用いて行なわれている。すなわち、咬合床を患者の口腔
内に装着し、咬合高径、咬合平面、前歯の長さ、口唇の
ふくらみ等を完成義歯を想定しながら、咬合堤のロウを
削ったり、盛り足したりして適切な形に整形する。そし
て、上下の咬合床を口腔内に装着し、咬み合わせること
により、上下、前後、左右の位置を決定する。
【0005】しかし、この段階で使用する咬合床には、
人工歯が一本も排列されていないため、この咬合床を用
いて咬合採得した場合と、ほぼ完成義歯に近い形の、な
すわち、より生理的な状態に近い、人工歯を排列したロ
ウ義歯で咬合採得した場合とでは、咬合採得した位置に
ずれが生じることがしばしば起こる。もちろん、後者の
方が正しい位置を示すので、このような場合は再度咬合
採得及び人工歯排列からやり直さなければならず、その
ためには多大の労力と時間を必要とする。
【0006】また、ロウ義歯での試適を行なわずに義歯
を製作することもあり、製作後に咬合関係等の不都合が
見出された場合、その改善は極めて困難となり、咬合面
を大幅に削除したり、あるいは咬合面に即時重合レジン
を盛り足して再構築しなければならなくなり、また、場
合によっては初めから作り直さなければならなくなる。
【0007】このようなことを避けるためには、人工歯
を排列した咬合床を用いて咬合採得を行なうことが望ま
しいが、この上下顎総義歯の場合、28本の全人工歯を
排列するには非常に多くの手間と時間を必要とし、ま
た、患者の表情に大きく影響する前歯の長さや歯軸傾斜
を決定するには、大変な熟練と苦労を要する。しかも、
咬合採得の結果、咬合高径、咬合平面等を変更しなけれ
ばならない場合、ロウ堤のように削ったり、足したりし
て簡単に調整することができず、結局全人工歯の再排列
が必要となる。
【0008】このような人工歯排列の工程を簡略化する
ものとして、臼歯の3〜4本を一体に連結固定した商品
が市販されている。たしかにこれらの連結歯を用いるこ
とにより、臼歯部の排列は簡略化できるものの、前歯部
は従来どうり一本づつ排列しなければならない。また、
連結された歯は全く動かすことができず、歯列形状の変
更、調整はもはや不可能である。
【0009】また、全人工歯を軟質の材料で結合した連
結歯も提案されている。これは全部の人工歯が連結され
ており、かつ、フレキシブルで患者固有の顎堤形状に容
易に適合させ得るため、極めて簡単に人工歯の排列を行
なうことができる。また、全人工歯が連結されているた
め、各人工歯が独立している場合に比べ、排列後の調整
も格段に容易となる。
【0010】しかし、人工歯の連結に軟質の材料を使用
しているため、強度的な面からその連結歯をそのまま義
歯の製作に利用することはできず、ロウ義歯の試適が終
わった後は、従来どうり埋没以降の工程を総て実施しな
ければならない。従って、その間の煩雑な技工操作時に
生じるミスやレジンの重合収縮、熱収縮により、出来上
がった義歯はかなりの寸法変化を起すことも多く、義歯
製作後に再度の調整を必要とすることも少なくない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述したよ
うな従来の咬合採得法、及び義歯製作法の問題点を解決
するために行なったものであり、人工歯の排列を簡便化
し、かつ排列後の調整が極めて容易となり、しかも咬合
採得後は、そのまま基礎床と直接接合することにより、
極めて短時間に総義歯を製作することができる人工歯連
結体、その調整方法、咬合床製作方法及び総義歯製作方
法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明の人工歯連結体は、上顎用又は下顎用の総て
の人工歯が、ガラス転移温度が40〜80℃の範囲であ
るアクリル系レジンで接合されたものである。
【0013】そして、前記人工歯連結体を構成するアク
リル系レジンとしては、ラジカル重合可能なメタクリル
酸エステル、可塑剤、ラジカル重合促進剤からなる液剤
と、メタクリル酸エステル重合体あるいは共重合体、ラ
ジカル重合開始剤からなる粉剤とで構成され、液剤と粉
剤を混合することにより常温下で重合反応が開始し、硬
化する材料が用いられる。
【0014】また、本発明の人工歯連結体調整方法は、
前記人工歯連結体を、アクリル系レジンのガラス転移温
度以上に加熱することにより変形させ、歯列形状を変形
