JP2777961B2 - 温度自己制御性導電性組成物、温度自己制御性面状発熱体および温度自己制御性パイプ状ヒーター - Google Patents

温度自己制御性導電性組成物、温度自己制御性面状発熱体および温度自己制御性パイプ状ヒーター

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JP2777961B2
JP2777961B2 JP5142495A JP14249593A JP2777961B2 JP 2777961 B2 JP2777961 B2 JP 2777961B2 JP 5142495 A JP5142495 A JP 5142495A JP 14249593 A JP14249593 A JP 14249593A JP 2777961 B2 JP2777961 B2 JP 2777961B2
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隆伸 河井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は温度自己制御性導電性組
成物、温度自己制御性面状発熱体および温度自己制御性
パイプ状ヒーターに関する。より詳しくは、本発明は、
温度自己制御性能を有する発熱素子、特に形状が任意で
フレキシビリティに富む軽量薄型の面状発熱体の製造に
有用な導電性組成物、並びに該導電性組成物を使用して
得られる温度自己制御性面状発熱体並びに温度自己制御
性パイプ状ヒーターに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から軽量薄型発熱素子としては、金
属線、金属箔等と樹脂との複合体が一般的に知られてい
るが、それらの多くは温度を自己制御できないため、サ
ーモスタット、ヒューズ、配線内電気抵抗器等と併せて
使用する必要があった。
【0003】そのため、近年、上記のような付加的素子
を必要としない、温度を自己制御可能な発熱素子が着目
され、そのような発熱素子として特定温度を超えると抵
抗が急激に増加して温度が自己制御される導電性組成物
をベース上に被覆した発熱素子が開発されている。かか
る導電性組成物としては、カーボンブラックと樹脂との
組成物が従来から知られている(例えば、特公昭61−
35223号公報、特開昭60−257091号公報、
特開昭61−39475号公報)。
【0004】しかしながら、カーボンブラックは本来樹
脂に対して分散しにくい性質を有しており、そのため従
来公知の導電性組成物は抵抗値の低減に限界があり、ま
た発熱体素子のベースとして通常使用されるフィルム、
不織布、箔等との密着性が充分ではなかった。特に、上
記従来の導電性組成物を用いて薄型の発熱素子を得るた
めには使用できる樹脂が極めて限定されてしまい、それ
によって制御できる温度領域の幅がかなり限定されてい
た。また、上記従来公知の導電性組成物は、温度自己制
御領域が低温領域に限られていたり、ヒートサイクルに
よるヒステリシスが充分に解消できないといった不都合
をも有するものであった。
【0005】また、特開昭61−181859号公報お
よび特開昭61−181860号公報には、樹脂、カー
ボンブラックおよび黒鉛からなる導電性組成物が開示さ
れている。しかしながら、従来使用された黒鉛は天然黒
鉛もしくは人造黒鉛であり、それらは鱗片状、針状、板
状等の形状であって、球状とは程遠い形状のものであっ
た。かかる従来の導電性組成物においては上記黒鉛の分
散が不均一となり易く、面状発熱体とした場合に発熱が
不均一で安定性に欠け、さらに発熱体がベースから剥離
し易いといった不都合があった。
【0006】更に、従来公知の温度自己制御性を有する
発熱体は概ね定格温度が30〜120℃と低温であり、
また保持温度に到達するまでの昇温時間が5〜30分と
遅いため、一般的に用途が融雪、防曇、床暖房などに限
られていた。また、従来公知の発熱体においては全面の
温度分布に5〜20℃の差があり、均熱性にも劣ってい
た。更に、従来公知の発熱体は形状も厚さ0.5mm以
上のフィルム状や厚さ数mm以上のゴムシート状のもの
に限られており、厚さが薄いシート状のものおよびパイ
プ状等の異形物のものは得られなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
の有する課題に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹
脂の種類にあまり制限されることなくベース上に印刷等
の簡易な方法で強固でかつ均質な薄膜(面状発熱体)を
容易に形成でき、しかもヒートサイクルによるヒステリ
シスが極めて少ない高性能の発熱体を得ることができる
導電性組成物を提供することを目的とする。また、本発
明は、30〜250℃という広い温度領域に亙って様々
な自己制御温度を有する発熱素子を容易に得ることが可
能で、均熱性に優れ、さらに保持温度までの到達時間が
短い発熱体を得ることができる導電性組成物を提供する
ことを目的とする。
【0008】更に、本発明は、上述の優れた諸特性を有
する厚さの薄いシート状の温度自己制御性面状発熱体、
さらに従来は得ることが困難であったパイプ状の温度自
己制御性発熱体を有するパイプ状ヒーターを提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく鋭意研究した結果、特定形状の球状カーボン
および/または膨張黒鉛粉末を熱可塑性樹脂およびカー
ボンブラックを含有するワニス状混合物に混入すること
によって上記課題を解決する導電性組成物が得られるこ
とを見出し、本発明に到達した。
【0010】すなわち本発明の自己制御性導電組成物
は、平均粒径2〜30μmの球状カーボンおよび/また
は平均直径5000μm以下の膨張黒鉛粉末からなる
(A)成分と熱可塑性樹脂およびカーボンブラックを含
有するワニス状混合物からなる(B)成分とを、(B)
成分100重量部に対して(A)成分5〜95重量部の
比率で含有することを特徴とするものである。
【0011】以下、先ず本発明の温度自己制御性導電性
組成物について詳細に説明する。
【0012】本発明にかかる球状カーボンは、従来から
使用されてきたカーボンブラックやいわゆる人造黒鉛と
は形状や大きさが全く別異なものであり、本発明ではそ
の中でも平均粒径が2〜30μm、好ましくは5〜10
μmのものを使用する。平均粒径が2μm未満のものは
