JP2779129B2 - 食品調理方法および食品調理装置 - Google Patents

食品調理方法および食品調理装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は食品を赤外線透過性の包
装手段、例えば高分子化合物の袋、トレー容器等により
包装してなる食品包装体を赤外線照射により加熱する食
品調理方法および食品調理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】食品を包装手段で包装してなる食品包装
体の加熱方法としては、加熱下で蒸気加熱するレトルト
方法がある。しかしながらレトルト方法は、設備が高価
になるだけでなく、加熱及びその後の乾燥工程を含む処
理時間が長くなり、作業が煩雑となる。またマグネトロ
ンを用いた加熱方法もあるが、同様に高価であり、処理
量にも問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、食品包装体へ
赤外線、特に遠赤外線を照射して食品の分子振動により
発熱させる赤外線照射方法が知られている。しかしなが
らこの場合、照射された赤外線の波長が包装手段の赤外
線吸収波長と合致したり、または加熱された食品が熱源
となることにより、プラスチック製の包装手段が加熱さ
れて軟化変形もしくはコーナが破損することがある。こ
のため、赤外線照射方法によれば、あまり高温の加熱を
行なうことができず、加熱時間が短く限られるため、殺
菌等の処理に限定され食品の調理を行なうことはできな
い。
【0004】本発明はこのような点を考慮してなされた
ものであり、食品包装体の食品に高温でかつ長時間、赤
外線を照射させることができ、これによって食品調理す
ることができる食品調理方法および食品調理装置を提供
することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、予め下処理し
た食品を包装手段により包装してなる食品包装体を作成
する工程と、この食品包装体を赤外線照射装置によって
照射される赤外線照射領域まで搬送する工程と、赤外線
照射装置により赤外線照射領域内の食品包装体に対して
赤外線を照射する工程と、赤外線照射領域内に冷気を送
風する工程と、赤外線照射装置からの赤外線照射エネル
ギおよび赤外線波長と冷気送風量を各々調整することに
より、食品包装体の食品を所望の調理温度まで加熱する
とともに包装手段を所望の冷却温度まで冷却することを
特徴とする食品調理方法、および断熱材からなるケーシ
ングと、このケーシング内に設けられた赤外線照射装置
と、ケーシング内に冷気を送る送風機と、ケーシング内
に食品を包装手段により包装してなる食品包装体を搬送
する搬送装置と、食品包装体の食品を所望の調整温度ま
で加熱するとともに包装手段を所望の冷却温度まで冷却
するよう赤外線照射装置からの赤外線照射エネルギおよ
び赤外線波長と送風機からの冷気送風量を制御する制御
装置と、を備えたことを特徴とする食品調理装置であ
る。
【0006】
【作用】本発明によれば、赤外線照射装置からの赤外線
照射エネルギおよび赤外線波長と冷気送風量を各々調整
することにより、食品包装体の食品を所望の調理温度ま
で加熱することができ、同時に包装手段を所望の冷却温
度まで冷却することができる。
【0007】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。図1および図2は本発明による食品調理装
置を示す図である。図1および図2において、食品調理
装置10は5つのゾーン10a,10b,10c,10
d,10eを直列に連結して構成され、直列に連結され
たゾーン10a,10b,10c,10d,10eを貫
通してネット状の搬送コンベア18が水平に設けられて
いる。この搬送コンベア18は、食品31を包装手段3
2により包装してなる食品包装体30を搬送するもので
ある。
【0008】各加熱ゾーン10a,10b,10c,1
0dは略同一構造となっており、各加熱ゾーンは断熱材
からなるケーシング11と、ケーシング11内の搬送コ
ンベア18の上方および下方に複数個づつ設けられたセ
ラミックヒータ12a,12bとを有している。
【0009】セラミックヒータ12a,12bは赤外線
を多量に放射する赤外線放射源として機能するものであ
