JP2777690B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

樹脂組成物

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂組成物、
更に詳しくはワラストナイトが配合された熱可塑性樹脂
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】熱可塑性樹脂は、軽量で成形
加工が容易であることから各種の用途に使用されてい
る。また、近年、樹脂材料に強度や弾性率、耐熱性とい
った特性を付与して有用性を高める研究が盛んに進めら
れている。樹脂にこのような特性を付与する方法として
は、無機充填剤を配合する方法が一般によく知られてい
る。特に繊維強化プラスチック(FRP、FRTP)に
見られるように、樹脂系構造用複合材料において繊維状
充填剤の果たす役割は極めて重要なものとなっている。
【0003】繊維状補強性充填剤としてこれまでに開発
されてきたものとしては、ガラス繊維、アルミナ繊維、
チタン酸カリウム等のウィスカー等がある。しかしなが
ら、従来提案されてきた繊維状乃至針状の充填剤は、い
ずれも高価に過ぎ現実の利用分野が制限されるものであ
ったり、表面平滑性に劣るものであったり、着色が難し
かったり、補強効果が不十分であったりするという欠点
を有している。
【0004】また、ワラストナイトを補強性充填剤とし
て用いることも既に提案されている(例えば特公昭51
−8412号公報、特公昭61−39345号公報、特
公昭63−22221号公報、特公平1−59300号
公報、特開平3−100062号公報等)。しかしなが
ら、従来においてはワラストナイトは比較的粗粒の塊状
物の混入したものがプラスチック用充填剤として使用さ
れているに過ぎず、低異方性・低補強性の繊維状充填剤
として位置づけられているに過ぎなかった。従って、ワ
ラストナイトは比較的安価な材料である上、着色が容易
であり、低誘電性である等の好ましい特性を有している
ものであるが、ワラストナイトは元来補強性が不十分で
あると考えられていたため、その用途範囲は極めて限ら
れたものであった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ワラスト
ナイトの補強性能とワラストナイトの繊維形状、繊維組
成等との関係につき鋭意研究を重ねた結果、ワラストナ
イトに含有される微量成分の含有量が繊維形状の生成に
大きく関係しており、特定の微量成分を特定量含有する
ワラストナイト繊維が樹脂中への混練時に折損し難く、
補強性能が大きく、安価な補強性材料として実用性の高
いものであることを見い出し、ここに本発明を完成する
に至った。
【0006】即ち、本発明は、ワラストナイトを主成分
とする繊維であって、微量成分としてFe2 3 を0.
2〜0.5重量%及びAl2 3 を0.5〜0.9重量
%含むワラストナイト繊維と熱可塑性樹脂とを含有する
ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に係る。
【0007】本発明において、熱可塑性樹脂なる語に
は、通常の熱可塑性樹脂に加えて熱可塑性エラストマー
が包含される。
【0008】本発明において用いられる熱可塑性樹脂と
しては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹
脂、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネ
ート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルフ
ィド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリ
エーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げ
ることができる。これらの樹脂は、単独で用いてもよ
く、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンのように2
種以上を組み合わせて使用してもよい。尚、上記熱可塑
性樹脂を2種以上を組み合わせる際に、ポリカーボネー
トとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポ
リカーボネートとポリエチレンの組合せのような非相溶
性の樹脂を組み合わせる場合には、双方の樹脂に相溶性
のある相溶化剤を配合することもできる。斯かる相溶化
剤としては、従来公知のものを広く使用することができ
る。
【0009】また、熱可塑性エラストマーとしては、例
えば、ハードセグメントにポリスチレンを用い、ソフト
セグメントにポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添
加ポリブタジエン等を用いたポリスチレン系熱可塑性エ
ラストマー、ハードセグメントにポリエチレン又はポリ
プロピレンを用い、ソフトセグメントにエチレン−プロ
ピレン共重合ゴムを用いたポリオレフィン系熱可塑性エ
ラストマー、ハードセグメントにポリ塩化ビニルを用
い、ソフトセグメントにポリ塩化ビニルを用いたポリ塩
化ビニル系熱可塑性エラストマー、ハードセグメントに
ポリウレタン樹脂を用い、ソフトセグメントにポリエー
テル又はポリエステルを用いたポリウレタン系熱可塑性
エラストマー、ハードセグメントにポリアミドを用い、
ソフトセグメントにポリエーテル又はポリエステルを用
いるポリアミド系熱可塑性エラストマー等を挙げること
ができる。
【0010】本発明に用いられる繊維は、CaO・Si
2 で示されるワラストナイトを主成分とするものであ
る。本発明では、ワラストナイトは、天然に産出するも
のをそのまま又は粉砕・分級して用いることができる。
また、合成したワラストナイトも勿論使用可能である。
尚、ワラストナイトを合成する際には、原料中の微量成
分の量を適宜調整してワラストナイト中に含まれるFe
2 3 及びAl2 3の含有量をそれぞれ0.2〜0.
