JP2763447B2 - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワードプロセッサやフ
ァクシミリ等のプリンタ機構に組み込まれるサーマルヘ
ッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来、ワードプロセッサ等のプリンタ機構
に組み込まれるサーマルヘッドは、アルミナセラミック
ス等の電気絶縁性材料から成る基板上に、ポリイミド樹
脂等から成る蓄熱層と、窒化タンタル等から成る発熱抵
抗体と、アルミニウム等から成る一対の導電層とを順次
被着させた構造を有しており、前記一対の導電層間に所
定の電力を印加し、発熱抵抗体を所定の温度にジュール
発熱させるとともに該発熱した熱を感熱紙等に伝導さ
せ、感熱紙等に印字画像を形成することによってサーマ
ルヘッドとして機能する。
【0003】かかる従来のサーマルヘッドは、通常、以
下の方法によって製作される。
【0004】即ち、 (1)まず、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料
から成る大型の基板を準備する。
【0005】(2)次に、前記大型基板の上面全体にポ
リイミド樹脂となる液状樹脂をスピンコート法等により
一定厚みに塗布させるとともにこれを300℃の温度で
熱硬化させ、大型基板の上面全体にポリイミド樹脂から
成る蓄熱層を被着させる。
【0006】(3)次に、前記大型基板に被着させた蓄
熱層上に発熱抵抗体と一対の導電層とを薄膜形成技術に
より所定パターンに形成する。
【0007】(4)そして最後に前記大型基板に垂直方
向の力を印加(折り曲げ応力を印加)し、大型基板をそ
の上面に被着させた蓄熱層とともに切断させ、これによ
って所定形状のサーマルヘッドが得られる。
【0008】尚、前記サーマルヘッドの製作において大
型基板から所定形状のサーマルヘッドを得るのは、最初
から所定形状の基板を用いてサーマルヘッドを製作した
場合、基板の上面にポリイミド樹脂となる液状樹脂をス
ピンコート法により塗布し蓄熱層を被着させる際、蓄熱
層の外周部における厚みが厚くなって蓄熱量にバラツキ
が発生し、感熱紙等に鮮明な印字画像を形成することが
困難となるためであり、大型基板の上面にスピンコート
法により蓄熱層を被着させ、その厚みが厚い領域を除去
するようにして所定形状に切断すれば、切断された所定
形状の基板上面にほぼ均一厚みの蓄熱層が被着され、蓄
熱層における蓄熱量を均一として感熱紙等に鮮明な印字
画像を形成することが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来のサーマルヘッドの製造方法においては、蓄熱層を構
成するポリイミド樹脂の引張強さが12kg/mm2
上であることから、上面に蓄熱層を被着させた大型基板
に折り曲げ応力を印加し、所定形状のサーマルヘッドに
切断する際、基板は脆弱なアルミナセラミックスより成
るため簡単に折れて容易に切断されるものの蓄熱層は伸
びて容易に切断されず、蓄熱層を切断するために別途切
断手段が必要となる欠点を有していた。
【0010】また大型基板を所定形状のサーマルヘッド
に切断する際、蓄熱層が強い力で引っ張られると蓄熱層
と基板との間に部分的な剥離が発生し、このようなサー
マルヘッドをプリンタ機構に組み込んで印字を行った場
合、熱サイクルの印加によって前記蓄熱層と基板との間
に発生した部分的な剥離がサーマルヘッド全体に広がっ
てしまい、その結果、サーマルヘッドとしての機能が喪
失されてしまうという欠点を有していた。
【0011】
【発明の目的】本発明は、上記欠点に鑑み案出されたも
のであり、その目的は蓄熱層と基板との間における剥離
の発生を皆無としたサーマルヘッドを簡単な作業で得る
ことができるサーマルヘッドの製造方法を提供すること
にある。
【0012】
【問題点を解決するための手段】本発明は、蓄熱層を有
する絶縁基板上に発熱抵抗体と導電層とを被着させたサ
