JP2004065578A - 歯牙表面用補綴物 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯が欠損したり喪失して歯科用補綴物の作製が必要な場合において、従来の硬質レジンと同様の耐摩耗性及び審美性を持ち、従来のように慎重に支台歯などの支台の形成を行う必要が無いと共に、口腔外で間接的な歯科用補綴物を作製する必要も無く、短時間で歯科補綴物を形成することができる歯牙表面用補綴物を提供する。
【既決手段】前歯の唇側面、臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙に接合される歯牙表面用補綴物1を、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体で構成する。その形態としては厚さが0.1〜2mmであるベニア状の場合や、裏面に残存歯の歯根部に植立されたポストが貫通又は係合する孔部又は溝部を形成する突起部有する場合などがある。
【選択図】 図10
【既決手段】前歯の唇側面、臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙に接合される歯牙表面用補綴物1を、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体で構成する。その形態としては厚さが0.1〜2mmであるベニア状の場合や、裏面に残存歯の歯根部に植立されたポストが貫通又は係合する孔部又は溝部を形成する突起部有する場合などがある。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の硬質レジンと同様の耐摩耗性及び審美性を持ち、支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して形成される舌側歯牙に接合することによって短時間で歯科補綴物を形成することができる歯牙表面用補綴物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、歯が欠損したり歯の一部が喪失した場合に、患者のその治療部位に支台歯などの支台を形成し、この支台に接着固定されるクラウンやブリッジと言われる歯の形態を模した歯科用補綴物を口腔外で作製し、これを支台に固定する治療方法が広く行われている。このとき、天然歯に近似した審美性が要求される症例の場合には、レジン前装鋳造冠,陶材焼付前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付ブリッジやオールセラミッククラウンなどの歯科用補綴物が用いられている。
【0003】
これらの歯科用補綴物を製作する前に、歯科用補綴物を残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である歯を支台歯とする場合には、その残存歯を術者がタービンなどで截頭円錐形状に近似した形状に削り出す作業が必要である。支台歯には歯科用補綴物が直接固定されるため、この支台歯を形成する作業は以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に行わなければならない作業であるので時間を要する作業であった。また、残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合には、根管に金属材料などから成るポストを植立固定した後にその歯根部の咬合面側に支台築造用レジンを用いて支台を築盛した後に前記と同様にして慎重に支台を削り出して形成する作業が必要があった。
【0004】
かくして支台歯などの支台の形成を行った患者の口腔内からこの支台を含む部分の印象(歯牙の陰型)を採得し、更にこの印象から石膏模型(歯牙の複製)を作製した後、この石膏模型に基づいて以下のようにして歯科用補綴物が作製されている。
【0005】
レジン前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付前装鋳造冠,陶材焼付ブリッジの場合は、ロストワックス鋳造法により、先ず石膏模型上にワックスを用いてコア部の蝋型を作製し、この蝋型を耐火埋没材中に埋没させ、耐火埋没材が硬化した後に電気炉中に入れ加熱して蝋型を焼却させ、得られた鋳型に金属を鋳造し、この鋳造物を埋没材から掘り出した後、切削・研磨して金属コア部を作製し、この金属コア部の外面に歯冠用硬質レジンを築盛・重合するか、あるいは陶材を築盛・焼成することによって作製されている。また、オールセラミッククラウンの場合は、耐火模型材を用いて複模型を作製し、この複模型上に陶材を築盛・焼成した後、耐火複模型を除去し、形態修正,研磨を行うことによって作製されている。
【0006】
このように歯科用補綴物の作製作業は、口腔内形状や歯科用補綴物作製部位が患者一人一人によって異なるばかりでなく、数μm単位の極めて高い寸法精度が要求される複雑な作業であるため多大な時間と熟練とが必要であった。即ち、最終的に患者の口腔内に歯科用補綴物が固定されるまでの治療期間が長いため、患者に対して費用及び苦労を強いることになっていたのである。更に、間接法であるため熟練者が作製した歯科用補綴物であっても完璧な精度の歯科用補綴物が得られることは殆ど無いのが現状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はかかる従来の欠点を解消し、歯が欠損したり喪失して歯科用補綴物の作製が必要な場合において、従来の硬質レジンと同様の耐摩耗性及び審美性を持ち、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行う必要が無いと共に、印象採得による石膏模型の作製や口腔外で間接的な歯科用補綴物を作製する必要も無く、治療所内のみで短時間で歯科補綴物の形成を可能とする歯牙表面用補綴物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行うのではなく、支台となるおおまかな形状の部分を形成しておいてその支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して舌側歯牙を形成する際に、その治療部位が前歯の場合には舌側歯牙の唇側に前歯の唇側面の形態を模した形状を成し不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤とから成る混合物の重合体を、またその治療部位が臼歯の場合には臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成し不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤とから成る混合物の重合体を接合して固定すれば、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行う必要が無く、印象採得による石膏模型の作製や口腔外で間接的な歯科用補綴物を作製する必要も無く、治療所内のみで直接短時間で歯科補綴物を形成することが可能となることを究明して本発明を完成したのである。
【0009】