5重量%、0.5〜0.9重量%とすることが重要であ
る。
【0011】ワラストナイトは、産地や製法、成分比、
粉砕方法等によりアスペクト比に差を生じるが一般的に
アスペクト比の大きなβ型のワラストナイトが補強性能
において優れていることが知られている。本発明者は、
これらのワラストナイトの中でも、微量成分としてFe
2 3 を0.2〜0.5重量%及びAl2 3 を0.5
〜0.9重量%含有するものが、特に補強性能に優れて
いることを見い出した。上記微量成分が本発明の範囲を
逸脱するワラストナイトは補強効果に劣っていたり、樹
脂に混練する際に折れやすかったりする欠点があり、本
発明の所期の目的を達成することは不可能である。
【0012】本発明で用いられるワラストナイトは、平
均繊維長が20〜50μm、平均繊維径が0.05〜5
μm、アスペクト比の平均が8以上100未満のものが
好適である。本発明で用いられる特に好適なワラストナ
イトは、微量成分としてFe2 3 を0.4重量%、A
2 3 を0.6重量%含有し、平均繊維径が2.0μ
m、平均繊維長が25μmのワラストナイトであり、こ
れはカナダで産出され現在米国で市販されている。この
ワラストナイトに限らず、特定成分が特定量含有する本
発明のワラストナイトはインドやフィンランド等で自然
に産出するものであり、容易に入手することができる。
【0013】本発明で用いられる繊維中に、副成分とし
て混在させることができるものとしては、例えばガラス
繊維、カーボン繊維、芳香族ポリアミド繊維、アルミナ
繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、酸化チタン繊維等の
繊維状物、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、ほ
う酸アルミニウム、チタン酸アルカリ金属等のウィスカ
ー、更にはゾノトライト、プロセスド ミネラル ファ
イバー(PMF)、石膏繊維、ドーソナイト、繊維状マ
グネシウムオキシサルフェート(MOS)、フォスフェ
ートファイバー、セピオライト等の柱状物等を例示する
ことができるが、これらに限定されず、本発明の目的を
損なわない範囲で広く公知の繊維状物から選択すること
ができる。
【0014】上記熱可塑性樹脂及び/又は熱可塑性エラ
ストマーに対する上記繊維の配合割合としては、樹脂と
繊維との合計重量(樹脂組成物)に対し、繊維を5〜6
0重量%とすることが必要である。上記繊維の配合量が
5重量%より極端に少なくなると、得られる成形品の機
械物性の改良効果、耐熱変形性の改良効果等が充分でな
く、一方60重量%を極端に上回ると樹脂への溶融混練
が困難になったりこの混練操作の際に粘度上昇を招いて
成形が著しく困難になるという問題が生じるので好まし
くない。本発明においては、上記繊維を10〜50重量
%の割合で配合するのが望ましい。
【0015】本発明においては、本発明の目的を損なわ
ない範囲で、タルク、ピロリン酸カルシウム等の微粒子
状充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、染
料、顔料等の着色剤、フッ素樹脂等の潤滑性付与剤、離
型改良剤、帯電防止剤等の通常の添加剤を適宜配合する
ことができる。
【0016】本発明の樹脂組成物を製造に当っては、従
来公知の方法を広く用いることができる。例えば、熱可
塑性樹脂に必要に応じて上記の添加剤のうちの1種又は
2種以上をタンブラー又はリボンミキサー等を用いて混
合した後、二軸押出機を用いて溶融混練しながら途中
で、ワラストナイトを主成分とする繊維を所定量供給混
練し、ペレット化するのがよい。
【0017】
【発明の効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高強
度、高弾性率を備え、表面平滑性、寸法精度に優れてい
るため成形用材料として極めて有用性の高いものであ
る。従って本発明の樹脂組成物は、生活用品を始め、電
気製品、自動車部品、建材部品等の幅広い用途に優れた
成形用材料として好適に利用され得る。
【0018】
【実施例】以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明を更
に詳しく説明する。尚、本実施例及び比較例で用いた試
験方法及び試験条件は次の通りである。即ち、引張強度
及び破断伸びはJIS K−7113により測定した。
曲げ強度及び曲げ弾性率はJIS K−7203により
測定した。アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き)はJIS
K−7110により測定した。表面粗さはサーフコム
300B((株)東京精密製)を用いて、中心線平均粗
さRaをもって表示した。ハンター白度は測色色差計Z
−1001DP(日本電色工業(株))を用いて測定し
た。 実施例1〜3及び比較例1〜4 熱可塑性エラストマーとして熱可塑性ポリウレタン(エ
ラストランXE−2002、日本エラストラン製)を用
いた。
【0019】またワラストナイトとして次の3種類のも
のを使用した。 ワラストナイトA:ワラストナイト中に微量成分として
Fe2 3 を0.4重量%、Al2 3 を0.6重量%
含有し、平均繊維径は2.0μm、平均繊維長25μm
の米国で市販されているもの。 ワラストナイトB:ワラストナイト中に微量成分として
Fe2 3 を0.18重量%、Al2 3 を0.8重量
%含有し、平均繊維径4.5μm、平均繊維長13μm
のwicroll−10(フィンランド産、Parte
k Minerals(株)社製)。 ワラストナイトC:ワラストナイト中に微量成分として
Fe2 3 を0.2重量%、Al2 3 を0.46重量
