JP2017057270A - 光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物、及びこれを用いた光硬化性樹脂成型物の作製方法 - Google Patents

光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物、及びこれを用いた光硬化性樹脂成型物の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光硬化性樹脂を用いた歯科用補綴物の作製で、未熟練者でも容易に複雑な形態の成型物を作製ができ、作業時間の短縮ができる組成物及び成型物の作成方法の提供。
【解決手段】成分(1)(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサン、成分(2)350〜700nmの範囲の波長光で励起する光重合開始剤、成分(3)充填材を含み、成分(1)と成分(3)の屈折率差が0.1000以内であり、且つ、硬化後の光透過性が50%以上である歯科用組成物。光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物を用いて、予め作製したい形態の凹型を取得しておき、ここに光硬化性樹脂を填入し、シリコーン組成物を介して光照射し、光硬化性樹脂を硬化させる成型物の作成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物、及びこれを用いた光硬化性樹脂成型物の作製方法に関するものであり、より詳細には350〜700nmの範囲の波長光を照射することにより硬化する光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物、及びこれを用いた光硬化性樹脂成型物の作製方法に関する。
う蝕等により、口腔内の歯質の部分的削除を余儀なくされた場合、失った歯質を審美的、機能的、形態的に回復するために、種々の材料を用いて正常な歯冠形態を再現する治療が一般的に行われている。歯冠形態を再現する方法は、その術者によって大きく2通りに分けることができる。1つは歯科医院で歯科医師が行う方法である。歯科医師は疾患がある歯質部分を削除した後、光硬化性樹脂を用いて歯冠形態を再現する。もう1つの方法は歯科技工所で歯科技工士が作製する方法である。この方法の場合、歯科医院にて疾患がある歯質部分を削除した後、その部分を口腔内で印象採得して凹型を採取する。採取した凹型に石こう等の模型材を流し、患者の口腔内を再現した模型を得る。この情報を基に歯科技工士が歯科用補綴物を作製する。治療方法は適宜、歯科医師の判断によって選択されるが、一般的に歯質の削除部位が歯冠部全体や、多数歯に渡る場合など、歯質の削除量が多く、再現すべき形態が複雑なケースでは、歯科技工士によって作製された補綴物を用いた治療が選択される。
歯科技工士によって作製される歯科用補綴物の素材は様々で、ジルコニアや陶材などの無機材料や金属、光硬化性樹脂などがある。各素材は診療方針や患者からの審美的要求によって選択される。ジルコニアや陶材などの無機材料を用いて作製された補綴物は金属や光硬化性樹脂を用いて作製された補綴物と比較して高い審美性と機能性を有している。一般的には患者からの審美的要求が低い臼歯部に金属や光硬化性樹脂が用いられ、前歯部など患者からの審美的要求が高い部分には歯冠色の光硬化性樹脂がそれぞれ用いられる。
一般に、光硬化性樹脂を用いた補綴物は、歯科技工士が専用のインスツルメントを用いて築盛することによって作製されるが、天然歯様の歯冠形態や咬合面形態は非常に複雑であり、築盛法による再現には豊富な経験と高い技術力が求められる上に、作製に長時間を要する。
そのため歯科医師や歯科技工士が咬合採得や矯正用ブラケットの固定に用いられる光透過性を有するシリコーン印象材等を、作製したい形態に熱可塑性樹脂などを塗布し、一定時間静置することで硬化させて、作製したい形態を記録した凹型を得た後、この凹型に光硬化性樹脂を填入し、光透過性を有するシリコーン印象材等を介して光を照射することにより、歯冠形態や咬合面形態を再現する方法も行われている。それら咬合採得用やインダイレクトボンディング用の光透過性を有するシリコーン印象材に関する先行技術としては以下のものがある。
特開平5−194860号公報(特許文献1)には、分散性の高い疎水化処理が施された充填剤、分子中に2個以上のビニル基を有する短鎖オルガノポリシロキサン、ビニル基を有する短鎖QM樹脂、分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン、架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサン、触媒及び染料を含有し、硬化後に高い光透過性、引裂き強度、ゴム硬度を示す咬合採得用の組成物が開示されている。
