JPH05192353A - 補綴義歯前駆体及び補綴義歯作成方法 - Google Patents

補綴義歯前駆体及び補綴義歯作成方法

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JPH05192353A
JPH05192353A JP26384692A JP26384692A JPH05192353A JP H05192353 A JPH05192353 A JP H05192353A JP 26384692 A JP26384692 A JP 26384692A JP 26384692 A JP26384692 A JP 26384692A JP H05192353 A JPH05192353 A JP H05192353A
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JP
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denture
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prosthetic
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JP26384692A
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Yoshihiro Saito
嘉宏 斉藤
Masaki Tamura
雅樹 田村
Tokukazu Kitamura
徳和 北村
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Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 可塑性である光重合性組成物からなる義歯床
部材に少なくとも一本の人工歯が排列する補綴義歯前駆
体であって、この光重合性組成物は光照射により不可逆
的に硬化するものである補綴義歯前駆体。可塑性である
光重合性組成物を成形して補綴義歯前駆体を製造し、そ
の形態を調整し、光照射により義歯床部材を不可逆的に
硬化させて人工歯を該義歯床部材に固定し、スペーサー
を取り除き、スペーサーが占有していたキャビティに樹
脂組成物を入れ、樹脂組成物を硬化させる補綴義歯製作
方法。 【効果】 義歯前駆体に係る義歯床部材が可塑性の光重
合性組成物なので、人工歯の排列、咬合、義歯床部材の
形状等を容易に調節することができ、これらの形態を光
照射により固定することで、審美性、形状精度及び粘膜
適合性に優れた補綴義歯を容易に作成することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、補綴義歯を容易に作成
するのに役立つ補綴義歯前駆体及びこの補綴義歯前駆体
を利用した補綴義歯作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、義歯床のある補綴義歯を作成する
には、ろう義歯を作成してから補綴義歯を作成する手法
が一般的である。まず、モリブデン化合物、アルジネー
ト、ポリサルファイドラバー等の適当な材料を用いて、
患者の無歯顎の印象を採得し、この印象を用いて、口腔
模型を作成する。
【0003】次いで、この口腔模型上に、ろうからなる
義歯床に人工歯を排列したろう義歯を作成する。フラス
コ内で、このろう義歯を口腔模型と共に石膏等の埋没材
料に埋没し、埋没材料を硬化させた後、熱で義歯床を構
成するろうを融解して、義歯床の形状をしたキャビティ
とする。このキャビティに熱重合性アクリル樹脂を入れ
て、加熱重合し、アクリル樹脂からなる義歯床に人工歯
が排列する補綴義歯が得られる。なお、今日、補綴義歯
の義歯床はアクリル樹脂で構成されることが一般的であ
る。
【0004】このろう義歯を経由する従来の補綴義歯作
成方法では、口腔模型の形状をろう義歯を介して、補綴
義歯に正確に再現することができるため、微妙な義歯形
状を細部まで美しく作成できる利点がある。しかし、こ
の従来方法で補綴義歯を作成するためには、ろう義歯を
用いることの必然性により、ろう義歯の作成、フラスコ
を用いるろう義歯の埋没等の何段階もの工程を経る必要
があり、これらの工程が煩雑である。