ーマルヘッドであって、前記蓄熱層を有する絶縁基板が
下記(a)及び(b)の工程より形成されていることを
特徴とするものである。
【0013】(a)電気絶縁材料から成る大型基板の上
面に、引張強さが10kg/mm2 以下、熱伝導率が
1.0×10-3cal/cm・sec・℃以下となる液
状樹脂を塗布するとともに該液状樹脂を熱硬化させて大
型基板の上面に蓄熱層を被着させる工程。
【0014】(b)前記大型基板に折り曲げ応力を印加
し、該大型基板をその上面に被着させた蓄熱層とともに
切断させ、上面に蓄熱層を有する所定形状の絶縁基板と
成す工程。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付した図面に基づ
いて説明する。
【0016】図1は本発明の一実施例により製造したサ
ーマルヘッドの断面図を示し、1は絶縁基板、2は蓄熱
層、3は樹脂保護層、4は発熱抵抗体、5は一対の導電
層、6は保護層であり、絶縁基板1上に蓄熱層2、樹脂
保護層3、発熱抵抗体4、導電層5及び保護層6が順次
被着されている。
【0017】前記絶縁基板1はアルミナセラミックス等
の電気絶縁性材料から成り、上面に発熱抵抗体4等を支
持するとともに、サーマルヘッドの温度を感熱紙等に良
好な印字画像を形成するに必要な温度に制御する作用を
為す。
【0018】また前記絶縁基板1の上面には、熱伝導率
が1.0×10-3cal/cm・sec・℃の樹脂から
成る蓄熱層2が15〜40μmの厚みに被着されてお
り、該蓄熱層2は発熱抵抗体4の発する熱を適当な温度
となるように蓄積し、サーマルヘッドの熱応答特性を良
好に保つ作用を為す。
【0019】前記蓄熱層2はまたその上面にジルコニア
等から成る樹脂保護層3が被着されており、該樹脂保護
層3は発熱抵抗体4の発する熱を適度に拡散緩和し、該
拡散緩和した熱をポリイミド等の樹脂から成る蓄熱層2
に伝導させることによって蓄熱層2の軟化変形を有効に
防止する作用を為す。
【0020】尚、前記ジルコニア等から成る樹脂保護層
3は、従来周知のスパッタリング法等を採用することに
よって蓄熱層2の上面全体に1乃至5μmの厚みに被着
される。
【0021】また前記樹脂保護層3の上面には、発熱抵
抗体4が被着されており、更に発熱抵抗体4上には間に
一定の間隔をもった一対の導電層5が被着されている。
【0022】前記発熱抵抗体4は例えば窒化タンタル等
から成り、それ自体が所定の電気抵抗率を有しているた
め、一対の導電層5を介して電力が印加されるとジュー
ル発熱を起こし、印字画像を形成するに必要な温度、例
えば250〜400℃の温度に発熱する。
【0023】また、前記発熱抵抗体4上に被着されてい
る一対の導電層5はアルミニウム等の金属から成り、該
導電層5は発熱抵抗体4にジュール発熱を起こさせるた
めに必要な所定の電力を印加する作用を為す。
【0024】尚、前記樹脂保護層3上に被着される発熱
抵抗体4及び一対の導電層5は、従来周知のスパッタリ
ング法等を採用することにより樹脂保護層3上に所定の
厚みをもって被着され、更にフォトリソグラフィー技術
を採用することによって所定パターンに加工される。
【0025】前記一対の導電層5を上面に有する発熱抵
抗体4は、更にその表面が窒化珪素等から成る保護層6
によって覆われており、該保護層6は発熱抵抗体4及び
一対の導電層5を感熱紙等との摺動による摩耗や大気中
の水分や感熱紙等に含まれる塩素イオン、ナトリウムイ
オン等の汚染物質による腐食から保護する作用を為す。
【0026】前記一対の導電層5や発熱抵抗体4上に被
着される保護層6は、従来周知のスパッタリング法等を
採用することによって発熱抵抗体4や一対の導電層5等
の上面に所定の厚みをもって被着形成される。
【0027】かくして上述したサーマルヘッドは、外部
電気信号に対応させて一対の導電層5間に所定の電力を
印加し、発熱抵抗体4を所定の温度にジュール発熱させ
るとともに該発熱した熱を感熱紙等に伝導させ、感熱紙
等に印字画像を形成することによってサーマルヘッドと
して機能する。
