JP2790634B2 - 運動機械系の制御装置 - Google Patents

運動機械系の制御装置

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JP2790634B2 JP63208854A JP20885488A JP2790634B2 JP 2790634 B2 JP2790634 B2 JP 2790634B2 JP 63208854 A JP63208854 A JP 63208854A JP 20885488 A JP20885488 A JP 20885488A JP 2790634 B2 JP2790634 B2 JP 2790634B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、2次の微分方程式で記述される動特性を有
するロボットのような運動機械系に用いられる制御装置
に関する。
[従来の技術] 例えば、種々の産業分野で用いられるロボット(主に
ロボットアーム)において、その位置や速度を目標値に
一致させる制御系が良好に動作するためには、制御系の
パラメータを適切に調整することが必要であるが、それ
らのパラメータは、制御系が組み込まれる運動機械系の
動特性、特に慣性モーメント、質量、粘性摩擦等に大き
く依存しており、機械系によって大きく異なる。そのた
め、制御系のパラメータは、機械系とその使用条件に合
わせて調整されなければならない。
一方、パラメータを使用条件に応じて一々変えること
はできなかったので、ロボットのように機械の動きによ
って動特性が大きく変化する運動機械系では、駆動手段
として高精度のモータ(例えば、ダイレクトドライブ方
式のモータ)を使用する場合、良好な制御を行うために
種々の工夫が必要であった。
詳細には、ロボットのような運動機械系は2次の微分
方程式で記述される連続系であり、これに使用されるモ
ータの出力トルクをτ、モータへの電圧入力をuとする
と、両者の関係は τ=Ku …(1) と表わされる。モータに負荷がない場合、回転角をxと
すると、上式は となる。但し、mはモータのロータ部の慣性モーメン
ト、fは粘性摩擦係数である。
一方、第5図に示すように、モータ1が慣性モーメン
トM、粘性摩擦係数Fの機械系2を負荷とする場合は、
次のように表わされる。
(m+M)+(f+F)=τ …(3) ここで、モータ1とこれによって駆動される機械系2
との間に減速比の大きい通常の減速機を用いた場合、そ
の減速比により、Mはロータ軸上ではmに比べて十分に
小さくなる。Fは制御系のパラメータにあまり影響しな
いので、Mが変化しても、モータ1の動特性は殆ど変わ
らず、機械系2に外力が加わっても、モータ1に殆ど影
響を与えない。従って、適切な制御系のパラメータも大
きく変化しない。
ところが、モータ1と機械系2との間に介在する減速
機には歯車のバックラッシュがあり、機械的なガタや遅
れが生じるため、高速且つ高精度の位置決め制御には適
さない。そこで、高精度の制御が要求される場合、減速
機を介在させず、負荷を直接駆動するダイレクトドライ
ブモータが使用されている。
このダイレクトドライブモータで駆動する場合には、
モータのロータ部の慣性モーメントmに比べて負荷の慣
性モーメントMが大きいので、いかなるMとFに対して
も有効な線形且つ時間的に不変な制御系を設計すること
はできない。また、このような機械系では、直接的に負
荷とモータがつながっているので、外力の影響を受けや
すい。そのため、機械系のM,F等に適応して制御動作の
パラメータを変化させると共に、外力をすばやく補償で
きる制御系が必要であった。
このような制御系の安定性を保証する原理の1つにリ
アプノフの定理があり、これに基づいてロボット等の1
軸の回転機械系の制御を行う技術が知られている。それ
によれば、まず、リアプノフ関数と呼ばれる正定関数を
定義する。それをVとすると、その時間圧微分が負で
あれば、Vは必ず減少することが保証され、最終的に0
となる。リアプノフ関数は、追従誤差やパラメータ誤差
等のように0にしたいもので構成されるので、これが0
という条件が満たされれば安定であるということができ
る。
[発明が解決しようとする課題] それ故、リアプノフ関数とその時間微分を負にする制
御則をどのように定めるかが重要であるが、その関数
を、スライディングサーフェイスと呼ばれる安定な位相
面を指定してその位相面からの偏差sと機械系のパラメ
ータの推定誤差との2次形式で表わし、その時間微分が