工業的に製造することが極めて難しく、また30μmを
超えるものを使用すると導電性組成物がベース等に平滑
に被覆できなくなり、不都合である。
【0013】このような球状カーボンは、前記人造黒鉛
等とは製法も相違しており、主に下記の方法のいずれか
によって得られる。
【0014】すなわち、(イ)球状の不溶融性フェノー
ル樹脂を1500〜2200℃で熱処理して炭化する方
法、(ロ)球状の不溶融性フェノール樹脂の表面にカー
ボン微粉体および/または加熱により炭化する材料を被
覆せしめた後に1500〜2200℃で熱処理して炭化
する方法、あるいは(ハ)バインダーとして作用し、加
熱により炭化する材料100重量%に対し好ましくは5
0〜130重量%のカーボン微粉体を混合し、造粒成形
した後に1500〜2200℃で熱処理して炭化する方
法であり、特に(ロ)の方法が好ましい。上記各方法に
おける諸条件に対応して、球状カーボンが得られる。
【0015】上記不溶融性フェノール樹脂とは上記熱処
理温度でも溶融しないフェノール樹脂であり、例えばユ
ニチカ株式会社製のユニベックスCタイプもしくはUA
タイプフェノール樹脂、あるいは鐘紡株式会社製のベル
パールRタイプフェノール樹脂が好ましいものとして挙
げられる。上記カーボン微粉体としては平均粒径が12
〜40nmのものが好ましく、例えばカーボンブラック
が挙げられる。上記の加熱により炭化する材料として
は、上記熱処理温度で炭化する合成樹脂(例えばユニチ
カ株式会社製のユニベックスSタイプもしくはNタイプ
フェノール樹脂、鐘紡株式会社製のベルパールSタイプ
フェノール樹脂等の溶融性フェノール樹脂)、あるいは
上記熱処理温度で炭化するピッチ類が好ましいものとし
て挙げられる。
【0016】上記各方法における炭化処理は非酸化性雰
囲気中で通常行なわれる。また、上記(ロ)の方法にお
ける被覆方法としては、カーボン微粉体をメカノケミカ
ル法により樹脂表面に付着させる方法、あるいは上記の
加熱により炭化する材料を単独でもしくはカーボン微粉
体との混合物として樹脂表面に被覆する方法が好まし
い。
【0017】本発明にかかる膨張黒鉛粉末も、従来から
使用されてきたカーボンブラックやいわゆる人造黒鉛と
は全く別異なものであり、本発明ではその中でも平均直
径が5000μm以下、好ましくは2〜5000μmの
ものを使用する。平均粒径が2μm未満のものを使用し
ても充分な温度自己制御性能を有しかつ再現性の良い発
熱素子は得られない傾向にあり、他方、5000μmを
超えるものを使用すると導電性組成物がベース等に平滑
に被覆できなくなり、不都合である。また、本発明にお
いては、C軸方向膨張率が少なくとも50倍以上の膨張
黒鉛を使用することが好ましい。C軸方向膨張率が50
倍未満のものを使用して得た導電性組成物はベース等に
平滑に被覆できなくなる傾向があるからである。
【0018】このような膨張黒鉛粉末は主に下記の方法
によって得られる。すなわち、天然黒鉛、キッシュ黒
鉛、熱分解黒鉛等の層状結晶構造を有する黒鉛を硫酸、
硝酸、塩素酸等の強酸化剤に浸漬して層間化合物を形成
せしめ、必要に応じて水洗等した後、非酸化性雰囲気下
で加熱(好ましくは1000℃以上)する。そして、得
られた膨張黒鉛を必要に応じて粉砕、整粒等することに
よって平均直径が5000μm以下の膨張黒鉛粉末が得
られる。
【0019】本発明においては、上述の球状カーボンま
たは膨張黒鉛粉末のうちのいずれか一種を使用してもよ
く、またそれらを組み合わせて使用してもよい(以下、
(A)成分という)。
【0020】上記(A)成分と共に本発明の導電性組成
物に含有されるワニス状混合物(以下、(B)成分とい
う)は、熱可塑性樹脂およびカーボンブラックを含有す
るものである。
【0021】上記熱可塑性樹脂としては種々のものが使
用可能であり、例えばポリカルボシラン、ケイ素樹脂、
ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリウレタン樹脂お
よびポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種が好
ましいものとして挙げられ、特に好ましくはポリカルボ
シランとケイ素樹脂との混合物、あるいはケイ素樹脂で
ある。
【0022】本発明に使用可能なポリカルボシランとし
ては、分子量(MN)が500〜5000のものが好ま
しい。分子量が500未満では粘度が低く混練、三本ロ
ール練が困難となる傾向にあり、また硬化時にガス発生
を起こす等の問題が生じる恐れがある。他方、分子量が
5000を超えると逆に粘度が高く、溶剤に溶けにくく
なってワニス化が困難となる傾向にあり、ワニス化がで
きても成膜性に劣るからである。かかるポリカルボシラ
ンはケイ素樹脂と混合して使用するのが好ましく、混合
樹脂中のポリカルボシランの含有量が70〜90wt%
であることが好ましい。ポリカルボシランの含有量が7
0wt%未満では経時変化を起こしたり180℃以上の
温度での使用が困難となる傾向にあり、他方、90wt
%を超えると印刷性、密着性及び屈曲性に劣る傾向にあ
るからである。
【0023】本発明にかかるワニス状混合物の必須成分
であるカーボンブラックとしては、ストラクチャーの良
く発達したファーネスブラック、アセチレンブラックを
使用すると、少ない添加量で電気抵抗値を低減できるの
で好ましい。
【0024】さらに、本発明にかかるワニス状混合物に
溶剤を任意に添加してもよく、例えばダイアナソルベン
トNo.2(出光興産(株)製)等のパラフィン系溶
剤、酢酸カルビトール、ジメチルホルムアミドおよびγ
−ブチルラクトンから選ばれる少なくとも一種が好まし
く使用される。
【0025】本発明の導電性組成物にあっては上記成分
のみでも充分な分散性が得られるが、さらに分散性を向
上させるために金属石けん、非イオン性界面活性剤等の
分散剤を任意に添加してもよい。
【0026】本発明で使用するワニス状混合物は、前記
熱可塑性樹脂(溶剤を含有する場合は、熱可塑性樹脂と
溶剤との合計量)を90〜99重量%、前記カーボンブ
ラック(分散剤を含有する場合は、カーボンブラックと
分散剤との合計量)を1〜10重量%含有することが好
ましい。ワニス状混合物中、カーボンブラックが上記範
囲より高いと分散が充分になされない傾向にあり、他
方、上記範囲より少ないと本発明の効果を呈さない傾向
にある。
【0027】本発明の導電性組成物においては、上記
(B)成分100重量部に対して前記(A)成分を5〜