即ち本発明は、前歯の唇側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合される歯牙表面用補綴物であって、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体から成ることを特徴とする歯牙表面用補綴物であり。その形態としては前歯の唇側面の厚さ又は臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面の厚さが0.1〜2mmであるベニア状の場合や、裏面に残存歯の歯根部に植立されたポストが貫通又は係合する孔部又は溝部を形成する突起部を有する場合などがある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明に係る歯牙表面用補綴物について詳細に説明する。
図1は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の1実施例の正面図、図2は図1の左側面図、図3は図1の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図、図4は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の他の実施例の図3に対応する斜視図、図5は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の更に他の実施例の図3に対応する斜視図、図6は本発明に係る歯牙表面用補綴物が犬歯用である場合の1実施例の正面図、図7は本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の1実施例を斜め正面側から見た斜視図、図8は図7の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図、図9は本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の他の実施例を斜め正面側から見た斜視図、図10は図1〜図3に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯で形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図11は図4に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図12は図5に示した本発明に係る前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図13は図7及び図8に示した本発明に係る臼歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【0011】
図面中、1は本発明に係る歯牙表面用補綴物であり、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体から成り、この組成は従来の硬質レジンと称される歯科用レジン材料と同様であるため従来の硬質レジン歯の特徴、即ち各種歯科用レジン材料に対する接着性に優れ、耐摩耗性及び審美性が高い特徴を有している。
【0012】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1に使用される不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物は、従来の硬質レジンなどの歯科用補綴物に使用されていた不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物が使用可能であり、一般的には、不飽和二重結合を持つメタクリレート若しくはアクリレートのモノマー,オリゴマーを用いる。不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物として具体的としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート,ジエチレングリコールジメタクリレート,トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ポリオキシテトラエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン及びそのアクリレート、また分子中にウレタン結合を有するメタクリレートとして、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとから成るウレタンオリゴマー、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとから成るウレタンオリゴマー等を例示することができる。
【0013】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1における不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物の配合量は、組み合わせる充填材によって変化するが、通常全体量の20〜70重量%であることが好ましい。不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物の配合量が20重量%未満であると曲げ強度が低くなる傾向があり、70重量%を超えて配合すると耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0014】
充填材は、本発明に係る歯牙表面用補綴物1に耐摩耗性,耐破壊などの機械的な強度を与えるために配合される。充填材としては一般的な硬質レジンに用いられる充填材を使用することが可能であり、例えば、二酸化ケイ素,バリウムガラス,アルミナガラス,カリウムガラス,フルオロアルミノシリケートガラス等のガラス類、合成ゼオライト、リン酸カルシウム、長石、ヒュームドシリカ,ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石英などの粉末から成る無機質充填材がある。またこれらの無機質充填材は、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シランなどで表面処理されていてもよい。また、前記無機質充填材を予め重合性モノマーやオリゴマーと混合して硬化させた後に粉砕して作製した所謂有機無機複合充填材やポリマー粉末も使用することができる。
【0015】
前記充填材の配合量は、全体量の25〜75重量%であることが好ましい。充填材の配合量が25重量%未満であると本発明に係る歯牙表面用補綴物1の耐摩耗性が低下する傾向があり、75重量%を超えて配合すると曲げ強度が悪化する傾向がある。
【0016】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1に用いる重合開始剤としては、主に加熱重合型であり、例えば有機過酸化物やアゾ化合物等が用いられる。有機過酸化物としては、芳香族を有するジアシルパーオキシド類や過安息香酸のエステルと見なされるようなパーオキシエステル類が好ましく、その具体例を示すと、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキシド、m−トリルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ{(o−ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ}ヘキサン等が効果的である。またアゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができ、他にもトリブチルホウ素等のような有機金属化合物等も使用できる。
