JP2755609B2 - 電流形インバータの制御装置 - Google Patents

電流形インバータの制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は電流形インバータの制御装置に係り、特に電
力変換に好適な電流形インバータの制御装置に関するも
のである。
〔従来の技術〕
従来のこの種装置は、日立評論VOL68 No.6(1986−
6)の第495頁から第500頁の三井宣夫等による「正弦波
インバータ制御高速エレベーター」と題する論文に記載
されているように構成されている。
いま、インバータの出力電流をi1とすると、i1は、速
度制御回路(ASR)の出力及び誘導電動機に取り付けら
れたエンコーダの出力とをベクトル制御演算回路に入力
することにより得られる各指令値I(電流),ω(周波
数),θ(位相)とから、 i1=I・sin(ωt+θ) …(1) となるように制御される。このシステムは一般に電流形
インバータと呼ばれるもので、電流制御はコンバータ側
で行い、インバータ側では波形整形のみを行う。すなわ
ち、(1)式において、電流指令値Iはコンバータ側で
一定に制御され、インバータ側でこれをsin(ωt+
θ)に波形整形して出力i1を得る方式である。ここで、
ベクトル制御と(1)式の演算の詳細については、例え
ば、日立評論VOL66 No.6(1984−6)の第425頁から第4
28頁の高橋秀明等による「マイクロコンピユータ利用イ
ンバータ駆動省電力規格形エレベーターの開発」と題す
る論文にベクトル制御回路のブロツク構成として示され
ている。ただし、これは電圧形インバータの場合を示し
たものであり、インバータのみで電流制御と波形整形を
行う方式のため、考え方は同じであるが、出力部分に少
し差異があることに注意を要する。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術は、インバータ側で電流を直接正弦波状
に波形整形しているため、例えば、(1)式において、
ωt+θ(以後これを総合位相指令値と呼ぶ)が急峻に
変化した場合、出力i1はそれと同期して変化するため、
電流の変化率、すなわち、di1/dtが非常に大きくなり、
回路のインダクタンスにより大きな過電圧が生じるとい
う問題があつた。(1)式の電流指令値Iの方が急峻に
変化しても実際の電流i1は、コンバータ側の出力電圧V
と回路インダクタンスLによつて決まる比率V/Lで上昇
するのみであるから問題はない。ところがインバータ側
は自己消弧素子により直流電流を強制的に正弧波状に波
形整形する回路であるから、回路インダクタンス等に関
係なく指令値が変化すると、瞬時に出力電流波形も変化
する(しいて言えば、自己消弧素子の遅れ分のみずれる
ことになる)。従つて、前述した如き問題が生じる。
本発明の目的は、総合位相指令値が急峻に変化した場
合でも過電圧の発生を低く抑えてインバータをスムーズ
に運転できる電流形インバータの制御装置を提供するこ
とにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、インバータの出力電流指令値の変化率
(単位時間当りの変化幅)を検出する変化率検出手段を
設け、この検出手段が上記変化率があらかじめ決められ
た所定値を越えたことを検出した場合は、上記出力電流
指令値の変化率を所定値に固定する変化率制限手段を具
備した構成として達成するようにした。
〔作用〕
上記出力電流指令値、すなわち、総合位相指令値の変
化率検出手段及び変化率制限手段により総合位相指令値
が急峻に変化した場合でも、実際の総合位相指令値はあ
らかじめ決められた所定値を越えることはなく、ゆるや
かに変化するので、出力電流もゆるやかに変化し、従つ
て、過電圧の発生を低く抑えることができ、インバータ
をスムーズに運転することができる。
〔実施例〕
以下本発明の一実施例を第1図〜第4図を用いて詳細
に説明する。
第1図は本発明の電流形インバータの制御装置の一実
施例を示すブロツク構成図である。第1図において、1
は一般交流電源、2,7はそれぞれ入力側の高調波を吸収
するフイルタ交流リアクトル及びフイルタ・コンデンサ
であり、8は出力側の高調波を吸収するフイルタ・コン
デンサである。3は交流電源1を直流に変換するコンバ