95重量部、好ましくは5〜92重量部の比率で含有す
る必要がある。(A)成分の含量が5重量部未満では、
面状発熱体として所望される抵抗値が得られず、また均
一な発熱体を得ることができない。他方、(A)成分の
含量が95重量部を超えると、(A)成分が均一に分散
しないばかりでなく、ベースに対する密着性が低下し、
発熱体が剥離し易くなる。
【0028】本発明の導電性組成物は上記(A)成分お
よび(B)成分を上記範囲内の配合量で適宜混合するこ
とによって得られ、その際の混合方法としてはロール混
練法が好ましい。
【0029】上記本発明の導電性組成物においては、そ
の組成を上記本発明の範囲内で適宜選択することによっ
て、その固有抵抗および自己制御可能な温度が設定され
る。例えば、カーボンブラックや球状カーボン等の含量
を増加または減少させることによって固有抵抗値を調節
できる。また、熱可塑性樹脂や溶剤の種類および含量を
変えることによって、抵抗値が急激に増加する温度、す
なわち導電性部材周囲の樹脂が部分的に溶融して導電性
部材間の導通を遮断する温度、を調節することができ
る。しかし、本発明の導電性組成物にあっては、いずれ
の組成を採用しても、導電性組成物のベースに対する密
着性は高水準に維持される。
【0030】また、上記の本発明の導電性組成物を適宜
成形することによって種々の温度自己制御性発熱体、好
ましくは面状発熱体を容易に得ることができる。以下、
本発明の温度自己制御性面状発熱体について説明する。
【0031】すなわち、本発明の温度自己制御性面状発
熱体は、上記本発明の導電性組成物を面状に成形したも
のを熱処理して得られたものである。
【0032】導電性組成物を面状に成形する方法は特に
制限されず、例えばスクリーン印刷(80〜325メッ
シュ)による方法、適宜溶剤で希釈してスプレーで吹き
付ける方法、バーコーター塗布による方法によって面状
に成形できる。また、導電性組成物を面状に成形する際
に、通常はフィルムや不織布等のベース上に被膜として
形成される。上記の熱処理は導電性組成物を硬化/安定
化させるものであり、好ましくは130〜250℃で1
0〜90分間行なう。本発明の面状発熱体の形状、厚さ
等は特に制限されないが、5〜100μmの厚さとする
ことが好ましい。
【0033】実用的には、上記熱処理の前あるいは後に
面状発熱体に電源接続用の電極を少なくとも2ヵ所設け
ることによって発熱素子を得ることができる。電極の作
成方法としては、銀レジンインキを用いた印刷法や、異
方導電接着剤を介して金属箔テープを貼付する方法があ
る。また、耐湿性を要求される分野においては、上記発
熱素子の上からさらに撥水性および絶縁性を兼ね備えた
シリコーンゴムやフッ素ゴム系のインキオーバーコート
することも可能である。
【0034】更に、上述の本発明の導電性組成物を用い
て得られる面状発熱体は成形性並びに種々の基材との密
着性に優れるため、従来は得ることが困難であったパイ
プ状等の任意形状の温度自己制御性発熱体を容易に得る
ことが可能となる。以下、パイプ状の温度自己制御性発
熱体を有する本発明のパイプ状ヒーターについて説明す
る。
【0035】すなわち、本発明の温度自己制御性パイプ
状ヒーターは、パイプ状絶縁性基材と、前記本発明の導
電性組成物をパイプ状絶縁性基材上に面状に成形したも
のを熱処理して得られた発熱体と、該発熱体に通電する
ための電極とを具備することを特徴とするものである。
【0036】上記パイプ状絶縁性基材は特に制限され
ず、用途に応じた大きさの例えば表面を絶縁処理した金
属パイプ、石英ガラス等が挙げられる。
【0037】また、上記電極としては従来市販されてい
る銀ペースト等が使用可能であるが、150℃〜250
℃の高温領域に対応する銀電極用ペーストとしては、マ
トリックスにラダー型シリコーンオリゴマー、フィラー
に銀粉を用いたものが好ましい。かかる銀電極用ペース
トの場合、ペースト中の銀粉は75〜90wt%が好ま
しい。銀粉が75wt%未満では密着性及び導電性が劣
る傾向にあり、他方、90wt%を超えるとペースト化
が困難となる傾向にあるからである。
【0038】更に、上記本発明のパイプ状ヒーターにお
いては、前記発熱体上に被膜状絶縁材料からなる保護膜
をさらに設けてもよい。熱伝導性が高く、摺動性に優れ
た保護膜を具備することによって、発熱部の保護、耐湿
性並びに摺動性の改善が図れる。かかる保護膜の形成方
法としては、パイプ状ヒーターの外径より約10%内径
の大きい熱収縮性フッ素樹脂チューブをかぶせて熱収縮
させることによりヒータ部表面をオーバーコートする方
法が好ましい。また、マトリックスにラダー型シリコー
ンオリゴマー、フィラーにボロンナイトライドを用いた
ペーストを被覆することによって保護膜を形成してもよ
い。かかるペースト中のボロンナイトライドは保護膜の
摺動性及び熱伝導性を向上させるのに有効であり、その
量は5〜10重量%が好ましい。
【0039】
【実施例】以下、実施例および比較例に基づいて本発明
をより具体的に説明する。
【0040】実施例1 以下の組成: ・ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT2170) 27.9重量% [三菱瓦斯化学(株)製] ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 4.8重量% [電気化学工業(株)製] ・分散剤(NP−2:日光ケミカルス(株)製) 2.2重量% ・酢酸カルビトール 65.1重量% のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して膨張黒鉛粉末(平均直径4500μ
m、日本カーボン(株)製)6.9重量部を加え、プラ
ネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロールに通して
導電性組成物を得た。
【0041】得られた導電性組成物をSUS100メッ
シュのスクリーンを用いてポリイミドフィルム上に20
0×100mmのサイズにスクリーン印刷し、150℃
で30分間熱処理したところ、非常に平滑な面状発熱体
(膜厚38μm)が得られた。そして、その面状発熱体
の両端に銀ペーストで電極を印刷して発熱素子とした。
得られた発熱素子の室温での電極両端抵抗は220Ωで
あった。
【0042】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して20秒後に210℃となり、以後