る。放射する赤外線の照射エネルギおよび波長を可変と
するため、セラミックヒータ12a,12bは個々に、
あるいは隣接する複数個単位で内蔵されたサイリスタ制
御回路により入力電力が調整されるようになっており、
このサイリスタ制御回路は後述の制御装置20により駆
動制御される。
【0010】なお、セラミックヒータ12a,12bか
ら照射される赤外線の照射エネルギおよび波長は、各々
独立したものではなく、セラミックヒータ12a,12
bの表面温度によりいずれも決まるものである。またセ
ラミックヒータ12a,12bの間は赤外線照射領域と
なる。
【0011】図1および図2に示すように、各加熱ゾー
ン10a,10b,10c,10d,10eのケーシン
グ11の上部にはシロッコファン等からなる送風機15
が設けられている。この送風機15は内蔵されたサイリ
スタ制御回路により回転数制御が行なわれ、ケーシング
11内に送られる外気(冷気)の送風量が調整されるよ
うになっている。また送風機1のサイリスタ制御回路
は、制御装置20により駆動制御される。さらに、各熱
ゾーン10a,10eの端部、加熱ゾーン10bと10
cとの間、および加熱ゾーン10dと10eとの間に
は、排気ダクト16が接続され、この排気ダクト16内
部には、各々ダンパ16aおよび排気ファン19が設け
られている。
【0012】制御装置20は、セラミックヒータ12
a,12bの照射エネルギおよび波長と、送風機15の
送風量を制御することにより食品包装体30内の食品3
1を所望の調理温度まで加熱するとともに、包装手段3
2を所望の冷却温度まで冷却するものである。制御装置
20は更に排気ファン19の排気量を制御することによ
り、包装手段32を所望の冷却温度まで冷却することが
できる。
【0013】なお、図1および図2において、搬送コン
ベア18は駆動装置14によって駆動されるようになっ
ており、また食品調理装置10は全体としてキャスタ1
7によって床面を走行するようになっている。
【0014】次に本発明による食品調理方法について述
べる。まず各種食品31に対して味をしみ込ませる等の
下処理を施し、その後食品31をプラスチック袋等の包
装手段32により包装して密封し、食品包装体30を準
備する。食品31を包装手段32により包装する場合、
真空包装でも含気包装でもよい。
【0015】食品31としては、肉、魚、野菜、プリ
ン、ごはん等各種のものが考えられる。また包装手段3
2としてはプラスチック袋に限らず、プラスチック容器
であってもよい。プラスチック袋およびプラスチック容
器の材料としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロ
ピレン、EVOH、PVDC、SiOxコートのポリエ
ステル、およびこれらの積層体が考えられる。
【0016】次に食品包装体30が搬送コンベア18に
より加熱ゾーン10a,10b,10c,10d,10
eに順次送られる。各加熱ゾーン10a,10b,10
c,10d,10eにおいて、食品包装体30はセラミ
ックヒータ12a,12bの間の赤外線照射領域に配置
され、食品包装体30へセラミックヒータ12a,12
bから赤外線が照射される。
【0017】この場合、赤外線照射により食品包装体3
0の食品31は自己発熱して調理されることになる。食
品31の調理温度は、制御装置20によりセラミックヒ
ータ12a,12bのサイリスタ制御回路を制御し、セ
ラミックヒータ12a,12bの表面温度を調整して赤
外線のエネルギおよび波長を制御することにより決定さ
れる。なお、各加熱ゾーン10a,10b,10c,1
0eにおける食品の調理温度は、食品31の種類に応じ
て予め定められている。
【0018】この間、各加熱ゾーン10a,10b,1
0c,10d,10e内には、送風機15により冷気が
送られ、同時に排気ファン19により排気が行なわれ
る。送風機15の冷気送風量および排気ファン19の排
気量は制御装置20により制御され、このことにより包
装手段32は予め定められた冷却温度まで冷却される。
すなわち、赤外線による自己発熱および食品31からの
熱伝導により、包装手段32も加熱されることになる
が、このように冷却されることにより、プラスチック袋
等からなる包装手段32の変形または破損が防止され
る。
【0019】例えば図3に示すように、制御装置20に
