JP2749056B2 - カラー陰極線管の螢光面形成方法 - Google Patents

カラー陰極線管の螢光面形成方法

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  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、螢光膜形成時に、いわゆる熱かぶりを生ぜ
ず、かつパネルに強く接着した螢光膜が得られ、しかも
露光時間が短くて済むカラー陰極線管の螢光面形成方法
に関する。
[従来の技術] カラー陰極線管の螢光膜は、公知の如く、フォトリソ
グラフ技術を利用し、バルブパネルの内面に感光性螢光
体懸濁液を塗布、乾燥して形成した膜を、シャドウマス
クを介して露光した後、現像して形成する。上記感光性
懸濁液は、従来通常、螢光体、ポリビニルアルコール、
重クロム酸塩等を含んでいた。
上記螢光膜形成工程では、実際には、乾燥を早めるた
めに処理温度を高くすると、高温によって化学反応が促
進され、露光個所の周縁からはみ出した部分まで反応す
る熱かぶり現象(暗反応)が生じたり熱かぶりを抑制し
ようとすると長い露光時間が必要となったり、種々問題
が生じていた。しかも、一方でカラー陰極線管は量産品
であるため、生産性向上の必要から常に工程所要時間の
短縮が求められているので、従来から、多くの改良提案
がなされてきた。
例えば、特開昭51−132961号公報には、螢光体パター
ン間を埋め、螢光体パターン発光時のコントラストを向
上させる黒鉛膜いわゆるブラックマトリクスを形成させ
る際に利用する感光性重合体材料薄膜を、ポリビニルア
ルコールに2〜30重量%の重クロム酸塩を含有させたも
のにジオールアルカン及び又はジオールエーテルを20〜
50重量%含有させることにより露光時間を短縮させるこ
とが開示されているが、熱かぶり現象の軽減には触れて
いない。
また、特開昭62−35431号公報には、螢光体パターン
をフォトリソグラフ法により形成させるための有機感光
性樹脂を含む螢光体懸濁液として、ポリビニルアルコー
ルを主成分とし、感光剤として重クロム酸金属塩を添加
したものを、液温を35〜60℃にして塗布することが記載
されている。これは重クロム酸塩のうち、金属塩を用い
ることによって懸濁液の経時変化を防止しながら、液温
を高めることによって、乾燥用ヒータ電力を減少させ、
乾燥時間を短縮させるためである。
[発明が解決しようとする課題] 既述の如く、感光性螢光体懸濁液の感光剤として、従
来通常は、重クロム酸アンモニウムが用いられていた。
しかし、重クロム酸アンモニウムは、感度の点で優れ、
露光時間が短くて済むが、熱かぶりが発生し易いという
欠点があった。
一方、高精細化の要望が高くなるのに伴い、製造工程
で処理裕度の狭い重クロム酸アンモニウムを使用するの
では、螢光膜品位、歩留などを向上させることが困難に
なって来た。
本発明は上記従来の課題を解決し、螢光膜品位や歩留
を向上させることが出来る、具体的には、熱かぶり現象
が生じ難く、しかも露光時間が短くて済み、接着力も十
分得られるカラー陰極線管の螢光面形成方法を提供する
ことを目的とする。
[課題を解決するための手段] 上記課題を解決するために本発明においては、感光性
螢光体懸濁液として、重クロム酸塩として重クロム酸ナ
トリウム又は重クロム酸カリウムを用い、更に、ジオー
ル類を含有させたものを用いるか、又は、重クロム酸塩
として重クロム酸アンモニウムを用い、かつ、懸濁液の
水素イオン濃度を、pHで6.5〜8.0になるように、水酸化
ナトリウム又は水酸化カリウムにより調整して用いる
か、又は、重クロム酸塩として重クロム酸ナトリウム又
は重クロム酸カリウムを用い、かつ、重合度が2500〜50
00のポリビニルアルコール(以後PVAと省略する)を用
いるか、したものの何れかを使用することにした。
[作用] 接着基剤PVAと感光化剤重クロム酸塩の光接着に対す
るpHの影響は良く知られている。重クロム酸アンモニウ
ムは膜乾燥中にアンモニア分が揮発するために膜のpHが
下がる。そのため露光感度が良い反面、熱かぶりし易い
という副作用が発生する。重クロム酸ナトリウムや重ク
ロム酸カリウムを使用すると、Na+、K+イオンは、乾燥
中に揮発しないため、膜pHを比較的高いままに保てる。
