JP2779983B2 - 電子楽器 - Google Patents

電子楽器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、デジタルフィルタ装置
を有する電子楽器に関し、特に、デジタルフィルタに与
える係数を演算により生成するようにしたデジタルフィ
ルタ装置を有する電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子楽器等において、種々の音色
の楽音を生成するために、デジタルフィルタ装置が用い
られている。
【0003】かかるデジタルフィルタ装置においては、
デジタルフィルタに外部から所定のフィルタ係数が与え
られることによりフィルタ特性が決定されるようになっ
ている。
【0004】電子楽器においては、かかる構成のデジタ
ルフィルタ装置を用いて楽音信号の音色の制御がなされ
る。即ち、デジタルフィルタ装置に与えるフィルタ係数
を時間的に変化させることにより種々の音色の楽音信号
が生成される。
【0005】ところで、デジタルフィルタ装置に与える
フィルタ係数を時間的に変化させるために、従来は、多
種類のフィルタ係数をメモリに記憶せしめておき、時間
の経過とともに所望のフィルタ係数を該メモリから読み
出してデジタルフィルタ装置に与えるようになってい
る。
【0006】しかし、種々のフィルタ特性を有するデジ
タルフィルタ装置を実現しようとすると、それぞれの特
性を実現するためのフィルタ係数を予めメモリに記憶し
ておかなければならず、膨大なメモリ容量が必要である
という欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記事情
に鑑みてなされたもので、膨大なメモリ容量を必要とし
ないにも拘わらず、種々のフィルタ係数を発生して連続
的にデジタルフィルタ装置に与えることにより種々の音
色の楽音信号を発生することのできる電子楽器を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の電子楽器は、
演奏情報を入力し、該演奏情報に応じて第1のデジタル
波形を発生するデジタル波形発生手段と、複数の第1の
重み付け手段と遅延手段と加算手段とを具備し、前記デ
ジタル波形発生手段から出力される前記第1のデジタル
波形にフィルタ演算を施した第2のデジタル波形を出力
するデジタルフィルタ手段と、該デジタルフィルタ手段
にフィルタ係数を供給して前記演奏情報に応じてフィル
タ特性を連続的に変化させるフィルタ係数発生手段と、
前記デジタルフィルタ手段から出力される第2のデジタ
ル波形の振幅を制御して楽音波形を出力する振幅制御手
段と、を有する電子楽器において、前記デジタルフィル
タ手段は、前記第2のデジタル波形を出力する第2の重
み付け手段を更に具備し、前記フィルタ係数発生手段
は、音色、音域、タッチの各演奏情報に応じて前記デジ
タルフィルタ手段のフィルタ特性を制御するための第1
及び第2のパラメータを発生する制御信号発生手段と、
前記第1のパラメータに基づき三角関数値を発生する三
角関数発生手段と、前記三角関数値および前記第2のパ
ラメータに基づき前記第1、第2の重み付け手段の重み
量である複数のフィルタ係数を演算するフィルタ係数演
算手段と、を具備し、前記第1の重み付け手段に供給さ
れる重み量である複数のフィルタ係数は共通項を削除し
たものであり、前記第2の重み付け手段に供給される重
み量であるフィルタ係数を該削除された共通項とするこ
とにより、フィルタ係数の演算を簡素化し、連続的にフ
ィルタ係数を発生して前記デジタルフィルタ手段のフィ
ルタ特性を連続的に変化させることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明は、アナログフィルタの伝達関数に双一
次変換を施すことにより得られるデジタルフィルタの係
数を求める算式に所定の変形を施すことにより、三角関
数を主体にした算式に変換してデジタルフィルタ係数を
発生し、これを連続的にデジタルフィルタ手段に供給す
ることによりフィルタ特性を時系列的に変化させて、音
色を制御するものである。
【0010】即ち、フィルタ係数発生手段の制御信号発
生手段は、例えば外部からの楽音情報に応じてフィルタ
特性を制御する第1、第2のパラメータを発生する。こ
の際、第1のパラメータはカットオフ周波数を反映した
三角関数の変数として用いることができる形式で発生す
る。
【0011】そして、この第1のパラメータを三角関数
発生手段に与えることにより第1のパラメータに応じた
所定の三角関数値を発生する。そして、この三角関数発
生手段で発生された三角関数値と上記第2のパラメータ
とによりフィルタ係数を演算し、デジタルフィルタ手段