【0028】次に、上述したサーマルヘッドにおいて上
面に蓄熱層を被着させた基板の製造方法について図2乃
至図4を用いて説明する。
【0029】(1)先ず、図2に示す如く、アルミナセ
ラミックス等の電気絶縁性材料から成る大型基板1aを
準備する。
【0030】前記大型基板1aは、アルミナ、シリカ、
マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶
剤、溶媒を添加混合して泥漿状と成すとともにこれを従
来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を
採用することによってセラミックグリーンシートを形成
し、しかる後、前記セラミックグリーンシートを所定形
状に打ち抜き加工するとともに高温(約1600℃)で
焼成することによって製作される。
【0031】また前記大型基板1aはその外周部近傍に
複数個のブレーク溝1bが形成されており、該ブレーク
溝1bは大型基板1aを折り曲げによって所定形状の絶
縁基板1に切断する際、その切断を容易とする作用を為
す。
【0032】尚、前記ブレーク溝1bは大型基板1aと
なるセラミックグリーンシートに予めカッターナイフで
切り込みを入れておくことによって形成され、該ブレー
ク溝1bの深さは大型基板1aの厚みに対し、40%と
なるように形成されている。
【0033】(2)次に、前記大型基板1aは図3に示
す如く、その上面全体に樹脂から成る蓄熱層2が被着さ
れる。
【0034】前記蓄熱層2は引張強さが10kg/mm
2 以下、熱伝導率が1.0×10-3cal/cm・se
c・℃以下の樹脂、例えばポリアミド酸の末端にアミノ
シリコン化合物が付加された単量体を主成分とする重合
体(チッソ株式会社製:PSI−S:5001)から成
り、該樹脂のワニス(液状樹脂)を従来周知のスピンコ
ート法により大型基板1aの上面全体に塗布するととも
に、これを約350℃の温度で熱硬化させることによっ
て大型基板1a上に約15乃至40μmの厚みに被着さ
れる。
【0035】前記大型基板1aの上面に被着される蓄熱
層2はその熱伝導が1.0×10-3cal/cm・se
c・℃以下であり、そのため前記蓄熱層2は発熱抵抗体
4が発する熱を良好に蓄積し、サーマルヘッドの温度を
短時間で印字に必要な所定温度に上昇させる。
【0036】尚、前記蓄熱層2はその熱伝導率が1.0
×10-3cal/cm・sec・℃を超えると発熱抵抗
体4の発する熱が蓄熱層2を介して絶縁基板1に逃げ、
サーマルヘッドの温度を短時間で印字に必要な所定温度
に上昇させることができない。従って、前記蓄熱層2は
その熱伝導率が1.0×10-3cal/cm・sec・
℃以下のものに限定される。
【0037】(3)次に前記上面に蓄熱層2を被着させ
た大型基板1aは図4に示す如く、相対向する各々の面
に突起片8、8を有する一対の金属板7、7間に配さ
れ、金属板7、7の押圧により折り曲げ応力が印加され
ると、ブレーク溝1bの個所より折れて切断され、これ
によって所望する上面に蓄熱層2を被着させた所定形状
の絶縁基板1が得られる。
【0038】この場合、スピンコート法を採用すること
によって大型基板1aの上面に被着された蓄熱層2はそ
の外周部の厚みが厚いものとなっているがこの厚みが厚
い領域は切断除去部に存在するため得られる所定形状の
絶縁基板1の上面にはほぼ均一厚みの蓄熱層2が被着さ
れることとなり、その結果、発熱抵抗体4の発する熱は
蓄熱層2においてほぼ均一に蓄積されサーマルヘッドの
温度分布を均一として感熱紙等に鮮明な印字画像を形成
することが可能となる。
【0039】また前記大型基板1aの上面に被着させた
蓄熱層2はその引張強さが10kg/mm2 以下である
ため、大型基板1aに折り曲げ応力を印加して切断する
際、蓄熱層2は大きく伸びることは無く、大型基板1a
とほぼ同時に切断される。そのため、蓄熱層2を切断す
るための切断手段を別途準備する必要も一切無い。
【0040】更に前記大型基板1aを所定形状に切断す