【0005】そこで、ろう義歯を作成することなく、補
綴義歯を作成する方法が所望される。口腔模型上に直
接、光重合をするアクリル樹脂を配置し、その形状を義
歯床となるように整え、その上に人工歯を排列し、次い
で、光を照射することにより、義歯床を硬化し、アクリ
ル義歯床を有する補綴義歯を作成する方法が提案されて
いる。しかし、この方法では、口腔模型以外の型を用い
るわけではないので、口腔模型に接していない部分の義
歯床の形状を整えることが容易ではない。また、複数の
人工歯を歯列に沿って排列することは、手間が懸かり、
また、難しい。特に人工歯の歯頸部が義歯床と接触する
部位は、審美的に問題になるが、ここが窪むことが多
く、完成品の補綴義歯の審美性が問題となる。更に、樹
脂を追加すると、その接合面に細かな気泡が混入し易
く、審美性の点から実用性に難点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、可塑性
である光重合性組成物からなる義歯床部材に少なくとも
一本の人工歯が排列する補綴義歯前駆体であって、この
光重合性組成物は光照射により不可逆的に硬化するもの
であることを特徴とする補綴義歯前駆体が提供される。
【0007】本発明においては、光重合性組成物に光重
合性アクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0008】また、本発明においては、人工歯はアクリ
ル樹脂を含有し、また、光重合性組成物は光重合性成分
を含有する光重合性アクリル樹脂を含有することは、好
ましく、これにより、この光重合性成分は人工歯に拡散
することができることは、更に好ましい。また、本発明
においては、光照射により、この光重合性成分は重合し
て、人工歯は硬化した義歯床部材に化学的に結合して一
体化することは、更に好ましい。
【0009】更に本発明においては、光重合性組成物に
は、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシ−3−メタク
リロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、ジ(メタク
リロキシ)トリメチルヘキサメチレンジウレタン、トリ
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリ
コールジメタクリレート、エチレングリコールジメタク
リレート、メタクリル酸エチル及びメタクリル酸メチル
からなる群より少なくとも一種を含有するモノマー、オ
リゴマー又はポリマーが含有していることが好ましい。
【0010】更に本発明においては、人工歯の少なくと
も一本は、隣合って並んでいる二本以上の自然歯に相当
する形状をしていることは、好ましい。
【0011】また、本発明によれば、少なくとも一本の
人工歯と、可塑性である光重合性組成物とを型に入れる
工程と、この光重合性組成物を義歯床部材に成形して、
少なくとも一本の人工歯が義歯床部材に排列する補綴義
歯前駆体を製造する工程と、口腔模型に接しているスペ
ーサーに補綴義歯前駆体を接するように配置する工程
と、人工歯を歯科的に適合する位置に調整する工程と、
光照射により義歯床部材を不可逆的に硬化させ、人工歯
を義歯床部材に固定する工程と、スペーサーを口腔模型
から取り除き、スペーサーが占有していたキャビティに
樹脂組成物を入れて、樹脂組成物を口腔模型の形状と義
歯床部材の形状とに一致させる工程と、樹脂組成物を硬
化させて樹脂組成物を義歯床部材に一体化させる工程
と、を有することを特徴とする補綴義歯作成方法が提供
される。
【0012】
【実施例】本発明に係る義歯前駆体10は、可塑性であ
る光重合性組成物からなる義歯床部材20に少なくとも
一本の人工歯12が排列し、この光重合性組成物は光照
射により不可逆的に硬化するものである。従って、義歯
床部材が可塑性の光重合性組成物なので、人工歯の排
列、咬合、義歯床部材の形状等を容易に調節することが
でき、これらの形態を光照射により固定することで、審
美性、形状精度及び粘膜適合性に優れた補綴義歯を容易
に作成することができる。本発明に係る補綴義歯前駆体
10は、歯根部14を有する少なくとも一本の人工歯1
2と、この人工歯12の歯根部14を保持する義歯床部
材20とを有する。補綴義歯前駆体10は、人工歯12