させて調整し、その調整後、ガラス転移温度より低く冷
却するものである。
【0015】さらに、本発明の咬合床製作方法は、前記
調整方法により調整した人工歯連結体を、基礎床上にワ
ックスで仮接合し、咬合床を製作するものである。
【0016】その上、本発明の総義歯製作方法は、前記
製作方法により製作された咬合床により患者の咬合採得
を行ない、咬合高径、咬合平面等の調整をした後、人工
歯連結体と基礎床とをレジンで直接接合固定し、総義歯
を製作するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の人工歯連結体は、上顎用
又は下顎用の総ての人工歯を、ガラス転移温度が40〜
80℃の範囲であるアクリル系レジンで接合して形成す
る。
【0018】そして、前記アクリル系レジンとしては、
ラジカル重合可能なメタクリル酸エステル、可塑剤、ラ
ジカル重合促進剤からなる液剤と、メタクリル酸エステ
ル重合体あるいは共重合体、ラジカル重合開始剤からな
る粉剤とで構成され、前記液剤と前記粉剤を混合するこ
とにより常温下において重合反応が開始し、硬化する材
料である。
【0019】次に、その材料を用いて人工歯連結体を製
作する方法の1例を説明する。予め基準に従って人工歯
を排列した上下一組のロウ義歯を作製し、その各歯列の
印象をシリコーン印象材で採得する。
【0020】次に、採得したシリコーン印象の人工歯部
に、作製したロウ義歯に使用したものと同種類の人工歯
を並べ、前記の粉液混合物を人工歯の基底面が被覆され
る程度に流し込み、常温下で重合硬化させ、人工歯連結
体を製作する。
【0021】同様にして大きさの異なる上下一組のロウ
義歯を何組か製作し、その歯列の印象を採得しておくこ
とにより、いかなる患者にも対応することが可能とな
る。
【0022】本発明に使用する人工歯としては、レジン
歯、硬質レジン歯、陶歯等いかなるものも含まれるが、
結合材として用いるアクリル系レジンとの接着性の面か
らレジン歯を用いることが好ましい。陶歯のようなアク
リル系レジンとの強固な接着を期待できない人工歯を使
用する場合は、維持孔を設ける等の機械的な接合を行な
うか、あるいは接着剤を使用することが必要となる。
【0023】そして、本発明に使用するアクリル系レジ
ンは、ガラス転移温度が40〜80℃の範囲に設定して
あるため、常温下では硬質の材料となり、人工歯連結体
も充分な強度を有し、その固有の形態を保持し得る。
【0024】また、ガラス転移温度以上では、レジンの
高分子鎖を構成している数個あるいはそれ以上の繰り返
し単位(セグメント)が自由に運動することが可能とな
り、その結果材料の弾性係数が著しく低下し、弾性変形
性が出現する。
【0025】そのため、ガラス転移温度以上に加熱する
ことにより、人工歯連結体を自由に変形させることが可
能となり、また、変形させた状態でガラス転移温度以下
に冷却することにより、その形状を保持した状態で元の
硬質材料に戻る。従って、患者固有の顎堤形状に適合し
た人工歯連結体を容易に製作することができる。また、
患者の要求に応じて前歯の位置を適宜調整することも可
能となる。
【0026】さらに、前記のように形状調整した人工歯
連結体を、予め患者の顎模型から作製した基礎床上に、
標準値に基づいてパラフィンワックス等のワックスで仮
接合し、咬合床を作製する。この場合、人工歯連結体は
充分な強度を有しているため、人工歯連結体全体を固定
する必要はなく、2〜3カ所をパラフィンワックス等で
固定する程度で充分である。
【0027】このようにして製作した咬合床を用いて咬
合採得を行ない、必要に応じて固定に用いたパラフィン
ワックス等を加熱により軟化させ、咬合高径、咬合平面
等を調整し、人工歯連結体の位置を変動させる。この場
合、全歯列が連結しているため、この調整操作は極めて
簡単に行なえる。
【0028】そして、咬合採得終了後、人工歯連結体と
基礎床とをアクリル系即時重合レジンで数カ所を仮止め
し、固定に用いたパラフィンワックス等を除去した後、
再度アクリル系レジンで人工歯連結体と基礎床との間隙
を埋め、総義歯を製作する。
【0029】従って、本発明の人工歯連結体を用いるこ
とにより、患者固有の顎堤形状に適合するように、その
歯列弓の形状を自由に調整することができ、そのため、
咬合採得用の基礎床上に極めて簡単に全人工歯を排列す
