JP2784294B2 - 吸音材および吸音材の製造方法 - Google Patents

吸音材および吸音材の製造方法

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JP2784294B2
JP2784294B2 JP4120103A JP12010392A JP2784294B2 JP 2784294 B2 JP2784294 B2 JP 2784294B2 JP 4120103 A JP4120103 A JP 4120103A JP 12010392 A JP12010392 A JP 12010392A JP 2784294 B2 JP2784294 B2 JP 2784294B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、吸音材および吸音材
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、以下のような場合に用いられる吸
音材がある。 (1)リスニングルーム、楽器練習室等の内装材として
用いる。室内の音響特性が問題となる部屋で、室内残響
時間特性、反射特性などを制御するために仕上げ用の内
装材として使うのである。 (2)壁・天井の充填材として用いる。しゃ音性能が要
求される部屋では、壁や天井のしゃ音性能を向上させる
ために2重壁構造を採る場合が多いが、2重壁間に吸音
材を充填して更に性能を挙げるようにするのである。 (3)その他、吸音ダクトの内貼り用、騒音を発生する
機器の防音カバーの内貼り用などにも用いる。
【0003】上記用途に用いられる従来の吸音材である
発泡ウレタン、グラスウールなどは、図27および図2
8に示すように素材の多孔性を利用している。すなわ
ち、図27、28にみるように、発泡ウレタン91やグ
ラスウール95の連通した気泡92や孔96の中に音波
が入射すると、それが複雑な断面形状をした連続気泡で
あるために、音波が伝搬してゆく途中で気泡壁面との粘
性摩擦などによって音圧が減少し、その結果、音波エネ
ルギーが材料の中で吸収されるのである。
【0004】発泡ウレタン(密度20kg/m3 、厚み
24mm)とグラスウール(密度32kg/m3 、厚み
24mm)の垂直入射吸音率を図29および図30に示
す。多孔質材の吸音率は、音波の周波数が高くなるほ
ど、また厚みが増すほど大きくなる。換言すれば、低周
波域の音波に対しては小さい吸音率しかもたない。多孔
質材の厚みを増せば、低周波域の吸音率を上げることは
出来る。ただ、厚みが厚くなると、部屋の内装材として
使用した場合には部屋が狭くなるという問題が生じ、ダ
クト内貼りとして使用した場合には空気の通路が狭くな
ってしまうという問題が生じる。そのため、厚み増加で
低周波域の吸音率を上げるという方法は適切な方策では
ない。しかし、低周波域において十分な吸音率があれ
ば、リスニングルームの室内音響特性、壁・天井等のし
ゃ音、機械騒音の抑制、いずれの場合にも非常に有用な
吸音材となる。
【0005】例えば、リスニングルームや楽器練習室等
の比較的容積の小さな空間においては、特定の周波数の
音が強調され「ボンボン」と響く所謂ブーミング現象が
起こる等の問題があるのであるが、低周波域において十
分な吸音率があれば、ブーミング現象を抑えられるよう
になる。このブーミング現象は、ステレオ装置や楽器か
ら発生する音の波長と部屋の大きさとの関係により、部
屋が音に共振して生ずる現象である。
【0006】すなわち、リスニングルームや楽器練習室
等において、発生する20〜20kHzの可聴領域の音の
波長(つまり、17m〜1.7cmの波長)の中でも特
に低周波域(500Hz以下程度)の音の波長が、部屋の
一辺の長さと同程度となることに起因して生じるもので
ある。コンサートホールのような室内空間が大きい場合
は、部屋の一辺の長さが低周波域の音の波長よりも大き
いために問題になってこないが、部屋の一辺の長さが低
周波域の音の波長程度のリスニングルームや楽器練習室
の場合には、「音がこもっている」、「音がすっきりし
ない」といった不評を招くことになるのである。低周波
域において十分な吸音率をもつ吸音材は、極く低い低周
波域の音をよく吸収するため、上記の如き不都合を解消
するのに適しているのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記事情
に鑑み、厚みが薄くとも低周波域における吸音性能が良
く、しかも、有用性の高い吸音材を提供すること、およ
び、このような有用性の高い吸音材を簡単に製造するこ
とのできる方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
め、発明者らは粉体振動による吸音作用に着目した。粉
体(粒子)間の相互作用力と粉体に働く重力が一致する
時の粉体の粒径を平衡粒径と称する。平衡粒径は粉体の
種類に応じて異なるが、数μmから数100μmの範囲
内である。平衡粒径付近の粒径をもつ粉体は非常に振動
し易く、低周波域の音波により容易に励振され、低周波
域の音に対して良好な吸音効果がある。
【0009】図22にケイ酸カルシウム粉体層(厚み3
0mm)の吸音率の対周波数特性を、図23に湿式シリ