を上顎又は下顎の歯全てとする総義歯用の補綴義歯前駆
体の場合もあるし、また、人工歯が上顎又は下顎の歯の
一部である局部義歯用の補綴義歯前駆体の場合もある。
【0013】人工歯12は、人の自然歯、例えば、大臼
歯、小臼歯、犬歯、切歯等の形状をしていることは好ま
しい。人工歯12は、咬合のための咬合部16を有す
る。なお、人工歯12の歯根部14は、義歯床部材20
に埋め込まれるので、必ずしも、自然歯の形状をしてい
ることを要しない。
【0014】また、一本の人工歯12は、隣合って並ん
でいる二本以上の自然歯に相当する形状をしていてもよ
い。例えば、臼歯等が3歯以上連結している形状の人工
歯12を排列することは、3本の個別の人工歯を咬合理
論に沿って排列することより、容易であるので、好まし
い。
【0015】人工歯12は、硬い材料から構成されてい
れば、特にその素材に制限はない。人工歯としては、例
えば、アクリルレジン歯、硬質レジン歯、陶歯、金属歯
の何れも利用でき、これらの人工歯は市販されている。
なお、アクリルレジンを含有する組成物から構成する義
歯床部材20を用いるとき、人工歯12は、後に記載す
る理由により、アクリルレジン歯であることが好まし
い。
【0016】補綴義歯前駆体10に係る義歯床部材20
は、一般に、U字形状をしていて、人口腔の無歯隆線の
形状に近似する。義歯床部材20は、前方に唇側の突出
部21を備え、両側に頬側の突出部22を備え、頬側の
突出部22は、唇側の突出部21より延びている。これ
らの突出部21、22が人工歯12を支持する。義歯床
部材20は口蓋プレート24を備えていてもよく、備え
ているときは、口蓋プレート24は、唇側の突出部21
及び両側の頬側の突出部22より、横方向に述べてい
る。
【0017】この義歯床部材20は、光重合性組成物で
構成されている。光重合性組成物は、可塑性であり、即
ち、柔らかいドウ状態であり、咬合器による歯科技工操
作中もドウ状態を保つことができるものが好ましい。従
って、本発明に係る補綴義歯前駆体において、義歯床部
材20が可塑性なので、そこに保持する人工歯12を手
で動かすことにより、咬合、人工歯排列を容易に調節す
ることができる。また、義歯床部材20の形状を調整す
ることも容易である。
【0018】光重合性組成物は光照射により不可逆的に
硬化するものである。従って、補綴義歯前駆体10を光
照射することにより、義歯床部材20を不可逆的に硬化
し、人工歯12を義歯床部材20に固定することができ
る。光重合性組成物は、可視光を照射することにより、
不可逆的に硬化するものであることが、好ましい。ま
た、光重合性組成物は、30秒〜10分間、更に好まし
くは、30秒〜3分間、可視光を照射することにより、
不可逆的に硬化する性質を有することが、好ましい。光
重合性組成物は、硬化の前後により、その形状又は体積
が変化しないことは、好ましい。
【0019】このような性質を有する光重合性組成物と
しては、例えば、未硬化又は半硬化の光重合性アクリル
樹脂を含有するものがある。本願において、アクリル樹
脂とは、最も広義の意味に使われていて、アクリル酸、
メタクリル酸、及びこれらの誘導体、例えば、2,2−
ビス〔4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロ
ポキシ)フェニル〕プロパン、ジ(メタクリロキシ)ト
リメチルヘキサメチレンジウレタン、トリエチレングリ
コールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタ
クリレート、エチレングリコールジメタクリレート、メ
タクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルなどの、モノ
マー、オリゴマー又はポリマーをも包含する化合物の総
称である。
【0020】なお、光重合性組成物として、市販の光重
合性アクリル樹脂を用いることができる。例えば、デン
ツプライ社の商品名"TRIAD"(登録商標)、日本油脂の
商品名"EPOREX-D"(登録商標)をそのまま、光重合性ア
クリル樹脂として用いることができる。
【0021】光重合性組成物には、0.1〜5重量%の
光増感剤及び/又は還元剤を含有することは好ましく、
これにより、光重合性組成物における光化学反応の反応
性を調節することができる。光増感剤も還元剤も、公知