ることができる。
【0030】そして、それを咬合採得用の咬合床として
使用することにより、従来のロウ堤のみによる咬合採得
に比べ、より生理的な状態に近く、精度の高い咬合採得
が行なえるようになる。
【0031】しかも、本発明の人工歯連結体は、口腔内
温度下では充分な強度を有しているため、基礎床と人工
歯連結体を接合するだけで、そのまま総義歯として使用
することが可能となる。この場合、従来法の埋没以降の
工程を省略できるため、総義歯製作が大幅に簡略化でき
る。
【0032】〔実施例〕本発明に使用するアクリル系レ
ジンを構成する液剤のラジカル重合可能なメタクリル酸
エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、
メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシ
エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル
酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル
酸グリシジル等の1官能性モノマー、及び、ジメタクリ
ル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレン
グリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン
等の多官能性モノマーが含まれる。これらは単独で使用
しても2種以上を併用しても良い。
【0033】また、液剤に添加する可塑剤の成分は、硬
化物のガラス転移温度を低下させる作用をなし、さら
に、ガラス転移温度以上においては材料に可塑性を付与
し、人工歯連結体の形態修正を容易にする。
【0034】ここで用いる可塑剤としては、周知のフタ
ル酸エステルが含まれる。その具体例としては、ブチル
フタレート、オクチルフタレート、ジブチルフタレー
ト、ジオクチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリ
コレート、ブチルベンジルフタレート等があげられる。
これらは単独で使用しても、また2種以上を併用しても
よい。
【0035】その添加量は、使用する前記アクリル系モ
ノマーの種類により大きく異なるが、液剤全体に対して
5〜40重量%の範囲であることが好ましい。ここで、
可塑剤の添加量が5重量%より少ないと、ガラス転移温
度の充分な低下をはかるためには分子鎖の長いメタクリ
ル酸エステルの添加量を増やさなければならず、その場
合反応性が大きく低下する。一方、可塑剤の量が40重
量%より多いと、ガラス転移温度が低くなり過ぎ、常温
下で硬質の材料を得ることが困難となる。
【0036】さらに、液剤には常温下で重合硬化させる
ため、重合促進剤として第三級アミンを少量添加する。
本発明の目的に使用し得るものとしては、NN−ジメチ
ルアニリン、NN−ジエチルアニリン、NN−ジメチル
パラトルイジン、NN−ジエチルパラトルイジン、NN
−ジエチルメタトルイジン等が含まれる。これらは単独
で使用しても、また2種以上を併用しても良い。
【0037】これらの添加量は、使用する液成分の種
類、及び粉剤に添加するラジカル重合開始剤の添加量に
よって異なるが、液剤全体に対して0.1〜2重量%の
範囲内で実用的な硬化速度が得られる。ここで、添加量
が0.1重量%より少ないと充分な硬化速度が得られ
ず、また、2重量%より多いと硬化速度が速くなり過
ぎ、変色等の弊害も大きくなる。
【0038】一方、粉剤に使用し得るメタクリル酸エス
テル重合体としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメ
タクリル酸エチルが、また、メタクリル酸エステル共重
合体としては、メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチ
ル共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル
共重合体があげられる。これらは単独で使用しても、あ
るいは2種以上を併用しても良い。
【0039】これらの成分は、種々の分子量及び粒子径
のものが使用できるが、平均分子量10万〜100万、