特開平9−2916号公報(特許文献2)には、平均重合度3000〜20000の実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンが5〜60重量%、分岐状ないし分岐を含む環状のポリオルガノシロキサンが10〜40重量%及び平均重合度5〜1000の直鎖状ポリジオルガノシロキサンが残余量%からなるケイ素原子に結合したビニル基を1分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するポリオルガノシロキサンと、白金系化合物とからなり、硬化前には練和性、押し出し性がよく、ペーストの垂れも少なく、硬化後も高い光透過性を維持できる組成物が開示されている。
特開平5−194860号公報 特開平9−2916号公報
特許文献1の従来の光透過性シリコーン組成物は咬合採得に用いることを目的としている。また、特許文献2の従来の光透過性シリコーン組成物は、矯正用のブラケットの固定に用いることを目的としている。これら特許文献1及び特許文献2の光透過性シリコーン組成物は、触媒成分を含む第一ペーストと、架橋材成分を含む第二ペーストからなり、使用の直前に前記第一ペーストと第二ペーストを混合練和することで硬化する。これらの第一ペーストと第二ペーストは硬化前の粘度が低いため、混合練和を行うための専用の包装材料に充填しておくこと、及び専用の練和器具を用いることが必須である。専用の練和器具としては、一般的にスタティックミキサが用いられており、前記第一ペースト及び第二ペーストがスタティックミキサを内包する筒状の練和経路を進むことで徐々に混合練和され、ミキサ出口に到達するまでに充分混合練和される様に設計されている。また、専用の練和器具は、専用の包装容器に勘合する勘合部を有している。実際の使用においては、包装容器と練和器具を勘合させた後、包装容器から練和器具へとペーストを押し出し、スタティックミキサを含む練和器具の出口から排出される充分に混合練和されたペーストを用いる。このような混合練和機構を採用しているため、使用終了後、練和器具の練和経路内には、その経路長に比例した量のペーストが残存することとなる。練和経路内に残存したペーストは、包装容器との勘合部付近では混合練和が不十分な状態であり、出口付近では充分混合練和されているため、時間経過と共に練和経路内で部分的に硬化する。このような状態であるため、練和器具と練和器具内に残存した未使用のペーストは1回使用毎に廃棄せざるを得ない。このような背景から、専用の包装材料に充填され、専用の練和器具を用いて練和する従来のシリコーン組成物は、使用の直前に煩雑な混合練和の工程を伴うだけでなく、大量の産業廃棄物を生じるという問題もある。更に、歯科医院、及び歯科技工所において日常的に使用するには価格が高いという問題点もある。
上記課題を解決するために、発明者らは鋭意検討の結果、成分(1)(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサン、成分(2)350〜700nmの範囲の波長光で励起する光重合開始剤、成分(3)充填材を含む可視光硬化性シリコーン組成物であって、前記成分(1)及び前記成分(3)の屈折率差が0.1000以内であり、350〜700nmの範囲の波長光を照射することによって硬化し、硬化後の470nmの波長光における光透過率が50%以上である、高い光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物が得られることを見出した。また、このような可視光硬化性シリコーン組成物を、作製したい形態を有する対象物に塗布し、光を照射することで硬化させて、対象物の形態を記録した凹型を作製し、この凹型に光硬化性樹脂を填入後、硬化した可視光硬化性シリコーン組成物を介して光を照射することで対象物の形態を複写した光硬化性樹脂の成型物が容易に作製できることを見出した。
本発明の1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物を使用することで2つ以上の成分を混合練和する手間が省けるだけでなく、混合練和に必要な専用の包装容器や練和器具を併用する必要が無くなるため、材料を無駄なく使用することができ、且つ、作業の効率化や産業廃棄物の減少にも大きく寄与できる。また、本発明の成型物作製方法を採用することで、上記効果に加え、未熟練者でも容易に複雑な形態を有する光硬化性樹脂成型物が作製できるだけでなく、作業時間を大幅に短縮することが可能である。本発明は上記知見に基づくものである。
本発明は成分(1)(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサン、成分(2)350〜700nmの範囲の波長光で励起する光重合開始剤、成分(3)充填材を含む光硬化性シリコーン組成物に関する。本発明では前記成分(1)及び前記成分(3)の屈折率差が0.1000以内であり、硬化後の470nmの波長光における光透過率を50%以上とする。ここで(メタ)アクリル基とは、特段の限定が無い限り、メタクリル基、及びアクリル基の両方を意味する。