のものを使うことができ、特に制限はない。光増感剤の
例としては、カンファーキノン、ダイアセチル、α−ナ
フチル、β−ナフチル等が挙げられる。また、還元剤の
例としては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ
ート、N−フェニルグリシン、p−ジメチルアミノ安息
香酸等が挙げられる。
【0022】また、光重合性組成物には、分散剤又は強
化剤を含有することもでき、これらの例としては、アモ
ルファスシリカ、クォーツ粉末等が挙げられる。
【0023】補綴義歯前駆体10に係る義歯床部材20
が光重合性組成物から構成することは、可塑性である光
重合性組成物が一旦、不可逆的に硬化すると、硬化した
組成物、即ち、義歯床部材20は可塑性を失い、その形
状を保持するという利点がある。光重合性組成物の場合
と異なり、熱可塑性樹脂又は熱重合性材料の場合では、
再加熱をすることで可塑性を取り戻し、更に形状を変化
することがある。また、熱重合性樹脂の場合、熱重合過
程で、未反応モノマーが飛散することがある。なお、光
重合性組成物は、光を透過しない包装物に入れること
で、長期間、保存することができる。
【0024】本発明に係る補綴義歯前駆体においては、
人工歯12はアクリル樹脂を含有し、また、光重合性組
成物は、アクリル酸若しくはメタクリル酸の誘導体にお
けるモノマー又はオリゴマー等の光重合性成分を含有す
る光重合性アクリル樹脂を含有することは、好ましい。
光重合性成分の例としては、アクリル酸若しくはメタク
リル酸の誘導体、例えば、2,2−ビス〔4−(2−ヒ
ドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル〕
プロパン、ジ(メタクリロキシ)トリメチルヘキサメチ
レンジウレタン、トリエチレングリコールジメタクリレ
ート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレ
ングリコールジメタクリレート、メタクリル酸エチル及
びメタクリル酸メチルなどのモノマー又はこれらのモノ
マーを含有するオリゴマーが挙げられる。
【0025】これにより、補綴義歯前駆体10におい
て、この光重合性成分は人工歯12に拡散することがで
き、そのため、光照射により、人工歯12に拡散した光
重合性成分は、義歯床部材20を構成する光重合性組成
物が硬化すると共に、光重合する。この結果、人工歯1
2が硬化した義歯床部材20に化学的に結合して一体化
することは、好ましい。
【0026】なお、補綴義歯前駆体10に係る人工歯1
2として、陶歯又は金属歯を用いるとき、人工歯12は
可塑性の義歯床部材20に通常の方法で連結する。人工
歯12が陶歯又は金属歯を用いる場合において、人工歯
12が例えば、犬歯又は切歯のとき、人工歯は、二本の
平行なピンを介して義歯床部材20に連結し、人工歯1
2が例えば、大臼歯又は小臼歯のとき、人工歯に係る歯
根部の底面中央部に空孔があり、この空孔は、空孔の回
りの円筒状の壁部分の向かい合った歯根部に設けられて
いる横方向に円柱形状になっている穴につながってい
る。義歯床部材20を構成する光重合性樹脂が、この空
孔及び円柱穴を充填することで、この人工歯12は、義
歯床部材20と連結する。
【0027】以下、本発明に係る補綴義歯作成方法、即
ち、本発明に係る補綴義歯前駆体の製造方法及びその使
用方法を記載する。補綴義歯前駆体の製造方法として、
まず、図2に示すように、人工歯12の歯冠部17を、
人口腔の平均的な歯排列及び歯間隔と一致する形状を有
するU字形の空孔32に保持する。この空孔32は、二
つの下型30、31が組合わされた面の表面に設けられ
ている。大臼歯のような形状に相当する空孔は、一つの
型ではアンダーカットを生じるからである。
【0028】上型35と二つの下型30、31との間に
キャビティ40が設けられている。なお、図2には、一
つの上型40と二つの下型30、31が描かれ、キャビ
ティ40は横方向となっているが、これらの相対的位置
関係が保たれていれば、この図を90度回転し、一つの
横型と、それに応対する二つの横型が設けられている配
置とすることを妨げない。以下、説明の便宜上、図2に
あるような上下方向にある型として説明する。
【0029】可塑性の光重合性組成物41をキャビティ
40に入れ、この光重合性組成物41は、人工歯12に