に与えることにより、所定のフィルタ特性を有するデジ
タルフィルタ装置が構築される。
【0012】かかるフィルタ係数の演算、及びデジタル
フィルタ手段への供給を連続して行うことにより、デジ
タル波形発生手段から出力される第1のデジタル波形
を、時系列的にその特性が変化するデジタルフィルタ手
段でフィルタリングし、第2のデジタル波形として出力
する。これにより、種々の音色を有するデジタル楽音波
形が得られる。
【0013】このように、本発明によれば、デジタルフ
ィルタ手段に与えるフィルタ係数は演算により算出する
ので、フィルタ係数を記憶するための膨大なメモリを必
要としない。
【0014】また、第1、第2のパラメータを変化させ
ることにより種々のフィルタ係数を発生することができ
るので、種々の音色の楽音信号を発生することのできる
ものとなっている。
【0015】
【実施例】デジタルフィルタ回路の基本的構成の一例を
図2に示す。図において、101 〜103 は加算器、1
1 〜114 は乗算器、121 及び122 は遅延素子で
ある。
【0016】このデジタルフィルタ回路に与えるべきフ
ィルタ係数は、「SH /SL 」、「α」、「β」及び
「±2」である。
【0017】ここで「SH 」はハイパスフィルタ、「S
L 」はローパスフィルタを形成する時に、それぞれ与え
られるフィルタ係数である。また、「±2」は、ローパ
スフィルタの時に「+2」が、ハイパスフィルタの時に
「−2」が、それぞれ与えられる。
【0018】一般に、デジタルフィルタを設計する場
合、アナログフィルタの伝達関数H(s)に双一次変換
を行なう方法が採られている。
【0019】この方法によりデジタルフィルタ回路に与
えるフィルタ係数は、以下に示す算式で求められる。
【0020】α=2(π2 2 −1)/yy…(1) β=(1−πR/Q+π2 2 )/yy…(2) SH =1/yy…(3) SL =π2 2 /yy…(4) ここで、 である。
【0021】なお、Qは共振特性(レゾナンス)の制御
パラメータであり共振周波数における利得を制御するも
の、fcはカットオフ周波数、FSはサンプリング周波
数である。
【0022】このように、双一次変換によるフィルタ係
数は非常に複雑な形をしており、簡単なハードウエアで
算出することができない。
【0023】そこで、上記(1)〜(4)式に適切な変
形を行なうことにより、下式を得る。対応するデジタル
フィルタ回路の構成を図3に示す。図3においては、乗
算器13が追加されている点で図2に示すデジタルフィ
ルタ回路と異なっている。図3中、乗算器11〜11
は第1の重み付け手段であり、乗算器11はハイパ
スフィルタ特性時には次式(10)が重み量として与え
られローパスフィルタ特性時には次式(11)が重み量
として与えられる。乗算器11、11は次式
(8)、(9)が重み量として与えられる。乗算器13
は第2の重み付け手段であり、次式(12)の逆数が重
み量として与えられる。また、12、12は遅延手
段であり、10〜10は加算手段である。
【0024】 ここで、 である。なぜならば、(1)〜(4)式に(5)及び
(6)式を代入すると、 α=2(tanθ−1)/(tanθ+tanθ/Q+1) =2(sinθ−cosθ)/(sinθ+sinθcosθ/ Q+cosθ) =−2cos2θ/(1+sin2θ/2Q) …(1)’ β=(1−tanθ/Q+tanθ)/(tanθ+tanθ/Q+ 1) =(cosθ−sinθcosθ/Q+sinθ)/(sinθ +sinθcosθ/Q+cosθ) =(1−sin2θ/2Q)/(1+sin2θ/2Q) …(2)’ S=1/(tanθ+tanθ/Q+1) =cosθ/(sinθ+sinθcosθ/Q+cosθ) =(1+cos2θ)/2(1+sin2θ/2Q) …(3)’ S=tanθ/(tanθ+tanθ/Q+1) =sinθ/(sinθ+sinθcosθ/Q+cosθ) =(1−cos2θ)/2(1+sin2θ/2Q) …(4)’ となる。ここで、(1)’〜(4)’式は、式(12)
で示された共通項“κ”で割られた式になっている。そ
こで、共通項“1/κ”を図3の乗算器13の重み量と
して括り出すことによりフィルタ係数値“α〜S”を
(1)’〜(4)’式から(9)〜(11)式のように
共通項“1/κ”が削除され、係数演算がし易い式にな
る。
【0025】かかる変形により、各フィルタ係数は三角
関数により非常に簡単な形で表すことができ、ハードウ
エアにより実現することも容易である。
【0026】次に、上記(8)ないし(13)式により
フィルタ係数を算出してフィルタ特性を制御するデジタ
ルフィルタ装置の一実施例について説明する。
【0027】図4は、この発明にかかる電子楽器に適用