成分(1)は(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンであり、(メタ)アクリル基のラジカル重合によって硬化する。本発明の(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンは一般式[1]で表される。
Figure 2017057270

ここで、式中のR1〜Rn+7は直鎖状、分岐状、または環状の非置換、または置換の有機基、またはシロキサン鎖であるが、そのうち少なくとも1つは(メタ)アクリル基、若しくは(メタ)アクリル基を有する有機基であることが必須となる。また、R1〜Rn+7は互いに同じでも良く、異なっていても良い。nは1以上の整数である。Rn+6、及びRn+7は繰り返し単位ごとに同じでも良く、異なっていても良い。
R1〜Rn+7を具体的に例示すると、(メタ)アクリル基、エタクリル基などのアルキルアクリル基、(メタ)アクリルメチル基、エタクリルメチル基、(メタ)アクリルエチル基、エタクリルエチル基、(メタ)アクリルプロピル基、エタクリルプロピル基などのアルキルアクリル−アルキル基、(メタ)アクリルメトキシ基、(メタ)アクリルエトキシ基、(メタ)アクリルプロポキシ基、エタクリルメトキシ基、エタクリルエトキシ基、エタクリルプロポキシ基などのアルキルアクリル−アルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基などのアルコキシアルキル基、(ポリ)エチレンオキサイド、(ポリ)プロピレンオキサイドなどの(ポリ)アルキレンオキサイド、(メタ)アクリロキシシロキサン、ジメチルシロキサンなどの前記R1〜Rn+7を側鎖及び/または末端に有するシロキサンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またそれらの基の一部分が他の基と置換されていても良い。ここで(ポリ)アルキレンオキサイドとは、特段の限定が無い限り、アルキレンオキサイド、及びポリアルキレンオキサイドの両方を意味する。
前記必須の(メタ)アクリル基は前記R1〜Rn+7に例示した様な官能基の一部に置換されていても良い。また、これらはオルガノポリシロキサンのモノマー単位のいずれかに位置していれば良いが、オルガノポリシロキサン主鎖の末端、または末端付近に位置することが好ましい。さらに、(メタ)アクリル基がα、ω位、即ち主鎖の両末端にそれぞれ1つずつ位置することが特に好ましい。このようなオルガノポリシロキサンを用いると三次元網目構造を形成しやすく、高い硬化性を発現する。
また、オルガノポリシロキサンの分子構造に特に制限は無く、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目構造のいずれの構造であっても良い。
成分(1)の化合物を具体的に例示すると、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス((メタ)アクリロキシプロポキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス((メタ)アクリロキシポリエチレンオキサイド)ポリジメチルシロキサン、これらのフェニル変性ポリシロキサン、ベンジル変性ポリシロキサン、トリル変性ポリシロキサン、キシリル変性ポリシロキサン、ビス((メタ)アクリロキシプロピル)テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリロキシプロポキシプロピル変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピルシロキシトリス(ポリジメチルシロキサン)、及びこれらの2種類以上の混合物などが挙げられ、その中でもビス((メタ)アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、またはビス((メタ)アクリロキシポリエチレンオキサイド)ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。
成分(1)は成分(3)との屈折率差が0.1000の範囲内となるように選択される。また、成分(1)の屈折率は1.380〜1.480の範囲内にあることが好ましく、1.440〜1.470の範囲内にあればより好ましい。成分(1)の屈折率が上記範囲外となると、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物に含有されるその他の成分との屈折率に著しい差が生じる場合があり、高い光透過性を維持できなくなることがある。
成分(1)の含有量は可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、5wt%〜95wt%であることが好ましく、40wt%〜90wt%であればより好ましい。成分(1)の含有量が5wt%未満になると、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれるその他の成分が相対的に過剰となり、良好な操作性を維持できなくなることがある。また、成分(1)の含有量が95wt%を超える場合も、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれるその他の成分が相対的に少なくなり、良好な操作性を維持できなくなることがある。