平均粒子径10μm〜100μmの範囲のものが実用上
好ましい。
【0040】また、粉剤にはラジカル重合開始剤を添加
するが、この成分としては、ベンゾイルパーオキサイド
等のジアシルパーオキサイドが含まれる。ベンゾイルパ
ーオキサイドを使用する場合、その添加量は粉剤全体に
対して0.1〜5重量%であることが好ましい。ここ
で、添加量が0.1重量%より少ないと実用的な硬化速
度が得られず、また、5重量%より多いと添加量を増や
す効果が充分に得られない。
【0041】さらに、粉剤中には硬化物に色彩を施すた
めの着色剤を添加することもできる。硬化物の色を歯肉
色とすることにより、人工歯連結体の審美性を高めるこ
とができ、また、赤色の繊維を添加することにより、い
っそう自然感溢れる色調が得られる。
【0042】本発明に使用するアクリル系レジンは、硬
化物のガラス転移温度を40〜80℃の範囲に限定して
いるが、それは次のような根拠に基づく。すなわち、本
発明において人工歯連結体の形状を調整するに際して、
結合材であるアクリル系レジンのガラス転移温度以上の
温度で変形させ、その形態をガラス転移温度より低くな
るまで保持することにより行なうとしている。
【0043】この場合、加熱温度からガラス転移温度に
達するまでの時間が、実質的な操作時間、すなわち調整
可能時間となる。この操作時間としては、少なくとも1
0秒程度は必要となり、そのためには10℃以上の温度
差が必要となる。ここで、熱源として最も利用が容易な
熱湯(ポットの湯)を考えると、90℃程度の加熱が可
能となり、その場合、ガラス転移温度の上限は80℃と
なる。すなわち、ガラス転移温度が80℃以上であれ
ば、熱湯で充分な軟化が行なえず、かつ、実用的な操作
時間が得られなくなる。
【0044】一方、ガラス転移温度の下限を40℃と設
定したのは、口腔内の温度で充分な強度を保持し、咬合
採得時に人工歯連結体が変形するのを防止するためであ
る。すなわち、ガラス転移温度が40℃より低い材料で
は、充分な軟化が可能となるものの、口腔内で使用する
には、強度、耐熱性の面で問題が生じる。
【0045】次に、本発明の人工歯連結体を用いて咬合
採得を行なう場合の方法について、その一例を具体的に
示す。
【0046】まず、患者の顎形態に合わせて上下の基礎
床を作製する。この基礎床として、現在いくつかの材質
のものが市販されているが、本発明においては人工歯連
結体との接着の面から、アクリル系レジン製であること
が好ましい。その上顎用基礎床上に、患者の顎形態に合
わせて形態修正した上顎用人工歯連結体をパラフィンワ
ックスで固定する。この場合の人工歯連結体の位置は、
標準的な値に基づいて行なえばよい。また、この際の固
定は、人工歯連結体全体に対して行なう必要はなく、充
分な強度が得られる範囲内で、数カ所を部分的に行なえ
ばよい。
【0047】このようにして製作した上顎の咬合床を患
者の口腔内に装着し、咬合高径、咬合平面、前歯の出具
合等をチェックし、何等かの変更の必要がある場合に
は、固定材のパラフィンワックスを熱で軟化させ、人工
歯連結体の位置を移動させる。再度口腔内で試適を行な
い、問題がなければ人工歯連結体と基礎床をアクリル系
常温重合レジンで仮止めする。
【0048】この場合も充分な強度が得られる範囲内
で、部分的に行なえばよい。なお、ここで使用するアク
リル系常温重合レジンとしては、一般に市販されている
ものが使用できる。このようにして上顎用咬合床が完成
する。
【0049】次に、下顎用人工歯連結体を熱湯に浸漬し
て軟化させ、すばやく前記の上顎用咬合床の歯列上に載
せ、上下の歯列が完全に適合するように圧接して変形さ
せる。その状態を、人工歯の結合材として用いたアクリ
ル系レジンのガラス転移温度より低い温度まで保持し、
下顎用人工歯連結体の形態修正を行なう。
【0050】次に、下顎用基礎床上に形態修正した下顎
用人工歯連結体を、上顎の場合と同様に、パラフィンワ
ックスで固定する。この場合、標準的な値よりも咬合高
径を高めに設定しておく。このようにして下顎咬合床が
完成する。
【0051】なお、下顎用人工歯連結体の形態修正は、
上顎用人工歯連結体の形態修正を行なう際に、上顎用人
工歯連結体と下顎用人工歯連結体を予め嵌合させた状態
で輪ゴム等で固定しておき、上下の人工歯連結体を同時
に変形させることによって行なってもよい。