【0017】
このような組成から成る本発明に係る歯牙表面用補綴物1の使用時に用いる舌側歯牙形成用レジン材料は、一般的にコンポジットレジンと呼ばれている歯科用レジン材料であり、好ましくは歯牙の充填に用いられているコンポジットレジンと比較して低粘度のコンポジットレジンである。そして、舌側歯牙形成用レジン材料は支台築造用レジンと同じ歯科用レジン材料であってもよい。
【0018】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1は、前歯の唇側面の形態を模した形状か、臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面の形態を模した形状か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙に接合されるものであって、その形態としては図1〜図3や図7〜図9に示す如くその厚さが0.1〜2mmであるベニア状の形態と、更に図4に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が係合する溝部を形成する突起部1aを有する形態や、図5に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通する孔部を形成する突起部1bを有する形態等がある。ベニア状の形態は特に審美性を重視する場合に適用されるものであり、その厚さが0.1mm未満では補綴物としての強度が足りず、2mmを超えると天然歯と同様の色調が得られ難く、その裏面において支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙の色調を利用する場合においては色の調整が困難になってしまう。その裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通又は係合する孔部を形成する突起部1b又は溝部を形成する突起部1aを有する形態は、歯科補綴物を作製する際に作業性や強度を重視する場合に適用されるものであるが、この場合は本発明に係る歯牙表面用補綴物1の裏面が接合されるための支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙との色調に合わせた色調を選択する。
【0019】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1においては、後述する使用方法での効果を有効に得るために不飽和二重結合を持つ化合物と充填材との屈折率を調整したり、濁し剤として主に酸化チタンを配合することにより透明性を調整し歯牙表面用補綴物1を透明ないし半透明、即ち一般に歯科でエナメルと称されている色調・透明度に調整しておくことが、背後の支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙の色調を反映でき、この舌側歯牙形成用レジン材料4の色は支台3に築盛する際に随時調整できることから修復歯の色を隣接する天然歯に容易に且つ正確に合わせることが可能であるために好ましい。また、本発明に係る歯牙表面用補綴物1には従来の硬質レジンに含まれている着色剤などが含まれていてもよいのは勿論である。
【0020】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1の使用方法は、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台歯などの支台の形成を行う必要が無いと共に、印象の採得や石膏模型の作製や口腔外で歯科用補綴物を作製するという間接的な作業も必要無く、おおまかに支台3を形成し、この支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して形成する舌側歯牙に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接合するという直接口腔内で行う作業のみで前歯用や犬歯用や臼歯用の歯科補綴物を形成するのである。
【0021】
具体的には、残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合には、根管形成した根管内に歯科用接着剤又は支台築造用レジンなどの歯科用レジン材料を流し込み、そこへポスト2を植立し、歯科用レジン材料を流し込んだ場合には必要に応じてその歯科用レジン材料を重合させ、支台築造用レジン材料を用いて更に従来の支台に当たる部分を築盛し、必要に応じて重合して支台3を形成した後、この支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して舌側歯牙を形成し、この舌側歯牙の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げて歯科補綴物の形成を完了する。この際、本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図7,図8,図9に示す如く厚さが0.1〜2mmであるベニア状の形態である場合は図13に示したのと同様の形態の歯科補綴物となり、図4に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が係合する溝部を形成する突起部1aを有する形態である場合は図11に示したのと同様の形態の歯科補綴物となり、図5に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通する孔部を形成する突起部1bを有する形態である場合は図12に示したのと同様の形態の歯科補綴物となる。
尚、この場合に隣接歯の修復歯と接する部分を薄く一層切削しクエン酸やリン酸などの酸による歯面処理を行っておくと修復歯となる本発明に係る歯牙表面用補綴物1を確実に固定することができる。
【0022】
また、残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である場合には、その残存歯をタービンなどで大まかな形状の支台3に削り出し、この支台3に必要に応じて酸による歯面処理やプライマー処理を行った後に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して舌側歯牙を形成し、この舌側歯牙の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げて歯科補綴物の形成を完了する。
この際、形成した支台3や隣接歯の接触面をクエン酸やリン酸などの酸により表面処理し、その処理面から舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛しながら重合する作業を繰り返し修復して舌側歯牙の大まかな形態を整え、その形態の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を舌側歯牙形成用レジン材料4や歯科用接着材を用いて接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げれば、図10に示すような歯科補綴物の形成が完了する。
【0023】
以下に実施例として具体例を挙げて更に詳しく説明する。
<実施例1>