するデジタルフィルタ装置の一実施例の構成を示すブロ
ック図である。
【0028】図において、20は制御信号発生回路であ
る。この制御信号発生回路20は、外部、例えば中央処
理装置(CPU)から供給される音色情報、音域情報、
或いはタッチ情報等の楽音情報に応じて、「θ」、
「Q」、及び「H/L」を生成するものである。ここ
で、「θ」は、上記(13)式により求められるカット
オフ周波数を反映した値であり、小数部に有効数字を含
むものである。
【0029】この制御信号発生回路20で生成された
「θ」は、三角関数発生回路21に与えられ、「Q」及
び「H/L」はフィルタ係数演算回路22に与えられ
る。
【0030】三角関数発生回路21は、制御信号発生回
路20から与えられた「θ」に基づき、「cos(2
θ)」(以下、「CDAT」という。)及び「sin
(2θ)」(以下、「SDAT」という。)を算出する
ものである。この三角関数発生回路21の詳細について
は後述する。
【0031】この三角関数発生回路21で算出されたC
DAT及びSDATは、フィルタ係数演算回路22に与
えられる。
【0032】フィルタ係数演算回路22は、制御信号発
生回路20から与えられる「Q」及び「H/L」、並び
に、三角関数発生回路21から与えられるCDAT及び
SDATに基づき、上記(8)〜(13)に示す算式に
従って、α、β、SH 又はSL 、及び1/κを算出する
ものである。
【0033】このフィルタ係数演算回路22で算出され
たフィルタ係数α、β、SH 又はSL 、及び1/κがデ
ジタルフィルタ回路23に供給される。
【0034】デジタルフィルタ回路23は、図3に示し
たように構成されるものであり、フィルタ係数演算回路
22により算出されたフィルタ係数α、β、SH 又はS
L 、及び1/κにより、所定の特性を有するフィルタが
構築される。そして、入力された楽音信号に所定のフィ
ルタリングをかけて出力するものである。
【0035】以上のフィルタ係数の演算は、後述するデ
ジタルコントロールオシレータ64のデジタル楽音波形
発生のタイミングに同期して行なわれる。つまり、上述
した楽音情報がデジタルコントロールオシレータ64に
与えられることによりデジタル楽音波形が生成されるの
に同期して、α、β、SH 又はSL 、及び1/κが算出
され、デジタルフィルタ回路23に与えられることによ
り、フィルタ特性が時系列的に変化する。
【0036】なお、上記フィルタ係数α、β、SH 又は
L 、及び1/κが与えられることにより実現されるフ
ィルタ特性としては、ハイパス、ローパス、バンドパス
特性等がある。
【0037】図5は、上記デジタルフィルタ装置の三角
関数発生回路21の構成を示すブロック図である。制御
信号発生回路20は、小数部を含むパラメータθを三角
関数発生回路21に供給する。
【0038】三角関数発生回路21は、関数テーブル記
憶部30と、関数テーブル補間部31とにより構成され
ている。そして、制御信号発生回路20が発生するパラ
メータθの整数部は関数テーブル記憶部30に与えら
れ、小数部は関数テーブル補間部31に与えられるよう
になっている。
【0039】関数テーブル記憶部30は、与えられた整
数部の値によりテーブルを索引し、所定値を関数テーブ
ル補間部31に供給する。関数テーブル補間部31は、
関数テーブル記憶部30から与えられた所定値を、パラ
メータθの小数部の値に応じて按分し、正確なCDAT
及びSDATの値を算出するものである。
【0040】この場合、関数テーブル記憶部30に対数
表現した周波数をアドレスとして関数値を記憶しておく
ことにより、人間の聴感にマッチしたカットオフ周波数
の制御が容易に行なえるようになる。
【0041】図6に、正弦波を記憶した関数テーブルの
一構成例を示す。同図(A)は、三角関数の角度をリニ
ア目盛りで記憶した場合の例を示したものである。図示
するように、1オクターブ(1200セント)の間隔
は、三角関数の角度によって異なる。
【0042】したがって、かかる関数テーブルで、人間
の聴感にマッチした制御、例えばセントによる制御を行
なおうとした場合、角度が大きくなるに連れて大きな範
囲にわたって制御をしなければならない。
【0043】そこで、本実施例では、三角関数の角度を
対数目盛りで表して関数値を記憶するようにしている。
同図(B)は、三角関数の角度を対数スケールで記憶し
た場合の例を示したものである。図示するように、1オ
クターブ(1200セント)の間隔は、三角関数の角度
に拘わらず一定である。
【0044】したがって、この関数テーブルを用いる
と、角度の大きさに拘わらず、同一範囲を操作すること
によりセントによる制御が可能になり、人間の聴感にマ
ッチした制御が行なえる。