る際、蓄熱層2が強い力で引っ張られても蓄熱層2と絶
縁基板1との間に部分的な剥離が発生し、これが印字時
における熱サイクルの印加によってサーマルヘッド全体
に広がってしまうことは一切無く、その結果、サーマル
ヘッドとして長期にわたり良好に機能させることができ
るようになる。
【0041】また更に前記蓄熱層2はそれを構成する樹
脂の引張強さが10kg/mm2 を超えると大型基板1
aを折り曲げ応力の印加によって切断した際、蓄熱層2
と絶縁基板1との間に部分的な剥離が発生したり、蓄熱
層2を切断するための切断手段を別途準備しなければな
らなくなる。従って、前記大型基板1aの上面に被着さ
れる蓄熱層2はその引張強さが10kg/mm2 以下の
樹脂に特定される。
【0042】尚、本発明は上述の実施例に限定されるも
のでは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種
々の変更、改良等が可能であり、例えば上述の実施例で
は大型基板からサーマルヘッドに使用される所定形状の
絶縁基板を1個得る方法について説明したが、1つの大
型基板からサーマルヘッドに使用される所定形状の絶縁
基板を複数個、同時に得る場合にも適用可能である。
【0043】また上述の実施例では、大型基板の上面に
蓄熱層を被着させた後、大型基板を切断したが、切断す
る前に予め発熱抵抗体や一対の導電層を被着させておい
ても良い。
【0044】
【発明の効果】本発明のサーマルヘッドの製造方法によ
れば、引張強さが10kg/mm2 以下の樹脂から成る
蓄熱層を被着させるとともにこれを折り曲げ応力によっ
て所定形状の絶縁基板に切断することから、切断時、基
板と該基板に被着させた蓄熱層はほぼ同時に切断され、
蓄熱層を切断するための別途切断手段は不要となる。
【0045】また蓄熱層を被着させた大型基板を所定形
状に切断する際、蓄熱層が強い力で引っ張られても蓄熱
層と絶縁基板との間に部分的な剥離が発生し、これが印
字時における熱サイクルの印加によってサーマルヘッド
全体に広がってしまうことは一切無く、その結果、サー
マルヘッドとして長期にわたり良好に機能させることが
できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製法により製作されるサーマルヘッド
の断面図である。
【図2】(a)は本発明の製造工程を説明するための斜
視図であり、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図3】(a)は本発明の製造工程を説明するための斜
視図であり、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【図4】本発明の製造工程を説明するための断面図であ
る。
【符号の説明】
1・・・絶縁基板 1a・・・大型基板 1b・・・ブレーク溝 2・・・蓄熱層 3・・・樹脂保護層 4・・・発熱抵抗体 5・・・一対の導電層 6・・・保護層 7・・・金属板 8・・・突起部

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蓄熱層を有する絶縁基板上に発熱抵抗体と
    導電層とを被着させたサーマルヘッドであって、前記蓄
    熱層を有する絶縁基板が下記(a)及び(b)の工程よ
    り形成されていることを特徴とするサーマルヘッドの製
    造方法。 (a)電気絶縁材料から成る大型基板の上面に、引張強
    さが10kg/mm2 以下、熱伝導率が1.0×10-3
    cal/cm・sec・℃以下となる液状樹脂を塗布す
    るとともに該液状樹脂を熱硬化させて大型基板の上面に
    蓄熱層を被着させる工程。 (b)前記大型基板に折り曲げ応力を印加し、該大型基
    板をその上面に被着させた蓄熱層とともに切断させ、上
    面に蓄熱層を有する所定形状の絶縁基板と成す工程。
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