負になるようにsの正負で構造が変化する制御則を定
め、機械系のパラメータ変動や外力に対処する方法が提
案されている。しかし、外乱が大きいと、が負になら
ず、Vが最終的に0にならない場合が生ずる。このと
き、機械系はオフセットを生ずるという問題点があっ
た。
本発明は、上記のVが0でない場合でも機械系のオフ
セットをなくすようにした制御装置を提供することを目
的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、制御対象とする運動機械系のパラメータに
合わせて制御動作のパラメータを自動的に調整する制御
装置であって、 制御対象の制御量xと目標値rとの偏差eから、指定
した安定な位相面(スライディングサーフェイス)から
の偏差sを演算する演算手段と、 その演算で得られた偏差sを用いて、上記制御xと目
標値rとの偏差eを0にするような適応則により、運動
機械系のパラメータの推定値 を演算し、制御動作のパラメータとする適応手段と、 上記演算手段で得られた偏差s及び適応手段で得られ
たパラメータ値 を用いて、偏差sの関数を含む非線形制御則に従って、
制御量xと目標値rとの偏差eを上記位相面に移す制御
入力τを生成するコントローラと を備え、上記非線形制御則における偏差sに上記制御量
xと目標値rとの偏差eの積分要素を含んでいることを
特徴とする。
本発明の好ましい態様では、制御装置は、非線形制御
則に従って生成された制御入力が制御対象の入力範囲を
越えた場合には、上記非線形制御則における積分要素を
固定し、上記適応則によるパラメータ適応を停止するこ
とを特徴とする。
[作用] 演算手段では、制御対象の制御量xと目標値rとの偏
差eから、指定した安定な位相面からの偏差sを演算す
る。適応手段では、その演算で得られた偏差sを用い
て、制御対象の制御量xと目標値rとの偏差eを0にす
るような適応則により、パラメータの推定値 を演算する(制御対象のパラメータを同定する)。コン
トローラでは、演算手段で得られた偏差s及び適応手段
で同定したパラメータ値 を用いて、非線形制御則により、目標値rと制御量xと
の偏差eを安定な位相面に移すような制御入力τを生成
する。ここで用いられる非線形制御則は、偏差sの関数
で、定常状態における制御量xと目標値rとの偏差eを
0にする積分要素を含んでいるので、制御対象である運
動機械系の動特性が変化する場合でも、誤差が補償さ
れ、安定した応答が得られる。
また、好ましい態様によれば、上記非線形制御則に従
って生成された制御入力τが制御対象の入力範囲を越え
たとき、非線形制御則における積分要素を固定し、かつ
適応則によるパラメータ適応を停止することにより、制
御入力が一定の範囲に制限される制御対象に対しても、
誤差を最小にする制御入力を生成できる。
[実施例] まず、前述の(3)式において J=m+M D=f+F とすれば、制御対象である運動機械系は次式で表わされ
る。
J+D=τ …(4) この制御対象を目標値rに追従させる場合を考える。
目標値rと制御量xとの偏差を e=x−r …(5) とすると、(4)式は J+D=τ−J−D …(6) となる。
ここで、位相空間(,e,v)において安定な位相面か
らの偏差sを次のように定める。
s=+k2・e+k1・v …(7) 但し、v=∫edt すなわち =e 安定な位相面とは、上式においてs=0,すなわち +k2・e+k1・v=0 を満たす部分空間のことであり、sは位相空間上で安定
な位相面からの偏差を表わす。そして、 s2+k2・s+k1=0 なる特性方程式の根(s=a±ib)の実部がすべて負に
なるように係数k1及びk2を決定すると、時間t→∞で|e
|→0となる。すなわち、上記部分空間(安定な位相
面)上の任意の点は、時間が経過するにつれて0に収束
する。
また、sが定数であると、sの微分は0,従って(7)
式より =+k2・+k1・e=0 となるので、k1及びk2を上記のように決定することによ
り、t→∞でe→0となる。つまり、(7)式におい
て、t→∞でe→0となってもs→k1・v,従ってsが定
数に収束する場合でも、eは0に向かうことが保証され
る。
また、制御入力の生成には、機械系のパラメータの推
定値を制御動作のパラメータとして用いるので、真のパ
ラメータの値と推定値との誤差が大きいと、適切な制御
入力を生成することができない。従って、制御の目的
は、制御動作のパラメータ(推定値)を機械系の特性変
化に合わせて適応させながら、s=0となるような制御