【0045】また、三角関数の発生方法としては、べき
級数を演算する方法が考えられるが、その場合、sin
θ、cosθは、次式のようにして求めることができ
る。
【0046】 ここで、 である。
【0047】この三角関数発生回路21の出力CDAT
及びSDATが、フィルタ係数演算回路22に供給され
る。
【0048】図7は、上記フィルタ係数演算回路22の
詳細な構成を示す回路図である。図において、40は加
算器である。この加算器40は、A入力及びB入力を加
算して出力するものである。
【0049】この加算器40のB入力端子には、セレク
タ41、シフタ42及び排他的論理和ゲート(以下、
「EORゲート」という。)43が、順次接続されてい
る。
【0050】セレクタ41は、制御回路47からの制御
信号に応じて、三角関数発生回路21が出力するSDA
T又はCDATの何れかを選択して出力するものであ
る。このセレクタ41の出力はシフタ42に供給され
る。
【0051】シフタ42は、セレクタ41で選択された
SDAT又はCDATを、制御回路47が出力するSF
Tビットだけシフトするものである。このシフタ42の
出力はEORゲート43に供給される。
【0052】EORゲート43は、制御回路47が出力
するキャリ信号CINに応じて、シフタ42の出力をそ
のまま、又は反転して出力するものである。このEOR
ゲート43による反転機能と、加算器40に対するキャ
リ入力とにより、減算(2の補数加算)機能が実現され
ている。このEORゲート43の出力が加算器40のB
入力に供給される。
【0053】一方、上記加算器40のA入力端子には、
セレクタ44が接続されるようになっている。そして、
このセレクタ44の入力には、定数「0」、「0.
5」、及び「1」が供給されるようになっている。そし
て、制御回路47からの制御信号に応じて上記定数の何
れかを選択し、加算器40のA入力端子に供給するよう
になっている。
【0054】また、上記加算器40の出力は、逆数発生
器45及びセレクタ46に供給されるようになってい
る。
【0055】逆数発生器45は、加算器40の出力の逆
数を算出するものである。この逆数発生器45は、詳細
は後述するが、加算器40から出力される係数「κ」の
逆数「1/κ」を求めるために使用される。
【0056】セレクタ46は、制御回路47からの制御
信号に応じて、加算器40の出力、又は逆数発生器45
の出力の何れかを選択して出力するものである。このセ
レクタ46の出力がデジタルフィルタ回路23に供給さ
れることになる。
【0057】また、制御回路47は、制御信号発生回路
20からの「Q」、「H/L」等を入力し、このフィル
タ係数演算回路22の全体を制御する制御信号を生成す
るものである。
【0058】次に、上記デジタルフィルタ装置の動作に
ついて、図8に示したフローチャートを参照しながら説
明する。なお、Qについては、説明を簡略にするため
に、Q=2n-1 (n=1,2,3,4,…)の条件を満
たすものに限定する。
【0059】先ず、外部から制御信号発生回路20に音
色情報、音域情報、或いはタッチ情報等の楽音情報が与
えられると、カットオフ周波数情報に応じたパラメータ
θが生成され、三角関数発生回路21に与えられる。こ
れにより、三角関数発生回路21は、SDAT、及びC
DATを生成する(ステップS1)。
【0060】即ち、θの整数部が関数テーブル記憶部3
0に与えられ、該関数テーブル記憶部30が索引されて
所定値が読み出される。この所定値は、関数テーブル補
間部31において、θの小数部の値に応じた補間処理が
施される。これにより、sin(2θ)、つまりSDA
T、及びcos(2θ)、つまりCDATが算出され
る。
【0061】次いで、制御信号発生回路20は、パラメ
ータQ及びH/Lをフィルタ係数演算回路22に出力す
る(ステップS2)。これにより、パラメータQ及びH
/Lは、フィルタ係数演算回路22の制御回路47に設
定され、フィルタ係数を演算するための種々の制御信号
を生成して出力する。
【0062】次いで、フィルタ係数α、β、1/κを求
める演算が行なわれる(ステップS3)。
【0063】先ず、フィルタ係数αは、上記式(8)で
示したように、「α=−CDAT」で求められる。即
ち、制御回路47は、セレクタ41を制御することによ
り、CDATを選択し、シフタ42を制御してノンシフ
トでそのまま通過させる。また、キャリ信号CINをア
クティブにする。これにより、データCDATはEOR
ゲート43で反転されて加算器40のB入力に供給され
る。
【0064】一方、制御回路47は、セレクタ44を制
御して「0」を選択する。これにより、加算器40のA
入力には「0」が供給されることになる。
【0065】したがって、加算器40では、「0+CD