ータで、4はコンバータ3の出力電流のリツプルを平滑
する直流リアクトルで、5はその直流を可変電圧,可変
周波数の交流電源に逆変換するインバータである。6は
インバータ5によつて駆動される誘導電動機であり、電
動機6の軸端には回転数フイードバツク用ロータリ・エ
ンコーダ10が取り付けてある。コンバータ3とインバー
タ5はいずれも半導体自己消弧素子で構成されており、
それぞれ12,13のPWM(パルス幅変調)制御回路によりパ
ルス幅制御されている。11はコンバータ3のパルスを電
源電圧と同期させて発生させるための同期用トランスで
ある。14は速度指令回路、15はASR(速度制御)回路、1
6はベクトル制御回路で、これの出力I*,ω*,θ*
はコンバータ側,インバータ側に各指令値として入力さ
れる。17はACR(電流制御)回路であり、9は電流をフ
イードバツクするための電流検出用CTである。18は周波
数指令値ω*と位相指令値θ*とから総合位相指令値θ
*を作成する総合位相指令演算回路である。
次に、動作について説明する。まず、速度指令回路14
より発せられる速度指令値ω*とロータリ・エンコー
ダ10からの速度のフイードバツク値ωとにより速度偏
差eωが求められ、ASR回路15に入力される。このASR回
路15の出力はトルク指令値T*となる。このトルク指令
値T*と実速度のフイードバツク値ωをベクトル制御
回路16に入力することにより電流指令値I*,周波数指
令値ω*,制御位相指令値θ*が演算される。この演算
式を次に示す。
ここに、k1,k2,Im*;定数 電流指令値I*はコンバータ側に入力されて直流電流
がIaとなるようにACR回路17で制御される。
一方、周波数指令値ω*と制御位相指令値θ*はイン
バータ側に入力されて総合位相指令演算回路18により総
合位相指令値θ*が生成される。
従来は次に示す演算式でθ*を求めていた。
θ*=ω*・t+θ* …(6) ただし、実際にはデイジタル演算するので(6)式は
次式のように変形して用いる。
θ*=Σω*・Δt+θ* …(7) これで求めたθ*によりPWM制御回路13は出力電流i
1を次式で示される正弦波となるようにトランジスタを
オン・オフさせる。
i1=Ia・sin(θ*) …(8) ここに、Ia;直流電流 いま、(8)式において、総合位相指令値θ*が何
らかの原因でθ*から(θ*+θδ)に急変した場
合を考える。ここで、この要因の1つである位相指令値
θ*が急変する場合を例にとり、総合位相指令値θ
が急変する理由を簡単に説明する。位相指令値θ*は、
(5)式で示すように、励磁電流指令値Im*とトルク電
流指令値It*とにより算出される。Im*は定数であるか
ら、θ*はIt*により変化する。また、It*は(2)式
で示すようにトルク指令値T*で算出される。従つて、
位相指令値θ*は結局トルク指令値T*により算出され
る。次に、このT*は、第1図に示すように、速度指令
値ω*と速度帰還量ωとの差分eωにASR回路15を
作用させることにより得られる。ω*は速度指令値で
あり、急峻には変化しないが、速度帰還量ωには、負
荷変化による回転リツプル及びノイズにより突然的に発
生するノイズリツプルが含まれる。この速度帰還量ω
のリツプルにより位相指令値θ*が急変する。これは無
負荷近傍において特に顕著に現われる。この理由は次に
よる。第5図はベクトル制御によるトルク電流指令値It
*と励磁電流指令値Im*との関係を示すベクトル図であ
る。いま、無負荷近傍でのトルク電流指令値の変化(I
t1*→It2*)と定格負荷近傍でのトルク電流指令値の
変化(It2*→It3*)を考える。いずれの場合もトルク
指令値の変化分T12*,T23*は等しい。この図を見れば
明らかなように、トルクの変化幅が等しくても位置の変
化幅は定格負荷近傍のΔθ23*よりも無負荷近傍の変化
幅Δθ12*の方が大きくなる。この理由から位相の急変
は無負荷近傍において特に顕著に現われる。
このような理由により、総合位相指令値θ*が急変
したとき、出力電流i1は第3図(a)で示すように急峻
に変化する。理論的にはこの出力電流i1の変化率di1/dt
は無限大となる。しかし、実際には第1図に示すように
回路中にフイルタ・コンデンサ8等があるので無限大と
はならないが、それでもかなり大きな値となる。この値