係る歯根部14を覆っている。このとき、光重合性組成
物41は、二つの下型30、31の上面に隙間なく接し
ていることは好ましい。光重合性組成物は、既に説明し
たように、アクリル樹脂であることは、好ましく、その
ような組成物の具体例としては、ウレタンジメタクリレ
ート50部と、ヘキサメチレングリコールジメタクリレ
ート50部と、カンファーキノン、即ち、カンファン−
2,3−ジオン2重量部と、ジメチルアミノエチルメタ
クリレート2重量部とからなる組成物が挙げられる。
【0030】光重合性組成物41に接し、かつ、上型3
5にあるキャビティ40の表面を離型剤で塗布すること
は、完成した補綴義歯前駆体10から上型35を離すこ
とが容易になるので、好ましい。
【0031】次いで、上型35を下型30、31に押し
付けて、光重合性組成物41を人工歯12を保持する義
歯床部材20に成形する。こうして、歯根部を有する少
なくとも一本の人工歯12と、人工歯12の歯根部14
を保持する義歯床部材20とを有する補綴義歯前駆体1
0が得られる。なお、本発明に係る補綴義歯前駆体は、
射出成形によって製造することもできる。人工歯12を
型に保持した後、光重合性組成物をトランスファー成形
で、キャビティに射出すればよい。
【0032】上記のように、人工歯12はアクリル樹脂
を含有し、かつ、光重合性組成物は、光重合性成分を含
有する光重合性アクリル樹脂を含有する場合、義歯床部
材20に含有するこの光重合性成分の一部分は人工歯1
2に拡散することができる。
【0033】なお、人口腔の形状、大きさ及び歯列間隔
は、余り個人差が大きくないので、サイズの異なる補綴
義歯前駆体を一定の数、用意しておけば、ほとんどの患
者の口腔にも、適当なサイズの補綴義歯前駆体を提供で
きることになる。歯科医師は、適当なサイズの補綴義歯
前駆体を選んでから、人工歯排列、咬合、義歯床部材の
形状等を患者の口腔に一致するように調節する。
【0034】本発明に係る補綴義歯前駆体の使用方法と
して、まず、石膏等の適切な材料を用いて、患者の口腔
模型45を作成する。それは、患者の口腔の印象を用い
て、通常の方法により行う。
【0035】次いで、この口腔模型45に粘土のような
塑性材料をU字形状に置いて、スペーサー50を形成す
る。このU字形状は、患者の無歯隆線に相応するように
する。塑性材料は、特に制限はないが、簡便であること
から粘土を用いることが多い。また、バインダーとして
水を用いる必要は必ずしもなく、油を用いる油粘土、バ
インダーとしてシリコーンを用いるシリコーン粘土も塑
性材料として用いられる。また、デンプンの水練りでも
よい。
【0036】次いで、図3にあるように、補綴義歯前駆
体10を、その義歯床部材20を介して口腔模型45上
にあるスペーサー上に置く。このとき、補綴義歯前駆体
10とスペーサー45との間にシートを挟むことは、ス
ペーサー45を構成する塑性材料が義歯床部材の表面に
付着することを防止することができるので、好ましい。
このシートの例としては、ポリエチレンシートのような
プラスチックシートが挙げられる。
【0037】患者の口腔に合わせて、補綴義歯前駆体1
0に係る人工歯12の位置、方向、深さ、排列、咬合等
を調整する。このとき、補綴義歯前駆体10と、スペー
サー45と共に、口腔模型45を咬合器にセットして、
補綴義歯前駆体の咬合を調節することは、好ましい。補
綴義歯前駆体10に係る可塑性の義歯床部材20の形状
を調整することは、好ましい。また、義歯床部材20を
スペーサー50の形状に近似するように調整することも
好ましい。スペーサー50と向かい合っている義歯床部
材20の表面は、スペーサー50の形状と近似している
ことは好ましいが、必ずしもスペーサー50の表面と接
している必要はない。スペーサー50と向かい合ってい
る義歯床部材20の表面は、完成した補綴義歯におい
て、患者の口腔と直接に接することはなく、補綴義歯作
成の過程で、樹脂材料に覆われるからである。
【0038】次いで、光照射により、可塑性の光重合性
樹脂からなる義歯床部材20を不可逆的に硬化させ、人
工歯12を義歯床部材20に固定する。照射時間は、光
重合性樹脂の特性に依存する。可視光源は、特に限定さ
れないが、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングス
テンランプ等を用いることができる。例えば、クルツァ
ー(Kulzer)社の商品名"デンタカラ− xs (DentaColor x
s)"を用いることができる。
【0039】光源の位置は固定する必要はなく、補綴義
歯前駆体10に係る義歯床部材20の回りに光源を動か
して、義歯床部材20の表面のすみずみに光を照射する
ことは、好ましい。なお、光照射を連続的に行う必然性
はなく、光照射を途中で中断し、何回かに分けて照射し
てもよい。
【0040】上記のように、人工歯12はアクリル樹脂
を含有し、かつ、光重合性組成物は、光重合性成分を含
有する光重合性アクリル樹脂を含有する場合、光照射に
より、義歯床部材20から人工歯12に拡散した光重合
性成分は、義歯床部材20を構成する光重合性組成物が
硬化すると共に、光重合する。この結果、人工歯12が
硬化した義歯床部材20に化学的に結合して一体化する
ことは、好ましい。
【0041】次いで、スペーサー50を口腔模型45か
ら取り除く。口腔模型45を水等の適切な液体で洗浄
し、その表面に付着しているスペーサー50の残渣を除
去ことは、好ましい。
【0042】補綴義歯前駆体10を口腔模型45上に戻
し、スペーサー50が占有していたキャビティに樹脂組
成物を入れて、この樹脂組成物を口腔模型の形状と義歯
床部材の形状とに一致させる。即ち、このキャビティを
構成する口腔模型の表面と、このキャビティを構成する
義歯床部材20の表面とに、樹脂組成物が接するように
する。口腔模型の表面と樹脂組成物とが接するようにす
るのは、完成した補綴義歯において、口腔模型の表面と
接している樹脂組成物の表面が患者の口腔に直接に接す
るので、この部分の形状性が重要だからである。また、
義歯床部材20の表面と樹脂組成物とが接するようにす
るのは、義歯床部材20と樹脂組成物とが接合して一体
化するので、その接合面に細かな気泡などが生じないよ
うにするためである。
【0043】樹脂組成物としては、熱又は光によって硬
化するものであれば、特に制限はない。即ち、樹脂組成
物として、光重合性樹脂、加熱重合性樹脂、50℃以下
で硬化するいわゆる常温重合性樹脂を用いることができ
る。常温重合性樹脂として、耐熱衝撃性樹脂、自己硬化
樹脂が挙げられる。これらの樹脂は何れも、アクリル樹
脂のものが市販されていて、市販品をそのまま用いるこ
とができる。なお、樹脂組成物は、形状及び体積が硬化
前と硬化後とで変化しないものが好ましい。
【0044】次いで、キャビティにある樹脂組成物を、
その特性に従って硬化して、硬化した樹脂組成物を義歯
床部材20と一体化する。更に、歯科の通法に従い、切
削、研磨を行い、補綴義歯が得られる。このようにし
て、本発明に係る補綴義歯前駆体を用いて、咬合性、審
美性、粘膜適合性に優れた補綴義歯を作成することがで
きる。
【0045】本発明に係る補綴義歯作成方法において、
人工歯が予め保持されている義歯床部材を有する本発明
に係る補綴義歯を利用することは、補綴義歯の形状精
度、審美性等の観点から重要である。この点を明らかに
するため、人工歯が予め保持されていない光重合性樹脂
を用いて補綴義歯を製作した場合を比較例として実験し
た。
【0046】(比較例)光重合性アクリル樹脂は、デン
ツプライ社の商品名"TRIAD"を用いた。口腔模型として
は、ニッシン社製ゴム枠、商品名402UにGC社製硬
石膏ニュープラストーンを入れて硬化させた模型を用い
た。
【0047】光重合性アクリル樹脂を口腔模型上に置い
て、その形状を平均的な無歯隆線に沿ったU字形状に整
えた。アクリル樹脂が不足した部分には、更にアクリル
樹脂を指で圧接して追加し、アクリル樹脂が余分な部分
からアクリル樹脂を除去して、形状を整えた。次いで、
アクリルレジンからなる人工歯をこのU字形状のアクリ
ル樹脂に指で押し付けて、その歯根部をアクリル樹脂に
埋没させ、人工歯を排列した。次いで、クルツァー社
の”デンタカラー xs”を可視光源に用いて、90秒
間、可視光を照射し、アクリル樹脂を硬化し、補綴義歯
を得た。
【0048】こうして得られた補綴義歯では、人工歯の
歯根部付近と義歯床部材の表面とが接触している部位で
は、歯根部の回りに義歯床部材が十分に接触せず、窪み
が生じていた。また、人工歯が互いに隣接している場
合、これらの人工歯の歯根部と義歯床部材の表面とが接
触している部位では、歯根部の回りに義歯床部材が十分