よりセラミックヒータ12a,12bの表面温度を調整
し、かつ送風機15の冷気送風量および排気ファン19
の排気量を調整することにより、包装手段32を所望の
冷却温度60℃近傍に保ちながら食品31を包装手段3
2以上の調理温度まで加熱することができる。図3にお
いて、食品を殺菌する場合、72℃まで加熱することが
でき、また魚、野菜等の食品を煮沸したりプリン等の食
品を凝固する場合は、85〜95℃まで加熱することが
できる。 (具体例)次に本発明の具体例について述べる。 具体例1 図4はプラスチック袋により包装された、冷凍食品を焼
成するまでの連続調理工程における食品の調理温度を示
す図である。図4において、第一ゾーンは加熱ゾーン1
0aに対応し、第二ゾーンは加熱ゾーン10bに、第三
ゾーンは加熱ゾーン10cに、第四ゾーンは加熱ゾーン
10dに、第五ゾーンは加熱ゾーン10eに各々対応し
ている。図4において、第一および第二ゾーンではセラ
ミックヒータの表面温度は750℃、赤外線の波長はガ
スの光である1.8〜2.0μに調整される。また第一
および第二ゾーンでは送風量が大きくなっている。第一
ゾーン入口の食品温度は約−20℃であるが、第三ゾー
ン入口において0℃となって解凍される。次に食品は第
三ゾーンから第五ゾーンにおいて焼成される。特に第五
ゾーン入口では食品が62℃まで加熱され、第五ゾーン
出口では68℃まで加熱される。第五ゾーンは食品の熟
成温度帯となっている。 具体例2 図5はプラスチック袋により包装された魚を焼いて焼魚
を作成する調理工程における魚の調理温度を示す図であ
る。第一および第二ゾーンにおいて、セラミックヒータ
の表面温度は750℃、赤外線の波長はガスの光である
1.8〜2.0μに調整されている。この間、魚は約4
〜5℃〜30℃まで加熱され、魚表面全体に皮膜が形成
され、内部の水分が逃げないようになっている。
【0020】次に、第三および第四ゾーンにおいて、セ
ラミックヒータの表面温度は520℃、赤外線の波長は
5〜6μに調整される(中間赤外線〜遠赤外線)。赤外
線のエネルギおよび浸透力は最も良好となり、魚の内部
が十分に加熱され、第四ゾーンの出口において魚は62
℃まで加熱される。この62℃は蛋白質が凝固を開始す
る温度である。
【0021】次に第五ゾーンにおいて、セラミックヒー
タの表面温度は300℃〜350℃、赤外線の波長は7
〜8μに調整される(遠赤外線)。赤外線のエネルギは
低いが、浸透力は増加し魚の中心部まで十分に加熱され
る。この第五ゾーンは熟成温度帯となっており、第五ゾ
ーン出口において魚は68℃まで加熱される。この68
℃は蛋白質の水分が逃げ出す温度である。 具体例3 図6はプラスチック袋により包装された芋を焼く調理工
程における芋の調理温度を示す図である。第一および第
二ゾーンにおいて、セラミックヒータの表面温度は75
0℃、赤外線の波長はガスの光である1.8〜2.0μ
に調整されている。この間、芋は20℃〜50℃まで加
熱され、芋表面全体に皮膜が形成され、内部の水分が逃
げないようになっている。
【0022】次に、第三および第四ゾーンにおいて、セ
ラミックヒータの表面温度は520℃、赤外線の波長は
5〜6μに調整される(中間赤外線〜遠赤外線)。赤外
線のエネルギおよび浸透力はもっとも良好となり、芋の
内部が十分に加熱され、芋の温度は第三ゾーンにおいて
約60℃、第四ゾーンにおいて約67℃となる。第三お
よび第四ゾーンは糖分を糖化させる熟成温度帯となる。
【0023】次に第五ゾーンにおいて、セラミックの表
面温度は、300℃〜350℃、赤外線の波長は7〜8
μに調整される(遠赤外線)。赤外線のエネルギは低い
が浸透力は増加し、芋の中心部まで十分に加熱される。
この第五ゾーンは芋の繊維分解温度帯となり、第五ゾー
ン出口において、芋は98℃〜101℃まて加熱され
る。 具体例4 図7は、プラスチック袋により包装された魚を煮る調理
工程における魚の調理温度を示す図である。第一および
第二ゾーンにおいて、セラミックの表面温度は750
℃、赤外線の波長はガスの光である1.8〜2.0μに
調整される。この間、魚は5℃〜33℃まで加熱され、
魚表面全体に皮膜が形成され、内部の水分が逃げないよ
うになっている。
【0024】次に第三ゾーンにおいて、セラミックヒー
タの表面温度は520℃、赤外線の波長は5〜6μに調
整される(中間赤外線〜遠赤外線)。赤外線のエネルギ