【0052】次に、上下の咬合床を患者の口腔内に装着
し、中心位で所定の咬合高径が得られるまで咬合させ
る。この際、下顎咬合床の固定用パラフィンワックスを
熱で軟化させておくことにより、上下の歯列が合わさっ
た時点で、下顎の人工歯連結体が上顎の人工歯連結体に
適合するように誘導され、上下の咬み合わせは完全なも
のとなる。このようにして咬合採得が完了する。
【0053】ところで、従来の咬合採得法では、咬合採
得後にその咬合床を咬合器に装着し、一歯ずつ人工歯を
排列し、人工歯を排列したロウ義歯を口腔内で試適し、
不都合があれば再度調整、試適を繰り返し、義歯製作に
はいらなければならない。
【0054】しかし、本発明の方法においては、総ての
人工歯を排列した咬合床を用いて咬合採得するため、咬
合採得完了時点で同時に試適も完了するので、直ちに総
義歯製作に入ることができ、しかも、従来の方法に比べ
極めて簡単に総義歯を製作することが可能となる。
【0055】すなわち、咬合採得完了後の咬合床を口腔
内より取り出し、下顎咬合床の人工歯連結体と基礎床を
アクリル系常温重合レジンで仮止めする。次に、上下咬
合床の固定用パラフィンワックスを完全に除去し、その
後、人工歯連結体と基礎床の間隙をアクリル系レジンで
埋め、形態修正する。
【0056】本発明の人工歯連結体には予め歯肉形態が
付与されているため、人工歯連結体と基礎床との空間を
埋めるだけで極めて容易に総義歯が得られる。
【0057】この人工歯連結体と基礎床との接合には、
本発明に使用するアクリル系レジンを応用することもで
き、また、市販のアクリル系常温重合レジン、アクリル
系光重合レジンを用いることもできる。
【0058】このように、本発明の方法によれば、咬合
採得に用いた咬合床をそのまま総義歯にすることがで
き、従来法で行なう埋没以降の技工操作が総て省略でき
るため、極めて簡単、かつ、精度の優れた総義歯を作製
することが可能となる。
【0059】(実験例1)メタクリル酸メチル35重量
部、メタクリル酸イソブチル30重量部、ジブチルフタ
レート20重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
10重量部、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン
5重量部、NN−ジメチルパラトルイジン0.5重量部
をビーカーに入れ、10分間撹拌して均一な液剤を調製
した。
【0060】平均分子量30万、平均粒子径50μmの
ポリメタクリル酸エチル100重量部、ベンゾイルパー
オキサイド0.5重量部、ベンガラ0.05重量部をボ
ールミルに入れ、1時間混合し、均一な粉剤を調製し
た。
【0061】粉剤と液剤を粉/液=2/1.2重量比の
割合で混合して試験片を作製し、ガラス転移温度を測定
した場合の結果、及びこの材料を80℃に加熱した場合
の操作(変形可能)時間を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】(実験例2)メタクリル酸メチル50重量
部、メタクリル酸イソブチル20重量部、ジブチルフタ
レート10重量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル1
0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量
部、NN−ジメチルパラトルイジン0.5重量部をビー
カーに入れ、10分間混合し均一な液剤を調製した。
【0064】平均分子量20万、平均粒子径50μmの
メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体(メ
タクリル酸メチル/メタクリル酸エチル=2/3重量
比)100重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.5重
量部、ベンガラ0.05重量部をボールミルに入れ、1
時間混合し、均一な粉剤を調製した。
【0065】粉剤と液剤を粉/液=2/1.2重量比の
割合で混合した材料に対して、実験例1と同様の試験を
実施した結果を表1に示す。
【0066】(比較例1)メタクリル酸メチル70重量
部、メタクリル酸イソブチル20重量部、メタクリル酸
2−ヒドロキシエチル10重量部、NN−ジメチルパラ