成分(2)は光重合開始剤であり、350〜700nmの範囲の波長光で励起し、成分(1)のラジカル重合を開始・促進するための触媒である。さらに、光重合開始剤としては、光増感剤からなるもの、光増感剤/光重合促進剤からなるもの等が挙げられる。
光増感剤を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p'−ジメトキシベンジル、p,p'−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα−アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕−チタン、ビス(シクペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類、及びこれらの2種類以上の混合物等が挙げられる。
光重合促進剤を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第二級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物、及びこれらの2種類以上の混合物等が挙げられる。
さらに、光重合促進能の向上のために上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類を添加することができる。
これらの光重合開始剤は単独であるいは複数を組合せて用いることができる。また、必要に応じてマイクロカプセルに内包するなどの二次的な処理を施してもよい。
これらの光重合開始剤の中でも、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類、α−アミノアセトフェノン類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、及びこれらの2種類以上の組合せが好ましい。
また、使用用途に応じて、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸、またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
成分(2)の屈折率は特に制限されないが、1.380〜1.480の範囲にあることが好ましく、1.440〜1.470の範囲にあればより好ましい。
成分(2)の含有量は可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、0.1wt%〜10wt%であることが好ましく、1wt%〜6wt%であればより好ましい。成分(2)の含有量が0.1wt%未満になると、成分(1)のラジカル重合が充分に進行せず、硬化性が悪くなることがある。また、成分(2)の含有量が10wt%を超えると、硬化後の470nmの波長光における光透過率が低くなることがある。
成分(3)は充填材であり、可視光硬化性シリコーン組成物の硬化前の作業性や、硬化後の物性を向上させるものである。
成分(3)充填材としては、無機充填材、有機高分子充填材、有機−無機ハイブリッド充填材、強化充填材など、一般に充填材として公知の物質を何ら制限なく用いることができる。また、これらの形状、表面処理の有無、粒子径などにも特に制限はなく、本発明の1ペースト型可視光硬化性シリコーン組成物を構成するために好適なものを用いることができる。
成分(3)充填材を具体的に例示すると、アルミニウム、アルミナイト、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、無水シリカ、モルデンフッ石、斜プチロルフッ石、沸石、珪藻土、焼成珪藻土、活性白土、石英、溶融石英、合成シリカ、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、チタニアシリカガラス、水晶、軽灰、オパール、ポリビニリデンフルオタイド、メタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、酢酸ビニル樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン、ステアリン酸、ホワイトカーボン、シリコーンゴムパウダー、シリコーン樹脂パウダー、ヒュームドシリカ、及びこれらの2種類以上の混合物等が挙げられ、溶融石英や合成シリカ、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、チタニアシリカガラス、ヒュームドシリカなどの非晶質シリカ、及びこれらの2種類以上の混合物から選択されることが特に好ましい。