をdi1/dtとし、回路インダクタンスをLlとすると、 V1.P=Ll・di1/dt …(9) で示される過電圧V1.Pが発生する。このとき、実際の
インバータ出力電圧V1,電流I1の波形は、第4図(a)
に示す如き波形となる。この過電圧V1.Pは非常に大き
く、場合によつては過電圧検出器を動作せしめ、システ
ムを非常停止に至らしめる。
そこで、(7)式における制御位相指令値θ*または
周波数指令値ω*が急変しても総合位相指令値ω*が
急変しないよう第1図の総合位相指令演算回路18を第2
図で示すアルゴリズムのフローチヤートで構成した。こ
こで、周波数指令値ω*が急変しても(7)式からわか
るようにθ*の変動分はω*・Δtであり、一般にΔ
tはω*,θ*に比較して非常に小さいことから、本実
施例では、ω*の急変を無視したアルゴリズムとなつて
いることに注意を要する。
以下、第2図に示したアルゴリズムについて説明す
る。ステツプ100,102はシステムを立ち上げるときのみ
の各変数の初期値セツトである。ステツプ104は、第1
図のベクトル制御回路16から出力されるω*,θ*を読
み取るためのプロセスである。ステツプ106はASR回路15
の計算周期T0毎に更新される係数のカウントアツププロ
セス,ステツプ108はステツプ104で読み取つた。ω*,
θ*をωnのワークエリアに格納するプロセス,ス
テツプ110,112,114は第1図のPWM制御回路13の計算周期
t0毎に起動されるステツプ106から130までのタスクに入
る前の各変数及びワークエリアの初期セツトプロセスで
ある。ここで、(θへのθの格納は、n番目のも
のでなく、1回前のn−1番目のθであることに注意を
要する。ステツプ116はステツプ104のω*,θ*の読み
取りタイミングを計数するためのタイマとt0毎に更新さ
れる係数のカウントアツププロセスである。ステツプ11
8はステツプ116から130までのプロセスをPWM制御回路13
の計算周期t0と同期して実行させるためのタイマの起動
プロセスである。ステツプ120から128までは、このフロ
ーチヤート中最も主要な部分であるθ*を求めるフロ
ーである。ステツプ120は(7)式のΣω*・Δtを求
めるプロセスであり、結果を(ωに代入する。ス
テツプ122は制御位相指令値θの変化率が所定値Δθ
を越えたかどうかの判定を行うプロセスである。すなわ
ち、次式の判定式において、 θ−(θm-1<Δθ …(10) m=2のとき、(10)式は、 θ−θn-1<Δθ …(11) (∵(θ=θn-1) のようになるので、容易に理解できる。判定式が(11)
式でなく(10)式のようになつているのは、θが1つ
前の指令値θn-1に対してΔθ以上の差がある場合、ス
テツプ124で示すようにθn-1から期間t0毎にΔθを加算
して、(θを作成しているため、(θがθ
を越えて加算されないようにするためである。θ
(11)式を満足したときあるいは(θが(10)式
を満足したときは、ステツプ123て示すように、
(θにθを代入する。これにより最終的に(θ
はベクトル制御回路16からの位相指令値θ*に一
致する。ステツプ126は(ω及び(θから
総合位相指令値θ*を求めるプロセスである。ステツ
プ128はPWM制御回路13の演算周期t0との同期を取るため
のものであり、クロツクタイマtCKがt0と一致したと
き、ステツプ130で示すように、θ*をPWM制御回路13
に出力する。ステツプ132はベクトル制御回路16の演算
周期T0との同期を取るものであり、タイマTがT0になる
まではステツプ116から130までのプロセスが周期t0で実
行され、TがT0以上となつたとき、ベクトル制御回路16
からの指令値ω*,θ*を読み取りに行く。以上のフロ
ーは、システムがリセツトされるまで連続的に実行され
る。
以上説明したアルゴリズムによれば、θ*が急変し
た場合でも出力電流i1は理論的に第3図(a)から
(b)のようになり、di1/dtを小さく抑えることができ
る。ここで、θ*急変時のi1の変化は第3図(b)中
に拡大して示しているように、時間t0毎に階段状に変化
する。これは第2図のアルゴリズムで示したように、θ
*の算出がt0毎に行われることによるものである。ま
た、t0におけるi1の変化幅は位相がΔθのみ変化するこ
とから、 Δi1≒{sin(θ*)−sin(θ*+Δθ)}・Ta …(12) で示される。ここに近似記号で示したものは、時間t0