ATの反転+1」、つまり「0−CDAT」が実行さ
れ、その出力には「−CDAT」が得られる。この際、
制御回路47は、セレクタ46を制御して加算器40の
出力を通過させるので、フィルタ係数αとして「−CD
AT」が算出される。
【0066】フィルタ係数βは、上記式(9)で示した
ように、「β=1−SDAT/2Q」で求められる。即
ち、制御回路47は、セレクタ41を制御することによ
り、SDATを選択して通過させる。また、シフタ42
のシフト信号SFTとして「Q」を与えることにより、
Qビットだけダウンシフトし、「2Q」で除算するとい
う機能を実現している。また、キャリ信号CINをアク
ティブにする。これにより、データSDATはEORゲ
ート43で反転されて加算器40のB入力に供給され
る。
【0067】一方、制御回路47は、セレクタ44を制
御して「1」を選択する。これにより、加算器40のA
入力には「1」が供給されることになる。
【0068】したがって、加算器40では、「1+SD
AT/2Qの反転+1」、つまり「1−SDAT/2
Q」が実行され、出力される。この際、制御回路47
は、セレクタ46を制御して加算器40の出力を通過さ
せるので、フィルタ係数βとして「1−SDAT/2
Q」が算出される。
【0069】フィルタ係数1/κは、先ずκを求めるこ
とにより行なわれる。κは、上記式(12)で示したよ
うに、「κ=1+SDAT/2Q」で求められる。即
ち、制御回路47は、セレクタ41を制御することによ
り、SDATを選択して通過させる。また、シフタ42
のシフト信号SFTとして「Q」を与えることにより、
Qビットだけダウンシフトし、「2Q」で除算するとい
う機能を実現している。また、キャリ信号CINをノン
アクティブにする。これにより、データSDATはEO
Rゲート43をそのまま通過して加算器40のB入力に
供給される。
【0070】一方、制御回路47は、セレクタ44を制
御して「1」を選択する。これにより、加算器40のA
入力には「1」が供給されることになる。
【0071】したがって、加算器40では、「1+SD
AT/2Q」が実行され、出力される。この際、制御回
路47は、セレクタ46を制御して逆数発生器45の出
力を通過させるので、フィルタ係数1/κとして「1/
κ=1/(1+SDAT/2Q)」が算出される。
【0072】次いで、制御信号発生回路20から出力さ
れるパラメータ「H/L」が「H」つまりハイパスフィ
ルタ指定であるか、「L」つまりローパスフィルタ指定
であるかが調べられる(ステップS4)。
【0073】そして、「H」であることが判断される
と、フィルタ係数SHが求められる(ステップS5)。
即ち、フィルタ係数SH は、上記式(10)で示したよ
うに、「SH =(1+CDAT)/2」で求められる。
即ち、制御回路47は、セレクタ41を制御することに
より、CDATを選択して通過させる。また、シフタ4
2のシフト信号SFTとして「1」を与えることによ
り、1ビットだけダウンシフトし、「2」で除算すると
いう機能を実現している。
【0074】また、キャリ信号CINをノンアクティブ
にする。これにより、データCDATはEORゲート4
3をそのまま通過して加算器40のB入力に供給され
る。
【0075】一方、制御回路47は、セレクタ44を制
御して「0.5」を選択する。これにより、加算器40
のA入力には「0.5」が供給されることになる。
【0076】したがって、加算器40では、「0.5+
CDAT/2」が実行され、出力される。この際、制御
回路47は、セレクタ46を制御して加算器40の出力
を通過させるので、フィルタ係数SH として「SH
(1+CDAT)/2」が算出される。
【0077】一方、上記ステップS4で、「L」である
ことが判断されると、フィルタ係数SL が求められる
(ステップS6)。フィルタ係数SL は、上記式(1
1)で示したように、「SL =(1−CDAT)/2」
で求められる。即ち、制御回路47は、セレクタ41を
制御することにより、CDATを選択して通過させる。
また、シフタ42のシフト信号SFTとして「1」を与
えることにより、1ビットだけダウンシフトし、「2」
で除算するという機能を実現している。また、キャリ信
号CINをアクティブにする。これにより、データCD
ATはEORゲート43で反転されて加算器40のB入
力に供給される。
【0078】一方、制御回路47は、セレクタ44を制
御して「0.5」を選択する。これにより、加算器40
のA入力には「0.5」が供給されることになる。
【0079】したがって、加算器40では、「0.5+
CDAT/2の反転+1」、つまり「0.5−CDAT
/2」が実行され、出力される。この際、制御回路47
は、セレクタ46を制御して加算器40の出力を通過さ