成分(3)は成分(1)との屈折率差が0.1000の範囲内となるように選択される。また、成分(3)の屈折率は1.380〜1.480の範囲内にあることが好ましく、1.440〜1.470の範囲内にあればより好ましい。成分(3)と成分(1)の屈折率差が上記範囲外となると、高い光透過性を維持できなくなることがある。
成分(3)の含有量は可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、1wt%〜90wt%であることが好ましく、3wt%〜50wt%であればより好ましい。成分(3)の含有量が1wt%未満になると、組成物の粘度が低くなりすぎ、良好な操作性を維持できなくなることがある。また、成分(3)の含有量が90wt%を超えると、組成物の粘度が高くなり、流動性に悪影響を及ぼすだけでなく、場合によっては粘稠なペースト性状を保てなくなってしまうことがある。
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲において、顔料、染料、反応調整剤、発泡抑制剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの添加成分を併用することができる。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物において、前述の特徴を発現させる好ましい各成分の含有量は、可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、
前記成分(1)の含有量が5wt%〜95wt%、
前記成分(2)の含有量が0.1wt%〜10wt%、
前記成分(3)の含有量が1wt%〜90wt%、
の範囲である。このような含有量範囲で可視光硬化性シリコーン組成物を構成することで、硬化性が良好で、高い光透過性を有する可視光硬化性シリコーン組成物を得ることができる。
より好ましい各成分の含有量は、可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、
前記成分(1)の含有量が40wt%〜90wt%、
前記成分(2)の含有量が1wt%〜10wt%、
前記成分(3)の含有量が3wt%〜50wt%、
の範囲である。この範囲を満たす可視光硬化性シリコーン組成物は上記効果に加えて、良好な硬化性、高い光透過性、使用用途に応じた適度な流動性、硬化後の高い機械的特性が得られる。また、本発明の方法による光硬化性樹脂成型物の作製が更に容易になり、作業時間の更なる短縮も可能となる。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物は、例えば光硬化性樹脂からなる歯科用補綴物の成形品を作製するための凹型として利用することができるものである。この場合、硬化後の可視光硬化性シリコーン組成物の光透過率が低すぎると、光硬化性樹脂の重合反応を開始するために充分な光が硬化後の可視光硬化性シリコーン組成物を透過できず、光硬化性樹脂の重合反応が充分に進行しないことがある。また、光硬化性樹脂を可視光硬化性シリコーン組成物の凹型に流す際に、気泡の有無や流れ具合などが確認できず、所望の形態を適切に再現できているかを目視により確認できない場合が生じる。そのため、硬化後において470nmの波長光における光透過率が50%以上であることが好ましい。このような光透過率を有する可視光硬化性シリコーン組成物であれば、硬化後の可視光硬化性シリコーン組成物の凹型内に填入した光硬化性樹脂を確実に重合させるために充分な光を透過することができる。また、光硬化性樹脂をその凹型に填入した後も気泡の有無や圧接時の流れ具合などを目視で確認でき、光硬化性樹脂が所望の形態を適切に再現できているかを目視により確認できるという利点がある。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物が上記の光透過性を発現するためには、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれる成分の屈折率を制御することが重要となる。即ち、成分(1)と成分(3)は、互いの屈折率差が0.1000の範囲内となるように選択される。また、成分(1)及び成分(3)の屈折率を1.380〜1.480の範囲内とすることが好ましく、1.440〜1.470の範囲内とすることがより好ましい。成分(1)及び成分(3)の屈折率を前述のように選択することで、可視光硬化性シリコーン組成物を構成する成分の屈折率が近似し、より高い光透過性が得られる。
成分(2)の屈折率は特に制限されないが、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれるその他の成分と近似した屈折率を有することが望ましい。成分(2)は一般的に有機溶剤に可溶であり、光透過性に影響を与えにくいことが知られていため、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれる他の成分と厳密に屈折率を一致させることは必ずしも求められない。しかしながら、成分(2)が有機溶媒に不溶である場合や、可視光硬化性シリコーン組成物に含まれる他の成分との屈折率差に起因する不透明性を示す原因となるような場合は、可視光硬化性シリコーン組成物の光透過性に悪影響を及ぼさないように、成分(2)の屈折率も考慮されるべきである。