不飽和二重結合を持つ化合物としてのトリエチレングリコールジメタクリレート:10.0重量%及びジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート:19.0重量%と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトル:1重量%と、充填材としての有機無機複合充填材:21.2重量%,平均粒径が5μmのガラス粉末:45.7重量%及び平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ:3.1重量%とを混合し、更にこの混合物100重量部に対して顔料を0.3重量部の範囲内で添加混合し、透明性及び色を調整し均一なペースト状の混合物を得た。この混合物を人工歯作製用の金型で90℃,60分間圧接し冷却して図1〜図3に示すような厚さ0.2〜0.7mmの正面が前歯の唇側面の形態を模した形状のエナメル色の前歯用の歯牙表面用補綴物を作製した。
【0024】
前記実施例1及び後記する実施例2で使用する有機無機複合充填材は、
ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメートとトリエチレングリコールジメタクリレートとを3:7の重量比で混合したものに重合触媒としてアゾビスイソブチロニトルを1重量%添加した混合液を70重量%と平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ30重量%との混合物を95℃で熱硬化させ粉砕した平均粒径が19μmのコロイダルシリカ有機無機複合充填材である。
【0025】
実施例1の前歯用の歯牙表面用補綴物を用いて残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合の修復方法を説明する。
先ず、治療を行う歯牙を通法に従って根管形成しポスト孔を作製した。このポスト孔を歯科用プライマー(商品名;ユニフィルコア セルフエッチングボンド,ジーシー社製)で処理し、支台築造用レジン(商品名;ユニフィルコア コンポジットペースト,ジーシー社製)を充填し、ポスト(商品名:D.T. LIGHT−POST,RTD社製)を挿入し歯牙とポストとの間を支台築造用レジンで満たした後、支台築造用レジンを重合させポストを植立させた。次いで、前記支台築造用レジンを用いて根管から突出しているポストを芯として大まかな支台を形成し、支台築造用レジン材料を重合させた。しかる後、前記支台築造用レジンと略同様の組成であって天然歯と合わせた色調の舌側歯牙形成用レジン材料として歯科用コンポジットレジン(商品名;ユニフィルフロー各色,ジーシー社製)を準備し、この舌側歯牙形成用レジン材料を支台に隣接歯と色調を合わせながら築盛して舌側歯牙を形成し、舌側歯牙形成用レジン材料の重合前に前歯用の歯牙表面用補綴物を舌側歯牙の唇側にセットしてから舌側歯牙形成用レジン材料を重合させて固定した後、必要に応じて舌側歯牙の舌側面の形態を舌側歯牙形成用レジン材料を用いて整えてから重合し前歯用の歯科補綴物を形成した。
【0026】
<実施例2>
不飽和二重結合を持つ化合物としてのトリメチロールプロパントリメタクリレート7.1重量%及びジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート21.8重量%と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトル1重量%と、充填材としての有機無機複合充填材16.2重量%,平均粒径が5μmのガラス粉末45.7重量%及び平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ8.2重量%とを混合し、更にこの混合物100重量部に対して顔料を0.6重量部の範囲内で添加混合し、透明性及び色を調整し均一なペースト状の混合物を得た。この混合物を人工歯作製用の金型で95℃,60分間圧接し冷却して厚さ0.3〜0.9mmの正面が前歯の唇側面の形態を模した形状の図1〜図3に示すようなエナメル色の前歯用の歯牙表面用補綴物を作製した。
【0027】
実施例2の前歯用の歯牙表面用補綴物を用いて残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である場合の修復方法を説明する。
先ず、治療を行う残存歯をタービンなどで大まかな形状の支台に削り出し、通常使用される歯科用コンポジットレジン材料と略同様の組成であって天然歯と合わせた色調の舌側歯牙形成用レジン材料として支台築造用レジン(商品名;ユニフィルコア コンポジットペースト,ジーシー社製)を準備し、隣接歯の接触面をクエン酸やリン酸などの酸により表面処理した後、舌側歯牙形成用レジン材料を支台に築盛して舌側歯牙を形成し、舌側歯牙形成用レジン材料の重合前に前歯用の歯牙表面用補綴物を舌側歯牙の唇側にセットしてから舌側歯牙形成用レジン材料を重合させて固定した後、必要に応じて舌側歯牙の舌側面の形態を舌側歯牙形成用レジン材料を用いて整えてから重合し前歯用の歯科補綴物を形成した。
【0028】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明に係る歯牙表面用補綴物は、支台となるおおまかな形状の部分を形成しておいてその支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して舌側歯牙を形成する際にその舌側歯牙の唇側又は隣接面側に接合して固定して歯科補綴物を形成するためのものであり、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台歯などの支台の形成を行う必要や、印象の採得や石膏模型の作製の必要が無く、また技工所での煩雑な作業に基づく歯科用補綴物の製造も必要無く、1回の診療所での治療で簡単に且つ短時間で色調も正確な歯科修復を可能とするものであり、その歯科治療に貢献する価値は非常に大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の1実施例の正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の他の実施例の図3に対応する斜視図である。
【図5】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の更に他の実施例の図3に対応する斜視図である。
【図6】本発明に係る歯牙表面用補綴物が犬歯用である場合の1実施例の正面図である。
【図7】本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の1実施例を斜め正面側から見た斜視図である。
【図8】図7の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図である。
【図9】本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の他の実施例を斜め正面側から見た斜視図である。