せるので、フィルタ係数SL として「(1−CDAT)
/2」が算出される。
【0080】以上のようにして算出されたフィルタ係数
α、β、1/κ、SH 又はSL は、該フィルタ係数演算
回路22から、デジタルフィルタ回路23に送出される
(ステップS7)。
【0081】これにより、デジタルフィルタ回路23
は、所定のフィルタ特性を有するデジタルフィルタ装置
として機能し、所定の音色を有する楽音信号を発生する
ことになる。
【0082】なお、上記実施例では、1/κの演算を行
なうために逆数発生器45を使用しているが、カットオ
フ周波数の充分低い部分では、1/κはβで近似するこ
とができる。
【0083】即ち、上記(12)式において、 とすると、 κ=1−X となる。
【0084】さらに、 1−Xn =(1−X)(1+X+X2 +…+Xn-1 ) であるから、Xが充分に小さい部分では、 と近似することができる。この近似をXの一次の項まで
で打ち切れば となり、1/κをβで近似できることになる。
【0085】このように、1/κをβで近似する場合
は、逆数発生器45を使用することなく、フィルタ係数
演算回路を構成できる。このような構成によれば、フィ
ルタ係数演算回路が非常に簡単な構成となるという効果
がある。また、上記実施例では、1/Qをダウンシフト
によって実現しているが、これを演算(除算)によって
求めることでQの連続的な制御が可能となる。
【0086】次に、上記のデジタルフィルタ装置を適用
した電子楽器の一実施例について説明する。図1は、本
発明に係る電子楽器の全体的な構成を概略的に示すブロ
ック図である。
【0087】図において、50はキースイッチであり、
演奏者の押鍵・離鍵動作に連動して開閉するものであ
る。このキースイッチ50の出力は、タッチセンサ51
に供給されるようになっている。
【0088】タッチセンサ51は、押鍵の強さ(速さ)
を検出する周知のものである。このタッチセンサ51の
出力が、タッチデータとしてCPU53を介してトーン
ジェネレータ55に供給される。
【0089】52はパネルスイッチであって、該電子楽
器を制御する各種スイッチ、例えばリズム選択スイッ
チ、音色選択スイッチ、音量選択スイッチや表示器等が
設けられている。
【0090】53は中央処理装置(CPU)であり、メ
モリ54に記憶されている制御プログラムに従って当該
電子楽器の各部を制御するものである。
【0091】上記メモリ54は、例えばリードオンリメ
モリ(ROM)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)
とにより構成される。ROMには、上記制御プログラム
の他、演奏データ、音色データ、その他の種々の固定デ
ータが記憶される。RAMは、CPU53が使用するレ
ジスタ、フラグ等が定義されるとともに、CPU53の
ワーク領域として使用されるものである。
【0092】55はトーンジェネレータであり、波形メ
モリ60、フィルタ係数発生装置61、デジタルコント
ロールフィルタ(DCF)23、デジタルコントロール
アンプ(DCA)63、デジタルコントロールオシレー
タ(DCO)64、デジタルエンベロープジェネレータ
(DEG)65及びデジタルエンベロープジェネレータ
(DEG)66により構成される。
【0093】波形メモリ60には、各音色に対応した楽
音波形データが記憶される。この波形メモリ60に記憶
された楽音波形データがデジタルコントロールフィルタ
23でフィルタリングされて出力される。
【0094】フィルタ係数発生装置61は、CPU53
及びデジタルエンベロープジェネレータ66により制御
されるもので、上述したデジタルフィルタ装置の制御信
号発生回路20、三角関数発生回路21及びフィルタ係
数演算回路22に対応するものである。
【0095】上記デジタルエンベロープジェネレータ6
6は、カットオフ周波数を制御するために、音色、音
域、タッチに応じたエンベロープ信号を生成してフィル
タ係数発生装置61に供給するものである。
【0096】このフィルタ係数発生装置の構成及び動作
は、図4を参照して既に説明したので、ここでは説明を
省略する。このフィルタ係数発生回路61が出力するフ
ィルタ係数α、β、1/κ、SH 又はSL がデジタルコ
ントロールフィルタ23に供給される。
【0097】デジタルコントロールフィルタ23(図4
のデジタルフィルタ回路23に対応するものである)
は、上述したように、例えば図3に示したように構成さ
れる。このデジタルコントロールフィルタ23は、フィ
ルタ係数発生装置61からのフィルタ係数に応じて、波
形メモリ60から読み出された楽音波形データをフィル
タリングし、デジタルコントロールアンプ63に出力す
るものである。このデジタルコントロールフィルタ23