に接触せず、窪みが生じていた。また、後からアクリル
樹脂を追加した接合面では、細かな気泡の混入が認めら
れ、審美性に劣っていた。更に、アクリルレジン歯とア
クリル樹脂との接触時間が限られていたので、アクリル
レジン歯と義歯床部材との結合は弱く、両者は化学的に
結合しているとは認められなかった。
【0049】なお、本発明に係る補綴義歯前駆体及びこ
れを利用して作成した補綴義歯においては、人工歯の歯
根部付近と義歯床部材の表面とが接触している部位に、
窪みは生じなかった。補綴義歯前駆体は、型を用いて成
形をするから人工歯と義歯床部材との接合性が良いから
である。同様に、本発明に係る補綴義歯前駆体及びこれ
を利用して作成した補綴義歯においては、人工歯が互い
に隣接していて、これらの人工歯の歯根部と義歯床部材
の表面とが接触している部位でも、窪みが生じなかっ
た。
【0050】また、本発明に係る補綴義歯前駆体及びこ
れを利用して作成した補綴義歯においては、細かな気泡
の混入が認められず、審美性に優れていた。更に、アク
リルレジン歯を用いた本発明に係る補綴義歯前駆体を利
用して作成した補綴義歯においては、アクリルレジン歯
は、義歯床部材と化学的に結合して一体化していた。
【0051】
【発明の効果】本発明に係る補綴義歯前駆体を利用し
て、補綴義歯を作成することで、ろう義歯を作成する手
間を懸けることなく、審美性、形状精度及び粘膜適合性
に優れた補綴義歯を容易に作成することができる。本発
明に係る補綴義歯前駆体では、義歯床部材は可塑性なの
で、人工歯の排列、咬合、義歯床部材の形状等を容易に
調節することができ、これらの形態を光照射により固定
するからである。アクリルレジン歯を用いた本発明に係
る補綴義歯前駆体を用いると、アクリルレジン歯と義歯
床部材とが化学的に結合して一体化し、従って、アクリ
ルレジン歯と義歯床部材との結合強度の高い補綴義歯を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光重合性組成物を義歯床材料に用いた上顎の本
発明に係る補綴義歯前駆体の斜視図である。
【図2】本発明に係る補綴義歯前駆体を製造する工程に
おける補綴義歯前駆体及び型の断面図である。
【図3】補綴義歯を製作する工程における口腔模型と、
スペーサーと本発明に係る補綴義歯前駆体との断面図で
ある。
【符号の説明】
10 補綴義歯前駆体 12 人工歯 14 歯根部 16 咬合部 17 歯冠部 20 義歯床部材 21 唇側の突出部 22 頬側の突出部 24 口蓋プレート 30 下型 31 下型 32 空孔 35 上型 40 キャビティ 41 光重合性組成物 45 口腔模型 50 スペーサー

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可塑性である光重合性組成物からなる義
    歯床部材に少なくとも一本の人工歯が排列する補綴義歯
    前駆体であって、該光重合性組成物は光照射により不可
    逆的に硬化するものであることを特徴とする補綴義歯前
    駆体。
  2. 【請求項2】 a 少なくとも一本の人工歯と、可塑性
    である光重合性組成物とを型に入れる工程と、 b 該光重合性組成物を義歯床部材に成形して、少なく
    とも一本の該人工歯が義歯床部材に排列する補綴義歯前
    駆体を製造する工程と、 c 口腔模型に接しているスペーサーに該補綴義歯前駆
    体を接するように配置する工程と、 d 該人工歯を歯科的に適合する位置に調整する工程
    と、 e 光照射により該義歯床部材を不可逆的に硬化させ、
    該人工歯を該義歯床部材に固定する工程と、 f 該スペーサーを該口腔模型から取り除き、該スペー
    サーが占有していたキャビティに樹脂組成物を入れて、
    該樹脂組成物を該口腔模型の形状と該義歯床部材の形状
    とに一致させる工程と、 g 該樹脂組成物を硬化させて該樹脂組成物を該義歯床
    部材に一体化させる工程と、 を有することを特徴とする補綴義歯作成方法。
JP26384692A 1991-10-01 1992-10-01 補綴義歯前駆体及び補綴義歯作成方法 Withdrawn JPH05192353A (ja)

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