そのため感度は低下するが熱かぶりに対して強くなる。
また、pHが余り高いと接着作用も低下してしまう。感度
低下の対策としてジオール類を添加して、重クロム酸塩
とPVAの反応を促進させることが考えられた。反応はpH
の影響が大きいことからも判るように、H+イオンが関与
しており、H+イオンが多いほど反応は早くなる。ジオー
ル類はH+イオンの供給源になっていると思われる。感度
低下防止用に、ジオール類として、1,3−プロパンジオ
ール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの
中の少なくとも一つを用いれば良いこと、ジオール類の
濃度は、ポリビニルアルコールの重量に対し、5〜30重
量%にすればよいことが判っている。
従来から、感光性螢光体懸濁液のpHが5.4〜5.5の場合
は、懸濁液の粘度が経時的に低下し、この粘度の経時変
化は、pHを6.5〜8.0に調整すると殆ど発生せず、特にpH
7付近の中性が最も粘度変化が少なくなることが判って
いた。このため、従来は、懸濁液中の重クロム酸アンモ
ニウムをアンモニア水でpH調整して用いたが、アンモニ
アは発揮し易く、塗布乾燥後の膜pHが低くなるため、感
度は良いものの、熱かぶりが発生し易かった。これに対
処するためには、重クロム酸アンモニウムは従来通り使
用するが、上記pH調整に、揮発し難いNa+イオンやK+
オンを含む水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用す
ることも有効と考えられ、実験したところ良い結果が得
られた。
また、本発明者は、ポリビニルアルコールの重合度の
高いものを用いた懸濁液について塗布検討を行ったとこ
ろ、重クロム酸ナトリウムや重クロム酸カリウムと組合
せて用いることにより、重クロム酸アンモニウムを用い
た場合と同等の感度を保ちながら、熱かぶりが生じない
事が判った。PVAはCrと配位結合し、その分子量が増加
するのに従い接着作用をもつようになる。初期の重合度
を高く設定すれば、それだけ速く接着作用を働かせるこ
とができる。なお、この場合、PVAの重合度が2500(従
来使用していたものと同じ)以下では感度上昇が望め
ず、5000以上では懸濁液の粘度が高くなり過ぎたり、化
学反応の制御が困難になるなどの弊害が現われる。
[実施例] 第1実施例: 青螢光体(ZnS:Ag,C1)25重量%、PVA(クラレ製、PVA2
24)2.5重量%、重クロム酸ナトリウム(関東化学製、
ニクロム酸ナトリウム)0.15重量%、1.4−ブタンジオ
ール0.25重量%、界面活性剤0.03重量%、及び残部水か
らなる螢光体懸濁液。この処方の感光性螢光体懸濁液組
成で螢光体パターン形成実験を行ったところ、約60℃ま
で熱かぶりせず、また、重クロム酸アンモニウムの場合
と同等の感度を得つつ、接着力(螢光体落ちを生じない
限界の螢光体ストライプ幅またはドット径)も10μm向
上することが出来た。
第2実施例: 青螢光体(ZnS:Ag,C1)25重量%、PVA(クラレ製、PV
A224)2.5重量%、重クロム酸ナトリウム(関東化学
製、ニクロム酸ナトリウム)0.15重量%、ジエチレング
リコール0.25重量%,界面活性剤0.03重量%、及び残部
水からなる螢光体懸濁液。この処方の感光性螢光体懸濁
液について第1実施例の場合と同様な評価実験を行った
ところ、第1実施例の場合と同等の結果が得られた。
第3実施例: 緑螢光体(ZnS:Cu,Au,A1)25重量%、PVA(クラレ
製、PVA224)2.5重量%、重クロム酸アンモニウム(関
東化学製、ニクロム酸アンモニウム)0.25重量%、界面
活性剤0.03重量%、及び残部水からなる螢光体懸濁液。
ここで重クロム酸アンモニウムは5重量%溶液にした後
NaOHでpHを7.0に調整した。この処方による螢光体懸濁
液を14形パネル内面に塗布して熱かぶりが発生する温度
を調べたところ、従来の如くアンモニア水で中和したも
のは露光時のパネル温度が45℃以上になると熱かぶりが
発生したのに対し、上記懸濁液は55℃まで熱かぶりが発
生しなかった。
第4実施例: 青螢光体(ZnS:Ag)25重量%、他は第3実施例と同じ
組成からなる螢光体懸濁液。ここで重クロム酸アンモニ
ウムは5重量%溶液にした後HaOHでpHを7.0に調整し