は210℃±4℃で温度一定となった。そのまま50時
間電圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、
電源を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さら
に、上記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用
したが、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態と
なる温度にも変化は見られなかった。
【0043】実施例2 以下の組成: ・ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT2170) 28.0重量% ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 4.6重量% ・分散剤(金属石けん) 2.2重量% ・酢酸カルビトール 65.2重量% のワニス状混合物を調製した。他方、球状の不溶融性フ
ェノール樹脂の表面にカーボンブラックをメカノケミカ
ル法で被覆せしめ、次いで2000℃で炭化して平均粒
径10μmの球状カーボンを得た。そして、上記ワニス
状混合物100重量部に対して上記球状カーボン16重
量部および実施例1と同様の膨張黒鉛粉末6.0重量部
を加え、プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロ
ールに4回通して導電性組成物を得た。
【0044】得られた導電性組成物をSUS200メッ
シュのスクリーンを用いてポリイミドフィルム上に10
0×100mmのサイズにスクリーン印刷し、170℃
で30分間熱処理したところ、非常に平滑な面状発熱体
(膜厚14μm)が得られた。そして、その面状発熱体
の両端に銀ペーストで電極を印刷して発熱素子とした。
得られた発熱素子の室温での電極両端抵抗は300Ωで
あった。
【0045】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して20秒後に130℃に達し、以後
は130℃±2℃で温度一定となった。そのまま50時
間電圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、
電源を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さら
に、上記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用
したが、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態と
なる温度にも変化は見られなかった。
【0046】実施例3 以下の組成: ・珪素樹脂(TSE−3221:東芝シリコーン(株)製)91.0重量% ・カーボンブラック(ファーネスブラックMA−8) 9.0重量% [三菱化成(株)製] のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して実施例2と同様の球状カーボン45重
量部を加え、プラネタリーミキサーで混練し、さらに三
本ロールに通して導電性組成物を得た。
【0047】得られた導電性組成物を同量のキシレンで
希釈してスプレーガンを用いてポリアリレート樹脂フィ
ルム(厚さ75μm)上に100×100mmのサイズ
の被膜を形成し、150℃で20分間熱処理したとこ
ろ、非常に平滑な面状発熱体(膜厚10μm)が得られ
た。そして、その面状発熱体の両端に銀ペーストで電極
を印刷し、150℃で30分間熱処理して発熱素子とし
た。得られた発熱素子の室温での電極両端抵抗は425
Ωであった。
【0048】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して30秒後に87℃に達し、以後は
87℃±5℃で温度一定となった。そのまま50時間電
圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、電源
を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さらに、上
記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用した
が、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態となる
温度にも変化は見られなかった。
【0049】実施例4 以下の組成: ・ポリウレタン樹脂(タケネートB−7013) 79.3重量% [武田薬品工業(株)製] ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 4.1重量% ・γ−ブチルラクトン 16.6重量% のワニス状混合物を調製した。他方、球状の不溶融性フ
ェノール樹脂の表面に溶融ピッチを被覆せしめ、次いで
2000℃で炭化して平均粒径10μmの球状カーボン
を得た。そして、上記ワニス状混合物100重量部に対
して上記球状カーボン75重量部を加え、プラネタリー
ミキサーで混練し、さらに三本ロールに通して導電性組
成物を得た。
【0050】得られた導電性組成物をSUS200メッ
シュのスクリーンを用いてポリアリレート樹脂フィルム
(厚さ100μm)上に100×100mmのサイズに
スクリーン印刷し、150℃で15分間熱処理したとこ
ろ、非常に平滑な面状発熱体(膜厚12μm)が得られ
た。そして、その面状発熱体の両端に銀ペーストで電極
を印刷して発熱素子とした。得られた発熱素子の室温で
の電極両端抵抗は180Ωであった。
【0051】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して30秒後に65℃に達し、以後は
65℃±10℃で温度一定となった。そのまま50時間
電圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、電
源を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さらに、
上記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用した