の構成及び動作も既に説明したので、ここでは説明を省
略する。
【0098】デジタルコントロールアンプ63は、デジ
タルコントロールフィルタ23からの出力波形とデジタ
ルエンベロープジェネレータ65の出力とを乗算するこ
とにより、振幅の制御を行なうものである。
【0099】デジタルエンベロープジェネレータ65
は、CPU53からの制御により、デジタルコントロー
ルフィルタ23が出力するデジタル楽音波形の振幅を制
御するエンベロープ信号を生成するものである。
【0100】このデジタルコントロールアンプ63が出
力するデジタル楽音信号が、トーンジェネレータ55の
出力としてD/A変換器56に供給される。
【0101】D/A変換器56は、入力されたデジタル
楽音信号をアナログ楽音信号に変換するものである。こ
のD/A変換器56の出力は、サウンドシステム57に
供給される。
【0102】サウンドシステム57は、例えばスピーカ
により構成されるものである。サウンドシステム57
は、電気信号を音響信号に変換する周知のものである。
【0103】なお、上記タッチセンサ51、パネルスイ
ッチ52、CPU53、メモリ54及びトーンジェネレ
ータ55は、システムバス58により相互に接続されて
いる。
【0104】次に、上記のような構成において、本電子
楽器の動作を説明する。
【0105】キースイッチ50がオンにされると、該キ
ースイッチ50からの信号がタッチセンサ51に伝えら
れ、タッチデータが生成される。このタッチデータは、
オンにされたキースイッチ50のキーナンバとともにC
PU53に送出される。
【0106】CPU53は、パネルスイッチ52で指定
された音色、音量情報とともに、上記キーナンバ、タッ
チデータ等をトーンジェネレータ55に送出する。
【0107】トーンジェネレータ55は、指定された音
色に応じた楽音波形データを、デジタルコントロールオ
シレータ64より出力されるアドレスに従って、波形メ
モリ60から読み出し、デジタルコントロールフィルタ
23に与える。
【0108】一方、指定された音色及びデジタルエンベ
ロープジェネレータ66の出力に応じたフィルタ係数が
フィルタ係数発生装置61により発生され、デジタルコ
ントロールフィルタ23に与えられる。これにより、デ
ジタルコントロールフィルタ23は所定のフィルタ特性
で楽音波形データをフィルタリングし、デジタルコント
ロールアンプ63に送出する。そして、デジタルコント
ロールアンプ63でデジタルエンベロープジネレータ6
5の出力に応じた増幅が行なわれ、D/A変換器56に
送出される。
【0109】そして、D/A変換器56によりアナログ
信号に変換され、サウンドシステム57から放音される
ことになる。
【0110】なお、上記実施例では、トーンジェネレー
タ55の発音チャネル数には言及していないが、単一チ
ャネルであっても複数チャネルであっても適用できる。
複数チャネルの場合は、同一ハードウエアをチャネル数
分だけ備える構成であっても良いが、ハードウエアの節
減という観点から、時分割で動作する複数チャネルを構
成することが望ましい。
【0111】複数チャネルで構成される場合は、上記フ
ィルタ係数に応じたフィルタ特性は、各チャネル単位で
制御される。
【0112】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、フィルタ係数を記憶するための膨大なメモリを必要
としないにも拘わらず、種々のフィルタ係数を発生して
連続的にデジタルフィルタ装置に与えることにより種々
の音色の楽音信号を発生することのできる電子楽器を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子楽器の全体的な構成を概略的に示
すブロック図である。
【図2】デジタルフィルタ回路の基本的構成を示す図で
ある。
【図3】本発明に適用するデジタルコントロールフィル
タの実施例の構成を示す図である。
【図4】本発明に適用するデジタルフィルタ装置の一実
施例の構成を示すブロック図である。
【図5】図4における三角関数発生回路の構成を示すブ
ロック図である。
【図6】図4における三角関数発生回路の関数テーブル
の構成を示す図である。
【図7】図4におけるフィルタ係数演算回路の構成を示
す回路図である。
【図8】本発明に適用するデジタルフィルタ装置の実施
例の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 制御信号発生回路(制御信号発生手段) 21 三角関数発生回路(三角関数発生手段) 22 フィルタ係数演算回路(フィルタ係数演算手段) 23 デジタルコントロールフィルタ(デジタルフィル