カ粉体層(厚み30mm)の吸音率の対周波数特性をそ
れぞれ示す。なお、この吸音率は、JIS A 140
5「管内法による建築材料の垂直入射吸音率測定方法」
に準じて計測した垂直入射吸音率である。A管を使って
測定を行うが粉体であるので立てて測定した。吸音率の
算出は音響インピーダンスに基づいて行った。
【0010】なお、上記の粉体層における粒径等は以下
の通りである。 「ケイ酸カル 平均粒径:25μm、真密度:2.52g/cm シウム粉体」 かさ密度:0.080g/cm 空隙率:0.97 「湿式シリカ」 平均粒径:150μm、 真密度2.1g/cm かさ密度:0.282g/cm 空隙率:0.87 図22、23にみるように、いずれも、500Hz以下
でピーク(以下、「吸音ピーク」と言う)が生じてい
て、低周波域における吸音率が高い。この吸音ピーク
は、図15にみるように、粉体層Pが縦振動モードで振
動することにより、低周波域の音を効果的に吸収するこ
とで生じる。
【0011】粉体の吸音率の対周波数特性は、図22,
23にみるように、低周波域において吸音ピークを生じ
る場合に限らず、例えば、粉体がバーミュキュライトの
場合、図24にみるように、低周波域において吸音ピー
クを生じないで、特定の周波数fs以上〜2000Hzで
ほぼ一定の吸音率を有する場合もある。低周波域にあら
われる吸音ピークの中心周波数fr、中心周波数frに
おける吸音率値、吸音ピークの(周波数)幅、低周波域
で吸音ピークのない場合の一定の吸音率の下限周波数f
sなどは粉体粒径、形状、粉体層における粉体かさ密
度、粉体凝集状態等などにより変化する。
【0012】さらに低い周波数域で高い吸音率をもたせ
られたり、粉体のもつ優れた吸音性能が経時的に安定さ
せられるならば、有用性はさらに増すことになる。 吸音材における吸音ピークの中心周波数frを、さ
らに低い方にシフトさせられたり、低周波域で吸音ピー
クのない場合の一定の吸音率の下限周波数fsをより低
周波域側に延ばせれば、より低周波域で吸音率が高ま
る。
【0013】そこで、発明者らは、様々な角度から検討
し、その結果、以下のように、中心周波数frを適切に
さらに低い方にシフトさせられることを見いだしたので
ある。粉体層における低周波域でのピークの中心周波数
frは基本的に下記の式(1)に従うことが実験的に確
認されている。
【0014】 fr=0.25t-1(E/ρ)0.5 ・・・(1) 但し、t:粉体層厚み、E:粉体層のヤング率、ρ:か
さ密度である。上の式(1)は、粉体層厚みtやかさ密
度ρの増大が中心周波数frの低下をもたらすことを示
している。しかしながら、粉体層厚みtの増大は前述の
通り部屋が狭くなったり、ダクト内の空気通路が狭くな
ったりという不都合を招来し、密度ρの増大は粉体振動
の抑制を伴うため吸音率の低下を伴うという不都合を招
来し、いずれも適切でない。一方、上の式(1)は粉体
層のヤング率Eが小さくなれば、中心周波数frの低下
が図れることも示している。粉体層のヤング率Eは、通
常、105 N/m2 をかなり越えており、これが小さく
なれば中心周波数frが、さらに低くなるのである。こ
の点に注目して、検討を続け、粉体層のヤング率Eは接
触粒子間のバネ定数に大きく左右されるので、粉体層の
ヤング率以下のヤング率である緩衝材を粉体と混在させ
るようにすれば、粉体層のヤング率を実質的に(見かけ
上)下げることができ、この場合、粉体層のヤング率
は、普通、105 N/m2 をかなり越しているため、こ
れ以下の105 N/m2 以下(好ましくは5×104
/m2 以下)のヤング率の緩衝材を用いれば、粉体層の
ヤング率が十分に下がるということを見い出すことが出
来た。これにより、請求項1記載の発明を完成させるこ
とが出来たのである。
【0015】したがって、請求項1記載の発明にかかる
吸音材では、振動により吸音作用を発現する粉体が、緩
衝材層に有する空隙の内部に導入されて、粉体と緩衝材
とが混在してなる吸音材において、前記緩衝材として、
緩衝材単独のヤング率が105 N/m2 以下のものを用
いるようにしている。請求項1記載の吸音材の具体的形
態としては、図1にみるように、碁盤目状に並んだ孔2
・・・を有する3次元格子構造の緩衝材1の各孔2に粉
体3が入っている形態や、図2にみるように、複雑に絡
みあった繊維14の間に出来た多数の孔12を有する緩
衝材10の孔12内に粉体13が入っている形態が挙げ
られる。粉体3、13は、通常、各孔2、12の大きさ
と同じ程度の大きさのものが使われる。
【0016】ここで用いられる緩衝材としては、例え
ば、不織布、繊維構造体、人造パルプ、ろ紙等であっ
て、厚み5〜40mm程度の厚みのシート状多孔質材が
適当なものとして挙げられる。具体的には、2×103
〜3×103 N/m程度のヤング率のポリエステル系不
織布、1.3×104 N/m前後のヤング率のレーヨ
ン,ナイロン,ポリエステルの混合物よりなる不織布な
どが挙げられる。この他、ポリプロピレン系不織布、ポ
リウレタン系不織布、ナイロン系不織布なども利用可能
である。厚みの薄いものの場合、複数を重ね合わせるよ
うにしてもよい。シート状多孔質材としては、上記不織
布の他、例えば、グラスウールやロックウール等の繊維