が、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態となる
温度にも変化は見られなかった。
【0052】実施例5 以下の組成: ・ポリエステル樹脂 63.2重量% ・カーボンブラック(ファーネスブラックMA−8) 2.3重量% ・DMF 34.5重量% のワニス状混合物を調製した。他方、球状の不溶融性フ
ェノール樹脂を2000℃で炭化して平均粒径5μmの
球状カーボンを得た。そして、上記ワニス状混合物10
0重量部に対して上記球状カーボン15重量部を加え、
プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロールに通
して導電性組成物を得た。
【0053】得られた導電性組成物をSUS200メッ
シュのスクリーンを用いてポリアリレート樹脂フィルム
(厚さ100μm)上に100×100mmのサイズに
スクリーン印刷し、120℃で30分間熱処理したとこ
ろ、非常に平滑な面状発熱体(膜厚14μm)が得られ
た。そして、その面状発熱体の両端に銀ペーストで電極
を印刷して発熱素子とした。得られた発熱素子の室温で
の電極両端抵抗は580Ωであった。
【0054】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して50秒後に45℃に達し、以後は
45℃±8℃で温度一定となった。そのまま50時間電
圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、電源
を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さらに、上
記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用した
が、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態となる
温度にも変化は見られなかった。
【0055】実施例6 以下の組成: ・珪素樹脂(Q1−4010) 91.0重量% [東レ・ダウコーニング(株)製] ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 9.0重量% のワニス状混合物を調製した。他方、カーボンブラック
(アセチレンブラック)とピッチとを等重量ずつ混合
し、造粒した後、1800℃で炭化して平均粒径12μ
mの球状カーボンを得た。そして、上記ワニス状混合物
100重量部に対して上記球状カーボン60重量部およ
び平均直径1000μmの膨張黒鉛粉末6.7重量部を
加え、プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロー
ルに通して導電性組成物を得た。
【0056】得られた導電性組成物をSUS200メッ
シュのスクリーンを用いてアラミド不織布(厚さ130
μm:デュポン(株)製)上に100×100mmのサ
イズにスクリーン印刷し、150℃で15分間熱処理し
たところ、非常に平滑な面状発熱体(膜厚15μm)が
得られた。そして、その面状発熱体の両端に銀ペースト
で電極を印刷して発熱素子とした。得られた発熱素子の
室温での電極両端抵抗は350Ωであった。
【0057】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して30秒後に100℃に達し、以後
は100℃±5℃で温度一定となった。そのまま50時
間電圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、
電源を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。さら
に、上記発熱素子を同一条件で100回繰り返して使用
したが、発熱体の剥離は全く発生せず、また定常状態と
なる温度にも変化は見られなかった。
【0058】実施例7 以下の組成: ・珪素樹脂(TSE−3221:東芝シリコーン(株)製)91.0重量% ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 9.0重量% のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して平均直径1000μmの膨張黒鉛粉末
11重量部を加え、プラネタリーミキサーで混練し、さ
らに三本ロールに通して導電性組成物を得た。
【0059】得られた導電性組成物をSUS200メッ
シュのスクリーンを用いてポリアリレート樹脂フィルム
(厚さ100μm)上に200×100mmのサイズに
スクリーン印刷し、150℃で30分間熱処理したとこ
ろ、非常に平滑な面状発熱体(膜厚15μm)が得られ
た。そして、その面状発熱体の両端に銀ペーストで電極
を印刷して発熱素子とした。得られた発熱素子の室温で
の電極両端抵抗は210Ωであった。
【0060】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して20秒後に145℃に達し、以後
は145℃±2℃で温度一定となった。そのまま50時
間電圧をかけ続けたが、特に変化はなかった。その後、
電源を一旦切って発熱素子を室温まで冷却した。
【0061】上記の発熱から冷却にかけての温度と素子
抵抗値(全抵抗値)との関係を測定し、結果を図1に示
した。図1中、実線(1)は温度上昇時の抵抗増加曲線
であり、破線(2)は温度低下時の抵抗減少曲線であ
る。図1から明らかなように、本実施例の発熱素子の抵
抗は120℃付近から急激に上昇し、温度が自己制御さ
れた。また、温度上昇時と低下時のヒステリシスは非常
に小さく、室温での全抵抗値は通電の前後でほぼ一致し
た。
【0062】さらに、上記発熱素子を同一条件で100
回繰り返して使用したが、発熱体の剥離は全く発生せ
ず、また定常状態となる温度にも変化は見られなかっ
た。
【0063】比較例1 膨張黒鉛粉末の添加量を、ワニス状混合物100重量部
に対して4.0重量部とした以外は実施例1と同様にし
て発熱素子を得た。
【0064】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して120秒後に80℃となり、その
まま50時間電圧をかけ続けたところ、温度はほぼ一定
に保持された。しかしながら、電源を一旦切って発熱素
子を室温まで冷却し、次いで再び上記電圧をかけたとこ
ろ、温度上昇は少なく、5分後でも35℃にしかなら