には(ωだけでなく、(ωもわずかではあ
るがω*・Δtだけ変化するためである。
実際の電流I1はフイルタ・コンデンサ8等により第3
図(b)に示したように、段階状にはならずなめらかに
変化する。このときのインバータ出力電圧V1,電流I1
第4図(b)に示すような波形となり、過電圧を大幅に
低減することができる。過電圧の発生を抑えるために
は、(9)式からわかるようにdi1/dtを抑えればよい。
(12)式及び第3図(b)よりわかるように、電流の変
化率di1/dtを抑えるには、位相変化の制限幅Δθを小さ
くすればよい。ただし、あまりΔθを小さくしすぎると
逆に制御位相の変化が遅れるので、ベクトル制御がくず
れる結果となり、速度制御の応答が悪化する。従つて、
位相指令値の制限値Δθは許される範囲内でできるだけ
大きく設定する必要がある。
実施例では、実用上の点から位相指令値の変化率を抑
えることにより出力di1/dtを制御する方法を示したが、
出力電流の指令値i1*の変化率を所定値に抑えることが
できる回路であればどのような方法であれ同様の効果を
得ることができるのは明らかである。
〔発明の効果〕
以上説明した本発明によれば、位相指令値急変等によ
つて総合位相指令値が急峻に変化する場合でも、総合位
相指令値の変化率を所定値以下に抑えられるので、出力
電流の変化率を低く抑えることができ、過電圧の発生を
所定値以下とすることができ、従つて、過電圧検出器が
動作することなく円滑な運転を行うことができるという
効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の電流形インバータの制御装置の一実施
例を示すブロツク構成図、第2図は総合位相指令値θ
*発生のアルゴリズムの一実施例を示すフローチヤー
ト、第3図は位相指令値急変時の電流指令値の波形図、
第4図は位相指令値急変時の出力電流,出力電圧の波形
例を示す図、第5図はベクトル制御によるトルク電流指
令値と励磁電流指令値との関係を示すベクトル図であ
る。 4……直流リアクトル、5……インバータ、6……誘導
電動機、8……フイルタ・コンデンサ、10……ロータリ
・エンコーダ、13……PWM制御回路、14……速度指令回
路、15……ASR(速度制御)回路、16……ベクトル制御
回路、18……総合位相指令演算回路。
フロントページの続き (72)発明者 稲葉 博美 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所日立研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−99986(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】交流を直流に変換すると同時に直流電流の
    大きさの制御を行うコンバータと、前記コンバータの直
    流出力側に接続され前記直流電流のリップルを平滑する
    直流リアクトルと、前記直流リアクトルに接続され直流
    を可変電圧、可変周波数の交流電圧に変換するインバー
    タと、前記インバータの出力側に接続される負荷とより
    構成される電流形インバータの制御装置において、前記
    インバータの出力電流の瞬時値を決定する出力電流指令
    値の変化率を検出する変化率検出手段と、前記変化率が
    あらかじめ決められた所定値を越えたことを検出した場
    合、前記出力電流指令値の瞬時値の変化率を所定値に固
    定する変化率制限手段とを設けたことを特徴とする電流
    形インバータの制御回路。
  2. 【請求項2】前記変化率制限手段は、インバータの出力
    電流の位相指令値または周波数指令値の変化率を所定値
    以下とする手段を設けている特許請求の範囲第1項記載
    の電流形インバータの制御装置。
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WO2012063573A1 (ja) 2010-11-09 2012-05-18 株式会社安川電機 フィルタ回路及びそれを備える双方向電力変換装置

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