基材の他に、発泡ウレタン等の発泡樹脂材のものであっ
てもよい。緩衝材がシート状多孔質材の場合は、粉体が
多孔質材中の空隙に導入されていることにより粉体と緩
衝材の混在状態が現出していることになる。
【0017】緩衝材は、シート状の形態であれば形状保
持性に優れるため好ましいが、必ずしもシート状の形態
である必要はない。この発明の場合、例えば、非シート
状(バラバラ)の繊維体であって粉体と一緒に混ぜ合わ
せて粉体と緩衝材の混在状態を現出させることが出来、
単独のヤング率が105 N/m2 以下であるもの(例え
ば、非シート状炭化ケイ素ウィスカ)を緩衝材として用
いるようにしてもよいのである。
【0018】以下に、2、3の緩衝材についてのヤング
率を具体的に例示する。 「グラスウール36k」:ヤング率 7.8×10(N/m) :密度 3.6×10−2(g/cm) 「合成パルプ」 :ヤング率 2.0×10(N/m) (繊維長100μm) :密度 8.9×10−2(g/cm) 「炭化ケイ素ウィスカ」:ヤング率 8.5×10(N/m) :密度 3.6×10−1(g/cm) 「ポリプロピレン繊維多:ヤング率 1.4×10(N/m) 孔質材」 :密度 2.4×10−2(g/cm) 請求項1記載の発明で用いる粉体としては、上記例示のケイ酸カルシウム粉体 や湿式シリカの他、マイカ粉体、バーミュキュライト粉体、アクリル超微粉体、 球状シリカ粉体等も挙げられる。具体的な粉体例を以下に挙げる。 「タルク粉体」 平均粒径9.4μm、真密度:2.75g/cm かさ密度:0.45g/cm 空隙率:0.84 「タルク粉体」 平均粒径:2.3μm、真密度:2.75g/cm かさ密度:0.25g/cm 空隙率:0.91 「球状シリカ粉体」平均粒径:28μm、真密度:2.23g/cm かさ密度:0.92g/cm 空隙率:0.59 緩衝材のヤング率Eの測定は、図16にみるように、シ
リンダ型容器50内に測定対象の緩衝材51を充填して
から、その上に付加質量片52を乗せる。ついで、エキ
サイター53で加振し、チャージアンプ54、55を介
してインピーダンスヘッド56の振動加速度と付加質量
片52の振動加速度との間の伝達関数をFETアナライ
ザ57でとる。最後にパーソナルコンピュータ58によ
り伝達関数のピークの周波数からヤング率Eを算出す
る。なお、粉体層や粉体を導入した緩衝材のヤング率E
の測定も、同様にして行える。
【0019】より具体的には、容器50は内径85mm
の円筒であり、測定する緩衝材を底から30mmの高さ
まで充填し、その上に付加質量片52として厚み3mm
の鉄板を載せて測定を行う。図16における主な測定機
器の具体的なものとしては、以下のものが挙げられる。
【0020】チャージアンプ:B&K社製 Type2
635,FFTアナライザ:小野測器社製 CF36
0,ノイズジェネレータ:B&K社製 Type270
6,パソコン:hp社製 9000シリーズ中の33
0. また、粉体振動による優れた吸音作用が安定して発
揮されるようであれば、実用性は高い。粉体が流動せず
粉体と緩衝材の混在状態が一定に保たれれば吸音作用は
変動せず安定する。そこで、粉体と緩衝材の混在状態を
一定に保てる方途を求めて検討を続け、そのためには、
粉体の少なくとも一部を緩衝材に接着させるようにすれ
ばよいことを見い出した。勿論、接着した各粉体は緩衝
材との接着を部分的なものとする等して粉体振動が阻害
されないようにすることは言うまでもない。
【0021】したがって、請求項2記載の発明にかかる
吸音材は、振動により吸音作用を発現する粉体と緩衝材
とが混在してなる吸音材であって、前記粉体の少なくと
も一部が緩衝材に接着されている構成をとるようにして
いる。この請求項2記載の発明の吸音材に用いられる緩
衝材の種類や形態は、請求項1記載の発明の場合と同様
であって、勿論、請求項3のように、低周波域における
吸音性能の改善効果の非常に高い105 N/m2 以下
(より好ましくは5×104 N/m2 以下)のヤング率
Eの緩衝材であることが好ましい。請求項2記載の発明
で使われる粉体の種類についても、上記請求項1記載の
発明の場合と同様である。なお、全ての粉体が緩衝材に
接着している必要はなく、接着した粉体間に遊離した状
態で存在する粉体が一部あるようであってもよい。
【0022】請求項2記載の吸音材の具体的形態として
は、図3にみるように、複雑に絡みあった繊維24の間
に出来た多数の孔22を有する緩衝材20の孔22内に
粉体23が入っていて、この粉体23が表面に塗布され
た熱可塑性樹脂25で繊維24と部分的に接着している
形態が挙げられる。この他、粉体23と繊維24の間の
接着が、図4にみるように、繊維24の表面に塗布され
た熱可塑性樹脂25によりなされている形態や、図5に
みるように、繊維24自体が熱可塑性樹脂で出来ていて
繊維24の熱融着性によりなされている形態もある。
【0023】 さらに、発明者らは、緩衝材として、
芯糸に径の小さな細糸が絡められてなる繊維体を用い、
この繊維体で出来た空隙に、振動により吸音作用を発現
する粉体を存在させることで粉体と緩衝材の混在状態を
現出させる構成も、吸音ピークの中心周波数frをさら
に低い方にシフトさせたり、吸音率の高い領域を低周波