た。この処方による螢光体懸濁液を14形パネル内面に塗
布して熱かぶりが発生する温度を調べたところ、従来の
如くアンモニア水で中和したものは露光時のパネル温度
が45℃以上になると熱かぶりが発生したのに対し、上記
懸濁液は53℃まで熱かぶりが発生しなかった。
第5実施例: 赤螢光体(Y2O2S:Eu)25重量%、他は第3実施例と同
じ組成からなる螢光体懸濁液。アンモニア水で中和した
ものは露光時のパネル温度が48℃から熱かぶりが発生し
たが、NaOHで中和したものは60℃まで熱かぶりが発生し
なかった。
第6実施例: 緑螢光体24重量%,重クロム酸ナトリウム(二クロム
酸ナトリウム、二水和物)0.24重量%、界面活性剤等0.
03重量%、残部水からなる緑感光性螢光体懸濁液を用
い、14形パネルで塗布評価した結果を下表に示す。
上記の如く、熱かぶりレベルは良好で、感度は約1.6
倍向上し、接着限界ドット径も小さくなった。また、高
重合度PVAを用いることにより、PVA濃度を低減すること
ができ、螢光膜質が良くなり、かつベーキングにおいて
も有利である。
[発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、熱かぶりが発生
し難くなって作業裕度が広くなり、接着力が向上して膜
質が良くなり、しかも露光時間は従来と同程度か短くな
るなど、歩留、スループットともに向上する。
フロントページの続き (72)発明者 渡辺 尚光 千葉県茂原市早野3300番地 株式会社日 立製作所茂原工場内 (72)発明者 荒井 勉 千葉県茂原市早野3300番地 株式会社日 立製作所茂原工場内 (56)参考文献 特開 昭62−35431(JP,A) 特開 昭51−132961(JP,A) 特開 昭57−151146(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バルブパネルの内面に螢光体、ポリビニル
    アルコール、重クロム酸塩等を含む感光性螢光体懸濁液
    を塗布乾燥した膜に、シャドウマスクを介して露光した
    後、現像して所定の螢光体パターンを形成するカラー陰
    極線管の螢光面形成方法において、前記懸濁液は、重ク
    ロム酸塩として重クロム酸ナトリウム又は重クロム酸カ
    リウムを用い、更に、ジオール類を含有することを特徴
    とするカラー陰極線管の螢光面形成方法。
  2. 【請求項2】ジオール類として、1,3−プロパンジオー
    ル、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,
    6ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチ
    レングリコール、テトラエチレングリコールよりなる群
    の少なくとも一つを用いる特許請求の範囲第1項記載の
    カラー陰極線管の螢光面形成方法。
  3. 【請求項3】ジオール類の濃度を、ポリビニルアルコー
    ルの重量に対し、5〜30重量%にした特許請求の範囲第
    1項記載のカラー陰極線管の螢光面形成方法。
  4. 【請求項4】前記ポリビニルアルコールは重合度が2500
    〜5000であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記
    載のカラー陰極線管の螢光面形成方法。
  5. 【請求項5】バルブパネルの内面に螢光体、ポリビニル
    アルコール、重クロム酸塩等を含む感光性螢光体懸濁液
    を塗布乾燥した膜に、シャドウマスクを介して露光した
    のち、現像して所定の螢光体パターンを形成するカラー
    陰極線管の螢光面形成方法において、前記懸濁液は、重
    クロム酸塩として重クロム酸アンモニウムを用い、か
    つ、懸濁液の水素イオン濃度を、pHで6.5〜8.0になるよ
    うに、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムにより調整
    して用いることを特徴とするカラー陰極線管の螢光面形
    成方法。
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