また、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いれば、複雑な形態を容易に再現することができるだけでなく、作業時間の短縮も可能である。以下に本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた様々な分野における成型物の作製方法について説明する。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた成型物の作製方法とは、可視光硬化性シリコーン組成物を、作製したい形態を有する対象物に塗布する工程と、塗布した可視光硬化性シリコーン組成物に350〜700nmの波長光を照射して硬化させ、対象物の形態が記録された凹型を作製する工程と、凹型に光硬化性樹脂を填入させる工程と、凹型内に填入した光硬化性樹脂に、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を介して光を照射して光硬化性樹脂を硬化させる工程とを行うことによる、対象物の形態を複写した成型物の作製方法である。
成型物が歯科用補綴物である場合の対象物が備える目的の形態とは、例えば患者の口腔内の歯冠形態や咬合面形態、歯頸形態、フレーム形態、歯肉形態、粘膜形態、マージン形態、カントゥア形態などであり、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた歯科用補綴物の作製方法は歯冠形態や咬合面形態のような再現に熟練と時間を要する部位の作製に特に有用である。
この歯科用補綴物を作製する場合の光硬化性樹脂としては、歯面コーティング材、歯冠用硬質レジン、歯科充填用コンポジットレジン、高分子系ブラケット接着材及び歯面調整材、歯科用支台築造材料、高分子系歯科小窩裂溝封鎖材、歯科用樹脂系模型材、その他の歯科充填用材料などが挙げられ、本発明の方法は歯冠用硬質レジン、歯科充填用コンポジットレジン、高分子系歯科小窩裂溝封鎖材、歯科用樹脂系模型材などを用いた複雑な形態の作製に特に有用である。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた成型物の作製方法は、熟練者でなくとも容易に複雑な形態を作製することができるだけでなく、作業時間も短縮することができる。このような方法を用いなかった場合、未熟練者では複雑な形態を作製することが非常に困難であり、作業に長時間を要するか、若しくは作製したい形態を作製できないことがある。また、熟練者であっても複雑な形態を作製するには長時間を要することがある。
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた成型物の作製方法において歯科用補綴物を作製する場合には、従来の築盛法と併用することができる。また、歯科技工所にて患者の歯列模型を基に実施するだけでなく、歯科医院において患者の口腔内で実施することもできる。以下に歯科用補綴物を作製する一例を示すが、本発明の方法を限定するものではない。
(歯科用補綴物の作製例1)
歯科医師は、歯科用補綴物を用いた歯科治療を行うため、患者の口腔内の治療箇所を削除し、支台歯形成、または窩洞形成を行う。
形成した支台歯、または窩洞に歯科用印象材を圧接し、一定時間経過後にゴム質弾性体を形成した後、口腔内から撤去することで形成した支台歯、または窩洞の形状を記録した印象体を得る。
得られた印象体に石こう泥を流し、患者の口腔内で形成した支台歯または窩洞の形態を再現した石こう模型を得る。
得られた石こう模型を歯科技工士に渡し、歯科技工士は石こう模型を基に歯科用補綴物の作製を行う。なお、歯科医師は印象体を歯科技工士に渡し、石こう模型の作製は歯科技工士が行っても良い。
歯科技工士は歯科医師より受け取った石こう模型の支台歯部分または窩洞部分にワックスなどの熱可塑性樹脂を用いて最終的に作製したい形態を再現する。ここに本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を塗布し、光重合器を用いて光照射を行い、硬化させる。
可視光硬化性シリコーン組成物が硬化した後、石こう模型の支台歯部分または窩洞部分の熱可塑性樹脂を撤去し、可視光硬化性シリコーン組成物の内面に光硬化性樹脂を填入する。これを石こう模型の支台歯部分または窩洞部分に圧接し、光重合器を用いて光照射を行い、光硬化性樹脂の仮重合を行う。
光硬化性樹脂を硬化させた成型物の形態が崩れることなく可視光硬化性シリコーン組成物から取り外せる程度まで仮重合を行った後、その成型物を可視光硬化性シリコーン組成物から取り外し、再度光重合器にて本重合を行う。成型物を充分に硬化させた後、成型物表面のキャラクタライズと最終調整、及び最終研磨を行う。