ず、その後繰り返して使用することはできなかった。
【0065】比較例2 球状カーボンの添加量を、ワニス状混合物100重量部
に対して100重量部とした以外は実施例4と同様にし
て発熱素子を得た。
【0066】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して20秒後に70℃となったが、そ
の後も徐々に温度が上昇して発熱体が熱変形したために
継続して使用できなくなった。
【0067】比較例3 以下の組成: ・ポリウレタン樹脂(タケネートB−7013) 80.0重量% ・カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600JD)20.0重量% のワニス状混合物を調製し、混練して導電性組成物を得
た。そして、この導電性組成物を用いた以外は実施例4
と同様にして発熱素子を得た。
【0068】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して40秒後に80℃に達したが、発
熱面の温度が局部的に上昇し、約1時間後に発熱体が一
部溶融し始めたために継続して使用できなくなり、電源
を切らざるを得なかった。
【0069】比較例4 比較例3のワニス状混合物100重量部に対して、人造
黒鉛(粉砕粉:平均直径12μm)20重量部を加え、
プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロールに通
して導電性組成物を得た。そして、この導電性組成物を
用いた以外は実施例4と同様にして発熱素子を得た。
【0070】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ局部的な発熱が多く、120秒後でも面上
に30〜80℃のバラツキがあった。これは、黒鉛の不
均一分散と膜厚のバラツキの為に均一な発熱が得られな
かったものと考えられる。
【0071】比較例5 平均粒径50μmの球状カーボンを使用した以外は実施
例4と同様にして発熱素子を得た。
【0072】次に、上記の発熱素子に100Vの電圧を
かけたところ発熱して30秒後に65℃に達し、以後は
65℃±15℃で温度一定となったが、膜厚の不均一に
起因すると考えられる膜の亀裂および剥離が約10時間
後に生じ、使用できなくなった。
【0073】比較例6 平均直径8000μmの膨張黒鉛粉末を使用した以外は
実施例1と同様にして導電性組成物の調製を試みたが、
ワニス状混合物とのなじみが悪く、均質な組成物を得る
ことができなかった。
【0074】実施例8 以下の組成: ・ポリカルボシラン(平均分子量800) 52.6重量% [日本カーボン(株)製] ・珪素樹脂(Q1−4010) 13.1重量% [東レ・ダウコーニング(株)製] ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 7.8重量% [電気化学工業(株)製] ・溶剤(ダイアナソルベントNo.2) 26.5重量% [出光興産(株)製] のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して膨張黒鉛粉末(平均直径4500μ
m、FL−GA:日本カーボン(株)製)11.8重量
部および球状カーボン(平均粒径10μm、MC−10
20:日本カーボン(株)製)78.7重量部を加え、
プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロールに1
時間通して導電性組成物を得た。
【0075】他方、以下の組成: ・珪素樹脂(GR−908:昭和電工(株)製) 9.0重量% ・銀粉(TCG7:徳力化学研究所製) 35.7重量% ・銀粉(E20:徳力化学研究所製) 15.3重量% ・溶剤(酢酸エチルカルビトール) 40.0重量% の混合物を調製した。この混合物をプラネタリーミキサ
ーで混練し、さらに三本ロールに30分間通して銀電極
用ペーストを得た。
【0076】次に、得られた導電性組成物をSUS20
0メッシュのスクリーンを用いてポリイミドフィルム上
に200×50mmのサイズにスクリーン印刷し、22
0℃で30分間熱処理したところ、非常に平滑な面状発
熱体(膜厚30μm)が得られた。そして、その面状発
熱体にくし形の電極(電極間距離14mm)を上記の銀
ペーストを用いて印刷して発熱素子とした。得られた発
熱素子の室温での電極両端抵抗は19Ωであった。
【0077】次に、上記の発熱素子に60Vの電圧をか
けたところ発熱して20秒後に190℃となり、以後は
190℃±3℃で温度一定となった。更に、80Vまで
電圧を上げると215℃±3℃で温度一定となり、10
0Vまで電圧を上げても215℃±3℃は変わらず、温
度が良好に自己制御されることが確認された。また、上
記の発熱素子に60Vの電圧をかけた状態で100時間
通電を続けたが、特に保持温度及びそのバラツキについ
ての変化はなかった。その後、電源を一旦切って5分放
置後再び5分通電する操作を50回繰り返して行なった
が、発熱体の剥離は全く発生せず、また昇温時間や保持
温度等の性能上の変化も見られなかった。
【0078】実施例9 珪素樹脂(GR−908)の代わりに珪素樹脂(GR−
100:昭和電工(株)製)を用いた以外は実施例8と
同様にして得た銀電極用ペーストを表面をアルミナ処理
したアルミパイプ(肉厚1mm、外径12mmφ×35
0mmL)の外周面上に印刷し、図2に示すくし形の電
極(電極間距離2.7mm)を電源接続用の電極として
形成した。
【0079】次に、実施例8で用いたものと同様の導電
性組成物を該組成物100重量部に対して150重量部
の揮発性溶剤(ダイアナソルベントNo.2)で希釈
し、スプレーガンを用いて上記パイプの外周面上に図2
に示すように長さ300mmの被膜を形成し、150℃
で30分間熱処理したところ、表面の平滑なパイプ状に
成形された面状発熱体(膜厚30μm)を有するパイプ
状ヒーターが得られた。得られた発熱体の室温での電極
両端抵抗は31Ωであった。また、その発熱体の環境温
度変化に対する抵抗変化は正であり、温度自己制御性が
あることが確認された。
【0080】上記発熱体にAC100Vの電圧をかけた
ところ発熱して3分後に213℃に達し、以後は213
℃±1℃で温度一定となった。また、発熱体表面の温度
分布も全面213℃±1℃の範囲におさまり、120時
間連続で通電しても発熱特性に変化がなく安定してい