側に拡大したりするのに有効であることを見い出してい
る。
【0024】ここで使われる粉体は、特に限定されず、
この明細書中で例示するもの全てが使えるのであるが、
通常、粒径が0.1〜1000μm程度でかさ密度が約
1.0g/cm3 程度以下のものであり、金マイカ粉
体、シリカ粉体、アクリル超微粉体、タルク粉体、ケイ
酸カルシウム粉体などの粉体が挙げられる。より具体的
には、例えば、平均粒径40μm、かさ密度0.37g
/cm3 の金マイカ粉体、平均粒径1.7〜7.5μ
m、かさ密度0.06〜0.14g/cm3 の湿式シリ
カ粉体、平均粒径23〜28μm、かさ密度0.84〜
0.92g/cm3の球状シリカ粉体、平均粒径1〜2
μm、かさ密度0.30g/cm3 のアクリル微粉体、
平均粒径1.5〜3.2μm、かさ密度0.25g/c
3 のタルク粉体、平均粒径20〜30μm、かさ密度
0.08g/cm3 のケイ酸カルシウム粉体が挙げられ
る。
【0025】芯糸に径の小さな細糸が(長手方向に沿っ
て)絡められてなる繊維体の構成例としては、図8に示
すように、芯糸122に多数の細糸123が長手方向に
沿って絡められた繊維体121がある。細糸123は芯
糸122よりも径(直径)が小さい糸であるが、具体的
には、細糸123の直径は、通常、芯糸122の直径の
1/3〜1/20程度である。太い方の芯糸122はポ
リウレタン糸の如く弾性のあるものが好ましい。具体的
な繊維体121としては、例えば、直径100μmのポ
リウレタン糸(ポリウレタン繊維)を芯糸122とし
て、これに直径10μmのナイロン糸(ナイロン繊維)
を細糸123として絡ませたもの(真密度1.19g/
cm3 )が挙げられる。
【0026】 この発明の吸音材の場合、粉体とし
て、特定の周波数以上の周波数で略一定の吸音率を有す
る粉体を用いるようにしてもよい。先に述べたバーミキ
ュライト粉体は、振動により吸音作用を発現する粉体な
のであるが、図24にみるように、厚み30mmで充填
したバーミキュライト粉体層の吸音率の対周波数特性は
300Hz〜2000Hzで略0.5という一定の吸音率を
有し、平坦な吸音特性を持つものなのであるが、このよ
うなバーミキュライト粉体を用いてもよいのである。
【0027】図24における一定の吸音率のある下限周
波数fsは下記式(2)に従う。 fs=0.25t-1(E/ρ)0.5 ・・・(2) 但し、t:粉体層厚み、E:粉体層のヤング率、ρ:か
さ密度である。この式(2)は、ヤング率Eが小さくな
れば特定の周波数fsが低い方に延びることを示してい
る。粉体層のヤング率Eは、図14にみるように、10
5 N/m2 をかなり越えている。粉体層のヤング率Eは
接触粒子間のバネ定数に大きく左右されるので、105
N/m2 をかなり越える粉体層のヤング率Eよりも小さ
い105 N/m2 以下(好ましくは5×104 N/m2
以下)のヤング率の緩衝材を用いれば、粉体層のヤング
率が実質的に(見かけ上)下がり、その結果、より低い
周波数から十分かつ平坦な吸音特性を持たせることが出
来るという知見を、検討の結果、得ることが出来たので
ある。この場合、音楽再生における必要周波数下限の3
00Hz以下という点を考量すれば非常に有用なものとな
る。
【0028】このように、特定の周波数以上の周波数域
で略一定の吸音率を有する粉体としては、上に例示のバ
ーミキュライト粉体の他、シリカ粉体、タルク粉体、金
マイカ粉体、軟質炭酸カルシウム粉体、フェライト仮焼
品等の粉体が挙げられる。かさ密度0.1〜3.0g/
cm3 (通常、0.1〜1.0g/cm3 )程度で充填
されることで上記特性となる。具体的には、以下のよう
な態様が例示される。 A:一次平均粒径7.5μm、凝集粒径150〜600
μm(好ましくは400〜500μm)の湿式シリカ粉
体を、かさ密度0.12〜0.17g/cm3 程度で充
填。 B:平均粒径1〜3μmのタルク粉体を、かさ密度0.
23〜0.28g/cm3 程度で充填。 C:平均粒径650μmの金マイカ粉体を、かさ密度
0.49〜0.56g/cm3 程度で充填。 D:アマニ油を10〜150部付着させた平均粒径3〜
7.5μmの湿式シリカ粉体を、かさ密度0.12〜
0.42g/cm3 で充填。 E:アクリル樹脂20部を付着させた平均粒径9.4μ
mのタルクを、かさ密度0.51g/cm3 程度で充
填。 F:平均粒径200〜400μmのバーミキュライト等
の粉体を、かさ密度0.19g/cm3 程度で充填。 G:粒径分布が1〜2μmの範囲にある軟質炭酸カルシ
ウム粉体を、かさ密度0.42g/cm3 程度で充填。 H:粒径分布が1.3〜1.5μmの範囲にあるフェラ
イト仮焼粉末を、かさ密度1.00g/cm3 程度で充
填。 I:粒径分布が180〜500μmの範囲にあるナイロ
ンパウダー(粉体)を、かさ密度0.47g/cm3
度で充填。
【0029】なお、この場合、各吸音体の2000Hzを
越える領域(2000〜20000Hzの領域)での吸音
率は、普通、周波数fs〜2000Hzの範囲の吸音率よ
りも若干高目となる傾向がみられ、また、吸音性能が以
下のようであることが望ましい。吸音体の周波数fs〜
2000Hzの周波数範囲における吸音率変動幅は、0.