【図10】図1〜図3に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯で形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図11】図4に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図12】図5に示した本発明に係る前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図13】図7及び図8に示した本発明に係る臼歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【符号の説明】
1 本発明に係る歯牙表面用補綴物
1a 溝部を形成する突起部
1b 孔部を形成する突起部
2 ポスト
3 支台
4 舌側歯牙形成用レジン材料
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の硬質レジンと同様の耐摩耗性及び審美性を持ち、支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して形成される舌側歯牙に接合することによって短時間で歯科補綴物を形成することができる歯牙表面用補綴物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、歯が欠損したり歯の一部が喪失した場合に、患者のその治療部位に支台歯などの支台を形成し、この支台に接着固定されるクラウンやブリッジと言われる歯の形態を模した歯科用補綴物を口腔外で作製し、これを支台に固定する治療方法が広く行われている。このとき、天然歯に近似した審美性が要求される症例の場合には、レジン前装鋳造冠,陶材焼付前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付ブリッジやオールセラミッククラウンなどの歯科用補綴物が用いられている。
【0003】
これらの歯科用補綴物を製作する前に、歯科用補綴物を残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である歯を支台歯とする場合には、その残存歯を術者がタービンなどで截頭円錐形状に近似した形状に削り出す作業が必要である。支台歯には歯科用補綴物が直接固定されるため、この支台歯を形成する作業は以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に行わなければならない作業であるので時間を要する作業であった。また、残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合には、根管に金属材料などから成るポストを植立固定した後にその歯根部の咬合面側に支台築造用レジンを用いて支台を築盛した後に前記と同様にして慎重に支台を削り出して形成する作業が必要があった。
【0004】
かくして支台歯などの支台の形成を行った患者の口腔内からこの支台を含む部分の印象(歯牙の陰型)を採得し、更にこの印象から石膏模型(歯牙の複製)を作製した後、この石膏模型に基づいて以下のようにして歯科用補綴物が作製されている。
【0005】
レジン前装鋳造冠,レジン前装ブリッジ,陶材焼付前装鋳造冠,陶材焼付ブリッジの場合は、ロストワックス鋳造法により、先ず石膏模型上にワックスを用いてコア部の蝋型を作製し、この蝋型を耐火埋没材中に埋没させ、耐火埋没材が硬化した後に電気炉中に入れ加熱して蝋型を焼却させ、得られた鋳型に金属を鋳造し、この鋳造物を埋没材から掘り出した後、切削・研磨して金属コア部を作製し、この金属コア部の外面に歯冠用硬質レジンを築盛・重合するか、あるいは陶材を築盛・焼成することによって作製されている。また、オールセラミッククラウンの場合は、耐火模型材を用いて複模型を作製し、この複模型上に陶材を築盛・焼成した後、耐火複模型を除去し、形態修正,研磨を行うことによって作製されている。
【0006】
このように歯科用補綴物の作製作業は、口腔内形状や歯科用補綴物作製部位が患者一人一人によって異なるばかりでなく、数μm単位の極めて高い寸法精度が要求される複雑な作業であるため多大な時間と熟練とが必要であった。即ち、最終的に患者の口腔内に歯科用補綴物が固定されるまでの治療期間が長いため、患者に対して費用及び苦労を強いることになっていたのである。更に、間接法であるため熟練者が作製した歯科用補綴物であっても完璧な精度の歯科用補綴物が得られることは殆ど無いのが現状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はかかる従来の欠点を解消し、歯が欠損したり喪失して歯科用補綴物の作製が必要な場合において、従来の硬質レジンと同様の耐摩耗性及び審美性を持ち、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行う必要が無いと共に、印象採得による石膏模型の作製や口腔外で間接的な歯科用補綴物を作製する必要も無く、治療所内のみで短時間で歯科補綴物の形成を可能とする歯牙表面用補綴物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行うのではなく、支台となるおおまかな形状の部分を形成しておいてその支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して舌側歯牙を形成する際に、その治療部位が前歯の場合には舌側歯牙の唇側に前歯の唇側面の形態を模した形状を成し不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤とから成る混合物の重合体を、またその治療部位が臼歯の場合には臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成し不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤とから成る混合物の重合体を接合して固定すれば、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台の形成を行う必要が無く、印象採得による石膏模型の作製や口腔外で間接的な歯科用補綴物を作製する必要も無く、治療所内のみで直接短時間で歯科補綴物を形成することが可能となることを究明して本発明を完成したのである。
【0009】
即ち本発明は、前歯の唇側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合される歯牙表面用補綴物であって、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体から成ることを特徴とする歯牙表面用補綴物であり。その形態としては前歯の唇側面の厚さ又は臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面の厚さが0.1〜2mmであるベニア状の場合や、裏面に残存歯の歯根部に植立されたポストが貫通又は係合する孔部又は溝部を形成する突起部を有する場合などがある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明に係る歯牙表面用補綴物について詳細に説明する。