(歯科用補綴物の作製例2)
歯科医師は作製したい歯冠形態が患者の口腔内で維持されている場合、治療(支台歯形成または窩洞形成)前に本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いて、予め作製したい形態の凹型を作製しておく。
その後、治療箇所を削除し、支台歯形成、または窩洞形成を行う。
予め作製しておいた本発明の可視光硬化性シリコーン組成物の凹型に光硬化性樹脂を填入し、患者の口腔内の支台歯、または窩洞に圧接し、光重合器を用いて光照射を行い、光硬化性樹脂の仮重合を行う。
光硬化性樹脂を硬化させた成型物の形態が崩れることなく可視光硬化性シリコーン組成物から取り外せる程度まで仮重合を行った後、可視光硬化性シリコーン組成物を患者の口腔内から撤去し、再度光重合器にて本重合を行う。成型物を充分に硬化させた後、成型物表面のキャラクタライズと最終調整、及び最終研磨を行う。
尚、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物を用いた成型物の作製方法の適用範囲に特に制限はなく、歯科用補綴物の作製以外の用途にも適用できる。例えば、ネイルアート形態、アクセサリの一部または全部の形態、衣類に取り付けるボタンやブローチなどの装飾品の形態、ガーデニングに用いる飾りや小物の形態、キーホルダーの外枠またはキーホルダーそのものの形態、フィギュアなどの模型の形態、その他玩具の形態などを本発明の方法により容易に成型することが可能である。また、本発明の方法は形態が複雑で、作製に熟練と時間を要する場合に特に有用である。
本発明の実施例及び比較例について以下に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実施例及び比較例に示すシリコーン組成物の評価方法の詳細を示す。
(光透過率)
以下の実施例、及び比較例に示すシリコーン組成物をガラス板上に置いた内径30mm、厚さ2mmのモールドに流し込み、直ちにモールドが置かれたガラス板と同じガラス板を用いて天面から圧接し、技工用光重合器(株式会社松風製 ソリデライト)にて3分間光照射を行い、シリコーン組成物を硬化させ、光透過率測定用の試験体を作製した。作製した試験体の23℃における470nmの波長光の透過率をコニカミノルタ社の分光測色機CM3500−dを用いて測定した。尚、以下の比較例に示す2液混合型の従来型硬化性シリコーン組成物においては、専用のスタティックミキサを用いて2液を混合後、一定時間静置することによってシリコーン組成物を硬化させたこと以外は全て前記実施例の場合と同様に評価した。
(シリコーン組成物の硬化性)
以下の実施例、及び比較例に示すシリコーン組成物について、前記光透過率の測定後の試験体をモールドから取り外し、その硬化性を「硬化」、もしくは「未硬化」の2段階で評価した。
(光硬化性樹脂の硬化性)
石こう模型の支台歯部分に熱可塑性樹脂を用いて歯冠形態を再現し、ここに以下の実施例、及び比較例に示すシリコーン組成物を塗布し、技工用光重合器(株式会社松風製 ソリデライト)にて1分間光照射を行い、硬化させることで、歯冠形態を記録したシリコーン組成物の凹型を得た。次に、得られたシリコーン組成物の凹型内面に光硬化性樹脂(株式会社松風製 ソリデックスハーデュラ インサイザル59)を填入した。これを石こう模型の支台歯部分に圧接し、技工用光重合器を用いて30秒間光照射することによって光硬化性樹脂の仮重合を行い、シリコーン組成物から取り外すときの光硬化性樹脂の硬化性を以下の2段階で評価した。尚、以下の比較例に示す2液混合型の従来型硬化性シリコーン組成物においては、専用のスタティックミキサを用いて2液を混合後、一定時間静置することによってシリコーン組成物を硬化させたこと以外は全て前記実施例の場合と同様に評価した。
○:形態を崩すことなく取り外せた。
×:変形が認められ、修正するには時間とテクニックが必要で、本発明の効果が得られなかった。
(1回使用での廃棄物重量の算出)
以下の比較例に示す2液混合型の従来型硬化性シリコーン組成物を、スタティックミキサを含む専用の練和器具を用いて混合練和し、ペーストを排出することで練和経路内をペーストで満たし、この状態で練和器具及び練和器具内に残存したペーストの重量を計測し、1回使用で生じる廃棄物の重量を算出した。尚、以下の実施例に示すシリコーン組成物においては、練和器具等を必要としないため、基本的に1回の使用では廃棄物を生じない。
(可視光硬化性シリコーン組成物の調製に用いた成分の詳細)
本発明の可視光硬化性シリコーン組成物の調製に用いた成分(1)〜(3)、及びその屈折率、吸収波長、及び50%粒子径を表1に示した。尚、屈折率と50%粒子径は以下の方法にて測定した。
(屈折率)
アタゴ社製アッベ屈折計を用いて、ステージ温度24〜26℃の条件で測定。
(50%粒子径)
日機装社製マイクロトラックMT3300を用いて測定。
(可視光硬化性シリコーン組成物の調製及び評価結果)