2以内(より好ましくは0.1以内)であって、吸音率
レベルは、通常、0.35以上(好ましくは0.4以
上、より好ましくは0.45以上)である。
【0030】なお、ここで言う吸音率も、JIS A
1405「管内法による建築材料の垂直入射吸音測定方
法」に準じて計測する垂直入射吸音率であり、吸音体厚
み30mm(粉体充填層なら充填厚み30mm)相当で
測ったときのものである。吸音率の算出は音響インピー
ダンスに基づいて行う。 また、粉体として、図6にみるように、粒状体から
なる粉体1と微小繊維体からなる粉体15との混合粉
体を用い、これを、シート状多孔質材中の空隙12に導
入したり、あるいは、芯糸に径の小さな細糸が絡められ
てなる繊維体で出来た空隙に存在させるようにしてもよ
い。
【0031】粒状体からなる粉体と微小繊維体からなる
粉体の混合粉体の構成例としては、以下のようなものが
ある。粒状体からなる粉体としての「平均粒径150μ
mのシリカ粉体」と、繊維体からなる粉体としての「炭
化ケイ素ウィスカ(微小繊維体)が集合してなる粉体
(集合体の平均粒径が50μm前後)」を体積比率1:
1で混合した混合粉体が1例として挙げられる。なお、
前記の粒状体としては、球状に限らず、板(鱗片)状、
角状、塊状など繊維状以外の様々な形状のものが挙げら
れ、微小粒状体が凝集して大きな粒状集合体を構成して
いるものも挙げられる。勿論、微小繊維体が凝集性のな
い個々にバラバラのものであってもよい。また、ウィス
カー自体は、普通、平均長さ5〜200μm、平均径
0.05〜1.5μm程度のものが用いられる。なお、
微小繊維体自体の形状に関しても、直線状に限らず、例
えば、コイル状であってもよい。また、微小繊維体も、
図16に示す方法で測定するヤング率Eが105 N/m
2 以下のものが好ましい。
【0032】この発明の吸音材の具体的な構成例を、図
7にみるように、繊維体121を緩衝材とする場合を例
にとって説明する。すなわち、図7の吸音材101で
は、側板102aで構成する枠体の一方の開口面に底板
102bが取り付けられ他方の開口面が音響的に透明な
シート104で閉塞された薄い平箱102内において、
不規則に積み重ねて納められている繊維体121で出来
た空隙に、前記に例示したような粉体103を充填した
パネル構成になっている。吸音材101では音響的に透
明なシート104で閉塞された面が吸音側の面である。
繊維体121で出来た空隙には、繊維体121同士の間
にある空隙だけでなく、繊維体121を構成する糸同士
の間にある空隙も含める。普通、全ての空隙に粉体が密
に充填されるわけでなく未充填の空間も存在する。
【0033】この吸音材101は、例えば、平箱102
内に繊維体121を不規則に積み重ねて納め、上から粉
体103を供給するとともに加振しながら繊維体121
で出来た空隙に粉体103を導入することで製造でき
る。なお、音響的に透明なシート104としては、例え
ば、通気性のある織物(例えば、サランクロスやガラス
クロスなど)、厚み0.05mm程度以下のシート(例
えば、ポリエチレンフィルム、ビニルフィルムなど)等
が挙げられる。このシートは、必要な周波域(通常、2
0〜4kHz)で音透過率が0.8以上あることが好まし
い。
【0034】また、平箱102としては、木材、石膏ボ
ード、ケイカル板、木毛セメント板、木片セメント板な
どを用いた構成であって、横:約300〜約900m
m、縦:約1800〜約2400mm程度のものが挙げ
られる。勿論、請求項1〜3の吸音材の場合には、粉体
を含ませた不織布などが納められることになる。
【0035】 この発明の吸音材は、請求項8記載の
発明、すなわち、振動により吸音作用を発現する粉体と
緩衝材とが混在してなる吸音材の製造方法であって、緩
衝材層の一面側に粉体を供給し緩衝材層の他方面側から
吸引を行うことにより粉体を緩衝材層中に導入するよう
にする方法により製造することができる。まず、図9に
みるように、底から真空排気が可能な容器40内にシー
ト状の多孔質材(緩衝材層)41を容器40内を上下に
仕切るように配置しておいて、底から真空排気して吸引
するとともに、上方から粉体43を少しずつ供給して徐
々に粉体43を多孔質材41内に導入するようにする。
粉体43は空気導入口45等から流入する空気の流れに
沿って多孔質材41に捕集されるかたちで短時間のうち
に充填される。粉体43の供給量や真空ポンプ(図示省
略)による吸引力を調整することにより、多孔質材41
中に粉体43を均一な状態で充填させることができる。
装置は構成簡単で安価で簡単なものですむ。大寸法の吸
音材を作る場合も容器の大きの確保ぐらいで容易に対応
できる。シート状でない緩衝材を使う場合は、図9の多
孔質材41の所に、緩衝材で層状体を構成しておいて、
上と同様にすればよい。
【0036】請求項2記載の吸音材の場合のように、粉
体43を多孔質材41に接着させる場合は、例えば、図
10にみるように、粉体43の表面に熱可塑性樹脂46
を塗布し粉体43に熱融着性の表面を予め形成してお
き、多孔質材41に導入しておいてから、熱処理を行い
熱可塑性樹脂46を融解させ、図11にみるように、多
孔質材41の繊維48と一部位置A、Bで接着させるよ
うにする。これに限らず、熱可塑性樹脂46を繊維48
の方に塗布し熱融着性の表面を予め形成したり、あるい
は、繊維48として熱可塑性樹脂製の繊維を用いること
により熱融着性の表面を作るようにしてもよい。熱融着
性の表面は粉体と多孔質材の双方に形成されていてもよ
い。また、粉体43表面への熱可塑性樹脂46の塗布形