図1は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の1実施例の正面図、図2は図1の左側面図、図3は図1の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図、図4は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の他の実施例の図3に対応する斜視図、図5は本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の更に他の実施例の図3に対応する斜視図、図6は本発明に係る歯牙表面用補綴物が犬歯用である場合の1実施例の正面図、図7は本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の1実施例を斜め正面側から見た斜視図、図8は図7の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図、図9は本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の他の実施例を斜め正面側から見た斜視図、図10は図1〜図3に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯で形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図11は図4に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図12は図5に示した本発明に係る前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図、図13は図7及び図8に示した本発明に係る臼歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【0011】
図面中、1は本発明に係る歯牙表面用補綴物であり、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体から成り、この組成は従来の硬質レジンと称される歯科用レジン材料と同様であるため従来の硬質レジン歯の特徴、即ち各種歯科用レジン材料に対する接着性に優れ、耐摩耗性及び審美性が高い特徴を有している。
【0012】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1に使用される不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物は、従来の硬質レジンなどの歯科用補綴物に使用されていた不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物が使用可能であり、一般的には、不飽和二重結合を持つメタクリレート若しくはアクリレートのモノマー,オリゴマーを用いる。不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物として具体的としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート,ジエチレングリコールジメタクリレート,トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ポリオキシテトラエチレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン及びそのアクリレート、また分子中にウレタン結合を有するメタクリレートとして、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとから成るウレタンオリゴマー、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとから成るウレタンオリゴマー等を例示することができる。
【0013】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1における不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物の配合量は、組み合わせる充填材によって変化するが、通常全体量の20〜70重量%であることが好ましい。不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物の配合量が20重量%未満であると曲げ強度が低くなる傾向があり、70重量%を超えて配合すると耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0014】
充填材は、本発明に係る歯牙表面用補綴物1に耐摩耗性,耐破壊などの機械的な強度を与えるために配合される。充填材としては一般的な硬質レジンに用いられる充填材を使用することが可能であり、例えば、二酸化ケイ素,バリウムガラス,アルミナガラス,カリウムガラス,フルオロアルミノシリケートガラス等のガラス類、合成ゼオライト、リン酸カルシウム、長石、ヒュームドシリカ,ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石英などの粉末から成る無機質充填材がある。またこれらの無機質充填材は、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シランなどで表面処理されていてもよい。また、前記無機質充填材を予め重合性モノマーやオリゴマーと混合して硬化させた後に粉砕して作製した所謂有機無機複合充填材やポリマー粉末も使用することができる。
【0015】
前記充填材の配合量は、全体量の25〜75重量%であることが好ましい。充填材の配合量が25重量%未満であると本発明に係る歯牙表面用補綴物1の耐摩耗性が低下する傾向があり、75重量%を超えて配合すると曲げ強度が悪化する傾向がある。
【0016】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1に用いる重合開始剤としては、主に加熱重合型であり、例えば有機過酸化物やアゾ化合物等が用いられる。有機過酸化物としては、芳香族を有するジアシルパーオキシド類や過安息香酸のエステルと見なされるようなパーオキシエステル類が好ましく、その具体例を示すと、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキシド、m−トリルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ{(o−ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ}ヘキサン等が効果的である。またアゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができ、他にもトリブチルホウ素等のような有機金属化合物等も使用できる。
【0017】
このような組成から成る本発明に係る歯牙表面用補綴物1の使用時に用いる舌側歯牙形成用レジン材料は、一般的にコンポジットレジンと呼ばれている歯科用レジン材料であり、好ましくは歯牙の充填に用いられているコンポジットレジンと比較して低粘度のコンポジットレジンである。そして、舌側歯牙形成用レジン材料は支台築造用レジンと同じ歯科用レジン材料であってもよい。