入力を求めることである。
そこで、正定なリアプノフ関数Vを次のように定め
る。
上式で、 で表わされるパラメータ偏差、θはθ=[J D]
表わされる運動機械系のパラメータ、 はその推定値 Γは2×2の正定対称行列である。
上記関数Vは正定であるので、その時間微分が負で
あれば、Vは0に向かうことが保証される。すなわち、
安定な位相面からの偏差sとパラメータ偏差 が0になることが保証される。
(8)式よりを求めると、 一方、(7)式及び(5)式より =+k2・+k1・=−+k2・+k1・e (4)式より J=τ−D であるから、 となる。
ここで、制御入力τを次のように定める。
τ=−k3・s+(−k2・−k1・e)+ …
(9) 上式で、k3は正定値、,は上記パラメータJ,Dの
推定値である。(9)式を代入すると、 ここで、,はそれぞれ=−J,=−Dで表
わされる偏差であり、 であるから、 Y=[−k2・−k1・e ] とすると、は次式で表わされる。
<0を常に満たすためには、 ここで、パラメータθは時間的に変化しない(=
0)から、 従って、(10)式より、適応則は となる。これを用いてパラメータの推定値 を機械系の特性変化に適応させる。このとき、安定な位
相面(s=0)上では、パラメータの推定値の変化はな
くなる が、この位相面は、上記のように係数k1及びk2を決定す
る限り、位相空間でs=0として一意に定められるもの
であり、かつ、この位相面上にある限り、t→∞でe→
0が保証されるので、パラメータに不確定正がある場合
でも、パラメータ値の推定は有効である。すなわち、機
械系のパラメータ変動がある場合でも、上記(9)式及
び(11)式の下に、偏差eを0にすることができる。
更に、外力やパラメータ誤差による機械系の応答誤差
を安定な位相面に移すために、制御則として、制御入力
τを次のように定める。
τ=−k3・s+(−k2・−k1・e)+−g・f(s) …(12) ここで、gは正定値、f(s)はf(s)・s≧0と
なる非線形関数である。
このとき、は となり、(11)式を用いると、=−k3・s2−g・f
(s)・sであるから、<0が満たされる。
f(s)としては、例えば次のようなものを選ぶこと
ができる。
f(s)=sgn(s) (11)式で表わされる適応則及び(12)式で表わされ
る制御則を用いると、パラメータ変動や外力が存在する
場合でも、機械系の応答誤差を指定した安定な位相面に
移すような制御入力τが生成される。
また、(12)式において、f(s)を と連続化することにより、制御入力τに連続性を持たせ
ることもできる。
以上の思想に基づいて設計される制御系を第1図に示
す。図において、11は(4)式で表わされる運動機械系
(制御対象)、12は(7)式で表わされるsを演算する
演算手段、13は(11)式で表わされる適応則によりパラ
メータの推定値 を演算する適応手段、14は(12)式で表わされる制御則
に従うコントローラである。演算手段12、適応手段13及
びコントローラ14は、コンピュータで構成される。
次に、制御入力τに次のような拘束条件ある場合を考
える。
τmin<τ<τmax 例えば、制御入力がモータの出力トルクの場合、それ
は一定の範囲に定められる。前述の非線形制御則(12)
で計算されるτがこの拘束条件の範囲外にある場合に
は、非線形制御則(12)における積分機能と適応則(1
1)によるパラメータ適応を停止する。すなわち、
(7)式の積分要素vを固定し、拘束条件の範囲内で用
いられる(11)式によるパラメータ適応を停止すること
により、(8)式で表わされるVが0に収束するように
する。この場合の制御入力τは、 τ<τminのときτ=τmin τ>τmaxのときτ=τmax となる。
このときの制御アルゴリズムを第2図に示す。
まず、第1図の制御系において目標値rと制御量xを
入力する。このとき、演算手段12には目標値rと制御量
xとの偏差eを入力し、(7)式に従って安定な位相面
からの偏差sを演算する。適応手段13には、目標値r、
制御量x及び演算手段12で導出した偏差sを入力し、
(11)式で表わされる適応則に従ってパラメータの推定
を演算する。更にコントローラ14には、目標値r,制御量
x,偏差s及び適応手段13で同定した推定値 を入力し、(12)式で表わされる非線形制御則に従って
制御対象11への入力τを導出する。
次に、制御入力τの拘束条件を判断する。すなわち、
τ<τmaxかどうかを判定し、“Yes"の場合にはτ<τm
inかどうかを判定する。その結果“Yes"であれば、τは