態は、図7の如き鱗片状でなく、図12の如き線状、あ
るいは、図13の如き微粒状であってもよい。熱可塑性
樹脂としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、
ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ
る。
【0037】なお、この発明の吸音材においては、粉体
は十分な量があることが好ましいが90体積%を超えな
いようにすることが好ましい。緩衝材の量が少なくなり
過ぎるといけないからである。緩衝材は、例えば、5体
積%程度であり、残部は空隙になる。これに対し、図2
5にみるように、多孔質材41の上に粉体43を乗せて
加振器61で加振させることにより吸音材を製造するこ
とも可能ではあるが、大寸法の吸音材を製造するには大
型の加振器が必要であり、粉体充填に長時間を要する、
均一な充填が難しくなる等の傾向がある。また、図26
にみるような沈降法を用い吸音材を製造する方法も考え
られるが、粉体43と繊維48の沈降速度が異なるた
め、粉体を均一に分散させることが難しく、また、普通
は溶液49が有機溶媒であるため、衛生・安全上等の考
慮を払う必要があって装置が複雑で高価なものになると
いう傾向がある。
【0038】図14に各種粉体のヤング率を示してお
く。斜めの軸は吸音ピークの周波数をあらわす。測定粉
体層厚みは30mmである。図14において、a:電融
マグネシア粉体、b:重質炭酸カルシウム粉体、c,
f:アクリル系樹脂粉体、d,y:フッ素樹脂粉体、
e:全脂粉乳、g,α:フェライト仮焼粉体、h,m:
シラスバルーン粉体、i:カーボンブラック粉体、j:
強力粉(小麦粉)、k,l:塩素法酸化チタン粉体、
n:結晶セルロース粉体、o:薄力粉(小麦粉)、p:
石松子、q,s:ナイロンパウダ、r:ベントナイト粉
体、u,v:パーライト粉体、t,w:シリコンパウ
ダ、x:天然土状黒鉛、β:バーミュキュライト、γ:
フッ化ビニリデン粉体、δ:軟質炭酸カルシウム粉体で
ある。
【0039】この発明の吸音材は、リスニングルーム、
楽器練習室の内装材だけでなく、吸音ダクトの内貼り
用、騒音を発生する機器の防音カバーの内貼り用などに
用いることが出来る。
【0040】
【作用】この発明の吸音材は、振動により吸音作用を発
現する粉体を用いているため薄くとも十分な吸音性能と
することができる。しかも、粉体と混在する緩衝材によ
り粉体の見かけ上のヤング率が下がり、より低い周波数
での吸音率が高くなる。
【0041】特に、緩衝材単独のヤング率が105 N/
2 以下の場合には、例えば、吸音ピークの中心周波数
が適切な状態で低下しており、より低周波域で優れた吸
音作用を発揮するようになる。例えば、図17に破線で
示す吸音特性のバーミュキュライト粉体を緩衝材として
の不織布に含ませた吸音材の場合、図17にみるよう
に、吸音ピークの吸音率が殆ど低下せずに中心周波数が
337.5Hzから250.0Hzと低周波側に低下する。
また、図21に破線で示す吸音特性の湿式シリカ粉体と
緩衝材としての炭化ケイ素ウィスカが等体積量の割合で
混在した吸音材の場合、図21にみるように、中心周波
数が245.00Hzから203.75Hzに低下し、吸音
率値も0.85から0.92へとむしろ上昇しており、
吸音ピークの中心周波数が吸音率を劣化させることなく
適切な状態で低周波側にシフトしていることが良く分か
る。
【0042】振動により吸音作用を発現する粉体の少な
くとも一部が緩衝材に接着されたかたちで含まれている
場合には、粉体と緩衝材の混在状態が一定しており、低
周波域での優れた吸音作用が変動せずに安定する。寸法
安定性もよい。緩衝材が、芯糸に径の小さな細糸が絡め
られてなる繊維体を用いた場合、緩衝材のヤング率が十
分に低くて、吸音ピーク周波数が低い側にシフトする等
するため、厚みを増さずとも、より低周波域での吸音性
能が高くなる。つまり、吸音材において、繊維体で柔ら
かいバネが構成される形になって、それで全体のヤング
率Eが十分に小さくなり、吸音ピーク周波数が低い側に
シフトする等して、より低周波域での吸音率が高まるの
である。
【0043】粉体が特定の周波数fs以上の周波数域で
略一定の吸音率を有するものである場合、吸音材自体、
非常に低い周波数から2000Hzの周波数範囲において
十分かつ平坦(一定)な吸音性能(吸音率)を持たせる
ことが可能となり、より有用性が高い。粉体が、粒状体
からなる粉体と微小繊維体からなる粉体との混合粉体で
ある場合には、微小繊維体からなる粉体の緩衝作用で吸
音ピークの周波数が低くなる傾向があるため、好まし
い。
【0044】請求項8記載の吸音材の製造方法によれ
ば、低周波域で良好な吸音作用を発揮する有用な吸音材
を容易に得ることが出来る。請求項9記載の吸音材の製
造方法によれば、請求項1記載の有用な吸音材を容易に
得ることができる。請求項10記載の吸音材の製造方法に
よれば、請求項2記載の有用な吸音材を容易に得ること
ができる。
【0045】
【実施例】以下、この発明の実施例を、図面を参照しな
がら詳しく説明する。もちろん、この発明は、以下の実
施例に限らない。 −実施例1− 請求項8記載の吸音材の製造方法に従って、図9に示す
如くにして請求項1記載の吸音材を作製した。
【0046】緩衝材と粉体を組み合わせて吸音材を得
た。緩衝材は、シート状の多孔質材たるポリエステルよ
りなる不織布(厚み30mm)を用いた。この不織布
は、繊維径25μm,かさ密度0.011g/cm3