た。
【0081】実施例10 以下の組成: ・珪素樹脂(Q1ー4010) 59.2重量% ・珪素樹脂(TSE−3221:東芝シリコーン(株)製)39.5重量% ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 1.3重量% のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して膨張黒鉛粉末(平均直径4500μ
m、FL−GA)2.0重量部および球状カーボン(平
均粒径10μm、MC−1020)62.5重量部を加
え、プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロール
に2時間通して導電性組成物を得た。
【0082】次に、ポリエステル系銀ペースト(XA−
527:藤倉化成(株)製)を表面をアルミナ処理した
アルミパイプ(肉厚1mm、外径12mmφ×260m
mL)の外周面上に印刷し、図2に示すくし形の電極
(電極間距離2.7mm)を電源接続用の電極として形
成した。
【0083】更に、上記で得られた導電性組成物を該組
成物100重量部に対して200重量部の揮発性溶剤
(ダイアナソルベントNo.2)で希釈し、曲面印刷機
を用いて上記パイプの外周面上に図2に示すように長さ
220mmの被膜を形成し、150℃で30分間熱処理
したところ、表面の平滑なパイプ状に成形された面状発
熱体(膜厚30μm)を有するパイプ状ヒーターが得ら
れた。得られた発熱体の室温での電極両端抵抗は20Ω
であった。また、その発熱体の環境温度変化に対する抵
抗変化は正であり、温度自己制御性があることが確認さ
れた。
【0084】上記発熱体にAC100Vの電圧をかけた
ところ発熱して3分後に121℃に達し、以後は121
℃±1℃で温度一定となった。また、発熱体表面の温度
分布も全面121℃±4℃の範囲におさまった。
【0085】次に、上記発熱体の全表面を図3に示すよ
うにフッ素樹脂チューブ(肉厚0.3mm、内径13m
mφ×230mmL、GFチューブ:グンゼ(株)製)
で覆い、100℃で10分間熱処理したところ、フッ素
樹脂チューブの収縮により発熱部がオーバーコートさ
れ、摺動性の優れた保護膜を有するパイプ状ヒーターが
得られた。なお、図3においては膜厚を図示するために
厚み方向に拡大してある。上記の発熱体に再びAC10
0Vの電圧をかけたところ、発熱体特性の変化は全くな
く、発熱体及び保護膜の剥離等も生じなかった。
【0086】参考例1 以下の組成: ・ポリイミド樹脂(CT−4150) 18.1重量% [東芝ケミカル(株)製] ・カーボンブラック(アセチレンブラック) 1.5重量% ・溶剤(Nーメチルー2ーピロリドン) 80.4重量% のワニス状混合物を調製した。上記ワニス状混合物10
0重量部に対して膨張黒鉛粉末(平均直径4500μ
m、FL−GA)2.2重量部および球状カーボン(平
均粒径10μm、MC−1020)14.5重量部を加
え、プラネタリーミキサーで混練し、さらに三本ロール
に2時間通して導電性組成物を得た。
【0087】そして、この導電性組成物を用いた以外は
実施例9と同様にしてパイプ状に成形された面状発熱体
を有するパイプ状ヒーターを得た。
【0088】この発熱体にAC100Vの電圧をかけた
ところ発熱して3分後に212℃に達し、以後は212
℃±1℃で温度一定となり、発熱体表面の温度分布も2
12℃±1℃の範囲におさまった。しかしながら、この
発熱体の温度係数は負であり、自己制御性能が無かっ
た。
【0089】参考例2 電源接続用の電極をウレタン系銀ペースト(DD−15
50:京都エレックス(株)製)を用いて作成した以外
は実施例9と同様にしてパイプ状に成形された面状発熱
体を有するパイプ状ヒーターを得た。
【0090】この発熱体にAC100Vの電圧をかけた
ところ発熱して実施例9と同様の発熱特性となった。し
かし、そのまま100時間電圧をかけ続けたところ、電
極部分が薄茶色に変色し、局部的な温度上昇が起こり、
さらにその数時間後にショートが生じて発熱温度が低下
した。
【0091】参考例3 以下の組成: ・ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT−2170) 40重量% [三菱瓦斯化学(株)製] ・キシレン−エチルメチルケトン(MEK)混合溶剤 60重量% のワニス状混合物を調製した。スプレーガンを用いて上
記ワニス状混合物の被膜を発熱部上に形成することによ
って発熱体の保護膜を形成した以外は実施例10と同様
にしてパイプ状ヒーターを得た。しかし、硬化後に上記
保護膜は剥離を生じた。
【0092】以上の各実施例の結果から明らかなよう
に、本発明の導電性組成物においては従来はカーボンブ
ラックと組み合わせて使用困難であった一般的な樹脂を
用いたにも拘らず、得られた面状発熱体はいずれも、ベ
ースに対する被覆力に優れ、しかも一定温度未満では導
電性を有するが一定温度を超えると著しく高電気抵抗と
なる(正の対温度電気抵抗性を有する)、優れた温度自
己制御性能を有するものであった。また、上記本発明の
面状発熱体は耐熱ヒステリシス性を有しており、繰り返
し使用しても安定なものであった。かかる良好な性能
は、前記(A)成分および(B)成分カーボンブラック
がいずれも薄膜中で均一に分散しており、均質な抵抗分
布が保持されていること、並びにそれらの導電性と
(B)成分樹脂の温度による可塑性との良好なコンビネ
ーションにより達成されるものと考えられる。
【0093】また、上記本発明の導電性組成物を用いて
得た本発明の発熱体は、温度分布が均一であり、約20
秒未満で保持温度に達し、さらに30℃〜250℃とい
う広い範囲にて保持温度を自由に設計できるものであっ
た。更に、上記本発明の発熱体は基材との密着性が良
く、上記の優れた特性を有する薄膜の自己制御性パイプ
状発熱体等の任意の形状の発熱体が作成可能であった。
【0094】これに対して、本発明の範囲外の導電性組
成物を用いて得た各比較例の面状発熱体は、温度制御性
能、ベースに対する付着性、制御温度の安定性(再現
性)のうちの少なくともいずれかの点で劣るものであっ
た。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の導電性組
成物を使用すれば、熱可塑性樹脂の種類にあまり制限さ
れることなくベース上に強固でかつ均質な薄膜(面状発
熱体)を容易に形成でき、しかもヒステリシスが極めて