タ手段) 30 関数テーブル記憶部(記憶手段) 60 波形メモリ(デジタル波形発生手段) 61 フィルタ係数発生装置(フィルタ係数発生手段) 63 デジタルコントロールアンプ(振幅制御手段) 64 デジタルコントロールオシレータ(デジタル波形
発生手段) 65 デジタルエンベロープジェネレータ(振幅制御手
段) 66 デジタルエンベロープジェネレータ(フィルタ係
数発生手段) θ 第1のパラメータ Q,H/L 第2のパラメータ

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 演奏情報を入力し、該演奏情報に応じて
    第1のデジタル波形を発生するデジタル波形発生手段
    と、複数の第1の重み付け手段と遅延手段と加算手段と
    を具備し、前記デジタル波形発生手段から出力される前
    記第1のデジタル波形にフィルタ演算を施した第2のデ
    ジタル波形を出力するデジタルフィルタ手段と、 該デジタルフィルタ手段にフィルタ係数を供給して前記
    演奏情報に応じてフィルタ特性を連続的に変化させるフ
    ィルタ係数発生手段と、前記デジタルフィルタ手段から
    出力される第2のデジタル波形の振幅を制御して楽音波
    形を出力する振幅制御手段と、を有する電子楽器におい
    て、 前記デジタルフィルタ手段は、 前記第2のデジタル波形を出力する第2の重み付け手段
    を更に具備し、 前記フィルタ係数発生手段は、 音色、音域、タッチの各演奏情報に応じて前記デジタル
    フィルタ手段のフィルタ特性を制御するための第1及び
    第2のパラメータを発生する制御信号発生手段と、前記
    第1のパラメータに基づき三角関数値を発生する三角関
    数発生手段と、前記三角関数値および前記第2のパラメ
    ータに基づき前記第1、第2の重み付け手段の重み量で
    ある複数のフィルタ係数を演算するフィルタ係数演算手
    段と、を具備し、 前記第1の重み付け手段に供給される重み量である複数
    のフィルタ係数は共通項を削除したものであり、前記第
    2の重み付け手段に供給される重み量であるフィルタ係
    数を該削除された共通項とすることにより、フィルタ係
    数の演算を簡素化し、連続的にフィルタ係数を発生して
    前記デジタルフィルタ手段のフィルタ特性を連続的に変
    化させることを特徴とする電子楽器。
  2. 【請求項2】 前記第1のパラメータは、前記デジタル
    フィルタ手段のカットオフ周波数に対応するパラメータ
    であることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
  3. 【請求項3】 前記第2のパラメータは、前記デジタル
    フィルタ手段のフィルタ特性をハイパス、ローパス、バ
    ンドパス特性とするためのパラメータであることを特徴
    とする請求項1記載の電子楽器。
  4. 【請求項4】 前記第2のパラメータは、前記デジタル
    フィルタ手段のフィルタ特性のうちの共振特性を制御す
    るためのパラメータであることを特徴とする請求項1記
    載の電子楽器。
  5. 【請求項5】 前記三角関数発生手段は、正弦関数から
    なる三角関数値を記憶する三角関数記憶手段を有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
  6. 【請求項6】 前記三角関数記憶手段のアドレスは対数
    で表したカットオフ周波数に対応し、該対数で表したカ
    ットオフ周波数に対応する三角関数値を各アドレスに記
    憶することを特徴とする請求項5記載の電子楽器。
  7. 【請求項7】 前記三角関数発生手段は、べき級数を演
    算することにより正弦関数および余弦関数からなる三角
    関数値を発生することを特徴とする請求項1記載の電子
    楽器。
  8. 【請求項8】 前記フィルタ係数は、 α=−2cos(2θ) β=2−κ=1−sin(2θ)/2Q S=〔1+cos(2θ)〕/2 S=〔1−cos(2θ)〕/2 κ=1+sin(2θ)/2Q で演算され、ここで、 α、βは第1の重み付け手段の重み量、 Sはハイパスフィルタ特性時における第1の重み付け
    手段の重み量、 Sはローパスフィルタ特性時における第1の重み付け
    手段の重み量、 κは第2の重み付け手段の重み量の逆数、 であり、更に、θ=π×fc/Fsで表され、 fcはカットオフ周波数、 Fはサンプリング周波数、 Q は共振特性の制御パラメータ、 であることを特徴とする請求項1記載の電子楽器。
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