可視光硬化性シリコーン組成物の調合表、成分(1)と成分(3)の屈折率差、前期屈折率差の請求項1への適合・不適合(0.1000以内であるかどうか)、及び前述の各評価を実施した結果を表2に示した。
実施例1では470nmの波長光に対して50%以上の高い光透過率を有し、シリコーン組成物の硬化性、及び光硬化性樹脂の硬化性共に良好であり、光硬化性樹脂の仮重合に充分な光透過率を有していた。また、専用の練和器具等を必要としないため、一回使用における廃棄物は生じなかった。
実施例2は実施例1における成分(1)の配合量を多く、成分(3)の配合量を少なくした組成物である。
実施例3は実施例1における成分(1)の配合量を少なく、成分(3)の配合量を多くした組成物である。
実施例4、及び6は実施例1における成分(2)の配合量を少なくした組成物である。
実施例5、及び7は実施例1における成分(2)の配合量を多くした組成物である。
実施例8は2種類の成分(3)を併用した組成物である。
実施例9は実施例1における成分(1)をMPSとした組成物である。
実施例2〜9では470nmの波長光に対して50%以上の高い光透過率を有し、シリコーン組成物の硬化性、及び光硬化性樹脂の硬化性共に良好であり、光硬化性樹脂の仮重合に充分な光透過率を有していた。また、専用の練和器具等を必要としないため、一回使用における廃棄物は生じなかった。
(比較例)
比較例1は実施例1における成分(1)をVMSとした組成物である。比較例1では470nmの波長光に対して50%以上の高い光透過率を有していたものの、技工用光重合器による光照射では硬化しなかった。そのため、光硬化性樹脂の硬化性については評価できなかった。また、専用の練和器具等を必要としないため、一回使用における廃棄物は生じなかった。
比較例2は実施例1における成分(3)を長石とし、成分(1)と成分(3)の屈折率差を0.1000以上とした組成物である。比較例2では470nmの波長光に対して20%未満の低い光透過率を有し、シリコーン組成物の硬化性は良好であったものの、光硬化性樹脂が充分硬化せず、光硬化性樹脂の仮重合に必要な光透過率を有していなかった。また、専用の練和器具等を必要としないため、一回使用における廃棄物は生じなかった。
比較例3は2液混合型の従来型硬化性シリコーン組成物である。比較例3では470nmの波長光に対して50%以上の高い光透過率を有し、光硬化性樹脂の硬化性も良好であり、光硬化性樹脂の仮重合に充分な光透過率を有していた。尚、比較例3は2液混合型の従来型硬化性シリコーン組成物であるため、シリコーン組成物の硬化性については評価していない。また、専用の練和器具を用いて練和した場合、一回の使用において、スタティックミキサ3.5g、ミキサ内残存ペースト2.6g、合計6.1gの廃棄物が生じた。比較例3では1包装単位におよそ56gのペーストが含まれているため、2.6gのロスは全体の約4.6%に相当する。また、2液混合型のシリコーン組成物は、混合練和後、完全硬化までに室温で10分以上要するため、本発明の可視光硬化性シリコーン組成物と比較すると、待ち時間も長くなる。
本発明によれば、硬化後に高い光透過性を示す、1ペースト型の可視光硬化性のシリコーン組成物を提供することができる。また、本発明の成型物の作製方法によれば、未熟練者でも容易に複雑な形態の成型物を作製することができ、作業時間の短縮や産業廃棄物の減少にも寄与できる。
Figure 2017057270
Figure 2017057270


Claims (4)

  1. 成分(1)(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサン、
    成分(2)350〜700nmの範囲の波長光で励起する光重合開始剤
    成分(3)充填材
    を含む可視光硬化性シリコーン組成物であって、
    前記成分(1)及び前記成分(3)の屈折率差が0.1000以内であり、且つ、
    硬化後の光透過性が50%以上であることを特徴とする光透過性を有する1ペースト型の可視光硬化性シリコーン組成物。
  2. 可視光硬化性シリコーン組成物全体に対して、
    前記成分(1)の含有量が5wt%〜95wt%、
    前記成分(2)の含有量が0.1wt%〜10wt%、
    前記成分(3)の含有量が1wt%〜90wt%、
    である請求項1に記載の可視光硬化性シリコーン組成物。
  3. 前記成分(1)と前記成分(3)の屈折率がそれぞれ1.380〜1.480の範囲にあることを特徴とする請求項1、及び2に記載の可視光硬化性シリコーン組成物。
  4. 請求項1〜4の可視光硬化性シリコーン組成物を作製したい形態の対象物に塗布後、光照射することによって硬化させる、前記対象物の形態を記録した凹型を作製する工程と、
    前記凹型に光硬化性樹脂を充填し、硬化した可視光硬化性シリコーン組成物である凹型を介して光照射を行う、光硬化性樹脂を硬化させる工程とからなることを特徴とする成型物の作製方法。

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