少なく再現性の良い高性能の温度自己制御性発熱体を得
ることが可能となる。また、本発明の導電性組成物にあ
っては、本発明の範囲内で組成等を適宜選択することに
よって、30〜250℃といった非常に広い温度範囲に
亙って様々な自己制御温度を有する発熱体を容易に得る
ことが可能であり、特に従来は得ることが比較的困難で
あった自己制御温度の高い発熱体であっても非常に耐久
性および再現性の良い面状発熱体を得ることが可能とな
る。
【0096】更に、本発明の面状発熱体は均熱性に優
れ、保持温度までの到達時間が短く、さらに制御可能な
温度範囲が上述のように広いため、本発明の面状発熱体
には多くの用途がある。そして、本発明の導電性組成物
を用いることによって基材との密着性並びに成形性に優
れる面状発熱体が容易に得られるため、本発明によって
例えばOA機器部品用の温度自己制御性を有するパイプ
状ヒーター等が容易に得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる一実施例の発熱素子について
の発熱から冷却にかけての温度と素子抵抗値(全抵抗
値)との関係を示すグラフである。
【図2】 本発明の温度自己制御性パイプ状ヒーターの
一実施態様の斜視図である。
【図3】 本発明の温度自己制御性パイプ状ヒーターの
一実施態様の部分縦断面図である。
【符号の説明】
1:温度上昇時の抵抗増加曲線、2:温度低下時の抵抗
減少曲線、3:絶縁性パイプ、4:銀電極、5:発熱
体、6:保護膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01C 7/00 H01C 7/00 J H05B 3/20 305 H05B 3/20 305 3/42 3/42 (56)参考文献 特開 平5−39442(JP,A) 特開 平4−306582(JP,A) 特開 平2−304892(JP,A) 特開 昭63−270829(JP,A) 特開 平4−328288(JP,A) 特開 平3−280381(JP,A) 特開 昭63−24581(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05B 3/14 C08K 7/18 C09D 5/24 H01B 1/00 H01B 1/24 H01C 7/00 H05B 3/20 305 H05B 3/42

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒径2〜30μmの球状カーボンお
    よび/または平均直径5000μm以下の膨張黒鉛粉末
    からなる(A)成分と、熱可塑性樹脂およびカーボンブ
    ラックを含有するワニス状混合物からなる(B)成分と
    を、(B)成分100重量部に対して(A)成分5〜9
    5重量部の比率で含有することを特徴とする温度自己制
    御性導電性組成物。
  2. 【請求項2】 前記球状カーボンが、(イ)球状の不溶
    融性フェノール樹脂を1500〜2200℃で炭化した
    もの、(ロ)カーボン微粉体および/または加熱により
    炭化する材料で表面被覆した球状の不溶融性フェノール
    樹脂を1500〜2200℃で炭化したもの、および
    (ハ)カーボン微粉体と加熱により炭化する材料との混
    合物の球状成形体を1500〜2200℃で炭化したも
    のから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とす
    る、請求項1に記載の導電性組成物。
  3. 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂がポリカルボシラン、
    ケイ素樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリウ
    レタン樹脂およびポリエステル樹脂から選ばれる少なく
    とも一種であることを特徴とする、請求項1または2に
    記載の導電性組成物。
  4. 【請求項4】 前記熱可塑性樹脂がポリカルボシランと
    ケイ素樹脂との混合物、あるいはケイ素樹脂であること
    を特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記
    載の導電性組成物。
  5. 【請求項5】 前記ワニス状混合物が前記熱可塑性樹脂
    を90〜99重量%、前記カーボンブラックを1〜10
    重量%含有することを特徴とする、請求項1〜4のうち
    のいずれか1項に記載の導電性組成物。
  6. 【請求項6】 前記ワニス状混合物が溶剤および/また
    は分散剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1
    〜5のうちのいずれか1項に記載の導電性組成物。
  7. 【請求項7】 前記溶剤がパラフィン系溶剤、酢酸カル
    ビトール、ジメチルホルムアミドおよびγ−ブチルラク
    トンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とす
    る、請求項6に記載の導電性組成物。
  8. 【請求項8】 前記ワニス状混合物が前記熱可塑性樹脂
    および溶剤を90〜99重量%、前記カーボンブラック
    および分散剤を1〜10重量%含有することを特徴とす
    る、請求項6または7に記載の導電性組成物。
  9. 【請求項9】 前記請求項1〜8のうちのいずれか1項
    に記載の導電性組成物を面状に成形したものを熱処理し
    て得られたものであることを特徴とする温度自己制御性
    面状発熱体。
  10. 【請求項10】 パイプ状絶縁性基材と、 前記請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の導電性
    組成物をパイプ状絶縁性基材上に面状に成形したものを
    熱処理して得られた発熱体と、 該発熱体に通電するための電極とを具備することを特徴
    とする温度自己制御性パイプ状ヒーター。
  11. 【請求項11】 前記発熱体上に被膜状絶縁材料からな
    る保護膜をさらに具備することを特徴とする温度自己制
    御性パイプ状ヒーター。
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