%含有し、平均繊維径6.0μm、平均繊維長132μ
mのダイケンファイバーナイトHG(中国産、山陽興業
(株)販売)。
【0020】上記熱可塑性ポリウレタンにワラストナイ
トA、B又はCを7〜30重量%配合したペレットを二
軸押出機(池貝鉄工(株)、PCM45)を用いてシリ
ンダー温度220℃にて熱可塑性ポリウレタンを溶融し
た後、各ワラストナイトを途中添加(サイドフィード)
する方式にてストランドカットを行ない試作した。これ
らのペレットを、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、
FS−150)を用いてシリンダー温度210℃、金型
温度40℃にて射出成形を行ない、各樹脂組成物の物性
測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】 表1より熱可塑性ポリウレタンに本発明の微量成分組成
を有するワラストナイト(ワラストナイトA)を5重量
%以上配合することによってのみ、機械物性に顕著な改
良効果が得られること、特に曲げ弾性率の向上効果が顕
著であることが判る。 実施例4〜7及び比較例5〜13 ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)としてジュ
ラネックス2000(ポリプラスチックス(株)販売)
を使用し、実施例1〜3と同様に押出機シリンダー温度
250℃にて、またポリアミド樹脂(PA−66)とし
てウベナイロン2020UW1(宇部興産(株)販売)
を使用して、押出機シリンダー温度280℃にてそれぞ
れ樹脂組成物(ペレット)を試作した。PBT樹脂組成
物は、シリンダー温度250℃、金型温度80℃及び成
形圧力700kg/cm2 にて、またPA−66樹脂組
成物は、シリンダー温度270℃、金型温度80℃及び
成形圧力800kg/cm2 にて射出成形を行ない、各
樹脂組成物の物性測定を行なった。その結果をPBT樹
脂組成物については表2に、PA−66樹脂組成物につ
いては表3にそれぞれ示す。尚、ここでは比較例として
ワラストナイトB及びCの他に、ワラストナイト中に微
量成分としてFe2 3 を1.0重量%、Al2 3
1.0重量%含有し、平均繊維径20.0μm、平均繊
維長77μmの米国で販売されているもの(米国産、
「ワラストナイトD」という)をそれぞれ使用し、PA
−66樹脂組成物はその他にチタン酸カリウムウィスカ
ティスモD−102(大塚化学(株)製)、着色用カー
ボンブラック グレインブラックNB−15(オオタ化
成(株)製)を実施例及び比較例で使用した。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】 表2よりPBT樹脂についても熱可塑性ポリウレタンと
同様に、ワラストナイトの微量成分含有組成による繊維
形状の差により補強性能が異なることが明らかである。
また、ワラストナイトAの50重量%配合で剛性が向上
することが判る。更に表面平滑性についても、本発明の
ワラストナイトAは、他のワラストナイトより一段と良
好であることが判る。
【0024】また、表3よりポリアミド樹脂組成物につ
いても、表1や表2と同様の傾向が得られた。またワラ
ストナイトより補強効果の大きいチタン酸カリウムウィ
スカを併用すると補強性が更に向上することが実施例7
より明らかである。表面平滑性もワラストナイトA単独
よりも更に平滑性を増すことが認められた。着色性につ
いては、ハンター白度から比較例13は機械物性で最も
良好な結果を示すものの、ハンター白度の値が大きく、
黒色に着色させ難いことが判明した。それに比較して、
ワラストナイトはハンター白度が小さく非常に着色させ
易いことが確認できた。また実施例7に示す如く本発明
の形状のワラストナイトにチタンカリウムウィスカを併
用すると、比較的着色がし易くなり、機械強度も良好と
なることから、非常に実用性が高いことが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いたワラストナイトAの繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図2】実施例で用いたワラストナイトBの繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図3】実施例で用いたワラストナイトCの繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。
【図4】実施例で用いたワラストナイトDの繊維の形状
を示す顕微鏡写真である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワラストナイトを主成分とする繊維であ
    って、微量成分としてFe2 3 を0.2〜0.5重量
    %及びAl2 3 を0.5〜0.9重量%含むワラスト
    ナイト繊維と熱可塑性樹脂とを含有することを特徴とす
    る熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 ワラストナイト繊維の平均繊維長が20
    〜50μm、平均繊維径が0.05〜5μm、アスペク
    ト比の平均が8以上100未満である請求項1に記載の
    熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 ワラストナイトを主成分とする繊維を5
    〜60重量%及び熱可塑性樹脂を95〜40重量%含有
    する請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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