および浸透力は最も良好となり、魚の内部が十分に加熱
される。魚は第三ゾーン出口において、蛋白質が凝固を
開始する温度である62℃まで加熱される。
【0025】次に第四および第五ゾーンにおいて、セラ
ミックの表面温度は300℃〜350℃、赤外線の波長
は7〜8μに調整される(遠赤外線)。赤外線のエネル
ギは低いが浸透力は増加し、魚の中心部まで十分に加熱
される。このうち第四ゾーンは熟成温度帯となり、第四
ゾーン出口において魚は蛋白質中の水分が逃げ出す温度
である68℃まで加熱される。次に第五ゾーンにおい
て、魚は一般生菌の殺菌温度である72℃まで加熱さ
れ、その後冷却される。 具体例5 図8はプラスチック袋により包装された漬物の味の含
浸、醗酵(熟成)、および殺菌調理工程における漬物の
温度を示す図である。
【0026】第一ゾーン入口において20℃であった漬
物は、第一および第二ゾーンにおいて加熱され、第二ゾ
ーンにおいて38℃となる。次に第三および第四ゾーン
において、漬物の醗酵(熟成)が行なわれ、第四ゾーン
において45℃まで加熱される。
【0027】次に第五ゾーンにおいて、白菜浅漬の場合
は65℃まで加熱され、漬物一般の場合は72℃まで加
熱される。この場合、65℃は白菜の浅漬の殺菌温度で
あり、72℃が漬物一般の殺菌温度である。第五ゾーン
において殺菌された浅漬および漬物一般は、その後急冷
される。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
食品包装体の食品を所望の調理温度まで加熱することが
できるとともに、包装手段を所望の冷却温度まで冷却す
ることができる。このため包装手段が変形したり破損す
ることなく、食品を所望の調理温度まで加熱することに
より所望の調理を行うことができる。このように食品の
調理に際して熱水等を用いる必要がないので、調理環境
を清潔に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による食品調理装置を示す側面図。
【図2】図1に示す食品調理装置の正面図。
【図3】食品包装体の食品と包装手段の加熱温度を示す
図。
【図4】冷凍食品を焼成する調理工程の食品調理温度を
示す図。
【図5】焼魚を作成する調理工程の魚の調理温度を示す
図。
【図6】芋を焼く調理工程の芋の調理温度を示す図。
【図7】魚を煮る調理工程の魚の調理温度を示す図。
【図8】漬物の味の含浸、醗酵および殺菌調理工程の漬
物の調理温度を示す図。
【符号の説明】
10 食品調理装置 11 ケーシング 12a,12b セラミックヒータ 15 送風機 18 搬送コンベア 19 排気ファン 20 制御装置 30 食品包装体 31 食品 32 包装手段

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】予め下処理した食品を包装手段により包装
    してなる食品包装体を作成する工程と、 この食品包装体を赤外線照射装置によって照射される赤
    外線照射領域まで搬送する工程と、 赤外線照射装置により赤外線照射領域内の食品包装体に
    対して赤外線を照射する工程と、 赤外線照射領域内に冷気を送風する工程と、 赤外線照射装置からの赤外線照射エネルギおよび赤外線
    波長と冷気送風量を各々調整することにより、食品包装
    体の食品を所望の調理温度まで加熱するとともに包装手
    段を所望の冷却温度まで冷却することを特徴とする食品
    調理方法。
  2. 【請求項2】赤外線照射領域内に冷気を送風する際、同
    時に排気することを特徴とする請求項1記載の食品調理
    方法。
  3. 【請求項3】断熱材からなるケーシングと、 このケーシング内に設けられた赤外線照射装置と、 ケーシング内に冷気を送る送風機と、 ケーシング内に食品を包装手段により包装してなる食品
    包装体を搬送する搬送装置と、 食品包装体の食品を所望の調整温度まで加熱するととも
    に包装手段を所望の冷却温度まで冷却するよう赤外線照
    射装置からの赤外線照射エネルギおよび赤外線波長と送
    風機からの冷気送風量を制御する制御装置と、 を備えたことを特徴とする食品調理装置。
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