ヤング率が2.1×103 N/m2 である。粉体は、バ
ーミュキュライト分級粉体(180〜250μm)を用
いた。
【0047】なお、吸音材において、不織布が真に占め
る割合は0.8体積%、粉体が真に占める割合は7.1
体積%であって、残部の92.1体積%が空隙である。
この吸音材の吸音率の対周波数特性を図17に実線で示
す。また、図17にバーミュキュライト分級粉体(かさ
密度0.171g/cm3 )だけの場合の吸音率の対周
波数特性を破線で示す。図にみるように、実施例の吸音
材では、ピークの周波数frが337.5Hzから25
0.0Hzに大きく下がっている。また、ヤング率も、粉
体単独の2.8×105 N/m2 が複合化で1.62×
105 N/m2 と約半分に下がっている。
【0048】−実施例2− 請求項9記載の吸音材の製造方法に従って、請求項2、
3記載の吸音材を作製した。やはり、緩衝材と粉体の種
類の組み合わせて吸音材を得た。粉体として、予め酢酸
ビニル樹脂を予め塗布した湿式シリカを用い、粉体充填
後に熱処理をかけ緩衝材に粉体を接着させるようにした
他は、実施例1の場合と基本的には同様である。
【0049】実施例2の吸音材の吸音特性を調べた結
果、やはり、低周波域での吸音作用が改善されているこ
とが確認された。 −実施例3− 平均粒径300μmのバーミキュライト粉体を平均細孔
径515μmのポリエステル製不織布の中に振動可能な
状態で含ませた厚み30mmの吸音材を得た。不織布の
ヤング率Eは2.6×103 N/mである。
【0050】この吸音材の吸音率の対周波数特性を図1
8に実線で示す。また、図18にバーミキュライト粉体
だけの場合の吸音率の対周波数特性を一点鎖線で示す。
図にみるように、実施例の吸音材では、粉体だけの場合
に比べて特定の周波数fsが約300Hzから約250Hz
へと低い方に拡大しており、しかも、吸音率レベルは殆
ど低下していない。
【0051】−実施例4− 実施例の吸音材は、図7に示すものと同様の構成であ
る。吸音率の周波数特性においてピークを有する粉体に
は、平均粒径150μm、自然状態でのかさ密度0.2
8g/cm3 のシリカ粉体を用いた。一方、繊維体に
は、直径100μmのポリウレタン糸を芯糸として、こ
れに直径10μmのナイロン糸を細糸として絡ませた真
密度1.19g/cm3 のものを用いた。
【0052】繊維体を箱体内に不規則に積み重ねて納め
(空隙率98.6%、ヤング率7.56×103 N/m
2 )て、出来た空隙に粉体を充填するようにした。な
お、吸音材において、不織布が真に占める割合は1.4
体積%、粉体が真に占める割合は13.2体積%であっ
て、残部の85.4体積%が空隙である。得られた吸音
材の吸音性能を知るために、実施例の繊維体と粉体から
なる吸音層(厚み30mm)と、実施例で用いた粉体だ
けからなる等厚みの吸音層のそれぞれの吸音率の周波数
特性を測定した。測定結果を図19に実線(繊維体と粉
体の吸音層)と破線(粉体だけの吸音層)で示す。
【0053】図19を見れば、実施例の繊維体と粉体か
らなる吸音層は、粉体だけからなる吸音層に比べ、20
0Hz以下の非常に低い周波域での吸音率が高くなってお
り、実施例の吸音材は、ブーミング現象の抑制にも非常
に有効であるものであることが良く分かる。 −実施例5− 実施例5の吸音材は、基本的な構成は図7に示す通りで
ある。
【0054】粉体として、平均粒径150μmのシリカ
粉体に炭化ケイ素子ウィスカ(微小繊維体)が凝集して
なる粉体(2次粒径50μm)を体積比で1:1に混合
した混合粉体を、ヤング率2.6×103 N/m2 のポ
リエステル製不織布の空隙に含ませたものが、箱体内に
納められている。この吸音材の吸音率の周波数特性を図
20に実線で示す。なお、一点鎖線は不織布無しの混合
粉体のみからなる場合の吸音率の周波数特性を示してい
る。
【0055】図20を見れば、実施例の吸音材は、20
0Hz未満の非常に低い周波域で吸音率が高く、したがっ
て、実施例の吸音材は、ブーミング現象の抑制にも非常
に有効であることが分かる。
【0056】
【発明の効果】請求項1〜7の吸音材は、振動により吸
音作用を発現する粉体を用いているため薄くとも十分な
吸音性能をもち、しかも、粉体と混在する緩衝材により
粉体の見かけ上のヤング率が下がり、より低い周波数で
の吸音率が高くなり、緩衝材単独のヤング率が105
/m2 以下であれば吸音率改善効果は顕著であり、粉体
の少なくとも一部が緩衝材に接着されていれば、低周波
域での優れた吸音作用は変動せずに安定している。
【0057】上に加えて、緩衝材に芯糸に径の小さな細
糸が絡められてなる繊維体を用いた場合、緩衝材のヤン
グ率が十分に低くて、顕著な吸音率改善効果が期待でき
るし、また、粉体が特定の周波数fs以上の周波数域で
略一定の吸音率を有するものである場合、吸音材自体、
非常に低い周波数から2000Hzの周波数範囲において
十分かつ平坦(一定)な吸音性能(吸音率)を持たせる
ことが可能となるため、より有用性が高いという利点が
ある。
【0058】そして、粉体が、粒状体からなる粉体と微
小繊維体からなる粉体との混合粉体である場合には、微
小繊維体からなる粉体の緩衝作用で吸音ピークの周波数
が低くなる傾向があるため、好ましい。請求項8記載の
吸音材の製造方法によれば、低周波域で良好な吸音作用
を発揮する有用な吸音材を容易に得ることが出来る。
【0059】請求項9記載の吸音材の製造方法によれ
ば、請求項1記載の有用な吸音材を容易に得ることがで