トルイジン0.5重量部をビーカーに入れ、10分間混
合して均一な液剤を調製した。
【0067】この液剤と実験例2に示した粉剤を粉/液
=2/1.2重量比の割合で混合し、実験例1と同様の
試験を実施した結果を表1に示す。この材料のガラス転
移温度は95℃を示し、ポットの湯では軟化させること
ができなかった。
【0068】(比較例2)ジブチルフタレート40重量
部、メタクリル酸メチル30重量部、メタクリル酸2−
ヒドロキシエチル15重量部、メタクリル酸イソブチル
10重量部、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン
5重量部、NN−ジメチルパラトルイジン0.5重量部
をビーカーにいれ、10分間混合し、均一な液剤を調製
した。
【0069】この液剤と実験例1に示した粉剤を粉/液
=2/1.2重量比の割合で混合して試験片を作製した
ところ、常温下において弾性変形性を有しており、硬質
の材料にはならなかった。
【0070】実験例1に示した材料を用い、前述した方
法で上下の人工歯連結体を製作し、前記した方法で咬合
採得、総義歯製作を行なった結果、適合性、咬合関係と
も良好な義歯を得ることができた。
【0071】
【発明の効果】本発明の人工歯連結体、その調整方法、
咬合床製作方法及び総義歯製作方法は、以上説明したよ
うに構成されているので、以下に記載する効果を奏す
る。
【0072】本発明の人工歯連結体は、上顎用又は下顎
用の総ての人工歯が、ガラス転移温度が40〜80℃の
範囲であるアクリル系レジンで接合して形成されている
ため、常温下では硬質の材料となり、充分な強度を有
し、その固有の形態を保持し得る。
【0073】また、本発明の人工歯連結体調整方法は、
前記人工歯連結体をガラス転移温度以上に加熱すること
により、人工歯連結体を自由に変形させることが可能と
なり、患者固有の顎堤形状に容易に調整することができ
る。
【0074】さらに、本発明の咬合床製作方法は、前記
のように形状調整した人工歯連結体を、基礎床上にワッ
クスで仮接合することにより容易に咬合床を製作するこ
とができる。
【0075】その上、本発明の総義歯製作方法は、前記
の咬合床により咬合高径、咬合平面等を調整した後、人
工歯連結体と基礎床とをレジンで直接接合固定すること
により、容易に総義歯を製作することができる。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上顎用又は下顎用の総ての人工歯が、ガ
    ラス転移温度が40〜80℃の範囲であるアクリル系レ
    ジンで接合されたことを特徴とする人工歯連結体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のアクリル系レジンが、ラ
    ジカル重合可能なメタクリル酸エステル、可塑剤、ラジ
    カル重合促進剤からなる液剤と、メタクリル酸エステル
    重合体あるいは共重合体、ラジカル重合開始剤からなる
    粉剤とで構成され、前記液剤と前記粉剤を混合すること
    により常温下において重合反応が開始し、硬化すること
    を特徴とする人工歯連結体。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の人工歯連結体を、アクリ
    ル系レジンのガラス転移温度以上に加熱することにより
    変形させ、歯列形状を変形させて調整し、その調整後、
    ガラス転移温度より低く冷却することを特徴とする人工
    歯連結体調整方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の調整方法により調整した
    人工歯連結体を、基礎床上にワックスで仮接合し、咬合
    床を製作することを特徴とする咬合床製作方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の製作方法により製作され
    た咬合床により患者の咬合採得を行ない、咬合高径、咬
    合平面等の調整をした後、人工歯連結体と基礎床とをレ
    ジンで直接接合固定し、総義歯を製作することを特徴と
    する総義歯製作方法。
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