拘束条件の範囲内であり、初めの状態に戻る。しかし、
τ<τmaxでない場合にはτ=τmaxとし、τ>τminで
ない場合にはτ=τminとして、(7)式の積分要素v
と(11)式によるパラメータ推定値 を固定し、初めの状態に戻る。
最後に、本発明の制御装置を用いてモータ制御を実施
した結果を示す。これは、日本精工株式会社製の6イン
チメガトルクモータ(登録商標)と称するダイレクトド
ライブモータの制御を行ったものであり、第2図の制御
アルゴリズムを用いた。すなわち、演算手段12、適応手
段13及びコントローラ14としてコンピュータを使用し、
(7)式によってsを演算し、その演算結果を用いて
(11)式の適応則によりパラメータの推定値 を演算し、(12)式の制御則によりτを生成した。但
し、(12)式において とした。
そして、制御系のパラメータを慣性モーメントが0.2k
g m2(計算値)の場合に調整した状態で慣性モーメント
を1.0kg m2(計算値)までステップ的に増加させたとき
の、本発明による応答と、パラメータを慣性がモーメン
ト0.2kg m2(計算値)の場合に固定し、非線形制御則を
用いない制御系の応答とを比較した。
その結果を第3図に示す。図において、Vrはモータの
目標角速度、V1は本発明による応答、V2はパラメータを
固定し、非線形制御則を用いない制御系による応答であ
る。また、このときの本発明による制御系の位置誤差を
第4図に示す。
上記の実験結果から、本発明では、制御系のパラメー
タを自動調整すると共に応答誤差を安定な位相面に移す
ことから、パラメータの調整中に生じる応答誤差や定常
状態での位置誤差を補償し、目標値に一致するようにな
ることが実証された。
[発明の効果] 以上のように、本発明によれば、制御量と目標値との
偏差を非線形制御則に従って安定な位相面に移すような
制御入力を生成するようにしたので、制御対象の運動機
械系の動特性が変化する場合でも良好な応答が得られ
る。また、安定な位相面からの偏差に積分要素を含むこ
とにより、定常状態の運動機械系のオフセットを0にす
ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の制御装置の構成を示すブロック図。 第2図は、本発明による制御アルゴリズムを示すフロー
チャート。 第3図は、第2図の制御アルゴリズムを用いて行った実
験結果を従来例と比較して示す図。 第4図は、実施例による実験結果として定常状態での位
置誤差を示す図。 第5図は、制御対象とする運動機械系の説明図。 1……モータ、2……運動機械系、11……制御対象、12
……演算手段、13……適応手段、14……コントローラ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 秀行 群馬県渋川市金井国町447―3 (56)参考文献 特開 昭61−278903(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G05B 13/00 - 13/02 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】制御対象とする運動機械系のパラメータに
    合わせて制御動作のパラメータを自動的に調整する制御
    装置であって、 制御対象の制御量と目標値との偏差から、指定した安定
    な位相面からの偏差を演算する演算手段と、 該演算手段で得られた偏差を用いて、前記制御量と目標
    値との偏差を0にするような適応則により、前記運動機
    械系のパラメータの推定値を演算し、前記制御動作のパ
    ラメータとする適応手段と、 前記演算手段で得られた偏差及び前記適応手段で得られ
    たパラメータ値を用いて、該偏差の関数を含む非線形制
    御則により、前記制御量と目標値との偏差を前記位相面
    に移す制御入力を生成するコントローラと を備え、前記非線形制御則における偏差に、制御量と目
    標値との偏差の積分要素を含んでいることを特徴とす
    る、運動機械系の制御装置。
  2. 【請求項2】前記非線形制御則により生成された制御入
    力が前記制御対象の入力範囲を越えた場合には、前記積
    分要素を固定しかつ前記適応手段によるパラメータ適応
    を停止する機能を有する請求項1記載の制御装置。
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