きる。請求項10記載の吸音材の製造方法によれば、請求
項2記載の有用な吸音材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の吸音材の内部構成例をあらわす説明
図である。
【図2】請求項1の吸音材の他の内部構成例をあらわす
説明図である。
【図3】請求項2の吸音材の内部構成例をあらわす説明
図である。
【図4】請求項2の吸音材の他の内部構成例をあらわす
説明図である。
【図5】請求項2の吸音材の他の内部構成例をあらわす
説明図である。
【図6】請求項7の吸音材の内部構成例をあらわす説明
図である。
【図7】請求項5の吸音材の具体的構成例をあらわす斜
視図である。
【図8】請求項5の吸音材における繊維体の構成例をあ
らわす説明図である。
【図9】請求項8記載の発明で吸音材を作るときの様子
をあらわす説明図である。
【図10】請求項2の吸音材を作るときに使う粉体例をあ
らわす正面図である。
【図11】請求項2の吸音材での粉体と緩衝材の接着状態
をあらわす説明図である。
【図12】請求項2の吸音材を作るときに使う他の粉体例
をあらわす正面図である。
【図13】請求項2の吸音材を作るときに使う他の粉体例
をあらわす正面図である。
【図14】粉体のかさ密度およびヤング率を示すグラフで
ある。
【図15】粉体層が縦振動するときの様子をあらわす説明
図である。
【図16】ヤング率を測定するシステムをあらわすブロッ
ク図である。
【図17】実施例1の吸音材の吸音率の対周波数特性をあ
らわすグラフである。
【図18】実施例3の吸音材の吸音率の対周波数特性をあ
らわすグラフである。
【図19】実施例4の吸音材の吸音率の対周波数特性をあ
らわすグラフである。
【図20】実施例5の吸音材の吸音率の対周波数特性をあ
らわすグラフである。
【図21】この発明の吸音材の一例の吸音率の対周波数特
性をあらわすグラフである。
【図22】ケイ酸カルシウム粉体層の吸音率の対周波数特
性をあらわすグラフである。
【図23】湿式シリカ粉体層の吸音率の対周波数特性をあ
らわすグラフである。
【図24】バーミュキュライト粉体層の吸音率の対周波数
特性をあらわすグラフである。
【図25】加振法で吸音材を作るときの様子をあらわす説
明図である。
【図26】沈降法で吸音材を作るときの様子をあらわす説
明図である。
【図27】発泡ウレタンの内部構造をあらわす断面図であ
る。
【図28】グラスウールの内部構造をあらわす断面図であ
る。
【図29】発泡ウレタンの吸音率の対周波数特性をあらわ
すグラフである。
【図30】グラスウールの吸音率の対周波数特性をあらわ
すグラフである。
【符号の説明】
1 緩衝材 2 孔 3 粉体 10 緩衝材 12 孔 13 粉体 20 緩衝材 22 孔 23 粉体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−163001(JP,A) 特開 昭60−26995(JP,A) 実開 昭52−149521(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G10K 11/162

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動により吸音作用を発現する粉体が、
    緩衝材層に有する空隙の内部に導入されて、粉体と緩衝
    材とが混在してなる吸音材であって、前記緩衝材単独の
    ヤング率が105 N/m2 以下であることを特徴とする
    吸音材。
  2. 【請求項2】 振動により吸音作用を発現する粉体と緩
    衝材とが混在してなる吸音材であって、前記粉体の少な
    くとも一部が緩衝材に接着されていることを特徴とする
    吸音材。
  3. 【請求項3】 緩衝材単独のヤング率が105 N/m2
    以下である請求項2記載の吸音材。
  4. 【請求項4】 緩衝材がシート状多孔質材であって、粉
    体が多孔質材中の空隙に導入されていることにより粉体
    と緩衝材の混在状態が現出している請求項1から3まで
    のいずれかに記載の吸音材。
  5. 【請求項5】 緩衝材が、芯糸に径の小さな細糸が絡め
    られてなる繊維体である請求項1から3までのいずれか
    に記載の吸音材。
  6. 【請求項6】 粉体が、特定の周波数以上の周波数で略
    一定の吸音率を有する請求項1から5までのいずれかに
    記載の吸音材。
  7. 【請求項7】 粉体が、粒状体からなる粉体と微小繊維
    体からなる粉体との混合粉体である請求項4から6まで
    のいずれかに記載の吸音材。
  8. 【請求項8】 振動により吸音作用を発現する粉体と緩
    衝材とが混在してなる吸音材の製造方法であって、緩衝
    材層の一面側に粉体を供給し緩衝材層の他方面側から吸
    引を行うことにより粉体を緩衝材層中に導入するように
    する吸音材の製造方法。
  9. 【請求項9】 緩衝材として、緩衝材単独のヤング率が
    105 N/m2 以下のものを用いる請求項8記載の吸音
    材の製造方法。
  10. 【請求項10】 粉体と緩衝材のうちの少なくとも一方
    として、熱融着性の表面を有するものを用い、粉体を緩
    衝材層中に導入してから熱処理を行うことにより粉体を
    緩衝材に接着させる請求項8または9記載の吸音材の製
    造方法。
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