【0018】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1は、前歯の唇側面の形態を模した形状か、臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面の形態を模した形状か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙に接合されるものであって、その形態としては図1〜図3や図7〜図9に示す如くその厚さが0.1〜2mmであるベニア状の形態と、更に図4に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が係合する溝部を形成する突起部1aを有する形態や、図5に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通する孔部を形成する突起部1bを有する形態等がある。ベニア状の形態は特に審美性を重視する場合に適用されるものであり、その厚さが0.1mm未満では補綴物としての強度が足りず、2mmを超えると天然歯と同様の色調が得られ難く、その裏面において支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙の色調を利用する場合においては色の調整が困難になってしまう。その裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通又は係合する孔部を形成する突起部1b又は溝部を形成する突起部1aを有する形態は、歯科補綴物を作製する際に作業性や強度を重視する場合に適用されるものであるが、この場合は本発明に係る歯牙表面用補綴物1の裏面が接合されるための支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙との色調に合わせた色調を選択する。
【0019】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1においては、後述する使用方法での効果を有効に得るために不飽和二重結合を持つ化合物と充填材との屈折率を調整したり、濁し剤として主に酸化チタンを配合することにより透明性を調整し歯牙表面用補綴物1を透明ないし半透明、即ち一般に歯科でエナメルと称されている色調・透明度に調整しておくことが、背後の支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛されて形成される舌側歯牙の色調を反映でき、この舌側歯牙形成用レジン材料4の色は支台3に築盛する際に随時調整できることから修復歯の色を隣接する天然歯に容易に且つ正確に合わせることが可能であるために好ましい。また、本発明に係る歯牙表面用補綴物1には従来の硬質レジンに含まれている着色剤などが含まれていてもよいのは勿論である。
【0020】
本発明に係る歯牙表面用補綴物1の使用方法は、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台歯などの支台の形成を行う必要が無いと共に、印象の採得や石膏模型の作製や口腔外で歯科用補綴物を作製するという間接的な作業も必要無く、おおまかに支台3を形成し、この支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して形成する舌側歯牙に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接合するという直接口腔内で行う作業のみで前歯用や犬歯用や臼歯用の歯科補綴物を形成するのである。
【0021】
具体的には、残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合には、根管形成した根管内に歯科用接着剤又は支台築造用レジンなどの歯科用レジン材料を流し込み、そこへポスト2を植立し、歯科用レジン材料を流し込んだ場合には必要に応じてその歯科用レジン材料を重合させ、支台築造用レジン材料を用いて更に従来の支台に当たる部分を築盛し、必要に応じて重合して支台3を形成した後、この支台3に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して舌側歯牙を形成し、この舌側歯牙の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げて歯科補綴物の形成を完了する。この際、本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図7,図8,図9に示す如く厚さが0.1〜2mmであるベニア状の形態である場合は図13に示したのと同様の形態の歯科補綴物となり、図4に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が係合する溝部を形成する突起部1aを有する形態である場合は図11に示したのと同様の形態の歯科補綴物となり、図5に示す如くその裏面に残存歯の歯根部に植立されたポスト2が貫通する孔部を形成する突起部1bを有する形態である場合は図12に示したのと同様の形態の歯科補綴物となる。
尚、この場合に隣接歯の修復歯と接する部分を薄く一層切削しクエン酸やリン酸などの酸による歯面処理を行っておくと修復歯となる本発明に係る歯牙表面用補綴物1を確実に固定することができる。
【0022】
また、残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である場合には、その残存歯をタービンなどで大まかな形状の支台3に削り出し、この支台3に必要に応じて酸による歯面処理やプライマー処理を行った後に舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛して舌側歯牙を形成し、この舌側歯牙の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げて歯科補綴物の形成を完了する。
この際、形成した支台3や隣接歯の接触面をクエン酸やリン酸などの酸により表面処理し、その処理面から舌側歯牙形成用レジン材料4を築盛しながら重合する作業を繰り返し修復して舌側歯牙の大まかな形態を整え、その形態の唇側面又は隣接面に本発明に係る歯牙表面用補綴物1を舌側歯牙形成用レジン材料4や歯科用接着材を用いて接着し、その後舌側面の形状を(本発明に係る歯牙表面用補綴物1が図9に示すような隣接面の形態を模した形状を成している場合には頬側面の形状も合わせて、また図示しないが本発明に係る歯牙表面用補綴物1が咬合面の形態を模していない場合は咬合面の形状も合わせて)天然歯様に仕上げれば、図10に示すような歯科補綴物の形成が完了する。
【0023】
以下に実施例として具体例を挙げて更に詳しく説明する。
<実施例1>
不飽和二重結合を持つ化合物としてのトリエチレングリコールジメタクリレート:10.0重量%及びジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート:19.0重量%と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトル:1重量%と、充填材としての有機無機複合充填材:21.2重量%,平均粒径が5μmのガラス粉末:45.7重量%及び平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ:3.1重量%とを混合し、更にこの混合物100重量部に対して顔料を0.3重量部の範囲内で添加混合し、透明性及び色を調整し均一なペースト状の混合物を得た。この混合物を人工歯作製用の金型で90℃,60分間圧接し冷却して図1〜図3に示すような厚さ0.2〜0.7mmの正面が前歯の唇側面の形態を模した形状のエナメル色の前歯用の歯牙表面用補綴物を作製した。
【0024】
前記実施例1及び後記する実施例2で使用する有機無機複合充填材は、
ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメートとトリエチレングリコールジメタクリレートとを3:7の重量比で混合したものに重合触媒としてアゾビスイソブチロニトルを1重量%添加した混合液を70重量%と平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ30重量%との混合物を95℃で熱硬化させ粉砕した平均粒径が19μmのコロイダルシリカ有機無機複合充填材である。
【0025】
実施例1の前歯用の歯牙表面用補綴物を用いて残存歯に固定する場合であってその残存歯が歯根部のみしか存在しない場合の修復方法を説明する。
先ず、治療を行う歯牙を通法に従って根管形成しポスト孔を作製した。このポスト孔を歯科用プライマー(商品名;ユニフィルコア セルフエッチングボンド,ジーシー社製)で処理し、支台築造用レジン(商品名;ユニフィルコア コンポジットペースト,ジーシー社製)を充填し、ポスト(商品名:D.T. LIGHT−POST,RTD社製)を挿入し歯牙とポストとの間を支台築造用レジンで満たした後、支台築造用レジンを重合させポストを植立させた。次いで、前記支台築造用レジンを用いて根管から突出しているポストを芯として大まかな支台を形成し、支台築造用レジン材料を重合させた。しかる後、前記支台築造用レジンと略同様の組成であって天然歯と合わせた色調の舌側歯牙形成用レジン材料として歯科用コンポジットレジン(商品名;ユニフィルフロー各色,ジーシー社製)を準備し、この舌側歯牙形成用レジン材料を支台に隣接歯と色調を合わせながら築盛して舌側歯牙を形成し、舌側歯牙形成用レジン材料の重合前に前歯用の歯牙表面用補綴物を舌側歯牙の唇側にセットしてから舌側歯牙形成用レジン材料を重合させて固定した後、必要に応じて舌側歯牙の舌側面の形態を舌側歯牙形成用レジン材料を用いて整えてから重合し前歯用の歯科補綴物を形成した。
【0026】
<実施例2>
不飽和二重結合を持つ化合物としてのトリメチロールプロパントリメタクリレート7.1重量%及びジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート21.8重量%と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトル1重量%と、充填材としての有機無機複合充填材16.2重量%,平均粒径が5μmのガラス粉末45.7重量%及び平均粒径が0.04μmのコロイダルシリカ8.2重量%とを混合し、更にこの混合物100重量部に対して顔料を0.6重量部の範囲内で添加混合し、透明性及び色を調整し均一なペースト状の混合物を得た。この混合物を人工歯作製用の金型で95℃,60分間圧接し冷却して厚さ0.3〜0.9mmの正面が前歯の唇側面の形態を模した形状の図1〜図3に示すようなエナメル色の前歯用の歯牙表面用補綴物を作製した。
【0027】
実施例2の前歯用の歯牙表面用補綴物を用いて残存歯に固定する場合であってその残存歯が略完全な形状である場合の修復方法を説明する。
先ず、治療を行う残存歯をタービンなどで大まかな形状の支台に削り出し、通常使用される歯科用コンポジットレジン材料と略同様の組成であって天然歯と合わせた色調の舌側歯牙形成用レジン材料として支台築造用レジン(商品名;ユニフィルコア コンポジットペースト,ジーシー社製)を準備し、隣接歯の接触面をクエン酸やリン酸などの酸により表面処理した後、舌側歯牙形成用レジン材料を支台に築盛して舌側歯牙を形成し、舌側歯牙形成用レジン材料の重合前に前歯用の歯牙表面用補綴物を舌側歯牙の唇側にセットしてから舌側歯牙形成用レジン材料を重合させて固定した後、必要に応じて舌側歯牙の舌側面の形態を舌側歯牙形成用レジン材料を用いて整えてから重合し前歯用の歯科補綴物を形成した。
【0028】
【発明の効果】
以上に詳述したように本発明に係る歯牙表面用補綴物は、支台となるおおまかな形状の部分を形成しておいてその支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛して舌側歯牙を形成する際にその舌側歯牙の唇側又は隣接面側に接合して固定して歯科補綴物を形成するためのものであり、従来のように以後に作製される歯科用補綴物の形状や構造を考慮しながら慎重に支台歯などの支台の形成を行う必要や、印象の採得や石膏模型の作製の必要が無く、また技工所での煩雑な作業に基づく歯科用補綴物の製造も必要無く、1回の診療所での治療で簡単に且つ短時間で色調も正確な歯科修復を可能とするものであり、その歯科治療に貢献する価値は非常に大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の1実施例の正面図である。
【図2】図1の左側面図である。
【図3】図1の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の他の実施例の図3に対応する斜視図である。
【図5】本発明に係る歯牙表面用補綴物が前歯用である場合の更に他の実施例の図3に対応する斜視図である。
【図6】本発明に係る歯牙表面用補綴物が犬歯用である場合の1実施例の正面図である。
【図7】本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の1実施例を斜め正面側から見た斜視図である。
【図8】図7の歯牙表面用補綴物を斜め裏面側から見た斜視図である。
【図9】本発明に係る歯牙表面用補綴物が臼歯用である場合の他の実施例を斜め正面側から見た斜視図である。
【図10】図1〜図3に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯で形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図11】図4に示した前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図12】図5に示した本発明に係る前歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【図13】図7及び図8に示した本発明に係る臼歯用の歯牙表面用補綴物を残存歯の歯根上に形成した支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合した状態を示す側断面説明図である。
【符号の説明】
1 本発明に係る歯牙表面用補綴物
1a 溝部を形成する突起部
1b 孔部を形成する突起部
2 ポスト
3 支台
4 舌側歯牙形成用レジン材料
Claims (3)
- 前歯の唇側面か、臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面か、臼歯の頬側面又は隣接面と咬合面との形態を模した形状を成しその裏面を支台に舌側歯牙形成用レジン材料を築盛されて形成される舌側歯牙に接合される歯牙表面用補綴物であって、不飽和二重結合を持つ重合可能な化合物と充填材と重合開始剤との混合物の重合体から成ることを特徴とする歯牙表面用補綴物。
- 前歯の唇側面の厚さ又は臼歯の頬側面、隣接面又は咬合面の厚さが0.1〜2mmである請求項1に記載の歯牙表面用補綴物。
- 裏面に、残存歯の歯根部に植立されたポストが貫通又は係合する孔部又は溝部を形成する突起部を有する請求項1又は2に記載の歯牙表面用補綴物。
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